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TER-17-053 LD-17-062

高頻度運転区間に最小の設備増強で優等列車を効果的に導入する

利便性向上策の提案

粟木一輝 古関隆章(東京大学)

Improvement of passenger benefit by effective introduction of rapid trains with minimal infrastructure investment on urban frequent train service

Kazuki Awaki, Takafumi Koseki (The University of Tokyo)

In urban railways, high congestion and increase of traveling time is often a problem. In this research, a method to introduce express trains into frequent service by adding tracks is investigated. To simplify the train schedule generation and infrastructure plan, a diagram with loss time is utilized. Infrastructure cost for additional tracks and traveling time of passengers are used for evaluation of generated plans. This proposal method is verified by application on a case study. In this study, the number of trains are increased by 33% and the total traveling cost of passengers is decreased by 22% by building of 5 sections and 11 stations and installation of express trains.

キーワード:高頻度運転, 優等列車, 都市鉄道, 線路容量

(Frequent train service, Express train, Urban railways, Railroad capacity)

1. はじめに 都市鉄道において,慢性的な混雑が課題となっている。文 献(1)による調査において,首都圏では混雑率が 180%を超 える区間が 8 区間残ると報告されるように,列車の輸送容 量不足は大きな問題となっている。輸送容量の増強に向け ては,車体の拡幅や 1 列車あたりの車両数を増やすといっ た手法が取られる。本研究では,高頻度に運転するという条 件下で急行列車を導入することによる混雑緩和の方法につ いて検討する。 方向別に 1 線のみの区間で急行列車導入をおこなうと, 急行列車が前の列車に追いつくことによる低速化という問 題が生じる。急行列車の導入方法では,十分な間隔という条 件下で急行列車を導入する方法(2),途中駅で各駅停車の列 車を待たせて追い越しを行う方法(3),列車ごとに停車駅を 変える選択停車を採用する方法(4)が提案されてきた。これ らの手法では列車間隔を取るために列車本数の削減,追い 越しの回数が多く必要となることによる各駅停車の列車の さらなる低速化,多種別を採用することによる案内の煩雑 化といった課題が生じる。 そこで,本研究では,駅間を含めて区間的に設備を増設す ることによって急行列車を低速化させずに導入する設備計 画に関して考える。現在多く見られる方法では,全区間に一 方向につき 2 線を使用する複々線が用いられる。複々線で は,急行列車の効果を十分に活かすことが可能である一方 で,全区間の工事が必要であり建設時間や費用がかさむと いう問題がある。さらに,少子高齢化による影響で今後東京 圏では人口が 2040 年に 91%程度になると予想され(5),今 後の日本において大きな設備投資が難しくなるとされるこ とから,建設コストの削減は重要な課題である。 このような背景から,複々線から 1 線削減し駅間を全て 三線にすることで急行列車の性能を活かしつつ建設費を削 減する手法が勝田らによって提案された(6).この手法では, 急行列車と各駅停車の列車が並走する区間と連続して走行 する区間が急行列車の停車駅毎に変化するという性質に着 目し,連続走行区間では一方向に1 線のみとすることで設 備を削減する。本手法では耐遅延性は複々線に劣るものの, 輸送能力は複々線と同程度となる。 一方で,現在ではこの複々線による列車密度と複線にお ける列車密度の中間となるような列車密度を実現するため の手法は提案されておらず,線路増加手法において実現可 能容量及びコスト面において大きなギャップが空いている と指摘されている(7) 本研究では,勝田らによる三線運行の設備計画法を拡張 し,高頻度運転区間に旅客の移動コストを最低限にしなが ら急行列車を導入するための列車時刻計画および備設備計 画を削減する手法を提案する。この手法を用いることによ って,複々線や三線と複線のみにおける輸送容量の中間を 担う計画を設計することが可能となる。これにより,設備増 強を計画する際にどの区間を優先的に増強する必要がある かの検討材料となる。その結果,今後人口が減少する地域に おいて費用が少ない区間的な工事のみで利便性を向上でき

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において,工事の優先順位を決定する指標となる。 2. 損失時間表示によるダイヤ記法と設備設計 〈2・1〉 損失時間表示によるダイヤ記法(8) 本研究で は,曽根によって提案された,停車によって生じる時間的損 失によって列車時刻を表現する,損失時間表示によるダイ ヤ(8)を用いて設計を行う。通常のダイヤと損失時間表示に よるダイヤの比較を図 1 に示す。通常のダイヤ記法では, 縦軸に距離,横軸に時間を記載することで列車時刻を表す。 しかし,このダイヤ表記では,駅間の距離によって走行時間 が変化するといった問題や,駅付近で十分な列車間隔が保 たれているかがわかりづらいといった課題がある。 一方,損失時間表示によるダイヤ記法では,最速の列車と その他の列車の間に生じる時間差のみを記述することで, 列車時刻のパターンを設計する。時間差表示のダイヤでは 停車の加減速で生じた列車の遅れをすべて駅において生じ た も の と し て 表 す 。 こ の 値 を 最 小 停 車 損 失 時 間 と 呼 び 𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠と表現す る。列車の加減速度を一定の 値として 𝛽[m/s/s],巡航速度を𝑣[m/s]とし,列車が完全に停車してか ら 再 び 動 き 出 す ま で の 時 間 を𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝と す る . こ の と き , 𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠は 𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠=𝛽𝑣+ 𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝 ··· (1) となる.また,列車間に必要な最小時間間隔を𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙とす る。この値は,主に保安装置の閉塞長や列車のブレーキにか かる距離,転轍機の転轍時間などによって変化する定数と なる。 損失時間表示によるダイヤでは,横方向の関係性は等し いため,同一線路上の列車同士はこの𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙以上離れてい ればよい。このように,停車駅における列車同士の間隔が十 分に保たれているかを容易に判別できる。 これらの値を用い,損失時間表示によるダイヤでは以下の 3 つの規則によって列車時刻のパターンを生成することが できる: ① 最短時間で駅間を移動する場合,垂直に線を引く ② 停車する駅では,駅において𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠以上横に線を引 く ③ 一方向に 1 線のみの区間では,列車間には𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙以 上の間隔を横方向に開けて線を引く 特に,𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠と𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙は概ね同程度で,都市鉄道では1 分程度の値となることが知られている(9)。そこで,損失時間 表示によるダイヤでの列車時刻計画では,これらの値を等 しい値であるとすることによって,方眼紙上での列車時刻 パターンの素案を作成するのに用いられる(8) 本研究では,この最速列車をすべての駅を通過する列車 として,速達型・各停型のいずれの列車も停車する毎に時間 的損失が発生するとして計算を行った。 〈2・2〉損失時間表示ダイヤと設備計画 先に示した損 失時間表示によるダイヤ設計法では,一方向に 1 線のみが に2 線必要となる場合を考える。ここで,〈2・1〉の条件③ に反し,ダイヤ同士が重なる場合を図 2 に示す。 図 2 の左に示した交互発着のパターンは,駅から列車が 出発すると同時に駅に列車が進入する場合である。この場 合には,列車が十分に遠方に行く前に駅に列車が進入する ため,前の列車とあとの列車で進入する番線を変更する必 要がある。このため,駅において線路を増やす必要がある。 図 2 の中央に示した一方の列車が駅でもう一方の列車を 追い越すパターンでは,列車を待避させる番線と通過列車 を走行させる番線の2 本が必要となる。 図 2 の右に示した駅間で並走しながら列車を追い越すパ ターンでは,駅間だけでなく,両端の駅においても線路を増 やす必要がある。 以上を考慮すると,線が重なる箇所では追加の設備が必要 といえる。そこで,それらの箇所にのみ設備を増やす計画が 最小限の設備計画となる。そこで,本研究では,線増を行う ことができる区間において部分的に条件③を廃し,ダイヤ 同士の重なりを許容する。このような重なりは,新たに作成 する必要の生じる設備という形で費用に換算する。 〈2・3〉生じる設備費用 本研究で設計する設備は駅ご とに一方向1 線または 2 線が切り替わるという形状になる。 そこで,𝑖駅を線増する増強する費用および𝑖駅から𝑖 + 1駅ま での区間を増強する費用を𝑐𝑠𝑡𝑎(𝑖), 𝑐𝑏𝑒𝑡𝑤𝑒𝑒𝑛(𝑖)とおき,これら の区間における必要線数を𝑛𝑠𝑡𝑎(𝑖), 𝑛𝑏𝑒𝑡𝑤𝑒𝑒𝑛(𝑖)とおく。また, 図 1 一般的なダイヤ(左)と 損失時間表示によるダイヤ(右)の比較 Fig. 1. Comparison of normal diagram (left) and

diagram with loss time (right)

Loss time S ta ti o n 𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙 𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠 図 2 損失時間ダイヤの交差パターンと必要設備 Fig. 2. Crossing patterns of diagram with loss

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可動部の含まれる転轍機の費用を𝑐𝑐𝑟𝑜𝑠𝑠とし,必要数を𝑛𝑐𝑟𝑜𝑠𝑠 とおくと,合計費用は 𝑐𝑠𝑡𝑎(𝑖) ∗ 𝑛𝑠𝑡𝑎(𝑖) + 𝑐𝑏𝑒𝑡𝑤𝑒𝑒𝑛(𝑖) ∗ 𝑛𝑏𝑒𝑡𝑤𝑒𝑒𝑛(𝑖) + 𝑐𝑐𝑟𝑜𝑠𝑠∗ 𝑛𝑐𝑟𝑜𝑠𝑠 ……(2) となる。ただし,末端駅では,両方向で線路を共有すること が可能であるという観点から加算しないこととした。 3. ダイヤの評価法および実ダイヤ作成法 〈3・1〉 旅客の移動コストによる評価 本研究では, 旅客が感じる不便益として移動時間および乗り換えによる 不効用を時間に換算した値の和を旅行コスト換算時間 𝑐𝑜𝑠𝑡 として評価する。本論文では,旅客が駅において列車を待機 した時間 𝑤𝑎𝑖𝑡,列車で移動する際にかかる最小所要時間 𝑚𝑜𝑣𝑒,列車が駅に停車する際に生じる損失時間の和 𝑠𝑡𝑜𝑝お よび移動における移動などによる不便益を時間換算した 𝑝𝑒𝑛𝑎𝑙𝑡𝑦によって 𝑐𝑜𝑠𝑡= 𝑚𝑜𝑣𝑒+ 𝑤𝑎𝑖𝑡+ 𝑠𝑡𝑜𝑝+ 𝑝𝑒𝑛𝑎𝑙𝑡𝑦 ···(3) と定義する。また,旅客の移動時間を 𝑡𝑟𝑎𝑣𝑒𝑙,損失時間表示 によるダイヤにおける損失時間を 𝑙𝑜𝑠𝑠と定義する。図 3 に 𝑚𝑜𝑣𝑒,𝑤𝑎𝑖𝑡, 𝑠𝑡𝑜𝑝の定義,表1 に 𝑐𝑜𝑠𝑡, 𝑡𝑟𝑎𝑣𝑒𝑙,𝑙𝑜𝑠𝑠の定義 を示す。 𝑚𝑜𝑣𝑒は,損失時間表示によるダイヤにおいて最速となる, 全駅を通過する列車が乗車駅から降車駅まで移動するのに 所要する時間を指す。この時間は,性能や制限速度などによ って決定される一方,ダイヤによっては変化しない。 𝑤𝑎𝑖𝑡は,旅客が駅において列車を待機した時間を指す。こ れは,旅客が駅に到着してからはじめの列車に乗車するま での時間および乗り換えにおいて列車を待つためにかかる 時間の和となる。この値は,列車の頻度や乗り換え接続の良 し悪しによって変化する。 𝑠𝑡𝑜𝑝は,列車が駅に停車する際に生じる損失時間の和を 指す。これは,乗車した列車の停車駅数を𝑛𝑠𝑡𝑜𝑝とすると, 𝑠𝑡𝑜𝑝= 𝑛𝑠𝑡𝑜𝑝∗ 𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠と表される。この値は,通過駅を設定 することにより列車の所要時間が減少することによって小 さくすることができる。 𝑝𝑒𝑛𝑎𝑙𝑡𝑦は,旅客の移動などに伴い生じるコストを表す。 今回は,乗換える際に必要な身体的コストを時間に換算し た値とした。乗り換え1 回あたりのコストを𝜔[min]とし, 旅客が𝑛回乗り換えた場合, 𝑝𝑒𝑛𝑎𝑙𝑡𝑦= 𝑛𝜔 ···(4) となるとした。 以上の値の和を列車時刻設計時の性能評価に用いた。 〈3・2〉 損失時間表示によるダイヤを用いた旅客の移動 損失の計算法 𝑐𝑜𝑠𝑡のうち,𝑚𝑜𝑣𝑒は前節で述べた通り始 発駅および終着駅の関数となり列車時刻計画上は定数とみ なせる。 𝑤𝑎𝑖𝑡+ 𝑠𝑡𝑜𝑝および 𝑝𝑒𝑛𝑎𝑙𝑡𝑦は,損失時間表示によるダイヤ によって計算可能である。なお,以下では時刻を損失時間軸 上での時刻を表す。ある時刻 に駅𝑜に到着した旅客が駅𝑎ま で 移 動 し た 場 合 に , こ の 旅 客 が 駅𝑎 に 到 着 す る 時 刻 を 𝑎𝑟𝑟[𝑎, 𝑜, ],この時刻で到着する経路によって移動した際の 乗り換え回数を𝑛[𝑎, 𝑜, ]とすると, 𝑤𝑎𝑖𝑡+ 𝑠𝑡𝑜𝑝[𝑎, 𝑜, ] = 𝑎𝑟𝑟[𝑎, 𝑜, ] − ···(5) 𝑝𝑒𝑛𝑎𝑙𝑡𝑦= 𝜔𝑛[𝑎, 𝑜, ] ···(6) と表される。 𝑎𝑟𝑟[𝑎, 𝑜, ]および 𝑛[𝑎, 𝑜, ]は,動的計画法によって計算す ることができる。今,ある駅𝑜′において,駅𝑜に時刻 ′に到 着する列車に乗車している人の最小旅客損失到達経路は, 駅𝑜′で乗換える場合と乗り換えない場合の 2 通りが考えら れる。これらは,乗り換え候補の列車の旅客損失に乗り換え 損失を加算したものと,乗り換えない場合の旅客損失を比 較することによって選択できる。一方,駅𝑜′に時刻 ′に到着 した人が選択する経路は,現在の時刻に出発する列車に乗 車した場合と,1 分以上待機して列車に乗車した場合とで旅 客損失が小さくなる経路である。 そこで,各駅において,時刻方向と逆向きに計算すること で,𝑎𝑟𝑟[𝑎, 𝑜, ]および 𝑛[𝑎, 𝑜, ]を計算できる。また,この計 算した値を用い,各列車の乗車中の旅客の旅客損失を計算 し,駅方向と反対向きに計算することで,駅数が𝑛𝑠𝑡𝑎,計算 対象とする時間が𝑛𝑡𝑖𝑚𝑒∗ 𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠の時に,O(𝑛𝑠𝑡𝑎2∗ 𝑛𝑡𝑖𝑚𝑒)で 全発着駅および時刻の旅客損失の計算が可能である。 実際の旅客損失の計算において,旅客の流量を表すOD 表

(Origin Destination Table)を用いる。𝜌[𝑎, 𝑜]を𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠あた りに𝑜駅から𝑎駅に移動する人数とすると,

∑ ∑ ∑ ρ[𝑎, 𝑜] ∗ (𝑎𝑟𝑟[𝑎, 𝑜, ] − ) + 𝜔𝑛[𝑎, 𝑜, ]𝒂 𝒐 𝑡 ··· (7) によって計算される。

〈3・3〉 パターンダイヤの設計 本研究では,列車時

表1 𝑐𝑜𝑠𝑡・ 𝑡𝑟𝑎𝑣𝑒𝑙・ 𝑙𝑜𝑠𝑠の定義 Table 1. Definition of 𝑐𝑜𝑠𝑡, 𝑡𝑟𝑎𝑣𝑒𝑙 and 𝑙𝑜𝑠𝑠.

最小移動時間 𝑚𝑜𝑣𝑒 待ち時間 𝑤𝑎𝑖𝑡 停車損失時間 𝑠𝑡𝑜𝑝 不便益換算 時間 𝑝𝑒𝑛𝑎𝑙𝑡𝑦 移動コスト 換算時間 𝑐𝑜𝑠𝑡 ○ ○ ○ ○ 移動時間 𝑡𝑟𝑎𝑣𝑒𝑙 ○ ○ ○ ― 損失時間 𝑙𝑜𝑠𝑠 ― 表中において○印は含まれ,―印は含まれないことを示す 図 3 𝑤𝑎𝑖𝑡・ 𝑠𝑡𝑜𝑝・ 𝑚𝑜𝑣𝑒の定義 Fig. 3. Definition of 𝑤𝑎𝑖𝑡・ 𝑠𝑡𝑜𝑝・ 𝑚𝑜𝑣𝑒.

(4)

イヤを使用する。急行列車の停車駅・急行列車と各駅停車の 列車の始発駅出発の時間差の 2 つのパラメータによって下 記の手順によってダイヤを設計する。 ① 設備や工事の関係上線数を増やせない箇所を決定 ② 急行列車の停車駅および急行列車の本数を決め,急行 列車のみの損失時間表示によるダイヤを作成 ③ 急行列車のみのダイヤの上から,各停のダイヤを,線 数を増やせない箇所では重なりを認めず,増やせる箇 所では重なりを許容して設定 本研究では,③の各駅停車のダイヤ作成では,始発駅から 終着駅まで最速で移動できる経路を選択するアルゴリズム によって,列車時刻を決定した。複数のダイヤが考えられる 場合には,始発駅から終着駅までの時間が最短および各駅 における発車時刻が最も遅くなるような時刻を選択した。 〈3・4〉 実際のダイヤ作成と耐遅延性 これまで用い てきた損失時間表示によるダイヤから実際に使用するダイ ヤへの変換は,各駅の損失時間表示による時刻に最速列車 の時刻を加算し,到着時刻は列車の減速によって生じる損 失時間を加算し,出発時刻は列車の加速によって生じる損 失時間を減算することによって作成する。 高頻度な運転を行う際には,特に乗降の多い駅における 乗降時間の延長や列車の遅延が生じる場合がある。これら の解決のために,駅における停車時分を伸ばすという対策 や,駅間の走行時分に余裕を持たせるといった対策が取ら れる。本研究で作成したダイヤでは,最速列車に対しこれら の停車時分の増加や余裕時分を加味して実際の列車時刻を 作成することによって,遅延対策を行うことが可能である。 停車時分の増加に向けては,1 周期前の列車に干渉しない という条件が必要となる。そのため,最大で停車可能な時間 は,列車時刻の周期から列車同士の最小時間間隔を引いた 時間となる。 本論文では,より詳しくダイヤの性質の変化を確認するた めに,旅客の不快さを表す列車の最大混雑率および運行に 必要なリソースを表すトレインアワーを追加の指標として 用いる。 〈4・1〉 列車の最大混雑率 列車の最大混雑率は,〈3・2〉 において計算された各駅間において各時刻に出現した旅客 を,その時間内で最も旅客損失が少なくなるような経路に 対し割り当て,定員で割ることによって計算する。 〈4・2〉 トレインアワー トレインアワーは,ダイヤ全 体の列車の運転時間で定義される(8)。この値は,車両設備や 乗務員がどの程度必要かの指標となる。各列車のトレイン アワーはその列車が末端駅同士を走行する時間によって計 算でき,この列車の停車駅数を𝑛𝑠𝑡𝑜𝑝とし,ダイヤ変換時に用 いた最速列車の所要時間を 𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙𝑚𝑜𝑣𝑒とおくと 𝑡𝑜𝑡𝑎𝑙𝑚𝑜𝑣𝑒+ 𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠∗ 𝑛𝑠𝑡𝑜𝑝で計算できる。この値を一定時間において始 発駅を出発した列車に対し合計することで求める。 5. ケーススタディによる急行列車導入効果の検討 〈5・1〉モデル路線の概要 駅 0~駅 16 の 17 駅を持つ 路線をモデルとして,その効果の検証を行った。駅間の移動 人数を表す OD 表は,各駅における定期券利用者による乗 降人員を用いて推定し,現行ダイヤにおける乗車率と同程 度の値となるように𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠ごとの各駅における出現人数 に変換した。用いた単位時間あたりのOD 表を表 2 に示す。 駅における停車損失時間𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠は1 分とした。これは, 路線における最高速度を25m/s/s,加減速度を 0.6m/s で固 定した場合に,停車時間を18.3s となるように設定すること で実現することができる。駅間の最小所要時間はすべて1 分 として計算し,停車時間の余裕等は挿入せずに計算を行っ た。 ダイヤは,急行列車および各停の 2 種類の列車を一定周 期で走らせるパターンを繰り返すダイヤとした。各停はす 表2 ケーススタディの路線における 1 分あたりの OD 表

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べての駅に𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠以上停車し,急行列車は急行列車停車駅 として選択された駅に𝑇𝑠𝑡𝑜𝑝𝑙𝑜𝑠𝑠停車する。パターンの周期は 2𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙, 3𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙, 4𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙の3 種類とした。さらに,比較 のために,新たに設備を必要としない4 分毎に 2 本の各停 が走行するパターンの評価も行った。 設備コストは,簡単のため,駅での線増コスト𝑐𝑠𝑡𝑎𝑡𝑖𝑜𝑛= 1, 駅間での線増コスト𝑐𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙= 2,転轍機のコスト𝑐𝑐𝑟𝑜𝑠𝑠= 1/4とする相対コストを設定し,この値を用いて計算を行っ た。乗り換えあたりの損失時間は,文献(11)では一般的に 10 分を用いるとなっているが,本研究では追い越し駅では 対面で乗換えることができるという仮定の下,この値を5 分 とした。各列車の定員は748 名とした。 〈5・2〉 急行列車の停車駅による旅客便益と設備費用の 関係 急行列車の停車駅は,特に旅客の移動時間を短縮 する上では非常に重要となる。今回は,初期的検討のため に,中間駅15 駅に対し停車・通過のパターンのすべて・急 行列車と各停の始発駅での発車時刻の差すべてについて, 設備コストおよび旅客の平均損失時間の計算を行った。な お,今回のケーススタディでは,設備制約条件は導入せず, すべての区間で設備を増やすことが可能とした。 ダイヤ周期が4𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙の場合においてこれらすべてのダ イヤの設備コストおよび旅客の移動損失を図にまとめたも のが図4 である。 この図では,左下に位置する点が設備コストまたは旅客 の移動コストの面で優れた設備・列車時刻計画といえる。実 際の設備計画にあたっては,設備コストが要求以下かつ旅 客の移動コストが最小となるような設備計画を選択するこ とが良いと考えられる。今回は旅客の移動コストを最重視 し,すべての計画の中で最も小さくなるものを選択した。 一方,設備コストが高い場合でも必ずしも旅客損失時間 が短くならないということがわかる。これは,設備コストが 高いダイヤは,急行列車と各駅停車の列車の重なりが多い または分断化されているためと考えられる。前者は急行列 車が遅く急行による速達化が実現されないダイヤとなって いると考えられる。後者では,急行列車の通過駅が多くなる ことで急行列車の恩恵を受ける旅客が減少したことが原因 であると考えられる。 〈5・3〉 列車の運行頻度と評価値の比較 列車時刻の 周期が2𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙, 3𝑇𝑖𝑛𝑡𝑒𝑟𝑣𝑎𝑙となる場合も同様に計算を行い, 旅客の移動損失が最小となる計画を選択した。これらの場 合における急行列車停車駅および設備増強箇所を図 5 に, 損失時間表示によるダイヤを図 6 に示した。すべてのダイ ヤ周期で停車駅は同じ0,3,5,9,12,16 駅となった。 図7 に急行導入および列車頻度の変化による旅客の移動 コスト換算時間の変化およびその内訳を示した。この図か ら,各駅停車を急行に置き換えることによって移動コスト 換算時間は大きく減少する一方で,列車頻度を増やした場 合には減少幅は駅における待機時間による部分のみになる ということがわかる。このことから,列車頻度の増加によっ ては移動コスト換算時間の増加は大きくは望めないことが わかる。 表3 に 4 章で定義した諸量による評価比較を記載した。 最大混雑率という観点では,同じ列車頻度で急行列車を導 入した場合には,旅客が急行列車に偏るために最大混雑率 は 45%増加することが判明した。列車頻度を増やすことに よって,輸送量を増強することができ,単位時間あたり輸送 量が1.3 倍となる 3 分間隔では最大混雑率が 16%増加,2 倍 となる2 分間隔では 22%減に抑えることができた。この値 は,すべての旅客が最速列車に乗車するという仮定に基づ くものであるが,多少の時間的余裕がある旅客が混雑の穏 やかな各駅停車へ分散することにより,最大混雑度はより 図4 急行停車駅を変化させた場合の 設備コストと平均旅客移動コスト Fig. 4. Infrastructure cost and

averaged travel cost

図6 ダイヤ周期による最小旅客移動コストな

ダイヤの変化

Fig. 6. Change of diagrams with minimum travel cost by changing period of timetable

図5 各周期の停車駅および設備増強箇所

Fig. 5. Express stops and infrastructure enhancements for each period of diagrams.

(6)

一方,トレインアワーは急行列車の導入によって 1 列車 あたりの平均走行時間が減少することから同じ列車頻度で は減少する。列車頻度を増やすことでこの値は相殺される が,3 分間隔では約 1 割の増加にとどまる。 設備増強を行い急行列車導入と列車運行の高頻度化を組 み合わせることにより,最大混雑度および車両リソースが ほぼ同一のまま,旅客の移動時間を短縮することができる ことがこのケーススタディから明らかとなった。 6. まとめ 本研究では,高頻度運転路線において,最低限の設備を増 強し,急行列車を導入することで,旅客の移動時間換算コス トの削減を図る方策の検討を行った。作成した計画の評価 手法として,上記の旅客損失および設備費用に加え,列車の 最大混雑率や車両設備の利用率を示すトレインアワーとい った複数の観点から比較を行った。 ケーススタディにより,25.75 のコストの設備増強による 急行列車の導入により,3 割の列車本数の増加および 2 割の 移動時間換算コストの削減ができることが示された。一方 で,列車頻度を変更せずに急行列車のみを導入した場合に は急行列車に多くの旅客が集中することで最大乗車率が大 きく上昇するが,列車頻度を増加させることによって線路 容量を増加させ,混雑緩和を計ることができることが示さ れた。さらに,列車の利用率という観点では列車本数が1.3 倍となったにも関わらずトレインアワーは 1 割の増加で抑 えられることが分かった。 今後の課題として,第一により容易に急行列車の停車駅 および各駅停車の列車の列車時刻を設計する手法の開発が 挙げられる。今報告書では全てのパターンを列挙すること によって最適な急行列車停車駅を求める計算を行ったが, この手法では駅数が増加するたびに計算時間が2 倍となり, 30 駅以上のシステムでは計算量の観点から実用的な時間以 内に最適解を求めることができない。そのため,今後設備コ ストや移動コスト換算時間の組み合わせ方による効率の定 義およびその範囲内における線形時間で最適列車時刻を求 める手法の開発が必要である。 第二に,複数の停車駅パターンを導入する場合や途中駅 止まりの列車を運行するという方法の検討である。特に,旅 客人数が少ない区間において,各停を間引く方法によって 設備を減少させる方法をとることができると考えられる. 最後に,現在の検討では,停車時間増大および余裕時分挿 入による遅延防止策の提案は行ったものの,これの効果に ついては未検討である。今後,数十秒~数分の乱れがいかに 伝搬するかの検討が必要であると考えられる。 文 献 (1) 国土交通省:「東京圏における主要区間の混雑率」, https://www.mlit.go.jp/common/001099727.pdf (2016) 間の最小化」 Vol.135,No.12,pp.1153–1159 (2015) (3) 香取 照臣・高橋 寛・泉 隆:「優等列車の運行による総旅行時間 短縮 —遺伝的アルゴリズムを用いた停車駅の決定—」,電気学会論文 誌D,Vol.125,No.4,pp.305-312 (2005) (4) 森 拓哉・古関 隆章:「選択停車型を用いた旅客時間の数理的最適 化」,TER-14-014, PHS-14-014 (2014) (5) 「日本の地域別将来推計人口」,国立社会保障・人口問題研究所 (2013) (6) 勝田 敬一・古関 隆章・曽根 悟:「複々線同等の高速・高密度運 行を可能にする駅間3 線運行方式」,電気学会論文誌D, Vol. 121, No. 6,pp. 705-712 (2001) (7) 江口 弘:「都市鉄道の混雑緩和と速達性向上のための3 線運行手法 の提案」,運輸政策研究,Vol. 13,No. 4,pp. 2-9 (2011) (8) 曽根 悟:「新しい列車ダイヤと運行管理の手法について」,社会科 学論集,No. 99・100, pp. 19-54 (2000) (9) 小川 浩・曽根 悟:「都市近郊型路線ダイヤの合理的作成法」, TER-93-45 (1993) (10) 國松 武俊・平井 力・富井 規雄,:「マイクロシミュレーションを 用いた利用者の視点による列車ダイヤ評価手法」,電気学会論文誌 D,Vol. 130,No. 4,pp. 459-467 (2010) (11) 国 土 交 通 省 :「 鉄 道 プ ロ ジ ェ ク ト の 評 価 手 法 マ ニ ュ ア ル 」, http://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_fr1_000040.html. (2012) 図7 各パターンでの旅客の平均損失時間

Fig. 7. Average passengers traveling loss for each pattern

表3 急行導入およびダイヤ周期の変化による

諸評価値の比較

Table 3. Comparison of evaluation with changing period of timetable and with or without express train.

列車種別 各停のみ 各停+急行 各停+急行 各停+急行

列車周期 2 分 4 分(2 本) 3 分(2 本) 2 分(2 本)

一人あたり 平均時間動 換算コスト

15.40 min 12.60 min 12.09 min 11.59 min

追加設備 なし 8 駅/4 区間 コスト=19.75 11 駅/5 区間 コスト=25.75 15 駅/9 区間 コスト=36.25 トレイン

アワー 930 min 765 min 1020 min 1530 min

diagram with loss time (right)
表 1
Fig. 4.  Infrastructure cost and    averaged travel cost
表 3  急行導入およびダイヤ周期の変化による  諸評価値の比較

参照

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