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不動産仲介の兼任制度に関する理論的基礎について

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Academic year: 2021

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(1)

山崎福寿

1

・瀬下博之

2

・定行泰甫

3 1正会員 博士(経済学)日本大学 経済学部(〒101-8360東京都千代田区神田三崎町1-3-2) 2正会員 博士(経済学)専修大学 商学部(〒101-8425東京都千代田区神保町3-8) 3正会員 博士(経済学)早稲田大学 政治経済学術院(〒169-8050東京都新宿区西早稲田1-6-1) 日本では、同一の不動産仲介業者が売り手と買い手の代理人になる兼任制度(いわゆる「両手取引」) による不動産取引が常態化しており、それが既存住宅市場を停滞させる一つの要因であるといった指摘が 多く見受けられるが、それらは理論的な根拠に基づいて論じられてきたわけではない。本稿の目的は、兼 任制度とクロス・エージェンシー(いわゆる「片手取引」)で、価格付けと取引確率にどのような違いが 生じるのかを明示的に分析するための理論的基礎を提供することである。取引確率や社会的余剰の観点で 評価すると、両制度の優劣が売り手の異質性の度合い(留保価格の分散)に応じて変化することが示される。 また、兼任制度における提示価格は比較的高いが、兼任制度からクロス・エージェンシーへの変更が強制 される制度の下では、提示価格が大幅に値引きされる可能性があることが理論的に示される。

Key Words: dual agency, cross agency, real estate transaction, house price

1.

はじめに 既存住宅取引の低迷の原因として、不動産仲 介取引におけるいわゆる両手取引の問題が、し ばしば指摘される1。日本では同一の不動産仲介 業者が売り手と買い手の両者の代理人になるこ とが常態化しており、その際に両方から仲介 手数料を取ることができる。以下では、この いわゆる両手取引を代理人の「兼任制度(

dual

agency

)」と呼ぶことにする2。これに対して売 り手と買い手の代理人が異なる場合を「クロス・ エージェンシー(

cross agency

)」と呼ぶこと にする3 1 日本経済新聞朝刊(2015年12月21日付)第1面参照 のこと。 2 ちなみに、同一の弁護士が原告と被告の双方の弁護をす ることは双方代理と呼ばれ、弁護士法によって禁止されて いる。 3 ここで兼任でないケースを専任と呼ばないのは、日本で 中古住宅市場活性化小委員会(

2015

)は、 この兼任制度の下では、いわゆる「囲い込み」 が生じる結果、不動産取引の信頼性が損なわれ ていると論じている。ここで「囲い込み」とは、 売り手と買い手の双方から手数料を得たいがた めに、他の業者への物件の紹介を暗黙的に拒否 することを言う。その結果、売り手と買い手の 両者から合意を得るために利益相反が生じ、不 当に低い価格や高い価格が提示されて、取引さ せられるのではないか、という疑念が双方に生 じる。このことが既存住宅の取引を停滞させて いる一つの原因だというのである。 しかし、この不動産売買における兼任制度に よって利益相反が生じるとしても、そのことが は専任媒介という取引形態があるので、これと混同しない ようにするためである。ちなみに専任媒介とは、仲介業者 の一社を選んで、独占的に売買契約の交渉を委託すること をいう。これとは別に、複数の業者に仲介を委ねることを 一般媒介という。

(2)

不動産価格を不当に歪め、取引を阻害している とする議論は、決して説得的なものではない。 たしかに、仲介業者の手数料の上限は、告示に よって売買価格の一定割合(売り手と買い手そ れぞれの上限は

3%

まで)に設定されており4 提示される取引価格(

offer price

、以下、単に「提 示価格」と呼ぶ)を高めるほど、売り手と買い 手双方の代理業者が手数料収入を高められる可 能性がある。しかし、この点は程度の違いはあ るもののクロス・エージェンシーの場合であっ ても生じる。さらに提示価格の上昇は取引確率 を下げてしまうので、兼任制度の代理人にとっ ても必ずしも望ましくない5。そのため、兼任制 度とクロス・エージェンシーの間で提示価格と 取引確率にどのような違いが生じるのかを明示 的に分析する必要がある。 この目的のために、まず、二つの代理人制度 の違いを明確にしておこう。兼任制度では、代 理人が売り手と買い手のいずれの利益を優先す るかについては売り手と買い手にとって不確実 な制度である6。したがって、兼任制度の下では、 売り手も買い手も代理人に対して自分の有する 情報を十分に開示して代理活動を依頼するよう な関係は必ずしも成立しないと考えられる。こ のとき、売り手も買い手も代理人から提示され る価格を見て最終的な取引の諾否を決めるのが 自然であろう。 これに対して、クロス・エージェンシーでは、 各代理人は、その依頼人の利益を優先して行動 することになるため、売り手と買い手は、自分 4 この媒介手数料の上限は、宅地建物取引業法では、国土 交通大臣の定めるところによるとだけされており、その根 拠は1970年(昭和45年)の建設省告示(1552号)で定 められている。それによると、不動産の売買取引において は、400万円以上の不動産取引における媒介手数料の上限 は(売り手と買い手のそれぞれから)定額6万円+取引 比例部分3%(消費税を除く)と定められている。 5 このほか、評判(レピュテーション)のメカニズムが働 くので、買い手代理人の価格引き上げにはチェックがかか ると考えられる。この点に関する評判のメカニズムについ てはLevitt and Syverson(2008)参照のこと。

6 代理人が自らの利益を最優先に考えることは、言うまで もない。 の有する情報を代理人に(少なくとも兼任制度 よりは)明確に開示した上で取引の成否を依頼 すると考えられる。すなわち、買い手は受け入 れ可能な最大価格を示した上で物件の探索と取 引の諾否を依頼し、売り手は売却したい物件の 受け入れ可能な最低価格を示した上で、取引相 手を探してもらうことを依頼するだろう。 本稿では、両制度の本質的な違いに焦点を 当てるために、通常の委託・代理人(

princi-pal-agency

)関係の問題は考慮しない。通常の 問題では、委託者が観察できない代理人の行動 をどのようにインセンティブ付けるかに論点が 置かれるが、ここでは、単に売り手と買い手の 情報を各代理人がどの程度把握できるかに着目 し、二つの制度間における情報利用の効率性の 観点から両制度を比較する。十分な契約の下(す なわち、各制度の下での通常の委託・代理人問 題への適切な対応が取られているという前提に おいて)、兼任制度とクロス・エージェンシー では、専任での代理人であるクロス・エージェ ントの方が、兼任での代理人よりも依頼人の情 報をより的確に把握できるという仮定が想定さ れうる。なぜなら、複数の依頼人がいる状況で は、それぞれの利益衡量の下で最適契約が書け るが、これは双方代理よりもクロス・エージェ ンシーの方がより適切に依頼人の利益を反映し た契約になりうるからであり、そうであれば、 依頼人はより積極的に情報を開示するようにな るだろう。 上記のような状況を単純化して表現するため に本稿では、クロス・エージェンシーでは代理 人が依頼人の情報を知っており、兼任制度では 十分には知らないと仮定する。 兼任制度の合理性を評価するためには、上記 のような異なる制度の下での取引主体の行動様 式の違いを考慮したモデルを用いて理論的に検 討しなければならない。そのような検討無しに、 既存住宅価格や取引量自体を低迷させる要因と して、仲介業者の兼任制度を一概に批判するこ とは、適切な議論とは言えない。 そこで、本稿では、兼任制度を評価するため の理論モデルを構築し、兼任制度の是非を検討

(3)

するための基礎を提供したい。

2.

モデル いま、ある特定の住宅を取引する状況を考 える。この住宅に対する売り手の留保価格を

v

s とし、買い手の留保価格を

v

Bで表す。ただし、 この留保価格は各個人の選好に基づいており、 それぞれに異なると考えられる。そこで、この 住宅の買い手の留保価格の分布を

F、売り手の

留保価格の分布を

G

とし、その確率密度をそ れぞれ

f

g

で表す。買い手や売り手の留保価 格の分布に関する情報は、代理人(エージェン ト)は、それぞれ知っているが、一般の売り手 や買い手はその分布の形状などについては知ら ないとする7。これは代理人が個々の売り手や買 い手よりも住宅市場に関する情報を多く有して いることを反映している。ここで不動産の提示 取引価格(提示価格)を

p、手数料率を

t

とする。 このとき、手数料率

t

を所与として社会的に 効率的な状況(

first best

)を達成する取引価格 は、取引からの社会的期待総余剰を最大にする ことであるから、次式を満たすように決まる8

p

∈ argmax

p

S W(p)



vS≤(1−t)p



vB≥(1+t)p

(v

B

− v

S

) f (v

B

)g(v

S

)dv

B

dv

S

1

) そのため、このように定義される提示価格

p

∗ は、以下の最大化のための一階の条件を満たす。 7 もし知っていれば、買い手や売り手は代理人を使う経済 合理性がなくなり、制度の是非を論じること自体の意味が なくなる。 8 手数料率は取引の成立確率に影響を与えることを通じて 社会的余剰に影響を与えるが、仲介者が受け取る手数料は、 売り手と買い手から支払われるため、社会的期待総余剰に は影響を与えない。

(1 − t)g((1 − t)p)



vB≥(1+t)p

v

B

f (v

B

)dv

B

+(1 + t) f ((1 + t)p)



vS≤(1−t)p

v

S

g(v

S

)dv

S

−p{(1 + t) f ((1 + t)p)G((1 − t)p)

+

(1 − t)(1 − F((1 + t)p))g((1 − t)p)} = 0

2

) なお、二階の条件は満たされると仮定する。 この上式の左辺第

1

項と第

2

項の和は、提示 価格の上昇にともなう限界的な取引確率の上昇 が社会的余剰を高める効果を示している。第

3

項は、提示価格の上昇が、限界的な取引確率の 変化を通じて社会的余剰を減らす効果を表して いる。

2.1

兼任制度のケース ある不動産仲介業者が、売り手と買い手双方 の代理人となる兼任制度を考える。このとき、 代理人は、売り手と買い手の両方に不動産の提 示価格

p

を提示し、両方が合意し取引が成立す ると、両者からそれぞれ、価格に対して定率

t

の手数料

2tp

を得る9。すなわち、売り手が受け 取る金額は、

(1 − t)p

、買い手が支払う金額は、

(1 + t)p

となる。 ここで、兼任制度の下では、代理人が売り手 と買い手のいずれの利益を優先して行動するの か必ずしも明らかではない。この点で売り手も 買い手も代理人に対して、自分の留保価格を正 しく開示するインセンティブを持たない10。そ 9 白川・大越(2016)が仲介業175者に対して実施した アンケート調査によると、約9割の業者がすべての取引 において上限基準の手数料を適用している。本稿でも手数 料率については、上限基準である3%を所与として分析す る。ちなみに、流通大手30者弱を対象とした調査による と、すべての仲介業者において1件当たりの平均仲介手 数料率が3%を超えており、上限の手数料で仲介が行われ ているだけでなく、兼任制度における取引が常態化してい る可能性が極めて高いことが推察できる(不動産流通機構, 2019)。 10買い手が自分の留保価格を正しく開示すれば、代理人に とってその留保価格で取引することが、仲介手数料を最大 にすることになる。なぜなら、そのとき、売り手が受け入

(4)

こで兼任制度では、代理人から提示される価格 を見て最終的な取引の諾否を決めると仮定しよ う。このとき、取引が成立する確率

Prob(p)

は、 支払う金額が買い手の留保価格よりも低く、か つ受け取る金額が売り手の留保価格よりも高い 確率であるので、次のように書ける。

Prob(p) = 1 − F((1 + t)p)G((1 − t)p)

3

) 代理人は自分が得る手数料収入の期待値を最 大にするように、提示価格

p

を両者に提示する ため、兼任制度の下で、代理人が売り手と買い 手に提示する取引価格

p

D は以下のように定義 される。

p

D

∈ argmax

p



(p)

≡ 2tp{1 − F((1 + t)p)}G((1 − t)p)

4

) すると、提示価格についての最大化のための一 階の条件は次式になる。 れる確率も最大化することになるからである。したがって、 買い手は自分の留保価格を正しく開示することから、何ら の利益を得られない。むしろ開示せずに、代理人から提示 される価格を自分で受け入れるかどうかを判断するほう が、期待利得は高くなる。 他方、買い手が留保価格を提示していないとき、売り手 にとっては、自分の留保価格を開示して取引した時の代理 人の買い手への提示価格は、兼任でないクロス・エージェ ンシーのケースと同じになるが、後で見るように、クロス・ エージェンシーの下では買い手エージェントは、値引きを 要求しないのに対して、兼任制度の下では、買い手自身は 値引きを要求してくる可能性がある。代理人が売り手の情 報を有していることを前提とすれば、買い手は代理人が提 示した価格が、売り手の留保価格以上であることを知って いる。そのため一般に値引きを要求し、買い手の留保価格 を知らない代理人はそれを売り手の留保価格以上である限 り受け入れてしまう可能性を否定できない。むしろ、開示 しない方が後で見るように取引価格は高くなる。そのため 兼任制度の場合、売り手が留保価格を正しく開示するイン センティブも、少なくともクロス・エージェンシーと比較 して小さい。

2t{1 − F((1 + t)p)}G((1 − t)p)

=

2tp(1 + t) f ((1 + t)p)G((1 − t)p)

− 2tp(1 − t)g((1 − t)p){1 − F((1 + t)p)}

5

) したがって、両者に提示される取引価格

p

D は 次式を満たす。

p

D

=

X(p

D

)

6

) ここで、

X(p) ≡

{1−F((1+t)p)}G((1−t)p) (1+t) f ((1+t)p)G((1−t)p)−(1−t){1−F((1+t)p)}g((1−t)p) である。最大化のための二階の条件が成り立っ ているとき、上記の方程式の解の安定性条件

|∂X(p

D

)/(∂p

D

)| ≤ 1

も満たされる11。

2.2

クロス・エージェンシーのケース 次に、売り手と買い手の代理人が異なるクロ ス・エージェンシーの場合を考えよう。このと き、まず売り手が代理人を通じて売却価格を 提示し、次に買い手側の代理人はその価格か ら値引きを要求するという手順で、最終的な 提示価格が決まると仮定しよう12。売り手側の 提示する価格を

p

0とし、買い手側が求める値 引き額を

x

で表すと、この最終的な提示価格は

p

C

=

p

0

− x

となる。さらにクロス・エージェ ンシーでは、代理人が売り手または買い手の代 理人として行動することが前提となる。そのた め、兼任制度との違いを明確化するために、売 り手も買い手も自分の有する情報(ここでは留 11ただし、∂(pD)/∂pD=−1のときには周期解として安定 性を満たす。また、∂(pD)/∂pD=1のときには安定解は不 決定(任意のp > 0が解)である。 12こうした交渉過程は現実的であると思われる。Kadiyali

et al.(2014)は、代理人が提示価格(Listing Price)を割 高に設定し、その後次第に値引きするという仮説を米国の

MLSデータを用いて検証している。この実証では、兼任

制度の方が、クロス・エージェンシーよりも、提示価格が 高く設定されることが見出されている。

(5)

保価格)を代理人に開示した上で取引の成立を 依頼するとしよう13 まず、買い手の代理人がどのように値引き額 を決めるかについて考えよう。クロス・エージェ ンシーの買い手代理人は売り手代理人から価格

p

0を提示されることで、売り手の留保価格が

(1 − t)p

0以下であることを知るため、買い手 代理人の期待収入を最大化する値引き額

x > 0

は、以下の問題を解くことによって求められる。

x ∈ argmax

x

t(p

0

− x)



vS<(1−t)(p0−x)

g(v

S

)dv

S

G((1 − t)p

0

)

s.t. (1 + t)(p

0

− x) ≤ v

B

7

) 値引き額

x

p

0を所与として以下の一階の条 件を満たさなければならない。

−t

G((1 − t)(p

G((1 − t)p

0

− x))

0

)

−(1 − t)t(p

0

− x)

g((1 − t)(p

0

− x))

G((1 − t)p

0

)

=

0

8

) しかし、左辺は厳密に負となるので、

(1 + t)

(p

0

− x)

≤ v

Bであるかぎり、上の条件式は成立 しない。すなわち最適な値引き額は

x

=

0

なり、買い手代理人は値引きを要求しないこと 13もちろんクロス・エージェンシーであっても価格が高い ほど仲介手数料は高まるため、以下で見るように買い手代 理人は、売り手代理人からの提示価格を引き下げるインセ ンティブは持たないが、売り手の提示価格が買い手に開示 されるならば、買い手の留保価格まで、取引価格を引き上 げて買い手の利益を奪うことはできない。むしろ買い手と しては、正しい留保価格を開示しておくことが、無駄な物 件情報の提示を受けることにともなう費用を節約できる。 これに対して、売り手にとっては、留保価格を正しく開 示しないほうが、兼任制度の場合と同じになるので、後の 命題で見るように取引価格は高まることになるが、取引の 確率は低下する。特に、買い手代理人は、売り手代理人か ら提示された価格から値引きしようとするインセンティブ を持たないから、少なくとも売り手も兼任制度と比較する と正しく留保価格を開示すると考えられる。 になる。これは、買い手代理人にとっても、最 終的な提示価格が高いほど手数料収入が高くな るため、買い手が受け入れる限りは値引き交渉 しようとするインセンティブを持たないことを 意味している。 次に、売り手代理人の行動を分析しよう。売 り手代理人は、この買い手代理人の行動

x

=

0

を予想して行動する。すなわち、売り手側の代 理人が提示する価格は、その取引手数料収入の 期待値を最大にするように決まる。そのため、 売り手代理人の提示価格

p

C

=

p

0は次式を満た す。

p

C

∈ argmax

p

tp(1 − F((1 + t)p))

s.t. (1 − t)p ≥ v

S

9

) ここで、売り手代理人には売り手の留保価格

v

S が開示されており、これを制約条件として提示 価格を決める点が兼任制度との違いとなる。 一階条件は、

{1 − F((1 + t)p)} − (1 + t) f ((1 + t)p)p = 0

であり、内点解(制約条件が

binding

にならな い状況)を仮定すると、一階の条件から次式の 売り手代理人の提示価格を得る14

p

C

=

Y(p

C

)

10

) 14制約条件がbindingになる可能性を含めて考えた場合の 提示価格はmax{vS,pC}となるにすぎない。したがって、 この場合でも売り手の留保価格は、端点以外においては提 示価格の決定に影響を与えない。本稿の目的は、兼任制度 とクロス・エージェントで提示され、取引される価格の違 いに着目する点にある。このため、この仮定は、単に制度 的特性の影響を受けない端点解については、特に議論しな いことを示している。 なお、vSが提示価格に影響を与えていない以上、制約条 件は端点以外で意味を持たないので、内点を仮定しても議 論の一般性は失われない。また、任意の分布についてvS 未満の提示価格はなされないという前提で提示価格を比較 しているだけであるから、命題1が、解の安定性を満た す限り、任意の分布について成り立つことも言うまでない。

(6)

ここで、

Y(p) ≡

(1 + t) f ((1 + t)p)

1 − F((1 + t)p)

と定義され、二階の条件が満たされるとき、上 式の解の安定性条件

|∂Y(p

C

)/(∂p

C

)| ≤ 1

も満た される。 以上の結果から、兼任制度とクロス・エージェ ンシーの比較については、以下の結果が得られ る。 命題

1

.解の安定性が満たされる任意の分布に おいて、兼任制度の下での提示価格は、クロス・ エージェンシーの場合より高くなる。 証明.(

6

)と(

10

)式から、任意の

p > 0

につ いて次式が成り立つ。

X(p) >

1 − F((1 + t)p)

(1 + t) f ((1 + t)p)

=

Y(p)

ここで、

p

C

>

p

Dと仮定すると、

p

C

=

Y(p

C

)

>

X(p

D

)

=

p

Dが成立する。任意の

p > 0

につ いて

X(p)

>

Y(p)

であるから、Y(pC

)

>

X(p

D

)

>

Y(p

D

)

となる。従って、

Y(p

C

) − Y(p

D

)

p

C

− p

D

=

Y(p

C

) − X(p

D

)

p

C

− p

D

+

X(p

D

) − Y(p

D

)

p

C

− p

D

=

1 +

X(p

D

) − Y(p

D

)

p

C

− p

D

>

1

これは解の安定性条件と矛盾する。よって解の 安定性条件が満たされるとき、すなわち二階の 条件が満たされる時、pC

<

p

D。 ■ このような結果が得られるのは、兼任制度の 下では、代理人さえ売り手の留保価格を知らな いために、売り手に取引を拒否されるリスクを 低くしようとして、クロス・エージェンシーの 場合よりも提示価格を高める必要が生じるから である。すなわち、兼任制度の下では、代理 人(最終的には買い手)は売り手に情報レント (

informational rent

)を払わなければならない ことがこの結果をもたらしている15 しかし、兼任制度の方が需要価格の高い買い 手との取引を実現するからといって、クロス・ エージェンシーよりも効率性の観点から望ま しいとは必ずしも言えない。高い提示価格は、 取引の可能性を低める可能性もあるからであ る16。そこで、兼任制度とクロス・エージェン シーが、社会的な効率性とどの程度乖離してい るのかを明示的に検討しなければならない。 しかし、上で示された兼任制度とクロス・エー ジェンシーの各制度下での提示価格が満たすべ き一階条件の比較からは、いずれの制度も社会 的に効率的な結果と必ずしも一致しないという ことしか分からない。一般的な分布関数を前提 とする限り、これ以上の評価を行うことは不可 能である。以下では、具体的な分布関数を仮定 して評価してみたい。まず単純な一様分布の仮 定の下で、二つの制度を社会的な効率性の観点 から比較する。 数値例:一様分布 これまでの分析では提示価格を明示的に解 くことが難しい。そこで価格の特性の違いを もう少し明確化するために、以下では、互い の分布の定義域(

domain

)の広さが等しい、

G : [0, w]

及び

F : [ε, w + ε]

となる一様分布を 考えよう17。ここで

ε >

0

は任意の定数である。 15情報保有者にその真の保有情報に基づく行動を選択させ るために情報保有者に帰属することになる追加的な利得の ことを、一般に情報レントと呼ぶ。それに対して、ここで いう情報レントは、保有情報である留保価格に基づいて、 売り手に売買取引に応じさせるために追加的に支払う利得 という意味で用いている。 16確率が低下してしまえば取引完了までの時間が浪費され

ることになる。この点ついては、Brastow and Waller(2013) の議論を参照。

17ただし、一様分布のケースでは解が明示的に導出できる

が、この解は一般的な安定条件は満たされず、安定解では ない。一端この解から外れると周期解となり、この価格に

(7)

このとき、一様分布であるから、

f = g = 1/w

となる。この場合、売り手も買い手も特定の留 保価格に集中していない状況を想定しているこ とになる。 所与の手数料率

t

の下で、社会的な期待余剰

S W(p)

は、このとき、以下のように算出される。

S W(p) =

(1 − t)p

w

(w + ε)

2

− (1 + t)

2

p

2

2w

(w + ε) − (1 + t)p

w

(1 − t)

2w

2

p

2

=

(1 − t)p

2w

2

(w + ε − (1 + t)p)(w + ε + 2tp)

価格についての最大化のための一階条件から、 社会的に効率的な価格は、所与の手数料率

t

に 対して、以下のようになる18

p

=

(1 − t) −



(1 − t)

2

+

6t(1 + t)

−6t(1 + t)

(w + ε)

この値は、

t → 0

のとき、係数にロピタルの定 理が適用できるから、

lim

t→0

p

=

w + ε

2

となることが分かる。 なお、手数料率

t

を所与として、取引確率を 最大にする提示価格

˜p

を求めると、この価格は 次のように求めることができる。

˜p ∈ argmax

p

(1 − F((1 + t)p))G((1 − t)p)

11

) は収束しなくなってしまう。 18一階の条件を解くとp =(1−t)±(1−t)2+6t(1+t) −6t(1+t) (w + ε)とな り、S W(p) = 0の解は−w+ε 2t、0、(w+ε)1+t であるため、p > 0 に関してp = pで最大化されることが分かる。 一階の条件は以下のように決まる。

−(1 + t) f ((1 + t)p)G((1 − t)p)

+

(1 − t)g((1 − t)p)(1 − F((1 + t)p)) = 0

12

) 一様分布の場合には、価格は以下のように算出 される。19

˜p =

w + ε

2(1 + t)

したがって、

t → 0

のとき、所与の手数料率

t

に対する社会的余剰を最大化する価格に収束す る。なお、このときの確率は、(1−t) (1+t)(w+ε) 3 4w2 にな る20 兼任制度のとき、提示される提示価格

p

Dは 次式を満たす21 19G : [0, w]F : [ε, w + ε]となる一様分布のケースの計 算は以下の通りである。 −(1 + t)w1(1 − t)pw +(1 − t)  1 −(1 + t)p − εw  1w =0 よって、(1−t)(w−(1+t)p+ε) w2 −(1+t)(1−t)pw2 =0が得られる。この とき、2階の条件:2(1−t)(1+t) w2 <0は満たされる。 20計算は以下の通り。 � 1 − F(1 + t) w + ε 2(1 + t) −ε �� G(1 − t)2(1 + t)w + ε � = � 1 − w+ε 2 − ε w � ⎛⎜⎜⎜⎜⎜⎜⎝ (1−t)(w+ε) 2(1+t) w ⎞ ⎟⎟⎟⎟⎟ ⎟⎠ =� w + ε 2w � � (1 − t)(w + ε)2(1 + t)w � =(1 − t) (1 + t) (w + ε)3 4w2 21一階条件は  1 −(1 + t)p − εw  (1 − t)pw − p(1 + t)w1 (1 − t)pw  +p(1 − t)1 w  1 −(1 + t)p − εw  =2(1 − t) 1 w2(w + ε)p − 3(1 + t)(1 − t) 1 w2p2=0 従 っ て、 二 階 の 条 件 は−6(1 + t)(1 − t)p w2+2(1 − t)(w+ε)w2 となり、(13)式を代入すると、均衡価格の近傍で上式 =−4(1 − t)(w+ε)w2 +2(1 − t)(w+ε)w2 =−2(1 − t)(w+ε)w2 <0と な る。

(8)

p

D

=



1 −

(1+t)pD−εw



(1−t)pD w

(1 + t)

1 w(1−t)pDw

− (1 − t)

w1



1 −

(1+t)pD−εw



上式を解くと、提示価格

p

Dは以下のように決 まる。

p

D

=

2(w + ε)

3(1 + t)

13

) このとき、手数料率

t

1%

ポイントの上昇は 提示価格を

1%

弱低下させる22ことになる。 他方、クロス・エージェンシーのケースでは、

p

C

=

1 −

(1+t)pC−ε w

(1 + t)

1 w

=

w + ε − (1 + t)p

C

1 + t

が成立し、これを解くと、価格は、

p

C

=

2(1 + t)

w + ε

14

) となる。 したがって、分布の定義域の広さが等しい一 様分布の仮定の下では、兼任制度は、社会的な 効率性や取引確率の最大化という観点からは支 持されない。これに対して、クロス・エージェ ンシーは取引確率を最大化し、さらに、

t → 0

のとき、所与の手数料率

t

に対する社会的余剰 を最大化する価格に収束しうることが分かる。 また、この数値例から、兼任制度の方がクロ ス・エージェンシーのケースよりも提示価格は 高くなることも確認できる。この場合、いずれ のケースでも手数料率

t

の上昇は提示価格を低 下させることになる。 次に、効率性を評価する上で代理人が取引を 22 d dt  dp p  =dp dt 1 p=− 2 3 3(w + ε) 3(1 + t)2 3(1 + t) 2(w + ε)=− 1 1 + t となり、tが十分小さい場合、手数料率tの1%ポイント の上昇は提示価格を1%弱低下させる。 促進する機能についても検討しておこう。その ためには、

2

つの制度が取引確率に及ぼす影響 を考える必要がある。確率が低下してしまえば 取引が実転するまでの時間が浪費されることに なる23 ま た、 兼 任 制 度 の と き の 取 引 確 率 は、 (1−t) (1+t)2(w+ε) 3 9w2 となり24、クロス・エージェンシーの ときの取引確率は、(1−t)(1+t)(w+ε)4w23である。 したがって、次の命題が成り立つ。 命題

2

.売り手と買い手の留保価格が、それぞ れ一様分布

G : [0, w]

F : [ε, w + ε]

に従うと き、クロス・エージェンシーの場合の提示価格 は、取引確率を最大化させる提示価格と一致し、 所与の手数料率

t

に対して、

t → 0

のとき社会 的な効率性を達成しうる。 これまでの結果を整理すると、この特殊な一 様分布のもとでは、兼任制度では提示価格を高 める方向に作用し、取引確率はむしろ低下して しまうが、クロス・エージェンシーの代理人間 の交渉によって提示価格が決まる場合には、兼 任制度よりも提示価格は低下し、取引確率は最 大化され、手数料率が十分に小さくなると、ほ ぼ社会的に効率的な状態と一致しうることが明 らかになった。 さらに、同じ仮定の下で、手数料率

t

の上昇 はいずれの制度の下でも(手数料支払い前の) 提示価格を低下させるが、売り手への手数料支 払後の提示価格を低め、買い手の手数料支払を 含む取引がコストを高める結果、取引確率を低 下させることになる。 しかし、こうした結論は、一様分布の仮定に

23これらの点ついては、Brastow and Waller(2013)を参照。 24計算は以下の通り。  1 − F 2w + 2ε3 − ε  G (1 − t)(1 + t)2w + 2ε3  =  1 −(2w + 2ε)/3 − εw   (1 − t)(1 + t)(2w + 2ε)/3w  =(1 − t) (1 + t) (w + ε)(2w + 2ε) 9w2 = (1 − t) (1 + t) 2(w + ε)3 9w2

(9)

強く依存しているかもしれない。さらには、同 じ一様分布でも上限や下限の幅から影響を受け るかもしれない。以下では、この点をシミュレー ションで確認しておこう。

3.

シミュレーション これまでは、兼任制度とクロス・エージェン シーの提示価格と取引確率について理論的に考 察し、売り手と買い手の留保価格が一様分布に 従うケースについて、具体的に計算して解を求 めることができた。この節では、買い手と売り 手の留保価格の分布について、もう少し仮定を 緩めて分析する。その際、提示価格と取引確率 を解析的に解くことは困難なため、数値シミュ レーションにより求める。 以下では

2

通りの分布を想定する。第一は、 一様分布を仮定したうえで留保価格の平均値を 固定し、分布の区間(確率密度)を変化させた 場合の効果を確かめたい。第二は、正規分布を 仮定して効果を確かめることにしよう。

3.1

一様分布のケース はじめに、売り手および買い手の留保価格の 分散が提示価格に及ぼす影響を見てみよう。一 様分布では、留保価格の分散の大小は、分布の 定義域の広さに対応している。そこで、ここで は、買い手と売り手の留保価格が平均

50

の一 様分布に従うと仮定し、いずれかの留保価格の 分散、すなわち、分布の定義域を変化させた場 合について考える。両制度における手数料率 (t)は

3%

0.03

)とする。 売り手の留保価格の分散の変化とその効果 まずは、買い手の留保価格の分布を固定し、 売り手の留保価格の分布の定義域の区間(以 下しばしば「分布区間」あるいは単に「区間」 とよぶ)の広さを変化させてみよう25。図

1

は、 買い手の留保価格の分布区間の広さをすべて

67.4

に固定したうえで、売り手の留保価格の 分布区間の広さ(w)を

40

から

100

まで変化 させたときに、提示価格(左図)と取引確率 (右図)がどのように変化するかを示している。 ここで、買い手の留保価格の分布区間の広さを

67.4

に固定したのは、後述の図

4

にあるように、 買い手と売り手の留保価格の分布区間の広さを 同時に変化させたとき、区間の広さが

67.4

の 付近で兼任制度とクロス・エージェンシーにお 25一般に買い手と売り手のそれぞれに非対称的な効果を及 ぼすような事態は考えにくいが、両者に及ぼす効果を分析 するのは問題を複雑にするので、買い手に及ぼす効果と売 り手に及ぼす効果を分離して考えたうえで、後に両者を合 計する。 図1 売り手の留保価格の分散の変化(一様分布)

(10)

ける取引確率が等しくなるためである。した がって、図

1

の取引確率は、売り手の留保価 格の分布区間の広さが

67.4

の付近で交差して いる。 横軸は、売り手の留保価格の区間(w)であり、 このとき、下限は

50 − w/2

、上限は

50 + w/2

になる。例えば

w = 40

のときは、売り手の 留保価格が

30

70

の間で一様に分布するこ とを意味している。実線は兼任制度のケース (

PD

)、破線はクロス・エージェンシーのケー ス(

PC

)、点線は社会的余剰を最大にするファー ストベストのケース(

P*

)を示している。 左図の提示価格について見てみると、命題

1

で示されているように、売り手の留保価格の分 布区間の大小にかかわらず、兼任制度の方がク ロス・エージェンシーの場合よりも提示価格が 高い。また、社会的余剰を最大にする価格水準 は、両制度における提示価格のあいだに位置し、 売り手の留保価格の分布区間が狭いほど兼任制 度の場合の提示価格に近く、区間が広くなるほ どクロス・エージェンシーの場合の提示価格に 近づいている。このように、売り手参加者の異 質性が増すほど兼任制度における情報レントが 増加し、ファーストベストと兼任制度の価格差 が拡大することが確認できる。 兼任制度のもとでは、売り手の留保価格の分 布区間が

40

から

100

に拡大した際に、提示価 格が

61.1

から

54.2

まで低下している。代理人 にとって、売り手の留保価格の分布区間が広い ほど、提示価格を限界的に低下させたときに売 り手に拒否されにくくなる(売り手が提示価格 を拒否する確率の上昇度合いが小さくなる)効 果があるため、提示価格を下げることで買い手 が応諾する確率を高め、手数料の期待収入を高 めようとする。他方、クロス・エージェンシー での提示価格は、(

10

)式にあるように、買い 手の分布のみに依存して決定するため、

40.6

の水準で一定となっている。 したがって、売り手の留保価格の分布区間が 広くなると、兼任制度の下での価格は低下する 結果、クロス・エージェンシーの場合との格差 は縮小する。このことから、リーマン・ショッ ク時のように、同質的な物件を保有している売 り手間でも、負債の多寡によって売り手の留保 価格の分布区間が拡大するようなときには、提 示価格は低下することが示唆される。もちろん、 こうした事態では売り手の平均留保価格も下が るので、兼任制度の下での成約価格は一層低下 する。

Johnson et al.

2015

)は、インディアナ州 の約

18,000

件のデータ(

2000

年∼

2010

年) を用いて、クロス・エージェンシーと兼任制度 の下での提示価格の違いをヘドニック法で分析 している。住宅の立地や質を十分にコントロー ルすると、両者の間には、平均的に有意な差異 が無いが、売り手の種類によっては価格にも有 意な差があることを見出している。とくに、兼 任制度のなかでも、仲介業者自身が所有する不 動産を、その仲介業者が直接買い手を見つけて 売却した場合には、約

6%

ものプレミアムが生 じている。

Johnson

たちの研究では、とくに、サブプラ イムローン危機やリーマン・ショックがあった

2007

年以降では、不動産価格の低下幅が増大 していることを示しており、この点においては、 売り手の留保価格の分散が大きくなる時に生じ る効果と整合的である。26 次に、図

1

の右図の取引確率について見て みると、兼任制度の場合は約

21

23%

であ るのに対して、クロス・エージェンシーの場合 は分布区間の拡大とともに取引確率が大幅に上 昇し、当初は兼任制度の方がクロス・エージェ ンシーの場合よりも取引確率が高いが、区間の 広さが

67.4

を超えると両者は逆転する。 この理由について要点だけを述べておこう。 26なお、Johnsonたちの研究では、政府や金融機関が保有 している不動産については、兼任制度の下で、それぞれ 25%と5%ものディスカウントが生じていることも報告 されているが、データの対象期間がリーマン・ショック時 を含んでいる点を考えると、政府や金融機関の保有する物 件には、かなりの数の差押物件(foreclosure)が存在し、 早期の債権回収の必要性や競売市場との競合の可能性など があるために、本稿の理論分析を直接的に適用して解釈す ることはできない。

(11)

まず、クロス・エージェンシーの場合は、提示 価格が留保価格の中央値(

50

)よりも低い水 準にあり、分布区間が広くなっても変化しない。 そのため、売り手の留保価格の分布区間が広く なることは、取引に応じる売り手の比率が高ま ることを意味し、取引確率が上昇する。 これに対して、兼任制度の場合は、提示価 格が留保価格の中央値(

50

)よりも高いため、 売り手の留保価格の分布区間が広くなると、取 引に応じる売り手は減少する効果がある。しか し、提示価格が低下するので、次第に買い手を 得やすくなり、取引確率が高まるようになる。 図

2

は、上記の結果を理解するために、留 保価格の分布区間の広さと提示価格を応諾する 確率の関係を売り手について図示したものであ る。売り手が応諾する確率は、提示価格が留保 価格の中央値より低いとき、同じ提示価格で あったとしても、売り手の留保価格の分布区間 が狭い場合(分布

a)よりも、区間が広い場合(分

b)の方が高くなるのがわかる(分布

a

の場 合の横線の面積よりも、分布

b

の場合の縦線の 面積の方が広い)。他方、買い手が応諾する確 率は、買い手の留保価格の中央値よりも価格が 高いとき、区間が広いほど提示価格を応諾する 確率が高くなることが(左右対象な図を考える ことで)理解できる。ただし逆に、売り手(買 い手)にとって、提示価格が留保価格の中央値 より高い(低い)水準にあるとき、取引確率は 留保価格の分布区間が広いとむしろ低くなると いうマイナスの効果が生じうる。 注意しなければならないのは、売り手と買い 手の中央値が一致しているケースでは、価格が 中央値に近いほど取引確率が総合的に高くな り、離れるほど低下する効果が働くことである。 以下では前者を「中央値への接近効果」、後者 を「中央値からの離反効果」と呼ぼう。 上のクロス・エージェンシーのケースでは、 売り手にとっての価格が留保価格の中央値より も低く一定である。そのため、取引確率は、売 り手の留保価格の分布の変化だけに依存し、区 間拡大に伴って高くなっている。 他方、兼任制度のケースでは、売り手にとっ ての価格が留保価格の中央値よりも高い水準に あり、区間が広がるほど提示価格が中央値に近 づいている。売り手の留保価格の区間が狭く提 示価格が中央値から離れている局面では、分布 区間の拡大に伴い売り手に拒否されやすくなる 効果が中央値への接近効果より強く働くため、 取引確率が低下するが、区間が拡大し提示価格 が中央値に近づくにつれて後者の効果が強く働 くようになり、取引確率が上昇に転じている。 買い手の留保価格の分散の変化とその効果 次に、図

3

は、逆に売り手の留保価格の分 布区間を

67.4

に固定し、買い手の留保価格の 区間を

40

から

100

まで変化させたときの提示 価格と取引確率である。まず、左図の提示価格 を見てみると、買い手の留保価格の分布区間が 拡大するに従って、両制度のもとで提示価格が 上昇している。これは代理人にとって、買い手 の留保価格の区間が広いほど、提示価格を限界 的に上昇させたときに買い手に拒否されにくく なり、手数料の期待収入を高められるためであ る。価格を上げることは売り手にとっても好ま しいため、区間の拡大に伴う提示価格の上昇幅 は、買い手の分布のみに依存するクロス・エー 図2 売り手の留保価格の分布と売り手が応諾する確率

(12)

ジェンシーよりも、兼任制度の方が大きくなっ ている。 右図の取引確率については、両者とも

U

字 型をしている。兼任制度のケースでは、買い手 にとっての価格が留保価格の中央値より高い水 準にあり、買い手の留保価格の分布区間が拡大 するほど提示価格が高まるため、中央値からの 離反効果によって取引確率を低下させるが、次 第に買い手の分布区間拡大に伴って買い手に応 諾されやすくなる効果がそれを上回るようにな り、次第に上昇に転じる。 これに対してクロス・エージェンシーのケー スでは、買い手にとっての提示価格が留保価格 の中央値より低い水準にあり、次第に中央値に 近づいている。そのため、当初は、買い手の区 間拡大に伴って買い手に拒否されやすくなる効 果が中央値への接近効果を上回り取引価格が低 下するが、価格が次第に中央値に近づくと、後 者の効果がより強く働くようになり、取引確率 が上昇に転じる。 買い手と売り手の留保価格の分散の変化とその 効果―総合的効果 それでは、買い手と売り手の留保価格の分布 区間の広さを同時に変化させた場合について検 討してみよう。図

4

は、買い手と売り手の両者 の留保価格の平均値を

50

にし、両者の留保価 格の分布区間の広さを

40

から

100

まで変化さ せたときの提示価格と取引確率を示している。 左図の提示価格について見てみると、売り手 と買い手の留保価格の分布区間の広さが

40

か ら

100

まで拡大したとき、提示価格は、兼任 制度の場合では

52.6

から

64.7

、クロス・エー ジェンシーの場合では

34.0

から

48.5

に上昇し ている。繰り返しになるが、クロス・エージェ ンシーの場合の提示価格は買い手の分布のみに 依存する。売り手の代理人にとって、買い手の 留保価格の分布区間が広いほど、提示価格を限 界的に上昇させたときに買い手に拒否されにく いため、提示価格を引き上げて手数料の期待収 入を高めようとする。 他方、兼任制度の場合の提示価格は、買い手 と売り手の両方の分布で決定される。代理人に とって、売り手の留保価格の分布区間が広いほ ど価格を限界的に低下させたときに売り手に拒 否されにくくなるため、提示価格を引き下げて 買い手を獲得する確率を高めようとするインセ ンティブが生じる。このように、兼任制度の下 では、買い手の留保価格の分布拡大に伴って 価格を上げようとするインセンティブだけでな く、売り手の留保価格の分布拡大に伴って提示 価格を下げようとするインセンティブが同時に 働く。これが、クロス・エージェンシーのケー スと比較して兼任制度の価格上昇を抑制的にす 図3 買い手の留保価格の分散の変化(一様分布)

(13)

る原因と考えられる。 次に、右図の取引確率について見てみると、 兼任制度の場合は約

21%

であるのに対して、 クロス・エージェンシーの場合は分布区間の拡 大とともに取引確率が大幅に上昇している。前 述の図

1

及び図

3

との主な違いは、図

4

では 兼任制度の場合の取引確率が逆

U

字型になっ ている点である。これは、区間が狭い局面では、 区間の拡大に伴って買い手が提示価格を応諾し やすくなる効果が強く働くが、次第にその効果 が弱くなると同時に、中央値からの離反効果が より強く働くようになり、取引確率が低下に転 じるためである。 興味深いことに、両者の分布が十分に大き くなると、クロス・エージェンシーのもとで は、提示価格と取引確率が社会的余剰の最大化 のケースに収束していく様子がわかる。このこ とは多様な売り手と買い手が市場にいる状況で は、クロス・エージェンシーの方が兼任制度よ りも望ましいことを示唆している。 平均留保価格の変化 最後に、一様分布の下で分布区間の広さを

67.4

に固定し、買い手と売り手の留保価格の 平均値を変化させたときの提示価格と取引確率 を調べてみよう。図

5

の黒線は、買い手の平 均留保価格(x)を

50

に固定したうえで、売 り手の平均留保価格(y)を

45

から

55

まで変 化させたケースを示している。他方、灰線は、 売り手の平均留保価格(y)を

50

に固定した うえで、買い手の平均留保価格(x)を

45

か ら

55

まで変化させたケースを示している。い ずれも、実線は兼任制度、破線はクロス・エー ジェンシー、点線はファーストベストのケース を示している。 まず、提示価格(左図)の黒色の実線と破線 を見てみると、売り手の留保価格の平均値が

45

から

55

に上昇すると、兼任制度での提示価 格は

56.3

から

58.7

まで上昇するが、クロス・ エージェンシーでの提示価格は買い手の分布の みに依存するため

40.6

で一定である。これに 対して、灰色の実線と破線を見てみると、買い 手の留保価格の平均値が

45

から

55

に上昇す ると、兼任制度での提示価格は

54.3

から

60.7

まで、そしてクロス・エージェンシーでの提示 価格は

38.2

から

43.1

まで上昇しているのがわ かる。 兼任制度とクロス・エージェンシーのいずれ の場合でも、買い手の平均留保価格の上昇(灰 色の線)の方が、売り手の平均留保価格の上昇 (黒色の線)よりも、実際の提示価格に及ぼす 影響は大きいことがわかる。 完全競争市場では、需要曲線と供給曲線の垂 直方向への同一幅のシフトは、資源配分に中立 図4 買い手と売り手の留保価格の分散の変化(一様分布)

(14)

的で価格だけが同じだけ上昇する。これに対し て、代理人の存在する非対称情報の世界では、 平均留保価格の同額の変化でありながら、買い 手の留保価格の方が売り手のそれよりも価格 に対して大きな影響を及ぼすことになる。その 原因として、代理人にとって、買い手の留保価 格だけが上昇する場合に不動産価格を限界的に 上げても取引確率は低下しないのに対して、売 り手の留保価格が上昇する場合に不動産価格を 限界的に上げると買い手を失う可能性が生じる ことが考えられる。このことは、売り手・買い 手の留保価格の平均値に同一の効果を及ぼす ショックが生じたときに、資源配分が変化する 可能性を示唆している。 右図の取引確率について、黒色の線(買い手 の平均留保価格を固定)と灰色の線(売り手の 平均留保価格を固定)を見てみると、取引確率 は、売り手の留保価格の平均値が高いほど低く、 買い手の留保価格の平均値が高いほど高くなる ことが確認できる。また、売り手や買い手の留 保価格の平均値が上昇したときに、兼任制度の 方がクロス・エージェンシーの場合よりも、取 引確率の変化が小さい。これは、売り手や買い 手の留保価格の平均値の上昇に伴って、兼任制 度における提示価格がより大きく上昇している ためである。 なお、図中には示していないが、買い手と売 り手の平均留保価格を同時に変化させた場合、 兼任制度における取引確率は約

21%

でほぼ一 定であるのに対して、クロス・エージェンシー のもとでは買い手と売り手の平均留保価格が上 昇するに従って取引確率が低下する。

3.2

正規分布のケース これまでの分析では留保価格が一様分布に従 う場合を想定したが、留保価格が正規分布の場 合についても同様にシミュレーションをしてみ よう。以下では、正規分布の場合と一様分布の 場合で、結果が異なる点について説明する。 売り手の留保価格の分散(標準偏差)の変化と その効果 図

6

は、買い手と売り手の留保価格が平均

50

の正規分布に従うと仮定し、買い手の留保 価格の標準偏差を

25

に固定したうえで、売り 手の留保価格の標準偏差を

5

から

50

まで変化 させたときの提示価格と取引確率である。ここ で、買い手の留保価格の標準偏差を

25

に固定 したのは、後述の図

8

にあるように、買い手と 売り手の留保価格の分散を同時に変化させたと 図5 平均留保価格の変化(一様分布)

(15)

き、標準偏差が

25

の付近で兼任制度とクロス・ エージェンシーの取引確率が等しくなるためで ある。したがって、図

6

の取引確率は、売り 手の留保価格の分布が標準偏差

25

の付近で交 差している。両制度における手数料は

3%

とし ている。 売り手の留保価格の分散(標準偏差)が拡大 すると、兼任制度の場合の提示価格は全体的に 低下しているが、分散の小さい局面では上昇し ているのが観察できる。これは、留保価格が正 規分布に従うとき、売り手の留保価格の標準偏 差が極端に小さい局面では、提示価格が限界的 に上昇すると売り手が提示価格を応諾する確率 が大きく上昇するためである。そのとき、代理 人にとって、提示価格を上昇させることで、買 い手を失う確率が高まることのデメリットより も、売り手を獲得する確率が大きく高まること のメリットが勝り、手数料の期待収入が上昇す る。売り手の分散が充分に大きくなってくると、 提示価格を限界的に上昇させても売り手が応諾 する確率はそれほど高まらなくなるため、むし ろ、提示価格を低下させることで取引確率を上 昇させた方が期待収入を高められるようにな る。 買い手の留保価格の分散の変化とその効果 図

7

では、売り手の留保価格の標準偏差を

25

に固定し、買い手の留保価格の標準偏差を

5

から

50

まで変化させた。左図の提示価格に 関して、買い手の留保価格の分散が拡大したと きに、クロス・エージェンシーの場合の提示価 格が標準偏差の小さい局面で低下している。こ れは、買い手の留保価格の(標準偏差)が極端 に小さい局面では、売り手代理人にとって、提 示価格を限界的に低くすることによって買い手 が応諾する確率が大きく上昇し、手数料の期待 収入が上昇するためである。分散が十分に大き くなってくると、提示価格を限界的に低下させ ても買い手が応諾する確率がそれほど高まらな くなるため、提示価格を上昇させた方が期待収 入を高められる。 右図の取引確率については、買い手の標準偏 差が

25

のときに、兼任制度とクロス・エージェ ンシーの取引確率が等しくなるように売り手の 留保価格の標準偏差が設定されているが、この グラフによると、買い手の標準偏差が

30

の付 近まで、取引確率がほぼ一致している。その他 の点は、一様分布のケースと同様の結果になっ ている。 買い手と売り手の留保価格の分散の変化とその 効果―総合的効果 図

8

は、買い手と売り手ともに、留保価格 の標準偏差(横軸)を

5

から

50

まで変化させ 図6 売り手の留保価格の分散の変化(正規分布)

(16)

たときの提示価格と取引確率である。左図の提 示価格を見てみると、クロス・エージェンシー の場合、標準偏差が拡大すると初めのうちは提 示価格が低下しているのが観察できる。これは、 標準偏差が小さい局面において限界的に標準偏 差が上昇したとしても、価格が

40

の付近では 買い手と売り手のマッチングの確率が十分に上 昇しないため、代理人は、逆に価格を下げてマッ チングの確率を上げることで期待収益を高めら れるからである。 ここでも、一様分布と同様、クロス・エージェ ンシーの取引価格や確率の方が、両者の標準偏 差が十分に大きいとき社会的余剰を最大にする 取引価格や確率に近いことが確認できるため、 市場参加者の多様性や市場の不確実性が高い状 況では、クロス・エージェンシーの方が兼任制 度より社会的効率性の観点から望ましいと言え るだろう。 平均留保価格の変化とその効果 最後に、図

9

おいて、黒の実線と破線(灰 色の実線と破線)は、買い手(売り手)の平均 留保価格を

50

に固定したうえで、売り手(買 い手)の平均留保価格を

45

から

55

まで変化 図7 買い手の留保価格の分散の変化(正規分布) 図8 買い手と売り手の留保価格の分散の変化(正規分布)

(17)

させたケース(実線は兼任制度、破線はクロス・ エージェンシー)を示しており、一様分布を仮 定した場合と同様の傾向が観察される。

3.3

まとめ 本節では、前節の理論的な枠組みを用いて、 兼任制度とクロス・エージェンシーにおける取 引価格と取引確率が、買い手と売り手の留保価 格の分布に応じてどう変化するかについてシ ミュレーションを行い、いくつかの知見を得た。 まず、兼任制度における代理人は、売り手の 留保価格の分散の拡大(売り手の異質性の増 大)にともなって、売り手に承諾してもらう可 能性を確保するために提示価格を低くする傾向 がみられた。ただし、正規分布を仮定した場合、 売り手の留保価格の分散が極めて小さい局面で は、分散が限界的に増加しても提示価格を高く することで売り手に拒否される可能性はそれほ ど高まらないため、兼任制度の代理人は提示価 格を逆に上昇させることが示された。取引確率 は、売り手の留保価格の分散が小さい局面では 兼任制度の場合の方が高く、分散が大きくなる とクロス・エージェンシーの場合の方が高くな ることがわかった。 一方、買い手の留保価格の分散が拡大(買い 手の異質性が増大)すると、両制度のもとで提 示価格が上昇する傾向がみられた。これは、買 い手の留保価格の分散が大きいほど、提示価格 を限界的に上昇させても、買い手に拒否される 可能性が小さいためである。ただし、正規分布 を仮定した場合、クロス・エージェンシーの売 り手代理人は、買い手の留保価格の分散が極め て小さい局面では、分散が限界的に増加したと きに提示価格を低くすることで買い手に応諾さ れる可能性が大きく高まるため、提示価格を低 くするインセンティブが働くことが示された。 最後に、売り手の平均留保価格が高いほど、 提示価格が高く取引確率が低くなる。一方、買 い手の平均留保価格が高くなると、提示価格は 兼任制度の場合に限って高くなり、取引確率は 両制度のもとで高くなる。また、兼任制度の下 では、買い手の留保価格の変化の方が、売り手 の留保価格の変化よりも、提示価格に大きな影 響を与えることが示された。

4.

兼任制度からクロス・エージェントへの変 更の可能性 前節の分析によれば、兼任制度の提示価格は クロス・エージェンシーの場合と比較して高く 図9 平均留保価格の変化(正規分布)

(18)

なることが予測される。その点で、兼任制度の 下では、クロス・エージェンシーと比較して売 り手側が不利に扱われるというよりも高い価格 で購入させられる買い手側が不利に扱われるこ とになる。しかし、一般には売り手の方が兼任 制度に対して、不利に扱われているとの意見が 多く見られるように思われる。このような一般 的な認識はなぜ生じるのか、ここでは分析を少 し拡張して検討してみよう。 上記の分析からわかるように、買い手は兼任 制度の代理人の提示価格は高くなっている可能 性を考えて、むしろクロス・エージェントから 物件を購入しようとするかもしれない。このよ うな場合を考えると、兼任制度はむしろ売り手 にとって望ましくない取引制度になる可能性も ある。兼任制度の下での代理人がクロス・エー ジェントに変更された場合には、買い手代理人 と手数料を折半しなければならないので、期待 手数料収入が(所与の提示価格に対して)半額 に低下する。このことを予想する代理人は、ク ロス・エージェントである買い手代理人が提示 する価格よりも低い価格で物件を売却して取引 をまとめようとするインセンティブが生じるか らである。 いま、次のような取引手順を考えよう。すな わち、

1

期目は兼任制度だが、

2

期目にはクロス・ エージェンシーの売り手代理人になるとする。 いわゆる「囲い込み」によって売り手代理人は 一定期間、自分の顧客から有利な買い手を探す が、望ましい買い手が現れない場合には、

2

期 目にクロス・エージェンシーの買い手代理人に 買い手の紹介を依頼するというケースを考えよ う。このことは、兼任制度は、

p

Dで取引が成 立しなかったことを前提にした条件付き分布に 基づいて、提示価格を決めることを意味する。 買い手が最初の提示価格

p

Dを受け入れな かったために取引が成立していない状況を考え よう。このとき、

1

期目の終わりに兼任制度の 代理人が提示する価格

p

Aは以下の条件を満た す。

2tp

A



vG<(1−t)pA

g(v

G

)

G((1 − t)p

D

)

dv

G





1 −



vB<(1+t)pA

f (v

B

)

F((1 + t)p

D

)

dv

B



≥ δtp

C



vG<(1−t)pC

g(v

G

)

G((1 − t)p

D

)

dv

G





1 −



vB<(1+t)pC

f (v

B

)

F((1 + t)p

D

)

dv

B



ここで、左辺は、提示価格

p

A のもとで兼任制 度での取引が成立した場合の期待手数料収入で あり、右辺は、クロス・エージェンシーにおけ る売り手代理人の期待手数料収入を時間割引因 子

δ <

1

で割り引いた値である。上式の左辺が 右辺を少しでも上回る限り、

1

期目に売却しよ うとする結果、兼任制度であっても、提示価格 は次式を満たす水準まで低下することが分か る。

p

A

2

δ

p

C

G((1 − t)p

C

)

G((1 − t)p

A

)

1 − F((1 + t)p

C

)

{1 − F((1 + t)p

A

)}/F((1 + t)p

D

)

15

p

A

=

p

C の と き、

F((1 + t)p

C

)

<

F((1 + t)p

A

)

/

F((1 + t)p

D

)

で あ り、 そ の 場 合 G((1−t)pG((1−t)pC)A) 1−F((1+t)pC) {1−F((1+t)pA)}/F((1+t)pD)

>

1

と な る が、G((1−t)pG((1−t)pC)A) 1−F((1+t)pC) {1−F((1+t)pA)}/F((1+t)pD)

<

δ2であるかぎり、上式は 価格

p

A

<

p

Cとなりうることを意味している。 すなわち、クロス・エージェンシーより、兼任 制度の方が価格を下げてしまう可能性もある。 しかし、この結果は兼任制度自体に原因があ るのではなく、兼任制度からクロス・エージェ ントへと一定期間後に代理人が変更されること に原因がある。 一様分布(

G : [0, w]

F : [ε, w + ε]

)の例 (

15

)式に一様分布の仮定を導入すると以下 のように書き換えることができる。27 27計算は以下の通り。

参照

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