Title
Effects of Ventilation and Pleural Effusion on Measurements of
Airway Thermal Volume and Blood Flow in Dog Lungs( 内容の
要旨(Summary) )
Author(s)
加納, 亜紀
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第993号
Issue Date
1995-09-13
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15277
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 且 加 納 亜 紀(岐阜県)
博
士(医学) 乙第 993 号 平成 7 年 9月13
日 学位規則第4条第2項該当Effects of Ventilation and P[euralEffusion on Measurements of
Airway ThermalVoLume and Blood F(owin Dog Lungs
(主査)教授 藤 原 久 義 (副査)教授 安 田 圭 吾 教授 土 肥 修 司 論 文 内 容 の 要 旨 肺水腫を定量することは,肺水腫の病態生理の理解ならびに肺水腫の治療効果の判定に有用である。現在,臨 床で最も用いられている肺水腫の定量法はt熱およびNaClを指示薬とした血管内二重指示薬希釈法(熱一電気 伝導度法)であるが,観血的操作が必要であることや装置・材料費が高価等の理由で臨床では広く利用されてい ない。最嵐Serikovらによって,気道内ガス温度変化から肺組織容積(所謂AirwayThermalVolume,以下A TV)と肺血流量(以下PBF)を測定する方法が,より非観血的で,且つ,安価な肺水腫の定量法として報告さ れた。Selingerらは,肺循環血液量を熱源,気道を熱排出口とする肺内熱伝達理論を展開してATVとPBFを推定 する方法を提唱した。即ち,本法は過換気による肺内熱交換の結果として生じる呼気ガス温度の変化から,熱エ ネルギー保存の法則を適用してATVとPBFを求める方法であるが,本法の妥当性,有用性については未だ充分に 検討されていない。 今回申請者らは,実験動物を用いて,過換気時の分時換気量および胸水が本法におけるATVとPBFの測定に及 ぼす影響について検討を加えた。 方 法 体重10.0±2.7kgの39頭の雑種成犬を対象とし,ベントパルビタール静脈麻酔,閉胸,人工呼吸下に,右頸静脈 よりスワン・ガンツカテーテルを挿入し,その先端を腹部大動脈に位置させた。気道内ガス温度を経時的にモニ ターするために,サーミスタープローブを気道内挿管チューブより挿入し,先端を門歯から約15∼20cmの位置に 固定しサーミスターリニアライザーおよびポリグラフレコーダーに接続した。また,人工呼吸器の呼気側にレス ピロメータ,を装着し,呼気ガス量の測定に用いた。約30分のBaseline観察後,以下の4群のイヌについて実験 を行なった。1)対照群(n=18):20ml/短/hの速度で生食水を右房より持続注入したが,それ以外は何も侵 襲を加えなかった。2)胸水注入群(n=7):100mlの生食水を右あるいは左胸腔内に注入した。その後,生食 水を対照群と同様に投与した。3)アロキサン肺水腫群(n=7):75Ⅲg/短のアロキサンを1分間で右房に注入 した後,生食水を対照群と同様に投与して透過性冗進型肺水腫モデルとした。4)デキストラン肺水腫群 (n=7):100ml/kgの6%dextran-70を30分間で右房に注入した後,生食水を対照群と同様に投与して血行動 態型肺水腫モデルとした。各群のイヌを種々の1回換気量に設定した後,呼吸数(観察期の10回/分から30-50 回/分)を増加させることによって過換気を起こさせ,経時的に約3分間の気道内ガス温度を記録した。その前 後で心拍出量を測定するために,右房より3%生食水を注入して熱希釈曲線を記録した。その後,直ちに開胸し, Selingerらの方法に従って湿・乾燥重量法により全肺重量,無血肺湿重量,血管外肺水分量を測定したo ATVお よびPBFは,以下のSerikovらの熱伝達理論式を用いて求めた。 ATV(L)=((VGxTl/2)/(0.693xKR))×((ToxX2-dTxX2-TGoxXl-Ⅹ3)/dT+Ⅹ2〉 PBF(L/min)=(VGx(ToxX2-dTxX2-TGoxXl-Ⅹ3))/(dTxKT) ここで,VG:分時換気量(L/min),To:初期最高呼気ガス温度,TGo:吸気ガス温度,dT:過換気前後の定常 67
状態における最高呼気ガス温度の差,Tl/2:dTに対する半減矧乱KR:血液温度とToとの比,KT:熱伝達係 数,Ⅹ1,X2,Ⅹ3は定数である。 結果および考察 1)対照群と胸水注入群においては,過換気時の分時換気量の増加とともにATVは曲線的に増加した。 2)このことから,湿・乾燥重量法による各肺組織重量とはぼ一致するATVの至通分時換気量が存在すること が推定され,全肺重量,無血肺湿重量,血管外肺水分量を反映する至通分時換気量は,それぞれ559,158,72 ml/min/kgであった。 3)胸水はATVの測定に影響を及ぼさなかった。 4)対照群と胸水注入群においては,PBFの測定に不可欠である熟伝達係数(KT)と呼気ガス温度の低下分と 分時換気量との比(dT/VG)は有意な反比例の関係にあった。そこで,呼気ガス温度の低下分と分時換気量 との比から実際のKT値の推定が可能であると考えられた。また,この両者の関係に胸水は影響を及ぼさなかっ た。 5)4群において,至通分時換気量で求めたATVと湿・乾燥重量法による各肺組織重量は有意な正相関を示し たが,デキストラン肺水腫群においてややバラツキが見られた。 6)4群において,呼気ガス温度の低下分と分時換気量との比から推定したKTを用いて求めたPBFは,熱希釈 法で測定した心拍出量と有意な正相関を示した。しかし,デキストラン肺水腫群においてややバラツキが見ら れた。 このようにデキストラン肺水腫群でのみATVやPBFの測定にバラツキが見られた。その原因として,1)デ キストラン肺水腫群は容量負荷による重篤な肺水腫状態であるため,Smallairwayの閉塞が起こり気道内の換 気面積が減少すること,また,2)熱源となる肺循環血液量が増加しているためt 熱の供給量が増加することで, 呼気ガス温度の低下分が過小評価されること等が考えられた。 結 語 以上の結果から,過換気による気道内ガス温度変化から肺組織容積(全肺重量,無血肺湿重量,血管外肺水分 量)および肺血流量を定量する方法は,比較的非観血的な肺水腫および肺血流量の定量法として有用であること が証明された。しかし,本法は比較的早期の肺水腫の定量には信憑性が高いと考えられるが,容量負荷による重 症な肺胞性肺水腫の状態では熱拡散面積の減少や熱源の増大等の要因によってその評価にややバラツキが生じる と考えられた。 論文審査の結果の要旨 申請者 加納亜紀は,過換気による気道内ガス温度の変化からの肺組織容積(肺水腫)の測定に分時換気量が 重要な決定因子であることを明らかにし,全肺重量t 無血肺湿重量および血管外肺水分量に対する至通分時換気 量を決定した。また,肺血流量の測定においては,分時換気量が熱伝達係数に影響を及ぼすことを明らかにし, 熱伝達係数の推定方法を提唱した。これらの研究成果から本法の妥当性,有用性の一部が証明されたが,重症の 肺胞性肺水腫状態ではやや信憑性に欠けることが示唆された。 この研究はt 肺水腫の病態生理および肺水腫の定量の研究に新しい知見を加え,循環器内科学,呼吸・循環生 理学の進歩に少なからず寄与するものと認める。 [主論文公表誌]
Effects of Ventilation and PleuralEffusion on Measurements of Airway ThermalVolume and Blood Flowin Dog Lungs
平成7年10月発行J.Appl.Physiol.79(4),1995.