中小企業におけるオフィス・コンピュータ
利用の一考察
法 雲 俊 邑
1 は じ め に 近年の中小企業における経営環境は,ことの外厳しく,企業の体質改善や業 種転換を迫られるものも少くない。量的成長から質的成長へ,資本集約化から 知識集約化へという要請は,厳しい経営態度を求めることになる。本稿は,前 記のごとき中小企業の経営環境を洞察しつつ,経営体質を変換するための用具 として,コンピュータを用いる場合の問題点について究明している,シリーズ 論文の1つである。 最初の論文「中小企業におけるコンピュータ利用の問題点」では,中小企業 におけるEDP化の体制,情報システム設計の重要さ,および企業の経営者意 識について論究した。つまり,中小企業の体質は,多種少量の事務,小規模な 予算額,人材不足,標準化されていない事務管理などの特質をもっており,E DP化の体制に大きな影響を与える。情報システムの設計をおこなう場合,上 記の多種少量の事務,例外処理事項の多いことなどから,複雑なソフトウェア 開発を強いいられるが,機能的,処理能力的に制約のあるコンピュータでそれ を実現することは容易ではない。 また,中小企業の経営者意識については,元来2つのタイプがあることを指 摘した。つまり,生活維持が中心となる生業家業的な経営意識をもつ姿勢と, 積極的な事業的経営意識をもって,経営に取り組む姿勢である。中小企業の経 1)拙稿,中小企業におけるコンピュータ利用の問題点,IIT,1977.3−No.10,日本情 報処理開発協会・情報処理研修センター。中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 45 営には,前記の2つの経営意識が混在しており,この意識は今後も続くものと 思われるが,いつの時代にも経営環境の厳しさをのり越えるには,好むと好ま ざるとにかかわらず,後者の積極的姿勢を必要とする部分が増大する。 前記のEDP化の問題も同様に,経営者自からが積極的な姿勢を示し,社内 全体を科学的管理の立場から,システム的な思考にもとづいて見直しをおこな い,EDP化に取り組むことが重要であると結論づけた。 そこで本稿では,近年,市販され各方面から注目を集めているオフィス・コ ンピュータ(以下ではオフコンと略称する)を用いることによって,前記の中 小企業におけるEDP化の複雑な問題のいくつかが解消されることを仮定し て,その利用に関する検討をおこなうことにする。 (社)日本電子工業振興協会では,通産省で調査している「汎用電子計算機納 入下取り調査」の中で,超小型電子計算機を一般にわかりやすくするため一定 りの範ちゅうを定め,オフコンと称しているが,その機能に関する詳細について は稿を改めて述べることにしたい。 現在のオフコンは,低価格,操作性が容易,プPグラマー不要のキャッチ・フ レーズで提供されているが,しかし実状は,アプリケーションズ・プログラム の開発に問題があり,メーカー,ディーラー,ユーザーともに不満足な状態で あることを重視し,その問題を中心に考察してみる。換言すれば,汎用的な各 種の業務処理にオフコンを適用する場合,大きなネックの1つとなるソフトウ ェア開発の問題を取りあげて検討を加え,EDP化にあたっての種々の問題解 決の方法を論じることとする。 ところで,オフコンの出現に関する技術的な背景を若干述べれば,つぎのよ うである。コンピュータの主メモリは,1950年代から種々のものが開発され, 実用化の試みがなされた。その結果1960年代の初めには,フェライト磁性体の ヨラ コァ・メモリが最適であるとされ,主流を占めた。1970年代半ばには,論理回 2)社団法人日本電子工業振興協会,オフィスコンピュータに関する市場調査一出荷状 唯一,p・1,昭和54年7月。 3) J.E. Juliussen, etaL, Problems of the 80’s, Computer System Organization, Proc. Conference on Computing in the 1980’s, pp.14−23, Mar.1978.
路の高集積化技術が進展し,コア・メモリは半導体のICに代わることとなつ 4)5)
た。半導体メモリはさらに,MOS化されたICやLSI,それらをもととし
たRAM(random access memory), R O M(read only Inemory)などが開 発され,今日では実用に供されている。 LSIの開発は,単に主記憶装置を小型化するのみではなく,周辺機器のイ ンタフェースなどにも用いられ,システム全体を小型化,コンパクトにする傾 向にある。この技術は,ここで述べるオフコンにも全面的に用いられており, モジュール化されたハードウェアは,従来のものと比較にならないほどの信頼 性を保つようになっている。また,オフコンの低価格,操作の容易さが実現さ れたのも,これらの開発に負うところが大きい。 コンピュータのハードウェアについては,前記のような技術開発の進展を遂 げているが,ソフトウェア面では,12∼3年以前に「ソフトウェア危機」が叫 ばれて以来,ソフトウェア開発にそれ程効果的な手法がなく,停滞状態にあ る。このような状況をR、バルザーア(Robert Balzer)は,「周知のようにソ フトウェアは沈滞状況にある。信頼性に欠け,引き渡しは遅く,変更は自由が 利かず,非能率的で高くつく。そのうえ昨今は労働力依存度が高いので需要が ラ 増え労賃があがれば,さらに状況は悪化するであろう」と述べている。 1973年頃からプログラム設計段階での構造化やテスト法についての論義はあ ったが,実務面では欧米,わが国,ともに定着していないように思われる。ま た,ソフトウェア開発のライフサイクルの最初の段階に位地する,目的や機能 決定,その仕様方法などの技術は,80年代に期待される分野である。 さらにソフトウェア開発費の問題について,J. C.バーンズ(J. C. BurnS) は,「つぎの10年間にコンピュ ・一タの記憶装置は毎年40%,また演算装置は毎 4)石井治,メイン。メモリの動向,情報処理,Vol 16, No.4, pp。258一一274, Apr. 1975. 5)石井治,記憶階層のためのハードウェア技術,情報処理,VoI.21, No.4, pp,308− 313, Apr. 1975. 6) Robert Balzer,1叩recise Program SI〕eclficatlonJ Report ISI/RR−75−36, Inform, Sciences lnst,, Dec. 1975,中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 47 年25%ずつコスト・ダウンするのに対して,人件費は毎年6%ずつ上昇するだ り ろう」と予測し,今後のコンピュータ運用に関しては,ハードウェアよりソフ トウェアに費用のかかることを指摘している。第1図のデータによれば,最近 の情報システムの複雑化,巨大化の傾向は,ますますソフトウェア開発に要す る時間やコストを増加させることになる。 第!図 ハードウエアとソフトウエア費用の傾向 1∪リ se
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費、。!劉
20 ofo / ハーgウェア費 /95i年 19アO年 1985年 年 代 B. W. tl]eehn, Software Engineerlng, IEEE Trans, on CompuLers, Dec, 1976, P. 1227. A.M.デーヴィス(A. M Davis)らも同様の指摘をおこない,1985年には 情報システム中に占めるソフトウェア費用の割合が,90%近くにもなると述べ きう ている。この現象は,そのままオフコン業界あるいは,ユーザーにもあてはま る問題であり,深刻に考えていかねばならない。 ところで,わが国におけるソフトウェア開発費の割合を正確には握すること は,無形の資産を金額表示するという意識の低さから明確な回答が得られず, 難かしいが,コンピュータ白書79によれば,運用費に対する機械費の比率は, 7) J. C. Burns, The Evolution of Office lnformation Systems, DATAMATION, Vel. 23, No. 4, pp. 60−64, Apr. 1977 8) A. M, Davis, et al., RLP: An Automated Tool for the Processing of Require− ments, Proc. of COMPSAC‘79, pp, 289−299, Nov. 1979.第1表のごとく,長期的に見 て,運用費の割合が若干,増 加している傾向にある。一 般にコンピュータの運用経費 は,売上高の0。3∼0.4%程度 といわれている。その運用費 に比べ,マシン・レンタル料 などの機械費は,年々減少の 傾向を示しているのである。 換言すれば,ソフトウェア開 発費やシステム運用経費が, 逆に増加する傾向にある。 以上のように,ソフトウェ アの費用が増加する傾向は, 第1表 コンピュータ運用費と機械費の割合 (月額,千円)
ぱ
運 用 費機械論犠の割合
1972年 ll, 342. 2 6, 262. 1 55. 2%e 73’lll i IZ 647. 7 i 9, 965, 5 1 56, 5% 74年 13, 580. 2 6, 947. 6 51. 2% 75年[・5…4・1i 12.・176・・【 48. 2% 76年 1 27・ 205・2 14, 073. 7 51, 7% 77年i・3・・58…巨6・429・・1 48. 9. %e 78年 34, 881. 8 1 17, 036. 7 48, 8% 注)各年の金額値そのものは,サンプル構成差の ため,単純に比較することはできない。 (財)日本情報処理開発協会,コンピュータ白 書‘79,p,203,コンピュータ・エージ社. コンピュータ規模の大小によって変わる問題ではな:く,オフコンを利用する企 業にとっても,ソフトウェアの効果的な:開発方法や利用方法を検討しなければ ならない。まして,中小企業におけるEDP化については,大企業とは異なっ た事情を含んでおり,今後この種の問題はますますクローズ・アップされるこ とが間違いない。 オフコン業界ではソフトウェア費用高騰の解決策として,今後,ハードウェ アとソフトウェアの価格をアン・バンドリングする方向を,従来より強化した 姿勢で対応する傾向にある。これによって,ユーザーは,全面的にその影響を 受けることとなる。そこで,オフコンの特徴を生かしながら,経営活動に有効 な道具として用いるという見方に立脚して,ソフトウェアの効果的な開発方法 9) 日本情報処理開発協会,コンピュータ白書‘79,P.203,コンピュータ・協心ジ社。 本調査では,マシン購入時のハードウェア価格と基本ソフトウェア,アプリケーショ ソ,ユーティリテーなどのプPtグラム価格を区別していないため,ソフトウェアが高 くなる傾向は,明確に出ていない。中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 49 を検討してみよう。 2 ソフトウェア開発の方法 一般的に見て,オフコンのソフトウェア開発用プ・グラミソグ言語には,第 2図のようなものがある。その言語を大別すれば,手続き型のものと,パラメ ータ型のものである。メーカーが,簡易言語と呼ぶものには,さまざまなもの が含まれている。たとえば,明らかに機械語やアセンブラ言語に属し,コーデ ィング時に時間と労力を要する非効率的な言語で, 「簡易」の言葉とは縁遠い ものもある。 また,750万円以下のマイクロ・プロセッサーを用いていないオフコンでは, COBOL, FORTRANなどの高級言語が使用できないものもある。しかしな がら,ここ数年の間にオフコンと呼ばれるコンピュータの大半が,前記のよう な高級言語やパッケージ・プログラムの使用が可能になると思われる。それ で,ここでは高級言語がオフコンで使えることを前提にしてソフトウェア開発 の問題を取りあげていくことにする。 ソフトウェア開発の問題を考える場合には,コンピュータの利用方法によっ 第2図 オフィス・コンピュータのプログラミング言語 一COBOL ANS ‘74 1 1 1
1列「.手縦型記述諦1一’FORTRAN JIS 5000
1ii 欝気九型∵;黒
劇 [lla一:=∴,雲脚融
1言 i呈 一簡易言語 パラメータ型一 [mn 一パラメータ型記述言語一 一RPG陵1一一一螺:1;:二:;・X
卜用ても,問題の所在が変わってくる。たとえば,一般の企業でコンピュータを利 用する場合,自社に導入する方法,数社が共同で購λして利用する方法,社外 の委託計算センターを利用する方法,電撃公社または民間の大規模なコンピュ ータをオンラインで利用する方法が考えられる。 このように,コンピュ ・一年の利用には,何通りかの方法が考えられるが,こ こでの対象は自社にオフコンを導入する立場からソフトウェアの開発方法を検 討することとし,他の利用方法については,稿を改めて考察することにしたい。 第2図に示したようなプログラミング言語を用いて,自社用のソフトウェア を開発する場合には,自社開発,共同開発,委託開発の方法がある。また,既 存のものを用いる方法としては,パッケージ・プログラムの利用が考えられ る。それぞれの開発方法と,パヅケージ・プログラムの利用について簡単に述 べておこう。 まず,自社開発は,社内にプログラマーをおいて,独自に自社用のソフトウ ェアを開発する方法である。通常は,社内のEDP業務担当者が,導入機種の 決まったメーカーやディーラーヘプログラム講習会を受けに行き,その後に, システム設計からプPグラム作成,システム稼動までの作業をおこなう。この 方法は,プログラマーが過去にEDP化の経験をもっていたり,すでに十分な プログラミングの教育を受けている場合に実施されるもので,講習会では,主 に機種によって異なる部分の指導だけを受けることが多い。 共同開発は,自社のプログラマーが,メーカーやディーラーの協力を受けな がら開発する方法と,何社かのユーザー企業のプログラマーが共同で,あるい は,民間企業のオープン・プログラマーと共同で開発する方法がある。オフコ ンの利用にあたっては,後者の2つの例をとる企業があまり見当らないので, ここでは前者についてのみ説明しておこう。EDP化の推進計画が決定し,オ フコンの購入を契約すれば,メーカーまたはディーラーのプPグラマーがユー ザー企業へ来て,詳細なシステム設計とプログラムの開発をおこなう。 この時期にユーザー企業の要員を教育しながら,共同でEDP化の作業を進 める方法である。システムの稼働後も,開発に関係した販売会社のプログラマ
中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 51 一が定期的に訪れ,ユーザーの支援をすることも多い。オフコンに限らず,普 通のコンピュータでも始めて導入する企業においては,このケースが多い。立 ち上がり時に社内のプログラマーの実力がつけば,その後は自社開発に発展す ることになる。 委託開発は,ソフトウェアの開発をすべて社外の機関に委託する方法であ る。自社内にプログラマー要員が居ないために委託する場合と,要員は居るが 作業量が多いために委託する場合がある。中小企業の場合,後者は稀である。 一般にこの委託方式をとる場合は,メーカーまたはディーラーの要員に社内の 業務処理に関する手順や内情を十分に説明して,システム設計からプpaグラム 作成までを,すべてまかせるのである。またソフトウェア開発を,民問のソフ トウェア会社へ委託する方法もあるが,その場合もメーカーなどが実施する要 領と同じである。 さて以ヒでは,自社専用のソフトウェアを開発してEDP化を進める方法に ついて概観してきたが,つぎに,既存のプログラムを利用する方法について述 べよう。パッケージ・プログラムを利用する方法は,ソフトウェア開発の面か ら見れば少し異質である。それは,開発するというより出来合いのプログラム をそのまま用いるという面が強いからである。 つまり,メーカーやディーラーまたは,民間のソフトウェア会社が所有する 既製のアプリケーションズ・プログラムを利用するのである。オフコンの利用 には,自社に専門のプログラマーをおかず,メーカーやディーラーが勧めるも のを,そのまま用いることが多い。この種のプログラムには,使用料を必要と するものもある。 パッケージ・プログラムは大別して2つの流れがある。その1つは,メーカ ーがオフコンのハードウェア的な特徴を生かすために,特定の機種専用に開発 したものである。この種のプPグラムは,低価格機種に多く採用されており, 標準システムの内容は変更が不可能である。システムの記述言語も,アセンブ ラや機械語を用いることが多く,ユーザーは提供されたプログラムを自社用に 変更せず,そのまま利用せざるを得ない。
他の流れの1つは,パッケージ・プログラム自体が予めモジュ 一一ル構成にな っており,一定の範囲内でユーザーの希望や業務事情に合わせて,機能選択 (処理内容の変更)が可能なものである。ユーザーにとっては,もちろん機能選 択の許容範囲が大きいほど利用しやすいが,そのようなプログラムは少ない。 さらに,パッケージ・プPtグラムは,業務別プログラムと業種溺プログラム に分けることができる。業務別プログラムとは,販売管理業務処理,在庫管理 業務処理などのプログラムである。業種別プログラムとは,医薬品卸売業務, 会計事務所,ホテル・旅館,病院業務などのように,業種別に作成したプログ ラムである。 パッケージ・プログラムを,それぞれのメーカーやディーラーで開発した初 期には,業務別にあらゆる企業の業種に適合するように,汎用的な形で作成し たものが多く見受けられた。しかし,個々のユーザー企業が,EDPシステム を総合化しようとするにつれ,個々の業務別プログラムの相互の問で,整合し ないことを問題にする声が高まってきた。 、 そこで近年では,オフコン用のパッケージ・プPグラムの見直しを計り,業 種別に業務内容をまとめた業種別パヅケージ・プPグラムが作られる傾向にあ る。つまり,業務別プログラムは,業種別プログラムに包含されるものである が,業種によって異なる業務内容を,より専門化した形でプログラムを構成し ている。 最近,オフコンの効果的利用を促進する観点から,データ・ベースの考え方 を取り入れた業種別パッケージ・プログラムの開発を目差している。データ・ ベースにおけるデータ構造は,業種によってかなり変更する必要があるが,個 々の業務処理プPグラムの開発にそれ程労力を要しないとすれば,データ・ベ ースを開発する側からは,開発コストの削減も可能である。また,個別業務プ ログラムに比べ,データ・ベースの方が汎用性も高く,今後一段と普及すると 思われる。 さて以上では,かなり将来性も含めたパッケージ・プログラムの考察をおこな ったが,現実は,必ずしもそれ程いいものが出回っている訳ではない。しかし,
中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 53 中には利用の仕方によって,EDPシステム開発の期間が短縮され,低コスト で非常に効率の良いソフトウェアが利用でぎる場合もある。参考までに,現在 発表されているオフコン用のパッケージ・プログラムを第2表にあげておこう。 第2表 オフィス・コンピュータ用パッケージ・プログラム メ 一 カ 一 名 ㈱ 内 田 洋 行 名 称 U−PACK 沖 電 気 工 業 ㈱ 名称不明 カ シ オ 計 算 機 ㈱
CASST
シーv・ 一プシステムプnダクト㈱ 経理,給与パッケージ 大 精 電 子 ㈱ 原価管理パッケージ 東 京 芝 浦 電 機 ㈱ マイティパック 日本アイ・ピー・エム㈱ HGHS(販売業務標準化システム) 日本エヌ・シ、一・アール㈱ SPIRIT−J日本オリベッティ㈱
BPG
日 本 電 気㎝ス㈱属
APLIKA
ノミ ロ ㈱ 日 立BMS
製 作 所
日立アプリケーション・パッケージ 富 士 通 (es) CAPSEL, BM−SAMPLE 丸 善雇員電器産業㈱
名称不明 三 菱 電 機 ㈱ 名称不明 tw) L リ コSAPORT
−m オフィス・コピュータ性能一覧,事務管理,Vol.18, No.10, PP.86−174,!979. 3 開発の実状と開発方法の比較 EDP化を試みる場合には,前記したソフトウェア開発方法のいつれかをと る必要がある。いつれの開発方法を選択するかについて決定する場合,極端な 表現を用いて尺度を計るとすれぽ,社内にプログラマー要員を確保するか否か54 の問題に尽きる。いい換えれば,オフコン業界がハードウェアとソフトウェア の価格について,アン・バンドリングの体制をとれば,ユーザーはアプリケー ションズ・プログラムに関する費用を,社外に支払ってそれを入手するか,社 員を教育し,EDP化の仕事と他の作業を兼務させてでもプログラマーを自社 におくか,の選択になる。 ちなみに,今日のソフトウェア開発費の価格は,標準の給与計算プログラム で20万∼50万円程度,他の一般経理業務などのプログラムを合わせれば,100 万円程度の費用が必要である。パッケージ・プログラムを利用した場合には, この価格より幾分安くなる。また,オフコンの運用費については,ソフトウェ アを外注した場合,月々の費用は安くなるが,導入時の一時経費は逆に100万∼ 200万円割高となる。 われわれは,過去においてオフコンを利用する中小企業の実状を調査したこ ユの とがある。その結果にもとづけば,第3表のように半数以上の企業がメーカ一一一 やディーラーを相手にした共同開発,委託開発である。委託開発をおこなって いる企業は,コンピュータ規模が小さく,プログラミング言語がアセンブラや機 第3表 ソフトウェア開発の方法
\開発方法合計
調査対変\社数
自社開発
共同開発
委託開発
自社開発とパッケージ利用岡山県t・・社
7社(233%)13社(43.3%) /10社(33.3%) //
滋賀県1・・社1・4社(35・・%)1・社(…%)!・8社(45・・%)L// 全 国 991社230社(23.2%)283社(28.6%)464社(46.8%)14社(L4%) 岡山県資料:拙稿,中小企業におけるコンピュータ利用の問題点,IIT,1977.3−No.10, p.23,日本情報処理開発協会・情報処理研修センター。 (調査昭和50年10 月末現在) 滋賀県資料:拙稿,滋賀県中小企業振興構想報告書,Pi 135,滋賀県。(調査昭和52年11 月末現在) 全 国:(社)日本経営協会,超小型コンピュータの有効利用に関する研究調査,昭 和51年度,pp.23−24,日本経営協会。 (調査昭和51年7月末現在) 10) 拙稿,前掲書,p.23. 11) 滋賀県,中小企業振興構想報告書,pp.261−276,昭和53年。中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 55 械語で,その知識を修得することに時間がかかるため,委託に頼らざるを得な いという例が多かった。この結果は,他の調査結果と照合しても同様であった。 ところで,中小企業におけるオフコン利用を特徴づければ,以下のごとくで ある。まず,中小企業では,できる限り安い経費で,しかも経営者が直接最大 の利用成果を求めようとする傾向がある。その実状は,オフコンを導入する場 合の買取価格が,!000万円から1500万円程度,すなわち月間リース料金(保守 吊上)で,25万円から35万円程度である。これを人件費に換算すれば,事務員 1人から2人分までの費用で利用しようとする企業が多い。 このような事情から,小規模な企業ではソフトウェア開発に要する;期間や費 用を捻出することが難かしく,社内に専任のプログラマーをおいて,種々の 業務処理プログラムを自社で開発しようとする企業は,少ない傾向にある。ま たコンピュータを運用するための要員も,2名程度に限定されるのが普通であ る。したがって,オフコン利用の実情は,約半数の企業がシステム設計やソフ トウェア開発を社内でおこなわずに,システムを運用している。 システムの運用に関しては,データ・エントリーや消耗品費に,できるだけ 費用をかけず,最少限にとどめている。業務処理は,日次計算や月次計算を記 録するバッチ処理とともに,在庫量などを即時に問合わせるリアルタイム処理 もおこないたいという要求が,最近多くなってきている。ちなみに,オフコン の適用業務を見れば,売掛金業務,販売統計,伝票発行などを主とする販売管 理業務が中心となっている。さらに片方では,CRTディスプレイを現場に設 置して,直接入出力をおこなうといった利用も最近多くなっており,全体から 見た適用範囲は相当広い。 以上のごとき中小企業におけるオフコンの利用実状を考慮しながら,ソフト ウェア開発の方法の違いによる利点と欠点を検討してみよう。つまり,プログ ラマーを自社に確保すべきか否かの観点から考察してみる。 (1)自社開発および共同開発 12) (社)日本経営協会,超小型コンビュターの有効利用に関する研究調査:昭和51年度 pp 23−24,日本経営協会。
56 利 点 。ユーザー側の社内事情をシステム仕様に反映させやすく,将来性を加味でき る。 。社内の利用者ニーズに合ったシステムを作ることが可能であり,使いやす い○ 。社内にコンピュータ要員が居るため,社内全体のコンピュ ・一タ知識向上につ ながる。 ・ソフトウェア開発の大半の責任がユーザー自体にあるため,開発に取に組む 姿勢が積極的になる。ノウ・ハウが蓄積される。 欠 点 ・ユーザーが始めてオフコンを利用する場合には,基本のシステムが短期間に 決定しないことが多い。また,システム開発時の負担と要員教育が必要。 。ユーザーの知識が豊になるにしたがって,より使いやすいシステムにしよう とするため,仕様変更が多くなる。 。共同開発において,プログラムをユーザーとメーカー,ディーラー,民間の ソフトウェア会社などに分担した場合,責任の所在が不明確になることが多 くトラブルが発生することもある。 ② 委託開発 利 点 ・プログラマー要員が不要。 。ソフトウェアの不良が原因でトラブルが発生したときは,その委託会社に対 して責任を追求することができる。 ・社内では,システム稼動時期までの事前作業が軽減する。 欠 点 。委託会社へ社内の業務処理手順を十分に伝えないと,内容のは握漏れがあ り,何度もプログラム修正をおこなうことになる。 。費用が高くつく割に,上記の原因によるトラブルが多く,システムの本稼動 が遅れがちになる。
中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 57 ・ソフトウェア開発委託費が必要になり,コンピュータ導入時の費用が高くな る。 。プログラムのわずかな変更やトラブルが発生したときにも,ハードウェアと 同様にいちいち委託先の要員を呼ばねばならない。 ・社内では,コンピュータに対する知識の広がりが遅く,システム拡張の気運 も低く,なかば専用機的な利用になる。 。社内のノウ・ハウや内部のデータが,第3者に漏れる可能性がある。 (3,)パッケージ・プログラムの利用 利 点 ・プロダラー?・一一要員が不要。 ・デバッギング,テスト・ランの期間がわずかな日数で済む。 。システム稼動までの期間が短縮され,ソフトウェア開発の全体の費用も割安 になる。 欠 点 ・オーu’・一メイド的な自社専用のソフトウェアは望めない。 ・パッケージの利用が有償である場合には,固定借用費に年間保守費用がかか り,数年間使用すれば,自社開発によるコストを上まわる費用になることも ある。 。パッケージ自体が,他の機種と互換性を持つ種類のものが少ないため,レベ ル・アップ時には,再開発が必要である。 。プログラムの資産的価値が低い。 ソフトウェア開発方法の違いによる利点と欠点は,前記のごとくである。と ころで,オフコンを利用する立場から考えれば,効果的にフルに活用し,ユー ザーにとって利用しやすいシステムで,しかもニーズに合った情報が得られる ソフトウェアを開発することが,大きな目標の1つである。この目標を実現す るには,多少なりともオーダーメイド的なソフトウェアの開発をおこなうこと が望ましいQ これをパッケージ・プPグラムによって可能ならしめることは,現在では非
常に難かしい。たとえば,パッケージ・プログラムの機能選択の巾が広く,利 用者のニーズにうまく適合すれば問題はない。しかし,現実にわが国には,機 能的な融通性に秀れたオフコン用のパッケージが少なく,既存のものをそのま ま用いれば,ユーザーの不満の種になるケースが多い。 また,パッケージ・プログラを利用するにも,ユーザーの要員がコンピュー タの知識をもっている場合と,その知識をもっていない場合では,効率的にオ ユの フコンを利用するという面で,かなりの差が出る。それは,合理的なジョブの 組み合わせ方やオペレーションの方法を考えることによって,稼動時間の短縮 やミス・オペレーションをなくすることができるからである。 このような観点から,過去にわれわれが指導した企業ではプPtグラマー1名, パンチャー1名(相方ともオペレーション可能)補助の交替要員(他の事務と 兼務)1名が,買取価格2000万円クラスのオ’フコンを効果的に活用し,広範囲 な利用をおこなった経験がある。もちろんソフトウェア開発は,自社でおこな っている。この例からいえぽ,前記の調査で対象とした委託開発をおこなって いる企業のうち,半数以上の企業は自社開発が可能な状態にある。 過去には,ユーザーがナフコンを購入すればソフトウェアは無料サービスと して考える傾向が多かった。しかし最近では,販売会社自体がソフトウェア開 発に悩み,損益的に無理な販売はしなくなった。その結果が,アン・バンドリ ングの方法になったのである。いわば,ソフトウェア開発の悩みは,メーカー やディーラーからユーザー・サイドに移りつつある。 先見の目を持ち,EDP化に積極的な:姿勢を示している企業では,ソフトウ ェア開発の重要性とその価値を良く認識し,先行投資として資金を出しても, 14)内容の良いものを作りたいという傾向も現われている。 13) D. R・ Shaw, Determinig the Pachage Outiient. Supplier quality: User neers, Data Management, Vol. 17, No. 3, pp, 16−19, 1979, 14) 島田清一,パヅケージ・プログラムの活用,事務管理,Vo1.19, NQ.3, p,23,1980.
中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 59 4 オフィスコンピュータの利用例 最近,現場で発生するデータは,日常業務に必要な分だけその場で処理し, 本社では,一時処理の終ったデータを収集して,全社的な経営管理を目的にし た資料を作成するという,分散処理システムに対するニーズが高まっている。 つまり,バッチ処理の場合,現場で発生したデータを伝票やマーク・カードに 記入して,閉店後にまとめて収集したり,遠隔地のデータをそのまま電送する 形態をとらずに,現場で日常業務に必要な処理をした後に,本社へ送る方が効 率的であると考えるのである。 これは,消耗品代や通信料の節約になるばかりではなく,本社のCPU負担 を軽減させることにもなる。同時に,情報システムが,現場に密着しているこ とは,管理上,システムをスムーズに運用できることにもなる。既に,オフコ ンとオフコンを接続させたオンライン・システムや,オフコンをワーク・ステ ーションにあるいはホスト・コンピュータとして,前述の分散処理システムを 運用している事例がある。 ここでは,オフコンをホストとして,支店に最小規模のオフコンを設置した形 で,小規模な分散処理システムを運用している事例を取りあげてみた。オフコ ンの規模は,本社のものが1000万円程度で,支店のものが250万円程度である。 ソフトウェア開発はディーラーとユーザーが共同で開発する形をとり,既存 の従業員1名をプログマーに養成した。本店のオフコンに関するオペレーショ ンは,女子店員1名が担当し,支店のオフコンは,全員が日常の運用に必要な オペレーションを覚えた。現在,オペレータは,店頭係,および電話の応対を兼 ねている。プログラマーは,ソフトウェア開発時にはその仕事に専従したが, 完成後は店内商品の整理と,帳簿管理にあたっている。なお,完成したソフト ウェアは,パッケージ・プPグラムと,COBOL言語を用いた自社用のプロ グラムが,半々の割合である。その開発期間は,4ケ月を要した。 では,M社の概況とEDP化に至った過程を述べよう。年商3億円,従業員 15名のM社は,酒類販売店で,本店の他に10km∼20kmほど離れた同一市内に
小売店舗を3店もって商っている。本店,小売店とも店頭販売の他に,飲食業 務店,一般家庭への注文配達販売をおこなっている。取り扱い品目は,酒類600 点の他,炭酸飲料,ミソ,ショウ油などの調味料と,酒のつまみ,缶詰類が合 おせて500点ある。 昭和54年4月にEDP化の検討を開始し,昭和55年3月に完成したのである が,その背景には,つぎのような実状があった。①本店を含めた4店の日々の 売上整理に非常に手間がかかる。②取り扱う品目がかなり多く,日々の売上数 量を整理しておかないと,在庫数がつかめず品切れの原因になる。③顧客の嗜 好,容器回収,集金管理などが徹底していきとどかない。④御用聞きという形 式は,スーパー・マーケットの販売とは異なったサービスが可能で,得意先を 獲得するには欠かせない方法である。顧客管理には,事務処理専用の人員がい ないため,毎日残業で3∼4人がかりでその日の売.ヒを整理している。しかし ながら,手作業では,請求書,売上の整理などがスムーズにおこなえない。 以上のような理由から,店毎に日計表を取る程度めレジスター替りの端末機 と,本店にそれらのデータを処理するオフコンを用いることになり,情報シス テムを分散化することになった。 オフコンのシステム構成は,第4図のごとく,本店にFACOMシステム80, 支店には,RICOM DE 2100を,下記のような・・一ドウ=ア構成で配置した。
第4図
本店
支店(3店舗同じ構成)FACOM
ンスアム80192KB
12 MB噛」
CRT
キーホートRICOM
DE 210064KB
ライン プリ/ター/一
@
雪
キーーホート /リアル プリ/ター中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 61 ハードウェア的には,本店と支店のオンラインが可能であるが,業務の性格 から,それ程の必要性もなく,回線制御装置や通話料の費用的面から,今回は 見合わせることになった。 つぎに業務処理の概要を説明しよう。まず小売にあたっては,プログラムが 実行されると,売上,入金,在庫,日計処理の選択指示がCRTディスプレイ に表示される。テソ・キーから1を入力すれば,売上処理に必要な入力データ のフォーマットが,CR二Tディスプレイに表示される。そのフォーマットの指 示通り,得意先コード,商品コード,数量をキー・インする。 入力データは,CRTディスプレイに表示されるとともに,得意先名,商品 名,金額,伝票の合計金額が表示され,同時にその内容がフPtッピー・ディス クに記録される。また,シリア・レ・プリンターからは,売上伝票,納品伝票, 請求伝票,現金売の場合は,領収書が発行されることになる。上記のように他 の処理もデータ入力の操作は,CRTディスプレイに入力する数字や,操作キ ーの手順が表示され,誰でも,いつでも扱えるようになっている。 閉店時には,フロヅピー・ディスクに記録されたその日の売上内容を,日計 表にまとめ,数量,金額の合計をプリントする。その後,フPッピー・ディス クを本店へ移送するQ 本店では,その日のうちに,各小売店の在庫計算をおこない,問屋への注文 書を作成しておく。翌日は,各店舗の発注数量を問屋へ注文し,問屋から各店 舗へ配達することになる。さらに,業務処理は,前日の売上データから,全店 の売上計算と顧客管理,商品管理の資料を午前中に出力する。なお,本店のオ フコンは,マルチ・ジョブが可能であり,支店でおこなっているものと同様の プログラムが,売上毎の処理に並行して実行されている。 本店のオフコンで処理された各小売店毎の売上,在庫,顧客などに関する管 理的資料は,毎日出力することにして,その資料と代りのフロッピー・ディス クを支店へ渡すことにしている。この他,月次処理には,日毎の資料を月次に 集計したものと,請求書の発行,給与計算,一般経理の計算をおこなっている。 参考までに,業務処理のシステム・フローの一部を第5図と第6図に示して
第5図 支店の処理概要 入力操作 手順指示 メノセーン 得コー}’ 商品コード 数量 RICOM DE2100 入力内容 表 示
×
売上フアイルー[到
現金売の客 領収書 納品・請求f云票 売上伝票 第6図 本店の処理概要 売上ファイル D c Bb
へ雌
Fンステム80 集計 売上日計表 顕客77 ’レ1害別1 店SIJ在軍ファイル 経埋フア佃 Lr入フア右レ閣
凶
, F〆ステム80 i ‘ q入7アイル卵
商品受払日報 仕入日計表 F/ステム80 F〆ステム8〔} F〆ステム6り 月次・締日処理 i 一般経理表 給 与 表 請 求 書 酒類収計表 商品受払月報 買掛残高 売掛残高中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 63 おこう。 ところで,今日の分散処理システムは,一般につぎのような3つの形態を取 り得ると考えられる。 (1)データ収集型 (2)データ集配型 (3)ネット・ワーク型 (1)のデータ収集型は,営業所や支店の現場に,オフコンやインテリジェン ト・ターミナルを分散設置し,現場の一次データを作成する。そのサマリーを 本社のホスト・コンピューータへ一括伝送する方式である。ホストとワーク・ス テーショγのコンピュータ間には,単純な論理的結合があり,データ通信を可 能にしたり,フPッピー・ディスク,MTなどの媒体に互換性をもたせて,デ ータを収集するのである。 ㈱のデータ集配型は,システム構成としては先のデータ集配型と同一であ る。異なる点は,ワーク・ステーシ・ンからデータを本社のホストへ伝送する と同時に,ワーク・ステーションから本社のデータ・ベースを実時間でアクセ スできるシステムである。つまり,このシステムでは,ホストとワーク・ステ ーション閾のコンピュータがオンライン・リアルタイム処理になることが前提 となる。 (3)のネヅトワーク型は,いつれの場所にもかなり大型のオ.フコンを設置し, それぞれのデータ・ファイルを相互に共有するシステムである。したがって, 相互のコンピュータにおいては,互いに論理的に密接な結合をもち,リソース を容易に利用し合う形になる。オフコンにおける相互オンライン・システムは, ハードウェア的にCCU(Communication Control Unit)などが容易にモジュ ール化されており,組み込み可能なものが多い。BSC(Binary Synchronous Communication), MCP(Message Control Program), MPP(Message Proce− ssing Program)などのソフトウェアも,ファームウェア化されているものが らう 多く,技術的にはコンピュータ・ネヅト・ワークも,それ程困難ではない。 1b) つぎの文献によれば,オンライン・プPグラムに関して,ファームウェアの発達,
64 以上がオフコンにおける分散処理システムの一般的な形態であるが,現在で は,(1)のデータ収集型が中心であり,(2)のデータ集配型や,(3)のネットワーク 型は,今後発展していくであろうと思われる方向である。 前述した事例では,オフコンをオンラインで結合する方法はとらなかった が,一応,(1)のデータ収集方式による分散処理システムの体形になっており, 今後その必要が生じれば,容易にオンライン化も可能である。事例のシステム を具体化することによって認められた効果のうち,特に際立ったものを取り上 げて述べてみよう。 (a)各店とも在庫を2∼3日分にしたため,販売面積が大幅に拡大され,商 品の整理がしゃすくなった。つまり,イレギュラーな大量注文を受けた場合に は,本店からも納品するような体制にし,不要な在庫を持たないようにしたの である。 (b)顧客管理の徹底により,請求ミス,納品ミス,集金ミス,容器回収ミス などがなくなり,顧客からの信用度が増した。 (U)毎日残業でおこなっていた事務処理は,ほとんどなくなり,精度の高い 管理資料が早く入手できるようになった。 (d)季節傾向に応じた商品の販売体制が取れ,機会損失も少なく,利益管理 がおこなえるようになった。 (e)現場指向型の分散処理システムを作成し,キャッシュ・レジスターの感 覚でオフコンを操作できるようにしたので,データが売上のあった時点で記録 でき,専門のオペレータを必要としなくなった。 M社の情報システムの主な効果は,以上である。この事例のように店は地理 的に分散しているが,情報システム的には相互の店を結合させねばならないと いう,現場主導型の処理を目的とするとき,前例のごとき分散処理システムは チップによりハードウェアと結合する方法,ソフトウェア・パッケージの利用などに より,=一ザー自身がオンライン・ソフトウェアを取り扱わずに済む時代が到来した ことを,各専門家,計算機会社の1980年代の予想をもとにして述べている。 G. C, Hartwig, lt’sthe User”s Turn to Pull the Softtware String, Data Communi− cations, Vol. 8, No, 6, pp, 49−50, 53−55, 1979.
中小企業におけるオフィス・コンピュータ利用の一考察 65 低コストであり,しかも予想以上の効果のあがることが確認された。 システム設計に着手した当時,異機種間のフロッピー・ディスクの互換性が 心配されたが,最近のものはメーカーが異なっても,かなり互換性が高くなっ ており,何なく解決した。以上の例により,将来さらにユニークなシステム構 成が組めることも容易になった。 5 むすびにかえて 以上では,中小企業におけるオフコンの効果的利用という面から論じてき た。一言にして述べれば,その結論は,ソフトウェアの開発をいかにするかの 問題であり,今後,パッケージ化された業務別,業種別プログラムが完備され ることによって解決するであろうと思われる。しかしながら,優秀なパヅケー ジが現在わが国には存在しないので,過渡期の方法として,自社開発またはメ ーカーやディーラーとの共同開発によって,自社で用いるソフトウ=アを作成 することが望ましい。 ここでは,中小企業のもつ他の実状や問題点を今一度検討しながら,先の結 論を考察してみることとする。ソフトウェアの自社開発または共同開発が困難 となる要因としては,少ない予算額,人材不足,多種少量の事務を小型機で処 理するtlこは機能的制約を受ける,などの諸問題がある。これらの問題を解決す るには,つぎのごとき考えが成り立つ。 まず,多種少量の事務をEDP化するには,それ以前に事務処理の標準化を 進め,例外事項などについても,いくつかのパターンを決めて処理手1頃を統一 しておく必要がある。その作業は,社内の事務処理に詳しい人が中心となっ て,EDP化の知識を取り入れて,準備を進めることが都合よい。 さらに,多種少量の事務をプPグラム化するには,不必要な処理手順を省略 し,パターンを類似化したモジュールを多く作る方が,プログラム作成には便 利である。これらの事務改善作業についても,内容があまり理解できていない 社外の人より,むしろ社内で事務に明かるい人の方が適しており,その人々に ソフトウェア開発に参加してもらうべきである。
66 EDP化に対する予算が制限されている場合には,機能的に能力の低い小規 模なオフコンを購入する傾向にある。しかしながら,このような場合には,ハ ードウェアの性能を低くするのではなく,機能的に拡張性のある基本構成のも のを購入し,優れたソフトウェアで不足をカバーした方が効果的である。ま た,ソフトウェアを外注する場合には,その費用を用いて,社内要員を養成し 自社で何事にも融通のきくソフトウェアを開発する方がよい。 オフコンを導入すれば,その要員は,ある程度の規模まで,1∼2名の人員 が必要であることが,何度かの調査で判明している。この場合,オペレータや パンチャーを他の事務と兼務させることがしばしばあるが,極度な:事務員不足 以外は,兼務させない方が望ましい。コンビ=・・一子のスペシャリストとしての 自覚をもたせ,その仕事に専念させることが種々の面でプラスになる。 つぎに,多種少量の業務を小規模な機械で処理するには,機能的に制約を受 けるという問題について述べよう。従来の小規模なコンピュータは,ハードウ ェアの技術的制約からくる機能的能力の低さによって,中小企業の要望に合う ものはなかった。4∼5年前の調査では,ユーザーからたえず下記のような意 見が出されていた。 ① 主記憶の容量が少ない。 ② プログラム開発に時間がかかり,修正,保守も困難である。 ③ ジョブ・ステップが短かいにもかかわらず,業務処理プログラムの入替 が繁般におこなわれ,遊び時間が多い。 ④ データ作成と業務処理を同じ機械でおこなうケースが多いが,マルチ・ ジョブ形式がとれないため,実稼動時間が制限される。 ⑤ 補助記憶装置に効率的な機器がない(紙テープ・ベースが普通であっ た)ため,データの蓄積,検索が困難である。 このような理由の他に,コンピュータを支援するためのソフトウェアの主要 な言語には,機械語,アセンブラ,機械固有のシンボリック言語などを用いる ものが主流であった。先にも述べたように,中小企業の業務は多種少量の事務 作業が多く,取り扱うデータにも例外事項が多いため標準化されたものが少な
中小企業におけるオフィス・コソビュー’一三利用の一考察 67 く,処理も複雑である。それにもかかわらず,前述のような言語を用いてソフ トウェアを開発するには,時間と労力がかかり過ぎて,非常に困難である。 特に例外処理や親会社などの指定帳票類に起因する入出力様式の不統一は, データ・チェック,入出力フォーマット制御などのプログラムに非常な手数が かかり,効果的なソフトウェア開発がおこなえないのが実状であった。 しかしながら,前述したように,昭和50年頃から高性能なハードウェアを低 価格で提供するシステムが,あいついで発表され,ここ2∼3年前からようや く稼動し始めた。最近の少し高級なオフコンは,7∼8年前の中型機並の性能 になっている。低価格,性能の向上,操作性の容易さは,今後もなお進むであ ろう。 ソフトウェア面では,小規模ではあるが,OSを採用する機能が増えハード ウェア,ソフトウェアの両面において,使いやすくなった。また,半数の機種 においては,入出力のフォーマットを記述することの容易なRPGやCOBOL などの汎用高級言語も使用可能になっているものもある。この点も機種選択に は欠かせない条件として考慮すべきである。 いつれにしても,高性能なハードウr.アを低価格で購入できるようになった 今日,従来には見られなかったコンピュータの新しい利用分野を開拓しつつあ り,先に述べたソフトウェア開発における困難な理由のいくつかを解消するよ うになった。 本節では,優秀なパッケージ・プログラムが使用可能になるまでの段階とし て,自社開発または共同開発をすべきであると述べてきた。そして,自社開発 における諸問題のいくつかを検討し,その解決方法を述べた。なお,優秀なパ ッケージ・プログラムとは,機能選択の可能なもののことである。このような パッケージ・プログラムが出れば,ソフトウェア開発の省力化,費用節減の意 味からも,おおいに取り入れていくべきである。 以一ヒの考察により,今後の中小企業におけるコンピュータ利用の環境は,従 来に比べ,かなり改善されてきている。したがって,今後の中小企業経営にお いて,コソピt一タを効果的に利用するためには,業種によっても異なるが,
従業員がほぼ30名以上の企業では,自社にEDP専門の要員を確保することも 考えるべきである。 このような積極的な姿勢をもつことにより,社内のコンピュータに対する知 識も向上し,今後のEDP化に対する方向も専門的な目から判断することが可 能になる。また,このような姿勢こそが,将来のわが国の情報化社会を築きあ げる重要な力にもなる。「わが国は,コンピュータ普及の最進国でありなが ユの ら,利用技術や運営コスト管理面では,後進国に属する」といわれる問題も解 決するであろう。 16)古谷隆一,小型機はこう進む,Computer Rep・rt, Vol,20, No.1, p.39,1980