【論 文
l
UDC :624.
014.
2 ;691,
フ14 日本建築学 会 構 造 系 論文報告 集 第 391号・
昭 和 63 年 9 月冷 間 成 形 円形 鋼 管 部
材
の
耐力
と
変形能
の
統
計 的 評 価
正 会 員 正 会 員越 智 健
之*黒 羽 啓 明
* *1.
ま えがき 限界 状 態 設 計 法で は,
部 材ある い は構 造 物の耐力の確 率 分 布 性 状 を 明らか に して お く必 要が あ る。 鋼 管 部材を 含む各 種 部 材の耐 力や変 形 性 状に対し て確 率 分 布 性 状,
設計法が論じられ て い る。
し か し, 冷 間 成 形 鋼 管 部 材に 関し ては, 素 材の機 械 的 性 質の特 性が十 分に考 慮さ れて いない。
国内で多用さ れ て い る冷 間成 形 鋼 管は,
製 造 過 程にお いて様々な塑 性 加工 を受けて い る。 塑 性 加工に よ り素 材 の機 械 的性 質は大き く変 化し,
複 雑な残 留応力が生 じる。
JSSCi
},
加 藤2)は種々 の製 造 方 法で作ら れ た鋼 管か ら引 張 り および圧 縮 試 験 を行い,
そ の特 性を明ら か に し た。 加 藤,
青 木3)は電 縫 鋼 管の制 作 過 程を分 析し,
塑性 加工 を数 理 的な塑 性 論に当ては め,
その結 果を実 験 値と 比較 し ている。
青 木,
福 本4)は同一
ロ ッ トの電 縫 鋼 管か ら多 数 本の引 張り と圧 縮 試 験お よ び残 留 応 力の測 定を行い.
残留応 力の影 響と材料強 度の不 規 則性につ い て考 察し て い る。
それ らの研 究は, 冷 間 成 形 鋼 管の材 料 特 性の評 価 に一
般 性を持たせ るまで に至っ て お らず,
残 留 応 力の評 価方 法 も複 雑で ある。一
方, 部 材の実 験 も数 多く行わ れ 局 部 座 屈, 曲 げ座 屈 等の特 性が明ら か に なっ て いる。 し か し,
部 材に関する研 究は個々 の実 験 結 果につ い て考 察 され て い る の み であり, 設 計に必 要な考 察が不 十 分であ る。
本 論で は,
限 界状 態 設 計 法を念 頭に お き,
冷 間 成 形 鋼 管の材料特 性を統計 的に評 価し, その応 用と実 験 資 料か ら確 率・
統 計 論に基づいた部 材 耐 力 あるい は変 形 能の評 価 を行う。
2.
冷間成形 完成品の応 カー
ひずみ関係の定 式 化 加工後の平 均 的な応 カー
ひずみ関係 を用い ると,
部 材 の 耐 力お よび変 形 性 状が推 定で きるSLs ),
71。
すな わち,
加 工後の素材の機 械 的 性 質を把 握する ことで複 雑な加工 や残 留 応 力の影 響を評 価す ること ができ る。 こ こ では,
素材の機械 的性質を代 表す る値であ る引 張 試 験か ら得られ る降 伏 応 力, 引 張 強 さ, 降 伏 比お よび 短 柱圧縮 試 験か ら得られ る降 伏 応 力に対して統 計 的 評 価を 行う。
また, 降伏 応 力 と 引 張 強さ か ら応 カー
ひずみ 関係 の定式化を行い,
応カー
ひずみ関 係の モデル化に必 要な 係 数の 確率分布を 誘導す る。2,
1
降 伏 応 力と引 張 強さの統 計 量 青木ら は多くの実験 資料に基づ き引 張 降伏 応 力,
引 張 強 さの統計 量 を 与 えて いるS )。
ま た,
著 者ら も同 様の統 計量 を与えて いる9〕 。 そ の後,
多くの実 験 資 料が公 表さ れて おりそ れ らの統計量 を与え直す。
実 験 資 料は,
ロー
ル 成形鋼 管 (STI
(41 材)で あ る。 回帰モ デ ル は, これ までの モ デル 9)と同一
で ある 。 な お,回帰モ デルは対 数 をとり線形式とし て回 帰し て い る。 実 験資料と 回帰の結果お よ び平 均 値か ら変 動 係 数の 2倍 離れ た数値と し た95
%信頼限 界 をFig.
1およびFig.
2 に示す。 ay−
・・
69・
払(
?)
一
… !2 碗一
・罵(
2t
)
一
舞
一
… 83・
仏(
?
)
『
酬 cov;
0.
109・
・
…
(1 ) COV=
O.
078・
・
…
(2 > cov=
O.
081…
(3
) ただし σy :降 伏 応 力 (t/cma ) σu :引 張 強 さ (t/cm2 },
サンプル数 :320 各 特 性 値を (1)〜
(3)式に示す。
変 動 係 数 (cov ) は近 似 的に実 験 値 と 実 験 式の比の対 数 値の標 準 偏 差 と 7 6 5撃
4 ミ ご 3 2 本 論 文の一
部は,
文献18)に発 表し た もので あ る。
拿 熊 本 大学 助 手 # 熊 本 大 学 教 授・
工博 〔昭和63年1月8日 原稿受 理) 1 10 20 30 40 50 100 D!tFig
.
1 Yield stresses in tensien showing effect of D〃7
冉
0 54 3(
闘
EU \ じ コ b2 1 10 20 30 40 50 100 D/tFig
.
2 Ultirnate strengths showing effect of D/tし
,
自由度を考 慮 し て い る。
(1)式 中のM
,は平均 値 が 1.
0で あり1n
Mi の標 準 偏 差が式 中の変 動 係 数と等し い確率 変数であ る。 ま た,M
で表 す確 率 変 数はM
,と 同 じ定 義で あ る。 短柱圧縮 試 験か ら得 られる圧 縮 降 伏 応 力の実 験 資 料 (STK
41
材 )と 回帰の結果をFig.
3に示 す。 圧 縮 降 伏 応 力を (4 )式で表す。a・・
一
・・
56・
M・(
?
)
一
… sc ・v− ・.
12
・・
…・
(・) サンプル数 168 圧 縮 降伏 応 力の変 動 係 数は引 張 降伏 応 力の変 動 係 数 よ りも若 干 大 きい。 平 均 値は引 張 試 験の 9割 程 度であり, 引 張 試 験よりも径 厚 比の影 響が強い。
回 帰の結 果と変 動 係 数で標 準 化した実 験 資 料 をFig.
4 に示 す。 対 数 軸 上の実 験 値か ら得た相 関 係 数p を 図 中 に示す。
な お,Fig.
4中の添字i
は各 実験値,
添字 m は平均 値,添字t
は引張 試 験,添字c は 圧縮試 験を表す。 ζは変 動 係 数で あ り,
その添字は各確 率変数に対応し て い る。
2.
2
応カー
ひずみ関係の定式 化 実験値の近似にRamberg・
Osgood
の実 験 式を用い る。
徐 々に 降 伏 し明 確 な 降 伏 棚の 表 れ ない応 カー
ひずみ関 係 に おいて は, 通常0.2
% 残留ひずみ を与え る応 力が降 伏応 力と して用い ら れて い る。
この 降 伏応力を σ。と す 7 6 5 {へ
45 ≧ 3 δ 2−一
一『
噌
一
一
一
一
一.
一
.
曽.
一.
e一
一
一
〇一
』L_
_
_
_
_
ψ e e 。8
。 で
1
鼎
1 10 20 30 40 50 1GO D/tFlg
.
3 Yield stresses m compTession showing effect of D/t
60 一
Ln(9q/σum)〆ζ2 e一
4 ).
t/ζ1 (α) Ln(岱」〆aypm,.
c/ζ4 43 o 2 Ooo も o 4−
3一
2一
23 4 覇 い(σy」/(加),
ooo一
Z oo一
3 ρ=
O.
870一
4一
4 (b
) しn (aa」/UUJn)/ζ2 ‘ 32 動 oo 4−
3一
2一
112 3 4 o 囑 。 恥 しn(函」/(加Σ oo 豊一
3 ρ置
0・
576,
4 (c)Fig
.
4 Correlations between material propertiesると Ramberg
−
Osgeod 式は一
音
・ ・画
竜
)
m・
・
・
・
・
・
……一 一 ・
・
……
(・} 弾 性 係 数E を確 定 値とす れ ば,
未知な係 数は硬 化に 関 す る 係 数 m の みで あ る 似 後硬 化 係 数 と 略 す)。
引 張強さ時の ひずみ と硬化係 数との関係は, 既 に明ら か に なう てい る1°]。
その応 用で引 張 強さ と硬 化 係 数の関 係 を 求める、
(5)式 と以 後の記 述で は, σ とε を真 応 力 と 対 数ひ ずみと す る。
引張試験にお け る荷重 P とその増 分はP 三
aA,
dPt
adA +Ad
σ 体 積 保 存 則に従う とし てA ・t=…
定,dA
〃 +d
‘〃旨 0,d
ε=d
〃 ‘た だし
A
:断面 積 1:標 点 距離 以 上の条 件 式と引 張強さ時の条 件dP
= oか ら塞
一 ・・
……・
…・
…………一 ・
……・
tt−
・
(・) また,
(5)式に お け る接 線 係 数は (7 )式 と な る。
引張 強さ に達す るまで は局 所 的な ひずみの集 中 を生じな いと して,
引張 強さa=
時の真応 力 σ e と対 数ひずみ εe の 関係は体積保 存則 と (5)式か ら (8 )式と な る。
窘
一[
k
・・・
・…畿
厂]
−
L・
・
一 …・
…
(・) 一 ・(
σ e σ u)
・
ee一
詈
・ ・・
…(
舞
)
m・
・
一 …
(・)引 張 強さ時の条件と して (6)
,
(7 >式の 応 力σ は σ, と な る。 ま た, 引 張 強さの統 計 量か ら引 張 強さ は 塑 性 加工の影 響が小さい ことが分か る。 そこ で, 圧縮試 験 の真 応 力L 対数ひずみ関 係に お い て (6 )式の 条件を満 たす 真 応 力は, 同一
素材の引 張 試 験にお け る引 張 強さ時 の真応力に等しいと仮 定 する。 こ の仮 定か ら(6
)〜
(8
} 式の条 件 式に圧縮の 降 伏 応 力と引 張 強さ を用い て硬化 係 数 を 定 めるe 本論で は, ε。と硬 化 係 数に初 期 値を与え,
収 束 計 算で各 条件式 を満 足する硬 化 係 数を求めて い る。文 献 11)に公 表 し た 短柱圧縮 試 験 結 果に対し て上記 の方 法で近 似を行っ た
。Fig.
5
に近 似 結 果の例 を示 す。 巳O 5、
O耄
4.
。 ≧ b 302.
o 1.
0 STK41−
216.
5・
8.
O(mm ) σy=
4.
65 (↑!C 匿 )m=
17,
5 0 60 O.
20、
4 0.
6 0.
8 LO ε(N) (o) so £ 4.
o呈
9ao2
.
01.
0Fig.5
中の実線が実験結果で あ り,
破線は近 似 結 果であ る。 Fig.
5(a>の ように降 伏 棚が表れ ない 応 カー
ひずみ 関 係に 対 して の近 似 結 果 は良く実 験 値を表し得た。
Fig.
5(b
>の よ うに降 伏 棚を有す る材料に は,
近 似 結 果 と実 験 値は差 を 生 じ た。
し か し,
この近似 方 法で得た応 カー
ひずみ関 係を,
局部座 屈お よ び座 屈 強 度 算 定に用い た場 合には,
降 伏棚の有無に よ る近 似 度の違いが問 題に な ら な い こと を 次 節で 明 らか にする。
な お,
実 験 値は 公 称 応 カー
公 称ひずみ関 係であ り, 得ら れ る関 係は真応 カー
対 数ひずみ関係で あ る。
公 称 応 カー
公 称ひずみ関 係と 真 応 カー
対 数ひずみ関 係を 比較する と,Fig.
5の ひずみ 範 囲で は両 者に大し た 差 を生じ ない。
したがっ て,
本 論 では真 応 力と 公称応 力お よび対 数ひずみと 公 称ひずみ を 区 別しない。 つ ぎに,
圧縮の降 伏 応 力と引 張 強さ の統 計量か ら硬化 係 数の確 率分布を誘 導す る。
硬 化 係 数は降 伏 応 力と引張 強さ を変数 と す る (6
)一
(8
)式の関 数である。
つ ま り,
硬 化 係 数を確率 変数と すると その密度関数は, 降 伏応 力 と引 張 強さの平 均値お よび確率変 数M
,,M
、の 2変 量密 度 関 数か ら得るこ と がで き る。
脇 ,M
‘は対 数 正 規 分布 に従 うと仮 定し,
実 験 資料の相関係数と等しく な る Z変 量 密 度 関 数 を定め,
数値積分法を用いて硬 化係数の確 率 密 度を求め た。 硬 化 係数の確 率密 度 分 布 と 平均 値お よ び 95% 信 頼 限 界の算 定 結 果をFig,
6
に示す。
な.
お, 弾 性 係 数は確 定 値 (2100
t/cmZ )と し てい る。
また,
95% 信 頼 限 界は確 率 密 度を積分 して上下 2.
5%の 確 率にな る値と してい る。 ところで,
硬 化係数と降伏応 力,
引 張 強さに は関 数 関 係が あると して お り,
降 伏 応力 と 硬 化係 数に高い相 関を 生じ る。 し た がっ て,
応カー
ひずみ関係の不 確 実 性を考 慮した解 析には,
降 伏 応 力と硬化 係 数の条 件っき確 率 密 度 関 数が 必要であ る。
条件つ き密 度関数 自体は図 示し て い な いが,
数 値 積 分 法で算 定し後の項で使用して いる。3
.
短 柱 圧 縮 試 験に よ る局部座 屈およ び 座屈後 挙 動の 評 価 こ こ では,
前 節で求め た降伏応 力と硬化 係 数の確 率 分 100〆
ノ
’
/言
鰓晃
6設
帛
考
{儒
粟
β 0 02 0.
4 05 0.
8 1.
0 ε (36⊃ (b
)Fig
.
5 Tesしresults compared with stτess−
strain models forstub
.
colurnns 30 20m lO 3 2 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 D!†Fig
.
6 Probability distributions of hardening coefficientsshowing effect of D/t 95鶉 IMI
丶
丶
、 、 一、一
一一一 一一
一 一 一 一 }
一
PDF MAN一
61
一
布か ら局 部 座屈強度の確率分布を求 める。 また, 局 部 座 屈 後の変 形 性 状につい て も考 察を行う。 3
.
1 局 部座屈 強 度短 柱圧縮 試 験の応 カ
ー
ひずみ関係を用い た (9)式の 理論 値は,
非 弾 性 域におけ る局 部座 屈耐 力と良く一
致 す る13〕・
14〕 。・1
一
書
VirFir
;・
去
……・
・
…・
・
………・
・
(・〉 ただ しE
‘:接 線 係 数Es
:割 線 係 数 引張 強さと圧縮 降伏 応 力が公表され て いる短柱圧縮試 験の資 料1 )・
11i・
14 }−
19 〕につ い てt 前 述の方 法で応 カー
ひず み関 係 を 近 似し た。
応 カー
ひずみ関 係の近 似 結果に基づ い た (9 )式の理論 値σtと実験値 σm との比較 結 果をFig.
7に示す。
理 論 値は無 次 元 化 径 厚 比 (ay/E ・
D
/t
) の広い領 域で実 験 値と良く一
致してい る。
こ こで 引用 し た実 験資 料に は, 前節の応 カー
ひずみ関係の定 式化に お いて問 題と なっ た応 カー
ひずみ関 係に降 伏 棚 を持つ材 料 も含ま れて い る。
最 大 耐 力と降 伏 応 力の比 率である応 力 上 昇 率は, 応 カー
ひずみ関 係と (9)式か ら求める こと がで きる。
しが し,
応 カー
ひずみ関 係の近 似と (9)式の算 定に は数 値 演 算が必 要であ り,
応 用性に欠 ける ことか ら実 験 式 を与 えてお く。 Fig.
8に応 力上昇 率に対 する加 藤の実 験 式z }と 実 験資 料を比 較 する。 実 験 資 料に基づい た回 帰の結 果 と変 動 係 数お よ び相 関 係 数 r を図 中に示 す。
なお,
回帰モ デル は, 対数 を とり線 形 式とし て い る。 また, 実 験 値と無 次元化 径厚比の対 数 値か ら相 関 係 数 を 求 めて い る。
Fig.
8に よ る と無 次元 化 径 厚 比の変 化に伴 う応 力 上 昇 率の変 化 自体 が小さい の で,実 験 値の分 散は相対 的に大きいと言え る。 Fig.
7とFig.
8との 比 較か ら,
無 次 元 化 径 厚 比のみを 説明変数と し た実 験 式は,
(9> 式の性 質 を十 分に表せ な くて応力上昇 率を説 明し得な いと言え る。
(9 )式は径
庫
比と応 カー
ひずみ関 係の係数との関 数 で あ る か ら,
応 力上昇 率の説 明 変 数と して硬 化 係 数が考 え ら れ る。
説 明 変 数と して硬 化 係 数の代わり に,
より物 理的な意 味が分か り やすい圧 縮 降 伏応 力と引張 強 さの比 2,
0E1
鹽
5s’
i.
o O.
5.
、
o、
O 丶 督 O 1.
5 1.
0 丶 丶 N L xN.)\ ・
器
ぽ’訟
一
・
趣
、
KATo 町 o.
05 O,
10 0.
15・
Vαz(σy /E⊃・
(D!t, e.
20 駅『、唖、一一一.
〜 _
隔
o 、_/
\ 一∴
.
『
o、
O.
792・
α“
7 0 coサ昌
O.
055 r=
O.
81 O.
5 0 0.
05 0.
10 0.
15 0.
20 025 1/α=
Cσy!E)・
(D! 曾,Fig
.
8 Maximロm to yield strength ratios for stub.
columnsshowing effect of α
で ある降 伏 比 を採用し, 確 率論 的な応 用が簡 単で ある (10)式 と同 形の モ デル で 回帰を試み た。 無 次 元 化 径 厚 比 と降 伏 比 を説 明 変 数に用いた 回帰結果は
,
無 次 元 化 径 厚比の み で回帰し た結果と比 較して,
重 相 関 係 数 が5
%.
高 く な り変動係 数は8
%低 下 し た。 し かし,
・
径 厚 比 と 降 伏 比 を用い た (10)式が さ らに優れた結 果で あっ た。
』
/
1
−
・・
…M
・(
Di
)
一
゜’
ls°・
(
葺)
一
゜”33………・
…
(・・> cov =O.
034
r=0.
90 サンプル数 :64 (10 )式 と実験 値の関係をFig.
9に示す。
径厚 比の制 限 値 を 大幅に超 え,
弾 性 座 屈 を生 ずるよ う な き わ め て径厚比の大き なロー
ル成 形 鋼 管 が 部 材に使用 さ れ るこ と は考えられ ない。
し た がっ て,
(10)式 は弾 性 座屈曲 線との連続 性を考 慮し て い な い。
つ ぎ に, (
9
)式あ るい は (10) 式か らSTK
41
材の 局 部 座 屈 強度の確率 分 布を求め る。
(9 >式 め 理論 式は径 厚 比と接 線 係 数お よ び割線係数 の関数で あ る。 前述の降 伏 応 力と硬 化 係 数の確 率 分 布に 基づい て接線係数お よ び
割
線 係 数の算 定を行い,
数 値 積 分 法 を用いて (9
) 式 か ら 局部座屈 強 度の確 率 分 布を求§
粥 玉6B
1.
5 1.
Q O.
5 0 丶 、、
s e
s や \ 。 、 鴇
一
丶ド
−−
、、
e む、
r 、
、
e、、
m、、、、
o跡
こ
τ
蕭
25 50D 〆t75 100Fig
.
7 Predicted IQca1 buckling stlesses compared 哨th test Fig.
9 Max五mum tQ yield s ロ ength latios for stub−
columnsresults showing effec ヒ・f P/t
め た
。
公 称の 降 伏応力F
値 (本論 中で は σMn )で無 次 元化した演 算 結 果と実 験 資 料をFig.10
に示す。
日本 建 築 学会鋼 構造 設 計 規 準z2)(以 下 鋼 構 造 規 準と略す)の径 厚 比制限値 (1/an−
240/2100)にお け るFig,
lo
の確率 分 布か ら, 径厚比 制 限 値上の鋼 管 材で は局 部座 屈 強 度 が 公称の降伏 応 力F
値 を 下 回る確 率が ほ と ん ど ない こ と が分る、Fig.
loに局 部 座 屈 強 度の変動 係 数を併せ て示 す。 変 動 係 数は公 称の無 次 元 化 径 厚 比に対し て若干 変化 し て い る。 (10 )式に基づ いた場 合に は,
(2
),
(4 )式 を (10) 式に代入 し た (11 )式で局部座 屈強 度が 与え られ る。
M
,とM
、,M
、が対数 正規分布に従う と仮 定し,M
、とM, の相関を考慮し たM
,の変 動 係 数 を 求め ると亀
一 ・・
5・・
M
・(
?
)
−
e”°? ・ ・v− …9
・…
(11
)Me
の変 動 係 数は (9) 式に基づ い て求め たFig.10
の変 動 係 数の最 大 値とほ ぼ同じ値で あり, 極 厚 肉の領 域 を 除いて平 均 値は若 干 低い。
つ まり,
(10)式に基づ い た強 度の確 率 分 布は (9)式に基づいた場 合と比 較して 若 干 安 全 側で あるとい え る。
な お, (10)式は対 数を と る と線 形 式で あるか ら,
確 率 変 数 M6 も対 数正規 分 布に 従 う。
(10)式の応 用とし て STK 41材の局 部座屈 耐 力が降 伏 応 力に達さ ない確 率を求め る。 条 件と して は σ皿
くLO ………・
・
…………・
・
……・
・
…・
…
(12 ) σy (10)式に (2),(4) 式を代入 し,
変 動 係 数の算 定に はM2
とM4
の相 関を考慮し てt
’− 1.
84・
M
,(
?)
−
e”z7c・v
−
…5
・・
・
…
!
・3
) 確 率 変 数 M, は M6 と同 様に対 数正規 分 布に従う。 Fig.
11
に (12
)式の条件を満た す (13
)式の確 率を示す。
2.
5 02 5 靠 O \ 巳 O,
O 旻 O \司
b O.
5 COVO.
15O.
100.
05 0 0.
02 0,
04 0.
06 0.
OS O」O O,
12 1!αn=
(σyn/E)・
(D/†)Fig
.
10 Probability distributiens of stub.
colum 【L strengths40
30
20
10
(
鵠 》(
hOv 邑 O と030
40
50
60
70
80
90
100
D!†Fig
.
11 PTobability ef event“
σm<σy’
(STK41 )局 部座屈 強度が降伏応 力を上 回ら ない確率が
2、5
% と な る径 厚 比は52程度で あり,
鋼構 造規 準の 径厚比制限 値.
ヒ (D/t=
100>ではその確 率が30 % 以 上 あ る。
以上 か ら,
鋼 構 造 規 準の径 厚 比 制 限値上 に あ る冷間成 形 鋼 管 材の短 柱 圧 縮 耐 力は,
公 称の降伏応力を十 分に発 揮で き る が,
O.
2%残 留ひず み を与え る応力,
つ ま り実 際の降 伏 応 力に達さ ない と み な してよい。 3.
2 最 大 耐 力 時の変形量 と耐力の低 下性状 (9) 式の強 度理論 式か ら分 岐ひずみ は (14 )式で与 え ら れ る23) 。 強 度 算 定と同様に各 実 験 資 料につ いて分岐 ひずみ ε。の算 定を行っ た。e・
−
9
〜
撫
…・
一 一 ・
・
………・
………
…14・ 分 岐ひずみ εbを 短柱圧縮 試験に お け る最 大耐力 時の ひずみ εm と比較し た結果をFig.12
に示す。Fig.12
に よ る と εb はε”:の下 限に近い こと が分か る。
た だ し,
無 次 元 化 径 厚 比の大き な領 域で は (14 )式の εb に達さ な い実 験 資料が多く あ る。 十 分に塑性 化し得る径 厚比の領 域で は,
εbか ら em まで の ひずみ 量 は大きい。 分 岐ひず み に達し た後の挙 動.
につ いて降 伏 線理論2”
)・
z5 ) に基づ い て考察す る。
冷間成形鋼 管材では ひずみ が十 分 に塑性域まで進展す る と,
その後の応 力上 昇の こう配は 小さい こと か ら,
短柱の最大耐 力後の応 力上昇を無視す る。
降伏条件 式に ミー
ゼスの降伏関数を用いて, 降伏応 力の代わ り に短柱の最 大耐力 σm を 用いる。
つ ま り,
2.
0 5 00
ω 丶 ■ 匂 0,
5 o 0、
05 o,
10 0,
ls 1!α=
(σy !ExP !セ} O.
20 Fig.
12
Local buckLing strains compared with strains at maximum loads lo「 stub.
celumnsσ
k
= σ1
一
σ1σ2+σ茎 た だ し σ1 :軸方 向応力 σt :周 方向応 力 耐 力低下時に局部座 屈は一
波のみ が成長 す る とし て,
軸対 称形の 局 部座屈波 形 をFig.13
の よ うに簡 略 化す る。i
) ヒ ンジ線部の エ ネルギー
散逸率 耐 力 低 下 時 に は’
で囲 ま れ た 部 位 以 外では除 荷し てい る と す る。 つ ま り, と’
の塑性ヒ ンジ線は弾性 体で拘束さ れているこ とにな る。
し た がっ て,
管周方 向 の ひずみ ε,
=0
と し,
塑 性 流 れ 論 を 用い て el ε2∂
f
= ∂f
= λ・ ∂σ1 ∂σt た だ しf
= σ1
一
σ1 az 十諺一
孟 し た がっ て 2a・==±
万
σ・ 板 厚 方 向の応 力 分布 形 状が長 方 形で あるとし て, 単位 長さ当た りの最 大曲げモー
メ ン トMm は臨 一
纛
・
t・・
a・(
1一
甚
n2)
n :am に対する存在軸力の比 線は塑性 域に囲 まれ て いる か らエ ネル ギー
の散逸を 行わ な い とすれ ば, 塑 性ヒ ンジ線のエ ネル ギー
散 逸 率は D‘=
2。
Mm・
π (D − t
)・
θio
面 内 塑 性ひずみ域のエ ネルギー
散逸率 塑 性 領 域に おけるエ ネル ギー
散逸率は,
板 厚 方 向に応 力が生じ な い とし て下式と な る25)。
2.
D・1
=
マ
ぎσ・ ε1+ 葦・+ ε・’
E・’
間 を 塑 性領域と し,
管軸方向の ひずみ速 度El=
0とする。
ま た, 管壁が管の外 側に変 形 する と し,
曲 率 変 化 を 無 視す れば εtは管 径の増 加量で与え ら れ る。 つ まり, 間の管周 方向の ひずみ速 度は■
,
2・
認・
cos θ・
θ e2!
=D −
t 上 式か らDa
、を積分 して 間の 塑 性 域の エ ネル ギー
散 逸率は’
D・
=
▽
ぎ響
孟’
1
:’
・ガ C・S θ゜
θ N≡
n・
σm・
A → ・整
L
σ丶ε1
、
丶澀
ノ
匡
←Flg
.
13 Deformation medel ef local buckling一
64
一
iiD
外 力のエ ネルギー
散 逸 率F
.
ig.
13
を参 照して外 力の散 逸 率は」
Dn=
n・
σ m・
π・
(1)−
t)・
t・
tc・
st【1θ・
θ 以上の算 定に は’
間の長さ1
。が必 要である。
文 献26
)を参 考に (9 )式に おける座 屈 波 長か ら,1。
は一
波 長 分であ る と仮 定し て看
一爾
ξ圭
、の]・/・(・・
… ξ) i・・…………
(15) た だ し ξ=
EIE εe =E
/Es
Ψ= ξ=
1とす ると・
一
誓
・
πr
蘭 涯 画・
…
(15・・
応 カー
ひずみ関 係に実験資料の近 似 結 果を用いて(15) 式から求め た値 と (15 >’
式の 差は最大 3%程 度であっ た。
(15)’
式は文 献 12 )中の実 験 式と ほ ぼ一
致 する か ら,
(15)’
式 を用いて外 力と内 力のエ ネル ギー
散 逸 率 を等し い とすると穿
・・睾
π〜
停
・
sin ・・
n一
毒
(
・ ・s ・’
9
・・一
・)
一
・一 ・
・
……・
(16) また,一
波 長 分の変 形 A とその区 間の平 均ひず みεdは △=lc・
(1−
COS θ), εd=1−
COS θ 分 岐ひずみ ま では座屈変形 を 生 じ な くて,
分 岐ひずみ に達 し た後に面 外の変 形を生じ る とする。 (16)式に お い て最 大 耐 力 時の 条 件で あ る n=1
を満た すひず み を ed、と する。
そ れ らの仮定か ら最 大 耐 力時の ひずみを εe=
εb十εdl…………・
……・
…・
…・
…・
・
………
(17)Fi琴
.
14に (17>式 と実 験資料を比較す る。Fig.
12
とFig.
14を比 較する とFig.
14中の 実験 値の 分散は小さ い。 また,
Fig.
14に よれ ば無 次元化径厚比の 小さ な領 域で実 験 値は (17)式 と平 均 的に一
致し てい る。
しか し,
分 岐ひずみ の理 論 値 と 降 伏 線理論式を 数式モ デルと して 統 計 的 処 理を行うの は応 用が複雑であ り,
その 理 論 値と 実 験 値の誤 差が大きい ので実験 式を与え る。 既 往の 実 験 式z)・
14 }・
21〕に 用い ら れて い る無 次 元 化 径 厚 比 は最大耐力時の ひずみ の説 明変数と して有 効であ る。 無 2ρ 5 Oロ
ω 丶 巨 ω o.
5 0 0.
e5 0.
IO O.
15 020.
1!α=
〔σy/E}・
(Dノ†〕r
Fig
.
14 Predicted strains fQT stub・
cotumns at maximum loadsI
次元化径厚比を用い て強 度の実 験 式 と 同 様に回 帰 を行 う と
鴛
一
・・
・…Ms
(
σyDEt)
−
L39 cov=
0.
167 r=O.
97 ……
…・
・
…………・
(18
) た だ し εy=
σy/E
サン プル数 :76 強度の実 験式と同様に種々 の 回帰モ デルで回帰を行っ た。 し か し,
相 関 係 数 あるい は標 準 偏 差の比較に おいて (18
)式よ りも格 段に優れた回 帰モ デル はない。
(18) 式と実験値の 関 係をFig.
15に示す。
降 伏 線 理 論に基づ いた (16)式は耐 力の低 下性状を表 し てい る。 実 験 資 料では,
耐 力 低 下 領 域におい て最大応 力 σm の.
95倍か ら.
8倍の 区間は直 線と み な せ た。
ま た,
その領 域の低 下こう配が最 も 急で あ る か ら, 耐力低 下域のこう配を (19
)式とする。 (Fig.
16参 照)E
・一
差
詈
一一
゜ ::1fisam
−
・
一 ・
…一 ……・
…
(19) 実 験 資 料の E。をFig,
17 に示す。
また, (10〕式の σy とau に (2
),
(4
)式の平 均 値を用い て antを求め,
そ の am と(16 )式か らE.を算定しFig,
17に実線で示す。
Fig,
17 による と (16) 式は実 験 資 料の耐 力 低 下こ う配 よりも平 均 的に低い値と な る が,
径 厚 比の変化に伴 う耐 力 低 下こ う配の変 化 性 状を表 し て い る。 3020 10 4宀
」 2 δ 丶 ε ω 1 0.
030.
04 0.
1 0,
2 03 0、
4 1/α=〔σy/E)・
(D/†)Fig
.
15 Strains at maximum loads for stub.
columns0 20 0 4
(
関 E り 〉)
品 60一
80
・
黜oo0
1020
30
40
50
60
70
80
D
/†Fig
.
17 Post−
b皿ckling decaying slopes for stub−
columns
4.
中心圧縮柱の耐力 中 心 圧 縮 柱の耐 力は,
短 柱の応 カー
ひずみ関 係を 用い た (20 )式の値と良く一
致して い る7L27L28) 。 π2・
E
‡c・・; λ・
tt
t’
’
’
’
”』
… ’
”… … … … ’
…
(20) た だ し λ :細 長 比 圧 縮 降 伏 応 力と引 張 強 さが公 表 されて い る 実 験資 料s}・
Lη・
29 ト’
111 につ い て応 カー
ひずみ 関 係 を近 似 し,
近 似 結 果に基づい た (20> 式の 理 論 値 σ。
と実 験 値 am を Fig.
18に比 較 する。 な お,
福 本ら 311 は同一
ロ ッ トか ら 作ら れ た多 数 本の試 験 体の実 験を行っ てお り,
個々 の実 験値が 公表さ れて い な い の で,
福 本ら の実 験 資料に関し て は,
同一
細 長 比の試 験 体と素 材 試 験の結 果に平 均 値 を 引用して いる。 Fig.
18に よ る と (20)式の 理 論 値に対する実 験 値の 分 散 が若 干 大 き く な る無 次 元 化 細 長 比 λ’
(1/π・
研
「・
λ)の領 域が あ る。
その分 散には初 期 不 整の影 響や実 験 誤 差ある い は (20)式との不 適 合 性が表れ てい る と考え ら れ る。 し か し,
(20)式は実 験 資 料 を平 均 的 に表して いる。
(20) 式に基づい て局 部 座 屈 強 度の算 定と同 様に数 値 解 析を行い,
中心圧 縮 柱 強 度の確 率 分 布 を求めた。 応 力 σ σ聞 O.
95 σmO,
8σ既 o ε繭 ε Fig,
16 Stress・
strain re】ationships of stub.
columns2
、
0 5 0。
O \ 琶 D0,
5 0.
5 1.
o λ 1.
5 2.
0 Fig.
18 Predlcted buckling stTellgths compared with test results一
ひずみ関 係の 近似に使用 す る降伏応 力と引張 強 さの統 計量 は径 厚比で変化す る。
し た がっ て, 径厚比に よ り中 心 圧縮柱強 度の 確 率 分 布 も変 化す る。
実 験 資 料は径 厚 比 が様々 で あ る が,
径 厚 比が30程 度の 資 料が 多いの でD
/t=30
の演算結果と実験資料を Fig.
19
に比
較す る。
Fig.
19
に よ れば 演 算結果は実 験 資 料の変動を 良くとら えて い る といえ る。
Fig.
20
に高張 力 鋼管 (STK
50
材 相 当 )の実 験 資 料 を 公称 降 伏 応力 (3.
3t /cm2 )で無 次元化して,
STK
41 材の 平均値お よ び 95% 信 頼 限 界 と 比 較 する。
高張力鋼 管 材ではSTK
41 材の平 均 値よ り も低い 実 験 値が多くあ り,Fig.
19と比較して実験資 料と95
% 信頼限 界の関 係も 良 く ない。
つ ま り, 鋼 種に よ り中心 圧縮 柱 強 度の確 率 分 布は変化す る と言え る。
そ れ は,Fig,
18に示 し た 実験 資料に は多くの 高 張 力 鋼 管 が 含 まれ てい るか ら,
2.
o 5 ρ 『 」 b 丶 ε b.
qあ
b \ Ob O.
5 0 0,
2 0.
4 0.
6 0.
8 1.
0 1.
2
1.
4 1.
6 λ’
nFig
.
19 Probability distributions of column s しreng 山s(STK 41) 2
,
0 5 0 象 O \ ∈ O 呈 O \ uO O.
5 0 0.
2 0.
4 0.
6 0,
8 1.
0 1.
2 1.
4 1.
6 λ’
nFig
.
20 Buckling test iesults for co !umns {STK 50>cQ皿paredwith predictions(STK41 )
一
66
− 一
(20)式お よ び応 カー
ひずみ関 係の近 似 方 法が 原 因で は な く,
公 称 値に対 する素 材の性 質が鋼 種によ り変化 す る こと に起因して いる。 高 張 力鋼 管 柱の強 度の確 率 分 布 を 求め るには,
素材に関する実 験 資 料の蓄 積が必 要で あ る。
STK 41材に対し て径 厚 比 を 変 化させ た数 値 積分結果 か ら得た95
% 信 頼 限 界と平 均 値をFig.
21(a)に示す。
ま た,Fig.
21(b
)に変 動 係 数を示す。
径厚 比 と細長比 に よ り95
%信頼限 界, 平均値, 変動 係 数は大き く変化 してい る。
福 本ら4 〕・
31 }は同一
ロ ッ トの鋼 管 を 用い て, 初 期 不 整と残 留 応 力の不 均.
:一
・
性につ いて詳 細な測 定を行D.
ている。
.
その測 定 値に基づいた中 心 圧 縮 柱 強 度の解 析 値 と実 験 値の変 動 係 数は, 無 次 元 化 細 長 比の大 き な領 域 を 除け ば,
Fig.
21(b)に示 し た変 動 係 数の 3割 程 度で あ る。 冷 間 成 形 鋼 管 材の中心 圧 縮 柱 強 度に おける分 散は,
降 伏 応 力と平 均 的な応 カー
ひずみ関係の分 散による影 響が主 で あるとい え る。
既 往の設 計 式に は,
偏 心や初 期 不 整の影 響が元たわみ として考 慮 されてお り,
本 節で は そ の影 響 を考 慮し てい ない。
しか し, 本 節で求めた中心圧 縮 柱 強 度の確 率 分 布 性 状 が 実 験 値 を代 表し得る か ら, Fig.
21 (a)に ECCS35.
, と日本 建 築 学 会 塑 性 設 計 指 針36・
] (AIJ
)の設 計 式 を 示し 至 O \凵
O 2D 1.
5 1.
0 O.
5 0 V501C α O.
10 O.
05 02 0,
4 0.
6
0.
8 亅.
0
12 1.
4 1,
6 λJn (q ) O O,
2 0.
4 0.
6 0.
6 1.
O’
1、
2 1.
4 1,
6 λ’
n (b
)て お く
。Fig.
21(a)によれ ば設 計 値と 95%の下 側 信 頼 限 界との関 係は径厚比 と細長比で変 化す ること が分か る。
つ まり,
それ らの既往の設計式で は,
径厚比と細 長 比によ り安 全 性が変化 す る といえ る。
柱の強 度設 計に径 厚 比の変 化に よる強 度の平 均 値と分 散の変 化を考慮す る の は困 難であ る。 し か し,
設計値を 設定す る安 全 性の照 査段 階では,
その変 化 を 無 視 す ること はで き ない。
設 計 値を与え る た め に は,
初 期不整や偏心 あ るい は断 面 寸 法 等の幾 何 学的な耐力の変動要因 を考慮し な け れ ば ならない。
今後,
幾 何 学 的 因 子 が 強 度の変動に与え る影 響の考察と評 価が 必要であ る。
5.
圧縮と曲げ を受け る部材の変 形能 加藤37】は 短 柱の応 力 上 昇 率の実 験 式 を 用い て, 部 材の 変 形 能 力を解析 的に求め てい る。
加藤の提案を 用い た変 形 能 力の算定結果 は薄 肉鋼 管の実 験 資 料と良く一
致す る が,
厚 肉 鋼 管の実験資料を適切に と ら えてい ない ことを 後に図 示す る。 部材の 変形能力には,
径厚比,
軸力 比,
細長 比,
耐 力 の上昇 率が複 雑に影 響 して いる と考え ら れ る。
そ れ らの 変 数に対して実験資料は不 足 して いる。 そこ で,
実験式 の変数が最 小 限にと ど ま り,
厚肉領域にお け る実験資料 の変形 能 力 を 的 確に表現で き る 実 験 式に つ いて考え て み る。
Fig.22
に示す よ う な載荷 条件で は,
曲 げモー
メ ン ト の最大 と な る 端 部の圧 縮 縁 に局 部 座 屈 が 生 じ耐 力 が低下 す る。
著者らの行っ た実 験19)に よ れば 局部座 屈の波 長は 短柱圧 縮 試 験と ほ ぼ同じで あり,
圧 縮 縁に限れば局 部 座 屈してい る部位以 外の変形 は小さい。
し た がっ て,
圧 縮 側で は曲げ モー
メン トの最 大と な る位置か ら (15
)’
式 の部分のみ が塑性 変形 して おり,
ほ かの 部分は直線を保 つ と仮 定す る。
ま た,
Fig.
22にお け るtc
の 部 分の 変形 量 が短柱の最大耐力 時の変形量 に達す る と耐力低下 をす る と仮定す る。
そ れ らの仮定と曲 げ力のみ を受け る部 材 断 面の中立軸は断 面 中心 を通ると して中 立 軸と最 外 縁ま で の距 離 (P
/2 )を用い れば,
部材で は最大 曲げ耐力時 の塑性 回 転量 傷 はe
.一
警
」
輛ヂ
)趣…・
・
一 ・
一 …一 ……
(21) 百−
〉1L
⊥
VM
Fig
.
22 Test con 〔litions for beam.
columns冷 間 成 形 鋼 管の部 材実験 資料6L191
,
SB)−
c°) に は,
ロー
ル 成形鋼管以 外の鋼 管および鋼 種の不 明確な鋼 管が含ま れ て いるが,
そ れ らの実 験 資 料における素 材の降 伏 応 力は,
STK
41材の 降 伏 応 力の統 計 量と比べ て あ まり差が な い。 降 伏 応 力と εy の計 算に (4)式 を 用い て (18)式 か ら・m
−
・.
28・
(
Dt
)
一
…………・
………・
・
…・
一
(・2) 部 材の弾 性 変形 量 に対して一
波の弾 性 変 形は小さいか ら (21 )式中の εs を 無視し, lcの算 定に (15 )’
式 を用 い て (21),
(22}式か ら近 似 的にe
.・
1・.
7(
?
)
一
…………t・
・
…一 …一 …・
一
(Z3) 全 塑性 状態と し た 場合の中 立 軸の移 動量で軸 力の効果 を評 価するとe
・一
雨論
珂(
亨广
・
・
(24
) ただ し p :軸 力比 (24)式と実 験 資 料の 関係 をFig.
23に示す。
〔24)式 を基に し て回帰モ デル は・
rl
+ 。、説
。/2.
,II
(
新
一・
一 ……・
…・
・
(25・ ただし β。,
β、:実 験 値か ら求め る定数 実 験資料と (24 )式の 関係 を明ら かにす るために,
β1 に (24)の値を 用いた (25 )式の平均 値 と対数 正規 分 布 を仮 定し た95
%信 頼限 界をFig.
23
に示 す。 Fig.
23 に よ れば,
局 部 座 屈 を生 じ る部 分 以 外の 塑性 変形を 無視し て いることか ら, (24 )式は実 験 値と 比較す る と平 均 的 に随分低く, 統計的に も下 限と して良い こと が分か る。 ま た,Fig.
23 の たて軸に対して軸力比の 大 小に よ る実 験値の 変化が少ない の で,
(24),
(25)式におけ る軸 力 の評価は適 切で あ り,Fig.
23
に お け る平 均 値と実 験 資 料との関 係か ら (25
)式 は 回帰モデル と して有 効である とい える。
e.
15 29 0
00
容
啝)
昜 圭 よ 600 O.
03 l l l l l8
L (D−一
・
pくO,
1511
丶・
一
一
….
15 1 0 、 i 丶 MEAN し 1 丶 1 \、
マ
95覧 凵MIT1丶
●o \\ \ e \ \ \ ・7
・
(♀
避
・隻
!
丶 \ 。〜
m 0 10 20 30 40 50 60 70 30 90 100 D/tFig
.
23 Ductility of bearn.
columns showing effect of p/tとこ ろで
,
径 厚比 が60以上の 実 験 資 料は,
最 大 耐 力 が 全 塑性モー
メ ン トに達 して いない ものが多い。 短 柱 圧 縮柱に おいて も局部座 屈耐力が降伏耐力に達さ ない確 率 が高い こ と を明ら かに して い る か ら,
径 厚 比が 60以上 の 実 験 資 料を除い た実 験 資 料につ い て (25)式の定 数 を 求め た。
そ の結果に基づ い て変形 能 力を求め る。 ま た,
現行の 構造 ラ ンクの 寸 法制限は実 験式の 分散を考慮せ ず,
平 均 値に基づ いて規 定さ れて い るlzi・
41} 。 そこで,
変 形能力は (25
)式か ら得た平均値を用い て考 察す る。 まず,
弾 性 変 形 量 θ。は薄肉断面を仮 定す る とMpc・
L
4・
σ y’
L ・
COS (π/2・
P} δeθ・==
T
;
3.
E.
1=
3
.
E.
。.
R た だ し M。c :軸 力 を考 慮 した全 塑 性モー
メ ン ト ∬ :断 面二 次モー
メ ン ト 部 材の長さ は断 面 2次 半 径 (RIV2’
)の倍 率 C で与 えられるとするe 塑 性 変 形 量 θ. に回 帰の結 果 を用い る と.
e皿 508.
3 θe−
cos (π/2・
p}11
十sin (π〆2・
p)1
・
纛
・
(
?)
−
t’
31………・
・
一 …………・
(26
) 部材の変 形 能 力の算 定に は, 部 材 耐 力の上昇 率と耐力 低 下 域の こ う配が必 要で ある]2 )・
41) 。 しか し,
耐 力 低 下域 の荷 重一
変 形 関係が明ら か な実 験 資 料は少ない。そこで,
最大耐力 時 ま で の 変 形で 変 形 能 力 n41)を 算 定す る。
(Fig.
24 を参 照 )・
一
(1
吉
τ)・
篝
…………一 ……・
………・
・
…・
(・・) 部 材の応 力上昇 率 r は 短柱の最 大耐力 am か ら求めら れて お り12},
実験 資料の裏付け19) も あ る か ら (28 )式 を 用い る。
,.
≠
器
)
_
.
.
.
.
.
.,28) 文 ,,、、2)Z
。(・
):軸 力 を考慮 し た塑性 断面係 数 (軸 力比の関数 ) (28)式に (2 ),
(4),
(10
)式の平 均 値を用い て r を求め, その結果と (26 )式と か ら求め た変 形 能 力の算 定結果と実験資料をFig.25
に示す。 ま た,
短柱の応 力 t & Σ \ Σ o 龜 em η+1 冨+t θ/θe Fig.
24 M・
θ relationships of beam・
columns一
68
一
η
2520
15 1・5
0
1020
30
40
50
60
70
60
D
/†Fig
.
25 Ductility factors of beam−
columns上 昇 率 と亀/θe の算 定に加 藤の提 案 3η を用い た変形能力 の算 定 結果 を
Fig.
25に併せ て示す。
た だ し,
(26)式 はC
で変 化す る か ら, 細 長 比 λ(2・C
)に実験 資料の最 大 値よ りも大き な値 を用い て変 形 能 力 を算定してい る。
Fig.
25に よれ ば,
(26)式に基づ いた変形 能 力の算 定 結 果は実 験 値の下 限 値 とな り, 厚 肉 領 域での実 験資料を適 切に評 価 してい る。
つ ぎ に,
各構 造ラ ンク の寸 法 制限41 )に対 す る 考 察 を試 み る。Fig.
25で は降 伏 応 力に統 計量 を用い て い る。 し か し,
塑 性 加 工で変 化し た降 伏 応 力 を 用い るこ と が部材 の変形性 状の評 価にどの よ う な影響 を与え るのか,
つ ま り, 繰 返 し載 荷を受け る部材に対し て 塑性 加工 の影 響を どの よ うに評 価する の か は不 明である。
そこで,
文 献4/ に従っ て降 伏 応 力に公 称の降 伏 応 力のL2
倍の値を 用い た変 形 能 力の算定結 果をFig,
26
に示す。 ま た, 各構 造 ラン ク に必 要 とされ る変 形 能 力 を図中に示す。Fig.
26
に よ れ ば,STK
41材を柱に使用 し た 場 合 に 必 要とさ れ る変 形 能 力 を満た す径厚比は,STK
50
材に対す る寸法 制 限 値4nに相 当してい ること が 分 か る。
冷 間成形 鋼 管 は素 材の性 質 がほかの型 鋼 と 大 き く 異 なっ て お り,
部材の耐力 と変形 性 状が素 材の性 質で変 化 する か ら,
構 造 物の 変 形 性 状に も その 効果 を考慮 し な け れ ばな ら な い。
また,
構 造 物の変 形 性 状やエ ネル ギー
吸 収 能 力を評 価し た上で,
部 材の必 要な変 形 能 力 を設 定し な け ればな ら ない。
本 論では ほ かの型鋼と同一
の基 準で 変 形 能 力を算定してい る が,
冷 間成形 鋼 管の特 殊 性を考 慮する必要が あ ろ う。 6.
結 論 冷 間 成 形 鋼 管 部 材に対す る統 計 的 評 価の結 果を ま とめ る。
(1) 冷 間 成 形 鋼 管の加工後の応 カー
ひずみ関係を降η η
15
01
50
10
20
30
40
50
60
70
80
D/† 15 10 5o
(
o)
fOr
Beom
−
Co
しumns
(
P
=O
.
5
)10 20 30 40
50
60
70
80
D/†(
b
)for
Beams
(
P
=O
)Fig
.
26 Required ductility factors伏 応 力と引 張 強さ時の条 件か ら定 式 化でき, 降 伏 応力 と 引 張 強 さの統 計 量か ら応 カ
ー
ひずみ関 係の確 率分布 を予 測でき る。
(2) 応 カー
ひずみ関 係の確率分布か ら, 局 部 座 屈 強 度と中 心 圧 縮 柱の座 屈 強 度の統 計 量お よび確率分布が予 測できる。
その結 果は実 験資料の変動 を良く と ら えて い る。
中心 圧縮柱の座 屈強度は径厚比の影響を強く受け,
これを 無 視で き ない。
(3) 短 柱 圧 縮 試 験の耐 力 低 下 性 状は,
簡 略 化し た降 伏 線 理 論で説 明で き る。
〔4) 短 柱 圧 縮 材 と 曲 げ柱 材の変 形性状を 表す実験式 か ら変 形 能 力を求めた。
そ の結 果,
現 行の寸 法 制 限 値で は,
各 構 造ラ ン ク に必 要と され る変 形 能 力 を 発揮し得な い可 能 性があることを 明らか に し た。
以上の こと か ら,
冷 間 成 形 鋼 管の耐 力と変 形に関 し て 基本的な 確 率 分布 性 状が明ら かになっ た。 特に,
応 カー
ひずみ関 係の定式 化が成さ れ たこ と は,一
般 論とし て部 材あ るい は構 造 物の 耐 力お よ び変形 性 状を論 じ る た めに 有 効である。
参考 文献 1) 日本鋼構 造協 会標準 委員会:塑性加工 を受け た鋼 材の機 械的性質一
STK 41の 引 張な ら び に圧 縮に対 する機 械 的 性 質一,JSSC,
Vol.
6,
No,
53,
pp.
2−
34,
1970.
32> Kato
,
B.
:Local Buckling of Steel Circular Tubes inPlastic Region
,
Proc.
of the International Colloquiumon Stability Qf Structures under Static and Dynamic
Loads
,
SSRC /ASCE,
Washington D.
C.
,
pp.
375−
391,
亅977,
3 31 加藤 勉,
青木博 文 :電 気 抵 抗 溶 接 鋼 管の ひずみ履 歴 と 残 留 応 カー
短 柱の圧縮試験に お け る見 掛け の応 カー
ひず み関 係へ の影 響につ い て一
, 日本建築学会論文 報告集,
第230号,
PP,
43−
51,
1975.
4 4} 青 木 徹彦,
福 本 瞬士 :小口径 電 縫 鋼 管の統 計 的 材 料 強 度 特 性 と 残 留 応 力 分 布の 評 価,
土 木 学 会論文 報 告 集,
第 314号,
PP.
39−
51,
1981.
105)加藤 勉
,
李 明 宰 :CQIumn Strength of Cold−
FormedSquare and Circular Hollow Sectio皿 Members
,
構 造工学 論 文 集
,
Vol.
31 B,
pp.
135−
142,
1985.
3 6) 加藤 勉,
秋 山 宏,
鈴木弘 之:鋼 管 梁の曲 げ耐 力,
日 本 建 築 学 会 大 会 学 術 講 演 梗 概 集,
pp.
1019−
1020,
1973,
10 7)若 林 実,
石 田 昭, 野 中泰二郎,
西 川一
正 :電 縫 鋼 管 の座 屈に関 する実 験 的研 究一
その 2 座 屈実験一,
日本 建 築 学 会 大 会学術講演 梗 概 集,
pp.
971−
972, 1968.
10 8) 青 木 博 文,
村田耕司 ;構造 用 鋼材の降 伏 点,
引 張 強さ お よ び降 伏 比に関する統 計 的 調 査,
日本建 築 学 会 論 文 報 告 集,
第335号,
pp.
157−
166,
1984.
1g)
Kurobane
,
Y.
,
Makino,
Y.
and Ochi,
K.
;UltimateResistance of Unstiffened Tubular
Joints
,
ASCE,
Jour・
nal of Structural Engineering
,
Vol.
110,
No.
2,
pp
.
385−
400,
1984,
21Q) 山 田嘉 昭 :塑 性
・
粘 弾 性,
培風館,
pp.
21−
24,
1980 11) Kurobane,
Y.
,
Ogawa,
K.
,
Ochi,
K.
and Makino.
Y.
:Local Buckli【Lg of Braces in Tubular K
.
Joints
,
Thin・
Walled Structures
,
Vo1.
4,
pp.
23−
40,
198612) 社 団 法 人 鋼材 倶楽部 ;中低 層 鉄 骨 建 物の耐 震設計法
,
pp.
177−
182,
1978 13) 加藤 勉,
秋 山 宏,
鈴 木弘 之 :軸圧縮 力を受 ける鋼 管 の塑 性局 部座屈 耐 力,
日本 建 築 学 会 論 文報 告集,
第204号,
pp.
9−
17,
1973.
2 14) 鈴 木 敏 郎,
小河利 行,
加 藤 征 宏,
栗 本照彦 :軸圧縮を受 ける高 張 力 鋼 管の強 度 性 状に関する研 究,
日本 建 築 学 会 論文報告 集,
第321号,
pp.
28−
37,
1982.
11 15〕 三井 宜 之,
黒羽 啓 明,
遠 藤 克彦 :管 通しガセッ トプレー
ト継 手の耐 力 と変 形 能 力に関 す る実 験 的 研 究, 構 造工学 論 文 集,
Vor.
31 B,
PP,
143−
156,
1985,
316)Makino, Y
.
,
Kurobane,
Y.
,
Takizawa,
S.
and Yama・
moto
,
N.
:Behavior of Tubular K・
JQin
しs under Com−
bined Loads
,
Proceedings,
Offshore Technology Con−
ference
,
OTC
5133,
]986.
517) Matsumoto
,
T.
,
Yamashita,
M.
,
Murase,
Y,
,
HaradatH
.
,
Hashinaka,
1.
,
Sakarnoto,
S.
and Iida,
T.
:Post
.
Buckling Behavior of Circular Tube Brace underCyclic Loadings
,
Safety Cr正teria in Design of TubularStructures