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土留め壁の変形が壁面土圧に与える影響の評価(砂地盤)

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Academic year: 2022

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(1)

土留め壁の変形が壁面土圧に与える影響の評価(砂地盤) 

 

武蔵工業大学大学院     学生会員 ○市川 貴之 

独立行政法人産業安全研究所 正会員   豊澤 康男 堀井 宣幸 玉手 聡  武蔵工業大学        正会員   末政 直晃 片田 敏行 杉田 毅   

1.はじめに 

掘削工事において土留め壁に作用する壁面土圧を予測し,土留め壁の崩壊事故を防止するには,地盤や土留め壁 の変形と壁面土圧発現の相互作用,崩壊にいたるまでの挙動などについて体系的な知見が必要となる.しかしなが ら,それらの関係は非常に複雑で,設計時に予測した挙動と施工中に計測される挙動が異なる場合があるなど,地 盤や土留め壁の変形・崩壊現象を的確に予測することが困難である. 

本報では,遠心場において土留め壁の変形を制御し, 基本的な土留め壁の変形時における壁面土圧を計測する実 験を行ったのでここに報告する. 

2. 実験方法 

図‑1に遠心場掘削シミュレータ1 )の概要図を示す。本装置は 10 段の切梁をそれぞれ独立して水平方向に変位させることによって 土留め壁の変形状態を再現する.切梁の先端部には分割した矢板を それぞれ装着している.この分割式矢板はヒンジによって取り付け られており,地盤の変形に応じて回転し土留め壁の連続性を保つ構 造となっている.表‑1に実験条件を示す.試験試料には豊浦砂を用 いた.模型土槽内に空中落下法で相対密度が約 70%,地盤高 280mm の模型地盤を作成し,30G の遠心場において切梁をそれぞれ独立に 主働側に変位させることで図‑2 に示すような土留め壁の変形を再 現した.なお,分割式矢板及び土槽側面における砂との摩擦はメン ブレンとシリコングリースを用いることで低減した.

3. 実験結果 

今回実施したすべての Case において土留め壁が静止した状態で 一定であった壁面土圧(静止土圧)が変形に伴って変化したがその 傾向が各 Case で大きく異なった.壁面土圧の再配分2)は変形開始 直後から起こり, 壁面土圧は X/L=0.005 付近でほぼ一定の分布と なった. ここで X/L とは,土留め壁の傾斜の状況(X:中央部の変 位,L:中央部の地盤高)を表している.これより,地盤が塑性化す るために必要なひずみ量は非常に小さいことが確認された. 

図‑3 に Case1 における壁面土圧の分布形状を示す.土留め壁が 静止した状態での壁面土圧は Rankine の静止土圧(c=0, φ=36゜)

に近い分布となった.下端で壁面土圧が小さいのは底面の摩擦が影

響していると考えられる.下端を回転中心として変形させると壁面土圧は減少し,Rankine の主働土圧に近い分布 となった.その後は,土留め壁をさらに変形させても壁面土圧は変化せずほぼ一定の分布となった. 

図‑4に Case2 における壁面土圧の分布形状を示す.土留め壁が静止した状態での土圧は Case1 と同様に静止土圧  キーワード:土留め,掘削,土圧,再配分,遠心模型実験 

連絡先:〒334‑0052 東京都世田谷区玉堤 1‑28‑1 地盤環境工学研究室 TEL&FAX 03‑5707‑2202 

分割式矢板(アルミ製) 2方向ロードセル(門型50kgf) サーボモーター、LVDT内蔵

豊浦砂

590mm

400mm

図‑1 遠心場掘削シミュレータ  表‑1 実験条件 

図‑2 土留め壁の変形 

 Case1      Case2        Case3     Case4 L

X

Case 試料 相対密度 地盤高 遠心加速度 1

2 3 4

豊浦砂 約70% 280mm 30G 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)

‑275‑

III‑138

(2)

に近い分布となったが,上端を回転中心として変形させる と壁面土圧は上端付近では静止土圧より大きく,中央部以 深では主働土圧より小さい分布となった.主働側に変形さ せたにもかかわらず静止土圧より大きくとなったのは,砂 の移動をすべり線に平行なスライスであると仮定し考える と,下方のスライスが壁側に移動するときに上方のスライ スの落下に抵抗すると同時に上方のスライスを壁へ押しつ けるように作用しているためである3)と理解できる. 

図‑5に Case3 における壁面土圧の分布形状を示す.上下 端を不動として中央部が膨れるように変形させると,壁面 土圧は上端付近では静止土圧より大きく,中央部では主働 土圧より小さく,最下端では主働土圧に近い分布となった.

中央部が膨らむように変形させた後,Case1 と同様の変形 状態にすると主働土圧に近い分布となった. 

図‑6に Case4 における壁面土圧の分布形状を示す.平行 に変形させると,壁面土圧は上端付近で静止土圧よりやや 大きく,中央部以深では主働土圧に近い分布となった.土 留めを平行に変形させた後,Case1 と同様の変形状態にす ると壁面土圧は主働土圧に近い分布となった. 

図‑4,5,6中に示す計算値とは下端を回転中心とした場 合の壁面土圧が三角形分布になると仮定し,土留め壁が任 意の変形をする場合の壁面土圧は下端を回転中心とした場 合との変形量の差に比例するとした変形法3),4)に基づくも のである.実験結果と比較すると Case3 においてほぼ同様 の分布傾向となったが,Case2,Case4 では下端付近におい て計算値を上回る結果となった. 

4. まとめ 

30G の遠心場おいて基本的な土留め壁の変形に伴う壁面 土圧を計測する実験を行った結果,以下の知見を得た. 

(1) 壁面土圧の再配分は変形開始直後から起こり,壁面土 圧は X/L=0.005 付近でほぼ一定の分布となった. 

(2) 土留め壁が主働側に変形しているにもかかわらず,静 止土圧より大きな壁面土圧となる場合があった. 

(3) 最終的に下端を回転中心として変形させた状態にする と,その変形過程によらず壁面土圧は Rankine 主働土 圧に近い分布となった. 

(4) 変形法による計算値は Case3 において実験値とほぼ同 様の分布傾向となったが,Case2,Case4 では下端付近 において実験値が計算値を上回る結果となった. 

〈参考文献〉1)市川 貴之,豊澤 康男 他:砂地盤における土留めの変形が壁面土圧に与える影響,第 37 回地盤工学研究発表会,2002,(投稿 中)2)山口 柏樹:土質力学,技報堂  3)原田 千三:土圧計算新法,産業図書  4)落合英俊 他:土圧入門,地盤工学会 

図‑3 壁面土圧の分布形状(Case1) 

図‑4 壁面土圧の分布形状(Case2) 

図‑5 壁面土圧の分布形状(Case3) 

図‑6 壁面土圧の分布形状(Case4) 

‑9

‑8

‑7

‑6

‑5

‑4

‑3

‑2

‑1 0

‑10 0 10 20 30 40 50 60 壁面土圧(kN/m2)

深さ(m)

X/L=0.00 X/L=0.01 X/L=0.04 静止土圧 主働土圧

L X

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‑10 0 10 20 30 40 50 60 壁面土圧(kN/m2)

深さ(m)

X/L=0.01 X/L=0.04 計算値 静止土圧 主働土圧

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‑4

‑3

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‑1 0

‑10 0 10 20 30 40 50 60 壁面土圧(kN/m2)

深さ(m)

X/L=0.01 X/L=0.04 計算値 下端 静止土圧 主働土圧

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‑5

‑4

‑3

‑2

‑1 0

‑10 0 10 20 30 40 50 60 壁面土圧(kN/m2)

深さ(m)

X/L=0.01 X/L=0.04 計算値 下端 静止土圧 主働土圧 土木学会第57回年次学術講演会(平成14年9月)

‑276‑

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参照

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