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観察となりきる体験を組み合わせたワークショップの試行

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Academic year: 2021

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(1)観察となりきる体験を組み合わせたワークショップの試行 Workshop Design that Combines Observation and Performance 田邉里奈1) 千葉工業大学1). 天野未知2) 東京都 西臨海水族園2) 宮崎寧子   2). TANABE Rina 1) AMANO Michi 2) MIYAZAKI Yasuko. 西村大樹2) . Chiba Institute of Technology 1) Tokyo Sea Life Park 2) 2). NISHIMURA Daiki 2). 政倉祐子  愛知淑徳大学 3). 3). 若林尚樹4) 東京工科大学4). MASAKURA Yuko 3). Aichi Shukutoku University 3). WAKABAYASHI Naoki 4). Tokyo University of Technology 4). 1.はじめに. プの進行に沿った参加者の気持ちの変化から分析を行った。この. 昨今では、多くのワークショップが行われており、ワークショッ. 評価手法では、ワークショップに参加する子どもたちが自らワーク. プの多様化が見られる。ここでのワークショップとは、 「導入」. ショップ中に感じる印象の主観評定を行い、3つの評価指標(高揚. 「展開」 「振り返り」の工程があり、参加・体験する中で学習する プログラムのことを指す 。動物園や水族館においても各園館で 1). 感、達成感、難易度)に基づきワークショップ中に複数回評定する ことで、時系列に沿ったワークショッププログラムの分析を行う。. 工夫して教育を目的とした取り組みが検討・実施されており、飼 育体験、ガイドツアー、体験プログラムと並び、ワークショップ. 3.ワークショップの設計. が実施されている2)。日本動物園水族館協会教育研究部会の報. 今回のワークショップでは、比較的身近に生息し、触れる機. 告からも、観察や体験を中心としたワークショップや、観察や体. 会の多いヤドカリを対象とした。ヤドカリの体のつくりや背負っ. 験を通して得たことを絵や作文で表現するワークショップ、観察. ている巻き貝の殻との関係に着目し、ヤドカリの目線で生態や. や体験を通して得たことをものづくりで表現するワークショップ. くらし方を見ていくことを狙いとしている。そのために、 「導入」. など、数多くのワークショップが実施されていることがわかる 。 「観察&レクチャー」 「なりきり体験」 「振り返り」の4つの工程 3). 一方、文部科学省の取り組みとして、平成22年度から「児童生. を設定し、観察となりきる体験を組み合わせたプログラムを検. 徒のコミュニケーション能力の育成に資する芸術表現体験事業」. 討した。プログラムの企画検討と設計、実施は千葉工業大学と. を展開しており、芸術家等と教師が連携して芸術表現体験活動を. 西臨海水族園との共同で行った。また、観察のための資料や. 効果的に結びつけたワークショップ型の授業が実施されている 。. 映像資料、生体の準備、レクチャー内容の検討は. 文部科学省コミュニケーション教育推進会議審議経過報告(文. 園が主体となり行い、なりきる体験のための衣装や備品の企画. 部科学省、2011)においても、国語や社会、体育、音楽、総合. 設計および制作は千葉工業大学が主体となって行った。. 1). 西臨海水族. 学習の時間に、演劇などの身体表現によるワークショップ形式の. ワークショップのタイトルは「きみもヤドカリになろう」. アプローチを組み込んだ事例が多く紹介されており、この取り組. で、2016年2月27日(土)28日(日)の2日間で実施し、. みによる子どもたちへの効果も報告されている。そこで本研究で. 各日2回の合計4回実施した。対象は小学3、4年生で、参加. は、水族館において生き物の観察と身体表現を組み合わせたワー. 者は事前募集し、各回の定員は18名とした。. クショップを企画実施し、その効果を検証したいと考えた。. 3.1. プログラムの構成 今回のプログラムは「導入」「観察&レクチャー」「なりきり. 2.目的. 体験」「振り返り」の4工程で構成している。. 本研究では、千葉工業大学デザイン科学科の有志の学生(以下: 千葉工業大学)と、東京都 西臨海水族園(以下: 西臨海水族. プログラムの概要説明のほか、導入のきっかけとして子ども. 園)の共同でワークショップを企画実施した。今回のワークショッ. たちの知っているヤドカリの絵を描いてもらう。描いた絵を会. プでは、生き物のことを学ぶワークショップにおいて、生き物の体. 話のきっかけにして観察のポイントを示すほか、子どもたちの. と行動をじっくり観察し、体のつくりやくらしとその生息環境との関. 持つヤドカリ像を把握することを目的としている。. わりに気づき、なりきる体験(身体表現)を通してその気づきをよ. ⅱ)観察&レクチャー(45分). り深い理解に繋げることを目的としている。このように、観察する. ヤドカリの成長過程や体のつくりについて、本物のヤドカリ. こととなりきることを組み合わせた学びを目的としたワークショップ. を観察しながらレクチャーを受ける。今回は、観察のポイント. を対象に、その効果を検証したいと考えている。そこで、定量的な. に合わせて様々な対象を用い、1つの対象に対して少人数で詳. 評価が可能な「気持ち温度計」 を用いた調査を行い、 ワークショッ. しく観察できるようにした。その際、ヤドカリと巻き貝の殻の. 4). 54. ⅰ)導入(10分). デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016.

(2) 関係を伝えるために観察の際のストーリーを検討し、観察する. チャーすることで主体的に観察できるように工夫した。その際、ヤ. 順番を工夫するほか実験も取り入れた。詳細は3.2. で述べる。. ドカリと巻き貝の殻の関係を考えられるように、観察する順番を検. ⅲ)なりきり体験(40分). 討し殻を選択する実験も組み合わせた。観察の際には、はじめに. 観察やレクチャーで得た知識や情報を確認するため、ヤドカ. 生きているゾエア幼生を用いて生まれたばかりのヤドカリは巻き貝. リスーツと巻き貝の殻を着用してヤドカリになりきる。ヤドカ. の殻を背負っているかを観察し、変態の過程の説明や、いつから着. リの歩き方や敵から身を守る方法、イソギンチャクとの共生、. 底して巻き貝の殻を背負うのかなど、本物の生体では観察するこ. 餌の食べ方、ウンチの出し方、殻の引越しなどをレクチャーの. とが難しいポイントを映像資料を用いてレクチャーした。また、触. 内容を振り返りながら、自身の身体を動かして体験する。. れる対象には積極的に触ってもらい五感で生体を感じてもらえるよ. ⅳ)振り返り(10分). うに、ホンヤドカリを各自で手にとって観察した。その後、2種類. ヤドカリの姿で記念撮影をし、その後、ヤドカリの生態につ. の餌を入れ、餌の食べ方を観察した。また、体のつくりを見るため. いて振り返りのレクチャーを受ける。その際、ワークショップ. にオニヤドカリの標本を使用して、足の数を確認したり、オスメス. に参加する前と比較して自分の中のヤドカリ像がどのように変. の違い、硬い部分や柔らかい部分などを実際に触って確認したり、. 化したかを考える。. ルーペで拡大して詳しく観察できるようにした。これらの観察の際. このように本物のヤドカリの体の特徴を模式化して再現し、. には、水族園スタッフのレクチャーや個別の解説のほかに、補助の. 観察とレクチャーの工程で得た知識をなりきり体験で確認する. 学生が観察のポイントを示してサポートすることで、詳しく観察が. ことで、ヤドカリの動きを自分の身体で演じることで体験し、. できるように工夫した。また、最後には巻き貝の殻を背負っていな. 見たり聞いたりしただけでは発見できない新たな気づきが起こ. いヤドカリと、幾つかの巻き貝の殻を仕切りのある水槽に入れ、仕. りやすいプログラムデザインとした。. 切りを取った際にヤドカリがどの貝殻を選ぶのか、貝殻を背負う時. 3.2. 観察のための工夫. にはどのように貝殻の中に入るのかなど実験を通して観察した。. 今回は、観察やレクチャーのポイントに合わせて様々な対象を. 3.3. なりきる体験のための工夫. 用意し、実際に手にとって観察できる環境を提供した。詳しくヤド. 今回はヤドカリになりきるための工夫として、ヤドカリと同. カリを観察できるように、3人で1つのグループとし、各グループ. じ体のつくりにするためにヤドカリスーツを用意した。ヤドカ. に1つずつ観察対象を用意した。また、各グループには学生1名が. リの5対ある脚や貝殻の中に隠れている体の特徴をスーツに. サポートとしてついた。ヤドカリは生まれた時から巻き貝の殻を背. よって再現し補った。また、段ボールで巻き貝の殻を制作し、. 負っているのか、足は何本あるのか、ウンチをしたらどうするのか. 貝殻を背負うことも可能とした。ダンボール製の貝殻は複数の. など、子どもたちが疑問に思うポイントを示し、観察しながらレク. 形状とサイズを用意し、子どもたちの身体にあったものやそう. 図1 ゾエア幼生. 図2 ホンヤドカリ. 図3 オニヤドカリ. 図4 貝殻を選ぶ実験. 図5 資料を用いたレクチャー. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 55.

(3) 図6 ヤドカリスーツ. 図7 ヤドカリスーツを着用した様子. でないものを用意した。これにより、好きな貝殻を選択するこ. 参加者があった。その参加者に対して、先に述べた4つの工程. とや、気に入った貝殻を他のヤドカリと奪い合うという生態も. の終了後(絵を描いてみて、観察してみて、ヤドカリになってみ. 学べるようにした。貝殻とスーツには第4脚、第5脚で貝殻を. て、終わってみて)とはじまる前の合計5回、気持ち温度計での. 支える作りや、体の先端で貝殻を固定する仕組みも体験できる. 調査を実施した。参加した子どもたちがその時に感じた気持ちの. ようにしている。またイソギンチャクを貝殻につけることで、. 程度について3項目(高揚感:ワクワクした、達成感:できた、. イソギンチャクとの共生関係も体験できるように工夫した。. 難易度:難しい)をマグニチュード推定(ME)法により評定し. 3.4. ワークショップの実施体制. た。評定には、3つの指標を示す3本の温度計のイラストを用意. 実施した4回のワークショップはそれぞれ、レクチャー等. し、項目ごとに気持ちの程度として該当する高さまで色を塗って. を担当するメインの水族園スタッフ1名とサポートの水族園ス. もらった。分析の際には、その中から欠損値のあった5名の評定. タッフ1名、進行の学生1名、子どもたちをサポートする学生. 値を除外し、全員のはじまる前にも練習とみなして除外した。そ. 6名、補助の学生2名の体制で実施した。ワークショップには. の後、参加者ごとに評定値を標準化し、標準化後さらに、はず. 椅子を使用せず、床にシートを敷いて実施し、広いスペースで. れ値(59名の平均値からのずれが±2SD より大)を3つ以上持. 安全に動き回れる環境を心がけた。はじめから床を使用するこ. つ7名の評定値を除外した。その結果52名(男児32名、女児20. とで、なりきる工程へとスムーズに進行することも期待できる。. 名)の評価値を分析対象とした。各回の分析結果が図15である。. 4.気持ち温度計での調査. 5.考察. 今回のワークショップには、64名(男児39名、女児25名)の. 56. 図8 ダンボール製の貝殻. 今回の分析結果から、絵を描いてみての工程はどの回も高揚感. 図9 導入の様子. 図10 観察の様子. 図11 レクチャーの様子. 図12 なりきり体験の様子(身を守る). 図13 なりきり体験の様子(餌を食べる). 図14 振り返りの様子. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016.

(4) 図15 気持ち温度計の分析結果(開催回別の各工程の標準化 ME 値). や達成感が低く、一番難しいと感じていることがわかる。また、. なりきり体験は、はじめはなかなか自主的に積極的に参加しにく. 午前と午後とを比較すると、午前の方が難易度が高いことがわか. いものの、参加していくうちに様々な目標や課題をクリアしてい. る。これは、進行する学生スタッフの経験が関係していると考え. き、できたという達成感につながっていったことが考えられる。. られ、午前の回の子どもたちの反応を見て、午後までの間のリフ. 今回のワークショップの際には、なりきり体験の際に身を守るこ. レクションの際に絵に対するコメントを増やすなどの改善を検討. とやウンチをすることなどの個人で演じる項目のほかに、餌を食. したことが難易度を変えた要因となっている可能性がある。観察. べることや貝殻を交換することなど、他者との関わり合いの中で. をしてみてとヤドカリになってみての工程は、すべての回におい. 演じる項目も設定している。このことから、なりきり体験のはじ. てどちらも高揚感や達成感が高く、あまり難しさを感じていない. めに感じていた恥ずかしさや戸惑いから、徐々に主体的に取り組. ことがわかる。高揚感に関して見てみると、27AM と28PM にお. めるように変化をしていき、最終的には他者との競い合いの中か. いてなりきり体験の際に値が下がっていることがわかる。これは、. ら積極的に課題に取り組むことができたと考えられる。他者との. ヤドカリになってみるという課題設定に対しての恥ずかしさの部. 関わりや競い合う要素を加えたことで、恥ずかしさや戸惑いより. 分や、どうしていいかがわからないといった戸惑いの部分が高揚. も目標や課題の達成の方に気持ちが動き、より主体的に積極的に. 感に影響したと考えられる。達成感に関しては、27AM 以外の回. 取り組むことができたと考えられる。全体を通してみると、参加. においてなりきり体験の方が高い値になっている。このことから、. 者や会場の雰囲気によって多少のばらつきがあるものの、大きな デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 57.

(5) 印象はあまり変わらない。終わってみての工程では、すべての回 において高揚感や達成感が高い値となり、難しさも感じていない ことから、様々な対象を用いての観察となりきり体験を組み合わ せたプログラムは一定の効果があり、ヤドカリの生態が子どもた ちに理解され、良い学びの場が提供できたことが考えられる。. 6.おわりに 本研究は、観察やレクチャーとなりきる体験を組み合わせた ワークショップの検証を目的として実施した。ワークショップに 参加した子どもたちの様子からは、観察とレクチャーの工程で は、様々な対象を詳しく観察しながらレクチャーを受けたことで 子どもたちの理解が進んだ様子が見られた。なりきり体験では、 実際に自分の身体で表現してみることができ、自ら考えて表現す るきっかけとなり、子どもたちの理解が深まった様子が見られた。 これは、観察やレクチャーの工程でヤドカリにとっての貝殻の大 切さを知った子どもたちが、なりきり体験の際に必死に貝殻を探 し、貝殻に完全に隠れようと努力する様子などから、ヤドカリや ヤドカリのくらす環境への理解が深まったことがうかがえる。こ のように、観察やレクチャーの工程後になりきる体験を行ったこ とで、自分の身体で表現するためにこれまで得た情報を整理し、 考えてから行動に移すため、観察やレクチャーで聞いたことの確 認や振り返りが可能となり、それを通した深い学びにつながった と考えられる。気持ち温度計の結果からも、今回のワークショッ プの構成は参加者の主体的で積極的なワークショップへの参加 に効果的であったことが推察される。このことから、自分で考え て動いてみることでわかる発見や気づきと、自分との違いを通し て発見できることなど、なりきることでわかる・気付く学びに今 後の展開の可能性があると考える。 今回の分析では、子どもたちの評定結果から、プログラムの 各工程における目標設定や作業の難易度など、ワークショップ プログラムを企画設計する上での検討すべき項目に関して分析 を加えることができた。しかし、各個人の学習や理解度などに ついては分析することができていない。そこで今後は次のス テップとして、ワークショップの各工程に設定した目標に対し ての習熟度や達成度を評価する新しい測定方法を検討していく 必要がある。今後も観察となりきる体験を組み合わせたワーク ショップを企画設計し、その効果を検証していきたい。 謝辞 本研究は JSPS 科研費(挑戦的萌芽研究 課題番号:26560098) の助成を受けたものです。本研究を進めるにあたりワーク ショップの実施にご理解およびご協力いただいた東京都 海水族園の皆様に感謝の意を表します。. 58. デザイン学研究特集号 Special Issue of Japanese Society for the Science of Design Vol.24-1 No.93 2016. 西臨. 【参考文献】 1)文部科学省:子どもたちのコミュニケーション能力を育む ために─「話し合う・作る・表現する」ワークショップへ の取組,コミュニケーション教育推進委員会審議経過報 告,2011. 2)文部科学省「動物園・水族館における学習方法・実践・普 及に関する調査研究」委託事業:動物園・水族館での教育 を考える─教育方法論研究報告書─,社団法人日本動物園 水族館協会 教育事業推進委員会,2003. 3)日本動物園水族館教育研究会誌41∼50. 4)政倉祐子,若林尚樹,田邉里奈:子どもの主観評定に基づ く体験学習型ワークショップの定量評価─気持ちの変化を 捉える評価ツールの提案とケーススタディ─,日本感性工 学会論文誌,15(1),pp.233-244,2016. 5)松本朱実:見通しを持った効果的な動物園での観察方法─ 子どもの気づきや探求を促す工夫─,日本理科教育学会全 国大会要項,pp.371,2010. 6)松本朱実:動物園施設を活用した観察学習の方法─学校に おける学習との連携を視野に入れて─,理科の教育= Science education monthly 50,pp.8-11,2001..

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参照

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