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Stage3. 派遣労働者として働く Q9 契約を結ぶときには ( 労働条件 就業条件の明示 ) 派遣先が決まり 派遣社員として働くことになりました 労働契約を結ぶにあたっては どのような点に注意すればいいのでしょうか 労働契約を結ぶ際は 派遣元は派遣労働者に労働条件や派遣先での就業条件を明示しなけ

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Q 9

契約を結ぶときには

(労働条件・就業条件の明示)

 派遣先が決まり、派遣社員として働くことになりました。労働契約 を結ぶにあたっては、どのような点に注意すればいいのでしょうか。

労働契約を結ぶ際は、派遣元は派遣労働者に労働条件や派

遣先での就業条件を明示しなければなりません。これらの

条件をよく確認しましょう。

仕事の内容や賃金などについての説明を口頭で済ませられて、労働条件 をあいまいなままにしておくと、実際に働いてからトラブルが発生するこ とが少なくありません。 派遣元は、労働契約を結ぶときは、派遣元は契約内容をはっきりさせる ため、労働者に対し、契約期間や賃金、労働時間その他の労働条件につい て書面で明示し、これを交付しなければなりません(労働基準法第15条 第1項)。また、派遣料金についても書面等で明示しなければなりません (派遣法第34条の2、派遣法施行規則第26条の3)。 派遣労働者が派遣就業を始める前に、派遣元は派遣先での就業条件や 派遣料金を書面等で明示しなければなりません(同法第34条、第34条の 2)。労働契約締結時や派遣就労時に明示される派遣料金は、派遣労働者 本人のものでも、事業所における平均額でも、どちらでも良いとされてい ます。 厚生労働省では「労働条件通知書」(P22~23)および「就業条件明示 書」のモデル(P24)を作成して、労働条件等を書面で明示するように勧 めています。なお、登録型派遣労働者に対して、労働条件通知書と就業条 件明示書等を同時に交付する場合、記載事項が重複する部分は、一方の記 載を省略して差し支えないとされています。 労働契約締結前、労働契約締結時、派遣就労開始前それぞれに、派遣元 から明示または説明される事項については、次のとおりです。

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① 労働契約締結前(派遣会社に登録中など・Q6) 派  遣  法 書面・FAX・メールで明示 書面・FAX・メールその他の方法で明示 ■ 賃金の見込み額 ■ 就業時間・場所等 その他の待遇 ■ 派遣元の事業運営に関すること ■ 労働者派遣制度の概要 ■ 均衡待遇確保のために配慮した内容 ② 労働契約締結時(働く・賃金を払う約束をしたとき) 労働基準法(労働条件通知書等による) 派遣法 必ず明示 書面で明示・交付 ■  労働契約の期間期間の定めのある労働契約を更新する場合の 基準 ■ 仕事をする場所、仕事の内容、仕事の始めと 終わりの時刻、残業の有無、休憩時間、休 日・休暇、就業時転換 ■ 賃金の決定、計算と支払いの方法、締切と支 払いの時期 ■ 退職に関すること ■ 派遣料金 (書面、FAX、 メールで明示) ■ 昇給 制度を設けた 場合は明示 ■退職手当、■臨時に支払われる賃金 ■労働者に負担させる食費、作業用品 ■安全・衛生、■職業訓練、■表彰・制裁 ■災害補償・業務外の傷病扶助、■休職 ― ③ 派遣就労開始前(派遣先で働き始める前) 派遣法(就業条件明示書等による) 書面等で明示 ■業務内容、■就業場所、■派遣先の指揮命令者、■派遣期間及び就業日、■就業 の開始及び終了の時刻、休憩時間、■派遣元・先責任者、■苦情処理に関する事項、 ■期間制限抵触日(期間制限のない場合はその旨)、■派遣契約を解除するにあたっ て派遣先・元が講じる措置、■派遣料金   など  派遣元は派遣労働者と、派遣労働終了後に派遣労働者が派遣先に雇われ ることを禁止する契約を結ぶことはできません。派遣元が派遣先と結ぶ労 働者派遣契約にも、このような内容を入れることはできません(派遣法第

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(短時間労働者・派遣労働者用;常用、有期雇用型) 労 働 条 件 通 知 書 年   月   日        殿        事業場名称・所在地        使 用 者 職 氏 名 契 約 期 間 期間の定めなし、期間の定めあり(  年  月  日〜  年  月  日) ※以下は、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合に記入 1 契約の更新の有無 [自動的に更新する・更新する場合があり得る・契約の更新はしない・その他(   )] 2 契約の更新は次により判断する。 ・契約期間満了時の業務量   ・勤務成績、態度    ・能力 ・会社の経営状況 ・従事している業務の進捗状況 ・その他(        ) 【有期雇用特別措置法による特例の対象者の場合】 無期転換申込権が発生しない期間: Ⅰ(高度専門)・Ⅱ(定年後の高齢者)  Ⅰ 特定有期業務の開始から完了までの期間( 年 か月(上限10 年))  Ⅱ 定年後引き続いて雇用されている期間 就 業 の 場 所 従 事 す べ き 業 務 の 内 容 【有期雇用特別措置法による特例の対象者(高度専門)の場合】 ・特定有期業務(             開始日:    完了日:    ) 始業、終業の 時刻、休憩時 間、就業時転 換(⑴〜⑸の うち該当する もの一つに○ を 付 け る こ と。)、所定時 間外労働の有 無に関する事 項 1 始業・終業の時刻等  ⑴ 始業(   時   分)終業(   時   分)  【以下のような制度が労働者に適用される場合】 ⑵ 変形労働時間制等;(  )単位の変形労働時間制・交替制として、次の勤 務時間の組み合わせによる。     始業(  時  分)終業(  時  分)(適用日       )     始業(  時  分)終業(  時  分)(適用日       )     始業(  時  分)終業(  時  分)(適用日       )  ⑶ フレックスタイム制;始業及び終業の時刻は労働者の決定に委ねる。 (ただし、フレキシブルタイム(始業) 時 分から 時 分、 (終業) 時 分から 時 分、 コアタイム  時 分から 時 分)  ⑷ 事業場外みなし労働時間制;始業(  時  分)終業(  時  分) ⑸ 裁量労働制;始業(  時  分)終業(  時  分)を基本とし、労働者の 決定に委ねる。 ○詳細は、就業規則第 条〜第 条、第 条〜第 条、第 条〜第 条 2 休憩時間(  )分 3 所定時間外労働の有無       ( 有 (1週  時間、1か月  時間、1年  時間),無 ) 4 休日労働( 有(1か月  日、1年  日)、 無 ) 休 日 及 び 勤 務 日 ・定例日;毎週  曜日、国民の祝日、その他(      ) ・非定例日;週・月当たり   日、その他(      ) ・1年単位の変形労働時間制の場合—年間  日 (勤務日) 毎週(      )、その他(      ) ○詳細は、就業規則第  条〜第  条、第  条〜第  条 休 暇 1 年次有給休暇 6か月継続勤務した場合→     日          継続勤務6か月以内の年次有給休暇 (有・無)          →  か月経過で  日          時間単位年休(有・無) 2 代替休暇(有・無) 3 その他の休暇 有給(       )          無給(       )  

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賃 金 1 基本賃金 イ 月 給(      円)、ロ 日 給(      円)        ハ 時間給(      円)、        ニ 出来高給(基本単価     円、保障給     円)        ホ その他(      円)        ヘ 就業規則に規定されている賃金等級等          2 諸手当の額又は計算方法   イ (     手当      円 / 計算方法:       )   ロ (     手当      円 / 計算方法:       )   ハ (     手当      円 / 計算方法:       )   ニ (     手当      円 / 計算方法:       ) 3 所定時間外、休日又は深夜労働に対して支払われる割増賃金率   イ 所定時間外 法定超 月60時間以内(  )%       月60時間超(  )%       所定超(  )%   ロ 休日 法定休日(  )%、法定外休日(  )%、   ハ 深夜(  )% 4 賃金締切日(   )−毎月  日、(   )−毎月  日 5 賃金支払日(   )−毎月  日、(   )−毎月  日 6 賃金支払方法(        ) 7 労使協定に基づく賃金支払時の控除( 無 ,有 (   )) 8 昇給( 有(時期、金額等        ), 無 ) 9 賞与( 有(時期、金額等        ), 無 ) 10 退職金( 有(時期、金額等       ), 無 ) 退職に関する 事項 1 定年制( 有 (  歳), 無 )2 継続雇用制度( 有(  歳まで), 無 ) 3 自己都合退職の手続(退職する  日以上前に届け出ること) 4 解雇の事由及び手続     ○詳細は、就業規則第  条〜第  条、第  条〜第  条 そ の 他 ・社会保険の加入状況( 厚生年金 健康保険 厚生年金基金 その他(    )) ・雇用保険の適用( 有 , 無 ) ・その他 ・具体的に適用される就業規則名(      )             ※以下は、「契約期間」について「期間の定めあり」とした場合についての説明です。  労働契約法第18条の規定により、有期労働契約(平成25年4月1日以降に開 始するもの)の契約期間が通算5年を超える場合には、労働契約の期間の末 日までに労働者から申込みをすることにより、当該労働契約の期間の末日の 翌日から期間の定めのない労働契約に転換されます。ただし、有期雇用特別 措置法による特例の対象となる場合は、この「5年」という期間は、本通知 書の「契約期間」欄に明示したとおりとなります。 ※ 以上のほかは、当社就業規則による。 ※ 登録型派遣労働者に対し、本通知書と就業条件明示書を同時に交付する場合、両者の記載事項のう ち一致事項について、一方を省略して差し支えないこと。 ※ 労働条件通知書については、労使間の紛争の未然防止のため、保存しておくことをお勧めします。

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モ デ ル 就 業 条 件 明 示 書 平成   年   月   日       殿 事業所 名 称        所在地        使用者 職氏名      印 次の条件で労働者派遣を行います。 業 務 内 容 就 業 場 所 事業所、部署名所在地 (電話番号         ) 組 織 単 位 指 揮 命 令 者 職名       氏名 派 遣 期 間 平成   年   月   日から平成   年   月   日まで (派遣先が派遣受入期間の制限に抵触する日)平成  年  月  日 (組織単位における期間制限に抵触する日)  平成  年  月  日  なお、派遣先の事業所における派遣可能期間の延長について、当該手続を適正に行っていない場合や派遣 労働者個人単位の期間制限を超えて労働者派遣の役務の提供を受けた場合は、派遣先は労働契約申込みみな し制度の対象となる。 就 業 日 及 び 就 業 時 間 就業日 就業時間   時   分から   時   分まで (うち休憩時間   時   分から   時   分まで) 安全及び衛生 時 間 外 労 働 及び休日労働 時間外労働(無 / 有)→(1日  時間/週  時間/月  時間)休日労働 (無 / 有)→(1月  回) 派遣元責任者 職名        氏名        (電話番号 ) 派遣先責任者 職名        氏名        (電話番号 ) 福利厚生施設 の利用等 苦情の処理・ 申出先   申出先 派遣元:職名      氏名       (電話番号 )     派遣先:職名      氏名       (電話番号 ) 派遣契約解除 の場合の措置 派遣先が派遣労働 者を雇用する場合 の紛争防止措置 備 考 出所:厚生労働省HP

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Q10

契約内容と実際の業務が違う

 派遣先から契約内容以外の仕事も指示されます。派遣元に伝えても 「派遣先はお客様だから」と言って取り合ってもらえません。契約内 容以外の業務であっても、派遣先からの指示には従わなければならな いのでしょうか。

派遣労働者は、就業条件明示書で示された業務内容以外の

仕事を命じられても、これに従う義務はありません。

前述のとおり、派遣元は、派遣労働者が派遣就業を開始する前に、「就 業条件明示書」を交付するなどして、派遣先での就業条件を明示しなけれ ばなりません(Q9参照)。 派遣先は就業条件明示書に示された業務内容の範囲を超えて指示を出す ことはできません。派遣労働者は就業条件明示書等で示された業務以外の 仕事を命じられても、これに従う義務はありません。 派遣労働者は、明示された労働条件と実際の労働条件が異なっていたと きには、労働契約を解除できる場合がありますが、解除しないで働き続け たいという場合には、派遣元責任者を通じて、契約内容を守ってもらうよ うに派遣先へ申し入れてもらうとよいでしょう。 指針では、派遣労働者の就業条件を確保するために、派遣元は派遣先を 定期的に巡回することなどにより、派遣労働者の就業の状況が契約内容に 反していないかどうか確認したり、派遣労働者の適正な就業環境を確保す るためにきめ細かな情報提供を行ったりするなど、派遣先と的確に連絡調 整を行うよう定めています(派遣元指針第2の5)。 また、派遣先に対しては、労働者派遣契約に定められた就業条件の周知徹 底をはかったり、定期的に就業場所を巡回して、派遣労働者の就業の状況が契 約内容に反していないかどうかを確認したり、また契約内容に反する業務上の 指示を行わないよう指導を徹底するように定めています(派遣先指針第2の2)。

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Q11

時間外労働(残業)・休日労働

 「残業はない」という条件で派遣労働契約を結び、働き始めました が、実際には派遣先の業務量は膨大で、所定勤務時間内にはとてもこ なせません。残業して対応しましたが、派遣元から「あなたが勝手に したことなので、残業代は支払いません」と言われました。

残業や休日労働の有無等について、どのような契約内容で

あるか、就業条件明示書等により確認しましょう。

Q9で述べたように、派遣元は派遣先での就業条件を、就業条件明示書 等などによってあらかじめ派遣労働者に明示しなければなりません(派遣 元によっては、労働条件通知書と就業条件明示書が一体化していることが あります。)。派遣労働者に残業や休日労働をさせるためには、この就業条 件明示書等で残業・休日労働があることを明示しておく必要があります。 ですから、「残業はない」という条件で派遣労働契約を結んだ場合には、 派遣先は残業を命じることはできませんし、派遣労働者も残業を命じられ た場合にはこれを拒否することができます。 なお、労働時間は1週40時間、1日8時間(法定労働時間)まで、休日 は毎週少なくとも1回又は4週を通じて4日(法定休日)以上が原則です (労働基準法第32条、第35条)。 派遣労働者に法定時間外又は法定休日に労働をさせるためには、派遣元 が、派遣元労働者の過半数を組織する労働組合、または労働者の過半数を 代表する者と書面で労使協定(36(サブロク)協定)を結び、労働基準監 督署に届け出なければなりません(同法第36条第1項)。 36協定は、作業場の見えやすい場所への掲示や、書面の交付等により 労働者に周知されることになっていますが、確認したいときには派遣元責 任者や労働者代表へたずねましょう。 労働者に法定時間外労働や休日労働をさせた場合には、派遣元は割増賃

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【一般的な時間外労働・休日労働の割増率】 (1日の所定労働時間が7時間、時給1,000円の場合) 《労働日》 《休日》 9:00 17:00 18:00 22:00 翌日5:00 所定労働時間 7時間 (休憩1時間) (割増分の支払は任意)所定労働時間 1時間 時間外労働 25%以上 時間外労働 25%以上 深夜労働 25%以上 9:00 22:00 24:00 翌日5:00 休日労働 35%以上 35%以上休日労働 深夜労働 25%以上 深夜労働 25%以上 時間外労働 25%以上 法定労働時間(8時間) 時給1,000円以上 時給1,250円以上 時給1,500円以上 時給1,600円以上 時給1,500円以上 時給1,350円以上 ①資本金の額または出資の総額が  小 売 業 5,000万円以下  サービス業 5,000万円以下  卸 売 業 1億円以下  上 記 以 外 3億円以下 または ②常時使用する労働者数が  小 売 業 50人以下  サービス業 100人以下  卸 売 業 100人以下  上 記 以 外 300人以下 ※ 猶予される中小企業 ※1か月に60時間を超える時間外労働を 行う場合には、法定割増賃金率が50% になります(ただし、中小企業の派遣元 については、法定割増賃金率の引き上げ が当分の間猶予されています。)。 また、派遣元と派遣労働者で労使協定を締結すれば、1か月に60時間 を超える時間外労働を行った労働者に対して、60時間を超えた際の割増 賃金率50%のうち25%分の割増賃金に代えて、有給の休暇を付与するこ ともできます(労働基準法第37条第3項)。 金を支払わなければなりません(同法第37条)。時間外労働・休日労働の 割増率は次の図のとおりです。

(9)

派遣労働者の判断で残業した場合であっても、派遣先が業

務上必要なものであると判断し、黙認した場合には、時間

外労働として認められます。

【図】割増賃金の支払に代えた    有給の休暇の仕組み 事業場で労使協定を締結すれば、割増賃金の支払いに代えて、 有給の休暇付与も可能 支払われる賃金 1.5 (50%の割増賃金) 1.25 (25%の割増賃金) 通常の賃金 時間外労働なし 0時間 60時間(76時間) 1か月の時間外労働 出所:厚生労働省リーフレット 派遣先が派遣労働者に残業や休日労働をさせた場合には、派遣元は割増 賃金を支払わなければなりません。 労働者が自分の判断で残業をした場合について、厚生労働省の通達で は、「使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内 に処理できないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって 法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。」と示して います(昭和25年9月14日基収2983号)。つまり、労働者が自分の判断 で残業した場合であっても、派遣先がその残業を業務上必要なものである と黙認した場合には、その残業は割増賃金支払の対象になります。 派遣労働者が就業した時間等については、派遣先は月1回以上派遣元へ 通知する必要がありますが(派遣法第42条第3項)、派遣労働者自身も勤 務実績を記録しておくとよいでしょう。

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Q12

年次有給休暇

 派遣元に年次有給休暇を取りたいと申し出たところ、「派遣先の許 可を得るように」と言われました。しかし派遣先は「忙しいから派遣 社員を雇っているのに、休まれたら困る」と言います。これではいつ までたっても年次有給休暇が取れません。

派遣労働者も、労働基準法に基づいた要件を満たせば年次

有給休暇を取ることができます。

年次有給休暇とは、所定の休日以外に賃金をもらいながら仕事を休むこ とができる休暇で、要件を満たしていれば、法律上当然に生じる、労働者 の権利です(労働基準法第39条)。派遣元は、派遣労働者が年次有給休暇 を取得したことを理由として、賃金の減額その他不利益な取扱いをしては なりません(同法第136条)。 年次有給休暇が付与される要件は、次のとおりです。 【年次有給休暇が付与される要件】 ① 派遣元との間で「雇う・雇われる」という関係が6か月間継続してい ること  6か月に満たない短期契約であっても、契約を更新して6か月以上継 続して勤務するようになった場合には、これに該当します。  さらに継続雇用が続くときには、6か月を超えて継続勤務をした1年 ごとに新たな有給休暇が付与されます。 ② 全労働日(労働契約や就業規則等で労働日として定められている日) の8割以上を出勤していること  最初は入社日から6か月までの全労働日の8割、以降は1年間におけ る全労働日の8割以上出勤することが必要です。  労働基準法は派遣労働者にも適用されますので、これらの要件を満たす 場合には、派遣労働者も年次有給休暇を取得することができます。

(11)

登録型派遣労働者の場合は、労働契約が結ばれている全期間を通じて、 実態として継続して勤務していると判断されれば年次有給休暇を取得する ことができます。 これらの要件を満たした労働者に対して、派遣元は、年次有給休暇を与 えなければなりません(同法第39条第1項)。同じ派遣元で働き続ける場 合には、勤務年数に応じて加算した年次有給休暇を与えなければなりませ ん。 また、労働者の過半数を代表する者等と労使協定を締結すれば、1年に5 日分を限度として時間単位で年次有給休暇を取得できます(同条第4項)。 なお、週の所定労働時間が30時間未満で所定労働日数が週4日以下の 労働者については、所定労働日数に応じて年次有給休暇を付与しなければ なりません(同条第3項)。 年次有給休暇の付与日数は次のとおりです。 年次有給休暇の時効は、付与日から起算して2年です(労働基準法第 115条)。年次有給休暇を1年以内に全部とらなかった場合、残りの休暇 はその翌年に限り、取得することができます。 【年次有給休暇の付与日数】 短 時 間 労働者の 週 所 定 労働時間 短 時 間 労働者の 週 所 定 労働日数 1年間の所定労働日 数(週以外の期間に よって労働日数を定 めている場合) 継続勤務期間に応じた年次有給休暇の日数 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上 30時間以上 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日 30時 間 未 満 5日 以上 217日以上 4日 169 ~ 216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日 3日 121 ~ 168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日 2日 73 ~ 120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日 1日 48 ~ 72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

(12)

年次有給休暇は、派遣元の責任で与えます。派遣元の事業

の正常な運営に支障がない限り、派遣元は派遣労働者から

の年次有給休暇の請求を拒否することはできません。

派遣労働においては、年次有給休暇は派遣元の責任において派遣労働者 に与えなければなりません。 年次有給休暇を取得するには、事前に派遣元に取得希望日を申し出るこ とが必要ですが、利用目的を問われることはありません。 派遣元は、派遣労働者が請求した日に年次有給休暇を与えなければなり ません(労働基準法第39条第5項)。 ただし、事業の正常な運営が妨げられる場合に限って、派遣元は、年次 有給休暇を他の日に変更することができます(「時季変更権」同項ただし 書)。 厚生労働省の通達によると、ここでいう「事業」とは派遣元の事業であ り、「派遣労働者が年次有給休暇を取ることで派遣先の事業の運営に支障 が生じる場合であっても、派遣元と派遣労働者との関係においては事業の 運営に支障がないこともありうるので、派遣元は代替労働者の派遣の可能 性も含めて事業の正常な運営を妨げるかどうかを判断すること」と示して います(昭和61年6月6日、基発333号)。ですから、派遣元は派遣先の 業務が多忙であるという理由で、派遣労働者の年次有給休暇の請求を拒否 することはできません。 また、退職時に年次有給休暇の取得を申請した場合、派遣元は、時季変 更権の行使ができない(年次有給休暇の取得を拒否できない)とされてい ます。

(13)

Q13

給料を払ってもらえない

 派遣社員として働いていますが、先月分の給料が振り込まれませ ん。派遣元に理由を聞いたところ、「派遣先からの派遣料金の支払い が滞っているため、支払えない」と言われました。

すでに働いた分の賃金は、理由を問わず、必ず支払われな

ければなりません。まずは派遣元に請求しましょう。

 賃金は、労働者の生活を支える重要なものです。労働基準法では、賃金 の支払いについて次の5つの原則を定めています(第24条)。 ①通貨払いの原則、②直接払いの原則、③全額払いの原則、 ④毎月1回以上払いの原則、⑤一定期日払いの原則 賃金が支払われない場合には、いろいろなケースが考えられますが、理 由はどうあれ、派遣元は、労働者が実際に働いた分の賃金を支払わなけれ ばなりません。 このケースのように、たとえ派遣先が派遣料金を支払えない場合であっ ても、派遣元は雇用主として、派遣労働者に賃金を支払わなければなりま せん。 また、労働者が故意・過失により派遣元に損害を与えた場合であって も、派遣元が一方的に賃金と損害賠償金を相殺することは許されず、賃金 は全額が労働者に支払われなければなりません。 まずは、賃金を支払うよう派遣元に要求して、支払いの時期、金額を確 約させましょう。なお、賃金は2年間請求しないと時効となります(同法 第115条)。 請求しても賃金が支払われない場合には、労働条件通知書や就業条件明 示書、給与明細、勤務の記録などをできる限り用意して、労働相談情報セ ンター(P72)や労働基準監督署(P73)に相談しましょう。 なお、派遣労働者には、派遣先所在地の地域別最低賃金が適用されます。

(14)

Q14

同じ仕事をしている正社員と待遇が大きく違う

 派遣先の正社員と同じ仕事をしているのに、お給料は正社員よりか なり低いようです。仕方がないのでしょうか。

派遣元・派遣先には、均衡待遇確保のための措置を講じる

よう、配慮することが求められています。均衡待遇とは、

働き方の違いに応じた、均衡(バランス)のとれた待遇と

いうことです。

派遣元は、派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水 準との均衡を考慮して、派遣労働者の賃金を決定するよう配慮しなければ なりません(派遣法第30条の3第1項)。 以下の内容にも配慮が必要です。 派遣元は、教育訓練や福利厚生などについても、派遣労働者と同種の業 務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮しつつ、必要な措置を講ずる ように配慮しなければなりません(同条第2項)。 派遣労働者が希望する場合には、派遣元は上記の考慮した内容を説明す る義務があります(同法第31条の2第2項)。  派遣先には、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待 遇の均衡を図るため、以下の点で配慮義務があります(同法第40条第2 項、第3項、第5項)。 ・ 派遣元に対し、派遣先の同種の業務に従事する労働者に関する賃金水準 の情報提供などを行うこと ・ 派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の 賃金水準 ・ 派遣労働者の職務内容や成果等

(15)

・ 派遣先の労働者に対し、業務と密接に関連した教育訓練を実施する場 合、派遣労働者にも実施すること ・ 派遣労働者に対し、派遣先の労働者が利用する福利厚生施設(給食施 設、休憩室、更衣室)の利用の機会を与えること また派遣先も、派遣元の求めに応じ、派遣労働者と同種の業務に従事す る派遣先の労働者の賃金水準、教育訓練等に関する情報を派遣元に提供す るとともに、派遣労働者の職務の評価等に協力するよう努めなければなり ません(派遣先指針第2の9(1))。 加えて、派遣先は派遣料金の決定に当たって、派遣労働者と同種の業務 に従事する労働者の賃金水準と均衡が図られたものとなるよう努めなけれ ばなりません(派遣先指針 第2の9(2))。

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Q15

教育訓練

 派遣社員でも教育訓練やキャリア・コンサルティングが受けられる と聞きましたが、本当でしょうか。

平成27年9月30日に改正法が施行され、計画的な教育

訓練とキャリア・コンサルティングを受けられますので、

活用しましょう。

派遣労働者は、キャリアアップを図るため、 ・段階的かつ体系的な教育訓練 ・キャリア・コンサルティング(希望する場合) を受けられます(派遣元の義務)。無期雇用派遣労働者に対しては、長期 的なキャリア形成を視野に入れた教育訓練を実施することが派遣元に義務 付けられました(派遣法第30条の2)。段階的かつ体系的な教育訓練は、 キャリア形成支援制度として策定した教育訓練計画に基づいて行われます。 【キャリア形成支援制度】 1  派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計 画を定めていること。 ○教育訓練計画の内容 ①実施する教育訓練がその雇用する全ての派遣労働者を対象としたものであること。 ②実施する教育訓練が有給かつ無償で行われるものであること。(4の時間数に留意) ③実施する教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容のものであること。  (キャリアアップに資すると考える理由については、提出する計画に記載が必要) ④ 派遣労働者として雇用するに当たり実施する教育訓練(入職時の教育訓練)が含まれ たものであること。 ⑤ 無期雇用派遣労働者に対して実施する教育訓練は、長期的なキャリア形成を念頭に置 いた内容のものであること。 2 キャリア・コンサルティングの相談窓口を設置していること。 ① 相談窓口には、担当者(キャリア・コンサルティングの知見を有する者)が配置されていること。 ②相談窓口は、雇用する全ての派遣労働者が利用できること。 ③希望する全ての派遣労働者がキャリア・コンサルティングを受けられること。 3 キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続が規定されていること。 ・ 派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供のための事務手引、マニュアル 等が整備されていること。 4 教育訓練の時期・頻度・時間数等 ① 派遣労働者全員に対して入職時の教育訓練は必須であること。キャリアの節目などの一 定の期間ごとにキャリアパスに応じた研修等が用意されていること。 ② 実施時間数については、フルタイムで1年以上の雇用見込みの派遣労働者一人当たり、 毎年概ね8時間以上の教育訓練の機会を提供すること。 ③ 派遣元事業主は上記の教育訓練計画の実施に当たって、教育訓練を適切に受講できるよ

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Q16

母性保護と育児休業・介護休業

 妊娠しました。できれば出産直前まで仕事を続け、産休、育休を取 得した後に復職したいと考えています。でも、派遣元や派遣先に妊娠 していることを知らせると、契約を打ち切られそうで不安です。

労働基準法や男女雇用機会均等法などで与えられている権

利は、派遣労働者も行使することができます。また、妊

娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱いは禁止

されています。

 労働基準法や男女雇用機会均等法では、働く女性の母性を保護するため の規定を設けています。これらの規定は、派遣労働者にも適用されます。 【母性保護に関する規定】(概要) 解雇制限(労働基準法第19条)  使用者は、女性が産前・産後休業をする期間及びその後30日間は、解 雇することができません。 産前・産後(労働基準法第65条、66条)  女性労働者は、出産予定日の6週間前(多胎妊娠は14週間)から、産前 の休業を派遣元へ請求することができます。また、派遣元は、原則産後 8週間を経過しない女性を就業させることはできません。妊産婦が請求 した場合には、時間外労働や休日労働、深夜業をさせることはできません。 育児時間(労働基準法第67条)  1歳に満たない子を育てる女性労働者は、休憩時間のほかに1日2回 各30分以上の育児時間を派遣先へ請求することができます。 生理日の休暇(労働基準法第68条)  生理日の就業が著しく困難な女性労働者は、必要な日数の休暇を派遣 先へ請求することができます。 妊娠中・出産後の健康管理に関する措置(均等法第12、13条第1項)  派遣元および派遣先は妊娠中および出産後の女性労働者に対して、保 健指導や健康診査を受けるための時間を確保しなければなりません。ま た、保健指導や健康診査に基づく指導事項を守れるよう、勤務時間の変 更や勤務の軽減などの必要な措置を講じなければなりません。

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派遣元及び派遣先は、女性労働者が結婚したことを理由として、解雇し てはなりません(均等法第9条第2項)。女性労働者が妊娠、出産したこ とや、産前産後休業を取得したこと、妊娠中及び出産後の健康管理に関す る措置を求めたこと等を理由として、解雇その他の不利益取扱いをしては なりません(均等法第9条第3項)。 妊娠中及び産後1年以内の解雇は、派遣元が「妊娠・出産・産前産後休 業を取得したこと等を理由とする解雇でないこと」を証明しない限り、無 効となります(同条第4項)。

「期間を定めて雇用される労働者」であっても、一定の条

件を満たせば、育児・介護休業の対象となります。

育児休業は、原則1歳未満(保育所に入れないなど一定の場合には延長 されます)の子を養育するために休業することができる制度で、男女労働 者とも申し出によって取得することができます。父母がともに育児休業を 取得する場合は、1歳2か月までの間に、1年間育児休業を取得すること ができます。 介護休業は、配偶者、父母、子等の介護のために、家族一人につき、通 算93日間まで3回を上限として分割して休業することができる制度です。 休業期間を有給にするか、無給にするかは、就業規則等の定めに従いま す。また、雇用保険に加入している労働者には、国から育児休業給付金 (休業開始時賃金の67%・休業開始後半年以降は50%)・介護休業給付金 (休業開始時賃金の67%)が支給されます。 育児休業、介護休業とも、日々雇用される労働者は対象から除外されま す(育児・介護休業法第2条)。期間を定めて雇用される労働者であって も、1年以上の雇用実績があり、子供が1歳6か月に達する日までに契約 満了が明らかでない者は育児休業を取得できます(育児・介護休業法第5 条)。また、1年以上の雇用実績があり、介護休業を取得する日から93日 を経過する日から6月を経過する日までの間に契約満了が明らかでない者 は、介護休業を取得することができます(同法第11条)。 育児休業、介護休業について不明な点がある場合には、東京労働局雇

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用・均等部(P74)に問い合わせてみるとよいでしょう。 育児休業・介護休業以外にも、育児又は介護を支援する制度がありま す。なお、派遣元及び派遣先は、育児休業や介護休業等の制度を利用した こと等を理由として、解雇などの不利益取扱いをしてはなりません。 ※日々雇用される労働者は対象から除外されます。 子の看護休暇(第16条の2、第16条の3) ・ 小学校就学前の子を養育する労働者は、派遣元に請求すれば、養育する 子が1人であれば5日、2人以上であれば年10日を取得できます。1日 又は半日を単位として取ることができます。 介護休暇(第16条の5、第16条の6) ・ 要介護状態にある家族を介護する労働者は、派遣元に請求すれば、対象 家族が一人の場合に年5日、2人以上の場合に年10日、介護休暇を取得 できます。1日又は半日を単位として取ることができます。 育児・介護のための所定外・時間外労働の制限(第16条の8、第17条第1項、第2項、第18条) ・ 3歳までの子を養育する労働者又は要介護状態にある家族を介護する労 働者は、派遣元に請求すれば所定外労働を免除されます。また、小学校 入学前の子を養育する労働者又は要介護状態にある家族を介護する労働 者は、請求すれば1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働を免 除されます。 育児・介護のための深夜業の制限(第19条、第20条) ・ 小学校就学前の子を養育する労働者及び要介護状態にある家族を介護す る労働者は、派遣元に請求すれば深夜業を免除されます。 育児のための所定労働時間の短縮措置(短時間勤務制度)(第23条第1項、第2項) ・ 派遣元は、3歳までの子を養育する労働者が希望すれば利用できる短時 間勤務制度を設けなければいけません。1日の所定労働時間を原則とし て6時間とするものを含む必要があります。 介護のための所定労働時間の短縮等の措置(第23条第3項) ・ 派遣元は、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、連続 する3年間の期間の中で、2回以上利用できる措置を講じなければなり ません。措置の内容は、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、時差 勤務制度、介護サービスの費用助成その他これに準ずる制度のいずれか となります。

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Q17

職場のハラスメント

 派遣先の上司から、たびたび飲みに行こうと誘われるので、そのつ どやんわりと断ってきたところ、上司から無視されるようになり困っ ています。派遣元に相談しても「気にするな」と言うだけで相談に 乗ってもらえません。

派遣元も派遣先も、セクシュアルハラスメントを防止する

ための措置を講じなければなりません。

セクシュアルハラスメントとは、相手方の意に反する性的な言動で、そ れに対する対応によって労働条件について不利益を与えたり、就業環境を 悪化させることをいいます。 事業主は、性自認や性的指向に関わらず、同性に対するセクシュアルハ ラスメントも含めて、職場においてセクシュアルハラスメントがおきない よう、雇用管理上必要な措置を講じなければなりません(男女雇用機会均 等法第11条)。派遣労働においては、雇用主である派遣元だけではなく、 派遣先も、雇用管理上及び指揮命令上、必要な措置を講じなければなりま せん(派遣法第47条の2)。 指針では、事業主(派遣元及び派遣先)が講じなければならない措置と して、次のように示しています。 【事業主が雇用管理上講ずべき措置(要約)】 平成18年厚生労働省告示第615号 平成29年1月1日改正 ・職場におけるセクシュアルハラスメントに関する方針を明確化するとともに、 対処に関する事項を就業規則等の文書に規定し、周知・啓発を図ること。 ・相談(苦情を含む)窓口を定め、相談に適切に対処するために必要な体 制を整備すること。 ・セクシュアルハラスメントが生じた際に、迅速かつ正確に事実関係を確認 し、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うとともに、行為者に 対する措置を適正に行うこと。また、再発防止に向けた措置を講ずること。 ・相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、 周知すること。また、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等 を理由として不利益な取扱いをしない旨を定め、周知・啓発すること。

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セクシュアルハラスメントの加害者とその使用者は、民事

上の責任を問われることがあります。

セクシュアルハラスメントの加害者は、個人の名誉や尊厳を侵害したと して、不法行為責任(損害賠償責任)を問われることがあります(民法 709条)。また、加害者を雇用している使用者は、使用する労働者が職務 遂行中に第三者に損害を与えた場合には、使用者責任(損害賠償責任)を 問われることがあります(同法715条)。 なお、職場のいじめ(パワーハラスメントと呼ばれることもありま す。)の場合にも、同様に不法行為責任や使用者責任を問われることがあ ります。職場のいじめとは、明確な定義は確立していないものの、職場に おいて、相手に精神的・身体的な苦痛を与えることで、働く権利を侵害し たり、職場環境を悪化させたりすることとされています。業務上の指導と の線引きが難しいケースもありますが、具体的に、次のような行為が典型 的な職場のいじめとして例示されています。 【「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」(厚生労働 省 職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議)より抜粋】 ① 暴行・傷害(身体的な攻撃) ② 脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃) ③ 隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し) ④ 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害 (過大な要求) ⑤ 業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じ ることや仕事を与えないこと(過小な要求) ⑥ 私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

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ハラスメントの被害にあったら、一人で悩まず、信頼でき

る窓口へ相談しましょう。

ハラスメントの被害にあったときには、客観的に事実確認ができるよう な証拠になるもの(手紙、メール、録音テープなど)があれば、必ず保存 しておき、相手方とのやり取りについては、できるだけ詳しくメモを残し ましょう。そのうえで、派遣元・派遣先の苦情処理担当者に相談するとよ いでしょう。 労働相談情報センター(P72)や東京労働局雇用環境・均等部(P74) などの公的機関に相談することも一つの方法です。

派遣元及び派遣先は、妊娠、出産、育児休業、介護休業等

に関する上司・同僚からの職場でのハラスメントの防止措

置を講じなければなりません。

また、妊娠・出産や、産休、育休の取得等を理由として、不利益な取扱 いをしたり、就業環境を害することは、男女雇用機会均等法や育児・介護 休業法で禁じられています。 平成29年1月から、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラ スメントを防止するための事業主(派遣元及び派遣先)の措置義務が新設 されました。派遣元及び派遣先は、女性労働者が妊娠、出産したこと、産 休を取得することや、男女労働者が育児休業等の制度を利用することなど に関する上司・同僚などの言動によって、労働者の就業環境が害されるこ とがないよう、労働者からの相談に応じ、適切に対応する体制を整備する 等、雇用管理上及び指揮命令上必要な措置を講じなければなりません(均 等法第11条の2、育介法第25条)。

(23)

Q18

雇用保険

 派遣労働者も雇用保険に加入することができますか?

同一の派遣元で週20時間以上かつ31日以上派遣就業す

ることが見込まれる場合には、原則として雇用保険の被保

険者となります。

雇用保険は、労働者が失業したときに生活の安定と再就職の促進を目的 に必要な給付を行う制度です。 雇用保険は、原則として、労働者を一人でも雇用する事業に適用されま す。適用事業で働く労働者は、一定の条件を満たせば、本人が加入を希望 するか否かにかかわらず、すべて被保険者となります。派遣労働において は、雇用保険への加入は、雇用主である派遣元が行います。 1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上引き続き雇用される ことが見込まれていれば、原則として雇用保険の被保険者になります。 雇用保険料は、労働者の月収に保険料率(一般の事業の場合は千分の 9)をかけたもので、このうち被保険者負担分は千分の3となっています (平成29年4月~)。 雇用保険の被保険者が、解雇・倒産・自己都合等により離職し、働く意 思と能力がありながら就職できない場合には、基本手当(いわゆる失業手 当)が支給されます。原則として、離職の日以前の2年間に、11日以上 働いた月が通算して12か月以上あることが受給の要件です。 離職した派遣労働者が、特定受給資格者(※1)又は特定理由離職者 (※2)に該当し、かつ、離職の日以前の1年間に11日以上働いた月が6 か月以上ある場合、失業等給付(基本手当)の所定給付日数が手厚くなる 場合があります。特定受給資格者又は特定理由離職者に該当するかどうか の判断は、受給資格に係る離職理由により、ハローワークが行います。 基本手当受給の開始日は、特定受給資格者と特定理由離職者について

(24)

は、ハローワークで失業の認定を受け待期期間の7日が過ぎた日から、自 己都合・懲戒解雇による離職者については待期期間の7日と給付制限の3 か月が過ぎた日からとなっています。 (※1) 倒産・解雇等の理由により再就職の準備をする時間的余裕なく 離職を余儀なくされた者 (※2) 特定受給資格者以外の者であって期間の定めのある労働契約が 更新されなかったことその他やむを得ない理由により離職した者 なお、日ごと又は30日以内の期間を定めた労働契約により派遣労働を 行っている方については、日雇労働被保険者となる場合があります。 雇用保険の適用基準を満たしているにもかかわらず、派遣元に加入手続 きをとってもらえない場合や、雇用保険について不明な点がある場合に は、ハローワーク(P75)に相談しましょう。

(25)

Q19

社会保険

 「社会保険あり」と聞いていたのに、なかなか加入してもらえませ ん。派遣元に加入してほしいと申し出たところ、「社会保険に加入す る場合は、会社も保険料を負担することになるので時給を下げる」と 言われました。

健康保険と厚生年金は、加入要件を満たしていれば、事業

所や労働者の意思にかかわらず加入することが義務付けら

れています。

健康保険と厚生年金保険をあわせて社会保険といいます。社会保険は、 労災保険や雇用保険とともに、労働者が安心して働いていけるように制度 化された、公的な保険です。 健康保険とは、労働者が病気や怪我(労働災害を除く)をしたとき、ま たそれがもとで会社を休んで賃金が支払われないとき、死亡したとき、出 産をしたときなどに、必要な医療給付や手当金の支給を行う制度です。 厚生年金保険は、労働者が老齢で働けなくなったとき、病気や怪我がも とで障害が残ったとき、死亡したときなどに、年金や一時金の支給を行う 制度です。 協会けんぽ(全国健康保険協会管掌健康保険)の健康保険料は、標準報 酬月額及び標準賞与額の千分の99.1(東京都の場合。平成29年3月~) を、事業主と被保険者で折半して負担します。介護保険の被保険者には、 健康保険料に介護保険料が上乗せされます。また、厚生年金保険料は、一 般の被保険者の場合、標準報酬月額及び標準賞与額の千分の181.82(平 成29年8月まで適用。平成29年9月から千分の183.00)を事業主と被 保険者で折半して負担します。 社会保険への加入は、労働者を一人でも雇っている法人の事業所(強制 適用事業所)すべてに適用されます。強制適用事業所で働く労働者は、本 人が加入を希望するか否かにかかわらず、すべて被保険者となります。

(26)

ただし、労働時間がその会社の通常の労働者より短く、常用とみなされ ない場合や、日々雇い入れられる者、2か月以内の期間を定めて働く者な どは、社会保険に加入できません。 しかし、このような労働者であっても、次の基準を両方とも満たす場合 は、社会保険に加入することができます。 【社会保険の被保険者となるための適用基準(一部)】 ① 雇用期間が2か月を超えた場合(契約更新により超える場合を含む)  2か月以内の期間を定めていても、契約が更新された場合には、被保険者資 格が得られます。 ② 1週間の所定労働時間、および1か月の所定労働日数が、派遣元のフルタイ ムの労働者の4分の3以上ある場合  登録型派遣労働者の場合は、派遣先で同じような仕事に従事している者と比 較して、常用かどうかを判断します。 また、平成28年10月から社会保険加入対象が広がりました。上記の② (4分の3基準)を満たさない場合であっても、以下の1~5までの5つ の要件すべてを満たす短時間労働者については、健康保険・厚生年金保険 の被保険者となります。 派遣労働者の社会保険への加入手続きは、派遣元が行います。 社会保険料の事業主負担額があることなどを理由に、社会保険への加入 を拒否したり、社会保険の代わりに国民健康保険・国民年金への加入を勧め るなどの事業主負担分を労働者に押し付けるといった行為は許されません。 社会保険について不明な点がある場合、健康保険の給付や任意継続被保 険者に関しては全国健康保険協会又は派遣元が加入している健康保険組合 に、社会保険の加入や保険料の納付及び年金全般に関しては年金事務所 (P76)に相談しましょう。 1 週の所定労働時間が、20時間以上であること。 2 雇用期間が継続して1年以上見込まれること。 3 月額賃金が8.8万円以上であること。 4 学生でないこと。 5 従業員501人以上の企業に勤めていること。

(27)

Q20

労働災害・安全衛生

 CADオペレータとして働いています。毎日、長時間VDT作業を 行っていたため、視力が低下したうえ、腱鞘炎になってしまいました。 派遣元に相談しましたが、「もともと悪かったのではないか」と言わ れました。労災にはならないのでしょうか。

労働者を一人でも雇用する事業主は、労災保険への加入が

義務付けられています。

労災保険は、労働者が仕事の上で怪我をしたり、病気にかかったり、死 亡したり、また通勤の途中で事故に遭ったときなどに、労働災害に遭った 労働者あるいは遺族を援護するために、国が事業主に代わって必要な補償 を行う保険です。 労災保険への加入は、事業主や労働者の意思にかかわらず、原則、労働 者を一人でも雇用するすべての事業主(派遣元)に義務付けられていま す。労災保険の保険料は事業主だけが負担することになっており、労働者 は負担する必要はありません。

労働基準監督署が労働災害であると認定すれば、労災補償

が受けられます。

派遣労働者が労働災害に遭ったときには、労働者本人または遺族が速や かに派遣元に連絡して、労災保険給付の手続きを行います。労災保険給付 の手続きについて、派遣元の協力が得られなかったり、あるいは派遣元が 労災保険料を納めていなかった場合には、労働者は直接、労働基準監督署 (P73)に申請書を提出することができます。労働基準監督署はこの申請 を受けて、その怪我や病気が労働災害にあたるのかどうかを判断します。 労働災害であると認定されるためには、次の要件を満たしていることが必 要です。

(28)

①業務遂行性  労働者が労働契約に基づいた事業主の支配下にある状態(作業中だけで はなく、作業の準備行為・後始末行為、休憩時間中、出張中などの場合に も「業務」とみなします)において発生した負傷・疾病等であること。 ②業務起因性  業務と傷病等との間に一定の因果関係が存在すること。  業務が原因で発症した疾病であるかどうかの判断が難しいものもあるの で、業務上の疾病の範囲は法律で定められています(労基法施行規則第35条)。 ご質問のケースのように、VDT作業に長期間従事することで、眼精疲労や 腰痛、肩こり、腱鞘炎などになることがありますが、これらの疾患が上記の要 件を満たす場合には、労災保険が適用され、補償を受けることができます。

派遣元、派遣先とも、職場環境を整え、派遣労働者の安全

と健康を確保する義務があります。

派遣元も派遣先も、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職 場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければなりません。 (派遣法第45条第1項)。労働安全衛生法においては、一定規模以上の事 業場では、総括安全衛生管理者や安全管理者などを選任して、事業場内の 安全衛生管理体制を確立しなければならないと定められています。 派遣元は、労働者を雇い入れた又は労働者の作業内容を変更するときに は、安全衛生教育を行わなければなりません(労働安全衛生法第59条)。 派遣先も、労働者の作業内容を変更するときなどには、安全衛生教育を行 う必要があります。また、派遣労働者の健康を保持増進するために、派遣 元は、派遣労働者を雇い入れたときやその後1年以内ごとに健康診断を行 うこと、派遣先の業務が有害業務である場合は、派遣先が有害業務に関す る特別な健康診断を行うこと等が定められています。 派遣労働者自身にも、派遣元・派遣先その他医療機関で実施する健康診断 を受診することが義務付けられています(同法第66条第1項、2項、5項)。 また、派遣元は、派遣労働者数の合計が50人以上であれば、1年以内ご とに1回以上、ストレスチェックの実施が義務付けられています(同法第 66条の10)。ストレスチェックの結果、一定の要件に該当する労働者から

(29)

Q21

所得税・住民税

 以前、正社員として会社に勤めていた時は、会社で年末調整をして もらっていましたが、派遣社員の場合は派遣元で処理してもらえるの ですか。また、住民税はどのように納めたらよいのですか。

所得税は、年末調整または確定申告を行うことによって精

算することができます。

給与の支払者(雇用主=派遣元)は、毎月の給与を支払う際に、あらか じめ一定の所得税を見込み税額として控除します。これを源泉徴収といい ますが、この見込み税額の1年間の合計と、その年の年収総額をベースに さまざまな控除を差し引いて算出した年税額とは通常は一致しません。こ の差額を精算するために、給与の支払者が年末調整を行ったり、あるいは 労働者自身が確定申告を行う必要があります。 年末調整は、その年の最後の給与の支払いのときに給与の支払者が行い ます。年の途中で転職した人は、前の勤務先からその年の源泉徴収票を交 付してもらい、これらの書類と併せて新しい勤務先に提出すれば、新しい 勤務先で年末調整を受けることができます。 年の途中で退職し年末調整が受けられなかったときや、2か所以上から 給与が支払われているときには税務署に確定申告をします。また、年税額 を算出した結果、源泉徴収された税金が納め過ぎていたときには還付を 受けることになります。 所得税は、その年(1月~ 12月)の年収から、給与所得控除、扶養控 除、社会保険料控除、基礎控除などを差し引いた所得に課税されます。 また、年収が103万円以下であれば課税されません。さらに、個人の事情 (扶養親族の人数や社会保険料・生命保険料の支払状況など)に応じて、 税負担が調整されます。年末調整後に扶養親族等の増減があった場合に は、確定申告をします。そのほか、災害を受けたときの雑損控除や医療費

(30)

控除などがある場合は、確定申告をすれば還付を受けられます。 登録型の派遣労働者の場合、賃金が通勤費込みの契約であることが多い かと思われます。通勤費が賃金とは別に支払われる場合には、1か月当た り15万円まで非課税になります。しかし、賃金が「通勤手当」と区分さ れていない、通勤費込みの賃金体系となっている場合には、非課税の扱い を受けることができず、賃金全体が課税対象とされます。  所得税について不明な点がありましたら、最寄りの税務署に相談しま しょう。

住民税は給与天引きだけでなく、年に4回、分割して納め

ることもできます。

住民税は、前年の所得に対して課税され、6月から翌年5月まで、毎月 の賃金から特別徴収(天引き)されます。ただし、特別徴収することが著 しく困難であるとき(雇用主が変わったり雇用期間が中断するなど)に は、普通徴収といい、納税通知書により年4回に分割して納付することも 可能です。 住民税は、年収が給与所得控除(最低65万円)と住民税の非課税限度 額(35万円) の合計100万円以下の場合は課税されません。なお、給与 所得者が所得税の確定申告をした場合は、あらためて住民税の申告をする 必要はありません。 住民税について不明な点がありましたら、区・市役所等に相談しましょ う。

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