日本助産学会誌 J. Jpn. Acad. Midwif., Vol. 29, No. 1, 69-76, 2015
*島根県立大学出雲キャンパス(The University of Shimane Izumo Campus)
2014年7月14日受付 2015年4月14日採用
資 料
助産師学生の妊娠期の知識・技術習得のための学習の進め方
—講義・演習後の記載より—
Learning process for midwife students acquiring knowledge
and technique of the pregnancy period
—Description after the lecture and the practice—
藤 田 小矢香(Sayaka FUJITA)
*狩 野 鈴 子(Reiko KANO)
*濵 村 美和子(Miwako HAMAMURA)
*嘉 藤 恵(Megumi KATO)
* 抄 録 目 的 妊娠期の知識習得のために,助産師学生が講義・演習を通してどのように自己学習を進めていたのか を明らかにする。 対象と方法 対象者はA大学短期大学部専攻科助産学専攻学生18名で,平均年齢は22.33歳であった。研究倫理審 査委員会の承認を経て,2013年7月に実施した。データ収集方法は,学生が妊娠期講義修了後に提出した, 妊娠期の学習を講義・演習を通してどのように進めたかの記述を逐語録にしたデータを抽出した。 結 果 助産師学生の妊娠期の学習として【確実に知識を自分のものにする学習】では《積極的な姿勢で予習・ 復習に取り組み学習への価値を見いだす》,《基本的な情報の必要性に気がつく》,《復習により知識の定 着を図る》の3つのカテゴリーが抽出された。【妊婦健診に必要な知識・技術を身につける学習】では《妊 婦自身を理解しようと努力し,必要な計測技術の知識を習得する》,《実際の妊婦健診を想定した,実用 的で実践的な技術を身につける》の2つのカテゴリーが抽出された。 結 論 助産師学生は,自分を客観的にみて学習方法の方策を考えていた。助産師になるという目標に向かっ て,主体的に予習・復習に取り組んでいた。また,技術習得においては,繰り返し練習を行い自信がつ いた次のステップとして,実際の場面を想定した練習を行っていた。さらにグループでの学習が自己評 価や他己評価の動機付けになっていたと考える。 キーワード:助産師学生,妊娠期,学習の進め方This study clarified how to facilitate learning for midwife students acquiring knowledge of the pregnancy pe-riod and procedural techniques for prenatal checkups.
Methods
The study comprised 18 students learning midwifery in the same midwife training program (average age, 22.3 years). Students provided written, informed consent to participate in the study, and data were collected following established ethical procedures. Data consisted of students' free written responses to the question, "How did you learn about the pregnancy period?" Students studied the pregnancy period from April to July 2013, and data were collected in July 2013. Results have been analyzed qualitatively and inductively.
Results
The types of learning that midwife students engage in while studying the pregnancy period became clear. We identified two major categories of learning based on participants' responses. The first category was, "Applicable knowledge, and to solidify that knowledge," from which the following three subcategories were extracted: 1) Pre-paring for lessons and reviewing with a positive attitude while finding value in the content learned; 2) Recognizing gaps in knowledge and the need for basic information; and 3) Solidifying the knowledge by reviewing it. We also identified the category, "Learning to execute knowledge and techniques necessary for prenatal checkups," from which the following two subcategories were extracted: 1) Gaining the knowledge of proper examining and make an effort to understand pregnant woman oneself, and 2) Practically applying the techniques as part of real prenatal checkups.
Conclusion
The midwife students objectively self-analyzed and reflected on the process of learning about the pregnancy period. They independently prepared for lessons and reviewed with the goal of becoming a midwife in mind. In acquiring technical knowledge, they repeatedly practiced until they were able to assume confidence when applying techniques in a real setting. This study suggested that practicing midwifery techniques as a group taught the mid-wife students to value themselves and their group members, and motivated them to self-evaluate in order to improve their knowledge and techniques.
Keywords: midwife students, pregnancy period, learning method
Ⅰ.緒 言
保健師助産師看護師法の学校養成所指定規則(養成 書運営に関する指導要領)において臨地実習では,学 生1人につき10回程度の分娩介助を行わせること,妊 娠中期から産褥1カ月まで継続して受け持つ実習を1例 以上行うことが明記されている。妊娠期については妊 婦健康診査を通して妊娠経過の診断を行う能力を強化 する実習とすると明記されており(勝又・門脇・清水 他,2013, pp.110-111),その采配はそれぞれの教育機 関独自で行われている。母子の安全を考慮し,母子の 力を最大限に引き出す支援は,妊娠期からの関わりが 重要である。しかし妊娠期の関わりは継続受持事例の 1例の場合もあれば,妊婦健診等の外来での実習を取 り入れた妊婦ケアを含める教育機関等さまざまである。 助産師学生の学習到達度調査(山内,2007, pp.27-30)においてICMの「基本的助産業務に必須な能力」の 4領域(妊娠期・分娩期・産褥期・新生児期)のケア項 目で学習到達度が一番低かったのは妊娠期のケアで あった。その理由について山内は(山内,2007, pp.27-30)妊婦に個別的に接する機会が限定されるため,学 習の反復ができないこと,さらに知識と技術の関係に ついて学習到達度は技術項目が知識項目より高く,強 い相関関係にあることから,技術項目の学習到達度 は知識項目の学習到達度より先行して高いことが特徴 であると推測している。加えて学習意欲によって,技 術の修得を繰り返しながら,技術を裏付ける知識を 補うといった学習過程が推察されている(山内,2007, pp.27-30)。 助産師学生の技術教育の検討(野口・竹内・宮本, 2006, pp.27-94)や技術習得のプロセス(堀内・服部・ 谷口他,2007, pp.9-17),助産実習での助産診断技術の 到達度(菊池・遠藤・西脇,2008, pp.83-91)など技術 や実習に関する調査は行われている。しかし,助産師 学生の講義・演習における学習方法の視点から調査し た研究は見当たらない。 本研究では妊娠期の知識・技術習得のために,助産 師学生が講義・演習を通してどのように自己学習を進助産師学生の妊娠期の知識・技術習得のための学習の進め方 めていたのか学びの過程を明らかにする。この結果を もとに入学早期の数カ月で妊娠期の基礎的知識・技術 を習得するための,助産基礎教育での教授方法につい て検討を行う。
Ⅱ.研究方法
1.研究デザイン 質的記述的研究方法 2.用語の定義 助産師学生:本調査では修業年限1年の助産師養成課 程に入学した助産学を学ぶ女子学生をいう。 知識・技術の習得:講義・演習や自己学習等を通して, 知識・技術を身につけること。 学習の進め方:講義・演習を通しての自己学習内容や 知識・技術を習得するために行われた工夫等のこと。 3.研究対象者 2013年度入学のA大学短期大学部専攻科で助産学 を学ぶ学生18名。 4.データ収集方法 助産診断技術学Ⅰ(妊婦)の概要と教授方法につい て表1に示す。この科目は,助産師にとって必要な妊 婦のケアのための助産過程および診断技術の習得を 目的としており,開講時期は4月から7月,必須科目 (2単位:60時間)である。教授方法は,個人自己学習, 講義(従来型の講義形式で講義),学生と教員との共 同講義(以後共同講義:学生2名が1組となり,教員 と共に1つの講義を担当する。講義時間は学生が30分, 教員が60分とし,シラバスの講義内容に沿った内容 で学生が講義を行う),演習で構成されている。定期 試験以外に小テストを3回設け,知識の確認を行って いる。 助産診断技術学Ⅰ(妊婦)では,学習意欲を高める ことを目的に初回講義時に学生が助産師をめざした理 由,どのような助産師になりたいか,目指す助産師に なるために妊娠期の学習をどのように進めたいかにつ いて学生に記載してもらっている。自らの目指す助産 師に近づくために講義受講における学生個々の目標を 毎回記載し,講義修了後には学びの内容や今後の課題, 講義に対する自己満足度と達成度を記載し,講義修了 後に担当教員に提出している。講義全体のまとめとし 表1 助産診断技術学Ⅰ(妊婦)の概要 講義 回数 内 容 学習方法教授・ 小テスト 1 2 3 妊娠期による母体の変化 妊娠期の心理・社会的変化 胎児の成長発達 個人自己 学習 ○ 4 5 妊娠期のマタニティ診断の特徴,類型診断類型の理解 講義 ○ 6 7 8 9 10 妊娠期の診断類型の理解(経過診断) 共同講義 11 妊娠期の診断類型の理解(経過診断のまとめ) 講義 12 13 14 15 妊娠期の診断類型の理解(健康生活 診断) 共同講義 ○ 16 17 妊娠期のマタニティ診断とケア計画 講義 18 19 妊娠期に用いる検査法妊娠期に用いる薬剤 20 21 22 23 24 妊娠期のフィジカルイグザミネーシ ョン 演習 25 26 27 28 事例展開 29 30 フィジカルイグザミネーション技術テスト ○ 脚注) 個人自己学習 科目である助産診断技術学Ⅰ(妊婦)において,妊娠期の理 解を深める目的で,一定の課題を学生に提示し学生個人で講 義時間内に予習・復習を行うこと。 教員による講義(以後講義) 本調査では,担当教員が視聴覚教材,スライド,参考書,教 科書等を用いて,従来型の講義形式で講義を行うことと定義 する。学生への発問や質疑応答を含める。 学生と教員との共同講義(以後共同講義) 担当教員と学生によって行う講義である。学生2名が1組と なり,1つの講義を担当する。講義時間は学生が30分,教員 が60分とした。シラバスの講義内容に沿った内容で学生が 講義を行う。講義の内容や組み立ては学生と教員で事前に相 談した。 技術演習(以後演習) 妊娠期で用いられるフィジカルイグザミネーションなどの技 術習得のための演習及び,事例を用いた事例展開などのグ ループワークを含む。1グループ3名から5名で構成されてい る。 小テスト 知識や技術の確認の目的で行う。知識の小テストは10問の 設問から構成される。技術の小テストは事前に評価内容を学 生に提示し,腹囲,子宮底長,レオポルド触診法,骨盤計測 を行う。2人の教員で評価を行う。長したところ」「妊娠期の学習で何を習得しましたか。 それは今後どんなシーンで,どのように役立ちそうで すか」を自由記述している。講義初回に学生全員に集 団的に説明を行い,記載用紙は毎回の講義分と講義全 体のまとめを記載する用紙をまとめて配布した。尚, 研究で使用することについては春学期成績入力終了後 に行った。今回,「あなたがめざす助産師になるために, 妊娠期の学習をどのようにすすめましたか」という課 題について,自由記述を分析する。 5.データ分析方法 研究依頼は助産師学生18名に行い,同意の得られ た18名が記述した「妊娠期の学習の進め方」の自由記 載を逐語データとした。講義・演習を通してどのよう に自己学習を進めたのかについて記載されたセンテン スを抽出し,コード化した。次にコード間の類似性と 相違性,関連性を検討しながら,サブカテゴリーとし, さらにサブカテゴリー間の相互の関係性を検討し,類 似の内容のまとまりをカテゴリーとした。データ分析 の信頼性を高めるために,データ分析は助産学,質的 研究,教育に精通している研究者で分析に偏りがない かメンバーチェッキングを行いながら検討を行い,妥 当性を確保した。 研究参加の同意を得る際に,口頭と文書で研究目的 と方法について集団的に説明を行った。研究への参加 は自由意思に基づくものであること,研究への参加・ 不参加によって何ら利益・不利益を生じないこと,研 究への参加に同意した後でも,参加を取りやめること ができ,その際も何ら不利益を生じないこと,講義修 了後に提出した記述内容の分析のためこれから学生に 記述や面談を求める事がないこと,分析の際は無記名 の状態で行うことを説明した。また,研究データの使 用目的と管理,守秘義務について説明した。研究への 参加は同意書への署名によって確認した。尚,春学期 の成績入力終了後に研究依頼を行ったため,学業と研 究参加の同意の有無は一切関係ないことを伝えた。分 析の際,主任研究者が記載されたデータをパソコンで ナンバリングし,無記名の状態で共同研究者と分析を 行った。データ分析ではデータの記載者がわからない よう配慮した。島根県立大学研究倫理審査委員会(承 認番号115)の承認を経て実施した。 1.対象者の概要 研究対象者は18名で,平均年齢は22.3歳(20歳から 30歳)であった。 2.助産師学生がめざす助産師になるための,妊娠期 の学習の進め方 分類の結果,2コアカテゴリー,5カテゴリー,11サ ブカテゴリーが抽出された。表2にカテゴリーの一覧 を示す。以下【 】はコアカテゴリー,《 》はカテゴリー, 〈 〉はサブカテゴリー,「 」はコードを示す。 1 )【確実に知識を自分のものにする学習】 妊娠期の学習を行う中で,知識を習得する上での学 習姿勢や学習したことを忘れないための工夫等を行っ ていた。具体的な内容は以下のサブカテゴリーから構 成されている。 (1)《積極的な姿勢で予習・復習に取り組み学習への 価値を見いだす》 受け身の姿勢ではなく,自ら積極的に学習を進めて いかなければ知識を確実に定着できないという想いが あった。「事前に取り組むようにした」「授業のプレゼ ンテーションに取り組み,事例を使って指導を行っ た」と〈授業に向けて予習を行う〉ことにより,予め疑 問点に向き合うことができ,解決のために積極的に授 業に参加していた。また疑問の解決やより知りたい情 報に対して「複数の教科書を用いて学びを深めた」「ポ イントを押さえつつ教科書を読む」「複数の参考書を 見比べ,教科書に書き込んだ」と〈複数の参考書,文 献を読み比べ,より深い知識を獲得する〉行動につな がっていた。 (2)《基本的な情報の必要性に気がつく》 まずは基本的な情報を獲得するために,〈自分を客 観的にみて次の学習方法・方策を考える〉といった, 自分自身の学習の傾向から対策を考え,学習方法を組 み立てていた。「自分だったらどうするのか,どうし たいかということを考えながら講義を受けた」と,実 際の場面をイメージしながら学習を深めていた。「正 常を知るということを心がけて講義に取り組んだ」と 目標を決めて講義を活用していた。「母体,胎児の健 康状態のアセスメントや保健指導はとても重要だと感 じた」のように,情報の意味付けが必要であり〈妊娠 週数に合わせた所見,検査値,検査データを覚える〉 具体的な対策をとっていた。
助産師学生の妊娠期の知識・技術習得のための学習の進め方 (3)《復習により知識の定着を図る》 予習で行ったこと,講義で学んだことを確実に自 分の知識とするために〈授業の復習や失敗したことの 振り返りを行う〉ことにより復習を行っていた。また, 「わからないことを,分からないままにしない」「わか らないことはすぐ調べる」「分からないところは他の 学生にも意見を聞いて,解決するようにした」と〈疑 問を即解決する〉ように心がけていた。また復習の方 法として,〈ミニテストの前後に授業の復習を行う〉と いった3回実施している小テストを活用し,ある程度 の区切りを持って復習を行っていた。 2 )【妊婦健診に必要な知識・技術を身につける学習】 実践的な技術を身につけるための工夫や技術に必要 な知識の習得について,実践の場面をイメージして 表2 「妊娠期の学習の進め方」のカテゴリー一覧 カテゴリー サブカテゴリー コード 確 実 に 知 識 を 自 分 の も の に す る 学 習 1. 積極的な姿勢で予習 ・復習に取り組み学習 への価値を見出す ①授業に向けて予習を行 う ・授業のプレゼンテーションに取り組み、事例を使って指導を行った ・事前に取り組むようにした ・予習・復習をするようにした ②複数の参考書、文献を 読み比べ、より深い知識 を獲得する ・複数の教科書を用いて学びを深めた ・教科書を読むよう意識して過ごした ・教科書等にたくさんメモを追加した ・複数の参考書を見比べ、教科書に書き込んだ ・教科書や文献などをしっかり読み理解を深めた ・複数の参考書を使用し学習を深めた ・ポイントを押さえつつ教科書を読む 2. 基本的な情報の必要 性に気がつく ①自分を客観的にみて次 の学習方法・方策を考え る ・自分だったらどうするか、どうしたいかということを考えながら 講義を受けた ・正常を知るということを心がけて講義に取り組んだ ・日々の授業だけで精一杯だった ・毎回の授業内容を理解し、吸収するよう努力した ・授業をしっかりと聞き、妊婦や胎児のイメージがより具体的なも のになるようにした ②妊娠週数に合わせた所 見、計測値、検査データ を覚える ・母体、胎児の健康状態のアセスメントや保健指導はとても重要だ と感じた ・計測値や妊娠週数に合わせた正常所見正常を覚え込むようにした ・診断に必要な検査データや所見など覚えるようにした 3. 復習により知識の定 着を図る ①授業の復習や失敗した ことの振り返りを行う ・自分の学習を振り返り、失敗したところは見つめ直すように努力 した ・授業の復習を行い、理解するようにした ②疑問を即解決する ・分からないところは他の学生にも意見を聞いて、解決するように した ・わからないことはすぐに調べるようにした ・わからない言葉はすぐに調べるようにした ・分からないことを、分からないままにしない ③ミニテストの前後に授 業の復習を行う ・ミニテストに向けて教科書でポイントを復習した ・小テストに向けて復習を行った ・ミニテスト後は復習を行った ・小テストで知識不足を実感したので、時間を見つけて復習した ・ミニテストで満点をめざし、授業内容を復習した 4. 妊婦自身を理解しよ うと努力し、必要な計 測技術の知識を習得す る ①対象の理解を深めるた めに、状況を多角的に捉 える工夫を行う ・事例展開(ペーパーペーシェント)では、多角的に対象を理解し ていくようにした ・身近にいる妊婦に話しを聞いて妊婦の心理面などの理解に努めた ②技術習得のために、フ ィジカルイグザミネーシ ョンの知識を深める ・計測部位の正しい計測方法を学んだ ・必要な知識や技術を習得するために勉強を進めた ・妊婦健診をイメージしながら問診方法について学習した 5. 実際の妊婦健診を想 定した、実用的で実践 的な技術を身につける ①技術を身につけるため に、繰り返し技術練習を 行う ・技術では繰り返し練習して、経験を積むようにした ・計測方法がある程度身についたところから自分なりに流れを作っ て練習した ②実践を想定し、イメー ジを膨らませながら模擬 妊婦を設定し技術の練習 を行う ・いろいろな人の計測を行ってなれていった ・どうやればできるだけ安楽になるか考えながら行った ・学生同士で知識や技術を確認しあった ・実際をイメージしながら技術練習を学生同士で行った ・技術は学生同士で練習した 妊 婦 健 診 に 必 要 な 知 識 ・ 技 術 を 身 に つ け る 学 習
(1)《妊婦自身を理解しようと努力し,必要な計測技 術の知識を習得する》 実習はまだ始まっていない時期であるため,学生は 妊婦との関わりをイメージしながら学習を進めていた。 「事例展開(ペーパーペイシェント)では,多角的に対 象を理解していく」ことに視点をおき,実際に「身近 にいる妊婦に話しを聞いて妊婦の心理面などの理解を 深めた」と〈対象の理解を深めるために,多角的に捉 える工夫〉を行っていた。実践に備えて〈技術習得の ために,フィジカルイグザミネーションの知識を深め る〉ことに努めていた。「計測部位の正しい計測方法を 学んだ」「妊婦健診をイメージしながら問診方法につ いて学習した」と対象を想定した学習を行っていた。 (2)《実際の妊婦健診を想定した,実践的な技術を身 につける》 学生は「技術では繰り返し練習して,経験を積むよ うにした」と反復することで技術を身につけようとし ていた。また,「計測方法がある程度身についたから 自分なりに流れをつくって練習した」と,技術を身に つける段階でステップアップできるよう工夫していた。 〈技術を身につけるために,繰り返し技術練習を行う〉 と,目標達成のために創意工夫をしていた。さらに, 〈実践を想定し,イメージを膨らませながら模擬妊婦 を設定し技術の練習を行う〉方法を取り入れていた。 モデル人形ではなく,さまざまな体型の対象を想定し, 「実際をイメージしながら技術練習を学生同士で行っ た」「いろいろな人の計測を行ってなれていった」のよ うに,自信がつくまで練習を繰り返していた。
Ⅴ.考 察
本調査から,助産師学生がめざす助産師になるため の妊娠期の学習の進め方として,【確実に知識を自分 のものにする学習】と【妊婦健診に必要な知識・技術 を身につける学習】の2つの学習の進め方が明らかと なった。 1.【確実に知識を自分のものにする学習】 学内での妊娠各期の妊婦健康診査のシミュレーシ ョン学習における助産師学生の学びの過程では(千葉, 2014,p26-33),ロールプレイを実施し観察すること で,助産師が妊婦健康診査を行う際の臨床イメージを にし,それまでに見過ごしていた不明点を明らかにし ていた。また助産師学生の助産過程の展開の思考プロ セスについて実習終了後に調査した羽根田・楢原・山 (2007, pp.105-117)は,学生は助産過程の評価にお いては実践過程に集中する傾向があったと述べている。 助産師学生が知識を習得するための学習方法について, 学内での学びの過程を調査した既存研究は見当たらな かった。 医学教育について伴(2013, p.156)はこれから専門領 域に進もうとする人たちに,このような領域があって, その目標はこのようなものですとモチベーションを高 めれば,あとは自学自習していくということが可能な 時代になっていると述べている。自己学習力において 藤田(2013, p.6)は,助産師学生は看護の学習を終え ている。キャリア意識としては,看護を学習した中で 意識付けられていることも考えられるが,より専門性 を持った助産学を学ぶことでさらに深められたと示唆 している。助産師学生は,「助産師になる」という同じ 目標を持ち学習を行っている。目標に向かって,より 専門的な学習を深めること自体,モチベーションを高 めており,結果として主体的に予習・復習を行い,学 習を深める原動力につながっていると推察される。野 口・竹内・宮本(2006, p.93)は学習過程の中でつまず いたり,他の人の技術を観察することで気づくことを 大切にしながら,自己の課題を明確にして次の段階へ 学習を進めることが大切だとしている。助産師学生は, 講義で分からなかったことや失敗したことについて振 り返り,自分を客観的にみて学習方法の方策を考えて いた。小課題達成の積み上げ学習法と自己教育力の調 査で小磯・長島(2013, pp.46-48)は,学生にとって小 課題を一つ一つ丁寧に達成していく過程が学習への内 発的動機付けとして大変重要であることを明らかにし ている。加えて,他の学生が調べた内容を聴くことに よって,さらに学習内容を確認していく過程をもつこ とは,さらに学びを深める結果となったと述べている。 本学ではシラバスにて講義内容を入学時に提示してお り講義内容の予定が明確になっている。また,講義内 で3∼4週毎に小テストを行うことは,課題達成のた めのきっかけとなり復習を行うまたは知識を深める動 機付けになったと考える。助産師学生は,教科書を中 心に学習しており,また複数の教科書を用いて知識を 深める工夫をしていた。助産師学生は,講義で取り入助産師学生の妊娠期の知識・技術習得のための学習の進め方 れているプレゼンテーションにおいて分かりやすく伝 える工夫を行っていた。また,自分がわからないとこ ろは他の学生も同様であると考え,多くの資料をもと に準備を進めていた。さらに,質問対応も予め講じて おり,その過程で知識の習得と学習への価値を見いだ したと考える。近藤・萩・大西(2008, p.19)は講義に おいて振り返り表を用いて自分の「感じたこと,思っ たこと,学んだこと」を講義終了後に記入することは, それらの過程を短時間で体験することになり,学習の 転移がおこり,授業内容の理解を促進させたといえる と述べている。助産診断技術学Ⅰ(妊婦)では,講義 終了後に学びと課題を学生が記載している。このこと が自らの課題発見や学習の整理につながり,次に何を したらいいのか,足りない知識はなにかに気がつくこ とができたと推察される。学習内容に興味関心をもつ 取り組みは,学生が主体的に学ぶ姿勢を身につける機 会となったと考える。 助産師学生自身が講義や演習毎に自己目標を設定す ることは,自己解決能力や今後の自己学習課題に気が つくことができると示唆される。 2.【妊婦健診に必要な知識・技術を身につける学習】 助産師学生は,知識・技術を確実に身につけるため に,実践の場面を想定して学習を進めていることが明 らかとなった。 助産師教育における技術習得について野口・竹内・ 宮本(2006, p.93)の調査では,助産診断・技術学の講 義及び演習などの学習過程の中で,自己の課題を明 確にしながら,繰り返し演習・実習することで,「確 実にできる」という意識が高くなったと示唆している。 本調査においても技術習得のために繰り返し練習を行 っていた。練習を繰り返すことで自信をつけていたと 考える。また,確実にできるという自信ができると, 次のステップとして実際の場面を想定した練習を行っ ていた。地域看護学における実践能力の育成において 山崎・今村・中柳(2009, p.38)は,学生は《自己の課 題》を常に抱きながら演習に臨んでおり,特にロール プレイによる発表での学びの割合では,約半数を占め, 体験したことを振り返り,課題を発見している段階に あったと述べている。本研究の助産師学生は学生同士 での技術練習を講義時間内外で行っている。看護で体 験したことを思い出し,体験していない学生にも伝え ていたと考える。複数での練習により,グループダ イナミクスが発揮され,さらに上達するための工夫が なされたと考える。技術習得への指導として,学習過 程において自己評価を行う機会を設けることは,主体 的学習態度を養うことにつながる(野口・竹内・宮本, 2006, p.94)。今回,自己評価を行う機会は設けていな いが,技術テストにおける評価基準を技術演習の講義 時に提示していた。これらが自己評価および練習中の 他己評価の動機付けになっていたと推察される。 助産師学生が妊婦健診を具体的にイメージできるよ う体験や学びの情報提供,実際の場面を想定した場所 や物品,対象となる様々な週数の妊婦モデル等を設定 することは,助産師学生が積極的に知識・技術を身に つけるための効果的な方法であると考える。
Ⅵ.結 論
助産師学生の妊娠期の学習として【専門職意識を高 め,確実に知識を自分のものにする学習】では《積極 的な姿勢で予習・復習に取り組み学習への価値を見い だす》,《基本的な情報の必要性に気がつく》,《復習に より知識の定着を図る》の3つのカテゴリーが抽出さ れた。【妊婦健診に必要な知識・技術を身につける学 習】では《妊婦自身を理解しようと努力し,必要な計 測技術の知識を習得する》,《実際の妊婦健診を想定し た,実用的で実践的な技術を身につける》の2つのカ テゴリーが抽出された。助産師学生は,自分を客観的 にみて学習方法の方策を考えていた。助産師になると いう目標に向かって,主体的に予習・復習に取り組ん でいた。また,技術習得においては,繰り返し練習を 行い自信がついた次のステップとして,実際の場面を 想定した練習を行っていた。さらにグループでの学習 が自己評価や他己評価の動機付けになっていたと考え る。助産師学生が自らの学習目標を明確にすることで, 自らの学習課題が明らかになり,目標達成に向けて自 ら工夫して学習に取り組んでいることが示唆された。Ⅶ.本研究の限界と課題
本研究は,18名の助産師学生の記述を逐語録にし, データを分析した。しかし1校での調査であり,学習 環境の特徴的偏りは否定できない点から,一般化には 限界があると考える。今後は,より多くの教育機関や 学生を対象に,データを増やし研究を重ねていく必要 があると考える。cine Research, 33(2), 156-162. 藤田小矢香(2013).講義形式別にみた助産学生の自己満 足度と達成度の関連̶助産診断技術学Ⅰ(妊婦)での 取り組み̶.島根県立大学出雲キャンパス紀要,8, 1-8. 羽根田公江,楢原陽子,山 トヨ(2007).助産師学生の 助産過程の修得状況に関する一考察.埼玉医科大学短 期大学紀要,18, 105-117. 堀内寛子,服部律子,谷口道英,布原佳奈,名和文香,宮 本麻記子(2007).本学学生の分娩介助技術習得のプ ロセスとそれに応じた臨床指導のありよう.岐阜県立 看護大学紀要,7(2), 9-17. 勝又浜子,門脇豊子,清水嘉与子,森山弘子(2013).看 護法令要覧平成25年度,pp.110-1111,東京:株式会 社日本看護協会出版会. 菊池圭子,遠藤恵子,西脇美春(2008).助産学実習にお ける助産診断・技術の到達度と自己評価能力.山形保 健医療研究,11, 83-92. 法を取り入れた学生の感想の分析̶.医療保健学研究, 4, 41-50. 近藤信子,萩典子,大西信行(2008).振り返り表導入に よる学習効果.四日市看護医療大学紀要,1(1), 15-20. 野口純子,竹内美由紀,宮本政子(2006).助産師教育に おける技術教育方法の検討̶入学時の看護技術の習得 と学習過程̶.香川県立保健医療大学紀要,3, 87-95. 千葉陽子,我部山キヨ子(2014).助産師学生による妊婦 健康診査のシミュレーション学習:助産診断・技術項 目の到達度評価と学びのプロセスの分析.京都大学大 学院医学系研究科人間健康科学系専攻紀要:健康科学, 9, 26-33. 山崎律子,今村桃子,中柳美惠子(2009).地域看護学に おける健康教育の演習方法の検討̶学生の学びの分析 より̶.日本看護学教育学会誌,19(2), 33-39. 山内まゆみ(2007).助産学生の学習到達度とその関連要 因の分析.旭川医科大学研究フォーラム,8(1), 25-35.