我が国のCCS政策について
1.経済産業省のCCS政策について
CCS (Carbon dioxide Capture and Storage) について
CCS(二酸化炭素回収貯留)とは、工場や発電所等から排出される二酸化炭素(
C
arbon dioxide)を大
気放散する前に回収し(
C
apture)、地下へ貯留(
S
torage)する技術。
IEA(国際エネルギー機関)や、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)等において、CCSは地球温暖
化対策に効果的な技術として評価。
CO
2排出源
CO
2回収
回収設備CO
2貯留
CO2圧入 製油所 発電所 化学プラント など遮へい層
CO2を通さない泥岩などの層。CCSの流れ
貯留層
すき間の多い砂岩などの層。 岩石のすき間にCO を貯留。圧入方式
① 陸上からの圧入 ※ 二酸化炭素削減技術実証試験事業 ② 海上抗口からの圧入 ③ 海底抗口からの圧入CO
2 2050年時点までに求められる温室効果ガス削減量の13%(2050年時点で年間約60億トン)を CCSによ
り達成することが必要 (IEA)
CCSの導入がなければ、2100年に温度上昇を2℃以内に抑えることは困難であることを示唆 (IPCC)
23
出典:IEA (“エネルギー技術展望2015”)
再生可能エネ(Renewables):30%
CCS:13%
発電改善(Power generation efficiency and fuel switching):1%
CCS:13
%
再生可能エネ:30%
エネ効率向上:38%
原子力:8%
全世界のCCSの技術ポテンシャルは約2兆トン(現在の排出量の63年分相当)
(IPCC「 CCSに関する特別報告書」)
2050年における排出削減量の13%はCCSにより達成すると評価
(IEA「エネルギー技術展望2015」)
※単位のGtは 10億トンの意気候変動対策とCCS
燃料転換:10%
燃料転換(End-use fuel switching):10%
エネ効率向上(End-use fuel and electricity):38%
原子力(Nuclear):8%
2012年:340億t
2050年:560億t→140億t 420億t削減
4
2014年に公表されたIPCC第5次評価報告書では、
『CCS技術は、化石燃料発電プラントの温室効果ガス排出を削減できる可能性
がある』と評価。
IPCC報告書のシミュレーション結果によれば、2100年に温度上昇を2℃に抑える
と仮定した場合、CCS有り (下中図)では発電部門からの大規模削減が見込め
るが、CCS無しの場合(下右図)に大規模植林などの「土地利用(AFOLU)」部門
にて相当量の削減を行わなければならないことが示唆。
特段の温暖化対策無し
CCS
有り
で2℃を目指す
CCS
無し
で2℃を目指す
気候変動対策とCCS
⑦
世界のCCSプロジェクト
5
出典:Global CCS Institute, “The Global Status of CCS 2015” に基づいて作成
※大規模:年間
80万t以上(石炭火力)
年間
40万t以上(その他の排出源)
運転中:
15件
建設中:
7件
精査中:
11件
評価中:
9件
構想:
3件
北米:
19件
欧州:
8件
中東:
2件
アフリカ:
1件
南米: 1件
オセアニア:
3件
アジア:
11件
大規模プロジェクト
45件(2015年11月)⑦
世界のCCSプロジェクト
出典:Global CCS Institute, “The Global Status of CCS 2015”
運転中15件
建設中7件
操業(Operate)・建設(Execute)・精査(Define)段階にある業種別および貯留形態別の大規模CCSプロジェクト
の実際の操業時期および予想操業時期
● 攻めの温暖化外交戦略(ACE)(平成25年11月15日)
(『イノベーション』項にて、2050年世界半減に必要な技術として位置づけ)
CCS(CO2回収・貯留技術):火力発電等から排出されるCO2を回収し地
下に貯留。日本はCCS普及の鍵となる分離回収技術の高効率化で世界
に貢献。
● エネルギー基本計画(平成26年4月11日閣議決定)
2020年頃の二酸化炭素回収貯留(CCS)技術の実用化を目指した研究
開発や、CCSの商用化の目処等も考慮しつつできるだけ早期のCCS
Ready導入に向けた検討を行うなど、環境負荷の一層の低減に配慮した
石炭火力発電の導入を進める。
日本の政策的位置付け
7● 東京電力の火力電源入札に関する関係局長級会議取りまとめ
(平成25年4月25日)
(2) 2050 年目標との関係
日本の政策的位置付け
(ア) 国は、当面は、火力発電設備の一層の高効率化、2020年
頃のCCS商用化を目指したCCS等の技術開発の加速化を図ると
ともに、CCS導入の前提となる貯留適地調査等についても早期
に結果が得られるよう取り組む。
● 地球温暖化対策計画(平成28年5月13日閣議決定)
2030年以降を見据えて、CCSについては、「東京電力の火力電源入
札に関する関係局長会議取りまとめ」や「エネルギー基本計画」等を踏ま
えて取り組む。
2015年(平成27年) 4月に、経済産業省と米国エネルギー省との間で、 「二酸化炭素回収・貯留分野に係る協力文書(MOC)」を署名し、日米 間の研究協力を推進。 二国間での取組:経済産業省と米国エネルギー省との研究協力 2015年(平成27年)11月、CSLF閣僚級会合がサウジアラビアの リヤドにて開催。 クリーンエネルギー技術の1つにCCSを位置づ けるべき等、CCSの重要性に言及した共同声明を発出。 A A 事業名\年度
2015
2016
2017
2018
2019
2020~
A設備
建設
CO
2圧入
10~20万トン/年
モニタリング
研究開発
② CO
2分離回収技術
実証試験
(苫小牧)
CCS技術
の
実用化
調査井掘削 (複数地点)貯留ポテ
ンシャル
調査
地質調査我が国のCCS政策
A① 安全性評価技術
コスト低減 貯留適地の選定 操業能力の獲得 安全性の確立 我が国初となる大規模実証試験や要素技術の開発等を推進するとともに、潜在的なCO
2貯留適地
の選定を実施。
※ 二酸化炭素貯留ポテンシャル調査事業国際的な取組()
※ 二酸化炭素削減技術実証試験事業 安全性評価技術の検証 多国間の取組:炭素隔離リーダーシップフォーラム(CSLF)国際協力
9 平成23年10月、実施調査結果のとりまとめ
・「苫小牧における貯留層総合評価」
・「苫小牧地点における実証試験計画(案)」
平成23年10月~12月、専門検討会の実施
・「CCS実証試験実施に向けた
専門検討会」の開催
→実施調査結果について、
専門的知見を有する第三者により、
技術的な観点から確認及び評価を実施
平成24年2月、北海道苫小牧市での実施を決定
③
苫小牧に決定した経緯
産業技術環境局 環境調和産業・技術室 03-3501-9271 事業イメージ <実証試験設備の位置関係>
二酸化炭素削減技術実証試験事業
経済性・実現可能性の観点から、沿岸の海底下に圧入できる地点(北海道苫小牧市)を試験地に選定し、
我が国で初となる大規模CCSの実証試験を実施。
具体的には、製油所の排出ガスから分離回収したCO
2を年間約10万トン規模で地中へ貯留するとともに、
貯留したCO
2のモニタリング技術等の実証を行う。
経済産業省
日本CCS調査株式会社
委託 事業実施体制 ※ 2016年度(平成28年度)4月より圧入開始 <実証事業スケジュール> 技 術 の 実 用 化 へ CO2圧入 (10万トン規模/年) 貯留モニタリング等 苫 小 牧 実 施 決 定 実 地 調 査 終 了 設備の設計・建設、 坑井の掘削、 操業の準備等 調査 建設 圧入・モニタリング~2011fy 2012fy 2015fy 2016fy 2020fy~
苫小牧実証試験設備の全体概要
圧入
貯留
圧縮ガス供給基地
CO2含有ガス 10万トン/年以上 ※排出源の操業状況等による 圧入井(2坑) 送出 PSA下流ガス送出 排出装置分離・回収
《新設》CO
2分離・回収/圧入基地
《新設》 昇圧・分離 【貯留層】萌別層砂岩層 海底下・深度1,100~1,200m 【貯留層】滝ノ上層T1部層 海底下・深度2,400~3,000m 《新設》 送出配管PSA(Pressure Swing Adsorption、圧力スイング吸着):
水素製造装置の生成ガスから高純度水素ガスを得る装置。 PSA装置(排出装置)からの下流ガスには高濃度CO2が含まれる。
・
商業運転中の製油所の水素製造装置を排出源として、CO
2を分離・回収、圧入に必要な圧力
まで昇圧(最大23MPa)し、10万トン/年以上のCO
2を苫小牧沖の2つの貯留層に圧入する。
・2012~2015年度は、これら地上設備の設計・建設、圧入井掘削、およびモニタリングシス
テムの構築とベースライン観測等のCO
2圧入に向けた準備を行い、2016年4月より、海底
下の地層へのCO
2圧入を開始した。
(設備仕様: 最大20万トン/年のCO2に対応)苫小牧実証試験 設備の位置関係
三次元弾性波探査 作業範囲
• OBC (Ocean Bottom Cable: 海底受振ケーブル) 微小振動、自然地震観測、二次元弾性波探査に使用。 • OBS (Ocean Bottom Seismometer: 海底地震計) 微小振動、自然地震観測に使用。 OBS OBS OBS OBS 滝ノ上層観測井 OB-3 (鉛直) 高感度陸上地震計 萌別層観測井OB-2 (鉛直) 圧入井 2坑 (坑口) 滝ノ上層観測井OB-1 調査井を改修(坑口) ガス供給設備 《出光興産製油所内》 CO2分離・回収/圧入設備 《製油所に隣接》
© Google Image © 2013 DigitalGlobe Data SIO, NOAA, U.S. Navy, NGA, GEBCO Image © 2013 TerraMetrics
地上設備完成イメージ図
②
CO2分離・回収/圧入設備の鳥瞰写真図
冷却塔 純水タンク 工業用水受水槽 排水処理水槽 管理棟 蒸気タービン発電機 第1低圧CO2圧縮機 第2低圧CO2圧縮機 高圧CO2圧縮機 計装空気設備 窒素設備 圧入井 アミンタンク高純度
CO
2
の流れ
PSAオフガスの流れ
PSAオフガス圧縮機 低圧ボイラー 高圧ボイラー 燃料油タンク 純水製造設備 CO2吸収塔 フレア・ベントスタック CO2放散塔 低圧フラッシュ塔15
地上設備完成イメージ図
②
CO2分離・回収設備及び圧縮設備
CO
2分離・
回収設備
:PSAオフガス
中のCO
2を
分離回収
PSA
オフガス
圧縮設備
:PSAオフガス
(CO
2含有ガス)
をCO
2吸収
塔の運転圧力
(0.81MPaG)
まで昇圧
CO
2圧縮設備
:分離回収した
CO
2を圧入
圧力まで昇圧
分離・回収法におけるエネルギー消費量(溶液再生熱量+溶液循環動力)は、2011年
経済産業省「CCS実証試験実施に向けた専門検討会」において2.5GJ/トン-CO2以下を
目標とされており、本実証試験では1.5 GJ/トン-CO
2以下にすることが期待される。
抗井掘削イメージ図
滝ノ上層T1部層(火山岩類) 滝ノ上層泥岩層 振老層(泥岩) 平取+軽舞層(泥岩) 荷菜層(泥岩) 萌別層(砂岩) 萌別層(泥岩) 鵡川層(礫岩、砂岩、泥岩) 第四系 貯留層 貯留層 遮蔽層 遮蔽層 ※この断面図は、滝ノ上層圧入井坑跡における断面図 萌別層観測井 m m m m17
モニタリングシステムの概要
萌別層砂岩層 滝ノ上層T1部層 陸上設置 地震観測点 観測データ → 萌別層 圧入井 滝ノ上層 圧入井 :温度・圧力センサー :3成分地震計 :CO2流量センサー ←観測データ 観測データ → ← 観 測 デ ー タ ← 観 測 デ ー タ CO 2圧入 → CO 2圧入 → OBS OBS 常設型OBC ← 観 測 デ ー タ ←観測データ ← 観 測 デ ー タ OBS OBS Hi-netデータ (自然地震) ←観測データ 滝ノ上層 観測井OB-1 (調査井CCS-1を改修) 萌別層 観測井 OB-2 滝ノ上層 観測井 OB-3 圧入基地管理棟 ・二/三次元弾性波探査による CO2の拡がりの定期的確認。 ・モニタリング結果に基づき事前 のCO2挙動予測シミュレーション の再現性を評価。 ・評価結果に応じて地質モデルの 改善と予測シミュレーションの高 精度化情報公開
苫小牧市役所及び日本CCS調
査(株)のWebsiteにて、二酸化
炭素の圧入量の実績を表示。
http://www.jccs-tomakomai-monitoring.com/JCCS/index.php/top/監視(モニタリング)により、圧
入地点周辺の自然地震や微小
振動を観測し結果を表示。
二酸化炭素圧入以前の観測
により、圧入に関係なく、微小
振動の発生が確認されていま
す。
CCSの社会的認知度向上のためには、PA活動が重要
パネル展示: 札幌市、苫小牧市など北海道内で開催
国内大学における講演会 : 東京大学、京都大学などで開催
現場見学会 : 大学、研究会、他県県議会などを対象に開催
イベント参加: 札幌や首都圏で開催された環境関係の展示会などに参加
子供向け実験教室 : 苫小牧市科学センター、児童館などで開催
⑤
PA(Public Acceptance)活動
19(平成25年度) パナソニック㈱ 山田由佳博士 講演 (平成24年度) 森田正光氏 講演 (平成25年度) 北海道大学名誉教授 池田隆司先生 講演 (平成26年度) 動物写真家 伊藤健次氏 講演