発達障害研修講座(1)
発達障害とは?
• 認知(物事を考えること)、言語(ことば)、
運動、社会的スキル(生活能力)の獲得に
問題が生じる
• 発達の遅れ、質的なゆがみがある
• 症状が発達期に現れ、成人期まで持続す
る
精神遅滞(知的障害)(MR) 学習障害(LD) 発達性協調運動障害(DCD) 広汎性発達障害(PDD) 注意欠陥多動性障害(ADHD) 目に見えない発達上のゆがみや遅れを発達障害という発達障害の気づき
• 表情? • ことばの遅れ、異常? • 人とのかかわりかた? • 動き(緩慢、多動)? • 身辺自立? • 全体的な遅れ? • 健診で問題を指摘され た? 他の子どもと比べ、 どこか違っている・・・ 先入観にとらわれず、子どもをよく見ることが大切気になる状態と考えられる発達障害
• 落ち着きがなく衝動的である • 人とかかわれず自己中心的 である • こだわりがありコミュニケー ションがとれない • 全体的に発達が遅れている • 学習につまずいている • ことばだけが遅れている • 発音がおかしい ADHD アスペルガー障害、 高機能自閉症 自閉症 知的障害 LD 言語発達遅滞 言語障害 子どもをよく観察し、主となる問題や困難を特定する注意欠陥多動性障害(ADHD)とは
• 不注意 – 不注意、注意の持続の困難 – 聞いていない、物事をやり遂げられない – 順序立てられない、物をなくす、忘れる • 多動 – もじもじする、座っていられない、高いところに上がる – 静かに活動できない、しゃべりすぎる • 衝動 – すぐ答える、順番を待てない – 他人を妨害する ADHDとは自分の行動が抑制できない障害ADHDによく見られる特徴
• ぼんやり、注意散漫タイプ
• キレやすく衝動的なタイプ
• 混合タイプ
声をかけられても気がつかない、話を聞いていない(他のことに注意が むく)、自分の作業より他人のことが気になる、遊びが持続しない、食事 に集中せずに遅い、おもちゃを置き忘れる おしゃべり好きで話に割り込む、集団活動で順番が守れない、おもちゃ の貸し借りが苦手、食べながらもおしゃべり、一定の場所にじっとして いない、すぐに飛び出す、すぐに乱暴する、乱暴なことばづかい ぱっと行動しすぐに別の動きが出る、座っていても指遊び手遊び、 興味が次々に移る、常に動き回りちょっかいを出す、いただきますが待 てない、好きなことには集中する ADHDは一様ではなく、さまざまなタイプがあるADHD見極めのチェックリスト
• 今後の特別支援教育の在り方について(最
終報告)より、判断基準(試案)
– http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/ shotou/018/toushin/030301j.htm• ADHD評価スケール
– DuPaul, et al(1998) 明石書店 日常生活における行動観察が重要広汎性発達障害(PDD)とは
1. 社会性の障害
– 視線が合わない、友達が作れない、喜びを分 かち合えない、他人の気持ちが理解できない2. 行動の特異性(想像力の障害)
– 儀式的行動、常同的な反復行動、こだわり3. コミュニケーションの特異性
– 一方的に話す、独り言、場にそぐわない発言 アスペルガー障害、高機能自閉症(HFA)とは 知的能力が高いPDD 自閉症とは、知的障害のあるPDDアスペルガー、HFAのある子どもの特徴
• 場の空気が読めない(嫌がっているのに気がつかない) • 暗黙のルールがわからない(順番に話す、など) • 思ったことをすぐ口にする(「どうしてハゲてるの?」) • 話が一方的である(自分の興味のある話だけ) • 昆虫の名前、国旗など抜群に記憶力がいい • ひとりで遊んでいることが多い(一人遊び、マニアックな 遊び?) • 変化を嫌う(ものや行為へのこだわりがある) • 急に予定が変更になるとパニックを起こす 能力の著しい偏りから、対人関係、情緒の問題を引き起こす自閉症の子どもの特徴
• 視線が合わない、合わせようとしない
• コマーシャルなど、場に合わない独り言を言う
• ことばがなく、奇声をあげる
• 特定のもの(水、鍵、食べ物など)にこだわる
• 回るもの、光るものに強く関心をもつ
• 人に対する関心が乏しい
• 意味のない空虚な笑いが見られる
• 同じ動きを繰り返す(くるくる回るなど)
知的な遅れや能力の著しい偏りから、社会適応が困難になるPDD見極めのチェックリスト
• 今後の特別支援教育の在り方について(最
終報告)より、判断基準(試案)
– http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/ shotou/018/toushin/030301j.htm• 自閉症幼児チェックリスト(資料)
知的障害(精神遅滞;MR) とは
• 発達や知的能力が全体的に遅れている状態
– 同年齢の子どもに比べて著しく幼い – 同年齢の子どもに比べて著しく手がかかる• 知能指数(IQ)70未満がひとつの目安
• 早生まれや劣悪な養育状態で起こるもので
はない
– 早生まれ、養育の悪さでも遅れはあるが、適切な 環境で追いつくことができる 知的障害 とは発達の全体的遅れ満2歳の子どもは、 この赤で囲まれた ことができる そこで、発達の プロフィールは 平らになる 発達検査をしてみると・・・ 遠城寺式 発達検査
知的障害の子ども は、全体的に発達 が遅れている そこで、発達の プロフィールは 全体的に標準よ り下に位置する
学習障害(LD) とは
• 聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する
能力のうち特定のものの習得と使用に著しい
困難を示す様々な状態
– 身体障害、知的障害などの障害がない• 医学的には、読み障害、書字障害、算数障害
などが知られている
LD とは知的な遅れのない学習困難 教科学習が始まってみないとわからないことが多いLDによく見られる特徴
• 靴などの左右をよく間違える
• 一対一で話すと理解できるが、集団の中での
理解が困難
• はさみなどの道具の使い方が未熟
• 不器用で運動がぎこちない
• 遊びのルール、状況の理解ができない
• 整理整頓が苦手
• 語彙が少ない・名前が出てこない・記憶力が
弱い
能力の偏りから、学習や生活への適応の問題を引き起こすそこで、発達のプロ フィールは上と下の差 が大きく、波打っている このことを 「発達(認知)の偏り」と いう 発達障害の子どもは、 おおむね標準なのだが、 できない項目があったり、 年齢よりできる項目があったりする 認知の偏り
特異性言語障害
• 定義:ことばを話すことの遅れ、ことばを話す
ことと聞いて理解することの遅れがあり、コ
ミュニケーションに支障をきたす状態
– 知的障害、自閉症、LDなどの障害ではない• よく見られる様子
– ことばの遅れ、語彙の少なさ – ことばの一部だけ言う、言い誤りが多い – 質問に答えられない、理解できることばが少ない 特異性言語障害とは、コミュニケーションの困難さ言語障害(音声機能の障害)とは
• 音声や構音(発音)、話し方の障害
– 脳性まひや聴覚障害でも起こる• 音声障害(機能性、器質性、運動障害性)
– 「からす」が「たらす(tarasu)」などの発音の歪み – 全体的に発音が不明瞭• 吃音(話し方のリズムの障害)
– はじめの音が出なかったり、一定のリズムで話せ ない(「ボ、ボ、ボクネ・・・」のような言い方) 言語障害とは、話し方(スピーチ)の障害二次障害
ADHD ODD (反抗挑戦性障害) CD (行為障害) アスペルガー 障害虐待
二次障害を引き起こす原因虐待を受けている子どもの様子(杉山,2007)
反応性愛着障害とは
• 生後五歳未満までに親やその代理となる人と
愛着関係が持てず、人格形成の基盤におい
て適切な人間関係を作る能力の障害
• 二つの群
– 抑制型:他者に対して無関心。PDDに類似 – 脱抑制型:部分的な愛着関係の状態に取り残さ れ、他者に対して無差別に薄い愛着を示す。 ADHDに類似 資料(表) 予後 自制能力の欠如 人間関係構成能力の障害子どもを虐待から守る五か条
1. 「おかしい」と感じたら迷わず連絡(通告)を
2. 「しつけのつもり」は言い訳
3. ひとりで抱え込まない
4. 親の立場より子どもの立場
5. 虐待はあなたの周りでも起こり得る
厚生労働省(2005)必要な情報収集
• 知的能力、認知の偏り:知能検査
• 発達の程度:発達検査、生活能力検査
• 問題行動
• 人間関係
WIPPSI,WISC-Ⅲ、K-ABC,K式知能検査、田中ビネー 遠城寺式、津守式発達検査、社会生活能力検査 行動観察 問題行動の内容、実態 他者とのかかわり方、ソーシャルスキル 関係者からの聞き取り 生育歴、行動様式の実態 交友関係、他者理解など 信頼できる必要最小限の客観的なデータ収集行動観察
• どんなときに
• どんな問題が(起きて)
• どう対応したか
• その効果は?
場面(場所)、設定、かかわり方、ことば、人、状況 泣く、他害行動、自傷行為、暴言、無関心(無反応) 叱る、無視、反撃する、逃げる、ほめる(?) やめる、エスカレート、違う問題発生、謝る、無視行動観察のまとめ
条 件 行 動 結果への対応 ・どんな活動の時間か ・場所、設定 ・誰が、どんな働きかけ をしたのか ・対象の子どもの特徴 ・教師の働きかけ ・気になる行動はどうい う行為かを具体的に ・問題と考えられる行動 のみを書くこと ・その意味(何を訴えた いのか)を考えること ・左の行動に対して、教 師(子ども)はどう対応し たのか(反応したのか) ・そしてその結果はどう だったのか ひとつの問題行動について分析することで、 どのように対応するか、きめることができる障害別行動観察のポイント(私見)
• ADHD
• アスペルガー障害
• 知的障害
→ 全体的な遅れ
誰かに動かされているような感じ、本人の気づき、 さまざまな場面で 言語能力の高さ、記憶力の良さ、精神年齢の幼さ 複数の目で、さまざまな場面で観察し、 検査結果もあわせて判断する保護者からの聞き取り
• 家庭の様子
• 保護者の育児に対する考え
• 園の方針への意見
• 父親のかかわり
事実を尋ねる。園での様子との比較。事情聴取ではない 保護者の考えを理解する、感情を受け入れる 存在感、夫婦のコミュニケーション、子どもとの遊び方 子どもに関する客観的な情報 親の願いを丁寧に聞き取ること相談機関
県教育センター
教育事務所(専門相談員)
市町村教育センター
特別支援教育サポートセンター(新潟市)
特別支援学校
児童相談所
小児医療センター、精神医療センター
発達障害者支援センター
障害者就業・生活支援センター
困ったことは気軽に相談できます大切なこと:支援すること
医学的診断 治 療 子どもが抱える困難さの把握 特別な教育的支援 よりも よりも 何の障害? ルールがわからない集中できない、 保育園(幼稚園)、家庭こそが中心 に支援を! 必要な情報収集 子どもの困り感を見つけ支援の早急な提供長澤研究室
http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/