わかりやすい税務判例・事例情報誌
No.
1451
資 産 税 広 報
《主 な も く じ》
●資産をめぐる税務
[問答式] ■シリーズ相続と贈与に関する税務 《相続税の申告と納付》 ▼共同相続人に行方不明の者がいる場合の遺産分割及び行方不明者の相続税 の申告 …… 2 ■シリーズ譲渡に関する税務 《ゴルフ会員権の譲渡》 ▼600万円で購入したゴルフ会員権の預託金の償還期間が到来し150万円が返還 された …… 4 ■資産の評価に関する税務 《土地の評価単位》 ▼位置及び形状から一団の土地として評価することが合理的と認められる場 合とは …… 5 ◎読者からの緊急相談◎ ▼相続時精算課税の適用を受け父から取得した更地にアパートを建て賃貸し ている …… 7□判・審判事例特報
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特例について、連続して確定申告書 が提出されていないため適用することはできない …… 8 ●ニュース 所沢市/ふるさと納税/税収計算「赤字」 返礼品廃止 ……16旬
刊
資産をめぐる税務
問答式
■シリーズ相続と贈与に関する税務
《相続税の申告と納付》
◆
共同相続人に行方不明の者
がいる場合の遺産分割及び
行方不明者の相続税の申告
◆
◇質
問
◇ 平成29年1月、母が死亡しました。相 続人は長男である私を含め兄弟4人です が、兄弟のなかに行方不明の者(以下、 Sといいます)がおります。 相続税の申告の準備に取りかかりたい と思いますが、この場合において、遺産 分割やSの相続税の申告はどのように行 えばよいのでしょうか。 (東京都・TS氏) ◆回
答
◆ 通常、遺産分割は、遺産及び遺産分割の当 事者(共同相続人)が確定された後、共同相 続人の協議、家庭裁判所における調停等によ り行われますが、共同相続人のなかに行方不 明者がいる場合には、共同相続人や家庭裁判 所は戸籍上明記された身分に従うと法律上相 続人とされる者を無視して分割することはで きないし、かといって、生死不明者の者の帰 来を待つわけにもいきません。 そこで、このような場合は、行方不明者の 財産管理人(その者がおいた財産管理人、利 害関係者(共同相続人が含まれます)又は検 察官の請求によって家庭裁判所が選任した財 産管理人)が、家庭裁判所の許可を得た上で、 他の共同相続人と遺産分割の協議を行うこと ができるとされています。 したがって、まず、ご質問の遺産分割の件 については、Sさんの財産管理人が定められ ていないのであれば、あなた方が、家庭裁判 所にSさんの財産管理人の選任を請求し、そ れによって選任された財産管理人を分割当事 者として進めることができるかと思われます。なお、この家庭裁判所が選任した財産管理 人は、不在者の財産目録を作成し、管理すべ き財産の内容・範囲を確定した後、財産の現 状維持(保存・利用・改良行為の範囲内にお いて、権利行使権限、権利義務設定権限及び 処分権限を有します)する職務を負うことか ら、法定代理人と解されています。 次に、相続税の申告書の提出期限は、相続 開始の日を相続人等が知った日の翌日から起 算して10か月を経過する日となっています。 また、その者が申告期限内に申告書を提出し ないで死亡した場合には、その者の相続開始 があったことを知った日の翌日から起算して 10か月を経過する日までに、その者の相続人 等はその死亡した者が提出すべきであった申 告書を提出しなければならないことになって います。 一方、税務署長は、その死亡の日を知るこ とができても、相続人等が相続開始を知った かどうかを知ることができないことから、相 続人等が提出すべき申告書の提出すべき申告 書の提出期限前であっても、その被相続人の 死亡した日の翌日から起算して10か月を経過 したときは、その相続人等が申告すべき課税 価格又は税額を決定することができることと されています。 したがって、ご質問Sさんの相続税の申告 の件については、税務署長の決定を待てばよ ろしいかと思います(もちろん、あなたを含 めSさん以外の相続人の方は、提出期限まで に申告をする必要があります)。 なお、決定を受けた場合の加算税及び延滞 税については、Sさんの相続税の申告書の提 出期限及び法定納期限は、Sさんが「相続の 開始があったことを知った日」から10か月を 経過する日になりますから、Sさんが行方不 明であり、相続の開始があったことを知らな とすれば、その提出期限及び法定納期限は 来しないことになりますので、課されること はありません。 参照条文=相法27② ◆
参
考
◆ 「相続開始があったことを知った日」 「相続開始があったことを知った日」とは、 自己のために相続開始があったことを知った 日をいいます。一般的に相続人は被相続人が 死亡した日に相続開始があったことを知るも のと思われますが、次に掲げる者については、 次に掲げる日をいうものとして取り扱われて います。 ① 民法第30条及び第31条の規定により失踪 の宣告を受け死亡したものとみなされた者 の相続人又は受遺者 これらの者がその失踪の宣告があったこ とを知った日 ② 民法第787条の規定による認知に関する 裁判の確定により相続開始後において相続 人となった者 その者がその判決の確定を知った日 ③ 民法第886条の規定により、相続につい て既に生まれたものとみなされる胎児 法定代理人がその胎児の生まれたことを 知った日 ④ 遺贈(被相続人から相続人に対する遺贈 を除きます)によって財産を取得した者 自己のためにその遺贈があったことを知 った日 参照条文=相基通27-4■シリーズ譲渡に関する税務
《ゴルフ会員権の譲渡》
◆
600万円で購入したゴルフ会
員 権 の 預 託 金 の 償 還 期 間 が
到来し150万円が返還された
◆
◇質
問
◇ 所有していたゴルフ会員権について、 預託金の償還期間が到来したため、退会 手続を行った上で預託金の返還請求を行 いました。この会員権は10年ほど前に友 人から600万円で購入したものですが、 返還された預託金は150万円でした。 ゴルフ会員権の譲渡については、総合 課税の譲渡所得となり、譲渡損失につい ては損益通算ができるとのことですが、 預託金の返還についても損益通算ができ るのでしょうか。 (神奈川県・FT氏) ◆回
答
◆ ゴルフ会員権に係る預託金返還請求権の行 使は、通常一定の据置期間経過後に、ゴルフ クラブからの退会を条件に認められます。 これにより預託金の償還を受けるという行 為は、優先的施設利用権を自ら放棄して、単 に貸付金債権を回収する行為であり、ゴルフ 会員権を譲渡したものとみることはできませ ん。 したがって、譲渡所得の基因となる資産の 譲渡により生じた損失には該当しないため、 他の資産の譲渡による譲渡所得と通算するこ とはできません。 また、これにより償還不足額が生じたとし ても、その償還不足額は「家事上の損失」と して、所得税の計算上考慮されません。 なお、預託金の額を下回る金額で第三者か ら会員権を取得していた者が、ゴルフクラブ からの退会に伴い、その取得価額以上の預託 金の償還を受けた場合には、その所得は、雑 所得となります。 参照条文等=所法33、35、51-4、69、 所基通33-6の2■資産の評価に関する税務
《土地の評価単位》
◆
位 置 及 び 形 状 か ら 一 団 の 土
地 と し て 評 価 す る こ と が 合
理 的 と 認 め ら れ る 場 合 と は
◆
◇質
問
◇ 私の父が、本年1月に死亡したため、 父の所有していた宅地(父の居住用の家 屋の敷地)、農地及び山林を相続により 取得しました。これらはいずれも市街化 区域に所在し、土地の位置及び形状は、 下図のとおりです。 山林 宅地 農地 道 路 このような場合、宅地については1区 画の宅地として評価し、農地及び山林に ついては、一団の土地として評価しても 差し支えないでしょうか。 (千葉県・HK氏) ◆回
答
◆ 宅地の価額は、1画地の宅地ごとに評価す ることに定められており、1画地の宅地とは、 利用の単位となっている1区画の宅地をいう ものとされています。 この場合の「1画地の宅地」の判定は、原 則として、①宅地の所有者による自由な使用 収益を制約する他者の権利(原則として使用 貸借による使用借権を除きます)の存在の有 無により区分し、②他者の権利が存在する場 合には、その権利の種類及び権利者の異なる ごとに区分して判定します。 ところで、市街化調整区域以外の都市計画 区域で市街地的形態を形成する地域において、 市街地農地(生産農地を除きます)や市街地 山林は、宅地化が進展している地域に存して いることから、将来的には宅地化の可能性が 高く、その取引価額も宅地の価額の影響を強 く受けており、これらの価額については、宅 地の価額を基礎に形成されているものと認め られますので、市街地農地や市街地山林の評 価方法は、それらの土地が宅地であるとした 場合の1㎡当たりの価額から、その農地、山 林等を宅地に転用する場合において通常必要 と認められる1㎡当たりの造成費に相当する 金額として地域ごとに国税局長が定めた金額 を控除した金額に、その農地、山林等の地積 を乗じて計算した金額によって評価する、い わゆる宅地比準方式により評価することとさ れています。〔算式〕 その農地が宅 地であるとし - 1㎡当た × 地積 た場合の1㎡ りの宅地 当たりの価額 造成費 = 市街地農地(山林)の評価額 また、市街地農地や市街地山林の価額につ いて、宅地の価額を基礎にするという考え方 は評価方法についてだけでなく、評価単位に ついても妥当します。すなわち、土地の評価 は、原則として、地目の別に評価することと され、農地については耕作の単位となってい る1区画の農地ごとに、山林については1筆 の山林ごとにそれぞれ評価することとされて いますが、宅地比準方式により評価する農地 や山林については、耕作の単位となっている 1区画の農地ごとに、山林については1筆の 山林ごとに評価するのではなく、宅地として の効用を果たす規模や形状等の観点から評価 単位を考える必要があります。 そこで、平成11年7月の財産評価基本通達 の一部改正により、宅地比準方式により評価 する市街地農地、市街地周辺農地、市街地山 林及び市街地原野については、利用の単位と なっている一団の農地、山林又は原野を評価 単位とすることとされました。 さらに、ご質問のように市街地農地及び市 街地山林が隣接しているような場合、その規 模、形状、位置関係等からこれらの土地が一 団の土地として価格形成されることもありま す。これらの農地及び山林は、近隣の宅地の 価額の影響を強く受けることから、原則とし て、宅地比準方式により評価することとなっ ており、基本的な評価方式はいずれも同じで す。 そこで、このような評価方法の同一性に着 目して、地目の別に評価する土地の評価単位 の例外として、その形状、地積の大小、位置 等からみて一団として評価することが合理的 と認められるときは、その一団の土地ごとに 評価することが適当であると考えられます。 平成11年7月の財産評価基本通達の一部改 正において、市街化調整区域以外の都市計画 区域で市街地的形態を形成する地域に存する、 宅地比準方式により評価する市街地農地、市 街地山林、市街地原野及び宅地と状況が類似 する雑種地のいずれか2以上の地目が隣接し ており、全体を一団として評価することが、 その形状、地積の大小、位置等からみて合理 的と認められる場合には、その全体を一団の 土地として評価すると定められ、上記の考え 方が明らかにされました。 したがって、ご質問の場合、宅地について は、居住用家屋の敷地ですので宅地全体を1 区画の宅地として評価し、農地及び山林につ いては、その形状、地積の大小、位置等から みて一団として評価することが合理的と認め られる場合には、一団の土地として評価する ことになるものと考えます。 参照条文=評基通7-2(1)
◎読者からの緊急相談◎
◇
相続時精算課税の適用を受
け父から取得した更地にア
パートを建て賃貸している
◇
◇質
問
◇ 父から贈与により取得した更地につい て、相続時精算課税の適用を受けました。 その後、その更地にアパートを建て賃貸 しています。 父の相続に際しては、更地が相続税の 課税対象になるのでしょうか。それとも、 アパートの敷地として相続税の課税を受 けることになるのでしょうか。 また、アパートの賃貸収入は相続税の 課税対象にとなりますか。 (東京都・YH氏) ◆回
答
◆ 相続時精算課税の制度とは、原則として60 歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子 又は孫に対し、財産を贈与した場合において 選択できる贈与税の制度です。 受贈者の選択により相続時精算課税の適用 を受けた場合には、その生前贈与財産は、そ の贈与者の相続開始時に、贈与時の価額で相 続財産に取り込まれ、相続税と贈与税の一体 課税を受けるとともに、すでに納付された贈 与税額は控除される形で精算を受けることに なります。 贈与により取得した財産についてその後利 用形態を変えたとしても、相続時精算課税の 適用を受けた贈与財産は、相続開始の時にお いても贈与時の財産形態のままで、かつ、贈 与時の価額で相続財産に合算されます。 したがって、ご質問の場合、生前贈与を受 けた更地をその後アパートの敷地として利用 し、相続開始の時点では貸家建付地となって いますが、相続財産に合算する金額は、贈与 時の利用状況である更地として贈与時の価額 で計算されるものと考えます。 ところで、その後その更地にアパートを建 て得た賃料収入は贈与を受けたものではなく、 贈与財産の賃貸により得られたものであり、 一体課税の対象とはなりません。したがって、 相続税の課税財産にはならないものと考えま す。 参照条文等=相法21の2、21の5、 21の9~21の16、28、33の2、 相令5、相規10、11、 措法70の2の4、70の2の6□判・審判事例特報
上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
の特例について、連続して確定申告書
が提出されていないため適用すること
はできない
棄却 〔国税不服審判所=平成28年3月7日 ・裁決〕□問
題
《事
実》
請求人は上場株式等に係る譲渡損失の
繰越控除の特例を適用した
(1) 事案の概要 審査請求人(以下、請求人という)が、 平成24年分の所得税に係る更正の請求及び 平成25年分の所得税等の確定申告において、 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の特 例を適用したところ、原処分庁が、平成22 年分及び平成23年分の所得税の各確定申告 書の提出が平成24年分の所得税の確定申告 書の提出後であるため、当該特例の適用要 件である「その後において連続して確定申 告書を提出している場合」に該当しないこ となどから当該特例を適用することはでき ないとして、更正をすべき理由がない旨の 通知処分及び更正処分をしたのに対し、請 求人が、通知処分の全部及び更正処分の一 部の取消しを求めた。 (2) 関係法令の要旨 イ 租税特別措置法(平成25年法律第5号に よる改正前のものをいい、以下、措置法と いう)第37条の10《株式等に係る譲渡所得 等の課税の特例》第1項は、居住者等が株 式等の譲渡をした場合には、当該株式等の 譲渡による譲渡所得等については、他の所 得と区分し所得税を課する旨、また、この 場合において、株式等に係る譲渡所得等の 金額の計算上生じた損失の金額があるとき は、所得税法その他所得税に関する法令の 規定の適用については、当該損失の金額は 生じなかったものとみなす旨規定している。ロ 措置法第37条の12の2《上場株式等に係 る譲渡損失の損益通算及び繰越控除》第6 項は、確定申告書を提出する居住者等が、 その年の前年以前3年内の各年において生 じた上場株式等に係る譲渡損失の金額(こ の項の規定の適用を受けて前年以前におい て控除されたものを除く)を有する場合に は、同法第37条の10第1項後段の規定にか かわらず、当該上場株式等に係る譲渡損失 の金額に相当する金額は、当該確定申告書 に係る年分の株式等に係る譲渡所得等の金 額及び上場株式等に係る配当所得の金額を 限度として、当該年分の当該株式等に係る 譲渡所得等の金額及び上場株式等に係る配 当所得の金額の計算上控除する旨規定して いる。 ハ 措置法第37条の12の2第8項は、同条第 6項の規定は、居住者等が同条第7項に規 定する上場株式等に係る譲渡損失の金額が 生じた年分の所得税につき当該上場株式等 に係る譲渡損失の金額の計算に関する明細 書その他の財務省令で定める書類の添付が ある確定申告書を提出し、かつ、その後に おいて連続して確定申告書を提出している 場合であって、同条第6項の確定申告書に 同項の規定による控除を受ける金額の計算 に関する明細書その他の財務省令で定める 書類の添付がある場合に限り、適用する旨 規定している。 ニ 措置法第37条の12の2第9項は、同条第 6項の規定を適用する場合における同条第 8項の確定申告書の提出がなかったとき又 は同項の書類の添付がない確定申告書の提 出があったときについて、同条第4項の規 定を準用する旨規定している。 ホ 措置法第37条の12の2第4項は、税務署 長は、同条第3項の確定申告書の提出がな かった場合又は同項の記載若しくは添付が ない確定申告書の提出があった場合におい ても、その提出又は記載若しくは添付がな かったことについてやむを得ない事情があ ると認めるときは、当該記載をした書類及 び同項の財務省令で定める書類の提出があ った場合に限り、同条第1項(上場株式等 の譲渡損失と配当所得との損益通算)の規 定を適用することができる旨規定している。 (3) 基礎事実 以下の事実は、請求人と原処分庁との間に 争いがなく、審判所の調査の結果によっても その事実が認められる。 イ 株式等に係る譲渡所得等の金額に関する 確定申告から平成26年11月5日の更正の請 求に至るまでの事実経過(下記の括弧内の 日付は、申告又は請求をした日である) (イ) 平成24年分の所得税の確定申告(平成 25年3月15日) 請求人は、株式等に係る譲渡所得等の金 額を○○○○円(①)と記載した平成24年分 の所得税の確定申告書を原処分庁に提出し て、平成24年分の所得税の確定申告をした。 なお、上記申告書には、措置法第37条の12 の2第6項に規定する特例(以下、本件特 例という)を適用する旨の記載はなかった。 (ロ) 平成22年分の所得税の確定申告(平成 25年9月30日) 請求人は、株式等に係る譲渡所得等の金 額を△○○○○円及び翌年以後に繰り越さ れる上場株式等に係る譲渡損失の金額を○ ○○○円(①)と記載した平成22年分の所得 税の確定申告書を原処分庁に提出して、平 成22年分の所得税の確定申告をした。 (ハ) 平成23年分の所得税の確定申告(平成 25年9月30日) 請求人は、株式等に係る譲渡所得等の金 額を△○○○○円(①)及び翌年以後に繰り
越される上場株式等に係る譲渡損失の金額 を○○○○円(②)(上記(ロ)の①の金額○ ○○○円と上記①の損失の金額○○○○円 との合計金額)と記載した平成23年分の所 得税の確定申告書を原処分庁に提出して、 平成23年分の所得税の確定申告をした。 (ニ) 平成25年分の所得税等の確定申告(平 成26年3月15日) 請求人は、株式等に係る譲渡所得等の金 額を○○○○円(①)及び当該金額から差し 引く上場株式等に係る譲渡損失の金額を○ ○○○円(上記(ハ)の②の金額○○○○円 から上記(イ)の①の金額○○○○円を控除 した金額)と記載した平成25年分の所得税 等の確定申告書を原処分庁に提出して、平 成25年分の所得税等の確定申告をした。 (ホ) 平成23年分の所得税の修正申告(平成 26年11月4日) 請求人は、原処分庁所属の職員の調査に 基づき、株式等に係る譲渡所得等の金額及 び上場株式等に係る配当所得の金額に誤り があったとして、株式等に係る譲渡所得等 の金額を△○○○○円、上場株式等に係る 配当所得の金額を○○○○円とした上で、 当該配当所得の金額と損益通算した後の株 式等に係る譲渡所得等の金額を△○○○○ 円(①)及び翌年以後に繰り越される上場株 式等に係る譲渡損失の金額を○○○○円 (上記(ロ)の①の金額○○○○円と上記①の 損失の金額○○○○円との合計金額。以下、 本件譲渡損失額という)と記載した平成23 年分の所得税の修正申告書を原処分庁に提 出して、平成23年分の所得税の修正申告を した。 (ヘ) 平成24年分の所得税の更正の請求(平 成26年11月5日) 請求人は、措置法第37条の12の2第9項 の規定により株式等に係る譲渡所得等の金 額の計算上、本件特例を適用し得るとして、 株式等に係る譲渡所得等の金額を零円とし、 加えて給与所得の金額を○○○○円と記載 した更正の請求書を原処分庁に提出して、 平成24年分の所得税の更正の請求(以下、 本件更正の請求という)をした。 ロ 本件更正の請求以後の処分に係る事実経 過(いずれの処分も平成26年12月22日付) (イ) 本件更正の請求に対する更正をすべき 理由がない旨の通知処分 原処分庁は、①平成22年分及び平成23年 分の所得税の各確定申告書の提出が平成24 年分の所得税の確定申告書を提出した後で あるため、措置法第37条の12の2第8項に 規定する「その後において連続して確定申 告書を提出している場合」には当たらない こと及び②同条第9項の規定は適用されな いことなどから、株式等に係る譲渡所得等 の金額の計算上、本件譲渡損失額について 本件特例を適用できないとして、更正をす べき理由がない旨の通知処分(以下、本件 通知処分という)をした。 (ロ) 平成24年分の所得税の更正処分等 原処分庁は、株式等の譲渡所得等の金額 を○○○○円(上記イの(イ)の①と同額) とした上で、本件更正の請求のとおり、給 与所得の金額を○○○○円とするなどして、 更正処分及び本件賦課決定処分をした。 (ハ) 平成25年分の所得税等の更正処分等 原処分庁は、①平成24年分の所得税の確 定申告書には上場株式等に係る譲渡損失の 金額に関する明細書等が添付されていなか ったこと及び②措置法第37条の12の2第8 項に規定する「その後において連続して確 定申告書を提出している場合」には当たら ないことから、株式等に係る譲渡所得等の 金額の計算上、本件特例は適用できず、上
記イの(ニ)の上場株式等に係る譲渡損失の 金額○○○○円は控除できないとして、株 式等に係る譲渡所得等の金額を○○○○円 (上記イの(ニ)の①と同額)などとする更正 処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を した。 (4) 争点 争点は、平成24年分及び平成25年分の株 式等に係る譲渡所得等の金額の計算上、本 件譲渡損失額について、本件特例を適用し 得るか否かであり、具体的には、以下の2 点である。 ① 請求人は、措置法第37条の12の2第8項 に規定する「その後において連続して確定 申告書を提出している場合」に該当するか 否か(争点1)。 ② 仮に、措置法第37条の12の2第8項に規 定する要件を満たさないとしても、請求人 には、確定申告書の提出又は書類の添付が なかったことにつき、同条第9項が準用す る同条第4項に規定する「やむを得ない事 情」があるか否か(争点2)。
請求人の主張
更正の請求等により、連続性が確認で
きれば、要件を充足すると解される
(1) 請求人は、措置法第37条の12の2第8 項に規定する「その後において連続して確 定申告書を提出している場合」に該当する か否か(争点1)。 措置法第37条の12の2第8項に規定する 「連続して確定申告書を提出している場合」 については、上場株式等に係る譲渡損失の 金額が生じた年分の確定申告書が、本件特 例の適用を受ける年分の確定申告書の後に 提出されても、修正申告又は更正の請求等 により、結果として、上場株式等に係る譲 渡損失の金額に関する株式等に係る譲渡所 得等の金額の計算の連続性が確認できれば、 上記要件を充足すると解される。 したがって、平成24年分(本件特例を適 用する年分)の確定申告書を提出した後に、 平成22年分及び平成23年分(上場株式等に 係る譲渡損失の金額が生じた年分)の各確 定申告書を提出した場合であっても、平成 24年分について、本件特例の適用を求める 本件更正の請求により、上場株式等に係る 譲渡損失の金額に関する株式等に係る譲渡 所得等の金額の計算の連続性を確認し得る こと、また、平成25年分についても当該計 算の連続性が確認し得るのであるから、請 求人は、措置法第37条の12の2第8項に規 定する「その後において連続して確定申告 書を提出している場合」に該当する。 なお、措置法第37条の12の2第8項に規 定する「連続して確定申告書を提出してい る場合」が、確定申告書の提出の順序に係 る時系列を意味するものでないことは、租 税特別措置法(株式等に係る譲渡所得等関 係)の取扱いについて(平成27年7月7日 課資3-4ほか国税庁長官通達による改正 前のもの。以下、措置法通達という)37の 12の2-5《更正の請求による更正により 上場株式等に係る譲渡損失の金額があるこ ととなった場合》において、上場株式等に 係る譲渡損失の金額の計算に関する明細書 等の添付がなく提出された確定申告書につ いて、更正の請求により新たに同項に規定 する要件を充足した場合に、本件特例の適 用を認めていることから推測できる。(2) 仮に、措置法第37条の12の2第8項に 規定する要件を満たさないとしても、請求 人には、確定申告書の提出又は書類の添付 がなかったことにつき、同条第9項が準用 する同条第4項に規定する「やむを得ない 事情」があるか否か(争点2)。 措置法第37条の12の2第9項が準用する 同条第4項に規定する「やむを得ない事情」 とは、納税者の申告に係る選択の誤りの修 正を認める場合に使用される要件であるか ら、納税者の意思の不備(錯誤)を本来の 意思に補完する目的である当該規定の適用 要件を限定的に解することは、その目的に 反し、また、当該規定の適用要件は幅広く 認められるべきであるから、請求人の次の イ及びロの事情は、同項に規定する「やむ を得ない事情」に該当する。 イ 平成24年分について 平成24年分の確定申告書の提出時におい ては、本件特例を適用できること及び確定 申告書の提出の連続性が要件であることを 知らなかったことから、①平成23年分及び 平成24年分の各確定申告書を連続して提出 しなかったこと及び②本件特例の適用に当 たり必要な書類を提出しなかったことにつ いて、税法の不知というやむを得ない事情 がある。 ロ 平成25年分について 平成25年9月30日の平成24年分の所得税 の更正の請求に際して、税務署の職員から 本件特例を適用できない旨の指導を受けた ために、当該更正の請求時に平成24年分の 本件特例の適用に当たり必要な書類を提出 することができなかったのであるから、平 成25年分の確定申告書の提出前に、平成24 年分の本件特例の適用に当たり必要な書類 が提出できなかったことについて、職員の 指導というやむを得ない事情がある。
原処分庁の主張
平成24年分を平成22年分及び23年分の
各確定申告書よりも先に提出している
(1) 請求人は、措置法第37条の12の2第8 項に規定する「その後において連続して確 定申告書を提出している場合」に該当する か否か(争点1)。 措置法第37条の12の2第8項は単に「連 続して確定申告書を提出している場合」と 規定しているのではなく、「その後におい て連続して確定申告書を提出している場合」 と限定的に規定しているから、本件特例を 適用する上で、上場株式等に係る譲渡損失 の金額が生じた年分の確定申告書が、本件 特例の適用を受ける年分の確定申告書より も先に提出されていることを前提としてい ることは、条文上明らかである。 したがって、請求人は平成24年分の確定 申告書を平成22年分及び平成23年分の各確 定申告書よりも先に提出しているため、平 成24年分については、措置法第37条の12の 2第8項に規定する要件を欠くことになる。 そして、平成25年分の株式等に係る譲渡 所得等の金額の計算上、本件特例を適用す るためには、平成24年分において、本件譲 渡損失額に係る純損失等の金額(措置法第 37条の12の2第12項の規定により読み替え られた国税通則法第2条《定義》第6号ハ に規定する純損失等の金額をいう)が生じ ている必要があるところ、上記のとおり、 平成24年分は措置法第37条の12の2第8項 に規定する要件を欠いているから、本件譲 渡損失額に係る純損失等の金額が生じてい ないことになり、平成25年分において本件 譲渡損失額を繰り越すことはできない。(2) 仮に、措置法第37条の12の2第8項に 規定する要件を満たさないとしても、請求 人には、確定申告書の提出又は書類の添付 がなかったことにつき、同条第9項が準用 する同条第4項に規定する「やむを得ない 事情」があるか否か(争点2)。 イ 措置法第37条の12の2第9項が準用する 同条第4項の「やむを得ない事情」をしん しゃくするには、その前提として、同条第 6項の規定を適用する場合における同条第 8項の確定申告書の提出がなかったとき又 は同項の書類の添付がない確定申告書の提 出があったときに限られる。 請求人の場合、「やむを得ない事情」を しんしゃくする必要があるのは、措置法第 37条の12の2第6項の規定を適用している 平成25年分のみであり、平成22年分ないし 平成24年分については同項の規定の適用は ないことから、「やむを得ない事情」をし んしゃくする必要はないし、平成25年分に ついては、同項の適用要件である同条第8 項に規定する「その後において連続して確 定申告書を提出している場合」に該当しな いことから、こちらも前提要件を欠く。 よって、請求人の主張する「やむを得な い事情」について判断するまでもなく、措 置法第37条の12の2第9項の規定の適用は ない。 ロ なお、念のため、措置法第37条の12の2 第4項に規定する「やむを得ない事情」に ついて判断すると、この「やむを得ない事 情」とは、納税者の責めに帰すことのでき ない客観的事情をいい、納税者の税法の不 知若しくは誤解又は事実誤認などの主観的 事情はこれに当たらないと解されていると ころ、請求人が主張する事情は、いずれも 主観的事情であると認められることから、 当該事情は、同項に規定する「やむを得な い事情」には該当せず、他に請求人の責め に帰すことのできない客観的事情があった とも認められない。
■結
論
《裁
決》
「その後において連続して確定申告書
を提出している場合」には該当しない
(1) 請求人は、措置法第37条の12の2第8 項に規定する「その後において連続して確 定申告書を提出している場合」に該当する か否か(争点1)。 イ 法令解釈 措置法第37条の12の2第8項は、同法第 37条の10第1項後段の特例として、一定の 上場株式等に係る譲渡損失の金額につき、 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控 除できることとする同法第37条の12の2第 6項(本件特例)の手続要件を定めるもの である。 そして、上記手続要件については、上記 《関係法令の要旨》のハのとおり、措置法 第37条の12の2第8項に「上場株式等に係 る譲渡損失の金額が生じた年分の所得税に つき…確定申告書を提出し、かつ、その後 において連続して確定申告書を提出してい る場合であって」と規定されているところ、 上場株式等に係る譲渡損失の金額が生じた 年分の確定申告書の提出と本件特例の適用 を受ける年分の確定申告書の提出との先後 関係については、同項が「その後において」 と規定していることからすれば、上場株式 等に係る譲渡損失の金額が生じた年分の確定申告書の提出が先であることは、文理上 明らかである。 加えて、上記《関係法令の要旨》のロのと おり、措置法第37条の12の2第6項が「上 場株式等に係る譲渡損失の金額(この項の 規定の適用を受けて前年以前において控除 されたものを除く)」と規定し、本件特例 の適用を受ける年分において控除する上場 株式等に係る譲渡損失の金額から、当該年 分の前の年分において既に控除された当該 譲渡損失の金額を除いていることからすれ ば、上場株式等に係る譲渡損失の金額が生 じた年分の確定申告書の提出後に、順次そ の後の年分の確定申告書が提出され、当該 譲渡損失の金額も順次控除することを予定 しているといえるのであって、同条第8項 の規定は、本件特例の適用を受ける年分よ り前の各年分に生じていた当該譲渡損失の 金額と本件特例の適用を受ける年分におい て控除する当該譲渡損失の金額とを逐次明 らかにさせることにより、税額の計算の安 定を確保し、もって租税法律関係の明確化 を図るものと解される。 そうすると、措置法第37条の12の2第8 項に規定する「その後において連続して確 定申告書を提出している場合」とは、上場 株式等に係る譲渡損失が生じた年分の確定 申告書を提出した後に、その後の年分の確 定申告書が順次連続して提出されている場 合をいうものと解される。 ロ 当てはめ 請求人は、上記《基礎事実》のイの(イ) ないし(ハ)のとおり、平成22年分及び平成 23年分の各確定申告書を提出した平成25年 9月30日より前の同年3月15日に、平成24 年分の確定申告書を提出しており、平成22 年分、平成23年分、平成24年分及び平成25 年分の各確定申告書を順次提出していない のであるから、措置法第37条の12の2第8 項に規定する「その後において連続して確 定申告書を提出している場合」には該当し ない。 ハ 請求人の主張について 請求人は、措置法第37条の12の2第8項 に規定する「連続して確定申告書を提出し ている場合」とは、①修正申告又は更正の 請求等により、結果として上場株式等に係 る譲渡損失の金額に関する株式等に係る譲 渡所得等の金額の計算の連続性が確認でき ればよく、②措置法通達37の12の2-5の 定めからすれば、確定申告書の提出の順序 に係る時系列を意味するものでないことは 推測し得る旨主張する。 しかしながら、措置法第37条の12の2第 8項に規定する「その後において連続して 確定申告書を提出している場合」について は、上記イのとおりであり、また、措置法 通達37の12の2-5の定めは、同項に規定 する「上場株式等に係る譲渡損失の金額が 生じた年分の所得税につき…書類の添付が ある確定申告書を提出」した場合に関する 法令解釈通達であって、「その後において 連続して確定申告書を提出している場合」 に関する法令解釈通達ではないから、請求 人の主張はいずれも採用することができな い。 (2) 仮に、措置法第37条の12の2第8項に 規定する要件を満たさないとしても、請求 人には、確定申告書の提出又は書類の添付 がなかったことにつき、同条第9項が準用 する同条第4項に規定する「やむを得ない 事情」があるか否か(争点2)。 イ 法令解釈等 措置法第37条の12の2第8項は、上記(1) のイのとおり、税額の計算の安定を確保し、
もって租税法律関係の明確化を図る趣旨の ものと解されるところ、同条第9項は、同 条第8項に規定する手続要件を満たしてい ないにもかかわらず、なお同条第6項(本 件特例)の適用を認めるものであるから、 同条第9項が準用する同条第4項に規定す る「やむを得ない事情」とは、天災、交通 途絶その他の納税者の責めに帰することの できない客観的な事情をいい、納税者の法 の不知や事実の誤認等の主観的な事情はこ れに当たらないものと解するのが相当であ る。なお、納税者の意思すなわち主観的事 情を踏まえつつ、措置法第37条の12の2第 4項を幅広く適用すべき旨の請求人の主張 は、独自の見解をいうものであって、採用 の限りでない。 ロ 当てはめ 請求人は、平成24年分については、税法 の不知というやむを得ない事情がある旨主 張するが、上記イのとおり、納税者の法の 不知という主観的な事情は、措置法第37条 の12の2第4項に規定する「やむを得ない 事情」に当たらない。 また、請求人は、平成25年分については、 平成24年分の所得税の更正の請求の際に、 本件特例の適用に当たり必要な書類が提出 できなかったことにつき、職員の指導とい うやむを得ない事情がある旨主張するが、 そもそも措置法第37条の12の2第9項は、 一定の書類の添付がない確定申告書の提出 があった場合を前提としている上、上記(1) のロのとおり、請求人は、同条第項に規定 する「その後において連続して確定申告書 を提出している場合」には該当しないから、 本件特例が適用できない旨の職員の指導は、 適正な指導であったと認められ、職員の当 該指導は、同条第4項に規定する「やむを 得ない事情」に当たらない。 その他に、天災、交通途絶その他の納税 者の責めに帰することのできない客観的な 事情は見当たらず、請求人には、確定申告 書の提出又は書類の添付がなかったことに つき、措置法第37条の12の2第9項が準用 する同条第4項に規定する「やむを得ない 事情」があるとは認められない。 (3) 争点に係る結論 請求人は、上記(1)及び(2)のとおり、措 置法第37条の12の2第8項に規定する要件 を満たしておらず、また、同条第9項が準 用する同条第4項に規定する「やむを得な い事情」もないから、本件譲渡損失額につ いて、平成24年分及び平成25年分の株式等 に係る譲渡所得等の金額の計算上、本件特 例を適用することはできない。 (4) 本件通知処分及び本件各更正処分の適 法性について 上記(3)のとおり、本件譲渡損失額につ いて本件特例を適用することはできないこ とを前提にすれば、本件通知処分は適法で あり、また、請求人の平成24年分の所得税 及び平成25年分の所得税等の納付すべき税 額を計算すると、いずれも本件各更正処分 における納付すべき税額と同額となるから、 本件各更正処分は、いずれも適法である。 《参照条文等》 租税特別措置法(平成25年法律第5号に よる改正前のもの)第37条の12の2