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スキントラブルのある成人期女性の気分改善における岩井式メイクセラピーの効果について

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(1)51. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. ■資料. スキントラブルのある成人期女性の気分改善における 岩井式メイクセラピーの効果について カルデナス 暁 東* 田 中 克 子*. キーワード:看護,メイクセラピー,成人期女性,気分評価尺度,ストレス. Ⅰ.はじめに 近年,年代や性別を問わず,日本人の「外見・見た目」. 象とした研究では,患者は皮膚状態の周期的な変化に応じ たスキンケアやメイクアップについて困っていたことが明 らかになった(カルデナスら,2012) .女性ホルモンの分. に対する意識はますます高くなってきている.こういった. 泌量の周期的な変化によって,女性の皮膚の状態も周期的. 状況の中,特に女性の社会進出により,一昔前と比べ,女. に変化している.このような周期的な変化に花粉や PM2.5. 性は妻・母親・嫁といった家庭における役割以外に,自立. などの外部環境影響を加え,湿疹やドライスキンなどのス. した社会人としてより多くの社会役割を担っている.これ. キントラブル(Kiriyama K.et al, 2003)を誘発し,それに. らの役割を果たすため,意識・無意識を問わず自分の意図. よって思い通りにメイクアップできない女性も少なくない. した印象を相手にどのように与えるかといった「印象管. と推測される.したがって,自分らしさを表現できるメイ. 理」行動を日々行っている.一般的に「印象管理」の技法. クアップを楽しめるために,皮膚の状態を整えることも重. としてメイクアップ,ヘアスタイル,ファッションなどが. 要であると考える.. あげられる。その中のメイクアップには, 「弱点克服」の側 面や「個性強調」の側面, 「他者との協調」の側面が含まれ る(大坊ら,2009)ため,印象をコントロールするための. Ⅱ.研究目的. 重要な技法といえる.我々は子どもの頃から家族をはじめ. 本研究の目的は,成人期女性の気分の改善とストレスの. た周囲の人々との関係性を通して形成された自己概念をも. 軽減において岩井式メイクセラピーの効果を検証すること. とに,日々メイクアップを駆使し,自己表現と社会への適. であった.. 合とのバランスを調整している(大坊ら,2009) .つまり, メイクアップは,その人のアイデンティティの確認を演出 し,そして,社会生活における対人コミュニケーションを 円 滑 に す る た め の 印 象 管 理 の 方 法 で も あ る( 大 坊 ら, 2009) . その人の主体性を重んじた印象管理のメイクアップとし. Ⅲ.用語の定義 1.岩井式メイクセラピー 化粧心理学や色彩心理学などの心理学の知見を活用し, その人が語った「なりたい自分像」を日常メイクで表現し. て岩井式メイクセラピー(岩井,2011)がある.これまで,. ていく方法である.. ボディイメージ再形成の過程にある成人期皮膚筋炎女性患. 2.メイクアップ. 者を対象にこのメイクセラピーを施した結果,患者の気分. ここでは,スキンケアの後に, 〈ベースメイクアップ. の 改 善 と ス ト レ ス の 軽 減 が み ら れ た( カ ル デ ナ ス ら,. (ファンデーションや仕上げパウダー) 〉 〈ポイントメイク. 2014) .この結果から,岩井式メイクセラピーは新たな看. アップ〉に使用するコスメティックスを顔に塗る行為とす. 護支援として,外見上の変化が生じた患者やスキントラブ. る(カルデナスら,2012) .. ルのある成人期女性の気分を改善しストレスを軽減させる. 3.スキンケア. 効果があると考える. また,研究者らの成人期アトピー性皮膚炎女性患者を対. ここでは, 〈顔の皮膚を清潔に保つ(洗浄) 〉 〈顔の皮膚の 乾燥を防ぐ(保湿) 〉 〈顔の紫外線から皮膚を守る(紫外線 防御) 〉のことを指す(カルデナスら,2012) .. *. 大阪医科大学看護学部. 連絡先:カルデナス暁東 〒569−0095 大阪府高槻市八丁西町7番6号 Email:[email protected] 2020年1月16日受付 2020年10月28日受理 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号(2021年)p51−55. Ⅳ.研究方法 1.研究デザイン 本研究は前後比較研究であった..

(2) 52. カルデナス,ほか:スキントラブルのある成人期女性の気分改善における岩井式メイクセラピーの効果について. 2.研究対象者. 4ステップでは,片側を手本にしながら残りの半分の顔を. 1)対象者のリクルート方法. 対象者自身がメイクアップする.. 対象者の条件や研究の主旨,研究者の連絡先などを明記. 2)データの収集方法. したポスターを作成し,研究者の所属先や近隣の公的機関. 岩井式メイクセラピーの実施前後に「気分評価尺度短縮. に掲示した.研究に協力意思のある方から研究者に連絡す. 版(POMS)」への記入と唾液アミラーゼ量の測定を行った.. るようにした. 2)対象者の条件. 「POMS 短縮版(30項目)」は,気分を評価する質問紙法 の一つとして開発され,対象者がおかれた条件により変化. 対象者の条件は,以下のように設定した. (1)20~50歳未. する一時的な気分,感情の状態を測定できるという特徴を. 満の閉経前の女性; (2)何らかの皮膚トラブルあるいは悩. 有している.信頼性と妥当性は検証され,臨床においてよ. みのある方; (3)研究の主旨に理解し協力に同意される方.. く活用されている尺度の一つである(横山,2013) .また,. 3.実施内容とデータの収集方法. 「緊張-不安」 「抑うつ-落ち込み」 「怒り-敵意」 「活気」. 1)内容. 「疲労」 「混乱」の6つの気分尺度を同時に評価することが. (1)岩井式メイクセラピー実施前 楽しく「なりたい自分像」をメイクアップで表現するた. 可能である.各項目が「まったくなかった」 (0点)から 「非常に多くあった」 (4点)までの5段階(0点~4点). め,皮膚状態を整えることも重要である.そこで,今回は. のいずれか一つを選択する。各項目の得点は40点から60点. 岩井式メイクセラピーを実施する前に,対象者らが皮膚状. の場合は「健常」で,一つでも25点以下や75点以上(活気. 態に応じたスキンケアを行えるため, 「よりよい皮膚状態. 尺度の75点以上は除く)の尺度がある場合は, 「精神科医. を保つため:皮膚の周期的な変化を考慮したスキンケア」. などの専門医の受診を考慮」とされている(横山,2013) .. についてグループ講座を行った.その際に,研究者の所属. 唾液アミラーゼ量の測定はニプロ㈱社製の唾液アミラー. 先の研修室にて,独自作成したリーフレットと講演資料を. ゼモニターセットを使用した(中野ら,2011) .唾液は採. 用いていた.グループ講座は, 「①月経周期における女性ホ. 血による身体的・精神的苦痛がないため,適確に人間のス. ルモンの分泌量の変動について」 「②月経周期において生. トレスを客観的に評価する指標として使用されている.唾. じやすい皮膚トラブルについて」 「③月経周期におけるス. 液アミラーゼ量は客観的な急性ストレスのマーカーとし. キンケアの工夫点について」の3つの内容によって構成さ. て,研究に多用されるようになってきており,唾液アミ. れ,質疑応答を含め60分程度であった.次回の岩井式メイ. ラーゼ量の増減と主観的ストレス度や生理学的な指標とか. クセラピーまで,対象者らに皮膚状態を整えるように依頼. なりの程度高い相関関係が存在している(辻ら,2007;牛. した.. 木ら,2011) .唾液アミラーゼ活性はストレス負荷に対す. (2)岩井式メイクセラピーの実施. る応答性が唾液コルチゾルに比べて早く,一般的に急性の. グループ講座の2週間後に,対象者らの予定に合わせて. ストレッサーへの反応を評価する指標とされている(萩野. 研究者の所属先の研修室にて,メイクセラピスト資格を有. 谷ら,2012) .測定モニターが開発され,臨床実践の場で. する研究者によって,個別的に岩井式メイクセラピーを実. 使用されている.測定器具の説明書により,唾液アミラー. 施した(60分程度) .. ゼ の 測 定 値 が30KU/L 未 満 が「 ス ト レ ス が な い 」 ,30~. 本研究で用いられた岩井式メイクセラピー(岩井,2011). 45KU/L が「ややストレスがある」 ,46~60KU/L が「スト. は,化粧心理学や色彩心理学などの心理学の知見を活用. レスがある」 ,61KU/L 以上が「ストレスがかなりある」と. し,その人が「なりたい自分像」を日常メイクで表現して. 判定される.. いく方法である.メイクアップスキルの指導のみでなく,. 4.データの分析方法. 対象者が自身の「なりたい自分像」を語ることで,対象者. 本研究の岩井式メイクセラピーの効果は,メイクセラ. は自分に関心,自信をもたせるというかかわりをすること. ピー前後の POMS 得点と唾液アミラーゼ量の変化を用い. が特徴である.また,決して施術側の主観的な判断でメイ. て評価した.分析にはノンパラメトリック検定を用いて,. クアップせず,対象者の〈自己表現のためのメイクアップ〉. 有意差を5%以下とした.. という考えを基本としている.目標は単に対象者の外見を 良く見せるためだけでなく,今後の社会生活を自分らしく 前向きな気持ちで送ってもらうことである.. Ⅴ.倫理的配慮. 岩井式メイクセラピーは,主に4つのステップによって. 研究協力は自由意思に基づくこと,いつでも自由に研究. 構成されており,第1ステップでは,周囲の人々に与えて. 協力を中止することが可能であること,それによる不利益. いる印象と本人が与えたかった印象( 「なりたい自分」 )に. は一切被らないこと,データの厳重な管理を行うこと,提. ついて,メイクセラピストである研究者の問いかけによっ. 供されたデータを研究終了後は確実に破棄すること,研究. て,対象者が自分の言葉で語る.第2ステップでは,対象. 成果を公表する際に個人特定ができないように配慮するこ. 者が語った「なりたい自分」を対象者の顔の半分にメイク. となどを口頭および文章にて説明し,同意書への署名にて. セラピストがメイクアップを施す.第3ステップでは,第. 研究協力への同意が得た.なお,本研究は,大阪医科大学. 2ステップで顔の中で作られたビフォー&アフターに基づ. 研究倫理委員会の承認(1151)を得た上で実施した.. き,新たな気づきを見出するため,対象者と対話する.第.

(3) 53. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. 膚トラブルがなく,全員に岩井式メイクセラピーの施行が. Ⅵ.結果. 可能であると判断された.. 1.対象者の概要. 2.POMS 得点の変化. 研究対象者10名の平均年齢は37.6±9.9歳(22歳~49歳) であった.10名のうち,既婚者が9名(3名専業主婦,6. それぞれの対象者の POMS 得点は,表1に示していると おりであった.岩井式メイクセラピーの前後の各尺度の平. 名有職者) ,未婚者が1名(大学生)であった.対象者全員. 均得点では, 「緊張-不安」43.5±6.79から43.3±8.17に,. は皮膚状態に影響を与える慢性疾患と診断されていない. 「抑うつ-落ち込み」46.6±5.74から45.4±5.25に, 「怒り-. が,8名は自身の皮膚状態を「ドライスキン」と認識し,. 敵意」42.9±5.84から42.1±4.38に, 「活気」52.7±11.61か. ほかの2名は花粉や PM2.5等によって皮膚の発赤と掻痒. ら53.3±11.58に, 「疲労」42.4±7.72から41.8±6.81に, 「混. 感が生じると認識していた.本研究に参加するまでは,9. 乱」46.5±8.03から45.9±7.22に,全尺度において前後の有. 名は皮膚状態の周期的な変化を実感していたものの,日頃. 意差がなかったものの(p ≧ .05) ,ネガティブな尺度の得. のスキンケアに特別な工夫していなかった.今回もグルー. 点が低下傾向で,ポジティブな尺度の得点が上昇傾向で. プ講座からメイクセラピーの実施まで,6名は自分の皮膚. あった(図1) .また,活気尺度を除き,各尺度の得点が. の状態に応じてスキンケアを工夫しなかった.その理由に. 【25点以下や75点以上】の精神科医などの専門医の受診を. は, 「新しい化粧品を買いに行くのは面倒」 「そんなにひど. 考慮する必要性のある対象者がいなかった.. くなっていないから」などがあった.しかし,明らかな皮. 60. 52.7 53.3. 50. 46.6 45.4. 43.5 43.3. 42.9 42.1. 46.5 45.9. 42.4 41.8. 40 30 20 10 0. 前. n=10. 後 図1 POMS 平均得点の変化 表1 岩井式メイクセラピー実施前後の POMS 得点と唾液アミラーゼ量. 番号. POMS 得点 研究対象者属性. 「抑うつ- 「緊張-不安」 「怒り-敵意」 落ち込み」. 「活気」. 「疲労」. 「混乱」. 唾液アミ ラーゼ量 (KU/L). 年齢. 職業. 婚姻状況. 前. 後. 前. 後. 前. 後. 前. 後. 前. 後. 前. 後. 前. 後. 1. 30代. 主婦. 既婚. 36. 36. 39. 39. 37. 37. 65. 61. 35. 35. 36. 36. 57. 24. 2. 20代. 看護師. 既婚. 52. 48. 54. 54. 40. 40. 44. 48. 47. 47. 54. 54. 27. 29. 3. 20代. 看護師. 既婚. 39. 36. 42. 42. 40. 42. 77. 77. 35. 35. 39. 39. 33. 21. 4. 40代. 主婦. 既婚. 39. 39. 42. 42. 42. 42. 55. 55. 39. 39. 45. 45. 19. 12. 5. 40代. 事務職. 既婚. 52. 50. 51. 51. 53. 50. 41. 41. 61. 57. 57. 54. 34. 15. 6. 40代. 介護職. 既婚. 41. 41. 49. 49. 40. 40. 51. 53. 39. 39. 45. 45. 12. 13. 7. 40代. 自営業. 既婚. 34. 34. 42. 42. 40. 40. 60. 65. 37. 37. 36. 36. 33. 28. 8. 40代. 事務職. 既婚. 52. 61. 42. 42. 37. 40. 44. 48. 43. 41. 45. 51. 49. 47. 9. 20代. 大学生. 未婚. 45. 45. 51. 51. 50. 50. 46. 44. 45. 47. 57. 54. 20. 55. 10. 40代. 主婦. 既婚. 45. 43. 54. 42. 50. 40. 44. 41. 43. 41. 51. 45. 50. 41.

(4) 54. カルデナス,ほか:スキントラブルのある成人期女性の気分改善における岩井式メイクセラピーの効果について. (KU/L). 40. 33.4. 性に対応できなかったことも理由の一つであると考える.. p=.398. 30. 今後,双方向や体験型などの工夫や対象者の皮膚状態に合. 28.5. わせ複数回の開催,その都度対象者の皮膚状態を測定器具 で確認し,皮膚状態を視える化し個別なフィードバックす. 20. る必要があると考える. 2.スキントラブルのある成人期女性へのメイクセラピー. 10 0. の有効性について 次いで,岩井式メイクセラピーを施し,前後の POMS 得 前. 後. n=10. 図2 唾液アミラーゼ量の変化. 点と唾液アミラーゼ量の変化を用いてメイクセラピーの効 果を評価した.メイクセラピー後の POMS 得点において は,有意差がなかったものの,ネガティブな項目には低下 傾向,ポジティブな項目には上昇傾向,また唾液アミラー. 3.唾液アミラーゼ量の変化. ゼ量では減少がみられた.つまり,岩井式メイクセラピー. 表1に示しているとおり, 「ややストレスがある(30~. は対象者らのストレスを軽減し,気分を改善するには一定. 45KU/L)」と「ストレスがある(46~60KU/L)」対象者. の効果があったといえる。その理由としては下記の三つが. は岩井式メイクセラピー前の6名から後の3名に減少した.. あると考えられる.. メイクセラピー前後の唾液アミラーゼ量では有意差がな. 一つ目は,メイクアップには「リラクセーション効果」. かったものの(p=.398) ,33.4±14.77KU/Lから28.5±14.80KU/L. 「気分の高揚(対外)」 「気分の高揚(対自)」 「安心感の増. に減少した(図2) .唾液アミラーゼ量の平均値では,スト. 加」 「積極性の向上」 (宇山ら,1990;大坊,2009)などの. レス度はメイクセラピー前の「ややストレスがある」から. 心理的効果や「ストレスの緩和」 (森地ら,2006)などの. メイクセラピー後の「ストレスがない」に変化した.. 生理的効果がある.メイクセラピーの際に,基礎化粧品を 肌につけることからメイクブラシでポイントメイクを仕上. Ⅶ.考察. げるまでの一連のかかわりをとおして,対象者らにこれら の効果を与えたと考える.先行研究では,健康な女性を対. 本研究では,20代前半から40代後半までの対象者10名の. 象に,リフレクソロジーやマッサージのような快の刺激の. うち9名が既婚者,また仕事と家庭を両立している対象者. 実施前後に,POMS 得点では有意差はなかったもののすべ. が6名であった.対象者らは妻,母親,労働者などの役割. ての得点に減少がみられた報告(駿河ら,2002;松岡ら,. を担っていることが推測できる.また,対象者らは社会に. 2000)がある.今回もメイクアップは対象者にとって快の. おける生殖性や生産性といった発達課題を果たさなければ. 刺激となり,このような結果が得られたと考える.. ならない人生の中で最も長い期間にいる.これらの役割を. 二つ目は, 「なりたい自分像」を表現するメイクアップに. 果たし発達課題を解決するため,成人期女性にとっては,. よって,自己の満足感,自信度を高めることができる(大. より満足とした自分らしい日々の時間を過ごしてもらうこ. 坊ら,2009)といわれている.今回は「なりたい自己像」. とが大切である.本研究では,スキントラブルのある成人. といった個別性のあるニーズを研究者のかかわりによって. 期女性の気分の改善やストレスの軽減における岩井式メイ. 実現し,対象者らがそれを表現する日常メイクの実体験を. クセラピーの有効性を検証した.. とおして,自分の中でポジティブな感情が高まった結果,. 1 . メイクアップを楽しめるためのスキンケアの知識やス. 有意差がなかったものの,POMS のポジティブな項目得点. キル提供のあり方について. の上昇やネガティブな項目得点の減少と唾液アミラーゼ量. 皮膚状態によってはメイクアップの出来映えには差が生. の減少がみられたと考えられる.. じ,その女性の気分にも影響を与えてしまう. 「なりたい自. 三つ目は,メイクセラピーの際に,傾聴や共感,承認な. 分像」のメイクアップを楽しめるために,皮膚状態をより. どのカウンセリング的技法を用いた対話式のかかわりは,. よい状態を維持する必要がある.そのため,岩井式メイク. 尺度の得点においては有意差がみられなかったが得点の改. セラピー実施前に,皮膚状態に応じたスキンケアについて. 善傾向がみられたため,対象者らの「緊張-不安」 「抑うつ-. グループ講義の形式で知識・スキルを提供した.しかし,. 落ち込み」などのネガティブな気分を緩和させたと考えら. 皮膚状態の周期的な変化を実感していた対象者は9名いた. れる.今回の結果から,岩井式メイクセラピーは対象者の. にもかかわらず,実際にその変化に応じたスキンケアを実. 気分,感情にプラスな影響を与え,心理状態を改善するこ. 践したのはわずか4名であった.その理由としては,今回. とが期待できるといえる.. 10名のうち8名はドライスキンではあったが,皮膚症状が. 3.本研究の限界と今後の課題. 生じる慢性疾患の患者ではなかったこと,皮膚状態の周期. しかし,本研究の限界として,対象者が少なかったため,. 的な変化の自覚が少なくスキンケアを変更する必要がない. 岩井式メイクセラピーと対象者の気分状態の因果関係にお. と判断されたことが考えられる.また,質疑応答の時間を. いて,統計上での有効性が検証できなかったことがあげら. 設けたものの,グループ講義の形式であったため,一方的. れる.今後疾患や治療などの背景も踏まえた上,思春期か. な情報提供となり,対象者の皮膚状態やスキンケアの個別. ら老年期まで対象者の年齢幅や対象者の人数を拡大しさら.

(5) 55. 日本慢性看護学会誌 第15巻 第1号 2021年. なる検証が必要である. 謝 辞 本研究にご協力いただきました対象者の方々に御礼申し 上げます.なお,本研究の結果は第13回日本慢性看護学会 学術集会にて発表し,科学研究費(基盤研究(C)24593342) の一部の成果をまとめたものであった. 利益相反 本研究における利益相反は存在しない. 文 献 カルデナス暁東,西尾ゆかり,福井奈央,他(2012) :ア トピー性皮膚炎女性の月経周期におけるスキンケアと メイクアップの現状とニーズ,大阪医科大学看護研究 雑誌,2,29-39. カルデナス暁東,大塚俊宏,森脇真一,他(2014) :ボディ イメージの再形成に向けたメイクセラピーを取り入れ た看護ケアを実施した皮膚筋炎女性患者の1例,大阪 医科大学雑誌,73 (3) ,81-85. 岩井結美子(2011) :メイクセラピー検定2級対策,NPO 法人日本人材教育協会メイクセラピー検定事務局,東京. Kiriyama K., Sugiura H., Uehara M. (2003) : Premenstrual deterioration of skin symptoms in female patients with atopic dermatitis, Dermatology, 206 (2) , 110-112. 松岡治子,佐々木かほる(2000) :マッサージによるリラ クセーション効果に関する実験的研究-バイタルサイ ンと日本語版 POMS による検討,看護技術,46 (16) , 95-100. 森地恵理子,広瀬統,中田悟,他(2006) :メイクアップ. の心理的効果と生体防御機能に及ぼす影響,日本福祉 大学情報社会科学論集,9,111-116. 中野敦行,山口昌樹(2011) :唾液アミラーゼによるスト レスの評価,バイオフィードバック研究,38 (1) ,4-9. 大坊郁夫編集,高木修監修(2009) :シリーズ 21世紀の 社会心理学9 化粧行動の社会心理学 化粧する人間 のこころと行動,6-8,103-134,北大路書房,京都. 萩野谷浩美,佐伯由香(2012) :ストレス評価における唾 液αアミラーゼ活性の有用性,日本看護技術学会誌, 10 (3) ,19-28. 駿河絵理子,峯岸由紀子,他(2002) :健康成人を対象と したリフレクソロジーによるリラックス反応の評価, 日本看護学会論文集看護総合,33,218-220. 辻弘美,川上正浩(2007) :アミラーゼ活性に基づく簡易 ストレス測定器を用いたストレス測定との関連性の検 討,大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要,6,63-73. 宇山侊男,鈴木ゆかり,互恵子(1990) :メーキャップの 心理的有用性,日本香粧品学会誌,14 (3) ,163-168. 牛木和美,佐藤友香,新井勝哉,他(2011) :唾液分泌物 によるストレス評価の検証 国家試験直前の学生を対 象として,臨床病理,59 (2) ,138-143. 横山和仁編(2013) :POMS 短縮版手引きと事例解説,金 子書房,東京. A Verification of a Make-up Therapy Nursing Care Improvement Mood States for Adult Female Xiaodong Cardenas*, Katsuko Tanaka* Osaka Medical College. *. Key words: nursing, make-up therapy, adult female, profile of mood states, stress.

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