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周産期ケアにおける助産師の手袋着用状況と個人的属性との関連

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原  著

*1東京慈恵会医科大学(The Jikei University)

*2日本赤十字看護大学(The Japanese Red Cross College of Nursing)

*3愛知県立大学大学院看護学研究科(Aichi Prefectural University Graduate School of Nursing)

2009年2月18日受付 2009年11月19日採用

周産期ケアにおける助産師の手袋着用状況と

個人的属性との関連

Relationship between individual atributes of midwives

in perinatal care and the use of gloves

抜 田 博 子(Hiroko NUKITA)

*1

谷 口 千 絵(Chie TANIGUCHI)

*2

恵美須 文 枝(Fumie EMISU)

*3 抄  録 目 的  助産師が行う周産期ケアについて,血液・体液および排泄物との接触の多い手指の感染予防策として, 手袋着用状況と個人的属性との関連を明らかにする。 対象と方法  東京都内の分娩を取り扱う病院に勤務する189名の助産師を対象とし,自記式質問紙調査を行った。 調査内容は,年齢や経験年数,院内感染対策への関心等の個人的属性と,血液および体液,排泄物を 扱う10項目の周産期ケアにおける手袋着用状況を,「必ず着用する」から「着用しない」までの4段階で回 答を求めた。分析は個人的属性,手袋着用状況を各々2群に分類し,ケアごとに個人的属性との関連を, χ2検定により分析した。 結 果  177名(回収率93.6%)から回答が得られた。助産師の手袋着用状況は,分娩第Ⅱ・Ⅲ期の直接介助で は100%,妊産婦の内診,胎盤計測・処理では98%以上が「必ず着用する」と回答していた。一方で,乳 房ケアは74.1%,新生児のオムツ交換では64.1%が「着用しない」と回答していた。個人的属性と手袋着 用状況との関連においては,ケア毎に関連する要因が異なっており,教育課程や感染に関する研修の有 無,スタンダード・プリコーションの認知度で関連が認められるケアがあった。年齢,産科以外での臨 床経験の有無は,どのケアにおいても関連が認められなかった。 結 論  明らかに血液・体液の接触を避けることができないケアでは,ほとんどの人が手袋を着用しているの に対し,血液ではない母乳や新生児の便については,手袋を着用しない人が多かった。また,血液・体 液に直接触れない場合があるケアでは必ずしも手袋を着用していなかった。  看護師,助産師各教育課程や感染に関する研修受講の有無,スタンダード・プリコーションの認知度 で着用状況と関連が認められるケア項目があり,感染対策に関する卒前および卒後教育の充実が必要で

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周産期ケアにおける助産師の手袋着用状況と個人的属性との関連 あると考えられた。

キーワード:手袋,スタンダード・プリコーション,助産師,周産期ケア,感染予防管理

Abstract Objective

In perinatal care provided by midwives, infections can spread via the hands because they often come in contact with blood, body fluids, and excrement. The present study clarified the relationship between the use of gloves and individual attributes of midwives.

Methods

Subjects were 189 midwives working at hospitals with obstetric facilities in Tokyo who completed a self-administered questionnaire survey. The questionnaire was designed to ascertain individual attributes, such as age, experience, and level of interest in preventing hospital-acquired infection, and the use of gloves in ten perinatal-care procedures with various levels of exposure to blood, body fluids, and excrement. The use of gloves was assessed in four grades, from "always" to "never". With respect to individual attributes and glove usage, the subjects were

divided into two groups, and a χ2 test was used to assess association.

Results

Responses were obtained from 177 midwives (response rate: 93.6%). With regard to the use of gloves, the pro-portion of midwives stating "always" was 100% for direct assistance during the second and third trimesters and ≥98% for vaginal examinations of pregnant women and placental measurement and procedures. The proportion stating "never" was 74.1% for breast care and 64.1% for neonatal diaper changing. As to the relationship between individual attributes and glove usage, the factors varied among the perinatal-care procedures. With some perinatal care proce-dures, glove usage associated to nursing education, midwife education, infection-related education, and recognition of the standard precautions. Age and clinical experience besides obstetrics did not correlate to use of gloves during any of the perinatal care procedures.

Conclusions

The results showed that the majority of midwives wore gloves when they could not avoid coming into contact with blood or body fluids, but that most midwives did not wear gloves when they could have come into contact with milk or neonatal feces. In addition, midwives did not necessarily wear gloves if they did not think they would come into direct contact with blood or bodily fluid.

As glove usage in some perinatal care procedures was related to relevant education, it is necessary to improve education about infection before and after graduation.

Key words: gloves, standard precaution, midwives, perinatal care, infection control

Ⅰ.緒   言

 1996年に米国病院感染対策諮問委員会(The Hos-pital Infection Control Practices Advisory Committee: HICPAC)および米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)によって提唱 されたスタンダード・プリコーション(標準予防策, 「Standard Precaution,以下SP」)は,対象の感染症の 有無にかかわらず,全ての患者に対して講じる感染予 防策で,疾患非特異的な感染対策である。日本にお いても,CDCのガイドラインを受けて導入され,1998 年には感染看護専門看護師(現:感染症看護専門看護 師)の教育が開始された。さらに2001年に誕生した感 染管理認定看護師の活動も広がり,感染管理の方法と して,SPが看護の現場にも浸透してきている。しかし, 臨床看護の現場では,SPの選択を間違ったり,誤っ た方法で実施している場合も未だ少なくない現状にあ る(森下,2004)。  周産期の母子のケアでは,対象の血液や体液,排泄 物を取り扱う機会が多い。分娩時には,子宮頚管の開 大に伴う血液分泌物や破水により羊水に汚染されたナ プキンの交換,児娩出時・胎盤の娩出に伴う出血や, 娩出時の努責により排便・排尿の処理,羊水・血液が 付着した分娩直後の児の処置など,分娩介助を行う助 産師は感染源となる可能性の高い血液・体液・排泄物 へ非常に曝露されやすい。さらに、分娩経過はある程 度の予測が可能であっても,突然の出血などへの対処 や,出産した児の処置などの緊急時の対応が求められ る。また、産後も乳汁という体液の分泌を促進するた めの乳房のケアや,児のオムツ交換など分娩介助と同

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であるが(車谷・朴・松倉他,1995)、助産師が手指の 感覚を損なうような手袋着用を嫌い、素手での分娩介 助や乳房のケアを行ってきた経緯もあり,現在も必 ずしも全てのケアの場面で手袋を着用していない実情 がある。医療用手袋は,感染制御の重要な役割を担っ ており,看護職から患者への感染防止,病院内感染の 防止,および患者のもつ病原微生物の看護職への感 染を防ぐために用いられている(佐々木・高橋,1999)。 CDCのガイドラインでは,血液や体液,分泌物,排 泄物,汚染物に触れる(可能性がある)時は,非滅菌 手袋を着用する(Julia, 1996/1996)ことを推奨してい る。妊産婦のケアにおいては,分娩前,分娩中,およ び分娩後に,医療従事者は血液や体液に曝されやすく, また母乳も体液である事から,潜在的な感染伝播源 に接する機会が多い(Susan et al, 1996/1997)。従って, 助産師にとって手袋の着用は非常に重要である。  このように,血液・体液および排泄物に曝露する機 会が多く,感染の危険性が高いと思われる助産師のケ ア実践だが,これに特化する感染防御に関する研究は 少ない。そこで,助産師が,周産期ケアを実施する際 に,血液・体液および排泄物との接触の多い手指の感 染予防策としての手袋着用の現状を把握することが必 要だと考える。また,経験や教育といった個人的属性 が手袋着用状況に関連している可能性があり,これら の関連が明らかになることで,助産師の感染予防策に 対する課題が示唆でき,周産期ケアにおける感染予防 策の強化に貢献できると考える。本研究では,助産師 が,周産期ケアを実施する際の感染予防策としての手 袋着用状況と,個人的属性との関連を明らかにするこ とを目的とした。

Ⅱ.研 究 方 法

1.調査対象  調査対象は,産科または産婦人科病棟において,入 院中の妊産褥婦および新生児のケアを実施している助 産師とした。  病院要覧2003∼2004年版(厚生省医務局医療施設 政策研究会編,2005)に掲載されている東京都内の産 科または産婦人科を標榜している132施設を掲載順に 番号をつけ,27施設を乱数表を用いて無作為に抽出し, 研究協力依頼の文書を送付した。このうち,研究協力 2.調査方法およびデータ収集期間  調査は無記名の自記式質問紙調査法とした。調査協 力に同意が得られた17施設に,調査票を送付し,代 表者を介して調査対象となる助産師へ配布し,各自回 答した調査票を添付の封筒に厳封し,代表者を介して 回収した。  データ収集期間は,2005年9月から11月であった。 3.調査内容  調査内容は,1)個人的属性,2)SPに関する認知度お よび院内感染対策への関心の程度,3)周産期ケア時の 手袋着用状況について,独自に質問紙を作成した。  尚,質問紙は,母性看護・助産学教員および,大学 院生と臨床助産師の18名にプレテストの協力を得て, ケア項目や質問の表現方法を再検討し,修正したもの を本調査に使用した。 1 )個人的属性  個人的属性として,対象者の年齢,助産師としての 経験年数,産科以外での臨床経験の有無,性感染症あ るいは血液媒介感染症患者のケア経験の有無,針刺 し・切創事故経験の有無,看護師および助産師教育課 程,感染に関する研修会受講の有無についてたずねた。 2 )SPに関する認知度,院内感染対策への関心の程度 および感染症検査結果の確認頻度  SPについての認知度については、「よく知っている」 「まあまあ知っている」「あまり知らない」「まったく知 らない」の4段階での回答を求める質問をした。院内 感染対策への関心については、「とてもある」「どちら かというとある」「どちらかというとない」「まったく ない」の4段階でたずねた。また,妊産婦に初めて関 わる前に,感染症検査結果を確認するかを,「必ず確 認する」「確認することが多い」「時々確認する」「確認 しない」の4段階でたずねた。 3 )周産期ケア時の手袋着用状況  周産期ケアとは,血液・体液および排泄物に触れ る可能性のあるケアの場面で,助産師が関わること の多いケアとして,「日本の助産婦がもつべき実践能 力と責任範囲」(日本助産師会,1999)を参考に,妊娠 期,分娩期および産褥期の母子のケアのうち体液に曝 露する可能性のある10項目とした。10項目のケア時に ついて,感染症検査が陰性である母子のケアを想定し

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周産期ケアにおける助産師の手袋着用状況と個人的属性との関連 て,手袋着用状況を「必ず着用する」「着用することが 多い」「着用することが少ない」「着用しない」の4段階 でたずねた。10項目とは,妊産褥婦の内診,パット交 換,分娩第Ⅰ期の肛門部圧迫,分娩第Ⅱ・Ⅲ期の(直 接)介助,胎盤計測・処理,分娩後の産婦の清拭,乳 房ケア・マッサージ,新生児の出生直後の処置,新生 児の第一沐浴または清拭,新生児のおむつ交換である。 4.データの分析方法  対象の個人的属性および手袋の着用状況については 記述統計を用いた。また,ケア毎の手袋着用状況を従 属変数,個人的属性のそれぞれの項目を独立変数とし て,その関連を検討した。個人的属性については,手 袋を「必ず着用する」と「着用することが多い」を着用 群、「着用することが少ない」と「着用しない」を非着 用群の従属変数とし,独立変数は,年齢を20代,30代, 40代以上の年代別で,また,助産師経験年数は1∼7 年と8年以上の2群に分けてχ2検定を行った。ただし, 人数が5未満の群がある場合には,Fisherの正確確率 法を用いた。

 分析には統計パッケージSPSS for Windows Version

13.0Jを使用し、有意水準を5%とした。 5.倫理的配慮  調査協力依頼文書には,調査への協力は任意である こと,調査票は無記名とすることを明記し,回答後は 各々厳封してもらうこととした。調査協力は回答を もって同意されたものとした。尚,本調査は東京都立 保健科学大学研究倫理審査委員会の承認を受けて,実 施した。

Ⅲ.結   果

  質 問 紙 は189部 配 布 し, 回 収 数 は177部(回 収 率 93.6%)であった。 1.個人的属性(表1)  対象の平均年齢は34.2(SD9.5)歳,助産師としての 経験年数は平均8.6(SD7.3)年であった。経験年数では, 1∼2年が40人(22.7%)であった。  産科以外での臨床経験,針刺し・切創事故の経験, 感染に関する研修会の受講は,それぞれ約半数の人が 「あり」としていた。また,感染症陽性患者のケア経 験は,170名(96.0%)が「あり」としており,対象のほ とんどが性感染症や血液媒介感染症が陽性の患者と関 わった経験を持っていた。  SPに関する認知度は,40人(22.6%)が「よく知って いる」,79人(44.6%)が「まあまあ知っている」で約7 割の人が知っている状況にあった。院内感染対策への 関心では,「とてもある」「どちらかというとある」を合 わせると154人(87.0%)の人が関心を持っていた。また, 分娩入院時など,対象と初めて関わるときに感染症検 査結果を確認するかどうかの質問では,「必ず確認す る」が146人(82.5%),「確認することが多い」が29人 (16.4%),「時々確認する」が2人(1.1%)で,「確認しな い」と回答した人は0人であった。 2.各ケア項目における手袋着用状況(表2)  調査対象とした血液・体液および排泄物を取り扱 うケア10項目のうち,妊産褥婦の内診,分娩第Ⅱ・ Ⅲ期の直接介助,胎盤計測・処理の3項目は,ほぼ 100%の人が手袋を「必ず着用する」としていた。次 いで,新生児出生直後の処置が手袋着用の多い項目 であった。一方,乳房ケアでは126人(74.1%)の人 表1 個人的属性 項目 n 年齢(歳) 34.2 9.5 177 助産師経験年数(年) 8.6 7.3 176 産科以外での臨床 経験 ありなし 89(50.3) 88(49.7) 177 感染症陽性患者の ケア経験 ありなし 1707(96.0)( 4.0)177 針刺し・切創事故 の経験 ありなし 10275(42.4)(57.6)177 教育課程(看護師) 専門学校 短大 大学 99(56.9) 48(26.6) 27(15.5) 174     (助産師) 専門学校 短大専攻科 大学選択コース 87(49.4) 68(38.6) 21(11.9) 176 感染に関する研修 への参加 ありなし 8691(48.6)(51.4)177 SPに つ い て の 認 知度1) よく知っているまあまあ知っている あまり知らない 全く知らない 40(22.6) 79(44.6) 31(17.5) 27(15.3) 177 院内感染対策への 関心 とてもあるどちらかというとある どちらかというとない 全くない 44(24.9) 110(62.1) 22(12.4) 1( 0.6) 177 *数値は平均 標準偏差,または人数(%)を示す *1)SP:スタンダードプリコーション

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が,また,新生児のオムツ交換では109人(64.1%)が 「着用しない」と回答していた。妊産褥婦のパット交換, 分娩第Ⅰ期の肛門部圧迫,分娩後の清拭,新生児の第 一沐浴・清拭の手袋着用状況は様々であった。 3.個人的属性とケア毎の手袋着用状況  個人的属性とケア毎の手袋着用状況との関連につ いて,妊産婦に対するケア項目(表3)と新生児に対す るケア項目(表4)を分けて示した。個人的属性のう ち,ほとんどの人が「あり」としていた,感染症陽性 患者のケア経験の有無,感染症検査結果の確認頻度に ついては分析対象から除外した。また,ケア項目の方 も,妊産褥婦の内診,分娩第Ⅱ・Ⅲ期の直接介助,胎 盤計測・処理の3項目は,ほぼ100%手袋着用されて いたため,分析対象から除外した。乳房ケアに関して は,非着用群が圧倒的に多いため,検定は行わず,実 数のみ表示した。 1 ) 妊産褥婦のケアについて(表3)  年齢,他科経験,感染に関する研修参加の有無,助 産師教育課程別,SPの認知度においては,この4項目 のケアとの有意な関連は認められなかった。  経験年数では,分娩後の清拭において有意差があ り,経験年数8年以上の方がそれ未満よりも着用が 少 な い 結 果 で あ っ た(χ2=5.54,p=0.01)。 針 刺 し・ 切創事故経験の有無については,妊産婦のパット交 換において,その経験のない人に着用が多かった (χ2=4.37,p=0.03)。看護師教育課程別では,妊産褥 婦のパット交換(χ2=9.10,p=0.01)と分娩第Ⅰ期の肛 門部圧迫(χ2=7.81,p=0.02),分娩後の清拭(χ2=6.70, p=0.03)で,有意な関連がみられた。  院内感染対策への関心では,分娩第Ⅰ期の肛門部圧 迫のケアにおいて,関心のある人の方がない人に比べ て着用が多かった(χ2=5.88, p=0.01)。  乳房ケアでは,着用群の4人は、他科経験があり、 SPの認知度は「知っている」群、院内感染対策への関 心は「あり」群に属していた。 2 ) 新生児のケアについて(表4)  新生児に関するケア3項目における手袋着用状況で は,年齢,経験年数,他科経験,針刺し・切創事故 経験,院内感染対策への関心において関連が認めら れなかった。関連が認められたのは,感染に関する研 修会受講のある人の方が、新生児の第一沐浴・清拭に おいて着用が多かった(χ2=4.97, p=0.02)。看護師教育 課程別,助産師教育課程別ではそれぞれ新生児の第 一沐浴・清拭(χ2=16.02, p<0.01;Fisher正確確率検 定,p<0.01),新生児のオムツ交換(χ2=10.56, p<0.01; χ2=6.80, p=0.03)で有意な関連があり,SPの認知度に おいては,新生児に関するケア3項目(出生直後の処 置、第一沐浴・清拭、オムツ交換)のすべてで有意な 関連が認められた(χ2=7.48, p<0.01; χ2=5.58, p=0.01; χ2=7.11, p<0.01)。

Ⅳ.考   察

1.個人的属性  1996年にSPが提唱されたことを考慮すると,半数 以上が経験年数1∼7年であるため,SPの考え方を含 んだ基礎教育を受けている人の方が多いと考えられる。  また,ほとんどの人が感染症陽性患者のケア経験が ケア項目[n] が多い が少ない 妊産褥婦の内診[171] 168(98.2%) 2(1.2%) 1(0.6%) 0 妊産褥婦のパット交換[170] 26(15.3%) 75(44.1%) 61(35.9%) 8(4.7%) 分娩第Ⅰ期の肛門部圧迫[170] 70(41.2%) 32(18.8%) 47(27.6%) 21(12.4%) 分娩第Ⅱ・Ⅲ期の直接介助[170] 170(100%) 0 0 0 胎盤計測・処理[171] 169(98.8%) 1(0.6%) 1(0.6%) 0 分娩後の清拭[168] 29(17.3%) 33(19.6%) 58(34.5%) 48(28.6%) 乳房ケア[170] 3( 1.8%) 1(0.6%) 40(23.5%) 126(74.1%) 新生児出生直後の処置[170] 99(58.2%) 46(27.1%) 18(10.6%) 7(4.1%) 新生児の第一沐浴・清拭[169] 66(39.1%) 19(11.2%) 35(20.7%) 49(29.0%) 新生児のオムツ交換[170] 18(10.6%) 18(10.6%) 25(14.7%) 109(64.1%) *数値は,人数(%)を示す

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周産期ケアにおける助産師の手袋着用状況と個人的属性との関連 表 3 個人的属性と各ケア項目 (妊産婦) における手袋着用との関連 ケ ア 項 目 個 人 属 性 妊 産 褥 婦 の パ ッ ト 交 換( n= 17 0) 分 娩 第 Ⅰ 期 の 肛 門 部 圧 迫( n= 17 0) 分 娩 後 の 清 拭( n= 16 8) 乳 房 ケ ア( n= 17 0) 着 用 非 着 用 χ 2 値 p値 着 用 非 着 用 χ 2 値 p値 着 用 非 着 用 χ 2 値 p値 着 用 非 着 用 χ 2 値 p値 年   齢 22 ∼ 29 歳 30 ∼ 39 歳 40 歳 以 上 42 36 23 22 32 15 2. 22 0. 32 39 35 28 25 33 10 5. 05 0. 08 26 25 11 38 43 25 1. 00 0. 60 1 3 0 63 65 38 ̶ 0. 54 経 験 年 数 1∼ 7年 8年 以 上 61 40 33 36 2. 62 0. 10 59 43 35 33 0. 67 0. 41 42 20 52 54 5. 54 0. 01 * 2 2 92 74 ̶ 1. 00 他 科 で の 臨 床 経 験 あ り な し 49 52 36 33 0. 22 0. 63 57 45 28 40 3. 52 0. 06 32 30 52 54 0. 10 0. 74 4 0 81 85 ̶ 0. 12 針 刺 ・ 切 創 事 故 経 験 あ り な し 35 66 35 34 4. 37 0. 03 * 43 59 27 41 0. 10 0. 75 24 38 44 62 0.12 0. 72 1 3 69 97 ̶ 0. 64 感 染 研 修 あ り な し 45 56 40 29 2. 95 0. 08 50 52 35 33 0. 09 0. 75 36 26 47 59 2. 94 0. 08 2 2 83 83 ̶ 1. 00 看 護 師 教 育 課 程 別 専 門 学 校 短 大 大 学 59 20 22 38 24 5 9. 10 0. 01 * 66 19 16 31 25 11 7. 81 0. 02 * 36 11 15 59 33 12 6. 70 0. 03 * 1 3 0 96 41 27 ̶ 0. 07 助 産 師 教 育 過 程 別 専 門 学 校 短 大 専 攻 科 大 学 選 択 コ ー ス 47 37 17 39 26 4 4. 86 0. 08 52 36 14 34 27 7 0. 61 0. 73 25 26 11 60 36 10 4. 88 0. 08 2 2 0 84 61 21 ̶ 0. 70 SP の 認 知 度 1) 知 っ て い る 知 ら な い 70 31 45 24 0. 31 0. 57 67 35 48 20 0. 44 0. 50 43 19 70 36 0. 19 0. 65 4 0 11 1 55 ̶ 0. 30 院 内 感 染 対 策 へ の 関 心 あ り な し 91 10 57 12 2. 04 0. 15 94 8 54 14 5. 88 0. 01 * 57 5 89 17 2. 18 0. 13 4 0 14 4 22 ̶ 1. 00 χ 2 検 定 : nが 5未 満 の 項 目 に つ い て は Fi sh er の 正 確 確 率 検 定 を 使 用 し た 。 *p < 0. 05 1) SP : ス タ ン ダ ー ド プ リ コ ー シ ョ ン

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あり,対象と関わるときには感染症検査結果を確認し ていることから,感染予防策を意識していると考えら れる。 2.各ケア項目における手袋着用状況  各ケア項目における手袋着用状況の結果から,ほと んどの人が手袋を着用するケア,手袋着用状況が多様 なケア,ほとんどの人が手袋を着用しないケアに分か れると考えられた。  妊産褥婦の内診,分娩第Ⅱ・Ⅲ期の直接介助,胎 盤計測・処理では,100%近くの助産師が手袋を着用 していた。これらは,産科を有する全国594施設を対 象とした調査でも,100%近くが慣例的に手袋を着用 していると報告されており(野口他,2005),今回の結 果と一致した。このようなケアにおける手袋着用は, WHOによる「お産のケア:実践ガイド」で言われてい る正常なお産における医学的に正しいお産を保証する ケアで,手袋着用が明らかに有効で役立つ,推奨され るべきことの中にも含まれている(WHO, 1996/1997)。 これらのケアは,血液や体液に直接接触せざるを得な いケアで,母体への感染を防止することの必要性に 加え,血液や分泌物に自分が汚染されないこと,また, 万一の場合,母体から自分への感染を防ぐために手袋 着用が必要である。ほとんどの医療従事者がこれらの ケアに際して、手袋着用をしている実情が結果に反映 していると考えられる。出生直後の新生児の処置も, 次いで手袋着用の多いケアであった。出生直後の新生 児は,産道通過時に母体の血液や羊水,分泌物の付着 が視覚的に見え,羊水吸引や身体計測などの処置はそ の接触を避けて実施することができない。ただし,羊 水や胎脂の付着した身体が滑脱し易く,安全性を損な うというやりにくさから,内診等より若干着用の頻度 が少ない結果であったと考えられる。  妊産褥婦のパット交換,分娩第Ⅰ期の肛門部圧迫, 分娩後の清拭,新生児の第一沐浴・清拭の4項目は, 手袋着用状況が多様に分かれるケアであった。これら のケアは,いずれも血液・体液に触れる可能性が高い にもかかわらず,出血などの量やケアの方法・手技に 個人属性 着用 非着用 χ2 p値 着用 非着用 χ2 p値 着用 非着用 χ2 p値 年 齢 22∼29歳30∼39歳 40歳以上 58 59 28 6 9 10 5.65 0.05 31 36 18 32 32 20 0.35 0.83 15 16 5 49 52 33 1.88 0.39 経験年数 8年以上1∼7年 84 61 1015 2.77 0.09 4144 4935 0.73 0.39 2016 74 60 0.00 0.97 他科での 臨床経験 ありなし 72 73 13 12 0.04 0.82 46 39 38 46 1.33 0.24 15 21 70 64 1.26 0.26 針刺・切創 事故経験 ありなし 58 87 12 13 0.56 0.45 32 53 37 47 0.71 0.39 10 26 60 74 3.38 0.06 感染研修 ありなし 77 68 817 3.79 0.05 3550 3549 4.97 0.02* 2115 64 70 1.26 0.26 看護師 教育課程別 専門学校 短大 大学 80 37 26 17 7 1 ̶ 0.19 51 13 21 45 31 6 16.02 <0.01* 15 9 12 82 35 15 10.56 <0.01* 助産師 教育過程別 専門学校 短大専攻科 大学選択コース 72 53 20 14 10 1 ̶ 0.46 48 19 18 37 44 3 ̶ <0.01* 15 12 9 71 51 12 6.80 0.03* SPの 認知度1) 知っている知らない 104 41 1114 7.48 <0.01* 2065 5034 5.58 0.01* 31 5 84 50 7.11 <0.01* 院内感染対 策への関心 ありなし 128 17 20 5 1.28 0.15 78 7 70 14 2.76 0.09 33 3 115 19 ̶ 0.26 χ2検定:nが5未満の項目についてはFisherの正確確率検定を使用した。 *p<0.05 1)SP:スタンダードプリコーション

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周産期ケアにおける助産師の手袋着用状況と個人的属性との関連 よって,実際に血液・体液に触れないで実施すること もできるために,そのときの状況によって,手袋着用 を分かれさせていると考えられる。  乳房ケアは,明らかに母乳という体液に触れるケ アであるが,手袋の着用はほとんどされていなかっ た。乳房ケアは,直接乳頭や乳体部を触診し,微妙な 触知の感覚を要するために,手袋はこのような手技を 妨げる要因と考えられる。また,その手技によっては 苦痛や不快を増すこともあり,相手と助産師の人間関 係にも影響することを危惧し,手袋を着用していない と推察される。このことは先行研究においても、同様 の指摘がなされている(Gaston et al., 1998; Willy et al.,

1990)。しかし,母親が何らかの感染を受けている場 合には,母乳中には細菌,HBVやHCV,HIVといっ た血液媒介感染症ウイルスが存在する可能性があり (川上,2002),そのケアによって助産師が交差感染を 媒介したり,自分への感染曝露の可能性があることを 否定できない。  また,新生児のオムツ交換に関しても,新生児の排 泄物に触れる可能性があるが,手袋着用をしている人 は少なかった。福森(2003)の研究では、乳幼児のオ ムツ交換時の手袋着用は成人のオムツ交換に比べ有意 に少なく,特に産婦人科病棟の助産師・看護師は「新 生児の便=きれい」と認識し、排泄物の感染に対する 危険認知が低いとしている。このことは,本研究結果 においても同様の認識が反映しているものと考えられ る。現在,NICUでのオムツ交換時の手袋着用は常識 的になってきており,一般の新生児室でも標準化され ている施設も増えているが,実際はあまり着用されて いないのが現状である。  母乳や新生児の便を取り扱うケアは,視覚的・感覚 的にもそれが体液や排泄物である認識が低いため,手 袋着用が少ないことが考えられる。また,母乳は児の 栄養源である意味でも,感染源となり得るという意識 が低く,手袋を着用して扱うことに抵抗を感じている のではないかと考えられる。 3.個人的属性とケア毎の手袋着用状況  個人的属性とケア毎の手袋着用状況との関連では, それぞれケアによって関連する項目が異なっていた。 年齢や産科以外での臨床経験の有無では関連が認めら れるケア項目はなかったが,針刺し・切創事故経験の 有無,経験年数,看護師及び助産師教育課程,感染に 関する研修会受講の有無,SPの認知度,院内感染対 策への関心の有無で関連が認められるケア項目があっ た。  針刺し・切創事故経験の有無では,その経験から手 袋着用が増えると考えられたが,結果は経験なしの方 が手袋着用されていた。針刺し・切創事故の経験は, その後の手袋着用状況には影響しないことが考えられ るが,今回の調査では,針刺し・切創事故経験の有無 のみを質問している。そのため,針や器械の使用・未 使用,事故発生時の状況によっては,手袋着用状況に 影響する可能性があることも否定できない。  また経験年数,看護師,助産師各教育課程や感染に 関する研修会受講の有無,SPの認知度,院内感染対 策への関心の有無に関連が認められるケア項目があっ たことから,感染対策に関する卒前および卒後教育の 充実が重要であると考えられる。  経験年数は,1∼7年の方がそれ以上よりも手袋着用 が多いケア項目があり,1996年にSPが提唱されて以 降,卒前教育でSPの概念を習得しているかどうかが, 手袋着用に影響していることが考えられる。  卒前教育においては,看護師教育課程で感染に関す る基礎的な知識および技術を充分に習得し,助産師教 育課程でさらに周産期ケアに特化した感染予防対策に 関する知識・技術を学ぶことが,卒後教育につながっ ていくと考えられる。そして,卒後教育ではより実践 的なプログラムが必要であり,SPをはじめとする施 設全体の医療関連感染対策はもちろん,各科のケア や対象の特徴をふまえた研修会によって,感染予防へ の意識も向上すると考えられる。周産期ケアでは,血 液や体液に曝露しやすいことを考慮し,母乳も含めて, 感染源や感染経路,感染予防行動・技術といった専門 的な教育が必要であると考えられる。  今後はこのような卒前・卒後教育の充実を図り,そ の効果を評価していくことで,助産師の感染予防意識 を高めていくことが課題である。  本研究では,病院に勤務する助産師を対象としてい るため,病院全体としての院内感染対策がとられてい る場合が多く,病院によってその対策が異なると推察 されること,比較的経験の浅い助産師が多いことに よって,回答者の偏りは否めない。また,自記式質問 紙で,且つ4段階評定法を用いていることにより,社 会的な望ましさによる回答が存在する可能性がある。 しかし,助産師を対象とした周産期ケアでの感染予防 策や手袋着用に関する研究は少なかったので,手袋

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今後は,心理・社会的な要因を含めて分析していく必 要があると考えられる。

Ⅴ.結   論

1 .助産師の行う周産期ケアのうち,分娩Ⅱ・Ⅲ期の 直接介助では100%,妊産褥婦の内診と胎盤計測・ 処理では98%以上が「必ず着用する」と回答し,乳 房ケアでは74.1%,新生児のオムツ交換では64.1% が「着用しない」と回答していた。 2 .明らかに血液・体液に接触するケアでは手袋を着 用しており,血液ではない母乳や新生児の排泄物へ の接触の可能性のあるケアでは手袋を着用していな かった。また,血液体液に触れない場合があるケア では,必ずしも手袋を着用していなかった。 3 .個人的属性のうち,年齢,産科以外での臨床経験 の有無は,どのケアにおいても手袋着用状況との関 連がみられず,針刺し・切創事故経験の有無や経験 年数,教育背景や感染研修の参加の有無,SPの認 知度において関連が認められるケアがあった。 4 .卒前および卒後における感染に関する専門的な教 育の充実が必要である。 謝 辞  本研究にご協力くださいました病院および助産師の 皆様,ならびに分析の過程でご指導くださいました首 都大学東京の山村礎准教授に心より感謝申し上げます。  尚,本研究は東京都立保健科学大学大学院保健科学 研究科に提出した修士論文の一部を加筆・修正したも ので,内容の一部は第22回日本助産学会学術集会に て発表したものである。 文 献 福森方子(2003).小児病棟看護師と成人病棟看護師の清 潔に関する認識の異なり̶オムツ交換時に手袋を着用

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参照

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