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GIS による道路網ネットワーク及び属性データの作成方法と 道路閉塞予測への適用 Method of Creating Network and Attribute Data of Roads and Its Application to Prediction of Street-blockade 1

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(1)

GIS による道路網ネットワーク及び属性データの作成方法と

道路閉塞予測への適用

Method of Creating Network and Attribute Data of Roads

and Its Application to Prediction of Street-blockade

源貴志1 ・成行義文2 ・天野健3・平尾潔4

Minamoto Takashi, Nariyuki Yoshifumi, Amano Takeshi, and Hirao Kiyoshi

1.はじめに 道路は,人間が社会・経済活動を営む上で最も重要 な交通基盤施設の 1 つであり,きわめて多面的な機能 と役割を持っている.これは,防災対策においても同 様のことが言える.兵庫県南部地震では,多くの建物 が倒壊し,幅員の狭い道路では閉塞が多発した.この 道路閉塞により,十分な道路網ネットワークの確保が できず,震後の活動に大きな支障をきたす結果となっ た.このことから,都市の防災計画を検討する際には, 都市の道路網ネットワークにおける震後の活動への貢 献度や道路閉塞の影響について考慮する必要があると 考えられる. 本研究では,道路橋の耐震補強優先順位の決定,避 難場所の妥当性の検討ならびに道路閉塞防止対策等の 震前対策計画策定のための支援ツールの開発のための 基礎的研究として,GIS1)(地理情報システム)によ りデジタル地図から道路網ネットワークならびに道路 属性(幅員,沿道建物数)等の基本データを効率よく 生成する手法について検討するとともに,これらのデ ータを用いた道路閉塞予測システムを構築した. 2.道路閉塞予測システムにおける GIS 追加機能 本研究で用いた GIS ソフトの標準機能は,表示機能, 簡単な解析機能,簡単なデータベース検索機能であり, ネットワーク解析のための解析機能は標準機能として 含まれていない.そこで,本研究では道路網ネットワ ークの閉塞予測を行うために必要となる対象地区の道 路網ネットワーク及び属性データ作成のためのモジュ ールの作成を行い GIS に追加した.図-1には本研究 で作成したモジュールと道路閉塞予測のための解析シ ステムとの関係が示されている.解析システムの流れ として,まず評価対象地区を選定し,次にデジタル地 抄録:本研究は,道路網ネットワークの震前対策策定支援ツール作成のための基礎的研 究として,GIS によりデジタル地図データから道路網ネットワークならびに道路幅員, 沿道建物数,ノード人口等の属性を自動的に生成する手法について検討したものであ る.本法により各データ作成のための時間を大幅に短縮することが可能になった.また, 作成したそれらのデータを用いた GIS による各リンクの閉塞確率の自動算定システム を構築し,徳島市佐古地区に適用してその妥当性を確認した.

Abstract: As a basic study on establishment of decision support tools for pre-earthquake

countermeasure of road network, a method of creating data of road network and attributes of road, such as street width, roadside building and node population, from digital map data by GIS was examined in this study. It was found that time required for creating data can be reduced significantly by using this method. In addition, prediction of street-blockade of Sako district in Tokushima City was carried out using GIS with the data obtained by the method proposed here

and it became clear that this method was very applicable.

キーワード: GIS,道路網ネットワーク,道路幅員,沿道建物,人口,道路閉塞

Keywords : GIS, road network , street width, roadside building, population, street-blockade

1 : 学生員 徳島大学大学院 工学研究科 建設工学専攻 (〒770-8506 徳島県徳島市南常三島町 2 丁目 1 番地) 2 : 正会員 博(工) 徳島大学大学院 助教授 ソシオテクノサイエンス研究部 エコシステムデザイン部門 (〒770-8506 徳島県徳島市南常三島町 2 丁目 1 番地,Tel :088-656-7326) 3 : 非会員 (株)インフォマティクス 4 : フェロー 工博 徳島大学大学院 教授 ソシオテクノサイエンス研究部 エコシステムデザイン部門 Ⅰ−15 土木情報利用技術論文集 Vol.15,127-138,2006

(2)

図と GIS に追加したモジュール(トポロジ構築機能, 道路幅員算定機能,沿道建物数算定機能,人口配分機 能)を用いて評価対象地区の道路網ネットワークと属 性データ(道路幅員,沿道建物数,人口)を作成する. そして,作成した道路網ネットワークと属性データに 道路閉塞モデルとロット数算定機能を適用し評価対象 地区の道路閉塞予測を行う. 3. 道路網ネットワークの作成 一般に道路網ネットワークは,図-2に示すように 道路区間をリンク,交差点をノードとし,それぞれ番 号をつけ,リンクとノードの接続関係(トポロジ)等 のデータを持つ.また,道路網ネットワークの作成に は多大な労力を必要とするため,簡単に道路網ネット ワークを作成し,かつ,様々な地区に適用することを 考慮し,全国各地を網羅している国土地理院作成の数 値地図 2500(空間データ基盤)を用いた. 図-3には道路網ネットワークの作成手順が示され ている.まず,数値地図 2500 の道路中心線を道路網ネ ットワークとする.ここで,図-4(a),(b)に示すよ うな同一のノードを起点・終点とするような環状リン クや,他のリンクと同じ起点及び終点を持つリンク等 地区人口データ 対象地区の選定 沿道建物数 道路幅員 人 口 デジタル地図 道路閉塞予測 ネットワークデータの作成 属性データ 道路網ネットワーク トポロジ構築機能 沿道建物数算定機能 道路幅員算定機能 ロット数算定機能 人口配分機能 図-1 道路閉塞予測システムの流れとデータ生成の為の追加機能 :道路中心線(リンク) :交差点(ノード) 図-2 道路網ネットワークの構成 道路中心線 本研究で作成したトポロジ構築機能 を適用 数値地図2500(空間データ基盤) 道路網ネットワーク 道路網ネットワークとして 扱うための処理を行う 必要回数繰り返す 本研究で作成した孤立地区抽出機能 を適用 道路網ネットワークとして 扱うのに問題がない No Yes 図-3 道路網ネットワーク作成フロー

(3)

は,ネットワーク解析の際に無視されるため何らかの 工夫が必要である.また,図-4(c)のような pseudo 〈擬似〉ノードは,数値地図 2500 のメッシュ状に区切 られたデータを接合した際の,リンクの接合部に発生 する.このため,本来交差点ではない場所に作成され ている.ネットワーク解析の際には考慮する必要が無 いので,pseudo ノードの削除を行う.次に,トポロジ 構築機能を用いてノードを生成し,各リンクの接続関 係を作成する.ここで,本研究で作成したトポロジ構 築機能とは,図-5に示すように各リンクの両端に対 してノード(交差点)を生成するとともにネットワー クの各リンクの接続性(トポロジ)を作成する機能で ある.そして,トポロジ構築機能によりノードの生成 及びリンクの接続関係が作成された道路網ネットワー クに対しての図-4のような箇所がないか繰返し確認 し,なくなれば道路網ネットワークの完成である. 4.属性データの作成 対象地区における道路閉塞予測のために必要となる 道路幅員,沿道建物数,人口の各属性データの作成を 行う.これらは,本研究で GIS に追加した道路幅員算 定機能,沿道建物数算定機能,人口配分機能をそれぞ れ用いて行うが,以下にその各算定方法を示す.なお,道 路閉塞に関与する他の要因として,階高,構造ならびにセ ットバック長等が考えられるが,本研究では大半の建物が 木造 2 階建でかつ道路際に並ぶような地区を想定してい るため,それらの要因は無視することとした.ただし,本章 2節で述べるように,セットバックの大きな建物は沿道建 物としてカウントしないため,セットバックの影響は間接的 に考慮されていると考えることもできる. (1)道路幅員算定法 道路ネットワークの解析に際して,道路幅員は最も 重要なデータの 1 つであるといえる.一般に,道路幅 員データは各庁や各市役所で管理されている道路台帳 に記載されている.しかし,実際には都市における道 路は,その路線規模に応じて管轄が異なり,管理機関 ごとに管理されており,またそれらのデータはデータ ベースとしては提供されていないため,GIS で活用す るのは困難な状況にある.一方,市販されているデジ タル地図においても詳細な道路幅員は含まれていない. 以上のことから GIS において道路幅員データを作成す (a) 環状のリンク (b) 起点・終点が同じリンク (c) pseudo (擬似)ノード 図-4 道路網ネットワーク中の修正箇所

e

f

c

b

a

d

4 2 1 3 5 6 リンク 始点 終点 a 1 2 b 2 4 c 3 1 d 4 3 e 4 6 f 4 5

e

f

c

b

a

d

ノードの発生と接続性の入力を同時に行う 図-5 トポロジ構築機能

(4)

る際は,現地調査を行うことが一般的になっている. しかし,道路網ネットワークの規模によっては膨大な 時間と労力が必要となる. そこで本研究では,3章で作成された道路網ネット ワークのリンク(道路中心線)と NTT ネオメイト作成 の GEOSPACE2)の道路輪郭線から道路幅員算定機能を 用い,道路幅員の算定を試みた.図-6は,道路幅員 算定までのデータの流れを示したものである.また, 図-7に示すように,リンクに対する法線と道路輪郭 線の交点間距離で最小の値を道路幅員とした. 図-8には道路幅員算定フローについて示している. まずリンク i に対して一定の距離ごとに両側に向けて n 本の法線を作成する.そして,法線 j と道路輪郭線 における 2 つの交点の距離 Xij を全ての法線{j=1,n(n; 法線数)}に対して求める.そして,{Xij;j=1,n}min を与えるものをリンク i の道路幅員とする.同様に全 てのリンク{i=1,m(m;リンク数)}に対して道路幅員を 算出する.そして,本研究で作成した道路幅員算定機 能を実際に GIS で使用した例を図-9に示す.また, 図-10には図-9において各リンクの抽出された 幅員に基づいて各リンクをバッファ処理したものであ る. (2)沿道建物数算定法 本法では,道路閉塞予測の際に沿道建物数を必要と する.GIS において沿道建物数データを作成する際に は,道路幅員と同様に現地調査をし,データ入力を行 うことが一般的である.しかし,道路幅員と同様に道 路網ネットワークの規模によっては,膨大な時間と労 力を必要とする. リンク(道路中心線 ) 道路輪郭線 本研究で作成した道路幅員算定機能 を適用 作成した道路網ネットワーク GEOSPACE( ジオスペース) 各リンクの道路幅員 :入力データ 図-6 データフロー(道路幅員算定) 最小の距離=道路幅員 :道路中心線(リンク) :交差点(ノード) :道路輪郭線 :リンク i に対する法線 :法線と輪郭線の交点 リンク i 図-7 道路幅員算定イメージ 全ての リンク{ i =1, m (m :リンク数)}に対して 道路幅員を算出 No { Xi jj =1, n }min をリンク i の道路幅員とする リンク i に対して一定の距離ごとに 両側に向けてn 本の法線を作成する. Yes 終 了 開 始 法線 j と道路輪郭線の2つの交点の距離Xi jを全て の法線{ j =1, n (n :法線数)}に対して求める 図-8 道路幅員算定フロー

(5)

そこで,本研究では,3章で作成された道路網ネッ トワークのリンク(道路中心線)と GEOSPACE の建 物の形状を示した建物ポリゴン及び4章1節で算定し た道路幅員から沿道建物数算定機能を用い,沿道建物 数の算定を試みた.図-11は,沿道建物数算定まで のデータの流れを示したものである.沿道建物数の空 間検索手法としては,一般的に GIS のバッファ機能を 用いて空間検索を行うが,図-12に示すように対象 リンク以外の沿道建物も検索される.そこで本研究で は,図-13に示すようにリンクに対する法線を用い た空間検索から沿道建物数の算定を試みた. 図-14は沿道建物数算定フローについて示してい る.まずリンク i に対して一定の距離(本研究では 1m とした)ごとに両側に向けて,リンク i の道路幅員に 0 10 20 40 60 80 100m

x

1:1000 凡例 法線と輪郭線との交点 リンクに対する法線 道路中心線(リンク) 交差点(ノード) 道路輪郭線 図-9 算定機能使用例 0 10 20 40 60 80 100m

x

1:1000 凡例 道路中心線(リンク) 交差点(ノード) 道路輪郭線 バッファ 図-10 算定結果 道路中心線 建物ポリゴン 本研究で作成した沿道建物数算定機能 を適用 作成した道路網ネットワーク GEOSPACE( ジオスペース) 各リンクの沿道建物数 作成した道路幅員 データ :入力データ 図-11 データフロー(沿道建物数算定) リンク i :道路中心線(リンク) :交差点(ノード) :検索された沿道建物 :リンク i のバッファ領域 道路幅員/2 + セットバック 図-12 沿道建物の空間検索イメージ(リンクのバ ッファを用いた場合) リンク i :道路中心線(リンク) :交差点(ノード) :検索された沿道建物 :リンク i に対する法線 道路幅員 セットバック セットバック 図-13 沿道建物の空間検索イメージ(リンクの法線 を用いた場合)

(6)

セットバック(本研究では建物ポリゴンと交わるよう にするため 6m とした)を足した長さの法線群を作成 する.そして,法線群 j に接している建物ポリゴンを 空間検索し,そのときの検索数をリンク i における沿 道建物数とする.同様に全てのリンク{i=1,m(m;リ ンク数)}に対して沿道建物数を算出する. (3)人口算定法 震後における最も重要な交通として,避難者や緊急 車両の交通が挙げられる.このことから,ネットワー ク解析を行う際に人口を考慮することは非常に重要で ある.また,将来ミクロ的な避難や救急活動のシミュ レーションの導入を視野に入れているため,道路網ネ ットワークの交差点(ノード)に対して人口を与えた. 以上のことから,本研究では GIS を用いた地区人口の 各ノードへの配分法を検討し,各ノードの人口を算定 した.以下に地区人口の各ノードへの配分法について 示す. 本研究で検討した GIS を用いた地区人口配分法は, 町丁別人口データ(一般には国勢調査や各市町村など で公開している),行政区域ポリゴン(数値地図 2500), 建物ポリゴン(GEOSPACE)及び3章で作成された道 路網ネットワークの交差点(ノード)から,人口算定 機能を用い各ノードの人口の算定を試みた. 全ての リンク{ i =1, m (m :リンク数)}に対して 沿道建物数を算出 No リンク i に対して一定の距離ごとに両側に向けて 長さがリンクi の道路幅員+セットバックの法線群を 作成する. Yes 終 了 開 始 法線群 j に接している建物ポリゴンを空間検索しそ のときの検索数をリンク i の沿道建物数とする 図-14 沿道建物数算定フロー 道路網ネットワーク 行政区域(町丁目別)polygon 建物polygon 数値地図2500(空間データ基盤) デジタル地図 「GEOSPACE」 町丁目別人口 データ 交差点(ノード)point :入力データ 各建物の住居者数 各ノードの人口 図-15 データフロー(人口算定)

(7)

図-15に各ノード人口を算定するまでのデータの 流れを示している.まず,町丁別人口を対象地区の行 政区域ポリゴンに配分する.次に,行政区域ポリゴン に配分された人口を行政区域ポリゴン内の全ての建物 ポリゴンに配分し,居住者数を決定する.そして,居 住者数を最寄りのノードに配分し各ノードの人口を決 定する.図-16は各ノードへの人口配分フローを示 している.まず i 丁内にある各建物の居住者数を決定 するために,i 丁における建物 1 棟当りの居住者数 Pi を次式により算出する. i i i

B

X

P

=

(1) ここに,Xi:i 丁の人口,Bi:i 丁内の建物棟数である. 図-17に示すように i 丁内にある各建物の居住者 数は,簡単に算定するために建物の階数や床面積に関 係なく全て同じと仮定し,i 丁内にある各建物の居住 者数を Pi とする.同様に全ての町丁{i=1,l(l;対象地 区内の町丁数)}の建物居住者数を求め,各建物の居住 者数を決定する.次に,図-18に示すように各ノー ドの人口を決定するために,各建物に対する最寄りの ノードを決定する.本研究では地図上で沿道にない建 物(図-17中の太枠の建物)も考慮した対象地区内 の全ての建物に対して簡単に最寄りのノードを決定す るために,建物の重心とノードまでの直線距離を用い て最寄りのノードを決定する.つまり,建物 j の重心 からノード k までの直線距離 Xjkを全てのノード{ k =1, n(n;ノード数)}に対して求め,{Xjk;k =1,n}min を与 える場合を建物 j の最寄りのノードとする.また,建 物 j の居住者は最寄りのノードへ移動するとし,建物 j の居住者数をそのノードに与える.同様に全ての建 物{ j =1,m(m;建物棟数)}に対して最寄りのノードを 決定し各建物人口をノードに与え,各ノードの人口を 算定する. 全ての 建物{ j =1, m (m :建物棟数)}に対して 最寄りのノードが決定 No { Xj k;k =1, n }min を与える場合を 建物 j の最寄りのノードとする 建物 j の重心からノード k までの直線距離 Xj k全てのノード{ k =1, n (n :ノード数)}に対して求める Yes 終 了 最寄りのノードに対して建物 j の居住者数を与える 全ての町丁目 { i =1, l ( l :対象地区内の町丁目数)} の建物居住者数が算出 No 式(1)より i 丁における建物1棟あたりの 居住者数 Pi を求める Yes 開 始 i 丁内にある各建物の居住者数を Piとする 各建物の住居者数の算定 (図-17参照) 各ノードの人口の算定 (図-18参照) 図-16 人口配分フロー 行政区域(町丁目) 建物 交差点(ノード) 道路中心線(リンク) 図-17 行政区域ポリゴンへの人口配分イメージ 建物 交差点(ノード) 道路中心線(リンク) 図-18 最寄りのノードへの人口配分イメージ

(8)

図-19は行政区域(町丁別)から建物ポリゴンへ の人口配分を GIS で解析した例である.図中の各建物 居住者数は,行政区域ごとの人口データと各行政区域 内の同色建物数を式(1)に代入することで求められ る.また,図-20には各建物に対する最寄りの交差 点(ノード)を GIS で求めた例を示していて,最寄り のノードが同じ建物は同色で表している. 5.道路閉塞確率算定法 本研究では,対象地区における道路閉塞を考慮した ネットワーク解析を行うために,建物倒壊を原因とす る閉塞モデルに基づいた閉塞確率の算定を行う. 震後の諸活動を妨げる主な原因の 1 つは建物倒壊に 伴う道路閉塞である.兵庫県南部地震では,道路幅員 が 4m 未満の道路においてはほぼ全てにおいて道路閉 塞が発生し,一方道路幅員が 8m を越える道路におい ては,自動車の通行までほぼ可能であった.このこと より本研究では,道路幅員 4m と 8m を基準値として 設定し,4章1節で算定した道路幅員を 4m 未満,4m 以上~8m 未満,8m 以上の 3 つに分類し,閉塞確率算 定モデルを検討した.この際,安全側での検討を行う ために,対象とするすべての建物を木造建物と仮定し, 検討を行った.図-21は各リンクの閉塞確率を算定 する際の道路幅員分類とそれに対応する閉塞確率算定 モデルとの対応を示している.道路幅員 4m 未満につ いては閉塞確率算定モデル 1,道路幅員 4m 以上~8m 未満については閉塞確率算定モデル 2 に基づき閉塞確 率を算定し,道路幅員 8m 以上については全ての道路 が閉塞しない(閉塞確率 0%)とした3) 次に,各閉塞確率算定モデルについて説明する.前 述のように兵庫県南部地震では,道路幅員 4m 未満の 道路はほぼ全てにおいて道路閉塞が発生したことが確 認されている.しかし,本研究では道路閉塞に大きく 影響を及ぼすリンクの属性である沿道建物数が少ない 道路も対象にしているため,必ず道路閉塞が発生する とは限らない.そこで道路幅員 4m 未満については, 図-22に示す閉塞確率算定モデル 1 を適用し,道路 の片側の建物が倒壊した場合に道路閉塞が発生すると し,式(2)を用いて閉塞確率 P を算定した.

( )

%

{

1

(

1

)

}

100

1

=

×

+m l

r

P

(2) ここに,l,m:沿道建物数(4章2節参照),r:老朽建物割 合である.また,老朽建物は,昭和 56 年以前の木造建物 とし,建物倒壊確率は老朽建物割合と等しいとする.道路 幅員 4m 以上~8m 未満の道路については図-23に示 0 20 40 80 120 160 200m

x

1:2000 凡例 行政区域(町丁目) 図-19 行政区域内の建物ポリゴンへの人口配分例 0 20 40 80 120 160 200m

x

1:2000 凡例 交差点(ノード) 図-20 各建物ポリゴンの最寄りのノードの検出例 閉塞確率算定 モデル1を適用 閉塞確率算定 モデル2を適用 全て閉塞しない (閉塞確率0%) 道路幅員 4m未満の場合 道路幅員 4m以上~8m未満の場合 道路幅員 8m以上の場合 図-21 各道路幅員に対する閉塞確率算定モデルの対応関係

(9)

す閉塞確率算定モデル 2 を適用し,道路の両側の沿道 建物が突合せ倒壊した場合にのみ道路閉塞が発生する とし,式(3)を用いて閉塞確率 P を算定した.

( )

%

{

1

(

1

2

)

}

100

2

=

×

n

r

P

(3) ここに,r:老朽建物割合,n:建物が突合せの関係にあ るロット数である. しかし,上記で示した閉塞確率算定モデル 2 を適用 するには各リンクにおけるロット数が必要であるため, 4章2節で用いた沿道建物数算定機能を拡張し,各リ ンクのロット数を算定する機能を作成した.図-24 はリンクにおけるロット数の算定イメージを示してい る.閉塞確率算定モデル 2 は沿道建物が突合せ倒壊し た場合を閉塞とするので,図-24の上図に示す建物 群中で突合せの関係にある建物を閉塞対象沿道建物と し,図-24の下図に示すようにロット数のカウント を行った.なお,緑枠の建物のように突合せの対象と なる建物が複数ある場合には,閉塞確率算定モデル 2 に適用させるために分割してカウントを行った. 6.モジュール及び道路閉塞確率算定法の適用例 本研究で作成したモジュール及び道路閉塞確率算定 法の適用例として,図-1の流れに沿って図-25に 示す徳島市内の佐古地区(約 3km2)を対象地区として 適用した. まず,対象地区である佐古地区の道路網ネットワー クを作成する.ここでは,2章で示した道路網ネット ワークの作成手順により,図-26に示すようなリン ク数 647,ノード数 468 よりなる道路網ネットワーク を作成した. そして,この道路網ネットワークに,本研究で作成 した機能を用いネットワーク解析に必要とされる属性 データ(道路幅員,沿道建物数,人口)の作成を行う. まず,道路幅員の算定から行う.図-27には4章1 節で示した道路幅員算定法を用いて算定した各リンク の道路幅員が示されている.図より,この地区を横断 している幹線道路を中心に外側にいくほど道路幅員が 狭くなっていることが分かる.次に沿道建物数の算定 を行う.図-28には4章2節で示した沿道建物数算 定法を用いて算定した各リンクの沿道建物数が示され ている.図より,沿道建物数が 15 以下のリンクが半数 以上を占めていることが分かる.図-29には4章3 節で示した人口算定法を用いて算定した各ノードの人 口が示されている.ここで,本研究では町丁別人口デ ータとして徳島市役所ホームページ4)で公開されてい る町丁別人口を用いた.このデータは住民登録データ であり,本研究ではこのデータを徳島市の夜間人口と し,各ノードに人口を配分した. 道路閉塞 m 軒 l 軒 :道路中心線(リンク) :交差点(ノード) :倒壊建物 図-22 閉塞確率算定モデル 1 (道路幅員が 4m 未満) 1ロット 道路閉塞 通行可 n ロット :道路中心線(リンク) :交差点(ノード) :倒壊建物 図-23 閉塞確率算定モデル 2 (道路幅員が 4m 未満 8m 以上) 計 6ロット 駐車場等空きスペース モデルに適応するために下図のように分割してカウントする :道路中心線(リンク) :交差点(ノード) :突合せの関係にある建物 図-24 ロット数算定イメージ

(10)

次に5章で示した道路閉塞確率算定法を佐古地区の 各リンクについて適用し,道路閉塞確率の算定を行う. この際,老朽建物割合として,徳島県地震動被害想定 調査報告書(概要版)5)より徳島市の老朽建物割合と して昭和 56 年以前の値を用いた.図-30はその算定 結果を示している.これらの結果は,現地踏査により, 比較的無理のない結果である事が確かめられた.また, 文献 6)を参考に,閉塞確率 40%以上で道路閉塞が発 生すると仮定すると,道路幅員が 4m 未満の道路の閉 塞割合は約 89%,道路幅員が 4m 以上 8m 未満の道路 の閉塞割合は約 51%,総合的な道路の閉塞割合は約 58%である. 0 5001,000 2,000 3,000 4,000 5,000m 佐古地区

x

図-25 手法適用地区(徳島市佐古地区) 0 100 200 400 600 800 1,000m

x

凡例 ノード リンク 1:8000 図-26 道路網ネットワーク (リンク数 647、ノード数 468) 0 100 200 400 600 800 1,000m

x

凡例 ノード リンク 道路幅員(m) 2未満 2-4 4-6 6-8 8-10 10-15 15以上 1:8000 図-27 道路幅員

(11)

0 100 200 400 600 800 1,000m

x

凡例 ノード リンク 沿道建物数(棟) 0 1 - 5 6 - 10 11 - 15 16 - 20 21 - 25 26 - 30 1:8000 図-28 沿道建物数 0 100 200 400 600 800 1,000m

x

凡例 ノード 人口 0 - 14 15 - 33 34 - 52 53 - 76 77 - 130 1:8000 図-29 各ノードの人口

(12)

7.おわりに 本研究では,GIS によりデジタル地図データから道 路網ネットワークならびに道路幅員,沿道建物数,ノ ード人口等の属性データを自動的に生成する手法を開 発した.本手法によりデータ作成のための時間を大幅 に短縮することが可能になった.また,作成した道路 網ネットワーク及び属性データを用いて GIS による道 路閉塞確率の自動算定が可能となった.本手法の徳島 市佐古地区への適用結果より,本システムは道路網ネ ットワークの規模の如何にかかわらず適用可能な汎用 性の高いシステムであると考えられる. 参考文献 1) ESRI ジャパン株式会社:ArcMap ユーザーズ・ガイド, 2004 年. 2) NTT ネオメイト四国:デジタル地図「GEOSPACE」レベル 2 (徳島県),2004 年. 3)都市防災実務ハンドブック編集委員会:都市防災実務ハ ンドブック 震災に強い都市づくり・地区まちづくりの 手引き,2005 年 2 月. 4) 徳島市役所ホームページ:統計資料(人口・世帯数), <http://www.city.tokushima.tokushima.jp/index.html >,(入手 2006.1). 5) 徳島県:徳島県地震動被害想定調査報告書(概要版), 2005 年 3 月. 6) 福井,西川,成行,平尾:兵庫県南部地震時の木造建物倒 壊長の統計分布とそれを用いた街路閉塞予測,土木学会四 国支部 第 10 回技術研究発表会 講演概要集,pp.70-71, 2004 年 5 月. 0 100 200 400 600 800 1,000m

x

凡例 ノード リンク 道路閉塞確率(%) 0 - 20 20 - 40 40 - 60 60 - 80 80 - 100 1:8000 図-30 閉塞確率算定結果 (2006.5.19受付)

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