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肺癌合併特発性間質性肺炎の術後急性増悪の1例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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平成11年4月1日

肺癌合併特発性間質性肺炎の

術後急性増悪の1例

国立療養所富士病院 喜納五月 霜多広 松原寛知 古屋一茂 堤正夫 石原重樹 並河尚二   要旨:特発性間質性肺炎(IIP)を合併した肺癌の外科治療においてllP急性増悪は 致命的合併症である。今回我々は肺癌を合併した11Pの術後急性増悪の1例を経験した。 術後急性期は順調に経過したが、その後呼吸不全を呈し、術後51病日に気管内挿管し人 工呼吸管理となる。一旦呼吸状態は改善傾向をみせたが、呼吸器よりの離脱ができず、呼 吸状態悪化し100病日に死亡。このような症例の周術期管理の問題点と注意点を文献的考 察を含めまとめた。IIPの活動性はWBC,LDH,CRPの上昇、%リンパ球の低下でみること ができる。これらが急性増悪の早期指標となる。急性増悪の治療として早期にステロイド パルス療法を始めるべきであると考えられる。酸素投与法については術中術後のPaO2を 1 OOtorr前後に保つことでIIPの急性増悪を避けられるとの報告もあった。薬剤に関して は抗癌剤投与がIIPの急性増悪を惹起することは言われている。本症例では胸腔ドレーン から注入したピシバニールも増悪因子の1つとも考えられた。 Key word;特発性間質性肺炎、術後急性増悪、       はじめに  肺癌を合併したIIPの術後急性増悪の1例を経験したので、経過と周術期管 理の注意点と問題点を文献的考察をふまえ報告する。 症例 患者 主訴 現病歴 既往歴 喫煙歴 入院時現症 呼吸機能 血液生化学 72歳 男性 咳轍、全身倦怠感、体重減少 HIO年3月より咳轍出現し他院で胸部X−p上間質性肺炎と診断。 同年5月近医にて肺野異常陰影あり当院紹介入院となる。 高血圧、糖尿病 30本/日×50年(B⊥=1 500)   身長168.3cm体重73.3kg両側肺底部にfine crackleを聴取   VC 2.64L 96VC 80.296 FEV 1.02.15L FEV 1.Oo/086.0%   WBC8440 Hb15.lg/dl Ht45.Oo/o Plt24万 TP8.Og/dl        −13一

(2)

       山梨肺癌研究会会誌 12巻1号 1999       Alb4.lg/dl CRPO.3mg/dl LDH3541U/1 腫瘍マーカーCEA4.9ng/ml CYFRA21−14.Ong/ml SLX83U/ml

      CA19−9293u/ml

血液ガス分析(room air)pH7.427 PaO 272.2mmHg

      PaCO2 41.8mmHg SaO2 94.9%

 H10.5.27胸部レントゲン写真(図1);両肺野びまん性に微細粒状影が下 肺、辺縁に優位に分布し、右上肺野と右下肺野外側に境界不明瞭なやや淡い 陰影が認められる。  HIO.5.29.胸部CT(図2);下肺野と胸膜直下優位の肺野濃度の上昇と

微細粒状影を呈し、右S2にair bronchogramを有する60×35×45mmの

胸壁に接するmassが認められる。さらにS8にair bronchogramを有する 30×25×30mmの陰影が認められる(図3)。

 HIO.6.1気管支鏡にて右B2とB8よりTBLBを施行したところ、右B2よ

りwell diff. adenocarcinomaの診断をえた。 B8の病変はCarcinomaは証 明されなかった。  以上よりIIPに合併した、右上葉肺癌c−T2NOMO stagelBの診断にて HIO.6.24手術を施行した。  術中所見;S2は背側胸壁に線維性に癒着し同部にtumorを認めS8には母 指頭大のmassを触知。右上葉切除+S8部分切除を施行。既存の肺は柔らか な正常肺と弾性を失った凹凸をともなうllPの肺が地図状に分布する所見で あった。  固定後の摘出標本S2の割面では 周辺の肺に比べ明るい色調で、境界が 比較的明瞭な63×25×79mm大の腫瘍性病変がある。これが周辺の間質性 肺炎領域に連続している。HE標本ではIIPの蜂巣状構造と癌組織の移行部が みとめられる。やや広い間質とこれを被覆する一層のgoblet型の丈の高い 異型細胞からなる腺癌の所見を示す(図4)。部分切除したS8のmassも同 様の癌組織が認められた。 (図5)は‖Pの組織と正常肺胞構造の移行部を示 す。化生上皮が線維化の強い広い間質を覆い間質には軽度から中等度のリン パ球浸潤を認める。術後病理病期はp−t2nl ml stage IVであった。  術後急性期は順調に経過したが、胸水排液量が1日100mlを越えていたた め12病日、15病日に胸腔ドレーンよりピシバニール10KEを注入。 41病 日頃より体動時の息切れが強くなりfine cracle聴取範囲も拡大した。徐々 に呼吸困難感が増強していった。 (図6)は47病日の写真をしめす。両側に間質性陰影の増強が認められる。        −14一

(3)

平成11年4月1日  可及的に投与酸素量を増量して経過をみていたが、呼吸状態はさらに増悪 し、51病日気管内挿管し、人工呼吸器管理となる。またこの日よりメチルプ レドニゾロン旧1gのパルス療法を開始した。その後呼吸状態は一旦改善傾 向をみせたが、呼吸器より離脱ができず、呼吸状態悪化し、100病日死亡と なった。  WBC,LDH,CRP、%リンパ球はilPの急性増悪の早期指標となり、急性増悪 の際にはWBC,LDH,CRPは上昇し、%リンパ球は低下するとされている1)2)3)。 (図7)はWBC,LDHの推移を示す。急性増悪を呈した47病日∼51病日にか け、WBC,LDHともに急激な上昇がみられる。 (図8)はCRP、%リンパ球の 推移を示す。47病日∼51病日に%リンパ球の低下、相反して、CRPの上昇 が認められた。        考察  WBC,LDH,CRPの上昇、%リンパ球の低下はllPの活動性を示し急性増悪の 早期指標となる。これによって早期に判断を下し対策を立てることが肝要と 考えられた。  llP合併の肺癌の手術適応は文献によればWBC,LDH,CRPが正常値を示し、 llPが非活動性であること、呼吸機能ではVC3.OL以上FEV1.02.OL以上、 PaO2 60torr以上、臨床病期はlllAまでとされる4)。  本症例はVC2.50L FEV I.0  2.15Lとやや低値の非活動性‖Pであり、 PaO2 72.2torr、術後の予測 VC2.13L FEV1.0 1.74 Lと耐術性が期 待された。  放射線治療、化学療法はIIPの急性増悪の誘因になるためhigh riskではあ るが外科治療を選択した。  周術期管理においてはllPの増悪の防止策と増悪したIIPに対する対策が重 要となる。  以下、ステロイド投与法、酸素投与量について検討した。  術直後からのステロイド投与については検討された文献はなかった。ステ ロイド投与はIIPの急性増悪を予防する手段となる可能性がある。一方、気 管支断端痩など他の合併症の危険性も増すため慎重に判断しなければならな い。  急性増悪に対してはWBC,LDH,CRP,96リンパ球の推移に注意をはらい可能 な限り早期にステロイドパルス療法を始めるべきである1)。  本症例では糖尿病の合併症があり、パルス療法の開始が遅れた。       −15一

(4)

 酸素投与法については、術中術後のPaO2を100torr前後に保つことで‖P の急性増悪を避けられるとの報告がある4)5)。OXygen tOXiCityが急性増悪 の因子となるからである。  本症例では術中術後の酸素の過剰投与により急性増悪をもたらした可能性 が考えられ反省点の一つである。  最後に、薬剤に関しては、抗癌剤投与だけでなく術後胸腔ドレーンから注 入したピシバニールが誘因となった報告もあザ)この症例でも増悪因子の一 つとして考えられる。       結語    今回我々は肺癌合併llPの術後急性増悪の1例を経験した。周術期管理に ついての注意点と問題点を文献的考察をふまえ検討した。       文献 1)堀尾裕俊 他:肺癌術後急性増悪を来たした特発性間質性肺炎の1救命例、日胸疾会誌、34(4),439−443,1996 2)吉村邦彦 他:特発性間質性肺炎の急性増悪に関する臨床的検討ならびに考察、日胸疾会誌、22(11),1 Ol 2− 1019,1984 3)二宮和子他:特発性間質性肺炎における血清LDHの意義、呼吸6巻10号1101−1105,1987 4)谷村繁雄 他:特発性間質性肺炎に合併した肺癌に対する手術の検討、日胸、51巻3号,208−213,1992 5)Robert M. Jackson,M.D.,F.C.C.P.:Pulmonary oxygen toxicity CHEST900・−905,1 985. 6)Gerald Nash,M.D.,John B.副ennerhassett,M.B.:Pulmonary lesions assosciated with oxygen therapy and artifical ventilation.THE NEW ENGRAND JOURNAL OF MEDICINE Vol.276 No.7368−374,1967. 7)朝田完二 鈴記好博 他:特発性間質性肺炎を合併した肺癌症例の臨床的検討、日胸51巻3号21 4−219,1992 8)寺本信遡 松瀬健 他:間質性肺炎患者における急性増悪と酸化一抗酸化バランスに関する検討、日胸56巻10号 850−854,1997 9)竹内栄治 山ロ俊彦 他:肺癌を合併した特発性間質性肺炎症例の臨床的検討、日胸疾会誌34(6),653−658,1996 10)横井豊治 近藤康博 谷口博之:間質性疾患について、日胸57巻7号526−535,1998 11)吉良枝郎:びまん性肺疾患における肺生検の歴史と現状、日胸57巻7号519−525,1998 12)特集:特発性間質性肺炎の治療 日胸57巻5号343−384,1998 13)渡辺秀一 北村諭 横山武 吉良枝郎:特発性間質性肺炎に合併した肺癌剖検例の臨床病理学的特徴、肺癌30巻  6号841−847,1990 14)中川勝裕 他:特発性間質性肺炎を伴った肺癌手術症例の検討、日胸外会誌、42:1 O,1933−1 939,1 994 15)鈴木隆 他:肺線維症に合併した肺癌の治療経験、日胸、30−3 6,昭60. 一16一

(5)

平成11年4月1日

(図7)

(図8)  −17一

(6)

罵霧欝

(図1) (図3) (図5) (図2)

      態灘

(図4) (図6) 一18一

参照

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