自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の開発
原
著
自然災害に対する病院看護部の
備え測定尺度の開発
̶信頼性と妥当性の検討̶
Development of Natural Disaster Preparedness Scale for
Nursing Department of Hospital:
Reliability and Validity as Scale
西上あゆみ
Ayumi Nishigami
キーワード:自然災害,病院看護部,備え,尺度Key words:natural disaster, nursing department of hospital, preparedness, scale
Abstract
Objective: The purpose of this study was to verify reliability and validity of the Natural Disaster
Preparedness Scale for Nursing Department of Hospital that we had prepared.
Method: The items for the scale were extracted from materials including literatures, and
cor-rected and pretested by specialists. The scale consisted of the following
114
items:
49
in Plan,
11
in Organize,
14
in Equip,
22
in Train,
9
in Exercise and
9
in Evaluate and Improve. The
subjects included nursing departments of
4
,
298
hospitals in Japan. The survey was made via postal
mails, and analyses were made using correlation coefficient and reliability coefficient. The survey
was conducted from May to June
2013
.
Results: Responses were obtained from
723
hospitals. Of these,
555
facilities (
12
.
9
%) had sent
valid answers. For reliability, alpha-coefficient for the entire scale score was
0
.
987
, and that for
each subscale was
0
.
843
–0
.
971
. The criterion-referenced validity and construct validity were also
verified.
Conclusion: Although the number of items is still too large, this scale is useful to measure
pre-paredness against natural disasters in hospital nursing departments.
要 旨 目的:本研究の目的は,作成した自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の信頼性と妥当性を 検証することである. 方法:尺度項目は文献検討等から作成し,専門家による修正,プレテストを経て,「計画」
49
項目, 「組織化」11
項目,「装備」14
項目,「トレーニング」22
項目,「予行演習」9
項目,「評価と改善」9
項 目の114
項目で作成された.対象は全国4
,
298
施設の病院看護部であった.調査は郵送法で実施し,分日本看護科学会誌 J. Jpn. Acad. Nurs. Sci., Vol. 35, pp. 257–266, 2015 DOI: 10.5630/jans.35.257
受付日:2015年4月24日 受理日:2015年11月8日
梅花女子大学看護保健学部 Faculty of Health Science and Nursing, Baika Women’s University E-mail:[email protected]
当性も確保された. 結論:項目数が多いという課題は残るが,この尺度は自然災害に対する病院看護部の備えを測定す るための有用性を認めた.
Ⅰ.研究の背景
わが国では,南海トラフ巨大地震や首都直下地震等 の大規模地震発生が危惧されるだけでなく,火山災害, 頻発する豪雨や台風による水害などもあり,自然災害 に対する備えが重要であるといえる. 病院においては,日常から患者・家族を抱え,さら に災害時には多数の被災者が訪れる可能性があり,災 害への備えは災害拠点病院だけでなく,すべての病院 での取り組みが必要になってきている.とくに病院看 護部は,施設において24
時間365
日勤務する職員数 の最も多い職種であるといえ,災害時においても第一 線での対応が必要になる.災害時は登院もままならな い状況下で,少ない看護者数で看護サービスを行うこ と,平常時には使用しない器材の活用など,通常と異 なる活動が予想される.このため組織的な視点から看 護者や物品を確保し,整備,教育,訓練など,災害時 に活動できるようにしておくことを考えなければなら ない. 災害への備えという視点から文献検索を行い,災害 時に活動できる病院看護部としての備えに関する尺度 を検索したが,病院看護部に的を絞ったものは見あた らなかった.そこで「自然災害に対する病院看護部の 備え測定尺度」の開発に取り組むこととした. 本尺度の原案作成のために米国のDepartment of
Homeland Security
(2008
)のPreparedness Cycle
の
6
つの活動「Plan
(計画)」「Organize
(組織化)」「
Train
(トレーニング)」「Equip
(装備)」「Exercise
(予行演習)」「
Evaluate and improve
(評価と改善)」を下位尺度として用い,先行調査や文献から
114
の項 目をあげた.回答には4
件法を用い,1
は「していな い」,2
は「あまりしていない」,3
は「だいたいして いる」,4
は「している」とし,得点が高いほど備え られているように配点した.次に内容的妥当性の確認 のために災害看護や看護管理分野の大学教員経験者5
名への調査と,表面妥当性の確認のために過去に災害 拠点病院や大規模病院で看護代表者や看護部で災害・ 防災に関して経験のある看護者6
名への調査を行っ た.内容的妥当性の調査から6
下位尺度において尺度 項目の移動をした.表面妥当性の確認では,無回答の 項目は少なく,平均25
分で回答できていた.以上か ら114
項目に対し,追加・削除は必要なしとした(西 上,2015
a
).その後,プレテストでは,無作為に選 んだ全国900
施設を対象に,項目の過不足や回答率・ 回答時間等を調査した.有効回答率27
.
0
%
で,項目 の過不足には具体的な意見はなく,回答の分布等から 項目削除を検討したが,該当する項目はなかった.回 答時間は平均24
.
8
分であった(西上,2015
b
).本稿 ではこの尺度の信頼性と妥当性を検証したので,報告 する.Ⅱ.用語の定義
「災害に対する病院看護部の備え」とは,病院の看 護部が自施設のある地域で起こると考えられる災害に 対して専門的知識と技術を用いて事前に努めて堅実に 対応できるようにしておく活動のことである.具体的 には災害が起こると認識し,脆弱性を分析した上で計 画し,組織化,装備,トレーニング,予行演習,評価 と改善を連続的プロセスで継続的に行うことである. そのため,この活動には病院に勤務する他の職員や関 連する業者や機関,地域住民との協働を含んでいる.Ⅲ.研 究 方 法
1.対象 医療法第1
条の5
に定める病院の看護部で,回答 を看護部代表者または,看護部において災害・防災に 関することを任されている看護者とした. 2.データ収集方法 病院検索システムを用い,病院を検索し,プレテス トで使用した施設(900
施設)を除いた4
,
298
施設に 調査票を郵送した.依頼書と同時に送付した調査紙へ自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の開発 回答した者を研究協力者とした.調査票は郵送で依頼 し,返送は無記名,料金受取人払いとする返信用封筒 を入れた.調査票郵送時には看護部代表者宛に研究の 趣旨や倫理的配慮について記した依頼用紙を同封した. データの収集期間は,
2013
年5
月∼同年6
月であっ た. 3.調査項目 基本属性として14
項目(所在地,病床数,種別, 立地,災害拠点病院指定,救急指定病院,被災経験, 災害による傷病者受入経験,被災地への看護師派遣経 験,病院機能評価受審,備えの満足度,備蓄等)を, さらに尺度114
項目,企業防災力評価システム(以下,CMP
法)等を調査項目とした. 4.分析方法解析には
IBM SPSS Statistics Ver.
20
を使用した.1)備え測定尺度の信頼性の検討 信頼性の検討では,本研究は内的整合性(クロン バックのα信頼性係数:以下,α係数)のみをみた. 再検査法を用いることは,病院看護部にとって多忙な 病院業務の中で
2
度にわたる調査の回答を依頼するこ とになり,時間的・心理的負担をかけることを考慮し, 実施しなかった. 2)備え測定尺度の妥当性の検討 (1)基準関連妥当性の検討 本尺度では併存的妥当性より検討を行うこととし, 病院機能評価,CMP
法との検討を行った.Niska
ら(2006
)の米国の研究では医療評価を行っているJoint Commission on Accreditation of Healthcare
Organization
(JCAHO
)の公認とテロリズムへの病 院スタッフの備えトレーニングにおいて関連が報告さ れており,日本でも医療機能評価機構の行う病院機能 評価との関係が推察された.病院機能評価受審の有無 を独立変数としてt
検定し,病院機能評価を受審して いる病院の平均値が有意に高いと推測した.CMP
法は,東京工業大学都市地震工学センターに よって開発された地震に対する企業防災力評価シス テムである(梶ら,2004
;慶應義塾大学SFC
研究所,2005
).満点1200
点の評価システムは,点数が高い ほど充実しているといえ,CMP
法の総得点と本尺度 の得点は,Spearman
の順位相関係数で,有意な正の 相関を示すと予測した. (2)構成概念妥当性の検討 構成概念妥当性として,既知グループ技法を用いた. 既知グループ技法には,「①災害拠点病院の指定の有 無」「②災害への備えの満足度(高・低)」「③被災経 験の有無」「④被害による傷病者を受け入れた経験の 有無」を独立変数として,t
検定にて比較した.仮説 としては,①災害拠点病院の指定を受けている病院, ②災害への備えの満足度の高い病院,③被災経験のあ る病院,④災害による傷病者を受け入れた経験をもつ 病院のほうが有意に高い得点を示すと予想した. 3)尺度項目の検討 尺度項目の検討では,内的整合性の点から,尺度を 構成する下位尺度ごとにα係数,項目が削除された場 合のα係数,項目 – 全体得点相関(I
–T
相関)と主成 分分析を行った.さらにG
–P
分析を用いて,各項目 の得点が全体の得点とどの程度関連しているかを確認 し,下位尺度間での相関についても検討した. 5.倫理的配慮 本研究は,研究対象者に身体的な侵襲を与える研究 ではないが,調査はA
4
判で10
頁に及び,時間的拘 束感と負担感が発生する可能性があった.調査票への 回答期間を3
週間とすることで,時間的にゆとりを つくる配慮をした.無記名での回収とするため,返信 に際して個人名はもちろんのこと施設名も記述しなく てよいことを記載した.本研究は兵庫県立大学看護学 部・地域ケア開発研究所研究倫理委員会の審査を受け, 承認(平成24
年,博士1
)されて研究を実施した.Ⅳ.研 究 結 果
1.配布ならびに回収状況 調査は4
,
298
施設に送付し,回収は723
施設(回収 率16
.
8
%
)からあった.回答者723
施設のうち,尺 度114
項目中に欠損のある167
施設,ならびに現状 での回答でない東日本大震災被災以前の状況を回答し た1
施設の計168
施設を除いた555
施設で分析を行っ た(有効回答率12
.
9
%
). 2.回答施設・回答者の概要 病床数は553
施設から回答があり,平均189
.
2
床 (範囲:20
∼1000
)であった.病院種別では「一般病院」
354
施設(63
.
8
%
),「地域医療支援病院」110
施設(19
.
8
%
)が多かった.設置主体は「医療法人」259
施 設(46
.
7
%
),「都 道 府 県・ 市 町 村」131
施 設 (23
.
6
%
)が多かった.災害に対する備蓄は「あり」464
施設(83
.
6
%
)で,備蓄をしている施設の備蓄日 数の質問には403
施設の回答があり,平均3
.
2
日(範 囲:1
∼10
)であった.その他の概要は表 1 に示した. 回答者は「看護部門代表者」432
施設(77
.
8
%
),「看 護部門代表者ではないが,災害・防災に関すること を任されている看護者」115
施設(20
.
7
%
)であった. 職位は,「看護部門代表者」の場合,「副院長(看護 部長または看護局長を兼任するものを含む)」13
施設 (3
.
0
%
),「看護局長」16
施設(3
.
7
%
),「看護部長・ 総看護師長」299
施設(69
.
2
%
),「副看護部長・副総 3.尺度に関する回答の概要114
項目全体の平均値は251
.
1
(SD
68
.
6
),下位尺 度は①計画49
項目の平均値は111
.
7
(SD
29
.
1
),② 組織化11
項目の平均値は23
.
2
(SD
7
.
2
),③装備14
項目の平均値は31
.
6
(SD
9
.
7
),④トレーニング22
項目の平均値は47
.
6
(SD
14
.
8
),⑤予行演習9
項目 の平均値は18
.
9
(SD
6
.
1
),⑥評価と改善9
項目の平 均値は18
.
2
(SD
7
.
4
)であった.合計得点の分布は, 中央値252
で歪度0
.
171
,尖度0
.
496
であった.デー タ の 正 規 性 に つ い て,Kolmogolov
–Smirnov
検 定 (Lilliefors
有意確率の修正)でp=
0
.
069
,正規分布し ていた. 尺度の114
項目について平均値の一番高い項目は項 目番号24
で平均値3
.
5
(SD
0
.
7
)であった.一番低い 項目は,項目番号36
で平均値1
.
4
(SD
0
.
6
)であった. 尺度の偏りをみる上で,回答分布から70
%
以上の回答 者が「している」または「していない」という項目は なかった.尺度を構成する下位尺度ごとにα係数,項 目が削除された場合のα係数,項目 – 全体得点相関(I
–T
相関)と主成分分析について検討した.概念内のα 係数は0
.
987
に対し,項目が削除された場合のα係数 もすべて0
.
987
であった.I
–T
相関は0
.
281
∼0
.
776
,
0
.
4
以下の項目は,項目番号98
のみ0
.
281
であった.主成 分分析では0
.
286
∼0
.
784
であり,0
.
4
以下の項目はI
–T
相関と同じように項目番号98
が0
.
286
であった. 4.備え測定尺度の信頼性の検討 信頼性の検討のために尺度全体得点と下位尺度ご とのα係数を求めた.114
項目尺度全体得点の信頼性 係数は0
.
987
であった.下位尺度ごとのα係数は(1
) 計画49
項目は0
.
971
,
(2
)組織化11
項目は0
.
884
,
(3
) 装備14
項目は0
.
930
,
(4
)トレーニング22
項目は0
.
958
,
(5
)予行演習9
項目は0
.
843
,
(6
)評価と改善9
項目は0
.
951
であり,すべて0
.
8
以上であった(表 2). 5. 備え測定尺度の妥当性の検討 1)基準関連妥当性の検討 病院機能評価受審の有無と尺度得点の平均値の比 較(t
検定)を行った(表 3).病院機能評価を受審し ている病院は263
施設で,平均値は274
.
3
(SD
64
.
0
), 受審していない病院は292
施設で,平均値は230
.
2
所在地 北海道・東北 109 (19.6%) 関東 138 (24.9%) 中部 74 (13.3%) 近畿 94 (16.9%) 中国 43 ( 7.7%) 四国 30 ( 5.4%) 九州・沖縄 66 (11.9%) 立地 過疎地域 38 ( 6.8%) 政令指定都市・東京 23 区 116 (20.9%) 上記以外 396 (71.4%) 無回答 5 ( 0.9%) 災害拠点病院 指定あり 100 (18.0%) 指定なし 446 (80.4%) 無回答 9 ( 1.6%) 救急指定病院・ 救命救急センター はい 272 (49.0%) いいえ 278 (50.1%) 無回答 5 ( 0.9%) 被災経験 経験あり 133 (24.0%) 経験なし 421 (75.9%) 無回答 1 ( 0.2%) 災害傷病者受け入 れ経験 経験あり経験なし 171 (30.8%)383 (69.0%) 無回答 1 ( 0.2%) 被災地への看護師 派遣経験 経験あり 252 (45.4%) 経験なし 299 (53.9%) 無回答 4 ( 0.7%) 病院機能評価 受審している 263 (47.4%) 受審していない 292 (52.6%) 災害への備えに対 する満足度 満足 2 ( 0.4%) だいたい満足している 94 (16.9%) あまり満足でない 309 (55.7%) 満足でない 143 (25.8%) 無回答 7 ( 1.3%) 災害に対する備蓄 備蓄あり 464 (83.6%) 備蓄なし 79 (14.2%) 無回答 12 ( 2.2%)自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の開発
(
SD
65
.
9
)であった.等分散性のLevene
の検定でF
値は0
.
817
, p=
0
.
366
であった.t
値は7
.
994
,有意確 率(両側)はp<
0
.
001
であった.病院機能評価を受審 している病院の平均値は有意に高かった(p<
0
.
001
). 病院機能評価の受審の有無と6
つの下位尺度の各得 点の平均値の比較結果は,すべての下位尺度で病院機 能評価を受審している病院の平均値が有意に高かった (p<
0
.
001
). 回答者555
施設のうち,CMP
法に欠損のない施設 は332
施設であった.CMP
法に回答した332
施設 の記述統計について総合防災力を示す全体の合計点 数の平均値は569
.
8
(SD
188
.
3
)であった.CMP
法自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の開発 の信頼性係数(α係数)は
0
.
865
であった.CMP
法 の目標値である1000
点を超えた施設は2
施設であっ た.CMP
法の総得点と尺度の相関について検定した.CMP
法の総得点と尺度の順位相関(Spearman
)は,r=
0
.
730
, p<
0
.
001
で,強い正の相関を認めた.CMP
法の総得点と6
つの下位尺度の得点についても相関を 検定した.6
つの下位尺度すべてがSpearman
の順位 相関係数で,有意な正の相関(p<
0
.
001
)があった. 2)構成概念妥当性の検討(表 3) 災害拠点病院の指定と尺度の平均値の比較(t
検定) を行った.災害拠点病院の指定を回答した施設546
施設中,指定を受けている病院は100
施設で平均値 は302
.
9
(SD
57
.
5
),受けていない病院は446
施設で 平均値は239
.
4
(SD
65
.
7
)であった.災害拠点病院 の指定を受けている病院は受けていない病院よりも有 意に得点が高かった(p<
0
.
001
). 災害への備えの満足度と尺度の平均値の比較を行っ た.災害への備えに対する満足度には548
施設から 回答があったが,「満足」と回答した施設が2
施設の ため,「満足」「だいたい満足している」と回答した施 設(以後,「満足群」とする)96
施設と「あまり満足 でない」「満足でない」と回答した施設(以後,「不 満足群」とする)452
施設での平均値の比較(t
検定) を行った.「満足群」の病院の平均値は307
.
7
(SD
58
.
3
),「不満足群」の病院は239
.
4
(SD
64
.
2
)であ り,満足度の高い施設は低い施設よりも得点が有意に 高かった(p<
0
.
001
). 被災経験をもつ病院とそうでない病院の得点の平 均値の比較(t
検定)を行った.被災経験について回 答した施設は554
施設であった.被災経験のある病 院は平均値は278
.
9
(SD
71
.
5
),被災経験のない病院 は242
.
4
(SD
65
.
3
)であった.被災経験のある病院 は被災経験のない病院よりも有意に得点が高かった (p<
0
.
001
). 災害による傷病者の受け入れ経験をもつ病院とそう でない病院の得点の平均値の比較(t
検定)を行った. 災害による傷病者の受け入れ経験について回答した施 設は554
施設であった.傷病者の受け入れ経験をも つ病院の平均値は279
.
7
(SD
68
.
2
),経験のない病院 は238
.
3
(SD
64
.
9
)であった.災害による傷病者の 受け入れ経験をもつ病院は経験のない病院よりも有意 に得点が高かった(p<
0
.
001
). 6. 尺度項目の検討 1)内的整合性(表 2) 「計画」のα係数は0
.
971
であり,項目が削除され た場合のα係数は,0
.
970
∼0
.
971
であった.I
–T
相関 は0
.
396
∼0
.
778
,主成分分析では0
.
4
以下の項目はな かった.「組織化」のα係数は0
.
884
であり,項目が 削除された場合のα係数でも0
.
867
∼0
.
879
と高くな る項目はなかった.I
–T
相関は0
.
525
∼0
.
701
,主成分 分析で0
.
4
以下の項目はなかった.「装備」のα係数 は0
.
930
であり,項目が削除された場合のα係数でも0
.
923
∼0
.
929
と高くなる項目はなかった.I
–T
相関は0
.
514
∼0
.
740
,主成分分析で0
.
4
以下の項目はなかっ た.「トレーニング」のα係数は0
.
958
であり,項目 が削除された場合のα係数でも0
.
955
∼0
.
958
と高く なる項目はなかった.I
–T
相関は0
.
512
∼0
.
815
,主 成分分析では0
.
4
以下の項目はなかった.「予行演 習」のα係数は0
.
843
で,削除された場合のα係数で は,0
.
811
∼0
.
847
であった.項目番号98
はこの項目 を除外するとα係数が0
.
847
となり,内的整合性を 脅かしていた.I
–T
相関は0
.
347
∼0
.
692
,主成分分 析0
.
436
∼0
.
795
であった.この項目はI
–T
相関では0
.
347
と0
.
4
以下であるが,主成分分析では0
.
436
と 表 3 病院機能評価,既知グループ技法 項目 n mean (SD) p 病院機能評価受審(n=555) 受審している 263 274.3 (64.0) p<0.001 受審していない 292 230.2 (65.9) 災害拠点病院(n=546) 指定あり 100 302.9 (57.5) p<0.001 指定なし 446 239.4 (65.7) 災害への備えの満足度(n=548) 満足群 96 307.7 (58.3) p<0.001 不満足群 452 239.4 (64.2) 被災経験(n=554) 経験あり 133 278.9 (71.5) p<0.001 経験なし 421 242.4 (65.3) 災害傷病者受け入れ経験(n=554) 経験あり 171 279.7 (68.2) p<0.001 経験なし 383 238.3 (64.9)0
.
944
0
.
948
I
–T
相関は0
.
758
∼0
.
837
,主成分分析では0
.
4
以下の 項目はなかった. 2)Good‒Poor analysis(G‒P 分析)G
–P
分析では,平均値が251
.
1
であったことから, 上位群を252
以上,下位群を251
以下として分析した.114
の項目ごとに上位群と下位群の平均値を出してt
検定を実施したところ,すべての項目で上位群が高い 得点を出し,その平均値はp<
0
.
001
で有意差があった.114
のすべての項目が,尺度の総得点と関連していた. 3)下位尺度間の相関(表 4)6
下位尺度についての正規性であるが,①「計画」の
Kolmogolov
–Smirnov
検 定(Lilliefors
有 意 確 率の修正)
p=
0
.
032
で,②「組織化」p=
0
.
057
,③「装備」p=
0
.
047
,④「トレーニング」p=
0
.
050
,⑤「予行演 習」p=
0
.
067
,⑥「評価と改善」p=
0
.
109
で,正規分 布している項目としていない項目があった.そこで6
つの下位尺度間の相関関係についてSpearman
の相 関係数を用いて検定したところ,全下位尺度間で有意 な正の相関があった.Ⅴ.考
察
1. 本尺度の信頼性と妥当性 本研究における回収率は16
.
8
%
であり,一般的な 調査票回収率が本調査のような条件の場合13
.
3
%
(萩 原ら,2006
)とあるように低い結果となった.しか し回答率は低いものの,回答は723
施設(有効回答555
施設)からあり,地域性や施設の規模,災害に対 する施設の機能,経験等において比較的偏りがなく分 散していることから,本調査の分析結果は一定の範囲A
4
10
興味や関心が影響したと考えられる. 「自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度」の 信頼性と項目数114
項目で構成される本尺度のα係 数は0
.
987
であり,高い信頼性があった.6
つの下位 尺度のα係数も0
.
843
∼0
.
971
であり,すべて0
.
8
以 上であった.α係数は項目数に影響される(Polit
ら,2004
/
2010
, p.
436
)ため,0
.
987
という高い値の信頼 性の背景には項目数が114
であることが関係してい ると考えられる. 基準関連妥当性では併存的妥当性から検討するこ ととして,病院機能評価,CMP
法との検討を行った. 病院機能評価の受審の有無と本尺度では病院機能評価 を受審している病院の平均値は有意に高く,本尺度の 妥当性を示していると考える.CMP
法の総得点と本 尺度の相関についての検定でも相関係数0
.
7
以上の正 の相関があり,仮説が検証された.以上より基準関連 妥当性からみた本尺度の妥当性は確保されたと考える. 構成概念妥当性における既知グループ技法は,1
) 災害拠点病院指定の有無,2
)災害への備えの満足度,3
)被災経験の有無,4
)災害による傷病者の受け入 れ経験の有無の4
点から検討を行った.すべての仮説 が検証され,既知グループ技法からも本尺度の妥当性 は確保されたと考える.114
項目という数は,回答する者に数の多さによる 圧倒感を感じさせるのではないかと考え,項目削除の 検討を実施した.これについては,下位尺度ごとにα 係数,項目が削除された場合のα係数,I
–T
相関と主 成分分析から検討した.α係数を用いて,項目を削除 したときのα係数の変化から削除に該当する項目を検 討した.I
–T
相関では,本調査において「98
.患者と 一緒に訓練を行っている」の項目は0
.
4
以下ではある が,0
.
2
以下の基準からは当てはまらなかった.また, 表 4 下位尺度間の相関係数 (n=555) 計画 組織化 装備 トレーニング 予行演習 評価と改善 計画 1.00 .855** .820** .874** .720** .801** 組織化 1.00 .767** .803** .667** .740** 装備 1.00 .808** .633** .723** トレーニング 1.00 .742** .814** 予行演習 1.00 .812** 評価と改善 1.00 **p<0.01自然災害に対する病院看護部の備え測定尺度の開発 この項目は主成分分析の第
1
主成分の因子負荷量か らみると0
.
286
と0
.
4
以下の項目であった.項目の削 除を検討したが,災害を想定して患者を巻き込んだシ ミュレーションをしておくことの重要性を考慮すると 外せない項目であると考えた.この項目を残してもα 係数は0
.
8
以上を保てていることからも外す必要はな いと考えた.このように本尺度においては項目数を減少させることよりも,
Pan American Health
Organi-zation
(2008
)の「Hospital Safety Index
」では145
項目あるように,具体的に項目が示され,内容がわか りやすく,答えやすいことが必要ではないかと考えた. 今回の回答者の平均値は満点456
に対し,251
.
1
と低 く,現在災害への対策が急務といわれる中,まず丁寧 に項目に回答することで具体的に対策に気づき,行動 を起こすことが必要と考える. 本尺度はプレテスト・表面妥当性の検討で回答にか かる所要時間では25
分程度という結果を得た.この 所要時間は回答者への大きな負担ではないと考え,負 担の点からも項目数114
は受け入れられると考える. 2. 災害・防災対策への本尺度の活用方法 本研究は,これまでばらばらとしか行われてこな かった日本の病院看護部の災害・防災対策に関する調 査を踏まえて,「備え」という視点から病院看護部が 取り組むべき災害・防災対策に関する尺度開発を行う ことであった.「備え」の定義を調べている際に備え の目的は,機関や組織において災害からの回復(復 興・復旧),効果的な対応(援助・反応),予防の強化 に使われることであるとされていたが,病院看護部が 備えることにより,これらに貢献できるようになるの ではないかと考える. 本研究から病院看護部の災害に対する備えとして114
の項目があがり,6
つの概念「計画」「組織化」「装 備」「トレーニング」「予行演習」「評価と改善」で構 成されることが支持された.この114
の項目には具 体的に災害に備える行動を示しており,今後,備えの 実施状況を数量的に測定することを可能にする.こ れは経年的に備えに取り組む病院において備えの進捗 状況の変化をみていくことを可能にすることにもなる. 備えるためには,人的資源,物的資源の両方をもつ必 要があると考える.本尺度はその両面について計画を 立て,組織化し,資源をそろえるだけでなく,人的資 源にはトレーニングと予行演習を通して,物的資源に も予行演習を通して,資源の量,活用方法等を評価し, 改善させることをはかるようになっている.このこと により備えを強化していくことができるのではないか と考える.2
つめは,病院の看護部がこの尺度に回答する際に, 回答項目によっては看護部以外の部門に確認しなけれ ばならない項目がある.例えば,「5
.病院の防災計 画を把握している」「6
.病院の耐震構造について把 握している」などである.看護は患者の安全,生活を 守っていくことを担っているため,重要な項目である が,これらは看護部のみで独自で取り組めるものでな い.このような項目に「している」とつけられない場 合,病院全体または他部門の取り組みが必要とされる ため,看護部が病院管理者や他部門に対して災害への 備えに関心を持ってもらうように働きかけることにつ ながる.また,看護部の取り組みも他部門に示すこと ができ,院内で状況を共有できるようになる.3
つめに本尺度は,データを積み上げることによっ て,例えば災害拠点病院と一般病院の備え状況の違い を比較するベンチマークにしていける可能性がある. 日本では,災害拠点病院において災害対策は充実して きているところもあるが,施設によって対策の内容や 充実度は異なっている状況がある.また,一般病院で も災害対策は行われているが,病院の規模や設置主体 によって実施状況は異なっている.病院看護部が自分 の病院の得点を認識することは,自分の病院の地域に おける役割を考え,主体的に災害への備えに取り組む ことを喚起させるのではないかと考える. 3. 研究の限界と今後の課題 本研究において回答者が16
.
8
%
と少なかったこと は,尺度項目数自体が114
あること,妥当性をみる ために質問項目が多かったことが影響したと考えられ た.さらに回答者の災害や防災に関する興味や関心, 問題意識,自施設の防災・災害対策の熟知度,病院本 部の考え方,他部署や他職種間との連携が関係するこ とも推察され,今後,本尺度を用いる上でどのような ことが影響するかについて調査をすすめるべきである. ついで,本尺度に関して,検証的因子分析を用い,概 念間の関係を検討し,尺度の短縮版を含め,自然災害 に対する病院看護部の備えについて探求していく必要 がある.性の検討から尺度を開発させることであった.信頼性 については
114
項目および6
下位尺度において高い 内的整合性が確認された.妥当性については,基準関 連妥当性では病院機能評価,CMP
法で,構成概念妥 当性では既知グループ技法で仮説が検証された.項目 数について課題は残るが,この尺度は自然災害に対す る病院看護部の備えに有用性を認めた. 謝辞:この調査にご回答下さいました研究協力者の皆様, ご指導頂きました兵庫県立大学の山本あい子先生,片田範子 先生,神戸女子大学の野並葉子先生,東邦大学の高木廣文先 生に御礼申し上げます. 本研究は,平成25年度に兵庫県立大学看護学研究科に提 出された博士研究の一部を加筆・修正したものである.本研 究の一部を第34回日本看護科学学会学術集会において発表 した. 利益相反:本研究における利益相反は存在しない.文
献
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