新興国経済
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SMBC NIKKO CAPITAL MARKETS LTD SMBC日興証券株式会社
EM フラッシュ:ブラジル/トルコ
新興国担当シニアエコノミスト 平山 広太 [email protected] ブラジル中銀はインフレ報告書でタカ派色を鮮明に ブラジル中央銀行は 6 月 28 日、四半期インフレ報告書を発表した。ゴールドファイン新総裁 を迎えてから初めて策定される報告書ということで注目されていたが、従来に比べてタカ派 色を鮮明にする内容であった。今次報告書を踏まえると、金融緩和への転換時期は従来の 想定よりも後ずれし、今年 12 月以降になると想定せざるを得ない。ただし、高金利政策の継 続は、復調を始めたブラジル景気にとって足枷ではあるものの、復調の流れを止めるほどの インパクトはないと現時点では想定しておくのが妥当であろう。 5 月の訪土外国人旅行者数は史上最大の落ち込みに 5 月の訪土(トルコ)外国人旅行者数は前年同期比-34.7%と、史上最大の落ち込みを記録 した。テロ活動の活発化と露土関係の悪化により、トルコ旅行を差し控える動きが広がってい る模様である。観光業はトルコにとって重要な外貨獲得源であるだけに、観光収入の減少 は、トルコ経済を下押しするだけでなく、経常収支の悪化を通じて通貨リラにも減価圧力を 加える公算が大きい。ただし、昨年 11 月のロシア軍機撃墜事件をきっかけに悪化した露土 関係に改善の兆しが見られる点には注目すべきである。新興国経済
EM フラッシュ:ブラジル/トルコ
新興国担当シニアエコノミスト 平山 広太ブラジル中銀はインフレ報告書でタカ派色を鮮明に
ブラジル中央銀行は 6 月 28 日、四半期インフレ報告書を発表した。今回は 13 日にゴールドファイン新 総裁を迎えてから初めて策定されるインフレ報告書ということで、金融政策スタンスに変化が見られるか どうかが注目されていた。ゴールドファイン氏は 13 日に就任演説においてインフレ抑制の必要性に繰り 返し言及していた1ことから、マーケットでは、新総裁の下でブラジル中銀は従来に比べてタカ派化する 可能性があるとの見方が広がっていた。こうした市場参加者の観測は、タカ派色を鮮明にした今回の報 告書によって確信に変わった模様である。 インフレ報告書は要約(Executive Summary)の結論部分で、「委員会は、現在の情勢は金融緩和を想 定した検討を許すものではないと改めて確認し」た2と述べ、当面の金融緩和に否定的な立場を表明し た。この一文を含む要約部分の最後のパラグラフは前回 3 月 31 日のインフレ報告書のそれと全く同じで ある。ただし、前回と文言が同じであるので総裁が交代しても政策スタンスに変更はなかった、と結論付 けるべきではない。前回の報告書の締め切り時点(cutoff date)で判明していた直近のインフレ率は 2 月 分の前年同月比+10.36%であり、インフレ率が先行きで本当に低下基調を辿るかどうかについて、ブラ ジル中銀はいまだ確信を持てなかったはずである。それに対して今次報告書の締め切り時点における 直近のインフレ率は 5 月分の同 9.32%であり、依然として高水準ながらも低下基調に入ったことはほぼ 間違いない状況である。にもかかわらず文言が前回と全く同一であったという点が重要であって、ゴール ドファイン総裁が率いるブラジル中銀は、インフレ率が低下に転じたというだけでは金融緩和の検討を始 めるには不十分との見解を、疑問を差し挟む余地なく示したことになる。 今次報告書で提示されたブラジル中銀のインフレ見通しは、金融政策当局と市場参加者の認識のズレ を端的に示すものであった。ブラジル中銀は、政策金利と為替レートについて、締め切り時点の実績が 今後も続くと想定した現状維持ケースと、締め切り時点における市場コンセンサス通りに推移すると想定 した市場予想ケースの 2 種類のインフレ見通しを作成している。ブラジル中銀がインフレ率の目標中央 値(+4.5%)への収斂を達成すべき時期と想定している 2017 年末時点のインフレ見通しは、現状維持ケ ースが前年同月比+4.7%なのに対し、市場予想ケースは同+5.5%となっている(図表 1)。つまり、現在 の高金利政策を今後も継続した上で、さらにレアル安が再び進行しないという前提をおいてようやく目標 は達成されるのであって、マーケットが見込むような早いタイミングでの金融緩和と緩やかなレアル安を 想定した場合には目標達成は困難、との展望を当局は思い描いているということである(図表 2)。 金融政策に関する市場参加者の見通しが修正を迫られるのは必至である。当社経済分析チームでは、 インフレ率の着実な低下を背景にブラジル中銀は今年後半の早い時期に金融緩和に転じると予想して きたが、今次報告書を踏まえると、政策転換のタイミングはインフレ率の目標レンジ内(+4.5±2%)への 収斂が確認できる今年 12 月かそれ以降に後ずれしたと考えざるを得ない。従って、インフレ率の低下と それを受けた金融緩和によってブラジル景気は今年後半に自律的な回復局面を迎えるとしてきた経済 見通しについても、局面転換の時期に関する想定を見直さざるを得ない。 ただし、上述のようにインフレ率は既に低下基調に入っている上、これまでの厳しい構造調整によって経 常収支が 4 月、5 月と 2 ヵ月連続で黒字を達成するに至るなど、ブラジルの経済ファンダメンタルズの好 転は目覚ましいものがある。また、金融政策が当面は緩和に転じないとしても、インフレ率の低下がマー ケットに織り込まれる形で市中金利は既に大きく低下しており、こうした資本コストの低下は景気復調を 後押しする公算が大きい。テメル政権の構造改革に対する期待も、5 月の政権発足当初に比べれば大 1 2016 年 6 月 14 日付の新興国経済「EM フラッシュ:ブラジル」参照。2 原文は” the Committee reiterates that these conditions do not allow to consider the hypothesis of monetary easing”。
ブラジル中銀は新総裁の 下で初のインフレ報告書 を発表 「現在の情勢は金融緩和 を想定した検討を許すも のではないと改めて確認」 現在の高金利政策を維持 してようやくインフレ目 標を達成できるとブラジ ル中銀は予想している 金融緩和への転換時期は 今年 12 月以降に後ずれ 高金利政策の継続にはブ ラジル景気の復調を止め るほどの影響はない
きく後退したと言わざるを得ないものの、歳出の伸びを前年のインフレ率以下に抑制する憲法改正案を 発表するなど、期待に応えるような動きも一部に見られる。ブラジル中銀の高金利政策の継続は、復調 を始めた景気にとって足枷ではあるものの、復調の流れを止めるほどのインパクトはないと現時点では想 定しておくのが妥当であろう。 図表1. ブラジル中銀とマーケットの見方に大きな齟齬 図表2. マーケットは今年後半の早い時期の金融緩和を見込む ブラジル中央銀行のインフレ見通し(6 月 28 日時点) インフレ報告書における政策金利と為替レートの前提 注: 現状維持ケースは、為替レートが 1 ドル=3.45 レアル、政策金利が 14.25%で先行き一定を前提した場合。市場予想ケースは、為替レート及 び政策金利が 6 月 17 日時点の週次エコノミスト調査のコンセンサス通りに 推移すると前提した場合 出所: ブラジル中央銀行、ブラジル地理統計院、ブルームバーグ、SMBC 日興証券 注: 市場予想はブラジル中央銀行の週次エコノミスト調査の 6 月 17 日時点 出所: ブラジル中央銀行、ブルームバーグ、SMBC日興証券
5 月の訪土外国人旅行者数は史上最大の落ち込みに
トルコで 6 月 28 日に発表された 5 月の訪土(トルコ)外国人旅行者数は前年同期比-34.7%となった(図 表 3)。減少率としては、1997 年 4 月に記録した前年同期比-33.9%を下回り、統計として遡れる史上最 大の落ち込みとなった。当社経済分析チームによる季節調整値は 197.5 万人であり、季節調整値ベース で旅行者数が 200 万人を割り込むのは 2009 年 1 月以来である。内訳を見ると、多くの国・地域からの旅 行者数が減少している中にあって、ロシア人訪問者の減少が著しい。外国人がトルコ旅行を躊躇せざる を得ない最大の理由は、昨年 7 月以降、IS(イスラム国)やクルド人武装勢力(PKK)との関係悪化を背 景とするテロ活動の頻発化である。直近でも、6 月 28 日にトルコ最大の都市イスタンブールの空の玄関 口であるアタテュルク国際空港で IS によると見られる爆弾テロが発生し、少なくとも 36 人が死亡したほか、 多数の負傷者を出した3。一連のテロ活動の死傷者の中には外国人も少なからず含まれており、治安の 悪化を懸念した外国人がトルコへの旅行を差し控えるとしても無理はないであろう。 他方、ロシア人旅行者数の減少は、テロ活動に加えて、トルコとロシアの外交関係悪化が影を落としてい る。昨年 11 月 24 日、トルコ軍が領空を侵犯したとしてロシア軍機を撃墜する事件が発生した4。ロシア政 府は領空侵犯の事実はないとしてトルコ政府に謝罪を要求したが、トルコ政府が謝罪を拒否して強硬姿 勢を崩さなかったため、ロシア側は 11 月 28 日にトルコに対する経済制裁を決定した。経済制裁の中に はロシアからトルコへの観光ツアーの禁止も盛り込まれていたため、制裁発動によってロシアからの旅行 者数は激減してしまった。2015 年にトルコを訪問した外国人旅行者数は述べ 3,624 万人に上るが、うち ロシア人は 365 万人を占めており、ドイツ人(558 万人)に次ぐ第 2 位であった。昨年 5 月には 50 万人超 3http://www.reuters.com/article/us-turkey-blast-idUSKCN0ZE2J1 4 2015 年 11 月 25 日付の新興国経済「EM フラッシュ:トルコ/南アフリカ」参照。 3 4 5 6 7 8 9 10 11 10 11 12 13 14 15 16 17 18 インフレ率(IPCA) ブラジル中銀見通し(現状維持ケース) ブラジル中銀見通し(市場予想ケース) (前年同月比%) (年) 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 4.0 4.5 2 4 6 8 10 12 14 16 10 11 12 13 14 15 16 17 政策金利(実績) 政策金利(現状維持ケース) 政策金利(市場予想ケース) 為替レート(実績) 為替レート(現状維持ケース) 為替レート(市場予想ケース) (政策金利、%) (為替レート、レアル/1ドル) (年) 訪土外国人旅行者数は史 上最大の落ち込みに 経済制裁でロシア人観光 客が激減新興国経済 のロシア人がトルコを訪れていたが、今年 5 月の旅行者数は 4 万人に過ぎず、ロシアの経済制裁がトル コの観光産業に甚大な悪影響を及ぼしているのは疑いを容れない。観光業はトルコにとって重要な外 貨獲得源であるだけに、観光収入の減少は、トルコ経済を下押しするだけでなく、経常収支の悪化を通 じて通貨リラにも減価圧力を加える公算が大きい。 図表3. 訪土外国人旅行者数の急減が続く 訪土(トルコ)外国人旅行者数の前年同期比変化率 訪土(トルコ)外国人旅行者数(季節調整値) 出所: トルコ文化観光省、CEIC、SMBC日興証券 注: 当社による季節調整値 出所: トルコ文化観光省、CEIC、SMBC日興証券 険悪な状況が続いてきた露土関係であったが、ここに来て改善の兆しが見えてきた点には注意を払う必 要があろう。ロシア政府は 6 月 27 日、トルコのエルドアン大統領がロシアのプーチン大統領に宛てた書 簡の中で、昨年 11 月のロシア軍機撃墜事件で死亡したロシア軍のパイロットの家族に対して哀悼と遺憾 の意を表したと発表した5。トルコ側はこの書簡がロシアに対する謝罪を示したものかどうかについて明言 していないが、ロシア側はこの書簡をそうしたものと認識している模様である。両者の認識の齟齬が今後 の外交関係に影響を与える可能性はあるものの、トルコがロシアに歩み寄りを見せた点は重要な変化で あろう。欧米からの経済制裁に苦しむロシアにとって、トルコとの経済関係の麻痺が望ましくないものであ ることは言うまでもなく、トルコにとってもロシアとの良好な関係は経済面だけでなく地政学的な面でも求 められる。現時点で露土関係が順調に正常化に向かうかはなお予断を許さないものの、そうした方向性 が見えてきた点は前向きに評価すべきである。 5http://jp.reuters.com/article/turkey-israel-russia-idJPKCN0ZE08G -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 12 13 14 15 16 その他 ジョージア イラン ブルガリア 英国 ロシア ドイツ 訪土者数 (前年同期比%、ppt) (年) 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 3.5 96 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (100万人) (年) 露土関係に改善の兆し
補 足
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