<論文>数学科における授業スタイル尺度の開発
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(2) 数学科における授業スタイル尺度の開発. 関連について調査している。 この尺度は「児童・生徒に. 2. 予備調査. よる自由記述」「教師による自由記述」「授業観察」の. 2.1. 方法. 3 つの方法で項目が収集されており、授業をする側、授. 予備調査の目的は、授業スタイル尺度の項目候補のリ. 業を受ける側、 第三者の視点が取り入れられているため、. ストを作成することであり、授業スタイルの項目を幅広. 「指導スタイル尺度」という名称ではあるが、学習者の. く収集する必要がある。そこで、教員養成課程に所属す. 活動についての項目も含まれている。しかし、理科を対. る大学生 30 名に対して自由記述式の質問紙調査を行っ. 象としているため、「実験の手順は先生がすべて指示す. た。. るのではなく自分で考えられる事が求められる」「実験. 授業スタイル尺度を作成するにあたって、授業をする. や観察の方法は自分たちで考えることが求められる」な. 側と授業を受ける側との視点を取り入れたいと考え、中. ど、他教科で行われているとは考えにくい指導スタイル. 学校・高校の教師として数学の授業をすると仮定した場. が含まれている。. 合と、中学生・高校生のときを思い出した場合とで、前. また、赤堀(2009)は、授業は主に「教師の活動が中. 者は良い授業と悪い授業について、後者は面白い授業と. 心か、児童生徒の活動が中心か」 「学習内容(トピック). つまらない授業について、自由記述式で回答を求めた。. が中心か、課題や問題が中心か」「学習内容の系統性を. 教員養成課程の学生は、教師になるための教育を受けて. 重視するか、問題解決を重視するか」の 3 要因によって. おり、上述した 2 つの視点を持つと考えられる。. 規定されるとし、授業分析によって授業を 9 つのパター ンを分類している。しかし、これは第三者の視点から分 類されたものであるため、学習者の考えは取り入れられ ていない。 本研究では「指導スタイル」「授業パターン」等の類 似する概念を「授業スタイル」として扱う。. 2.2. 結果 自由記述の内容は、文章での回答と箇条書きでの回答 が混在していたため、すべて箇条書きに統一しリスト化 を行った。その後、数学教育学を専攻する大学院生 2 名 が、文章の意味が明確に伝わるように文言の追加や修正. 授業スタイルについて、森脇(2007)は「その教師が. を行いながら、似た内容の回答をグルーピングした。項. 授業を構想し、教材づくりや授業を行う際に見られる特. 目を概観すると、「講義形式」「グループ活動」「相談. 徴のある『一貫性』」と定義し、授業を理解するうえで. が自由」といった授業形態に関する項目と、「身の回り. 授業者の授業スタイルは、「教師の教材・授業づくり、. との関連」「教科書や問題集どおり」「過程重視」とい. 運営・評価の一貫した傾向を『スタイル』として把握し. った授業で扱う内容に関する項目、 「教師が面白い」 「教. 理解する」アプローチとなりうるとしている。. 師が数学好き」といった教師自身に関する項目に大別さ. また、松下(2015)は学習について、「さまざまな学. れ、最終的に全 56 項目を抽出した。. 習論において、学習(学び)は、〈学習者(自己)〉と 〈対象〉と〈他者〉という 3 つの構成要素とその相互関. 3. 本調査. 係によって描き出されてきた」ものであるとしており、. 3.1 方法. 授業をとらえる際には、いわゆる授業の 3 要素である①. 大学生 126 名(男性 108 名、女性 18 名)に対して、. 授業者、②学習者、③授業で扱う教材・内容の 3 点に着. Web での質問紙調査を行い、「Microsoft Excel」、Excel. 目する必要があると考えられる。 したがって本研究では、. で動くフリーの統計プログラム「HAD 16」、およびフ. 授業スタイルを「授業における授業者及び学習者の活動. リーの統計ソフトウェア「R version 3.4.4」を用いて統. 様式、並びに授業で扱う内容」と定義する。. 計解析を行った。. 本研究は、教師視点および学習者視点での授業に関す. 質問項目は、学籍番号、性別、数学Ⅲの履修状況、数. る質問紙調査により、数学科における授業スタイル尺度. 学が好きかどうか(6 件法)、からなるフェイスシート. を開発することを目的とする。さらに、作成した尺度に. に加え、予備調査で作成した全 56 項目からなる授業ス. よって得られた得点の文理差や男女差について調査する. タイル尺度項目候補のうち、教師のパーソナリティでる. ことで、尺度の適用可能範囲を検討する。. と考えられる 4 項目を除いた全 52 項目を用いた。調査 に用いた 52 項目については、論文の最後に資料として 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 67.
(3) 数学科における授業スタイル尺度の開発. 記載している。「あなたは、以下のような数学の授業を. などにも高い因子負荷を示していたため「関係性・疑問. 望んでいましたか」という教示文に対して、「1:望んで. 解決」スタイルと命名した。第 5 因子は、 「解法が複数」. いなかった」から「6:望んでいた」の 6 件法で、高校生. 「原理を重視」「過程を重視」といった単語が含まれて. だったときのことを思い出してもらい、回答を求めた。. おり、「解法・過程重視」スタイルと命名した。各因子. また、授業スタイルに関する質問は、全 52 問をラン. の項目の得点の平均値を下位尺度得点として、下位尺度. ダムで 2 群に分け、それぞれの群内で質問順はランダム. 得点および「数学が好きかどうか」の相関係数を算出し. となるようにし、質問順の影響を統制した。. た。「相互作用」と「有用性」「画一性」「関係性・疑 問解決」、「有用性」と「画一性」、「画一性」と「関. 3.2. 結果. 係性・問題解決」、「関係性・疑問解決」と「解法・過. 3.2.1. 予備的分析. 程重視」、「解法・過程重視」と「数学が好きかどうか」. 田中(2014)によると、回答が著しく偏っている項目が あると、分析の結果に影響を及ぼすことがあるため、分. に有意な相関が認められた。有意な相関のみを図式化し たものが図 1 である。. 析から除外することも検討する必要がある。そこで、平 均値および標準偏差を求め、天井効果および床効果の検 討を行った。「やるべきことをやらなかったとき、罰が 課される」「論点や内容がぶれる」「プレゼンテーショ ンの機会がある」 「先生からのプレッシャーがある」 「問 題が解けなかったとき、罰が課される」の計 5 項目で床 効果が確認できたため、5 項目を以降の分析対象から除 外した。 3.2.2. 探索的因子分析 MAP の値や平行分析の結果を参考に 7 因子構造と推. 図 1 相関分析結果 3.2.3. 確認的因子分析(CFI) 下位尺度得点に有意な相関の見られた因子間に共分散、. 定し、探索的因子分析(最尤法・プロマックス回転)を. 各因子から下位尺度項目にパスを引き、確認的因子分析. 行った(表 1)。因子負荷量が.350 を下回る項目を削除. を行った。適合度指標は、CFI=.853、RMSEA=.074、. し、探索的因子分析を繰り返すと、最終的に 5 因子 26 項. GFI=.772、AGFI=.734 であった。各因子のω係数を算. 目となった。各因子の ω 係数を算出すると、第 1 因子か. 出すると、第 1 因子から順に、.896 .887 .773 .777 .787. ら順に、.901 .923 .764 .802 .806 であり、十分な内的整. であり、十分な内的整合性が得られた。. 合性が得られた。第 1 因子は、「ディスカッション」「グ ループ活動」「話し合い」など、生徒同士の相互作用に. 3.2.4. フェイスシート項目による差の検討. 関する単語が多く含まれているため、「相互作用」スタ. 文理選択および性差による下位尺度得点の差について. イルと命名した。第 2 因子は、 「社会でどう役立つのか」. 検討するために、t 検定を行った(表 2)。ここでは、数. 「日常生活に関連」「日常生活への応用」など、授業内. 学Ⅲを履修した者を理系、数学Ⅲを履修していない者を. 容の授業以外の場面においての有用性に関する単語が含. 文系として定義した。文理の内訳は、文系 24 名、理系. まれているため「有用性」スタイルと命名した。第 3 因. 102 名であった。文理選択で平均値に 5%有意水準で有. 子は、「クラス全員」「問題をパターンに当てはめて解. 意差が認められた項目は「関係性・疑問解決」であり、. く」などの単語が含まれ、学習者全員が同じ問題を同じ. 文系のほうが理系よりも高い得点を示した。男女で平均. 過程で解けるようにする授業であるとして、「画一性」. 値に有意差が認められた項目はなかったが(表 3)、画. スタイルと命名した。第 4 因子は、「雑談」や「つまず. 一性に関して有意傾向であり、女性のほうが男性よりも. きを把握」など、教師との関係性に関する単語に加え、. 高かった。. 「わからないところを質問できる」 や 「問題演習の時間」. 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 68.
(4) 数学科における授業スタイル尺度の開発. 表 1 探索的因子分析の結果 項目 I 相互作用(ω=.901) 7. ディスカッションが行われる. 43. 話し合いの活動がある. 37. ペア活動がある. 39. 少人数でのグループ活動がある. 4. 生徒同士の意見交換を通して、授業が進行する. 5. 生徒同士で教えあう活動がある. 1. 授業内容が社会でどう役立つのかが示される. 20. 内容の日常生活への応用が示される. 33. 授業内容を学ぶことが自分にどう役立つのかが示される. 44. クラス全員で同じ問題を解く. 15. 問題をパターンに当てはめて解く. 18. 先生に意見を否定されない. 日常生活に関連した問題を扱う. 19. 身の回りとの関連が示される. クラス全員が共通の問題を解く. 42. 教科書や問題集に載っている問題を扱う. 9. 基礎的な問題を扱う. 21. 内容に関係する雑談がある. 32. つまずきを把握し、対策や解説をしてくれる. 6. 問題演習の時間がある. 12. 解法が複数紹介される. 13. 証明をするなど、原理を重視する. 内容に関係ない雑談がある. 41. わからないところを質問できる. 解法が複数ある問題を扱う. 14. 過程を重視する. V. .830. -.093. -.052. -.081. .117. .593. .817. .045. -.091. .016. -.002. .661. .644. -.013. .056 .141 .007. -.002. .907. -.074. .851. -.032 .146 .099 -.028. .001. .612. .020. -.006. .106. -.147. -.037. .779. -.101. .024. .120. .713. .721. -.190. -.005. .448. -.147. .636. -.091. -.148. .391. .127. .105. .041. .002 .168. -.001. .063. -.107. .063. -.126. .006. -.088. .132. .070. .084. .141 .642 .611 .438 .420. .073 .025. -.133 .045. -.038. .522. .054. .661. -.045 .067 .065. .739 .769 .564 .456 .380 .334. .177. -.212. -.186. .850. .041. .679. .208. .576. .085. .576. -.203 .268 .301 .021. .723. -.176. .498. .144. .429. .397 .496 .353. .883. .787. .034. .605. .400. -.003. -.134. .109. .182. .030. -.248. .006. .279. .013. -.028. 25.42 12.33 10.94. 寄与率. .016. .584. -.010. -.086. -.153. -.082. -.030. .129. .033. .153. .030. .699. .025. .051. -.152. .078. -.005. .813. -.140. -.073. .082. .068. -.217. -.018. .070. -.010. 共通性. .855. .149 .058. V 解法・過程重視(ω=.806) 10. IV. .677. IV 関係性・疑問解決(ω=.802) 22. III. .698. III 画一性(ω=.764) 11. II. .823. II 有用性(ω=.923) 48. I. 7.58. .845 .470. 6.65. .652 .314. 25.42 37.75 48.68 56.26 62.91. 累積寄与率. 因子間相関 I 1.000 II. .410 1.000. IV. .298. III V. .353. .138 1.000. .042. .104. .328. 教育デザイン研究. .374 1.000 .196. .346 1.000. 第 10 号(2019 年 3 月). 69.
(5) 数学科における授業スタイル尺度の開発. 表 2 尺度得点平均値の文理比較. 文系 相互作用 有用性 画一性 関係性・疑問解決 解法・過程重視. Mean. 理系 SD. Mean. 画一性 関係性・疑問解決 解法・過程重視 3.2.5. 被験者の分類. 𝑑𝑑. 1.128. 3.046. 1.120. 0.694. .489. .156. 4.056. 0.737. 3.887. 0.880. 0.868. .387. .196. 3.525. 1.473. 4.825. 3.510. 0.665. 4.344. Mean. 1.170. 4.418. 0.893. 0.950. 4.547. 男性. 有用性. 𝑝𝑝. 𝑡𝑡. 3.222. 表 3 尺度得点平均値の男女比較. 相互作用. SD. 0.948. 女性 SD. Mean. SD. 0.054. .957. .012. 2.466. .017* .343. -.215. 𝑡𝑡. 𝑝𝑝. 𝑑𝑑. -0.953. .448. 3.073. 1.090. 3.120. 1.318. -0.167. .867. -.042. 3.863. 0.875. 4.259. 0.635. -1.841. .068. -.466. 3.459. 4.448. 4.535. 1.189. 3.833. 0.937. 4.778. 0.946. 4.347. 実際にどんな学習者がいるかを検討するために、クラ. 1.430. 0.726. 0.900. -1.200. .232. -1.422. -.304. .158. 0.784. -.360. .435. .198. タであった。. スタ分析によって学習者の分類を行った。分析は下位尺. 第 2 クラスタ(以下 Clu2 とする)は、すべての下位. 度得点を用いて、ウォード法、ユークリッド平方距離に. 尺度得点が高く、特に相互作用を重視する傾向にあるク. よって行った。デンドログラムからクラスタ数を 3 とし. ラスタであった。. たときの 3 つのクラスタをもとに、各下位尺度得点を 1. 第 3 クラスタ(以下 Clu3 とする)は、過程重視の得. 要因分散分析により、クラスタごとに比較した(表 4)。. 点が高く、有用性や疑問解決を求めているが、画一性や. 第 1 クラスタ(以下 Clu1 とする)は、すべての下位. 相互作用を求めていないクラスタであった。. 尺度得点が低いが、共通性を重視する傾向にあるクラス 表 4 クラスタごとの下位尺度得点の比較 Clu1(N=45). Clu2(N=71). Clu3(N=10). F値. 多重比較. 相互作用. 2.330. 3.723. 1.883. 48.461***. 2>1,3. 有用性. 2.360. 4.101. 4.520. 62.139***. 2,3>1. 画一性. 3.785. 4.167. 2.767. 15.584***. 2>1>3. 関係性・疑問解決. 4.036. 4.735. 4.860. 10.245***. 2,3>1. 解法・過程重視. 4.222. 4.570. 5.350. 6.862**. 3>2>1. 4. 考察. 「相互作用」スタイルについて、赤堀(2009)は、授. 授業スタイルが「相互作用」「有用性」「画一性」「関. 業パターンの特徴を規定する要因の一つとして「教師の. 係性・疑問解決」「過程重視」の 5 因子で説明できるこ. 活動が中心か、 児童生徒の活動が中心か」 を挙げており、. とが示された。. そのうち児童生徒の活動が中心のものが集まったと考え 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 70.
(6) 数学科における授業スタイル尺度の開発. られ、この授業スタイルは、学習者が主体の授業スタイ. ところを質問できる」 といった疑問解決に関する項目と、. ルといえるだろう。「相互作用」は「有用性」「画一性」. 「教科に関係する雑談がある」は一致しているため、同. 「関係性・疑問解決」と弱い相関を示している。クラス. 一の因子にまとめられたと考えられる。. タ分析より、「相互作用」が高い学習者と「有用性」「画. 「解法・過程重視」スタイルについて「解法が複数」. 一性」「関係性・疑問解決」が高い学習者は共通である. という単語が含まれており、これは数学科において特徴. という示唆が得られ、 これは相関分析の結果と一致する。. 的なものであると考えられる。文部科学省(2018)では、. 「有用性」スタイルについて、日常生活との関連に関. 数学のよさとして「数量や図形などに関する基礎的な概. する項目が集まったと考え、授業で何を学ぶか、すなわ. 念や原理・法則のよさ、数学的な見方・考え方を働かせ. ち学習者が学ぶ対象に関係する因子であるといえるだろ. ることのよさ」を挙げており、「解法・過程重視」は特. う。文部科学省(2018)では、数学科の目標の 1 つとし. に「原理・法則のよさ」を実感できている学習者が好む. て「数学が日常生活や社会生活において、また他教科の. 授業スタイルであると考えられる。相関分析より、「解. 学習やその後の人生において必要不可欠なものであるこ. 法・過程重視」のみが「数学が好きかどうか」と有意な. とに気付かせること」を挙げており、この目標を達成す. 相関を示しており、数学のよさの実感と数学が好きだと. るための授業スタイルであると示唆される。. いう実感が関連していることが示唆される。. 「画一性」スタイルについて、「クラス全員で同じ問. 本研究で作成された尺度は、確認的因子分析での適合. 題を解く」「教科書や問題集に載っている問題を扱う」. 度が竹内・水本(2014)で示されている基準を満たして. といった項目が含まれていることから、全員が同じこと. いない。これはサンプルサイズが 126 と十分でなかった. をする授業スタイルであると考えられる。また「問題を. ことが原因だと考えられるため、十分なサンプルを確保. パターンに当てはめて解く」に関して、池田(2012)は、. すれば、適合度の問題は解決できると考えられる。. 「数学が得意ではないが、受験に必要だという生徒にと. 文理差について、文系で「関係性・疑問解決」が高か. っては(中略)本質的には理解していなくても、そうい. った理由について考察する。文系は理系と比較し数学に. うものだと考え解法パターンをひたすら覚えていくこと. 苦手意識を持っている可能性が高く、疑問点を自らの力. が重要だ」と指摘しており、これも数学が苦手な学習者. で解決するのではなく、授業で解決されることをより強. によって望まれているスタイルであると推測できる。加. く望んでいるのではないかと推測する。. えて、「先生に意見を否定されない」「基礎的な問題を. 男女差については、サンプル数の偏りが大きく、十分. 扱う」の 2 項目も数学が苦手な学習者が望むスタイルで. に検討できたかについて疑問が残るが、有意差が認めら. あると考えられ、「画一性」スタイルは数学が苦手な学. れた項目がなかったことから、性別に関係なく本尺度を. 習者に好まれていると推測できる。. 使用することができると考えられる。しかし、国立教育. 「関係性・疑問解決」スタイルについて、雑談に関す. 政策研究所(2016)によると、OECD による 2015 年の. る項目と、疑問点の解決に関する項目とに二分される。. 生徒の学習到達度調査(PISA)では、数学的リテラシー. また、確認的因子分析での因子負荷量と、探索的因子分. 得点には男女間に有意な差が認められており、考え方に. 析での因子負荷量とを比較すると、探索的因子分析では. も差がある可能性もあることから、十分なサンプルを確. 高い因子負荷量を示していた「内容に関係ない雑談があ. 保したうえで、今後も検討を進める必要がある。. る」について.723 から.471 に低下しており、因子内で最. クラスタ分析について、第 1 クラスタおよび第 2 クラ. も因子負荷量の小さい項目となっている。松原・庄司. スタは、すべての項目において第 2 クラスタの平均値が. (2005)は雑談に対する感想・その後の影響についての. 第 1 クラスタの平均値を上回っており、授業に対する要. 質問を因子分析し、「理解の促進・授業への意欲」「将. 望が強い群と弱い群であると推測される。第 3 クラスタ. 来展望への影響」「信頼感の形成」「負の影響観」の 4. は 10 人と少人数ではあるが、「解法・過程重視」の得点. 因子を抽出しており、「授業内容に関連したマメ知識・. が高く、「有用性」や「疑問解決」を求めているが、「画. 裏話・発展した話」は「理解の促進」に影響を及ぼすこ. 一性」や「相互作用」を求めていないクラスタであった。. とを示唆している。理解の促進という観点から、「つま. 「解法・過程重視」や「有用性」が高いことから、数学. ずきを把握し、対策や解説をしてくれる」「わからない. のよさについて認識しているにも関わらず、 「相互作用」 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 71.
(7) 数学科における授業スタイル尺度の開発. の得点が非常に低く、アクティブ・ラーニング型の授. 梶田正巳・石田勢津子・宇田光(1984)「個人レベルの学. 業を望んでいない群が存在することが示されたと考えら. 習・指導論(personal Learning and Teaching Theory). れる。. の探求―提案と適用研究―」名古屋大學教育學部紀要 教育心理学科,31,51-93.. 5. 今後の課題. 清水裕士 (2016 ). 「フリーの統計分析ソフト HAD:機. 今後の課題として大きく 3 点があげられる。. 能の紹介と統計学習・教育,研究実践における利用方. 1 点目は、サンプルサイズについてである。本研究で. 法の提案」メディア・情報・コミュニケーション研究,. はサンプルサイズが少なかったため、確認的因子分析で のモデルの適合度が低い結果となった。また、十分なサ. 1, 59-73. 鈴木豪(2013)「小・中学生の学習観とその学年間の差異. ンプルサイズを確保することで、 共分散構造分析による、. ―学校移行期の変化および学習方略との関連-」教育. 因子間の因果関係に関する考察も可能となるため、十分. 心理学研究,61,17-31.. な回答数を得たうえで再検討する価値があると考えられ る。 2 点目は、サンプルの偏りについてである。全 126 人. 田中瑛津子(2011)「質の高い興味を育む授業方略の検討」 <https://www.hakuhofoundation.or.jp/subsidy/recipi ent/pdf/kenkyu_07_prize.pdf>2018 年 6 月アクセス. から質問紙の回答を得たが、男女比が男性 108 人・女性. 田中博晃(2014)「因子分析入門 背後にある共通性を見. 18 人、文理比が文系 24 人、理系 102 人であり、男性と. つけるには 竹内理 水本篤(編)外国語教育研究ハ. 理系に偏っていた。そのため、偏ったサンプルに対する. ンドブック【改訂版】研究手法のより良い理解のため. 尺度となってしまった可能性があり、被験者を変えて再. に(pp.162-180)」松柏社. 検討する必要があると考えられる。. 成田竜也(2018)「教員養成課程の学生に対するランダム. 3 点目は発展的課題として、本研究で作成した尺度を. 系列の誤認知の削減と極限の概念理解に関する研究―. 用いた、学習観や学習方略といった特性との関連性の調. 独立性の錯誤とε-N 論法に着目して―」横浜国立大. 査の必要性である。本尺度を用い、26 項目の質問に答え. 学教育学研究科修士論文. ることで、学習者の授業に対する要望を計測することが. ベネッセ教育総合研究所(2016)「第 5 回学習基本調. 可能となる。学習者の特性によって授業スタイルを最適. 査 DATABOOK」. 化するための示唆が得られることで、教師の授業スタイ. <https://berd.benesse.jp/up_images/research/5kihon. ルの選択方法に対して、量的アプローチから提案を行う. chousa_datebook2015_all.pdf>2018 年 6 月アクセス. ことが可能になると考えられる。また、本尺度は「要望」. 松下佳代(2015)「ディープ・アクティブラーニング 大. だけでなく「好み」や「有用感」などを計測できる可能 性もあり、さまざまな応用が期待される。. 学授業を深化させるために」勁草書房 松原志保, 庄司一子(2005) 「PC077 教師による授業中の 雑談がもつ教育的機能 : 子ども・教師双方にとっての. 6. 参考文献. 意味(ポスター発表 C,研究発表)」, 日本教育心理学会総. 赤堀侃司(2009)「授業デザインの方法と実際―教育方法. 会発表論文集, 2005, 47 巻, 第 47 回総会発表論文集,. 論のテキスト―」高陵社書店 池田健太郎(2012) 「チャートを利用した解法パターンの 暗記 ―解法パターンの暗記で大学入試に対応できる ―」イプシロン. 2012, 54, p.117-122. 植阪友理(2010)「メタ認知・学習観・学習方略 日本認 知心理学会(監修)市川伸一(編) 現代の認知心理 学 5 発達と学習(pp. 172-200)」北大路書房 金馬国晴(2018)「現代日本における教育課程の変遷 山. 森脇健夫(2007)「教師の力量としての授業スタイルとそ の形成 グループ・ディダクティカ(編) 学びのた めの教師論(pp.167-192)」剄草書房 文部科学省(2018)「中学校学習指導要領(平成 29 年告 示)解説数学編」日本文教出版 文部科学省 国立教育政策研究所(2016)「OECD 生徒の 学 習 到 達 度 調 査 Programme for International Student Assessment~2015 年調査国際結果の要約~」. 﨑準二(編)[教師教育テキストシリーズ 9]教育課程第. <http://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/pdf/2015/03_res. 二版(pp.85-100)」学文社. ult.pdf>2018 年 6 月アクセス 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 72.
(8) 数学科における授業スタイル尺度の開発. 資料 1 予備的調査によって作成した授業スタイル尺度候補項目 授業内容が社会でどう役立つのかが示される. 苦手な生徒にあわせた進度である. 受講者のレベルが同じくらいである. 発言の機会がない. 問題について先生と生徒が一緒に考えることで、授業が. 考える時間が十分にある. 進行する. 説明が簡潔である. 生徒同士の意見交換を通して、授業が進行する. 論点や内容がぶれる. 生徒同士で教えあう活動がある. つまずきを把握し、対策や解説をしてくれる. 問題演習の時間がある. 授業内容を学ぶことが自分にどう役立つのかが示される. ディスカッションが行われる. 私語厳禁である. ディベートが行われる. はじめに授業の流れが示される. 基礎的な問題を扱う. 会話が自由な環境である. 解法が複数ある問題を扱う. ペア活動がある. クラス全員が共通の問題を解く. プレゼンテーションの機会がある. 解法が複数紹介される. 少人数でのグループ活動がある. 証明をするなど、原理を重視する. 調べ学習がある. 過程を重視する. わからないところを質問できる. 問題をパターンに当てはめて解く. 教科書や問題集に載っている問題を扱う. 公式や解法を暗記するような指導がされる. 話し合いの活動がある. やるべきことをやらなかったとき、罰が課される. クラス全員で同じ問題を解く. 先生に意見を否定されない. 先生との対話を通じて、授業が進行する. 身の回りとの関連が示される. 先生からのプレッシャーがある. 内容の日常生活への応用が示される. 問題が解けなかったとき、罰が課される. 内容に関係する雑談がある. 日常生活に関連した問題を扱う. 内容に関係ない雑談がある. 発言に対するコメントがない. 先生と目線がよく合う. 解きごたえのある問題を扱う. ノートを用いる. 発言の根拠を聞かれる. ワークシートを用いる. 先生が話すことで進行する. 内容を進めることを優先している. 教育デザイン研究. 第 10 号(2019 年 3 月). 73.
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