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入院高齢心不全患者における早期レジスタンストレーニングの安全性と身体機能への効果

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 540 47 巻第 6 号 540 ∼ 550 頁(2020 年) 理学療法学 第 47 巻第 6 号. 研究論文(原著). 入院高齢心不全患者における 早期レジスタンストレーニングの安全性と身体機能への効果* ─ランダム化比較試験─. 猪 熊 正 美 1)2)# 臼 田   滋 2) 生 須 義 久 1) 福 司 光 成 1) 山 下 遊 平 1) 桒 原 拓 哉 1)   中 野 晴 恵 1) 設 楽 達 則 1) 高柳麻由美 1) 風 間 寛 子 1) 吉田知香子 3)   中 出 泰 輔 4) 村 田   誠 4) 安 達   仁 4) 大 島   茂 4). 要旨 【目的】本研究は,入院期高齢心不全患者における早期レジスタンストレーニング(resistance training: 以下,RT)の安全性と実行可能性および身体機能への効果について検討することである。 【方法】RT の 適応基準,禁忌,除外基準を考慮した高齢心不全患者を RT 群とコントロール群との 2 群に無作為割付け した。また,主要アウトカムを膝伸展筋力とし,副次アウトカムを快適歩行速度と SPPB とし,これら の介入前後と群間の差を比較した。【結果】膝伸展筋力と快適歩行速度は交互作用が有意であり,RT 群 の方で改善が顕著であった。effect size は,RT 群の膝伸展筋力と快適歩行速度は中程度,RT 群の SPPB とコントロール群の膝伸展筋力,SPPB は小程度であった。【結論】入院高齢心不全患者において早期レ ジスタンストレーニングは適応,禁忌,除外を明確化し段階的な負荷量で漸増すれば安全かつ効果的に実 行できることが示唆された。 キーワード 入院期,高齢心不全,レジスタンストレーニング,安全性,効果. はじめに. れ. 1). ,心不全患者の多くは再入院を繰り返す度に身体機. 能, 運 動 耐 容 能,QOL(quality of life) が 低 下 す る。.  本邦の高齢者人口,高齢者の割合は急増しており,65. さらに,入院による安静治療を余儀なくされるため,運. 歳以上の老年人口割合の急増が予測されているなか,心. 動耐容能や身体機能の低下に陥る。このような心不全患. 不全患者数は 2030 年には 130 万人に達すると推計さ. 者の再入院予防や入院時の身体機能,運動耐容能低下を. *. Effects and Safety of Early Resistance Training in Hospitalized Older Patients with Heart Failure: A Randomized Controlled Trial 1)群馬県立心臓血管センターリハビリテーション課 (〒 371‒0004 群馬県前橋市亀泉町甲 3‒12) Masami Inokuma, PT, MSc, Yoshihisa Namasu, OT, MSc, Akinari Fukushi, PT, MSc, Yuhei Yamashita, OT, MSc, Takuya Kuwahara, PT, MSc, Harue Nakano, PT, Tatsunori Shitara, PT, Mayumi Takayanagi, OT, Hiroko Kazama, PT: Division of Rehabilitation Medicine, Gunma Prefectural Cardiovascular Center 2)群馬大学大学院保健学研究科 Masami Inokuma, PT, MSc, Shigeru Usuda, PT, PhD: Gunma University Graduate School of Health Sciences 3)群馬県立心臓血管センター看護部 Chikako Yoshida, Nrs: Nursing Department, Gunma Prefectural Cardiovascular Center 4)群馬県立心臓血管センター循環器内科 Taisuke Nakade, MD, Makoto Murata, MD, Hitoshi Adachi, MD, Shigeru Oshima, MD: Division of Cardiology, Gunma Prefectural Cardiovascular Center # E-mail: [email protected] (受付日 2019 年 11 月 29 日/受理日 2020 年 4 月 30 日) [J-STAGE での早期公開日 2020 年 8 月 31 日]. 予防することが急務である。  本邦における慢性心不全患者を対象とした大規模登録 観察研究である「慢性心不全を対象とした調査研究 (Japanese Cardiac REgistry in CHF-CARDiology: JCARE-CARD 研究) 」. 2)3). では,平均年齢 71 歳と高齢,. 特に女性で高齢者の割合が高いことが示され,慢性腎臓 病(chronic kidney disease:以下,CKD)71%,高血 圧:53%,心房細動:35%,糖尿病:30%,貧血:21% が高率に認められ,多疾患を有する対象の割合が高いう え,CKD や貧血を合併する心不全対象の死亡率,再入 院率は有意に高いことが明らかになった. 4). 。その中でい. かに患者個々に合った治療を提供し,身体機能や運動耐 容能の改善を図るかが重要となる。心不全の予後不良因 子について多くの報告. 5). があるなか,理学療法が介入.

(2) 入院高齢心不全患者における早期レジスタンストレーニング. することで改善が見込まれる項目には運動耐容能や日常. 対象および方法. 生活活動(activities of daily living:以下,ADL)が含 まれている。Kamiya らは,虚血性心疾患において ADL 自立を獲得するうえで必要な膝伸展筋力は 35% BW(% 6). 541. 1.研究の概要  研究対象は,2016 年 11 月 1 日∼ 2017 年 8 月 31 日の. と述. 間に心大血管疾患リハビリテーションで算定条件を満た. べており,筋力や運動耐容能を改善させ ADL が自立す. す疾患を有し,群馬県立心臓血管センターに心不全の急. るために下肢筋力を向上させることが重要である。さら. 性増悪で入院し医師からリハビリテーションが処方され. BW =筋力 kgf / 体重 kg × 100)が必要である. に,高い酸素利用能を達成させるためにはミトコンドリ. た心不全患者全例として,CONSORT2010 ガイドライ. アの機能や量などの代謝要因に加えて,ある程度の強度. ン. の運動負荷に耐えうる筋パワーによる機械的要因も関与. プルサイズは,G*Power にて t 検定(effect size:0.5,. している。そのため,下肢筋力の改善を図ることは特に. 有意水準(α ):0.05,検出力(power):0.8)で計算し. 高齢心不全対象者にとって焦眉の問題である。. た結果,102 例であった。同期間の対象症例の 240 例の.  心不全患者において運動耐容能低下は予後不良因子の. うち,レジスタンストレーニングの実施に影響を及ぼす. 主要な病態のひとつであり,運動耐容能や筋力が低けれ. ような合併症のない症例を対象として抽出した。120 例. 7). ば低いほど予後が悪くなることも知られている 。運動 耐容能低下を規定する因子は様々である. 8)9). が,心機能. を含む中心循環より骨格筋機能を含む末梢因子が重要な 10). 16)17). に基づいてランダム化比較試験を行った。サン. が調査対象外となり,ランダム化比較試験の対象症例は 120 例であった。これらの対象に対して,本研究の目的, 方法,問題点について説明を行い,全対象から同意が得. 。これまでに. られた後に本試験を開始した。対象の属性とベースライ. 心不全患者における筋萎縮などの骨格筋異常についての. ンデータの調査は介入前に治療に関係していない臨床試. 役割を果たしていると考えられている 11)12). ,心不全に対する運動. 験調査スタッフが行った。アウトカムの測定は介入前後. 療法の重要性は明らかである。日本循環器学会の心血管. で実施した。割付けには置換ブロック法を用いて実施. 疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン. し,治療者や評価者は当院の理学療法士と作業療法士で. では慢性心不全患者に対しての運動療法はエビデンスレ. 実施し,介入前にベースラインとして基本情報,身体機. 研究は多数報告されており. 13). ,心不全患者に対しての運動療法は低. 能,認知機能,入院前 ADL,心臓超音波検査,血液生. 強度である有酸素運動を中心としてきた。一方で,骨格. 化学データを収集し,介入後に身体機能,認知機能,精. 筋をターゲットにした RT の実施は血圧の上昇,不整脈. 神機能,心臓超音波検査,血液生化学データを収集した。. ベル A とされ. や虚血を誘発する可能性があることから心不全の増悪を 危惧し好ましくないとされ積極的に行われてこなかっ. 2.倫理的配慮. た。1990 年以降になると RT の安全性や効果が多く報告.  本研究の実施にあたり,群馬県立心臓血管センター倫. されるようになり,2016 年に報告された心不全における. 理審査委員会の承認(承認番号:28008 号)を得た。研. RT の臨床成績結果のシステマティックレビューとメタ. 究への参加協力依頼の際,対象となる患者には,研究の. 14). では,RT や RT と有酸素運動を組み合. 目的・方法・内容や自由意思による研究への参加・不参. わ せ た 運 動 療 法 に よ り 最 高 酸 素 摂 取 量( 以 下,peak ˙ O2) ,QOL,6 分 間 歩 行 距 離(6 minutes walking V. 加,個人情報保護などを明記した書面で説明し同意の署. distance:6MWD)を有意に改善させることが解明され. たっては,ヘルシンキ宣言に基づき対象者の個人情報の. た。また,外来維持期を対象とし週 3 回・12 週間の RT. 取り扱いについて個人情報保護法を遵守した。. アナリシス. 名を得たうえで研究を実施した。また,研究の実施にあ. と有酸素運動を実施することで,有酸素運動単独より骨 格筋力と運動耐容能が改善することが報告されている。. 3.方法. 近年 RT は,日本循環器学会の心血管疾患におけるガイ.  対象が日本循環器学会の心血管疾患におけるリハビリ. ドライン. 13). でも慢性心不全患者に対する運動療法とし. て推奨されるようになった。また,European Society of Cardiology. 15). の RT を段階的に進めるプログラムでは,. テーションに関するガイドライン of Cardiology の statement. 13). ,American Heart Associ-. ation(以下,AHA)の statement 19). ,European Society. 15). 18). ,心不全を対象と. を参考とした RT の適応基準の. 入院期心不全患者でも比較的適用しやすいとされてい. した RT の禁忌事項. る。しかし,高齢心不全患者の入院早期における RT に. 以下の 3 項目に該当するかを確認した。①コントロール. ついては,明確な導入時期や負荷量の明記などはなく積. された心不全[① 1 週間以上利尿薬の増量がなくても体. 極的には行われていないのが現状である。本研究の目的. 重が安定している,②うっ血の症状がない(起座呼吸,. は高齢心不全患者の入院早期における RT の安全性や効. 浮腫,腹水,頸静脈怒張なし,③ 50 bpm <心拍数<. 果を検討することである。. 100 bpm で安定している,④狭心症状なし,不整脈なし,.

(3) 542. 理学療法学 第 47 巻第 6 号. もしくは頻度が少ない(Implantable Cardioverter Defibril-. 意識させて実施した。一方で,RT による心負荷を軽減. lator:ICD 作動≦ 1 回 / 月) ]で New York Heart Associ-. させるため,膝を伸展するときに呼気,屈曲するときに. ation(以下,NYHA)分類Ⅰ∼Ⅲ度の症例,②カテコラ. 吸気を意識させバルサルバ法に注意した。さらに心負荷. ミンが離脱されているか,③収縮期血圧≧ 80 mmHg で. の持続時間を軽減するため,運動間は少なくとも 1 ∼ 2. 起立性低血圧なし。次に,RT の禁忌. 13)15)18)19). につい. 秒あけ,セット間は 90 秒以上休息をとるようにした。. て 以 下 の 10 項 目 に 該 当 す る 場 合 に 除 外 と し た: ①. 実施方法については再現性を保つため,治療者や評価者. NYHA 分類Ⅳ度,②左室流出路狭窄,③非代償性心不全,. には定期的に実施方法の確認と指導をした。RT のモニ. ④コントロールされていない不整脈(上室性・心室性不. タリングについては,表 1 の 9 項目のうち 1 項目でも該. 整脈が増加傾向) ,⑤高度で症状のある大動脈弁狭窄症,. 当する場合には中止または変更を行った。運動強度の調. ⑥コントロールされていない糖尿病,⑦コントロールさ. 整は 30% 1RM で開始し運動自体が軽く感じ RPE(rate. れていない高血圧(> 180/110 mmHg) ,⑧重篤な肺高血. of perceived exertion)< 12 以下で実施できれば 40%. 圧(平均肺動脈圧> 55 mmHg) ,⑨急性大動脈解離(血. 1RM,50 % 1RM,60 % 1RM ま で 負 荷 量 を 漸 増 し た。. 栓開存型)を合併している,⑩重症心不全(ターミナル) 。. また,Con 群の運動療法は,ADL が自立していない患. さらに,① 65 歳未満の患者,②高度の整形外科疾患が. 者は RT を行わず ADL 練習を中心に実施し,ADL が. あり RT が実施できない患者,③高度の認知症がありリ. 自立していれば RT を行わず準備体操,自転車エルゴ. ハビリテーションが進行できない患者,④ RT に同意が. メーターかトレッドミルを利用した有酸素運動を 15 分. 得られない患者,⑤過去に本研究に参加し登録をした患. × 2 セット,整理体操の運動療法を実施した。RT 群の. 者,⑥極度の低 ADL で歩行が不可能な患者は除外とした。. 同等時間の 20 ∼ 40 分のリハビリテーションを実施した。.  適応・禁忌・除外基準を遵守し対象を RT 群とコント ロール(以下,Con)群の 2 群へ無作為化割付けをリハ. 4.臨床評価指標. ビリテーション開始の時点で実施した。医師からのリハ. 1)基本情報. ビリテーションが処方された順にエクセルで「乱数発.  年齢,性別,Body Mass Index(以下,BMI) ,疾患名,. 生:置換ブロック法」を使用し,0.5 以上を RT 群,0.5. 心臓超音波検査(Left Ventricular Ejection Fraction:. 未満を Con 群として割付けをした。対象者には RT 群. LVEF,E/A,E/E’) ,血液生化学データ(estimated Glo-. か Con 群かに割付けされているかを知らせずに実施し. merular Filtration Rate:eGFR,hemoglobin:Hb,. 一重盲検化とした。. albmin:ALB,Brain Natriuretic Peptide:BNP) , 入.  また,治療者や評価者は当院のリハビリテーションス. 院前 ADL(老研式活動能力指標)のデータを収集した。. タッフの理学療法士 6 名と作業療法士 2 名で担当した。. 心臓超音波検査で心収縮能の評価として,M モード法. 治療者は RT の実施記録表を用いて詳細に状況を記録. による左室容積,左室駆出率の計測で算出した LVEF. した。. を採用した。心拡張能の評価として,左室流入血流速波.  RT 群の運動療法内容は,ADL が自立していない患. 形の解析で行い,E 波(拡張早期波)と A 波(心房収. 者は ADL 練習と RT,ADL が自立していれば有酸素運. 縮期波)によって評価する指標を用いた。E/A は E 波. 動と RT を実施した。RT は膝伸展運動の 1 種類とし,. と A 波の比であり,左室拡張末期圧が測定でき,E/E’. そ の 進 行 に つ い て は European Society of Cardiology. は E 波と僧帽弁輪速度である E’ の両者の比で左室拡張. Exercise training in heart failure from theory to. 末期圧が推定できる. practice. 15). を参考に実施した。RT を実施するにあたり. 21). とされている。本研究では E/A. と E/E’ を心拡張能の指標とした。. 先行研究を参考に Hand held dynamometer(HHD,ア. 2)身体機能. ニ マ 社 製,μ Tas F-1) で 膝 伸 展 筋 力(kgf) を 測 定 し.  握力. 1RM(repetition maximum:膝伸展筋力× 0.187+0.188). ical Performance Battery(以下,SPPB) ,Functional Reach. を算出した. 20). 。30% 1RM の運動強度で RT を開始し,. 22). ,膝伸展筋力,片脚立位時間 22),Short Phys-. 23) 24) Test(FRT) ,最大歩行速度 ,バックスクラッチ. 左右の下肢で膝伸展運動を各 10 回× 2 ∼ 3 セット,週. 25) テスト(Back Scratch Test:BST) ,椅子座位指足. に 3 回または 1 日おきに実施した。負荷方法は重錘バン. 尖間テスト(Chair Sit-and Reach Test:CSRT). ドか膝伸展筋力トレーニング機器(Techno Gym,Leg. 測定した。介入前の身体機能測定はリハビリテーション. extension)を使用し,実施場所は病室ベッドかリハビ. 開始時に実施し,介入後の身体機能測定はリハビリテー. リテーション室とした。実施する際には椅子などに深く. ション終了日に実施した。また,最大歩行速度において. 座りタオルを膝下に敷き膝関節が 90°となるように適切. 介入後に行う測定は介入前と同じ条件で実施し,介入前. な肢位を設定した。RT を効果的に実施するため,2 秒. の測定で点滴台がある場合は評価者が点滴台を持ち歩行. かけて膝関節を伸展し,4 秒かけて屈曲し遠心性収縮を. に影響を与えないようにした。. 25). を.

(4) 入院高齢心不全患者における早期レジスタンストレーニング. 543. 表 1 レジスタンストレーニングのモニタリング項目(文献 13)15)18)19)改変) 【運動前のモニタリング】 1.体重が増加(3 日間で 2 kg 以上の増加)し,心不全症状が出現している場合は一旦中止:体重が減 少し心不全症状が改善すれば再開 2.血中 BNP が上昇傾向(前回の値より 100 pg/ml 以上の上昇) :レジスタンストレーニングの負荷量 を軽減(‒10% 1RM) 3.新たな心房細動,心房粗動の出現:その日は中止し,心房細動が減少または心拍数コントロールが つき次第再開,心房粗動の消失または減少で再開 4.食後 1 時間以内,同一時間帯に造影剤を使用した検査:最低でも 1 時間以上あけて実施 【運動中のモニタリング】 5.自覚症状(倦怠感の持続,前日の疲労感の残存,同一負荷量における RPE 2 以上の上昇,または RPE > 15):その日は中止し次回に症状が改善していれば再開 6.運動中の呼吸数> 40 回 / 分:その日は中止しプレトレーニング程度 7.心拍数増加傾向(安静時または同一負荷量における心拍数 30 拍 / 分以上の上昇)で,心不全症状の出現: その日は中止しプレトレーニング程度,心拍数が減少し,症状が改善すれば再開 8.運動中に上室性または心室性期外収縮の増加:その日は中止し,上室性・心室性期外収縮が減少す れば再開 9.運動中の血圧低下(20 mmHg 以上) :その日は中止.次回も同等の負荷量で実施し血圧低下があれば, 負荷量を軽減(‒10% 1RM) 【運動後のモニタリング】 10.運動後の疲労感が翌日にも遷延している:レジスタンストレーニングの負荷量を軽減(‒10% RM) 11.体液量(体重,浮腫,胸水貯留)が増加している:息切れの症状があれば中止し,症状がなければ レジスタンストレーニングの負荷量を軽減(‒10% RM) BNP: brain natriuretic peptide, RM: repetition maximum, RPE: rating of perceived exertion.   膝 伸 展 筋 力 26) は,HHD( ア ニ マ 社 製,μ Tas F-1). の踵に反対側の足尖部を接触させた立位の静止保持時間. を用いた。対象者は検査台の端で端座位になり,膝関節. を計測した。対象者は,サイドバイサイド立位,セミタ. が 90° になるよう膝下にタオルを設置した。続いて HHD. ンデム立位,タンデム立位の順で各 10 秒間保持し,実. のセンサーを下. 遠位前面の外果 2 横指近位に固定用ベ. 施困難となったところで測定終了とした。立位バランス. ルトの下端が位置するように固定し,ベルトの長さは力. の計測時には,対象者の前方に配置した椅子やテーブル. を入れたときに膝関節 90°になるように調整した。その. を把持した立位姿勢となり,足部の設置位置を確認した. 後に HHD の電源を入れゼロ補正を行った。対象者は体. 後に,対象者の任意のタイミングで手を離した時点から. 幹を垂直に保ち検査台の端を保持した状態で,約 3 秒間. 立位保持時間の計測を開始した。採点方法は,実施困難. で最大となりその後 5 秒まで定常状態となるように最大. 0 点,サイドバイサイドまで可能 1 点,セミタンデムま. 努力で等尺性膝伸展運動を実施した。検者は,測定中. で可能 2 点,タンデムまで可能 4 点とした。. パッドの位置が変わらないようにパッドを軽く保持し.  歩行テストでは,歩行時間(快適歩行速度)を対象者. た。1 回の練習後,30 秒以上の間隔をあけ 2 回測定し,. が普段歩いている楽な速さで歩行した時間をストップ. 高い方を採用した。体重の影響を取り除くために,この. ウォッチにて測定した。測定区間は助走路を設けず 4 m. 値を体重で除した等尺性膝伸展筋力体重比(kgf / 体重. とし,2 回測定したよい方の結果を採用した。採点方法. kg × 100)を算出した。. は,実施困難 0 点,8.71 秒以上 1 点,6.21 ∼ 8.70 秒 2 点, 27). の原版に準じて立位バラン. 4.82 ∼ 6.21 秒 3 点,4.82 秒未満 4 点とした。また,介. ス,歩行速度,椅子立ち座り動作の計測が含まれる簡易. 入後に行う測定は介入前と同じ条件で実施し,点滴台が. 身体能力バッテリーを用いた。満点は 12 点,最低点は. ある場合は評価者が点滴台を持ち歩行に影響を与えない. 0 点であり,0 ∼ 6 点は低機能,7 ∼ 9 点は中間機能,. ようにした。. 10 ∼ 12 点では高機能と評価される。.  椅子立ち座り動作の測定では,椅子座位から 5 回の連.  立位バランスでは,サイドバイサイド立位,セミタン. 続した立ち座り動作をなるべく速く繰り返し,動作開始. デム立位,タンデム立位の保持時間を計測した。閉脚立. から 5 回の立ち上がり動作終了後の完全立位までの所要. 位は両足底内側を接触させた閉脚立位での静止保持時. 時間をストップウォッチにて測定した。45 cm の椅子ま. 間,セミタンデム立位は任意側の踵に反対側の足尖部を. たはベッドでの立ち座り動作を評価した。立位時の膝関. 接触させた立位の静止保持時間,タンデム立位は任意側. 節の完全伸展が認められなかった場合や立ち座り動作中.  SPPB は,Guralnik ら.

(5) 544. 理学療法学 第 47 巻第 6 号. 図 フローチャート RT 群 : レジスタンストレーニング群,Con 群 : コントロール群. に着座が認められなかった場合には再測定を行った。採. て分析し,交互作用が有意であった場合には,群前に介. 点 方 法 は, 実 施 困 難 0 点,16.70 秒 以 上 1 点,13.70 ∼. 入前後を対応のある t 検定にて比較した。また,介入前. 16.69 秒 2 点,11.20 ∼ 13.69 秒未満 3 点,11.20 秒未満 4. 後 の 効 果 量(t 検 定 d) を 算 出 し た。 効 果 量(Effect. 点とした。. size)については,d の指標を用いて大きさの目安は 0.20. 3)認知・精神機能. ∼ 0.49 を小(Small) ,0.50 ∼ 0.79 を中(Medium) ,0.80.  認知機能検査は Mini-Mental State Examination(以. 以上を大(Large)とした. 28). 下,MMSE) ,精神機能検査は Hospital Anxiety and 29). Depression Scale(以下,HADS). を測定した。身体. 機能評価,認知・精神機能評価はすべて同日に測定した。. 30). 。統計解析には統計解析ソ. フト IBM SPSS Statistics 24.0 を用い,有意水準は 5% とした。 結   果. 5.統計学的解析方法. 1.取り込み対象者の結果.  介入前の対象の属性とベースライン・データと介入状.  フローチャートを図に示す。本研究の対象は 240 例の. 況について RT 群と Con 群の 2 群間の差を比較した。. うち,禁忌・除外基準に該当した対象 120 例を除いて無. また,主要アウトカムを膝伸展筋力とし,副次アウトカ. 作為化割付けを行い,RT 群 62 例,Con 群 58 例であった。. ムを快適歩行速度と SPPB とし,これらの介入前後と群. RT 群で 58 症例が割振られた介入を受け,4 症例が RT. 間の差を比較した。介入前の対象の属性とベースライ. (通常のリハビリテーションを含む)を 3 セッション以. ン・データ,および介入実施状況について,t 検定およ. 下しか実施できず,割振られた介入を受けられなかっ. 2. び χ 検定を用いて 2 群間の差を検定した。アウトカム. た。介入を受けるもリハビリテーション拒否 3 症例,病. については,反復測定二元配置分散分析(群×時間)に. 態変化 1 症例は介入を継続せず,予定外退院 3 症例は追.

(6) 入院高齢心不全患者における早期レジスタンストレーニング. 545. 表 2 対象の属性とベースライン・データ. 年齢(歳) 性別(男性 / 女性). All (n = 101). RT 群 (n = 51). Con 群 (n = 50). p value. 77.5 ± 7.0. 77.5 ± 6.7. 77.5 ± 7.3. 0.726. 53/49. 24/28. 29/21. 0.194. 22.0 ± 3.2. 22.0 ± 3.2. 22.1 ± 4.0. 0.915.  心房細動. 22(21). 11(22). 10(20).  陳旧性心筋梗塞. 16(15). 7(15). 9(18).  拡張型心筋症. BMI 疾患内訳:例(%). 15(15). 8(16). 7(14).  僧帽弁閉鎖不全症. 8(8). 4(7). 6(12).  虚血性心筋症. 8(8). 4(7). 4(8).  三尖弁閉鎖不全症. 7(7). 4(7). 4(8).  肥大型心筋症. 3(3). 3(6). 4(8).  高血圧性心筋症. 2(2). 3(6).  大動脈弁狭窄症. 2(2). 1(2). 1(2).  大動脈弁閉鎖不全症. 2(2). 1(2). 1(2).  たこつぼ心筋症. 2(2). 1(2). 1(2).  心サルコイドーシス. 2(2). 1(2). 1(2).  人工弁機能不全. 2(2). 1(2). 1(2).  先天性心疾患. 2(2). 1(2). 1(2).  僧帽弁狭窄症. 1(1). 1(2). LVEF(%) E/A. 0.915. 45.9 ± 16.6. 44.9 ± 17.4. 46.9 ± 15.7. 0.547. 1.1 ± 0.7. 0.95 ± 0.55. 1.37 ± 0.8. 0.070. E/E’. 12.7 ± 6.2. 11.8 ± 4.4. 13.4 ± 7.2. 0.550. 2 eGFR(ml/min/1.73m ). 50.0 ± 20.7. 51.9 ± 2.1. 50.0 ± 18.5. 0.496. Hb(g/dl). 11.9 ± 1.8. 12.3 ± 2.1. 12.4 ± 1.9. 0.724. 3.6 ± 0.4. 3.4 ± 0.5. 3.6 ± 0.4. 0.548. ALB(g/dl) BNP(pg/ml). 690.4 ± 520.7. 697.9 ± 530.7. 695.9 ± 619.7. 0.520. 握力(kg). 19.1 ± 8.0. 18.0 ± 7.8. 20.3 ± 8.2. 0.173. 膝伸展筋力(kgf/BW × 100:%). 32.4 ± 11.7. 30.2 ± 10.8. 34.7 ± 12.5. 0.054. 片脚立位時間(秒). 19.2 ± 29.1. 13.4 ± 24.4. 17.7 ± 26.9. 0.399 0.131. FRT(cm). 28.7 ± 8.3. 24.3 ± 8.4. 27.1 ± 9.9. BST(cm). ‒20.0 ± 12.2. ‒21.2 ± 11.7. ‒18.7 ± 12.6. 0.290. ‒5.7 ± 11.4. ‒6.2 ± 10.8. ‒5.2 ± 12.0. 0.668. 最大歩行速度(m/ 秒). 1.0 ± 0.6. 0.8 ± 0.3. 0.9 ± 0.3. 0.057. 快適歩行速度(m/ 秒). 0.6 ± 0.2. 0.6 ± 0.2. 0.7 ± 0.2. 0.052. CSRT(cm). SPPB(点). 8.2 ± 3.1. 8.0 ± 3.3. 8.5 ± 2.9. 0.017. 25.6 ± 3.2. 25.7 ± 3.0. 25.5 ± 3.4. 0.684. HADS: 不安(点). 5.5 ± 3.4. 5.3 ± 3.4. 5.6 ± 3.5. 0.488.    : 抑うつ(点). 5.3 ± 3.6. 5.0 ± 3.8. 5.5 ± 3.5. 0.536. 老研式活動指標(点). 10.7 ± 2.1. 10.8 ± 1.9. 10.7 ± 2.3. 0.273. MMSE(点). RT 群 : レジスタンストレーニング群,Con 群 : コントロール群,BMI: body mass index, LVEF: left ventricular ejection fraction, E/A: early diastolic wave atrial systolic wave, E/E: early diastolic wave, eGFRestimated glomerular filtration rate, Hb: hemoglobin, ALB: albumin, BNP: brain natriuretic peptide, FRT: functional reach test, BST: back scratch test, CSRT: chair sit-and reach test, SPPB: short physical performance battery, MMSE: mini-mental state examination, HADS: hospital anxiety and depression scale. 跡不能であった。Con 群では,56 症例が割振られた介. た。介入を受けるもリハビリテーション拒否 3 症例,心. 入を受け,2 症例がリハビリテーションを 3 セッション. 不全増悪 2 症例は介入継続せず,予定外退院 1 症例が追. 以下しか実施できず,割振られた介入を受けられなかっ. 跡不能であった。.

(7) 546. 理学療法学 第 47 巻第 6 号. 表 3 介入実施状況とレジスタンストレーニング群の最終負荷量 RT 群 (n=51). Con 群 (n=50). p value. 入院期間(日). 22.7 ± 14.3. 20.2 ± 12.5. 0.346. リハビリテーション実施日数(日). 14.6 ± 8.1. 13.4 ± 5.2. 0.312. 入院からリハ開始までの日数(日). 5.3 ± 7.2. 4.7 ± 3.5. 0.590. レジスタンストレーニング回数. 6.1 ± 4.5. 最終負荷量(例). 30%1RM. 20. 40%1RM. 9. 50%1RM. 12. 60%1RM. 10. 重錘バンド実施回数(回). 240. レジスタンストレーニング機器実施回数(回). 46. RT 群 : レジスタンストレーニング群,Con 群 : コントロール群. 2.対象の属性とベースライン・データ. することができた。.  対象の属性とベースライン・データを表 2 に示す。対 象の平均年齢は 77.5 歳と高齢で男性が多く BMI は 22.0. 4.各群におけるアウトカムの介入前後の比較. と痩せ型であった。疾患内訳については心房細動に次い.  アウトカムの介入前後の比較を表 4 に示す。主要アウ. で,陳旧性心筋梗塞,拡張型心筋症が多かった。心機能. トカムである膝伸展筋力と副次的アウトカムである快適. では LVEF が 45.9%と収縮機能は比較的低値ではなかっ. 歩行速度について,群(RT 群,Con 群)×期間(介入前,. たが,BNP は高く,腎機能は低い結果であった。また,. 介入後)での反復測定二元配置分散分析を実施した結. 握力・膝伸展筋力は低い傾向であり,歩行能力において. 果,交互作用が有意であった。群毎に介入前後で対応の. も低い結果となった。SPPB では,平均 8.4 点と中間機. ある t 検定で比較した結果,膝伸展筋力は両群ともに介. 能なパフォーマンスであった。認知機能では MMSE が. 入前に対して介入後に有意に改善を認めた。また,快適. 25.6 点と高い傾向であり,精神機能は不安・抑うつ傾向. 歩行速度は RT 群のみで介入前に対して介入後に有意な. も平均的には認められなかった。. 改善を認めた。SPPB は,期間の主効果が有意であり,.  2 群間の比較では,副次的アウトカムである SPPB で. 両群ともに改善を認めたが,交互作用には有意な差は認. Con 群の方が RT 群に比して有意に高値であった。その. められなかった。改善率については,RT 群で膝伸展筋. 他において有意差は認められなかった。. 力,快適歩行速度と SPPB で Con 群と比較して有意な 改善を認めた。. 3.介入実施状況と介入中のモニタリングの結果.  effect size は,RT 群の膝伸展筋力と快適歩行速度は.  介入実施状況と RT 群の最終負荷量を表 3 に示す。入. 中程度,RT 群の SPPB と Con 群の膝伸展筋力,SPPB. 院期間,リハビリテーション実施日数,入院∼リハビリ. は小程度であった。. テーション開始までの日数について両群において有意差 は認められなかった。RT 群の RT 実施日数は 6.1 ± 4.5. 考   察. 日であった。また,RT の最終負荷量は,30% 1RM が. 1.入院期 RT の対象者. 20 例,40 % 1RM が 9 例,50 % 1RM が 12 例,60 %.  本研究の取り込み対象の 240 例中,禁忌・除外項目に. 1RM が 10 例であった。. 該当した対象は 120 例(45%)と比較的多い結果であっ.  RT 群,Con 群の運動時のバイタルサインは運動前中. た。このことは,入院期高齢心不全患者を対象とした. 後でモニタリング項目に該当する患者は RT で 1 例該当. RT について過去に検討されていないため,安全面を十. したが,他の患者では該当する患者は認められず安全に. 分に考慮し,日本循環器学会の心血管疾患におけるリハ. 実施できた。RT 群で 52 例中,1 例がモニタリング項目. ビリテーションに関するガイドライン. 13). ,European Soci-. 15). ,AHA の statement 18),. に該当した。項目は運動中の血圧低下(20 mmHg 以上). ety of Cardiology の statement. であり,同時に洞性徐脈も認めた。本症例は冠動脈造影. 心不全を対象とした RT の禁忌事項. 検査後に食事を済ませ,その後にリハビリテーションを. 研究を考慮したことにより禁忌・除外項目が多くなった. 実施した際に病態変化が起こった。その他の対象者につ. と考えられる。高齢者においては併存疾患や重複障害が. いてはモニタリング項目に該当することなく RT を実施. 多く,既存の RT が実施できない対象も少なくないこと. 19). ,の複数の先行.

(8) 入院高齢心不全患者における早期レジスタンストレーニング. 547. 表 4 アウトカムの介入前後の比較 測定項目. Groups 介入前. 介入後. 改善率(%). 膝伸展筋力(kgf/BW × 100:%)  RT 群. 30.3 ± 10.6. 38.7 ± 12.8 *. 34.2 ± 38.2 †.  Con 群. 34.8 ± 12.5. 38.4 ± 13.1 *. 14.3 ± 30.8. F. p value. F. p value. 0.829. 0.365. 55.293. 0.000. 8.629. 0.004. 0.80 ± 0.26 *.  Con 群. 0.75 ± 0.25. 0.75 ± 0.27. Effect size. 0.79. 0.454. 0.64 ± 0.21. Group × Time. p value. 0.29. 快適歩行速度(m/ 秒)  RT 群. Time. F. 0.052. 15.995. 0.000. 14.615. 0.000. 26.7 ± 25.9 †. 0.76. 1.2 ± 28.8. 0.00. SPPB(点). 0.052. 0.820. 19.362. 0.000. 1.798. 0.183.  RT 群. 8.0 ± 3.4. 9.4 ± 3.1. 46.9 ± 82.4 †. 0.41.  Con 群. 8.5 ± 2.9. 9.2 ± 3.2. 7.7 ± 26.0. 0.24. RT 群 : レジスタンストレーニング群,Con 群 : コントロール群 , SPPB: short physical performance battery * : 介入前に対して p<0.05,†: Con に対して p<0.01. が推察される。. 2.入院期 RT の安全性について.  入院期間は RT 群が 22.7 ± 14.3 日,Con 群が 20.2 ±.  本研究において,RT 群に割付けた対象は 51 例であっ. 12.5 日とばらつきがあり対象個々により多様であった。. た。研究途中で予定外退院の 3 例,リハビリ中の病態変. 厚生労働省による平成 26 年対象調査概況で,心疾患の. 化となった 1 例が除外となった。表 1 に示す運動前のモ. 31). と報告されており,本研究の. ニタリングに該当する患者は認められず,運動中に 1 例. 対象者も全国平均とほぼ同様であったが,入院期間が. が該当したが運動後のモニタリングに該当する患者は認. 1 ヵ月以上長期化した症例も両群で認めた。次いで,リ. められなかった。病態変化となった 1 例においては,冠. ハビリテーション実施日数や RT 実施回数についても同. 動脈造影検査直後のリハビリテーション参加であった。. 様であり,1 ∼ 2 回の RT しか実施できない対象も少な. 主治医による診察の結果「心不全増悪によるものではな. くなかった。本研究の対象者は,医師からリハビリテー. く,迷走神経反射または造影剤や食直後の影響による血. ションオーダー処方のタイミングや時期が統一されてい. 流制限が原因でありリハビリテーションは継続」となっ. なかったことが,リハビリテーション実施日数と入院か. た。林. らリハビリテーション開始までの日数のばらつきが認め. 心筋収縮力の低下・末梢血管拡張・血圧低下・心拍数の. られた原因と考えられる。. 変動などがあるとしている。また,日本循環器学会の失.  取り込み患者の背景については,平均年齢 77.5 歳と先. 神の診断・治療ガイドライン. 行研究と同様に高齢であり,性別では男性 53 例(52%). 20%に将来失神発作やその前兆があり,冠攣縮性狭心症. であった。また,心血管疾患では男性が多いとの結果で. では 4 ∼ 33%の頻度で発作が生じると記されている。. あったが,本研究において有意差は認められなかった。. 本症例においても,食直後であり臓器へ血流が再配分さ. 本研究の対象者は心不全を対象とし弁膜症対象も多かっ. れていた状態であったと推察される。また,先行研究. た。心不全の原因理由のひとつである弁膜症は女性に多. から造影剤使用による循環動態の変化や虚血性心疾患の. 平均在院日数は 20.3 日. く罹患する. 32). 。という先行研究からも取り込み対象に. 34). らは,造影剤による循環動態への影響として,. 24). では,虚血性心疾患. 35). 病態による血管迷走神経反射による可能性も高いと考え. 弁膜症が多く女性の割合が増え,性別に有意差がなかっ. られる。. たものと考えられる。禁忌・除外理由でも「過去に本研.  高橋. 究に参加し登録をした対象」や「重症心不全(ターミナ. はなく,特に内部機能は我々が考える以上にお互いに影. ル) 」が上位になっていることからも,本研究の取り込. 響を及ぼしあっていると述べている。本研究も高齢で重. み対象は重症心不全患者が多かったことがわかる。腎機. 複疾患が多かったため,基礎疾患や合併症を十分に理解. 2. 能としては,eGFR:50.0 ml/min/1.73m で,慢性腎臓. 36). は,対象は単一臓器だけに問題をもつわけで. し RT の実施について意思決定することが重要であった。. 2. 病の定義のひとつでもある eGFR が 60.0 ml/min/1.73m.  入院高齢心不全患者の RT については報告がないのが. の条件を満たしている。eGFR は 40 歳を超えると加齢と. 現状であったため,本研究では安全を最優先にし,今回. 2 ともに低下し日本人での低下速度は 0.3 ml/min/1.73m /. は 10 項目の禁忌事項と 7 項目の除外基準,9 項目のモ. 33). と報告されている。このことからも,本研. ニタリング項目を設けた。その結果,120 例が該当し除. 究は高齢者が多数であり腎機能が低下している症例が多. 外対象が多い結果となった。しかし,予定外退院や病態. かったと推察される。. 変化となった対象を除いた 51 例の対象で合計 286 セッ. 年である.

(9) 548. 理学療法学 第 47 巻第 6 号. ションの RT を実施するも,急変や心不全増悪すること. 響は完全には排除することはできず,2 群において理学. なく安全に実施できた。このように,複数の先行研究を. 療法の介入以外の統制は十分であったとは否めない。今. 参考に詳細な禁忌・除外基準・モニタリングを設定する. 後は,身体機能に影響する因子についても統制したうえ. ことで安全に実施することが可能であった。今回の研究. で RT の効果を検討することが重要である。. 結果から禁忌・除外基準・モニタリング項目を考察し改 変することで,入院高齢心不全患者でもより安全に実施. 4.本研究の限界と今後の展望. することが可能になったと推察される。.  本研究は先行研究に沿った介入方法で実施し,詳細な 禁忌・除外基準に設定したが,1 症例において病態変化. 3.各群における介入前後の各評価項目の比較. が起こってしまった。.  主要・副次アウトカムの介入前後の effect size は,.  二元配置分散分析の結果では,RT 群において膝伸展. RT 群の膝伸展筋力と快適歩行速度に中程度,RT 群の. 筋力,快適歩行速度で交互作用が有意な結果であった. SPPB と Con 群の膝伸展筋力,SPPB に小程度の効果を. が,RT 群において介入前の膝伸展筋力が低値であった. 37). は,心不全対象には RT と有酸. ことが交互作用にも影響があったことも否めないだろ. 素運動の双方を実施することが効果的であると推奨して. う。今回は急性期病院での臨床研究であり,入院期間が. 得た。Maiorana ら. 38). は,週 3 回 45 分間の有. 短く入院日数に個人差があった。そのため,RT 実施回. 酸素運動,RT,有酸素運動 +RT の 3 つを心不全患者 ˙ O2 が 16.7%増加し(有酸素 で比較し,RT では peak V. 数および負荷量や効果にばらつきがでたのは否めない. 運動は 11.1%,有酸素運動 +RT は 14.2%) ,有酸素運動. や早期の RT の効果について重回帰分析も含めて検討を. では効果が認められなかったと報告している。先行研究. 重ねていきたい。心不全対象は予後が悪い進行性の病気. から,有酸素運動だけではなく RT の実施が膝伸展筋力. であり,再発予防こそが最高のリスク管理である. や身体機能に寄与したと考えられる。また,十分な栄養. そのため,入院期 RT が予後へ与える影響や副次的な効. 摂取があったとしても,安静臥床により筋蛋白合成,筋. 果として認知・精神面による効果も検討していきたい。. いる。また,Feiereisen ら. 39). が,今後も症例数を重ねて,導入時期や負荷量の再検討. 43). 。. と報告され,心不全患. 今回実施した RT では,座位での膝伸展運動であり,パ. 者は急性増悪により入院し安静治療を強いられることで. フォーマンスが低い対象でも実施可能であったが,高齢. 筋量・筋力は少なからず低下し身体機能やパフォーマン. 心不全患者においては膝伸展運動のみの RT ではなく,. スが低くなると懸念される。したがって,骨格筋に対し. 目的を明確にした具体的な動作による RT の実施がパ. て直接的に作用する RT は急性期の心不全患者にとって. フォーマンスや ADL の向上につながる可能性もあるだ. も重要な運動療法であると考えられる。. ろう。今後は,より安全で効果的な実施方法を明らかに.  本研究では,リハビリテーションが短期間であり推奨. していきたい。. 量,筋力はいずれも低下する. される RT の負荷量や実施回数は少ない結果であった。 しかし,先行研究では RT の筋刺激により,動員する運 動単位の種類と総数による調節(recruitment)や α 運動 神経の発火頻度による調節(rate coding)が関与. 40). し,. 短期間の RT でも神経系を改善させ筋力向上の効果があ る. 41). とされている。また,Busch ら. 42). は,冠動脈バイ. パス手術後の超高齢患者に対して 2 ∼ 4 週間の RT とバ ランストレーニングを実施したところ,Time-Up-and-Go Test や膝伸展筋力が有意に改善したと報告している。こ れらのように,高齢心不全患者に対して短期間の RT で. 結   論  入院期高齢心不全患者に対しての RT は,詳細な取り 込み基準・禁忌基準・除外基準・モニタリングを設ける ことで,急性期であったとしても安全に実施することが できる。さらに,下肢筋力が向上し歩行能力も改善する ことが示唆された。 利益相反  開示すべき利益相反状態はない。. も骨格筋機能に少なからず影響を与え筋力に変化をもた らしたと考えられる。RT による骨格筋機能の初期段階. 謝辞:本研究を実施するにあたり研究へのご理解,同意. 効果は神経系の適応による作用が大きいとされ,高齢心. し協力していただいた群馬県立心臓血管センターの対象. 不全患者の RT でも,膝伸展筋力と密接に関係している. 者様に深く感謝申し上げます。. 歩行能力やパフォーマンスが改善すると示唆された。本 研究の身体機能の結果は RT のみを実施した結果ではな く,RT 以外の活動量や病棟生活の影響も含まれている。 また,ランダム割付けを行っているため,背景因子や交 絡因子の影響は少ないと考えられるものの,これらの影. 文  献 1)Okura Y, Ramadan M, et al.: Impending epidemic-future projection of heart failure in Japan to the year 2055-. Circ J. 2008; 72: 489‒491. 2)Tsutsui H, Tsuchihashi-Makaya M, et al.: Clinical.

(10) 入院高齢心不全患者における早期レジスタンストレーニング characteristics and outcome of hospitalized patients with heart failure in Japan. Rationale and Design of Japanese Cardiac Registry of Heart Failure in Cardiology (JCARECARD). Circ J. 2008; 72: 489‒491. 3)Tsuchihashi-Makaya M, Hamaguchi S, et al.: Characteristics and outcomes of hospitalized patients with heart failure and reduced vs preserved ejection fraction. Report from the Japanese Cardiac Registry of Heart Failure in Cardiology (JCARE-CARD). Circ J. 2009; 73: 1893‒1900. 4)Hamaguchi S, Tsuchihashi-Makaya M, et al.: Chronic kidney disease as an independent risk for long-term adverse outcomes in patients hospitalized with heart failure in Japan. Report from the Japanese Cardiac Registry of Heart Failure in Cardiology (JCARE-CARD). Circ J. 2009; 73: 1442‒1447. 5)O’Connor C, Hasselblad V, et al.: Triage After Hospitalization with Advanced Heart Failure. 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