医療・介護の専門家のアクセシビリティ向上
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(2) Vol.2016-AAC-1 No.13 2016/7/30. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. タ [2]」は,ケアの計画書を表示し,バイタル情報,身体計. ことができていないケースなど,日常的にいろいろな問題. 測情報,介護記録内容などが,ほとんど選択画面からの入. がある.しかし,看護師は時間に追われ,余裕のないスケ. 力で記録できる.「すぐろく Tablet[3]」も,同様のものが. ジュールの中で働いているため,自分自身のコミュニケー. 記録でき, 「記録→確認→共有」がどこにいてもできる.し. ション能力を知る機会はほとんどない.. かし依然として気づきを記録する困難さの解決には至って. そこで,町島 [5] は,情報技術を利用し,看護師が現場で. いない.タブレット型端末での文字入力に慣れていないス. の業務をこなしながら,他者とのコミュニケーションを振. タッフも多いのが現状である.. り返り,コミュニケーション・スキルを高める方法を模索. 大島ら [1] は,気づきを文章化することが困難で,タブ レット端末の利用に抵抗がある介護スタッフや施設に対し て,ICT 機器の導入や端末での文章入力をいきなり求める. 中である.. 4. 独り立ちが早い音楽療法士の悩み. のではなく,まずは「利用者の様子から気づくべきことに. 「音楽療法士」は,国内では国家資格としては存在して. 気づくこと」そして「気づいたことを言葉にすること」か. おらず,日本音楽療法学会が認定する音楽療法士や,奈良. ら支援を始めるべきであると考える.. 市社会福祉協議会が認定する「奈良市音楽療法士」,一般. 端末への文字入力は多くの介護スタッフにとって難し. 社団法人兵庫県音楽療法士会が認定する「兵庫県音楽療法. く,面倒なことである.トランシーバーやヘッドセットを. 士」などがある.その他,特に認定を受けずに音楽療法の. 利用し,音声を入力する方法は,大きなレストランや駅,. 活動を行っている人も大勢いると推測する.. 空港など,広くて業務員同士の連絡が難しい職場で普及し. 日本音楽療法学会の認定音楽療法士になるには,長い年. ている.しかし,業務員が独り言のようにつぶやく方法や. 月をかけて,臨床経験を積むだけでなく,試験や規定の講. 入力された内容を蓄積する方法ではほとんど使われていな. 習を受けて,ようやく認定される [8].しかし,音楽療法. い.内平ら [4] は,スタッフのつぶやきを音声認識し,必. は,クライアントと 1 対 1,または 1 対多のパターンが多. 要なつぶやきは他のスタッフに自動的に伝えるシステムを. く,音楽療法士のそばで,ベテランの音楽療法士が見守る. 構築した.最近は音声入力によりスマートフォンを使う場. 機会は,ほとんどない.つまり,新人の段階から独り立ち. 面が多くなったため,独り言のようにつぶやくことへの抵. して音楽療法を実施しなければならない.. 抗感は薄れているであろう.まずは気づき,そして気づい. 筆者は,1 人の音楽療法士が,十数人の認知症患者など. たことを言葉にできるようになれば,このような音声入力. の高齢者を対象に,音楽療法を実施する場に居合わせたこ. による記録は可能なのではないかと考えている.気づきを. とが何度かある.多くの場合,高齢者のなじみがある歌を. 言語化することを促す,何らかのインタラクションをする. 歌ったり,簡単な打楽器で一緒に演奏したりしていた.な. モノがあれば,さらに有用に使えるのではないだろうか.. じみのある歌を使えば,音楽療法が成立するかと思われが. 3. 看護師のコミュニケーション・スキル. ちであるが,それはとんでもない誤解である. 以前筆者は,新人の音楽療法士が音楽療法を行う様子を. 本セッションで発表する町島 [5] は,看護師歴が長く,現. 撮影したビデオを見たことがある.クライアントである高. 在は看護師教育に関わっている.看護職(保健師,助産師,. 齢者たちが,静かなままで,音楽療法士の語りにも歌にも. 看護師,准看護士)の新規資格取得者は,平成 24 年度で. ほとんど反応しないのである.要するに,療法士とクライ. 約 5.1 万人であるが,離職者は 16.1 万人,再就職者は 14.0. アントの間が “温まった状態” ではないと,どんなに好き. 万人である.現在就業していない看護職員の離職理由は,. な歌を流しても,療法として成立しないのである.. 妊娠・出産,自分の健康状態,子育て,時間外労働が多い. クライアントとのインタラクションは,簡単なことでは. ことなど,プライベートに関わる理由が上位を占めている. ない.語りかけることを 1 つとっても,タイミング,視線,. が,それに続いて,医療事故への不安,責任の重さ,適正・. 姿勢,話す速さ,話す内容,クライアントからの応答の受. 能力への不安,同僚や上司との関係などが続く [6].. け方など,様々な要素がそろってこそ,心が通い合う会話. 看護師には,人に関心をもつことができ,人との関わり. となる.また,音楽療法の最中にも,クライアントたちは,. が好きという資質が求められ,患者さんの立場にたって言. それぞれに変化が生じている.飽きてしまう人もいれば,. 動を考えられることが必要である.また,看護は医師や薬. 歌に思い入れがあり話し出す人もいる.また歌から嫌な思. 剤師,各療法士などとチームを組んで治療を行うため,看. い出が蘇ってしまうこともありうる.そのようなクライア. 護師同士のコミュニケーションのみならず,多職種の人た. ントたちに対して,どう対応するかというところにも,音. ちとも協力できる能力も求められている [7].. 楽療法士の手腕にかかっている.. 町島 [5] によると,看護師間や医師とのコミュニケーショ. しかし,一番の問題は,音楽療法士が,自分の療法が客観. ン不足により,患者の要望が伝達されていないケースや,. 的にみて,どんな状態であり,それぞれのクライアントが. 患者に今後の看護計画や病状などを,平易な言葉で伝える. どんな心的状態であるか,気が付いているかどうかという. ⓒ 2016 Information Processing Society of Japan. 2.
(3) Vol.2016-AAC-1 No.13 2016/7/30. 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. 点である.ベテランの音楽療法士がそばについていれば,. るという.認知症患者やその介護者を情報技術を使って支. あとで一緒に振り返りながら反省し,次の音楽療法に向け. 援する研究は数多くあるが,認知症患者がその行動をする. て改善することもできるであろう.しかし,多くの場合は. 理由など,内面にまで踏み込んで,患者の立場にたった支. 音楽療法士は新人であっても一人で行い,そのまま自分の. 援が望まれる.. 療法を振り返らないまま,長年続けている. 自分の音楽療法を録画してみたところで,どれほどのこ. 6. 介護の現場への情報技術の導入. とに気が付けるものであろうか.やはりそこに,クライア. 介護施設での介護スタッフの不足は慢性的であり,情報. ントの状態を示すような情報技術の介入が必要とされる.. 技術を導入することで,スタッフの負担を減らそうという. 5. 患者の立場になってみる 看護師は「患者さんの立場にたって言動を考えられるこ とが必要である」と前述したが,患者の病状から患者の状 態をモデル化して対処できるようになるのは,難しいこと である.. 研究は数年前から数多く行われてきた.前述したタブレッ ト端末の導入もその一つであるが,認知症患者の安全を守 り,スタッフの負担を軽減するために,見守るためのカメ ラやセンサ類を施設に設置する研究も行われている. 杉原ら [12] は,グループホームに,カメラとモニタを設 置する見守り介護支援システムを導入した.事前の施設に. 町島の経験によると,看護師にはベッド回りの環境を整. 対する丁寧な説明や倫理審査委員会の承諾を得た上での. 備する役割があるが,自分ではあまり動けない患者にもか. 導入ではあるが,現場のスタッフの抵抗感が全くないわけ. かわらず,ナースコールのボタンが患者の手元から大きく. ではない.その抵抗感の理由として,杉原ら [12] は,イン. 離れていたり,かがむことが難しい患者にもかかわらず,. タビューなどをもとに,1.情報機器への不慣れ,2.プ. スリッパがベッドの下に入ったままになっていたりして. ライバシー侵害への警戒感,3.ミスを記録されること,. も,気が付かない看護師がいるという.. 4.「冷たい」介護になる恐れ,5.介護者を堕落させる. 一見,当たり前の気遣いに感じるかもしれないが,忙し. 恐れ,を挙げている.プライバシーについては,質の良い. い勤務の中,1 人 1 人の病状や不自由な点を気遣い,患者. 介護を目指す上では,ある程度必要な情報を提供してもら. がどこまで動けるか,どう困るのか,イメージすることは. わないとならない.トレードオフの関係にあると考える.. 容易ではない.気付いて整備できる人は,あたり前のこと. しかし,近年の画像認識や音声認識の技術の発展にともな. なので,あえて申し送りする必要を感じない.このように,. い,リアルタイムに画像や音声を編集して,プライバシー. できる人には当たり前の行動を,できない人に気付かせる. に関わる箇所をぼやかすことはできるようになっている.. システムの開発が望まれる.. また,Miura, et al.[13] のように,RFID (radio frequency. 聴覚障害については,たとえば感音性難聴の方の聴こえ. identifier) という,施設利用者の ID 情報を埋め込むタグ. 方を体験できるビデオ [9] が作成されている.本セッショ. をスリッパに取り付けることで,利用者の位置を確認でき. ンで発表する中山ら [10] は,患者の聴覚特性に応じた話し. るシステムもある.このような技術をうまく活かし,プラ. 方を訓練するためのシステムを提案する.自分の話した音. イバシーの問題を解決する見守り介護支援システムが今後. 声を,ある聴覚特性をもつ人への聴こえ方に変換すること. も開発されてくると考える.本セッションでも,杉原 [14]. で,自分の発話が,その聴覚特性をもつ人へどのように聞. が,介護を支援する技術の導入に関する問題について議論. こえているのか,予想できるというものである.. する.. 「色のシミュレータ [11]」は,色覚特性をもつ人の見え. また,安田ら [15] はセンサ類やカメラを張り巡らせるの. 方をシミュレーションするアプリケーションである.色覚. ではなく,飼い犬に ICT 機器をもたせる方法を提案してい. のタイプに応じて,動画像や写真画像をリアルタイムに変. る.ある音が鳴ると,認知症の家族のもとへ駆けつけるよ. 換して示す.. うにトレーニングしておくことで,外出先からでも,犬の. またこれまで,認知症患者の行動・心理症状(BPSD)と. 背中に取り付けたカメラを通して,様子を確認することが. よばれる数々の症状について,患者のまわりの人々は,困っ. できる.犬に物を持たせる負担があるため,小型犬である. た行動として捉えるばかりであった.しかし最近では,当. と,一定の時間しか利用できないが,安価に見守りができ. 事者として,認知機能の低下とともに困ることや感じてい. るシステムといえる.. ることを発信する認知症患者が増えてきた.認知症専門医 や認知症ケア専門士などは,数多くの認知症患者を診てき. 7. おわりに. た経験や患者に寄り添う介護に努めてきた経験から,患者. 本稿では,狭い範囲であるものの,筆者の周辺でみえて. の立場にたって,行動・心理症状の理由を推測した上で適. きた「医療・介護の専門家のアクセシビリティ」に相当す. 切な対処をしている.一般の介護をする家族にも,知識と. る課題や事例を示した.今後,企画するときには,一般募. して伝え,家族の対処が変わることで患者の症状も緩和す. 集も行う予定であり,多くの方に発表してほしいと考えて. ⓒ 2016 Information Processing Society of Japan. 3.
(4) 情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report. Vol.2016-AAC-1 No.13 2016/7/30. いる.特に,アクセシビリティ研究会の特徴でもある,当 事者,つまり医療・介護などの専門家による研究発表を期 待している. 謝辞 本研究は JSPS 科研費 15H02883 の助成を受けた ものである. 参考文献 [1]. [2] [3] [4]. [5]. [6]. [7] [8] [9] [10]. [11]. [12]. [13]. [14]. [15]. 大島千佳,石井弓子,町島希美絵,阿部ひとみ,細井尚 人,中山功一:デイケア利用者の個々の特性に合わせて 作業を個人化し達成感をもたらす作業プログラム実施方 法の伝授過程,情報処理学会第 1 回アクセシビリティ研 究会,2016 年 7 月 30 日発表予定. 介護トータルシステム「寿」 :ケアプラン・介護記録システ ム「ケアスタ」 ,http://fukushi.soft-service.co.jp/mobile/ ワ イ ズ マ ン:す ぐ ろ く Tablet, http://www.wiseman.co.jp/welfare/products/suguroku.html 内平直志他: 「つぶやき」を生かして医療・介護サービス を革新,問題解決型サービス科学研究開発プログラムプ ロジェクト,特集 1 (2013). 町島希美絵,大島千佳,中山功一:看護師のコミュニケー ション・スキル向上を目的としたリフレクションを促す 手法に向けて,情報処理学会第 1 回アクセシビリティ研 究会,2016 年 7 月 30 日発表予定. 厚生労働省:第 1 回看護職員需給見通しに関する検討会, 平成 26 年 12 月 1 日,http://www.mhlw.go.jp/file/05Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000072895.pdf 川嶋みどり(監) :看護師になるには,ぺりかん社 (2014). 日 本 音 楽 療 法 学 会:音 楽 療 法 士 へ の 道 , http://www.jmta.jp/qa/ 8bit news:こんな風に聞こえていると再現,感音難聴の 聞こえ方,http://8bitnews.org/?p=7149 中山功一,谷口聖人,町島希美絵他:患者の聴覚特性に応 じた話し方の訓練システムの研究開発,情報処理学会第 1 回アクセシビリティ研究会,2016 年 7 月 30 日発表予定. Asada, K.: 色のシミュレータ,iTunes アプリケーション, https://itunes.apple.com/jp/app/senoshimyureta/ id389310222?mt=8 杉原太郎, 藤波努, 高塚亮三:グループホームにおける 認知症高齢者の見守りを支援するカメラシステム開発およ び導入に伴う問題,社会技術研究論文集,Vol.7, pp.54-64 (2010). Miura, M., Ito, S., Takatsuka, R., et al.: An Empirical Study of an RFID Mat Sensor System in a Group Home, Journal of Networks, Vol.4(2), pp. 133-139 (2009). 杉原太郎:アクション・リサーチによるケア支援技術の ユーザ行動に関する問題の深耕,情報処理学会第 1 回ア クセシビリティ研究会,2016 年 7 月 30 日発表予定. 安田清(代表):認知症支援犬を育てるホームページ, http://hojoken.grupo.jp/. ⓒ 2016 Information Processing Society of Japan. 4.
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URL http://hdl.handle.net/2297/15431.. 医博甲第1324号 平成10年6月30日
学位授与番号 学位授与年月日 氏名 学位論文題目. 医博甲第1367号
金沢大学学際科学実験センター アイソトープ総合研究施設 千葉大学大学院医学研究院
東京大学 大学院情報理工学系研究科 数理情報学専攻. [email protected]
⑹外国の⼤学その他の外国の学校(その教育研究活動等の総合的な状況について、当該外国の政府又は関
東北大学大学院医学系研究科の運動学分野門間陽樹講師、早稲田大学の川上
東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻 教授 赤司泰義 委員 早稲田大学 政治経済学術院 教授 有村俊秀 委員.. 公益財団法人
話題提供者: 河﨑佳子 神戸大学大学院 人間発達環境学研究科 話題提供者: 酒井邦嘉# 東京大学大学院 総合文化研究科 話題提供者: 武居渡 金沢大学