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テンサイにおける自殖遺伝子(

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Academic year: 2021

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博 士 ( 農 学 ) 藏 之 内 利 和

学 位 論 文 題 名

テンサイにおける自殖遺伝子(S/ )を利用した 高品質品種育種に関する研究

学位論文内容の要旨

  テンサイの 優良品種 は、三系 交配の一 代雑種品 種が主流となっている。この育種 法に必 要な種子 親系統の 開発には 、細胞質 雄性不稔 系統とその 維持(O型 )系統と の組み合わ せを選択 する複雑 な育成過 程があり 、長期間を要するのが特徴である。

また、近年 は、収量 形質に加 えて、品 質特性と して、砂糖の結晶化の阻害因子であ る 有 害 性 非 糖 分 と総 称 さ れる ア ミノ 態N、KとNaの 含 量の 改 善 が重 要 と なっ て き ている。テ ンサイに おいて、 自殖遺伝 子ざノを 持っSF系統を用いて、これらの系統 間の交 配により 、効率的 に高収量 ・高品質 性のO型系 統、種子親 系統およ び三系交 配Flを育 成 す るこ と を目 的 と すると 共に、そ のための 交配法の開 発、品質 関連形 質 を 中 心 と し た テ ン サ イ の 育 種 主 要 形 質 に 関 す る 遺 伝 的 考 察 を 行 っ た 。

1.低温 による雄性不稔化を利用したSF系統間交配法の確立

  生 殖生 長 期 の低 温 処 理に よ り生起 する雄性 不稔を利 用して、 テンサイのSF系統 間の交配を行うと きに有用な除雄法の開発を試みた。テンサイ`の幼苗の春化処理後 の 着 蕾 個 体 に 、24時 間 日長 で 、5℃ では50日 間 、 また は 、3℃で は30日 間 の 低温 処理をす ることによ って、十 分な雄性 不稔化が 達成できた。花器官の雌性機能に問 題となる 障害はなく 、健全な 花粉を交 配するこ とによって雑種種子を採種すること ができた 。手作業に よる除雄 に比較し 、採種量 は同等であり、交配時の除雄作業の 省力化を 図ることが できると 考えられ た。低温 による雄性不稔化は、花粉稔性回復 遺伝子型 との間には 関連が見 られなか った。低 温処理によって葯内の小胞子と周囲 の葯壁組 織との間に 生育差を 生じるこ とが、雄 性不稔化の初期反応と考えられた。

2.収量 および有 害性非糖分 含量にお よぼす自 殖の影響

  SF系 統 を4回か ら8回 自殖 を 繰 り返 し た系 統 を 供試 し 、 収量 お よび 有 害 性非 糖 分 におよ ばす自殖に よる影響 を検討し た。自殖5回以前に おいて、 根重では自 殖回 数に伴 う減少が 大きい場合 があり、 それに伴 って糖量 においても同様の傾向がみら れたが 、根中糖 分や有害性 非糖分含 量では自 殖による 影響は明らかでなかった。自

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殖5回以降の世代では、収量および有害性非糖分含量に自殖の影響は見られなかっ た。我が国では、自殖5回以降のSF系統をFl採種のための交配に供試しており、

自殖による影響は大きな問題とはならなぃと考えられた。SF系統を用いて根重や 糖量に関する遺伝解析を行う場合は、自殖5回以前では自殖による影響を考慮する 必要があるが、根中糖分や有害性非糖分含量では自殖による影響は問題とならたい と考えられた。

3.収量および有害性非糖分含量の選抜効果

  テンサイの収量と有害性非糖分含量について、SF系統間交配後代の育成系統を 用い、それら形質の選抜効果について検討した。根重については両親系統よりも多 収の後代の出現が十分可能であることが示されたが、根中糖分については両親系統 を凌駕するのは困難であり、交配時の両親に優良系統を選択することが重要である と考えられた。有害性非糖分含量については選抜効果が明らかであり、両親系統よ りも低含量の系統を育成することができた。選抜効果は、Na含量が最も大きく、

次いでアミノ態N、Kの含量の順であった。SF系統間交配により、収量および有 害性非糖分含量の優良な系統を育成することは十分に可能であることが示された。

  SF系統間交配により育成した材料について、有害性非糖分含量の選抜を繰り返 した結果、1世代から2世代の選抜でも十分な選抜効果が得られ、さらに選抜を繰 り返す必要の少ないことが示された。また、自殖の初期世代(自殖2世代程度)で 選抜を行うことで、有害性非糖分含量の効率的な選抜を行うことができると考えら れた。さらに、初期世代の個体選抜に適用しうる有害性非糖分含量に関する簡易個 体選抜手法として、根部汁液の電気伝導率による測定法を開発した。電気伝導率に よる選抜は、KとNaの含量に有効であったが、アミノ態N含量では選抜効果が表 れなかった。

4.有害性非糖分含量と収量の相互関係

  有害性非糖分の構成成分含量と収量関連形質との遺伝的関係を検討した結果、各 系統で一定した相関関係が見られる特性と、系統により異なる相関関係の見られる 特性が存在することが判明した。高ブリックス度への選抜は、低Na含量への副次 的選抜効果も期待できると考えられたが、低アミノ態N含量や低K含量への副次的 選抜効果は必ずしも期待できないと判断された。したがって、SF系統の有害性非 糖分の改良は、各成分自身の選抜が必要と考えられた。

5. SF系統を利用した種子親系統と三系交配Flの育成

  SF系統間の交配に由来する育成系統の中から、収量および有害性非糖分含量の 優れたO型系統が育成された。それらは細胞質雄性不稔系統との交配Flで優れた 収量および有害性非糖分含量を示し、優良な種子親系統が育成された。これらの種

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子親系統を用いて、種々の花粉親系統を交配し、育成された三系交配Flの中には、

標準品種「モノホマレ」よりも明らかに優れた収量および有害性非糖分含量を示す ものが見られた。特に、有害性非糖分含量に関して改良された三系交配Flが開発 されたことが特長的であった。テンサイにおいて、SF系統を利用した三系交配一 代雑種品種の育種手法は、従来からの自家不和合性を持つO型系統を用いる育種手 法にも増して有効な新たな育種手法として活用でき、高品質品種育成に貢献するこ とが多大と考えられる。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

テンサイにおける自殖遺伝子(S/ )を利用した 高品質品種育種に関する研究

  本論文は、図24、.表40、引用文献61を含み、6章からなる160頁の和文論 文である。別に参考論文21編が添えられている。

  テンサイの優良品種は、三系交配の一代雑種品種が主流となっている。この 育種法に必要だ種子親系統の開発には、細胞質雄性不稔系統とその維持(O型)

系統との組み合わせを選択する複雑な育成過程があり、長期間を要するのが特 徴である。また、近年は、収量形質に加えて品質関連形質(有害性非糖分含量)

の改善が重要となってきている。テンサイにおいて、自殖遺伝子Sfを持つSF 系統を用いて、これらの系統間の交配により、効率的に高収量・高品質性の0 型系統、種子親系統および三系交配Fiを育成することを目的,とすると共に、そ のための交配法の開発、品質関連形質を中心としたテンサイの育種主要形質に 関する遺伝的考察を行った。

1. 低 温 に よ る 雄 性 不 稔 化 を 利 用 し た SF系 統 間 交 配 法 の 確 立   生殖生長期の低温処理による生起する雄性不稔を利用して、テンサイのSF系 統間の交配するときの省力的な除雄法の開発を試みた。テンサイの幼苗を春化 処 理し、生育 後着蕾した 個体に、24時 間日長で、5℃では50日間、3℃では 30日間の低温処理によって、十分な雄性不稔化が達成できた。花器官の雌性機 能に障害はなく、稔性花粉の交配によって雑種種子を採種できた。手作業によ る除雄に比較し、交配時の除雄作業の省力化を図ることができた。低温による 雄性不稔化は、花粉稔性回復遺伝子型との間には関連がなかった。低温処理に よって葯内の小胞子と周囲の葯壁組織との間の生育差が、雄性不稔化の初期反 応と考えられた。

2.収量およ び品質形質 におよばす 自殖の影響

SF系統を4回か ら8回の自殖を繰り返した系統を供試し、収量および品質形 也雄

夫 義芳 哲 本野 上 島佐 三 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

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質におよばす自殖の影響を検討した。自殖5回以前では、根重が自殖回数に伴 う減少が大きい場合があり、それに伴って糖量においても同様の傾向がみられ たが、根中糖分や有害性非糖分含量では自殖による影響は明らかでなかった。

自殖5回以降の世代では、収量および品質形質に自殖の影響は見られなかった。

3.収量および品質特性の選抜効果とそれらの相互関係

  SF系統間交配後代の育成系統を用い、根重、根中糖分、有害性非糖分の選抜 効果を検討した。根重にっいては両親系統よりも多収の後代の出現が十分可能 であることが示されたが、根中糖分にっいては両親系統を凌駕するのは困難で あり、交配時の両親に優良系統を選択することが重要であると考えられた。有 害性非糖分含量については選抜効果が明らかであり、両親系統よりも低含量の 系統を育成することができた。SF系統間交配により、収量および品質関連形質 の 優 良 な 系 統 を 育 成 す る こ とは 十 分に 可 能 であ る こと が 示さ れ た。 .   SF系統問交配により育成した材料について、有害性非糖分含量の選抜を繰り 返した結果、1回から2回の選抜でも充分な選抜効果が得られ、さらに選抜を 繰り返す必要の少ないことが示された。また、自殖の初期世代(自殖2回程度)

で選抜を行うことで、有害性非糖分含量の効率的な選抜を行うことができると 考えられた。さらに、有害性非糖分含量に関する簡易個体選抜手法として、根 部汁液の電気伝導率による測定法を開発した。

4. SF系統を利用した種子親系統と三系交配Fiの育成

  SF系統間の交配に由来する育成系統の中から、収量および品質特性の優れた O型系統が育成され、それらのO型系統との交配Fiで優れた収量および品質特 性を示す優良な種子親細胞質雄性不稔系統が育成された。これらの種子親系統 を用いて、SF系統を含めた種々の花粉親系統を交配し三系交配Fiを育成した。

これらの三系交配Fiの中には、標準品種よりも明らかに優れた収量および品質 特性を示すものが見られた。特に、有害性非糖分含量に関して優良な三系交配 Fiが開発された。テンサイにおいて、SF系統を利用した三系交配一代雑種品種 の育成は、従来からの自家不和合性をもつO型系統を用いる育種手法にも増し て有効な新たな育種手法であり、効率的な高品質品種育成に貢献すると多大と 考えられる。

  本研究は、テンサイ育種上の種々の技術開発および新遺伝資源の活用により、

効率的に品種を開発したものであり、学術上の貢献が大きいばかりでなく、産 業上も高く評価される。

  よって審査員一同は、藏之内利和が博士(農学)の学位を受けるのに十分な 資格を有するものと認めた。

参照

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