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学生の社会学的想像力を刺激する教育プログラムの試み

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学生の社会学的想像力を刺激する教育プログラムの試み

―社会調査教育におけるエラボレーションの活用―

The Trial of an Educational Program for Stimulating Sociological Imagination:practical use of ‘Elaboration’ in social research teaching

西 浦 功 NISHIURA Isao

In recent years, the following points are regarded as questionable in social research education. First, students' sociological imagination is low and the psychology principle tendency has become strong. Second, so instruction of making questionnaire to student is difficult.

In this paper, because coping with this subject, the example of practice of the educational program which utilized ‘Elaboration’ was introduced as an educational program for raising a student's sociological imagination.

The point that a student can be conscious of population being constituted by various group is the strong point of this program. On the other hand, in order to develop this program effectively, the capability to utilize a model and to interpret a social phenomenon is needed strongly.

Development of the educational program for raising model construction capability is a future subject.

はじめに 今年度から札幌大谷大学社会学部の社会調査教育が始まった。社会調 査を通じて問題発見・分析能力を学生達に習得させるため,社会調査論 を講義する「社会調査Ⅰ・Ⅱ」と,修得した調査技術を実践する「フィ ールドワークⅠ・Ⅱ」が,それぞれ通年展開で2 年次学生に開講されて いる。本学の社会調査教育を今後さらに発展させるための手掛かりとし て,この一年を振り返っての教育内容の見直しと反省,および来年度に

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2 向けての展望について,この機会にまとめておきたい。 今年度の社会調査教育において特に考慮した点のひとつは,「学生の社 会学的想像力の刺激」である。以下,質問紙調査及び聴取調査それぞれ における教育の実践例を紹介しながら,社会学的想像力を刺激する社会 調査教育の展開方法について考察を深めたい。 1 社会調査教育をめぐる問題の所在 1-1 カリキュラム構成上の問題 2004 年度に,社会調査士資格認定機構による社会調査士資格の認定制 度が始まった(その後2009 年度より一般社団法人社会調査協会に移行)。 2012 年度末現在では,社会調査士資格に参加する大学数は 191 校に達 し,毎年3,000 人近くの資格認定者を輩出するに至っている。その一方, 国家資格のように,資格取得を以って当該分野の専門職に就職するほど 資格制度が成熟しているとは言い難く,今後同資格がどの程度認知・評 価されるかについてはまだまだ流動的なところがある。この点を考慮す ると,当該資格並びに社会調査教育を大学教育の中にどのように位置づ けるかという点が大きな課題にならざるを得ない。言い換えれば,「専門 教育」「職業教育」「教養教育」「研究者養成」「市民教育」等様々な選択 肢の中で,どれを重視しつつ社会調査教育を形作るかということである (中山 2008)。 札幌大谷大学社会学部の場合は,地域社会で活躍する人材の育成を教 育理念に掲げている。それゆえに「職業教育」ならびに「市民教育」を 重視しつつ,地域社会の課題発見及び分析能力育成を重視した社会調査 教育が求められる,といった具合である。さらに,こうした前提に沿っ て,各受講生に対してどのような到達目標を設定するかという点が大き な課題となる。場合によっては,研究者養成を前提とする従来の大学教 育とは異なる方向性が求められよう。

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3 全国の社会学系学部・学科では,社会調査論を2 年次に,社会調査実 習を3 年次に開講するという社会調査教育カリキュラムが多くみうけら れる。その理由はいくつか考えられるが,質問紙を作成する過程におい ては社会科学に関する幅広い知識が必要とされるため(西澤,2009:81), 3 年次に調査実習を行うほうが高い成果が見込めるといった点が,その 大きな理由のひとつであろう。 しかし,様々な事情からこのようなカリキュラム設定が難しい場合も 多い。例えば本学の場合,就職活動に向けての準備のひとつとして,フ ィールドで調査を行うゼミ科目「課題研究」を3 年次から実施するカリ キュラム構成をとり,それに間に合うよう学生達に調査技術を習得させ なければならない事情を抱える。さらに,本学ではカリキュラムの特色 のひとつに社会人基礎力の強化を謳っているため,英語系科目,日本語 表現法科目,キャリア教育科目,情報処理科目等を,1・2年次履修科 目として広く展開する。このような過密なカリキュラム構成のため,社 会調査系の講義科目及び実習科目は全て 2 年次に展開せざるを得ない。 このようなカリキュラム構成上の制約は,社会人基礎力の強化を意識し なければならない昨今の大学事情の中で,他大学にも少なからず見受け られる傾向ではないかと思われる。 このような特徴を持つ大学では,基礎的学習能力については上記カリ キュラムによる効果が見込める一方,社会調査実習前に人文・社会科学 的な教養が十分積み重ねられない事情を抱えざるを得ない。それゆえに, 上記のような知識・教養が不十分なために生じうる社会調査教育上の諸 問題を特定し,その前提をふまえた上でより効果的な教育プログラムを 構築する必要がある。以下この点について,近年の社会調査教育におけ る識者の発言を取り上げながら,問題の所在を具体的に掘り下げてみた い。

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4 1-2 現代の学生気質と教育的配慮 近年,日本社会学会では 2006(平成 18)年の学会大会(於:立命館大 学)で社会学教育についてのシンポジウム(「岐路に立つ社会学教育」) が開催されたほか,学会誌『社会学評論』58 巻 4 号においても社会学教 育の特集(「社会学教育の現代的変容」)が組まれ,社会学教育に関する 議論が積み重ねられている。その中で特に目立つ論点のひとつが,現代 の学生気質とそれに合った教育のあり方に関する議論である。 現在の学生気質を語る上で,多くの識者から示されるキーワードが, 「消費者(的性向)」並びに「心理学主義(的性向)」である。 例えば,奥村(2008)は社会学教育に関する質問紙調査の結果から,社 会学を専攻する学生達が社会学という知の「消費者」に留まっている傾 向を指摘する(1)。また西澤(2009)は,自身の社会調査教育に関する報告 の中で,学生たちが消費者であること以外の自己を想像し難いという問 題点を指摘する。このように,学生自身が主体的に考察・発信すること や,自身の立場を超えて想像力を働かせることへの不得手さが,「消費者 (的性向)」という言葉に象徴されている。 さらに片桐(2008)の社会学教育に関する論考の中では,「実感主義化, 個人主義化,私生活主義化」の過度に進む現代社会を象徴するキーワー ドとして,「心理学主義」というキーワードが用いられている。また西澤 晃彦はこの語を用いて,自身の担当学生が「心理学主義的に切り詰めら れており,同時にその自己像に合わせて他者像もまた矮小化されている (西澤 2009:78)」様子を指摘する。先の消費者的性向に関する指摘と重 なるが,社会に対する想像力がごく狭い範囲に限定されてしまうことへ の問題意識が,この「心理学主義」という用語に現れている。彼らが指 摘するように,様々な現象を社会全体のしくみとのかかわりから理解す ることが社会調査を進める上で大事なポイントの一つであり,このよう な態度をいかに学生に身につけさせるかという点が,我々が社会調査教

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5 育の各種プログラムを検討・作成する上において,意識されるべき目標 のひとつであろう。 2 本学における社会調査教育の実践と振り返り 他人や社会に対する想像力に不安のある受講生達を前提とした場合, 我々はどのような社会調査教育を構築していくべきなのであろうか。こ こではまず今年の社会調査実習の概要を紹介し,次に量的・質的調査に おける演習例を紹介しながら,今年度の成果や今後に向けての課題につ いて言及したい。 2-1 社会調査科目の実施概要 先に述べたように,本学における社会調査系科目は,社会調査論を講 義する「社会調査(Ⅰ・Ⅱ)」と,社会調査の実習を行う「フィールドワ ーク(Ⅰ・Ⅱ)」である。両科目とも 2 年次の前後期に位置づけられ, この1年間で質問紙調査と聴取調査両方の調査法の習得と実践を全て完 了するカリキュラム構成になっている。 このうちフィールドワークⅠ・Ⅱにおいては,概ね以下のような内容 で調査を実施した。まず今年度の調査対象として設定したのは,円山動 物園ならびに札幌市の2つのコミュニティFM 局(さっぽろ村ラジオ・ 三角山放送局)である。「地域で活躍する人材を育成する」という我々の 教育理念をふまえ,地域の様々な機関を調査対象として問題発見・分析 を行いつつ,地域コミュニティへの理解を深めたいという趣旨が,これ らを調査対象とした理由のひとつである。 本年度の受講生44 名は,「動物園クラス」と「コミュニティ FM クラ ス」に二分し,各クラス毎に2 名の教員を配置して指導するという教員 体制で調査・分析を実施した。 前期に実施した質問紙調査については,①地域社会に対する理解を深

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6 めるという調査目的,および②なるべく学生が考察しやすい調査対象者 の設定という2点を考慮して,『若者の余暇活動と地域社会に関する意識 調査』を調査テーマに設定した。ここでの「余暇活動」とは,動物園へ の入園やラジオ聴取の経験を両方包含するために設定したカテゴリーで ある。若者が余暇をどのように過ごすかという点を出発点として,動物 園やラジオとの接触の有無,「(地域)社会」をどの程度意識化している か等の点について理解や考察を深めることを調査目的とした。完成した 調査票は,7~9月に札幌圏の複数の大学・高校の学生生徒を対象とし て配布,回収し分析を実施した。 一方,後期には動物園並びにコミュニティFM 局のスタッフを対象と した聴取調査を実施した。先述の質問紙調査が動物園・コミュニティFM の消費者側である若者を対象としたため,生産者側である動物園・コミ ュニティFM 局スタッフへの聴取調査を通じて,学生達に動物園及びコ ミュニティFM に対するより広い視野を持たせることを意図したもので ある。 調査対象者の人数設定については,半年で聴取調査を完了するという 過密日程と各クラス11~12名という規模を考慮し,各クラス毎2名 ずつ,動物園スタッフ4名,コミュニティFM スタッフ4名の計8名に 絞らざるを得なかった。また,スタッフ間の立場の相違によって得られ る情報が異なることを考慮し,各調査対象機関においてライン職とスタ ッフ職が両方含まれるように調査対象者を選定した。その結果,動物園 については事務職員2名+飼育員2名,コミュニティFM の2局につい ては,各局の代表者とパーソナリティにそれぞれ聴取を行うという組み 合わせになった。各対象者に対して,12月上旬に一時間半ほどの聴取 調査を実施し,テープ起こしした原稿をもとに,組織経営の分析の際活 用される SWOT 分析に基づいて情報整理を行い,各調査対象者から見 える動物園・コミュニティFM の特徴を明らかにした。

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7 先述したように,消費者的性向をもつ学生達に対し,調査への導入を 容易にし,且つ社会の多様さへの気づきを促すという狙いが,高校生・ 大学生への質問紙調査から現場への聴取調査というスケジュールに反映 されている。しかしもちろん,このような構成のみで課題が解決するわ けではない。次に質問紙調査並びに聴取調査の教育実践例の一端を紹介 しながら,社会の多様さを学生達に理解させるための教育方法論につい て検討を進めてゆきたい。 2-2 アンケート調査分析における「エラボレーション」の活用 2-2-1 エラボレーションとは何か 1-2 節で述べたように,社会調査教育における重要なポイントのひと つは,「様々な現象を社会全体のしくみとのかかわりから考えさせること」 ことにある。 この点に関連して,西澤晃彦は自身の教育実践例を以下のように紹介 する。 往々にして学生たちは,「外交的な人ほど友人が多い」であるとか「集 団主義的な人ほど周りの目を意識しやすい」などといった心理学主 義的に閉じていて独立変数と従属変数が密着したものを(仮説とし て)もってくるので,「そもそもどういった人々が外交的になりやす いのか」「集団主義者は社会のどこにいるものなのか」などと問いか ける。やり過ぎると誘導になるが,もう少し遠いところにある独立 変数をいくつか示唆して考えてもらう。(西澤 2009:79,カッコ内 筆者) 山口・中野・川口・今林(2013)も同様な問題点を指摘し,「(社会学的) 問いのたて方」に苦労する学生達に対して,方法論的個人主義及び方法

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8 論的集団主義的な思考方法を助言する等の指導例を紹介している。 このように,質問内容を学生達に検討させる際には「社会学的思考」 を本人たちに絶えず意識させる促しが必要である。しかし,2年次学生 に対し過密日程で社会調査を実施させるという制約の中で,上記の指導 を徹底することは容易ではない。結果として,担当教員が質問紙にかな り手を加えざるを得なかった点が,今年度の質問紙調査に関する反省点 の一つである(2) 質問紙作成の際にこの種の配慮が十分できなかった分,調査結果の解 釈において意識して取り組んだことが,エラボレーションの活用を通じ た分析結果の考察である。以下詳しく内容を解説したい。 「エラボレーション(精密化)」とは,変数Aと変数Bの関係について 理解を深めるため,両変数の間に統制変数(テスト変数)を導入して, 変数Aと変数Bとの関係を再解釈する分析手法である。ストゥーファー が第2 次世界大戦中に実施したアメリカ陸軍調査の結果を再解釈するた めに,ラザースフェルドとケンドールが提案して用いたのが最初である (Stouffer1949-1950,Kendall and Lazarsfeld1950,Babbie2001=2005)。 2 変数間で何らかの経験的な関係が観測された際に,統制変数を導入し てその効果の有無を確認するのがラザースフェルドらの手法であるが, 彼らはそこで明らかとなる関係の質を「反復」「説明」「解釈」「特定」の 4つの基本モデルに整理する。それぞれ,統制変数がどんな値でも2 変 数間の関係が変わらない場合(反復),統制変数の導入によって 2 変数 間の関係が誤りであることが明らかになる場合(説明),統制変数が 2 変数間の因果を媒介する関係にある場合(解釈),2 変数間の関係が統制 変数が特定の値をとる時に限られる場合(特定)を指す。 一方でローゼンバーグは,2変数間に何らかの関係が見出せる場合の みならず,2 変数間に関連が存在しない場合も「隠された関係」を見出 す手掛かりとしてエラボレーションを積極的に用いるべきであると主張

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9 する(Rosenberg1968)。例えば,本人の社会階層とボランティア活動へ の参加との間の一見「疑似無相関」な関係は,上位階層に親和的なボラ ンティア行為と下位階層に親和的なボランティア行為が合成された結果 として解釈可能であると指摘する鈴木(2010)の例は,ローゼンバーグ的 なアプローチの具体例のひとつに挙げられる。 このエラボレーションという分析手法は,社会調査法の解説書のなか でよく見かける分析手法のひとつである。しかし各種テキストでは架空 例に基づく解説が多いこともあり(3),せっかく社会調査法の講義でエラ ボレーションを取り上げても,当該分析の有用性や効果が学生達に伝わ りにくいことを,筆者は常々課題に感じていた。先行研究からエラボレ ーションの実践例を探しても,上記の鈴木(2010)以外の分析例はごく限 られているのが実情である(最近の例では伊藤 2009,津島 2010 など)。 もし,自分達で行ったアンケート調査の分析の中から同種の構造を見 出せれば,学生たちは分析手法のもつ意味を体で実感することができる。 以下,学生へのエラボレーションの解説のために,筆者が調査結果に基 づいて活用した分析例を次に紹介したい。 2-2-2 分析例(1):居住年数と入園行動との関連 先述したような質問紙調査の調査テーマから,動物園・コミュニティ FMのそれぞれに対して,どのような特徴を持つ回答者が多く接触を持 つかという点に注目して,我々は様々なクロス集計を実施した。具体的 には,回答を得られた大学生及び高校生321 名を対象として,最近 3 年 間で一度でも動物園に行ったことのある群/ない群,並びに毎月定期的 に1 度以上ラジオを聴く群/聴かない群に大きく二分し,様々な質問項 目に対する両群の回答傾向を比較した(4) その分析例のひとつとして,現居住地での居住年数を,動物園入園あ り群/なし群で比較した結果を紹介する。比較の簡便化のため,居住年

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10 数については6 つの選択肢を「10 年未満」「10 年以上」の二群に統合し (5),あり群/なし群の回答傾向を比較した。 さらに,回答者の居住地(札幌市内/市外)を統制変数として,エラ ボレーションを実施したのが以下の表である(6) 表1-1 だけをみると,居住年数が長い回答者ほど動物園に出かける傾 向が強いという情報のみ与えられるため,分析者による不適切な事後解 釈が行われる可能性が高い。今回の調査では「地域コミュニティと若者」 というテーマを掲げているためなおのこと,あたかも地域との関わりの 濃さが入園行動と密接なかかわりがあるかのような先入観のみで解釈さ れるおそれがある。実際にそのような可能性があることは必ずしも否定 しないが,ここで解釈を終えてしまう事は適切でない。 〔表1-1 入園頻度と居住期間の関係〕 〔表1-2 居住地別にみた入園頻度と居住期間の関係〕 入園の有無 10年未満 10年以上 合計 入園なし群 48.1% 51.9% 100.0% (74) (80) (154) 入園あり群 35.8% 64.2% 100.0% (59) (106) (165) 合計 41.7% 58.3% 100.0% (実数) (133) (186) (319) 居住期間 入園の有無 10年未満 10年以上 合計 入園の有無 10年未満 10年以上 合計 入園なし群 53.8% 46.2% 100.0% 入園なし群 28.6% 71.4% 100.0% (64) (55) (119) (10) (25) (35) 入園あり群 37.5% 62.5% 100.0% 入園あり群 29.7% 70.3% 100.0% (48) (80) (128) (11) (26) (37) 合計 45.3% 54.7% 100.0% 合計 29.2% 70.8% 100.0% (実数) (112) (135) (247) (実数) (21) (51) (72) 居住期間 札幌市内に住む人 n=247 札幌市外に住む人 n=72 居住期間

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11 そこで「現在の居住地」を統制変数に加えてエラボレーションを実施 すると,居住年数と入園行動の関連は札幌市外居住者にはほとんど見ら れず,札幌市内居住者のみに色濃く表れることがわかる(表 1-2)。これを ふまえると,幼少期から札幌市で過ごしていれば,自然と円山動物園へ 行く機会も多く,それが現在の入園行動にも影響を及ぼしているという 背景を読み解くことができるし,より自然な解釈といえる。 タネを明かしてしまえば,ごく常識的な話にすぎない。しかし「所与 のテーマに沿って特定変数間の関連を示しさえすれば良い(それが社会 調査の分析である)」との思い込みが学生側にあれば,上記のような事後 解釈の罠にはまってしまう。データ分析とは単に関連の有無を確認する という作業ではなく,より適切な解釈に向けて考察を深める作業である。 またそのためには,様々な回答者層が存在することへの想像力を高める ことが大切である。これらを学生達に解説するための具体例として,こ の分析例を活用した次第である。 上記と合わせて解説の際に学生達に強調したことは,ただクロス表を 見て「常識的な結果に過ぎない」と思うことと,「事実を正しく伝えるた めに意識してクロス表を作成すること」との間には大きな違いがあると いう点である。筋の通った解釈を大勢の人々の前に示すためには,分析 という形でデータを体系的に整理するすべを知らなければならないから である。エラボレーションはその一例に過ぎないが,様々な分析手法を 自覚して使いこなせることで,初めてそれが可能となる。この点も,社 会調査教育の際に強調すべきポイントのひとつと思われる。 2-2-3 分析例(2):大学生群/高校生群による関連比較 前節の分析例は,エラボレーションの解説用に示した例のひとつに過 ぎないが,学生達の社会学的想像力を刺激するため,もう少し「分析す ることの意味」への気づきを促す教育プログラムを体系化できないだろ

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12 うかと考え,次に述べるような演習を行った。 今回の質問紙調査は,大学生と高校生の双方を対象とした。「若者」と 一口に言っても様々な世代が存在し,世代の違いによって回答者本人の 行動や意識が異なりうることを,学生達に実感してもらおうと考えたか らである。 前節でも述べたように,現在の大学生は少なからず心理学主義化がす すみ,彼らに「自分と違う」他者の存在を想像させることは必ずしも容 易ではない。この種の問題を解決するための一つの対応策として,アン ケート調査の中で意識的に異なる対象者群にスポットを当て,両群で回 答傾向が異なる理由を解釈させる仕組みを用意することは試されてよい。 しかし,日常生活であまり接触のない人々を調査対象とするのは学生に とって敷居が高い。そこで考えたのが,高校生群/大学生群という2群 比較である。ついこの間まで高校生だった彼らであれば高校生の行動・ 態度を予測・解釈することは比較的容易であり,また現在大学生である 自身への振り返りの機会を与える点でも,高校生/大学生比較は有効で ある。こうした点を考慮して,データ分析演習の際には,回答者の世代 (高校生/大学生)を統制変数として,様々な変数間関連が高校生群/ 大学生群でどう変化するかについて分析を行った。その中で特に興味深 い結果が得られたのが,「携帯・パソコンを通じた友人作り」に関する解 釈である。 片桐新自は,2007 年度に大学生調査を実施した際の設問のひとつに, 「面識のない人と携帯電話やパソコンのメールだけで友だちになること はできますか(片桐 2009:194)」という質問を設けている。我々の質問 紙調査でコミュニティFMというメディアを取り上げた経緯もあり,若 者のメディア利用にかんする質問群のひとつとして,上記質問を設けた。 本調査の基本的分析方針はラジオ聴取群/非聴取群の特徴の比較であ るため,両群で「面識のない人と携帯・パソコンでの接触だけで友人と

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13 なれるかどうか」の回答傾向の差異を比較した。さらに,大学生・高校 生を統制変数としたエラボレーションを実施した(表 2-1,表 2-2)。 〔表2-1 ラジオ聴取と携帯・パソコンによる友人づくりの関係〕 〔表2-2 世代別にみたラジオ聴取と携帯・パソコンによる友人づくりの関係〕 回答者全体で両変数の関連をみると,ラジオ聴取群のほうが「友人に なれる」という回答が4ポイント程多いだけで,両群の間に目立った差 異は見られない。 しかし,大学生群/高校生群に分けて同様のクロス集計をすると,高 校生群ではラジオ聴取者群の「(面識のない人と携帯・パソコンで)友人 になれる」という回答が6割近くに達し,非聴取群との差異が際立った。 一方で大学生群を見ると,回答者全体の比較結果とは逆に,ラジオ非聴 取群のほうが「友人になれる」回答が多くみられた。高校生群と大学生 群とで全く逆の関連が見られたのである。そこで,もしこの結果が標本 ラジオ聴取度 友人にできる 友人にできない 合計 聴取群 44.1% 55.9% 100.0% (63) (80) (143) 非聴取群 39.8% 60.2% 100.0% (70) (106) (176) 合計 41.7% 58.3% 100.0% (実数) (133) (186) (319) 携帯・パソコンによる友人づくり ラジオ聴取度 できる できない 合計 ラジオ聴取度 できる できない 合計 聴取群 38.5% 61.5% 100.0% 聴取群 59.0% 41.0% 100.0% (40) (64) (104) (23) (16) (39) 非聴取群 42.3% 57.7% 100.0% 非聴取群 30.8% 69.2% 100.0% (58) (79) (137) (12) (27) (39) 合計 40.7% 59.3% 100.0% 合計 44.9% 55.1% 100.0% (実数) (98) (143) (241) (実数) (35) (43) (78) 大学生 n=241 高校生 n=78 携帯・パソコンによる友人づくり 携帯・パソコンによる友人づくり

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14 誤差及び非標本誤差によるものでなかったと仮定したら,なぜこのよう な分析結果が得られたか,その理由を考察させる作業を学生達に課した。 各グループの検討の結果出された代表的な解答例を表3に示した。ま ず,学生によっては例1にみられるように「ラジオ聴取/非聴取」とい う独立変数を忘れてしまう場合があるので,その際は,「もし例1のよう な解釈が正しければ,ラジオ聴取/非聴取に関わらず高校生の「友人に なれる」回答割合が多いはずである」ことを図で示しつつ解説する必要 がある。 〔表3 エラボレーションの結果に対する学生の解釈例〕 この例に限らず,三変数以上が関連する社会現象の考察をさせると, 自分が思い描いた特定場面に限定して解釈を終える学生が少なくない。 そのため,演習の中では学生達に対して「場合分け」を意識するように 指導した。上記の例の場合,「友人になれる/なれない」という意識変数 が従属変数であるのに対し,世代(大学生/高校生)とラジオ聴取(聴 く/聴かない)という,二つの独立変数がある。そのため,もし学生達 が高校生にのみ焦点を絞った回答をするのであれば,大学生の場合はど うかを想像させる。また「ラジオを聴く高校生」しか注目していないよ うであれば,「ラジオを聴かない」高校生はなぜ面識のない人を友人にす 例1:高校生は大学生よりもSNSの使用に慣れ,非対面の人と友人になること に警戒心が少ない。 例2:高校生は,大学生と比較してラジオをスマホで聴く傾向がある。つまり, ラジオを聴く高校生は,同時にスマホのヘビーユーザーである可能性が高く, それゆえにスマホを通じた非対面の関係づくりに抵抗がない。 例3:友人作りに興味を持つ高校生は,話題作りのためラジオもよく聴くし,出 会いの場を求めてSNSを積極的に活用する。結果として友人の数が増える。

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15 ることに抵抗を感じるのかを改めて考えさせるというように,異なる条 件下での説明図式を考えさせることが,ここで言う「場合分け」である。 言い換えれば,回答者層が異なれば全く異なる説明モデルが成立する可 能性があるため,様々なケースへの想像力を働かせることが分析の際に は重要である。狭い意味での仮説検証型研究に限定されず,そこから多 様な解釈を引き出せるよう促すことが,本演習の大きなねらいである。 上記に関連してもうひとつ意識した点が,インプリケーションに基づ く検証作業である。ここで言う「インプリケーション」とは,自分の下 した解釈に基づいて新たな知見を見出す(加えて検証する)作業を指す。 例えば,上記の解釈例に沿ったインプリケーションの例を表4に示した。 〔表4 解釈からインプリケーションへ〕 例1:高校生は大学生よりもSNSの使用に慣れ,非対面の人と友人になること に警戒心が少ない。 →「高校生は大学生よりも実際に携帯やスマホをよく活用しているはずである」 例2:高校生は,大学生と比較してラジオをスマホで聴く傾向がある。つまり, ラジオを聴く高校生は,同時にスマホのヘビーユーザーである可能性が高く, それゆえにスマホを通じた非対面の関係づくりに抵抗がない。 →「ラジオを聴く高校生はそうでない場合と比較して,様々なスマホサービスを より活用する傾向がある」 例3:友人作りに興味を持つ高校生は,話題作りのためラジオもよく聴くし,出 会いの場を求めてSNSを積極的に活用するので,結果として友人の数が増え る。 →「友人・親友の多い人は,様々なSNSサービスをより多く活用しているはず である」

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16 学生から例2や例3のような解釈例が出された場合,もしスマートフ ォンや SNS の利用度を同時に尋ねていれば,上記の解釈の検証が可能 である。実際に今回の調査では,回答者のスマートフォン及び SNS の 利用度を尋ねる質問も設けたため,上記の解釈の妥当性を検証すること ができた。このような一連の作業を意識的に行うことが,分析結果の安 易な事後解釈を防ぐ上で重要な点である。 本科目では学生間の情報処理能力の差が大きく,かつ表を作成する単 純作業を嫌う学生が多かったため,学生のモチベーションの維持に大き な配慮が必要であった。こうした中で学生の集中力を持続するためには, 思考と作業の反復を意識した授業構成が求められる。与えられた情報を 丸のみせず自分の解釈のフィルターに通すという「情報リテラシー能力」 向上という面からも上記過程は重要である。それゆえに,学生自ら説明 モデルを検討する機会は,西澤(2009)らが指摘する質問文作成の場に限 定せず,データ分析の際にも積極的に設ける必要があろう。 このように,高校生/大学生といった異質な回答者群を事前に設定し て質問紙調査を行うことは,エラボレーションを通じて学生達に「社会 の多様性」への想像力を働かせるという点で,大きな効用が期待できる。 学生により深い解釈を促すため,社会調査実習においてこのような演習 教材を準備することの重要性に気づくことができたことが,今回の質問 紙調査における大きな成果であった。 社会調査分析のための統計ソフトウェアが充実している今日,分析手 法としてのエラボレーションは素朴な分析手法に思われがちである。し かし,エラボレーションは回答者層の多様性を学生に意識させる点で大 きな利点を持つ。一般的な回帰分析の場合,変数の効果が回答者全員に 対して同様な効果を持つことを前提としているため,本稿で例示したよ うに回答者層によって全く異なる効果が見込まれる場合は,交互作用項 を導入する等の特殊な操作が必要となるからである。将来的に分散分析

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17 における交互作用効果を理解させるための準備学習としても,エラボレ ーションを活用した演習はより重視されるべきである。 3 聴取調査における「対象の多様性への気づき」 前節ではエラボレーションを通した演習例を紹介したが,社会学的想 像力を喚起することは,質問紙調査のみならず聴取調査においても重要 な点である。そこでここでは後期に実施した聴取調査の演習において, 調査対象に対する想像力を促すために実施した別の演習例について報告 したい。 先述した「地域で活躍する人材を育成する」という我々の教育理念に 沿って,我々は社会調査教育の目標のひとつに「自分達の問題関心に従 って関係者の方々に何らかの提言を行う」ことを掲げている。そのうえ で,動物園やコミュニティFMの「消費者」である若者たちを対象に実 態把握を行うことは重要な作業のひとつである。しかし「消費者の声」 ばかりに耳を傾けることは,一方で「生産者」である現場スタッフの方々 の仕事への様々な思いを軽視することにもつながりかねない。こうした 点を学生に解説した上で,現場スタッフの方々の仕事への想いや志向性 を明らかにするための聴取調査を学生達に課し,実査に臨んだ。 現場で働く方々を対象とした聴取調査はいくつかの大学ですでに実践 例がある。例えば西城戸(2005)は,自分が興味のある職業について現場 の方から聴き取るという調査は他の調査テーマと比べて学生達自身で企 画立案しやすく,また将来の就職活動にも役立つため彼らのモチベーシ ョンを維持しやすいという効用を挙げている。今回の我々の調査におい ても,動物園やコミュニティFM 局で働く調査対象者達がそれぞれ有す る「仕事へのこだわり」「働くことへの魅力」をインタビュー学生達に伝 えることができたこと,それ自身が収穫であった。 それに加え,今回の聴取調査から得られた大きな収穫として,動物園

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18 やコミュニティFMが有する多様な側面を学生達に実感してもらえた点 を指摘したい。 予備知識が乏しくかつ消費者的性向の強い学生たちに動物園やコミュ ニティFM への提言を考えさせると,ともすると「多くの客を集めさえ すれば良い」という前提に立った表層的なアプローチに留まることが多 い。しかし,集客数は様々なアウトプットの一側面に過ぎない。例えば, 動物園ひとつとっても,そこには種の保存や環境教育などの様々な役割 がある。その点への気づきが学生側になければ,最初から結論の見える 表面的な調査に終わりかねない。 そこで,本年度の初回のフィールドワーク時では,まず「動物園の役 割と思われること」をなるべく多く挙げさせるグループワークを行いつ つ,動物園の持つ多様な役割を学生達に解説した。その上で,消費者側 の視点と生産者側の視点を両方把握するために,質問紙調査と聴取調査 を実施するという調査の狙いを学生達に周知した。また,現場スタッフ の方を講師に招き講演の機会を設けることで,現場に対する学生の理解 の幅を広げることを試みた。例えば動物園の講義においては,旭山動物 園が観光客を主なターゲットとする一方,円山動物園はより地域に密着 した動物園を目指し,入園者総数のみならずリピーターの増加に力を入 れている旨の解説があった。それまでの学生の発言や感想レポートから は「旭山動物園が突出して入園者数が多い」「他動物園の努力が足りない」 という声ばかりが目立っていたため,上記のような現場スタッフの方の 解説は多面的に動物園を捉えるための良い事前教育になった。 こうした事前学習をふまえて円山動物園スタッフの聴き取り調査を実 施した際に大きく浮かび上がったのが,「(民営でなく)公営の動物園」 という条件がもたらす様々な使命や課題という点であった。札幌市の運 営する動物園だからこそ,短期的利益にとらわれず「市民への還元」を 意識した運営が行われなければならない点,公営の動物園ゆえに少なか

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19 らずの職員が短期間で異動せざるを得ない点など,集客にとどまらない 様々な使命や制約条件が円山動物園に課せられていることが,関係者へ の調査結果から明らかになった。例えばこのような点で,質的研究とは 「現場の多様性」を学生達に理解してもらえるための絶好の機会となる。 この点を受講生たちにより効果的に伝えるための調査設計上の工夫を, 今後意識的に行ってゆきたい。 4 今後の課題 本稿では,目指すべき社会調査教育の目標のひとつとして,消費者的 性向の強い学生達に対して,社会の多様性を気づかせることの重要性を 指摘した。合わせて,この目標を達成するための手段のひとつとして, エラボレーションを活用した分析結果の考察を核とする演習プログラム の有効性を指摘した。最後に,調査プログラムをさらに向上するための 今後の課題として,社会調査教育に伴う「モデル構築トレーニング」の 重要性について指摘したい。 井上(2007)は,学生達が「仮説立てが不得手である」という問題の背 景について,①「問うこと」の技量の問題,②学生の日本語能力の問題, ③教え方のステップの問題という三つの課題に分けて論じ,現状の社会 調査教育において,仮説づくりのためのステップを踏んだ順序だった教 育訓練が行われていない点に根本的問題があると指摘する。 本稿のエラボレーション演習のところでも紹介したように,学生達の 解釈のレベルを高めるためには,社会現象をモデル化して考える思考が とても重要である。しかし,アメリカではLave and March(1975=1991) に代表されるようなモデル構築トレーニング用の優れたテキストがある 一方で,日本ではこの種の教材や教育プログラムがあまり充実していな い。以上の点で,井上の指摘に筆者も同感である。

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20 くトレーニングの機会を初年次教育で設けることや,社会調査の分析演 習のなかで,モデル構築の機会を意識的に設けることの重要性を指摘し たい。 また質的調査の結果を分析する際,量的調査の分析方法よりずっと自 由度が高い分,指導教員による適切な助言が求められる。その一方で, より良い概念形成のための方法論をうまく解説した頼りになるテキスト が少ないことも問題のひとつである。聴取調査やその分析が安易に行わ れることのないよう,モデル構築のための教育プログラムは,概念形成 に関するトレーニングも視野に入れることが必要であろう。 著書『社会学的想像力』の 7 章で,C.W.ミルズは人間の多様性を 把 握 し 理 解 す る こ と も 社 会 学 的 想 像 力 の ひ と つ で あ る と 指 摘 し た (Mills1959=1965)。社会の多様性への気づきを促す本稿の演習例は,求 められるべき社会学的想像力育成の第一歩にすぎない。社会を感じ取る 力を養成するためのプログラムのあり方について,今後もさらに試行錯 誤を進めてゆきたい。 [註] (1)当該調査は,日本社会学会社会学教育委員会が 2003(平成 15)年に全国 7 大学の学生を対象に実施したものである。結果として社会学教育が受講 生達におおむね好意的に評価されているという知見が得られたものの, この結果は学生たちが消費者的性向を持つことの現れではないかという 疑問も挙がったというエピソードが紹介されている(奥村 2008:434)。 (2)後日の授業評価アンケートでも,アンケートの作成にあたって教員側が 手を加え過ぎるため,自身の努力がどのように反映されたのかが分かり にくい,というコメントが受講生から寄せられている。 (3)その代表的なものとして Zaisel(1985=2005)を参照。例外として,原 (1983)では,政治的関心の有無という統制変数を導入することによって, 回答者の所属階級(労働者階級/資本家階級)と国政への満足度との関 連が異なるという分析例を紹介している。 (4)入園回数については,「最近の3年間を振り返った際,あなたはどのくら いの回数,動物園に行ったことがありますか」という質問文で尋ね,「1

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21 回」「2回」「3回以上」「一度も行ったことがない」の4択とした。一方 でラジオ聴取頻度については,「ほぼ毎日聴く」「週に数回聴く」「週に1 日程度聴く」「月に1~3回程度聴く」「ほとんど聴かない」の5択で尋 ねている。そのうえで,エラボレーションの解釈を容易にするため,あ り群/なし群の該当者数がほぼ同数になるよう選択肢を統合した。 (5)回答者本人の居住歴については,「1年未満」「1年以上2年未満」「2年 以上3年未満」「3年以上5年未満」「5年以上10年未満」「10年以上」 の6択で尋ねた。 (6)「居住年数(の変化)が回答者の動物園入園行動に影響を及ぼす」とい う説明モデルを前提とした場合,居住年数の長い群/短い群という両群 で入園ありの割合を比較する方が,本来正しい図示のしかたである。し かし,当初の予想以上に受講生間の情報処理能力の差が大きく,学生達 を混乱させない配慮が必要だったため,例えば「動物園が好きな人とそ うでない人の特徴を比較してみよう」といった安易な表現で作図を指導 せざるを得なかった。この点に関する指導方法の改善は今後の課題のひ とつとしたい。 [参考文献]

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(=佐藤郁哉訳 2005 『数字で語る 社会統計学入門』新曜社.) [謝辞] 本学のフィールドワーク調査にご協力いただきました円山動物園・さ っぽろ村ラジオ・三角山放送局の関係者の皆様及び科目担当教員の皆様 へ,この場を借りて深く御礼申し上げます。 (にしうら いさお,札幌大谷大学社会学部准教授)

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