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大学生における統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果の持続性 : 過剰適応傾向を二次的評価指標として

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(1)Title. 大学生における統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果の持続性 ― 過剰適応傾向を二次的評価指標として ―. Author(s). 益子, 洋人. Citation. 北海道教育大学紀要. 教育科学編, 70(1): 91-101. Issue Date. 2019-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/10545. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(教育科学編)第70巻 第1号 Journal of Hokkaido University of Education(Education)Vol. 70, No.1. 令 和 元 年 8 月 August, 2019. 大学生における統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果の持続性 ― 過剰適応傾向を二次的評価指標として ―. 益 子 洋 人 北海道教育大学札幌校教育心理学研究室. The Persistence of Effects on Training of Integrating Conflict Resolution Skills in University Students: From the Secondary Point of View of the Over-Adaptation MASHIKO Hirohito Department of Educational Psychology, Sapporo Campus, Hokkaido University of Education. 概 要 本研究の目的は,益子(2016)の心理教育プログラムから,90分×3回で実施できる短縮版 を作成し,統合的葛藤解決スキルと過剰適応傾向の面からその効果を検討することを通して, プログラムの実施回数の妥当性と効果の持続性についての示唆を得ることであった。同一大学 内の類似した傾向をもつ2専攻の3年生,計30名に調査を依頼し,3回の質問紙調査に完答し た介入群の9名(男性5名,女性4名),統制群の18名(男性5名,女性13名)にIntention to Treat解析を行った。その結果,短縮版のプログラムでは,「統合的志向」以外のスキルに対 する変化は乏しいことが示された。また,follow-pre間の群間比較から,介入群の「自己抑制」 が低下した可能性が示される一方,スキル自体の向上に関する長期的変化は限定的であること が示された。統合的葛藤解決スキルを向上させる心理教育プログラムの意義と改善点が議論さ れた。 Key words:大学生,心理教育,統合的葛藤解決スキル,過剰適応,Intention to Treat解析. 問題と目的. 関係性を発展させていくことは,青年の発達課題 として重視されてきた(神谷,2008)。しかし,. 大学生が他者との親密な関係性を築けるように. 井上(2005)によれば,昨今の青年は,他者との. 支援することは,今なお重要な課題であり続けて. 意見の相違に直面すると,対話によってその相違. いる。従来,他者との価値観の相違を乗り越え,. を乗り越えるのではなく,対話自体を避ける傾向. 91.

(3) 益 子 洋 人. があるという。また,「浅い関係で用いられるス. 対象に,年単位のカリキュラムに組み込まれたト. キル」 (田中・宮前,2016)のように,そもそも. レーニングの効果を検討した。その結果,カリキュ. 意見の相違が表面化しないような振る舞いを重視. ラムを受講した群は,そうでない群よりも葛藤解. する傾向も存在する。こうした対話自体を回避す. 決スキルが有意に向上したことを報告している。. る傾向は,意見や価値観の相違に直面しなくて済. また,本邦では,益子(2016)が,「できるだけ. むメリットを生む一方,意見や価値観の相違に向. 短期間で効果を上げうるプログラムの開発を目. き合わなければならない事態に直面したときに. 的」とし,90分×4回で構成された統合的葛藤解. は,解決するスキルに習熟していないというデメ. 決スキルのプログラムの効果を検討した。その結. リットも生み出すであろう。意見や価値観の相違. 果,プログラムを受講した群は,統制群よりも統. を乗り越えたのちに他者との親密性が深まる(古. 合的葛藤解決スキルが有意に向上しただけでな. 村・戸田,2008)というプロセスがあるのだとす. く,過剰適応傾向の一部が有意に改善したことを. れば,対話を回避するばかりでは,そのプロセス. 報告している。これらの知見が示す通り,青年が. を達成することはできない。それゆえ,青年を対. 対人葛藤を統合的に解決できるように支援するト. 象とした,意見や価値観の違いを乗り越えるため. レーニングの取り組みは,国内外を問わず,盛ん. の支援が必要だと考えられる。. になり始めている。. 青年が意見や価値観の相違を乗り越え,親密性. 一方,これらのプログラムには未検討の課題も. を深められるように支援するにあたり,有用だと. 残されている。その課題としては,第一に,プロ. 考 え ら れ る の が,「 対 人 葛 藤(Interpersonal. グラムの適正な実施期間に関する知見が不足して. Conflict) 」という概念である。対人葛藤の定義と. いることである。前述したように,益子(2016). して,本研究は「自分の欲求や期待(の達成)が. においては,「できるだけ短期間で効果を上げう. 他者によって阻止されていると認知すること」. るプログラムの開発を目的」として,90分×4回. (Thomas,1976)を採用する。この定義に則れば,. の施行回数が提案されている。しかし,青年が学. いわゆるケンカのような「顕在化した対立」だけ. 習するべき内容が増え続けている昨今,さらに短. ではなく,当事者の一方が何らかのわだかまりを. い期間の施行によって同様の効果を得られるなら. 抱きながらも対立が顕在化していない「潜在的な. ば,その方法を探索する価値は大きいと考えられ. 対立」も「対人葛藤」として捉えることができる。. る。そのため,より短期間の施行の余地を探る必. また,当事者の「一方が問題だと感じたことを,. 要がある。. どのように相手と共有し,対話を進めていくのか. 第二に,プログラムの実施後の長期的な変化に. ということについて考えていける」 ( 益 子,. ついての知見が乏しいことが挙げられる。Seren. 2018)であろう。そこで本研究では,Thomas &. & Ustun(2008)や益子(2016)では,プログラ. Kilmann(1974)の定義に則って,潜在的な意見. ムを実施した直後の指標の変化のみが注目されて. や価値観の相違も対人葛藤に含めて捉えていく。. いる。しかし,統合的葛藤解決スキルが対人関係. 青年に対する対人葛藤の解決を支援する方法と. の改善に寄与することが期待されるスキルである. しては, 「統合的解決」を達成するためのスキル. ことや,関係性が変化するためにはある程度時間. をトレーニングするものがある。 「統合的解決」. がかかることなどを鑑みるならば,その影響はプ. とは,葛藤解決方略の中でももっとも望ましいと. ログラム実施直後ではなく,一定の時間の経過後. される,自他共に納得できる解決策を協創しよう. に現れる可能性がある。そこで,プログラムの実. と す る 葛 藤 解 決 の 仕 方 で あ る(Rahim &. 施直後に加え,数週間後の変化を調査することに. Bonoma,1979)。このような具体例として,た. も,意義があると考えられる。. とえば,Seren & Ustun(2008)は,看護学生を. そこで,本研究では,90分×3回の時間内でも. 92.

(4) 大学生の統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果. 実施できるように改めたプログラムの効果を検討. 2.調査期間と実施手続き. し,回数の妥当性についての新たな知見を得ると. 介入群には,X年7月の授業で,単元の最後の. ともに,対人関係の側面における効果の持続性に. 3週間分の講義を活用してプログラムを実施し,. 関する示唆を得ることを目的とする。. その実施前後,および夏季休業後(2ヶ月後)に. 対人関係の改善を測定する指標として,本研究. 介入効果の測定を行った。統制群には,これまで. では過剰適応傾向を用いる。なぜなら,過剰適応. 統合的葛藤解決スキルを高めるような実践的プロ. 傾向は益子(2016)でも効果指標として検討され. グラムの受講経験がないことを確認し,同時期に. ているため,結果を同一の基準で比較できるから. 測定を行った。介入群は,調査者自身が質問紙の. である。過剰適応傾向は,外的適応,すなわち関. 回収を行い,統制群は,当該学生の研究室の担当. 係維持/対立回避的行動の側面である「他者志. 教員が回収を行った。. 向」 , 「自己抑制」と,内的適応,すなわち心理的. 各群の参加者と,分析対象者,それぞれの群に. 適応の側面である「本来感」で構成されている(益. おける手続きをFigure 1に示す。. 子,2013) 。そこで,本研究では,これらの指標. 3.プログラムの実施者. を再び用いることで,益子(2016)の教育効果と. 介入群への心理教育プログラムは,講義担当者. の比較を試みることとしたい。. である筆者自身が実施した。これは理論的背景を. 以上をまとめると,本研究の目的は,益子(2016). 熟知したものが介入すると,本来の介入の意図が. のプログラムを90分×3回で実施できるように改. 厳密に守られやすい(佐藤ら,2009)という利点. 編した短縮版を作成し,その効果を統合的葛藤解. を生かせると考えたためである。. 決スキルと過剰適応傾向の面から検討した上で,. 4.心理教育プログラムの概要. プログラムの実施回数の妥当性と効果の持続性に. プログラムの構成にあたっては,益子(2016). ついての示唆を得ることである。. を踏襲した。先述のように,益子(2016)のプロ グラムは,対人葛藤の統合的な解決方法について 論じた複数の文献のエッセンスをもとに構成され. 方 法. ており,対人葛藤の解決に携わる研究者や,臨床. 1.調査協力者. 心理士,法律家のような実務家により,内容的な 1. 妥当性が確認されている。また,過剰適応傾向を. をもつB,C専攻に在籍する3年生,計30名に調. 一部低減させ,自分の怒りの気持ちを受け入れや. 査を依頼した。そのうち,後述の3回の質問紙調. すくなるという効果があることも,実証的に示さ. 査に完答した介入群の9名(男性5名,女性4名),. れている。このように,益子(2016)のプログラ. 統制群の18名(男性5名,女性13名)を分析の対. ムでは一定の効果が確認されているため,導入に. 北海道内の国立A大学の比較的類似した傾向. 象とした. 2,3. 。なお,Intention to Treat解析を行. 適していると考えられた。. うため,プログラムに1回以上欠席した学生も分. 一方で,このプログラムを3セッションで実施. 析対象としている。. するためには,改編が必要であった。原版のプロ. 協力者の内訳をTable 1に示す。. グラムは4セッションでの実施が想定されている ため,その通りに実施すると3セッション以内に. Table 1.分析対象者の性別の構成 男性. 女性. 合計. 介入群. 5. 4. 9. 統制群. 5. 13. 18. 合計. 10. 17. 27. 収まらないからである。そこで,3セッションの 実施をするにあたり,原版の一部を割愛すること とした。原版では,各回のプログラムは,①講義, ②エクササイズ,③質疑応答で構成されている。 このうち,統合的葛藤解決スキルが比較的新しい. 93.

(5) 益 子 洋 人. 欠損. 欠損. Figure 1.各群の参加者,分析対象者数と,介入群,統制群における手続き. 概念であることを考慮すると,講義を削ることは. 本プログラムの概要と改編の要点をTable 2に. 難しい。そこで,エクササイズと質疑応答を割愛. 示す。. した。具体的には,原版は3種類のエクササイズ. 5.介入効果の測定. を行っていたのを2種類としたり,15分のロール. 1) 統 合 的 葛 藤 解 決 ス キ ル 尺 度(Integrating. プレイを行っていたものを10分としたりした。ま. Conflict Resolution Skills Scale ; ICRS-S)(益. た,質疑応答の時間を短縮した。. 子,2013). 94.

(6) 大学生の統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果. Table 2.プログラムの内容 # 1. ターゲットスキル 統合的志向. 構成要素 葛藤解決理論. 90分. 具体的内容. 変更点. 葛藤とは 二重関心モデルと統合的葛藤解決 統合的葛藤解決スキル 統合的葛藤解決の意義. 受容・共感. 基本的応答スキル. このスキルを習得する必要性 エクササイズ①:受容的・共感的応答. 潜在的希望への注目. このスキルを習得する必要性 エクササイズ②:潜在的希望の判別. 2. 丁寧な自己主張. 3題→2題 3題→2題. アンガー・マネジメント このスキルを習得する必要性. 90分. エクササイズ③:怒りの温度計 エクササイズ④:リラクセーション(呼吸法) 情報提供のみ 丁寧な自己主張. 自己表現. 粘り強さ. 3. 統合的志向. 90分. 受容・共感. I・メッセージとDESC法. メディエーション. エクササイズ⑤:素敵な頼み方. 3題→2題. エクササイズ⑥:納得されやすい断り方. 3題→2題. メディエーションの説明 このスキルを習得する必要性. 丁寧な自己主張. メディエーション・スキル. 粘り強さ 統合的志向. このスキルを習得する必要性. メディエーションの模擬事例(DVD視聴) ロールプレイ. 受容・共感 丁寧な自己主張 粘り強さ. 時間2/3. エクササイズ⑦: メディエーターとして葛藤を仲介する (10分) 時間2/3 エクササイズ⑧: 当事者として葛藤を統合的に解決する (10分) 時間2/3. 「統合的志向」 「受容・共感」「丁寧な自己主張」. 「他者志向」8項目,「自己抑制」7項目の2. 「粘り強さ」の4因子16項目で構成されている社. 因子15項目で構成されている。東大式エゴグラム. 会的スキルや友人関係満足度,対人葛藤方略との. (TEG)のACや公的自意識との間に,妥当性が. 間に妥当性が確認されている。得点が高いほど,. 確認されている。得点が高いほど,自分の欲求を. 各スキルを有することを表している。原版と同様. 抑圧したり他者の期待に沿ったりして,他者との. に教示し,6件法(1:まったくあてはまらない. 関係を維持し,対立を回避しようとしがちである. ~6:とてもあてはまる)で回答を求めた。pre. ことを表している。原版と同様に教示し,5件法. からfollow時点における α 係数の範囲は,順に,. (1:あてはまらない~5:あてはまる)で回答. α =.53-.70,.61-.77,.78-.86,.86-.92であり, 「統. を求めた。preからfollow時点の α 係数の範囲は,. 合的志向」でやや不充分な値も見られたが,先行. 順に,α =.79-90,.88-90であり,充分な値であった。. 研究(益子,2018)との比較を行うという目的に. 3)本来感尺度(伊藤・小玉,2005). 照らし,すべての項目を分析に使用した。. 原版は,1因子7項目で構成され,自尊感情や. 2)関係維持/対立回避的行動尺度(石津・安. 主観的幸福感,心理的well-beingとの間に妥当性. 保,2008;益子,2016). が確認されているが,「他人と自分を比べて落ち. 95.

(7) 益 子 洋 人. 込むことが多い」という項目を削除すると信頼性. この結果をTable 3に示す。. が高まることが報告されている(益子,2013)た. pre-post間,pre-follow間の変化量の t 検定と効. め,6項目で分析した。得点が高いほど,自分ら. 果量. しく,生き生きした感覚を感じていることを表し. post,follow時点におけるpreからの変化量を. ている。原版と同様に教示し5件法(1:あては. 算出するために,因子ごとにpost-pre,follow-. まらない~5:あてはまる)で回答を求めた。. pre得点を算出し,変化量得点とした。そして,. preからfollow時点における α 係数の範囲は, α. 群を独立変数,各時期の変化量得点を従属変数と. =.77-.79であり,充分な値であった。. するt検定を行った。. 6.倫理的配慮. その結果,「統合的志向」において,post-pre. 回答は無記名で行い,同一人物のマッチングは. で有意差が見られ(t(25)=2.11,p=.04),介入. 生年月日を使用した。また,フェイスシートには. 群で得点が向上した(d=.86,g=.86,r=.39)。. 「回答は成績に影響しないこと」,「自由に回答を. 「本来感」において,post-preで有意傾向の差が. 中止する権利があること」,「研究発表を行う予定. 見られ(t(25)=2.00,p=.06),介入群で得点が. であり,同意できる場合にのみ,回答用紙を提出. 低下した(d=.82,g=.82,r=.37)。さらに, 「自. すればよいこと」を明記し,介入群の学生に対し. 己抑制」において,follow-preで有意傾向の差が. ては, 口頭でも説明を行った。統制群の学生には,. 見られ(t(25)=1.82,p=.08),介入群で得点が. 担当教員に,説明してもらえるように依頼した。. 低下した(d=.76,g=.74,r=.34)。一方,これ. また,介入群の学生に対しては,シラバスに,. 以外の因子においては,有意差は見られなかった。. 就職後に役に立つ対人スキルを実践的に学ぶ旨を. この結果とそれぞれの効果量をTable 4に示す。. 記載し,初回の講義では,グループワークを行う ことを周知した。さらに,プログラムに参加する. 考 察. ことによって過剰な負担を強いることのないよ う,実施前には,「参加は任意であり,内容を聞. 本研究の目的は,先行研究(益子,2016)にお. いて負担だと感じた場合は個別に課題を与えるの. けるプログラムを90分×3回に修正し,必要最低. で,無理をしないように」と説明し,各エクササ. 限 の 施 行 時 間 に 関 す る 示 唆 を 得 る と と も に,. イズの実施前も同様の説明を行った。なお,介入. followにおける効果の持続性をも検討することで. 後の質問紙を回収した後,研究目的や仮説,調査. あった。post,followの各時点におけるpreから. 内容に関するデブリーフィングを行った。. の変化量を分析した結果,「統合的志向」におい てpost-pre間で有意差が見られ,介入群で得点が 向上した。また,「本来感」においてpost-pre間. 結 果. で有意傾向の差が見られ,介入群で得点が低下し. 記述統計量およびpre得点の群間比較. た。さらに,「自己抑制」においてfollow-pre間. まず,群ごとに,時期別の各変数の因子得点の. で有意傾向の差が見られ,介入群で得点が低下し. 平均を算出し,記述統計量を求めた。次に,群間. た。一方で,これ以外の因子では有意差は見られ. でベースラインの得点が等しいかどうか検討する. なかった。. ために,群を独立変数,pre時点の各因子得点を. まず,プログラムの短縮化に関わる点から考察. 従属変数とするt検定を行ったところ, 「本来感」. する。介入群の「統合的志向」がpost-preで有意. で 有 意 傾 向 の 差 が 見 ら れ た(t(25)=1.72,p. に向上したのは,益子(2016)と同様の結果だっ. =.10) 。そのため,pre得点を基準とする各時期. た。これは,第一に,この特性の変化しやすさに. 4. の変化量を分析することにした 。. 96. よるものと思われる。益子(2018)によれば,こ.

(8) 大学生の統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果. Table 3.群ごとの各因子の記述統計量と,pre得点の t 検定 range. pre. post. follow. M. SD. M. SD. M. SD. 介入群. 4.78. 1.01. 5.19. 0.79. 5.00. 0.74. 統制群. 5.11. 0.58. 4.89. 0.84. 5.00. 0.65. 介入群. 5.25. 0.74. 5.42. 0.72. 5.58. 0.81. 統制群. 5.04. 0.88. 5.11. 0.96. 5.08. 0.70. 介入群. 4.97. 1.20. 5.17. 0.90. 5.28. 0.58. 統制群. 4.57. 1.26. 4.60. 0.97. 4.53. 0.93. 介入群. 4.72. 1.13. 5.22. 0.96. 5.00. 1.21. 統制群. 4.53. 1.12. 4.75. 1.13. 4.49. 0.96. 介入群. 3.49. 0.57. 3.36. 0.77. 3.31. 0.69. 統制群. 3.81. 0.67. 3.69. 0.81. 3.64. 0.72. 介入群. 2.84. 0.66. 2.86. 0.72. 2.60. 0.61. 統制群. 3.26. 0.90. 3.29. 0.87. 3.39. 0.90. 介入群. 3.46. 0.67. 3.17. 0.74. 3.41. 0.79. 統制群. 3.01. 0.64. 3.03. 0.56. 2.90. 0.52. t値. 統合的葛藤解決スキル 統合的志向 受容・共感 丁寧な自己主張 粘り強さ. 1-6 1-6 1-6 1-6. 1.10n.s. 0.61n.s. 0.80n.s. 0.42n.s.. 過剰適応傾向 他者志向 自己抑制 本来感. 1-5 1-5 1-5. 1.25n.s. 1.24n.s. 1.72†. †p<.10. の特性を習得するために必要なこととは,統合的. たのかもしれない。また,本研究のプログラムが. 解決という解決策があることを知ることであると. エクササイズや質疑応答のような自発的活動の時. いう。これは,他のスキルがエクササイズなどの. 間をかなり割愛していたため,生き生きと自分ら. 演習を通して身につけていくのとは異なる特徴で. しく取り組める時間が少なくなり,低下してし. ある。このような特徴があるために,「統合的志. まったのかもしれない。このことは,プログラム. 向」は他のスキルよりも習得されやすかったのだ. を改編するときに何を削除し,何を残すかに関す. ろう。また,このスキルに関わる内容のみが原版. る一定の指針を提供する知見であると思われる。. (益子,2016)と同じ構成のまま短縮されなかっ. また,介入群の「受容・共感」,「丁寧な自己主. たため,習得しやすさが維持されたことも,一因. 張」,「粘り強さ」で,post-pre間で有意差が見ら. かもしれない。. れなかったことも,益子(2016)と異なる結果だっ. 他方,介入群の「本来感」がpost-pre間で有意. た。この理由は,プログラムの時間が削減しすぎ. 傾向の低下を示したのは,益子(2016)とは異な. たためと思われる。本研究は,益子(2016)の90. る結果だった。この理由として,第一に,介入群. 分×4回のプログラムをさらに短縮し,90分×3. の「本来感」のベースラインが比較的高得点だっ. 回の構成へと改めた。その過程では,エクササイ. たことが考えられる。本研究の介入群の「本来感」. ズなどの演習や質疑応答の時間を削除した。その. のpre得点は3.46±0.67となっており,益子(2016). ため,「統合的志向」に比べて実践的経験を必要. で得られた3.02±0.92を大きく上回っている。こ. とするこれらのスキルを習得するまでには,至ら. のように,もともと高水準の「本来感」を持って. なかったのではないだろうか。. いたため,それ以上の向上させることは難しかっ. これは,介入群の「他者志向」が有意な変化を. 97.

(9) 益 子 洋 人. Table 4.時期ごとの各群の各指標の変化量と,変化量に対するt検定の結果,効果量 変化量. 比較. M. SD. 0.42. 0.89. 統制群 −0.22. 0.66. 介入群. 0.17. 0.67. 統制群. 0.07. 0.78. 介入群. 0.19. 0.68. 統制群. 0.03. 1.01. 介入群. 0.50. 0.70. 統制群. 0.22. 0.73. 介入群 −0.13. 0.33. 統制群 −0.12. 0.50. 介入群. 0.02. 0.54. 統制群. 0.03. 0.29. 介入群 −0.30. 0.43. 統制群. 0.02. 0.37. 介入群. 0.22. 0.61. 統制群 −0.11. 0.61. 介入群. 0.33. 0.98. 統制群. 0.04. 0.69. 介入群. 0.31. 1.02. 統制群 −0.04. 1.01. 介入群. 0.28. 1.20. 統制群 −0.40. 0.76. 介入群 −0.18. 0.48. 統制群 −0.17. 0.39. 介入群 −0.24. 0.52. 統制群. 0.13. 0.47. 介入群 −0.06. 0.32. 統制群 −0.11. 0.63. t値. 先行研究5の効果量. 効果量 d. g. r. d. r. 2.11*. .86. .86. .39. .55. .27. 0.32n.s.. .13. .13. .06. .67. .32. 0.45n.s.. .17. .18. .09. .81. .38. 0.94n.s.. .39. .38. .18. .49. .24. 0.04n.s.. .02. .02. .01. .04-.64. .03-.31. 0.08n.s.. .02. .03. .02. .12. .06. 2.00†. .82. .82. .37. .63. .31. 1.33n.s.. .54. .54. .26. 0.90n.s.. .37. .37. .18. 0.84n.s.. .35. .34. .17. 0.85n.s.. .74. .35. .17. 0.40n.s.. .02. .16. .08. 1.82†. .76. .74. .34. 0.25n.s.. .09. .10. .05. 統合的葛藤解決スキル post. post. post. post. pre 統合的志向. - pre 受容・共感. - pre 丁寧な自己主張. - pre 粘り強さ. 介入群. 過剰適応傾向 post. post. post. - pre 他者志向. - pre 自己抑制. - pre 本来感. 統合的葛藤解決スキル follow - pre 統合的志向. follow - pre 受容・共感. follow - pre 丁寧な自己主張. follow - pre 粘り強さ. 過剰適応傾向 follow - pre 他者志向. follow - pre 自己抑制. follow - pre 本来感. *. p<.05,†p<.10. 98.

(10) 大学生の統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果. 示さなかったこととも関連すると思われる。すな. そのため,「統合的志向」のように即座に効果が. わち,介入群の「他者志向」が変化しなかったの. 表れるのではなく,時間の経過に比例して効果が. は,統合的葛藤解決スキルがほぼ変化しなかった. 表れたものと考えられる。このような変化は益子. こ と の 影 響 を 受 け た も の か も し れ な い。 益 子. (2016)では未検討のものであり,統合的葛藤解. (2016)によれば,「他者志向」(の一部の特性). 決スキルを高める心理教育プログラムの効果を検. は,統合的葛藤解決スキルが向上するのにつれて. 討する上で,新しい視点を提供するものだといえ. 向上する, 二次的特性として位置づけられている。. るだろう。. 前述したように,本研究における統合的葛藤解決. ただし,「自己抑制」以外では,post-pre間で. スキルは,知識面に関わる「統合的志向」以外,. 有意差の見られた「統合的志向」においてさえ,. 有意な変化を示さなかった。その影響を受けて,. follow-pre間における有意差は見られなかった。. 「他者志向」 も変化してなかったのかもしれない。. これは,日々の生活の中に「統合的志向」を維持. この結果は,大学生の統合的葛藤解決スキルの. する要因が乏しいということかもしれない。田. 向上を目指す心理教育プログラムの必要最低限の. 中・宮前(2016)は,昨今の大学生の対人関係に. 時間を検討するために,一定の知見となりうる。. おいて,そもそも対人葛藤が生じるような深い関. すなわち,4側面のスキルをすべて向上させよう. 係になることを避けるスキルが,一定の有効性を. と思うならば,益子(2016)のように,少なくと. 持つことを指摘していた。また,井上(2005)も,. も360分程度の時間が必要になるものと思われる。. 一般的な大学生が対人葛藤に直面したときに,統. 逆に,もしもそれ以下の時間しかとれないような. 合的解決を目指すのではなく,解決を諦めてしま. 時間的制約のある場面でプログラムを実施するの. う様子を報告していた。このように,青年たちの. ならば,いくつかのスキルにターゲットを絞り,. 中で対人葛藤の解決を諦めることが日常的なこと. 集中的に実施する方が,変化を得やすい可能性が. であるのならば,たとえ一時的に「統合的志向」. あるといえるだろう。. の向上が叶ったとしても,統合的解決を志向する. 次に,プログラムの効果の持続性について検討. メリットは乏しいままであり,それを維持する要. する。follow-pre間の得点の変化に注目すると,. 因になりにくいと考えられる。この点に対しては,. 介入群の「自己抑制」は統制群に比べ,有意傾向. 統合的葛藤解決スキルを維持しうる生活上の要因. の低下を示した。この変化は,post-preにおける. を特定し,長期的,継続的プログラムを実施する. 「統合的志向」の変化に関連して生じた可能性が. などの工夫が,いっそう必要とされるだろう。. ある。 「自己抑制」は,「自分の気持ちを抑えてし まう方だ」 , 「自分の意見を通そうとしない」など の項目から構成されており,葛藤解決方略でいえ. まとめと本研究の限界. ば, 「相手の要求に従う」 「相手の望み通りにする」. 本研究では,先行研究(益子,2016)で用いら. などから構成される「服従方略」に近い(加藤,. れたプログラムの短縮版を作成し,必要最低限の. 2001) 。今回のプログラムは,「統合方略」,すな. 施行時間に関する示唆を得るとともに,follow時. わち,意見の相違に直面したときに,自他の希望. 点における効果をも検討した。分析の結果,短縮. を両方とも尊重しようとするスキルを扱っている. 版のプログラムでは,「統合的志向」以外のスキ. ために, 「服従方略」から「統合方略」への移行. ルに対する変化は乏しいことが示され,短時間で. を促していると考えられる。しかし,移行が生じ. 実施せざるをえない場合はターゲットスキルを焦. るためには,現実場面で意見の相違が生じたと. 点化する必要のあることが示唆された。また,. き,獲得した「統合的志向」に照らして解決策を. follow-pre間の群間比較から,介入群の「自己抑. 検討する経験が必要になるのではないだろうか。. 制」が低下した可能性が示され,統合的葛藤解決. 99.

(11) 益 子 洋 人. スキルへの介入は長期的に見れば過剰適応傾向の. 註. 「自己抑制」を低下させるかもしれないこと,し かし,スキル自体の向上に関する長期的な変化は 限定的だったため,プログラムの効果を維持する 要因を特定する必要性があることが示唆された。. 1.B,C専攻は隣接領域であり,大学院で1つの専攻に まとまる。 2.χ 2検定により対象者の群と性別の偏りを確認した結. 。 果, 有意な偏りは見られなかった( χ 2⑴=1.99,p=.16). 本研究の限界として,第1に,協力者数と各群. 3.受講者には第2学年の学生も含まれていたが,類似. の割付の課題が残されている。本研究の協力者数. した属性の統制群を設定できなかったため,介入群か. は介入群9名,統制群18名であり,充分な人数で. らは除外している。. あるとは言い難い。また,B,C専攻は,比較的 類似した専攻ではあったものの,必ずしも均一な 母集団であったとは言い切れない可能性がある。. 4.本研究のように,基準となる得点と,比較する得点 の差を別々に分析した先行研究として,たとえば,太 幡(2016,2017)がある。 5.益子(2016)による。該当部分のみ示した。. したがって,将来的には,均一な母集団を対象と した無作為化比較研究などによって,より厳密な. 引用文献. 介入を行う必要がある。 第2に,剰余変数の影響を検討できていないと いうことが挙げられる。心理教育プログラムの効 果を左右する要因は,プログラムの内容以外に,. 井上 孝代(2005) .あの人と和解する 集英社新書 石津 憲一郎・安保 英勇(2008).中学生の過剰適応傾向 が学校適応感とストレス反応に与える影響 教育心理 学研究,56,23-31.. 実施者や事前学習時間,参加の動機づけや,プロ. 伊藤 正哉・小玉 正博(2005).自分らしくある感覚(本. グラム以外のカリキュラムなどにも左右されう. 来感)と自尊感情がwell-beingに及ぼす影響の検討 . る。本研究では充分な協力者が得られなかったこ ともあり,これらの要因の統制が充分ではなかっ た。今後はより多数の協力者を募り,交絡要因を 統制した上で,厳密な効果を検討していくことが 求められるだろう。 第3に,従属変数が限定的であるということが 挙げられる。本研究では,二次的変数として過剰 適応傾向のみを取り上げた。しかし,統合的葛藤 解決スキルは,対人関係における様々な変数との 関与が予想されるものである。それらに対し,本. 教育心理学研究,53,74-85. 神谷 栄治(2008).青年期の臨床心理学 永井 撤(監) 井上 果子・神谷 栄治(編)思春期・青年期の臨床心理 学(pp.91-106)培風館 加藤 司(2001) .対人ストレス過程の検証 教育心理学研 究,49,295-304. 古村 健太郎・戸田 弘二(2008) .親密な関係における対 人葛藤 北海道教育大学紀要(教育科学編) ,58,185195. 益子 洋人(2013) .大学生における統合的葛藤解決スキル と過剰適応との関連-過剰適応を「関係維持・対立回 避的行動」と「本来感」から捉えて- 教育心理学研究, 61,133-145.. プログラムがどのような影響を示すかについて. 益子 洋人(2016) .教員養成課程に在籍する大学生の統合. は,未検討のままである。今後は,対人関係に関. 的葛藤解決スキルの向上を目指す心理教育プログラム. わる様々な変数を導入し,多面的な切り口から, プログラムの効果を検討していく必要がある。 以上のような限界はあるとしても,本研究では, 統合的葛藤解決スキルを高める心理教育の効果を 得るための一定の知見を示し,未だに介入方法に 関する知見の乏しい過剰適応傾向への一定の効果. の効果 学校メンタルヘルス,19,142-152. 益子 洋人(2018) .教師のための子どものもめごと解決テ クニック 金子書房 Rahim, M. A., & Bonama, T. V. (1979). Managing organizational conflict: A model for diagnosis and intervention. Psychological Reports, 44, 1323-1344. 佐藤 寛・今城 知子・戸ヶ崎 泰子・石川 信一・佐藤 容 子・佐藤 正二(2009).児童の抑うつ症状に対する学. を示すことができた。本研究の意義は,これらの. 級規模の認知行動療法プログラムの有効性 教育心理. 点にあるといえるだろう。. 学研究,57,111-123.. 100. Seren, S., & Ustun, B. (2008). Conflict resolution skills of.

(12) 大学生の統合的葛藤解決スキル・トレーニングの効果. nursing students in problem-based compared to conventional curricula. Nurse Education Today, 28, 393-400. 太幡 直也(2016) .大学生のチームワーク能力を向上さ せるトレーニングの有効性 教育心理学研究,64, 118-130. 太幡 直也(2017).大学生のチームワーク能力を向上させ るトレーニングの有効性 教育心理学研究,65,305314. 田中 圭・宮前 淳子(2016).浅い関係で用いられるスキ ルに関する研究 カウンセリング研究,49,139-150. Thomas, K. W. & Kilmann, R. H. (1974). ThomasKilmann conflict mode instrument. Tuxedo, NY: Xicom.. . (札幌校准教授). 謝 辞 調査への協力依頼を快く引き受けて下さった, 北海道教育大学札幌校の青山眞二先生,池田千紗 先生,齊藤真善先生,千賀愛先生,本庄十喜先生, 三浦哲先生,安井友康先生,同釧路校の浅井継悟 先生に,心から感謝申し上げます。また,貴重な お時間を割いて調査に協力してくださった学生の 皆さまに,厚くお礼を申し上げます。. 101.

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参照

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