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為替レート,雇用および非貿易財-香川大学学術情報リポジトリ

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(1)

為替レート,雇用および非貿易財*

井 上 貴 照

I はじめに 非貿易財が,国際貿易において重要な役割を果たしていることは,今や,よ く知られており,非貿易財の存在が,国際貿易論に与える影響について多くの 研究がなされてきた。ところが,マクロ経済政策の有効性についても多くの経 済学者達によって考察されてきたが,そのたいていのものは,少数の例外を除 いて,非貿易財の存在しない場合についてそのような政策効果およびその他の 外生的撹乱の効果を分析している。 小論の目的は,変動相場制において非貿易財の存在する経済に対して財政金 融政策および他の外生的撹乱の効果を分析することである。われわれは,非貿 易財をもっ経済の実物的および貨幣的構造とマクロ経済政策の有効性およびそ の他の外生的撹乱の効果との関係に関心をもっている。 以下において,われわれは,小国開放経済を考える。その経済は,

2

種類の 財(非貿易財と貿易財)を生産し消費すえ〉各部門は,その部門にとって特殊 な生産要素と,部門聞に移動可能な生産要素である労働を用いる。われわれは, マクロ経済政策およびその他の外生的ショックの短期効果を考察するので,長 牢小論の作成にあたり, RW. Jones教授およびL.Feinstone教授より御指導を受けたこ とに感謝いたします。小論における誤謬は,私自身の責任であることは言うまでもありませ ん。 (1) たとえば, Helpman, E.. (4) (5) (6 ,)Noman, K (10)をみよ。 (2)小国モデルにおいて,非貿易財と貿易財とを区別しているモデルは,脚注(1)で言及され たもの以外は, Caves, R E.. and R W Jones (1) Appendix to Chapter 18, pp,361品2,

Dornbush, R (2) (3) ,Noman, K, op cit, Noman, K and R W. Jones (11)等があ

(2)

629 為替レート,雇用および非貿易財 -209一 期における特殊的生産要素の部門聞の移動の可能性を無視する。したがって, 実物資本は,分析が適用される期間においては変化しないと仮定する。さらに, 貨 幣 賃 金 率 は 一 定 で あ る と 仮 定 す る 。 そ の 結 果 , 外 生 的 撹 乱 の 総 労 働 雇 用 量 に 与える効果を分析することができる。 わ れ わ れ が 考 え る 経 済 に お い て は , 貨 幣 お よ び 債 券 が 存 在 す る が , 民 間 部 門 は 外 国 の 貨 幣 を 所 有 し な い し , ま た 債 券 の 国 際 取 引 は な い と 仮 定 す る 。 こ の こ と は , 国 際 資 本 移 動 が な い こ と を 意 味 し て い る 。 わ れ わ れ の 仮 定 し た 経 済 に お け る 部 門 構 造 的 お よ び 貨 幣 的 な 特 徴 が , 基 本 的 な 役 割 を 果 た す こ と が 示 さ れ る であろう。 第

I

I

節 に お い て は , 基 本 モ デ ル が 与 え ら れ 説 明 さ れ る で あ ろ う 。 第

I

I

I

節 に お い て は , 財 政 金 融 政 策 お よ び 他 の 外 生 的 撹 乱 の 効 果 が 議 論 さ れ る 。 そ し て , 第

I

V

節は,むすびにあてられている。

I

I

基本モデ/レ 本 節 に お い て わ れ わ れ は , 変 動 相 場 制 に お け る 小 国 開 放 経 済 を 設 定 す る 。 そ の 経 済 に お い て は ,Nによって表わされる非貿易財と ,Tによって表わされる (3) われわれは,貨幣賃金率が硬直的である経済を考える。 Helpman,Eは,貨幣賃金率が財 の価格に依存するという賃金制約をもっ経済の分析を行っている。Helpman,E (4) C 5) ( 6 。) (4) 外国から遮断された国内債券市場が存在するため,小国の仮定においても,自国の利子 率が決定される。 (5) われわれのモデルは,基本的には, Noman, K and R. W.. Jones,。戸 citに負っている。 生産側は彼らのモデルと同じであるが,彼らのモデルに債券を導入することにより,彼ら のように固定相場制のもとにおける議論ではなく,変動相場制においてわれわれの設定し た経済の特徴を分析する。 Noman, K op citおよびHelpman,E C 4 )においても,債 券市場が考慮されている。しかしながら, Noman,Kは,変動相場制の場合を分析する時, 完全雇用を前提とし,資産効果を導入したモデルで主に金融政策および国債の変化の効果 を検討している。 (Noman,K op citpp.89・98)0 Helpman, Eは,賃金制約という関係

式(脚注(3)をみよ)を用いて,貿易財を翰出財および輸入財に分類して分析している。わ れわれは,小国の仮定より,交易条件は外生的に与えられているので,輸出財および輸入 財を合成財である貿易財という概念でとらえ,貨幣賃金率が一定であると仮定している。

(3)

-210ー 第57巻 第3号 630 貿易財が生産され消費される。その経済の生産側の構造は,特殊的要素仮定

i

t

よって与えられており,貨幣賃金率が一定であると仮定されているので,総労 働雇用量は内生変数となる。経済の生産構造は,(1)一

(

6

)

式によってあたえられ ている。 (1) α:yNXN=

V

(

2

)

ぬIXI=K

(

3

)

αLNX日十aLIXI= L (4)α:YNry十aLNW = PN (5) aKIrK+aKNW

二円

(

6

)

仏j刊 j

(合)

ただし ,

X

日:非貿易財の産出高,

X

I :貿易財の産出高,alj:

X

j

の生産

1

単位当た り必要とされる生産要素iの量、

V:

非貿易財部門にとって特殊な生産要素の 賦存量、

K

,:貿易財部門にとって特殊な生産要素の賦存量、

L:

総労働雇用量、 内

0=V

K) :

生産要素

t

のl単位の使用に対するレンタル、

w

貨幣賃金率,

P

;

(j= N,T):財jの価格 (1)および

(

2

)

式は,それぞれの特殊的生産要素が

1

部門において完全に雇用 されていることを示している。

(

3

)

式は,総労働需要量が各部門における労働需 要量の合計から成り立っていることを表わしている。

(

4

)

および

(

5

)

式は,競争的 利潤条件(

c

o

m

p

e

t

i

t

i

v

eρr

o

β

t

c

o

n

d

i

t

i

o

n

s

)

を表わしている。 a¥jは,与えられた生 産要素価格のもとで,単位費用 (a日¥+aLjW)を最小にするように選択される。

(

6

)

式によって示されている

a

!jは,第j部門における要素価格の比に依存し

o

次同次関数である。 ここで,われわれは,金融資産(貨幣および債券)の保有高および財の需要 量が,消費者の効用関数において分離可能であると仮定する。その場合には, 民間部門の需要量は,非貿易財の相対価格と実質支出に依存することになる。 (6)特殊的要素モデルについては, Caves, R.E.and R. W,

J

o

n

e

s

o

p

, cil第6章およびその 付録,Jones,R W, C 7)等をみよ。

(4)

631 為替レ-1--,雇用および非貿易財 -211-われわれの経済の需要側は, (7)-ω)式によって与えられる。 一 ( 主 主 ) (7) ~=~ 九 ,

p

(fi

E)

(8) D, = D r 戸 一

P

一 (9) E=PN~+P,Dr 側

E

=

ε

(

E

i

)

(ll) Y =凡XN十円 Xr

2) P=P (九 ,P,) ただし ,Dj (j= N, T) :財 jの需要,E:民間総支出額,Y:貨幣所得,

P:

一 般 物 価 水 準 利 子 率 , (7)および(8)式は,財 jに対する需要が,非貿易財の相対価格と実質支出に依存 することを示している。

(

9

)

式および(1

D

式は,それぞれ

E

および

Y

の定義式であ る。われわれは,民間総支出額が,

Y

P

およびiに依存し,その関数は ,

Y

および

P

について一時間次であると仮定する。(1

)

0

式は,実質支出が,一般物価 水準によってデフレートされた実質所得と利子率に依存していることを表わし ている。一般物価水準は, (12)式において定義されている。関数Pは,九および

R

に関して一次同次である。 (13)式は,実質貨幣残高需要を表わし,その関数は,実質支出関数と同様に, 実質所得と利子率とに依存する。

ω

=z(

~

i

)

ただし ,Z:名目貨幣需要量 (14)一(16)式は,非貿易財,貿易財および貨幣の市場均衡条件を表わしている。 ωx日=~+~ ( 15)

X

r

=

Dr

+

G

r

(7) Djは,効用関数についての仮定から ,Dj=DJ (PN, PT, E) (j=N ,T)として導かれる。 需要関数

(

D

;lは, 0次閥次であるので,(7)および(8)式のような関数(D;)を得る。

(5)

-212- 第57巻 第3号 632

ω~

=

z

(

~

z

)

ただし, Gj(j= N,T):政府によって購入される財 jの量,

M:

貨幣のストッ ク (1日式は,貿易財の市場均衡ばかりでなく,国際収支の均衡を意味している。 われわれの経済においては,国際資本移動は存在していないの‘で,国際収支が 均衡しているということは,経常収支が均衡していることである。経常収支は, 貿易財の超過供給によって表わされるから,貿易財の市場が均衡しているとい うことは,経常収支の均衡を意味している。 貿易財の外国価格と国内価格との関係は,仰式によって示されている。 (17)

P

1 =RP~ ただし ,R:邦貨建て為替レート ,P干:貿易財の外国価格 われわれは,小国を仮定しているので,Pれま,外生的に与えられている。 (17)式は,一物一価の法則を表わしている。すなわち,為替レートによって換 算された貿易財の価格は,輸送費および関税を除けば,同じであるということ である。 (1)一(17)式は, 20個の方程式から成り立っている。しかし,(7)および(8)式のう ち,いずれか

l

つは独立ではないので,独立な方程式の数は,

1

9

となる。

1

9

個 の未知数 (X,日

X

r, L,行,rK, aVN, llKr, aLN, aLT> ~, D-r, E, Y, Z, 九,

g

i

, P, R)が与えられた変数(V,K, W, ~, Gr, Mおよび

P

干) に対して,決定される。 (1)一

(

6

)

式を微分することにより, (1

)

8

一(日)および

(

2

0

)

式を得るう〉

ω

=

ω

(FN-

'

W

)

( 19)

X

r

=

6r

(

F

1

側工=去

(aNeNFN

+

αr6rF1

一品

(8)側一(湖式の導出については,付録Iにおいて与えられている。

(6)

-213 ただし,変数上のハット(^)は,その変数の批判示す。 (egXN

=

!

:

L

)

八、ぜ

e

j

(i

= N

T

)

:財jの供給弾力也

e=

α山 +αTeT;9〉αj"国民所得

Y

J

ふる

P

.

X

財 jの比率 (α

T"-(j

= N

T))

,αL 国民所得 Yに占める労働分配率。 それぞれの産出高が,その産出高の価格の変化に対してど 為替レート,雇用および非貿易財 633 的

(j=N

T

)

は, れだけ感応的であるかを示している。完全雇用モデノレにおいては,貨幣賃金率 それぞれの財の価格 は,労働を含む与えられた生産要素のもとで 2つの財の価格に依存する。こ れより,各国の産出高が

2

つの財の相対価格の関数となる。貨幣賃金率が一 定であり,総労働雇用量が変化する時,各財の産出高は, のみに依存する。 (7)および

(

8

)

式を微分すると, J\ =D~ (PN-P1)+D~

(

E

-

P

J

β

1

1

=

-

D~

(

P

N -

P

1 )

+

Dl

(E

一角

杭 H M q L ( ) n F 白 。 , , u ( D~ ー(E/P) δA E -Aδ (E/P) Dl 一一(九 /PT) δZ~ , P -

D

r

δ

(

P

N/

P

1)

I

>

>

(j

= N

,T)は,需要の代替弾力性であり ,

DHj=N

,T)は, D~=.!;E/P) δ品 E -

D

r

δ(E/P) D~ ー( PN/民 )δ~ , P A δ (九/円) ただし, その支出弾 力性である。仰は負であり,仰は正でlより小さいと仮定する。これは,叫<

O

および

0<

叫 <

1

(j

= N

T)

と表現される。すなわち,非貿易財の相対価 格の上昇は,非貿易(貿易)財に対する需要を減少(増加)させ,実質支出の増加 は,両財に対する需要を増加させるが,実質支出が増加するほど増加させない。 ( 10)式を微分すると, (23)式になる。 Ê-P=~~

(

:

1

7

-

(23) (9)

.

y

=

a

N

X

N

+

a

T

X

T

であるから,もし 2つの財の価格が一定であるならば,

:

y

=

(

a

N

e

N

+

a.r針)(-T-tぅ

=e (

ー耐 となる。 2つの財の価格が一定であるとき,貨幣賃金率の減少によって実質所得が増加す る。 6は, 2つの財の価格が一定である時,貨幣賃金率の 1%の減少にともなう実質所得の 変化率を示している。 Noman, K. and R W J ones, op.. cil.p 302 (10) lbid.p..302

(7)

-214ー 第57巻 第3号 634

Y δ ε

E___i

δ

ε

ただし,

ξE=

一 一 一 一 一 一 一 および

Si-

一 一 一 一 一

E δ

(Y/P)

-

-

-

7 ' (E/P)説 おは,実質支出の実質所得弾力性であり, ~Hま,実質支出の利子率弾力性で ある。 ξ防t負で, ~~が正であるが 1 より小さいと仮定する。利子率の上昇は, 実質支出を減少させる。実質所得が増加する時,実質支出は増加するが,その 増加率は,実質所得のそれより小さい。すなわち,このことは ,ljfぐ

O

および

0<

許く

1

として表現される。

ω

式を微分すると,倒式を得る。 倒

y=

(

P

N

+

X

N)

+

αI

(

P

.

+X

r) ここで,

P

を次のように定義する。 (25) P=α'NPN十 町 民 。のおよび(却式を

ω

式に代入すると, (26)

E-

P= ~~ (α

NX

N

十αrXr)+~IEi になる。

ω

および(22)式は, (18), 1(9),

ω

, (2心,仰および(26)式を用いることによって,そ れぞれ, (27)および側式となる。 (27)

A =

(D~十 D~計αNeN)

P

N+

(-D~+D~~~α肉)民十 D~ξrt-D~~~eW (28)

ムニ(-

D~+ Dl~~αNeN)

P

N+

(D ~+Dl~~αr

e

r

) 民 +Dlξri-Dl~~eW

貨幣市場の需給均衡条件を微分すると(29)式を得る。

(

2

9

)

M= αN+~~αNぬ P

N

十 (αr+~~αT向 )

P

1 +~fi-~~eW

Y δ L

~~...I cz-_ _

i

δZ

ただし,~~ Z7--e:J(>(Y "IT / / P) D ¥ and ana l;P

(

"

Z

方芳子

おは,実質貨幣需要の実質所得弾力性であり, ~rは,実質貨幣需要の利子率弾 力性である。

o

<~~<

1

および喜子

<0

であると仮定する。すなわち,実質所得 の増加は,実質貨幣需要を増加させるが,後者の増加率は前者の増加率より小 さい。利子率の上昇は,実質貨幣需要を減少させる。 仙 この

P

の定義は ,ibid.p.299および

J

ones, R. W and D. D Purvis (8)において用い られている。初期均衡点において, Gj=Q (j=N,T)であると仮定しているので, PD aj=

すム

(j= N,T)となりウエイトは,民間支出における各財の比率を示している。

(8)

-215-為替レート,雇用および非貿易財 635 (αT 十 ~~αrer) 民 -~~eW-l陶 (29)式より(30)式を得る。

r

=

サ[

( 日 制 )

P

N

+

=

yNPN+y

P

一 拘

W-

γ

'

M

M

(30) y

=

;

(αr

+

~~ærer) ,

ら1

ただ川ニヲト

M μ

N

e

N

)

知=二豆

ι

~f l γM- ~f

and

すべての γj

C

i

= N,T,W,M)は,正である。 (30)式を(訂)および(28)式に代入すると, (3Dおよび(扮式が得られる。

A ニ (D~ 十 D~~~αN命十 D~.;'/1tN)

P

N

+

(

-

D~

+

D~~~αT 街 + D~~ryT)

P

-D~ ( ξ~e+ ξF附)

W-

D~~ryMM

βr=

(-D~+DJξPαNeN+ D~~[yN)

PN+

(D~+

DJ計α

r

e

+

DJξryT)

P

-DJ (ξ~e 十志向ベ/1)

W-D

技l'JtM

M

偏微係数に、ついての仮定より, ) 1 3 ( (32) 2つの財の市場均衡条件である側および(15)式は,仕7),(18), (19), (3Dおよび(32)式 を用いることにより, (33)式によって表わされる。ただし ,Gj(j= N,T)は,初 期均衡点においてゼロと仮定する。

AX=B

}

3

3 ( -D~+D~ξ拘1er +D~ξry,

(

1

-D~~~α'N)

e

N

D~-ただし, 一 一 A +D~~/1tN (1

-DJ

ξFαr) er +DJ~ry,

D

"

T

--Dþ+DJ~~α'NeN

)

X

(9)

-216 第57巻 第3号 B = 1

+ D

仇 品 問 蜘 仇

1/)

-

e

N

J

一 [-D~+D~.;~αr er 十 D~ごみrJ

-与+D納品 [D~ (ξ~e 吋恥)

-6rJ

[D

t-(1 一 D~.;~αr) er

+

D~.;l'yT J

636 行列式

I

A

I

の符号は,関数の偏微係数の符号についての仮定からは決定され ない。そこで,われわれは,比較静学という目的のために体系の安定条件を考 察する。経済の動学体系は,

P

N

=

ε

N

(

D

r

.

+

- X

N) (泊)~

P

r

=

εr (Dr

+

G

r -;

Xr

)

Y

M

o=z(

一一P'" P

i)一一一 であると仮定する。ただし,変数上のドット(・)は,時間に関する微分を示 す。 (e..g

九=争):

ej(j=N. T)哨 jの 調 整 速 度 , 糾 正 で あ る と 慨 する。 動学体系(34)は,財

f

(j=N. T)の市場における超過需要は,その財の価格の 上昇を引き起こし,貨幣市場は常に均衡していると仮定している。その体系が, 均衡において局所的に安定であるためには,行列式

I

A

I

の符号が正であること が必要である。以下において,われわれは ,

I

A

I

の符号が正であると仮定する。 III 財政金融政策の効果およびその他の比較静学 この節においては,われわれは,財政金融政策およびその他の外生擾乱の効 果を検討する。 (1)非貿易財に対する政府の購入量の変化の効果 非貿易財に対する政府の購入量の変化の非貿易財価格および為替レートに与

(10)

637 為替レート,雇用および非貿易財

-217-える効果は, (35)および(36)式によって示されている。

D ー す

(35)

す古=lA合子

[D

t一 向 (

1

-

D~ I;~Q!I)

+

D~ l;fyl

]

>

0

(36)

去=記長

[D

:-

f

D~I;~Q!NeN一抑制

~の増加により,非貿易財の市場において超過需要が生じるので,非貿易財 価格は上昇する。したがって,非貿易財部門における産出高および労働雇用量 は,増加する。しかし,為替レートに与える効果は,明らかではない。非貿易 財の価格の上昇は, 一方で,価格効果を通じて貿易財に対する正の超過需要を¥ 生じさせ,他方では,非貿易財価格の上昇による一般的物価水準の上昇と非貿 易財生産額の増加が,名目貨幣需要を増大させる。この名目貨幣需要の増加が, 与えられた貨幣供給量のもとでは,貨幣市場に超過需要を生じさせるので側式 において示されているように,利子率が上昇する。この利子率の上昇が,貿易 財に対する超過需要を減少させる効果をもっ。しかしながら,もし ,DÞ-D~ I;~ αNeN -D~ I;l'YN

<

0ならば,すなわち, D Þ-D "fl;~仰向ー\主E

α

NDHl

+

l;~eN) /

I

;

'

f

'

(訂) ならば,利子率の上昇の貿易財における超過需要を減少させる効果が小さいの で,為替レートは減価し,貿易財部門における産出高および労働雇用量は増加 する。 仏の変化が総労働雇用量に与える効果は,側式によって与えられている。

i

1 ,

Dlξ

F

一一一=でTiホ

τ

ァ [-eD,f'

+

αNeNer十 ど 号LαNαr(eN-er)] d~

e

I

A

I

XN ξ (38)式は,~の変化が総労働雇用量に与える効果が,不明確であることを示し ている。しかし ,eN 孟 er のとき,~の増加は,総労働雇用量を増加させる。 eN 注 er の場合,~の増加による九の上昇が非貿易財部門における労働雇用量を増 (12) 第J部門における労働雇用量(ム(j= N,T))の変化率は,Lj=

OV-

p

;

)

(i=Vfor j=N, j=Kforj=T) によって与えられる。 r;'jおよびqの意味につドては,付録Iをみ よ。

(11)

-218 第57巻 第3号 638 加させる効果は,利子率効果をもっ貿易財部門における労働雇用量に与える効 果よりも小さくないので,総労働雇用量は全体として増加する。

(

2

J

貿易財に対する政府の購入量の変化の効果 貿易財に対する政府の購入量の変化の非貿易財価格および為替レートに与え る効果は (39)および側式によって示されている。

ω

)

会=云占

r

[D~

-

D~.;~aleT

-

D~.;fy,

]

(40JL=示与 [D~ ー(1 -D~.;~α )

dG

eN+D陥仇]

>

0 r -Xr

r

L.uP ¥.l .uE<:iY 為替レートは,Grが増加する時,減価する。したがって,貿易財部門におけ る産出高および労働雇用量は,増加する。

G

の増加が非貿易財価格を上昇させ るかどうかは明らかではない。もし ,D~-D~.;~αre, <D~ξfy" すなわち,

D~- D~.;~areT\よE αrD~(

1

+.;~er)

/

ξ

F

ならば, (1)の場合と同様の理由により,非貿易財価格は上昇し,非貿易財部 門における労働雇用量は増加する。 Grの変化の総労働雇用量に与える効果は,似)式によって示されている。

ω 」一

dGr

-

a

11~1 V" [-eD~+αer eN-D~妥αα

L

rX

(

e

N

一 向

)

J

r o:;.up I UT"'r v N L /Eとi

G

rの変化の総労働雇用量へ与える効果は,明らかではない。しかし ,

e

N

e

r

の時,Grの増加は,~の変化の場合と同様の理由によって,総労働雇用量を増 加させる。

(

3

)金融政策の効果 貨幣供給量が外生的に増加した時,非貿易財価格および為替レートに与える 効果は,制および制式によって与えられている。

包3)ZL=ギ件 [D~DÞ

M

+

DlD~

-

erD~J

>

0

ほ│

(12)

639 為替レート,雇用および非貿易財 -219-制

M

R ニヰi件 [D~D~

+

D~D~

-e

N

D

l

J

>

0 凶│ 倒および倒)式は,貨幣供給量によって非貿易財価格は上昇し,為替レ}トが 減価することを示している。 ξl/~f= 0でないかぎり ,

M

の外生的な増加は, 利子率を減少させ,総支出を増加させる。非貿易財および貿易財市場において 超過需要が生じ,両財の価格は上昇し,各部門における産出高および労働雇用 量は増加する。したがって,総労働雇用量も増加する。

(

4

J

貨幣賃金率の変化の効果 貨幣賃金率の変化の非貿易財価格および為替レートに与える効果は,側およ び制式によって与えられる。

制令=寸支

r

l

D~ ( ξ品物 +ξ~e) -D~+D~ξ5αrer

-eN

+D~ξfy1 ._--・..--.ーー---ー・・・ーー・・・ーーーー----ーー---.--.----.・..ーー,回..司ーーー..開匹.. D~ ( ξ弘N 十 ξ~e) D~- er (

1 -

Dl

ξ5αr) -er

+Dl

ξfyτ

R

1

D~ 一(

1

-

D~~~aN)

e

N

D~ (~11ベN+~~e) 側

τF

=

+D~~~

-eN

'司'・-.--・ーーー--.-ーー-ー---自由ーーーー...ー色白ー...出歯ーーー・,ー---白圃色白...ーーー.ーーー,ーー伽ー・ー司

-D

,J

+Dl

ξfα

'

N

e

N

Dl

( ξ臥ν +~~e)-er

+Dl

ξfyN 附および制式の右辺の符号は,不確定である。明確な結論を得るために,わ れわれは,中立的な場合

(

n

e

u

t

r

a

lc

a

s

e

)

を考える。ここで中立的な場合という のは,各部門において供給の弾力性を等しく

2

つの財に対する需要は,実質 所得に関して lの弾力性をもっということである。このことは, ej=eおよび DJ= 1 (j= N, T)という関係によって表現される。附および制式は,制式にな る。 ( I3)

r

中立的な場合

(

n

e

u

t

r

a

lc

a

s

e

)

J

という用語は, N oman, K. and R W

J

ones,

o

p

αt p306において定義されている。

(13)

220- 第57巻 第3号 640

P

N _

R

_

ξh付

-e

(l一計)

制 す

一 計 ( 附 句 )-e(14)>O 制式は,側式を意味している。

6

P

T T

O

くす

=γ=

ーす

γ <

1

貨幣賃金率の上昇により,非貿易財,貿易財および一般物価水準が上昇し, 為替レートは減価する。これらの価格の変化率は,貨幣賃金率のそれよりは小 さい。いま,九および R(民)が, W の上昇と同じ率で上昇するとしよう。各 部門における産出高は全く変化しない。 2つの財に対する需要は,利子率の変 化によってのみ変化する。

F

N

=

A

=

w

を側式に代入すると,

側 た 云

μ

となる。中立的な場合における貨幣賃金率の上昇は,両部門における産出高を 変化させないで,一般物価水準を上昇させるので,貨幣市場において超過需要 を引き起こす。それゆえ,利子率が上昇し 2つの財に対する需要が減少し, 両財の価格が下落する。このことが制式によって示されている。制式は,また, 各部門における労働雇用量および総労働雇用量が減少することを明らかにして し〉る。 ( 5 )貿易財の外国価格の変化の効果 貿易財の外国価格の変化の非貿易財価格,為替レートおよび貿易財の国内価 格に与える効果は, (50)-(52)式によって示されている。

側全

=0

ω

=

1

ω

=0

貿易財の外国価格が外生的に上昇する時,為替レートのみ変化し,非貿易財 および貿易財の国内価格は変化しない。貿易財の外国価格の上昇によるその財

(14)

641 為替レート,雇用および非貿易財 22]-の園内価格の上昇は,貿易財市場におい、て超過供給を生じさせる。貿易財の圏 内価格は減少し,新しい均衡において,元の水準に戻る。為替レートのみが減 価し,非貿易財の価格は ,P'Tの変化によって全く影響を受けない。したがって, 各部門において産出高および労働雇用量は全く変化しない。

I

V

むすび われわれは,財政金融政策,貨幣賃金率および、貿易財の外国価格の変化の効 果を,変動相場制において貨幣賃金率が硬直的である経済を設定することによ り検討してきた。経済の実物的部門構造および貨幣的要因が,外生的撹乱の効果 に対して果たす役割が明示的にされたように思われる。とくに,非貿易財に対 する政府購入量の増加という経済に対しての拡張効果が生じたのにもかかわら ず,その増加の為替レートに与える効果は不確定であり,また,貿易財に対す る政府購入量の増加が,非貿易財価格に与える効果も不確定である。このよう な結果が生じるのは利子率を通しての効果が働くからであった。

2

つの政府購 入量の変化が,総労働雇用量に与える効果が,各部門における供給弾力性に依 存していた。さらに,貨幣賃金率が上昇すれば中立的な場合には,非貿易財価 格,為替レート,圏内貿易財価格および一般物価水準が,利子率効果がはたら くことにより,貨幣賃金率ほど上昇しない。 しかしながら,小論において得られた結論は,短期効果に限定されたもので ある。外生的撹乱が生じることにより 2つの生産要素のレンタル差から,部 門聞に生産要素が移動する。そのような生産要素の調整が生じている間,また, 短期における労働市場の不均衡によって貨幣賃金率が調整されている間,非貿 易財価格や為替レートが変化する。このような長期効果を考慮、して為替レート や非貿易財価格の変化を検討する分析は,意義あるものであり,今後の残され た課題である。

(15)

-222- 第57巻 第3号 642 付録 I

(

4

)

および

(

5

)

式を微分すると, (1ー1) 6

+8LN

W=P

N (1 -2)

恥ん

+8LT

W=P

となる。ただし,81jは,第 j産業における生産要素iの分配率を示している。 (1-1)及び (1- 2)式を導出するために,単位費用最小化条件 (unif-cos tminim-ization

ι

ondition)がもちいられている。すなわち, 8j1

a

li

+

8Lj

a

Lj

=

0

0=

V

r

j=N ,i=K

/

o

r

j= T)

各部門における生産要素の代替弾力性((Jj

(

f

= N,T))を, (1ー3)および (

1-4

)

式として定義する。 (1ー3) σ N - G L N - G V N ..-- -円

rV-W

(1 - 4) 街

=

a,;:'T -舎一 rK -VV (1 - 1)一(1- 4)および単位費用最小化条件より, (1 --5

) ん 今 生

(

P

N

一的

υVN

(

1

-6

)

T -

今 生

(

P

-

l

-

f

νKT を得る。 与られた

V

および

K

のもとで, (1)および

(

2

)

式を微分すると,

(

1

一7)および (1-8)式になる。 (1一7)る=:-ClvN (1 - 8)

X

r = -~T (1-5)および (1-6)式を, (r一7)および (1-8)式にそれぞれ代入するこ とにより, (1-9)

る=今生

(PN-U

VVN ( 14) この付録における分析については,

J

ones, R W. and

J

Scheinkman C 9 )が参考にな る。

(16)

643 為替レート,雇用および非貿易財 -223-(I

聞 か 乍 子 供 的

が得られる。ここで,ぬ=匂デおよび

pt

子とおくことによってパ18)およ び

ω

)

式が得られる。 名目国民所得は, (I -11)のように表わされる。 (I-11)

Y

=

YV

V

+

YKK

+

WL

(I -11)式を微分すると, (I-12)式になる。 (I-12) y=αvrv+α

K

r

K+

αL

UV+

L

)

ただし aiは,国民所得に占める生産要素iの分配率を示じている。 ところで, (I-13)

.

y

=

Y-P

+(αvrv+

がら

+αL

W

)-

N

P

N

+

α

r

P

1) である。 (I - 1)および(1-2)式から次の関係が得られる。 (I-14) α

'

N

P

N

+

町民=がん+がん

+aLW

したカまって, (I -13)および(1-14)より, (I-15) タ=αLi となる0

3

は, 18(), (19), (幼および(却式より (1-16)式のように書かれる。 (I

-16)y=

的 命

(

P

N

一的

+αrer

(A-

W

)

したがって, (I-15)および(I-16)式より, (20)式が得られる。 引用文献

( 1 ) Caves, R E.and R W. Jones, World Trade and PaymenおAnlntroduction Third

Edition(Little, Brown and Company, Boston, Toronto, 1981)

(2) Dornbusch, R, "Devaluation, Money, and Nontraded Goods,"Ameriωn Economic Review V 0.163, N.o5 (De氾ember,1973) pp871-880.

( 3 ) , "Real and Monetary Aspects of the Effects of Exchange Rate Changes," in Aliber, R 2..(ed),National Monetaη Policies and the lnternational Financialあ'Stem(University of ChicagゅPess,Chicago, 1974)

(17)

-224一 第57巻 第3号 644 [ 4 ) Helpman, E., Macroeconomic Policy and Em戸loymentznan Open E

じonomywz伽th

Nontraded Goods, PhD dissertation (Department of Economics, Harvard Univer.白 sity, Cambridge, Massachusetts, 1974) unpublished

( 5 ) 一一一一司一一一一一'代MacroeconomicPolicy in a Model of International Trade with a Wage Restriction,"Internati仰alEconomic ReviewV 01 17, Na2(June, 1976) pp 262-277

(6) 代Nontraded Goods and Macroeconomic Policy under a Fixed Exchange Rate,"Qωrterly Journal oj Eヒonomics.V 0.1XCI, No.3 (August, 1977) pp 469圃480.

( 7 ) Jones, R W, "A Three-Factor Model in Theory, Trade and History,"in his

(8 )

Interηational T均de Essのsin Theory(North-HolIand Publishing Company,

Amsterdam, 1979) Chapter 6. reprinted from Bhagwati,

J

et aL (eds)Trade,

Balance ojP.のIments,and Growth(North-Holland Publishing Company, Amster -dam, 1971) chapter 1

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E and P Salin (eds)Recent lssues in the拘eoryoj Flexzble Excha昭eRates

(North-Holland Publishing Company, Amsterdam, 1983)

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unpublished

(11) 一一一一一 andR W. Jones, "A Model of Trade and Unemployment," in Green l R and

r

A. Scheinkman, (吋s.)General Equilib仰 肌 Growthand Traゐ

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