トーラス型ネットワーク上の効率的なブロードキャスト方式について
全文
(2) が、各 i = 1, 2, · · · , k について vi−1 , vi が ei の両端点となっているとき、道と呼ぶ。k を w の長さ呼び、. l(w) = k と表すことにする。また v0 を w の始点 と呼び s(w) で表す。vk を終点と呼び、t(w) で表す. 道の集合 W に対して t(W ) = {t(w) | w ∈ W }, s(W ) = {s(w) | w ∈ W } と定義する。. G のある頂点 v は同時に最大 deg(v) 個の頂点にグラフ中の道を通してデータを送信することが出来 ると仮定する。deg(v) は頂点 v の次数である。道 w を経由する通信に要する時間を. α + l(w)δ と仮定する。ここに α は通信初期化のための時間であり、δ は スイッチングコストとよばれる正の定数 である。o = v0 , v1 , . . . , vr = v ∈ V (G) を r + 1 個の G の頂点とする. 次のような状況を考える。メッ セージの最初の発信者 o は v1 に道 w1 を通してメッセージを送る。メッセージをうけた v1 はそのメッ セージを v2 に道 w2 を通して転送する。以下、同様にして v3 , v4 , . . . と順にメッセージを受信して、最 終的に v = vr がメッセージを受信する : w. wr−1. w. w. 1 2 r v1 −→ · · · −→ vr−1 −→ vr (= v) (o =)v0 −→. このとき、v が最終的にメッセージを受信するために要する時間は. rα + δ. r . l(wi ). i=1. であると仮定する。メッセージを受信した頂点は deg(v) 個以下の頂点に同時に転送することが出来る。 転送が繰り返され、最終的にすべての頂点がメッセージを受信する。この過程をブロードキャストと呼 ぶことにする。これをより正確に、道の集合の族を用いて次のように定義する。 定義 1. G 上の頂点 o ∈ V (G) を起点とするブロードキャストとは G 上の道の集合族 {Wr }R r=1 で次の 条件を満たすものである。. 1. s(W1 ) = {o} 2. s(Wr ) ⊂. r−1 i=1. t(Wi ) ∪ {o}. 3. 任意の v ∈ t(Wr−1 ) について {w ∈ Wr | s(w) = v} ≤ deg(v). R 4. r=1 t(Wr ) ∪ {o} = V (G), ∪R r=1 Wr = V (G) − 1. 5. Wr に属するどの道も始点以外では交わらない。 R ブロードキャスト {Wr }R r=1 の添字の r をラウンドと呼ぶことにする。ブロードキャスト {Wr }r=1 に r 対して I(W, r) = i=1 t(Wr ) ∪ {o}, 1 ≤ r ≤ R と定義する。これは第 r ラウンド終了時に情報を得て. いる頂点の集合を表す。便宜上、I(W, 0) = {o} と定義しておく。上の条件 2 は情報を受信したプロセッ サのみが情報を転送できることを意味し、条件 4 は第 R ラウンド終了時にはすべてのノードが一度だけ メッセージを受信していることを意味する。条件 4, 5 より、どの頂点 v ∈ V (G) に対してもある道の列. w1 w2 · · · wk , wr ∈ Wr が唯一つ存在して、2 ≤ r ≤ k について t(wr−1 ) = s(wr )、および t(wk ) = v が k 成り立つ。ここで、lW,v = i=1 l(wi ) と定める。maxv∈V (G) {lW,v } を {Wr }R r=1 の最大通信パス長と呼 ぶことにする。 2 −2−.
(3) 問題は効率的なブロードキャストを構成することである。つまり、ラウンド数 R と最大通信パス長の 小さなブロードキャストを設計する。ラウンド数と通信パス長について次のあきらかな下界が存在する。. R ≥ logp+1 V (G),. max {lW,v } ≥ ∆(G).. v∈V (G). ただし、ここで p = maxv∈V (G) deg(v) で ∆(G) はグラフの直径である。. n, d を任意の自然数とし、ei ∈ Zd を i−1. d−i. ei = (0, 0, · · · , 0, 1, 0, · · · , 0) と定める。また S = {±ek | k = 1, 2, · · · , d} とする。グラフ G は頂点集合 V (G) = Zd /nZd をもち、2 つの頂点 x, x ∈ V (G) は x − x ∈ S のとき、またそのときに限り一つの辺によって結ばれるものとす る。(つまり、G は Zd /nZd の生成元を S とするケイリーグラフである。) このグラフ G を本稿では次 元 d, サイズ n のトーラスネットワークと呼ぶことにする。図 1 は d = 2, n = 5 のトーラスネットワー クを表す。. 図 1: 2 次元 サイズ 5 のトーラスネットワーク. 本稿の目的は, まず Peters と Syska のブロードキャストアルゴリズムを一般化された記数法と自己相 似的性質を持つタイリングを用いて再定義し, つぎに 3 次元トーラスに対するアルゴリズムを代数的な 手法を用いて設計することで, 本稿で導入した代数的手法の有効性を示すことにある. 2. 有限トーラス上の記数法とタイル貼り. B ∈ Md (Z) を整数成分の d 次正方行列とし、D ⊂ Zd を Zd の部分群 BZd による剰余類の完全代表系 とする。つまり、任意の x ∈ Zd に対して dx ≡ x (mod BZd ) となる dx ∈ D がただ一つ存在する。さ らに. B d = (det B)I であると仮定する。証明を省略するが次が成立する。 補題 2. m を任意の自然数、det B = b とする。任意の x ∈ Zd /bm Zd に対して. x = a0 + Ba1 + · · · + B dm−1 adm−1 となる ak ∈ D, 0 ≤ k ≤ dm − 1 が一意に存在する。. 3 −3−. (mod bm Zd ). (1).
(4) つまり、Zd /bm Zd の任意の元は D 上の長さ dm の語として一意に表される。ここで. T(k) = a0 + Ba1 + · · · + B k ak | ai ∈ D ,. L(k) = B k+1 ak+1 + B k+2 ak+2 + · · · + B dm−1 adm−1 | ai ∈ D と定義する。V (G) = Zd /bm Zd は次のように分割される。
(5) c + T(k) (mod bm Zd ). V (G) =. (2). c∈L(k). c ∈ L(k) に対して c + T(k) をレベル k のタイルと呼ぶことにする。(2) は V (G) が T (k) の平行移動に よってすき間なく、また重なりなく埋めつくされることを意味する。また、タイル自身もより小さなレ ベルのタイルによって分割される。. T(k+1) =.
(6). c + T(k) .. c∈B k+1 D. 図 2: トーラス上のタイル貼り. 例 3. B =. 2. 1. . 1 −2 タイルを図示するため. 、D (0, 0)T , ±(1, 0)T , ±(0, 1)T とすると D は Z2 /BZ2 の完全代表系をなす。 ˆ (k) = T(k) + U T. ˆ (2) とその平 とする。ただし、ここに U = {(x, y) | − 0.5 ≤ x ≤ 0.5, −0.5 ≤ y ≤ 0.5} である。図 2 は T 行移動がトーラス R2 /52 Z2 を敷き詰めている様子を表している。. 3 3.1. ブロードキャストアルゴリズム ブロードキャストアルゴリズム B=. 2. 1. 1 −2. . , D = (0, 0)T , ±(1, 0)T , ±(0, 1)T. 4 −4−.
(7) とすると B 2 = 5I であり、D は Z2 の部分群 BZ2 の完全剰余代表系をなす。このとき、補題より次が成 立することが分かる。m を任意の自然数とするとき、任意の x ∈ Z2 /5m Z2 に対して. x = a0 + Ba1 + · · · + B 2m−1 a2m−1. (mod 5m Z2 ). (3). となる ak ∈ D, 0 ≤ k ≤ 2m − 1 が一意に存在する。よって、任意の x ∈ Z2 /BZ2 は長さ 2m の D 上の 語として表現できることがわかる。 任意の頂点 v は v ± (1, 0)T , v ± (0, 1)T の 4 頂点と辺で結ばれている。この 4 つの辺をそれぞれ、 ¯ Y, Y¯ で表す。こうして、ある頂点から出発する道を {X, Y, X, ¯ Y¯ } の 4 個のアルファベットを用い X, X, て表すことができる。例えば頂点. o = (0, 0)T , (0, 1)T , (1, 1)T , (2, 1)T , (2, 0)T を順にめぐる長さ 4 の道を (o, Y XX Y¯ ) と表現する。またアルファベット α の k 回の繰り返しを αk の ように表す。例えば Y Y Y Y = Y 4 である。 ブロードキャストはラウンド 1 からラウンド 2m までの計 2m 個のラウンドから構成される。ラウン ド r − 1 が終了した時点ですでにメッセージを受信しているノード v はラウンド r において 4 個の未受 信ノード v + B 2m−r D∗ に送信する。ただし、ここで D∗ = (D\{0}) である。このとき通信に使う道の. 5k. 集合 Wr を次のように定める。. v. v. 2 · 5k. 5k. odd round 2m − r = 2k + 1. even round 2m − r = 2k. 図 3: paths in Wr starting from v. • r ≡ 1 mod 2 のとき 2m − r = 2k + 1 となる k ∈ {0, 1, · · · , m − 1} が存在す る。v は v + B 2k+1 D∗ =. v + ±5k (2, 1)T , ±5k (1, −2)T に図 3 左に示す 4 本の道を用いてメッセージを送る。u = 5k と して. ¯ u ), (v, Y¯ 2u X u ) ¯ 2u Y¯ u ) (v, Y 2u X Wr v = (v, X 2u Y u ), (v, X • r ≡ 0 mod 2 のとき 2m − r = 2k と なる k ∈ {0, 1, · · · , m − 1} が 存 在 する 。v は v + B 2k D∗ = v +. k. ±5 (1, 0)T , ±5k (0, 1)T に図 3 右に示す 4 本の道を用いてメッセージを送る。この 4 本 の道は u = 5k として. ¯ u ), (v, Y u ), (v, Y¯ u ) . Wr (v) = (v, X u ), (v, X 5 −5−.
(8) 図 4 はこのアルゴリズムを m = 2 の場合に適用した各ラウンドを表している。黒い小円 信した頂点で、白い小円. ◦ は新たにメッセージを受信した頂点を表している。. W1. W2. W3. W4. • はすでに受. 図 4: A broadcasting on the torus network Z2 /52 Z2. 3.2. 証明の概略 2m. 定理 4. {Wr }r=1 はブロードキャストであり、最大通信パス長は ∆(G) と等しい。 証明の概略を以下に示す。Wr に含まれる各道が互いに交差しないことを示せばブロードキャストで あることが示せる。I(W, r − 1) = L(2m−r+1) より、V (G) は.
(9) v + T(2m−r) V (G) = v∈I(W,r−1). と分割される。v ∈ I(W, r − 1) = L(2m−r+1) に対して Wr (v) = {w ∈ Wr | s(w) = v} と定義する。つ まり Wr (v) は第 r ラウンドで頂点 v を出発する道の集合である。Wr (v) に属す道上のすべての頂点が. 6 −6−.
(10) v + T(2m−r) に含まれていることを示すことが出来る。この証明により {Wr } が単にブロードキャスト となっていることのみならず通信に遅延が生じた場合にもけっして通信パスが交わらないというより強. 5k. い性質をもつことが分かる。. v. v. 2 · 5k. 5k. 図 5: Wr (v) is contained in v + T(2m−r). このグラフはすべての頂点の次数が 4 であるからラウンド数は 2m = log4+1 52m で最小となっている。. Wr に含まれる道の長さは r が奇数のときは 3 · 5(2m−r−1)/2 , r が偶数のときは 5(2m−r)/2 となる。よっ て最大パス長は 3 · 5(m−1) + 5(m−1) + 3 · 5(m−2) + 5(m−2) + · · · + 3 + 1 = 5(m−1) − 1 であり、グラフの 直径と等しく、やはり最小化されている。. 4. 3 次元への拡張 ⎛. −1. 1. ⎜ B = ⎝ −2 −1 1 1. −1. ⎞. ⎟ 0 ⎠ , D = (0, 0, 0)T , ±e1 ± e2 , ±e3 2. とすると B 3 = 7I で D は Z3 /BZ3 の完全剰余代表系となっている。これをもちいて 2 次元のときと同様 に3次元のサイズ 7m のトーラスネットワーク上のブロードキャストを構成できる。Wr (v) は r ≡ 2, 1, 0 (mod 3) の値によって 3 通りに分かれる。r ≡ i (mod 3) のとき、u = 7(m−i)/3 として、 8 j ff ¯ 2u Y¯ u Z 2u X ¯ u Y 2u X ¯ u Y u Z¯ u ), (v, Y¯ u X u Y¯ 2u X u Y¯ u Z u ), (v, X ¯ u ), (v, Y u X > > > ¯ 2u u ¯ 2u ¯ u ¯ u Y 2u Z u ), > (v, Z 2u X (v, (v, X 2u Y u Z¯ 2u X u ), < j ff Z X Y Z ) ¯ u Y¯ u ), (v, Y u Z¯ u X u Y u ), (v, X u Y¯ u Z u ), (v, Y¯ u Z u X Wr (v) = > > ¯ u Z u ), ¯ u u ¯u (v, Z u X (v, Z¯ u X u Z¯ u¯) > > ˘ (v,uX Y Z u), : u u ¯ ¯ (v, X ), (v, X ), (v, Y ), (v, Y ), (v, Z u ), (v, Z¯ u ) .. 7 −7−. r≡2. (mod 3). r≡1. (mod 3). r≡0. (mod 3).
(11) z. z. x. z. x. x. y. r ≡ 2 (mod 3). y. r ≡ 1 (mod 3). y. r ≡ 0 (mod 3). 図 6: Wr (v). 証明は 2 次元のものとほぼ同じように行える。通信に遅延があった場合も異なる通信パス同士が交わ らないことも同様である。ただし、この B, D を用いるとき、最大通信パス長が 4/3∆(G) となる。D を ラウンドによって変更する等の変更を加えると、これを 11/9∆(G) まで短縮出来るが、これよりも短い パス長をもつブロードキャストが存在するかどうかは分かっていない。. 謝辞 多くの有益な助言をくださった Joseph Peters 氏に深く感謝いたします。. 参考文献 [1] Joseph G. Peters and Michel Syska, Circuit switched Broadcasting in Torus Networks IEEE Transactions on Parallel and Distributed Systems 7 (1996), 246–255 [2] Andrew Vince Digit tiling of Euclidean space Directions in mathematical quasi-crystals, 329–370, CRM Monogr. Ser., 13, Amer. Math. Soc., Providence, RI, (2000) [3] Takahiko Fujita, Shunji Ito, and Syoiti Ninomiya The generalized van der Corput sequence and its application to numerial integrations, Monte Carlo Methods and Applications,Vol8・ No2,2002,149-158. 8 −8−.
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図
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