は
じ
め
に
グローバル・イシューと称される、相互に関連しあう問 題群のうち、本稿では環境問題をとりあげ、環境問題への 地 域 研 究 的 ア プ ロ ー チ の 可 能 性 を 論 じ て み た い。 と は い え、環境問題も、地域研究も、それぞれが多岐にわたるた め、本稿で中心的にあつかう事例は、わたしが過去一〇年 ばかり取り組んできたナマコ保全の問題に限定する。具体 的には、わたしが「生物多様性保全と文化多様性の尊重」 という実践的課題にかかわる過程でさまざまに変化してき た、わたし自身の地域研究観と研究手法の変遷をふりかえ りながら、地域研究のこれからを展望してみたい * 1 。 以下では、東南アジア地域研究におけるナマコ研究の位 置づけを紹介したあと、ワシントン条約という野生生物保 護の国際条約の枠組みと、同条約における水産物の管理と 利用に関する問題点を整理する。つづいてわたし自身も部 分的に参加してきた同条約におけるナマコ問題の議論の経 過を詳述する。それは、今後も類似の水産物各種がワシン ト ン 条 約 の 俎 上 に の ぼ る こ と が 予 想 さ れ る な か、 「い か な る力がはたらき、どのような過程を経て、結論にいたった のか」の顛末を記録しておくためである。最後に乾燥ナマ コという商品の生産から流通、消費の現場をつなぐモノ研 究 に、 国 際 条 約 と い う 場 (フ ィ ー ル ド / サ イ ト) を 加 え た、マルチ・サイテットな研究手法――マルチ・サイテッ ト・アプローチ――の有効性について論じ、グローバル化 時代の地域研究のあらたな方向性として提示しておく。第Ⅰ部
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地域研究
環境問題
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意義
本稿であつかうナマコは、中国料理の高級食材とされる 乾燥ナマコである。中国ではナマコを薬効ゆたかな「海の (高 麗) 人 参」 と 考 え、 海 ハイシェン 参 と 呼 び、 高 級 な 乾 燥 海 産 物 四 種を指す「 参 シェンパオチイドウ 鮑翅肚 」なる成句にも収められている。参は ナ マ コ、 鮑 は 干 ア ワ ビ ( 鮑 パ オ ユ イ 魚 ) 、 翅 は フ カ ヒ レ ( 魚 ユ イ チ イ 翅 ) 、 肚 は 魚 の 浮 き 袋 ( 魚 ユ イ ド ウ 肚 ) で あ る。 シ イ タ ケ と 干 シ イ タ ケ が 異 なる食感をもつように、これら参鮑翅肚も乾燥されること で、生の食材とは異なる独特な食感を呈するようになる。 鮑を除く参・翅・肚は、ゼラチンのかたまりであり、その 歯ざわりとともにゼラチンに吸収させたスープの味を堪能 する。このようにナマコ料理は、漢人のゼラチン食習慣の 一環としてとらえられるべきであり、文化史的にはゼラチ ンを含む獣肉食の系譜とも関連して考察されるべきである (鶴見 一九九〇) 。 四千年の美食文化をほこる中国とはいえ、参鮑翅肚が普 及したのは、一七世紀以降のことである。もちろん大帝国 で あ っ た 清 国 で も 生 産 さ れ て い た で あ ろ う が、 今 日 の グ ローバリズムよろしく、清朝の人びとの胃袋は、東南アジ アや日本など近隣諸国からの輸入に依存して満たされてい た。興味深いのは、東南アジアで乾燥ナマコを買いつけ、 中国へ運んでいたのは、イギリスをはじめとしたヨーロッ パ諸国の商船であったことである。当時、ヨーロッパで需 要が爆発しつつあった茶を買いつけるため、西洋人たちが 清国にアヘンを売りこんだことは有名であるが、西洋人た ちはアヘン以外にも中国が欲する物品なら、なんでも物色 したのだった。 そんな西洋人たちが目をつけたのが、中国で人気を博し ていた参鮑翅肚だった。なかでもナマコは、浅瀬のサンゴ 礁を渉猟するだけで、子どもでも採捕できた。とはいえ、 大量のナマコを獲るには、人海戦術しかない。そのため、 東南アジアでは労働力を確保するための奴隷狩りが頻繁に おこった。東南アジア海域世界の領主たちは、乾燥ナマコ と交換に西洋人から銃火器を入手した。すると、そうした 銃火器が、東南アジア海域における海賊行為をさらに激化 させる主因となった ( Warren 1981 ) 。 茶とナマコをめぐるアジア多島海の混乱が落ちつきをみ せ る の は、 第 二 次 ア ヘ ン 戦 争 と も 称 さ れ る ア ロ ー 戦 争 (一 八 五 六 ~ 一 八 六 〇 年) の 後 に イ ギ リ ス が イ ン ド や ス リ ラ ン カで茶の栽培に成功する一九世紀なかば以降のことである (角山 一九八〇) 。 こうしたナマコという商品の歴史については、すでに鶴見良行が『ナマコの眼』という大著において、オーストラ リア北岸から東南アジア、日本をつないだ海道 ―― ナマコ 海 道 ―― の 歴 史 を 叙 述 し て い る (鶴 見 一 九 九 〇 ; 一 九 九 九) 。 鶴 見 の ユ ニ ー ク さ は、 商 品 の 生 産 か ら 流 通、 消 費 の 過 程 に 着 目 し た「モ ノ 研 究」 と い う 手 法 に く わ え (鶴 見 一 九 八 二) 、 ア ジ ア と ヨ ー ロ ッ パ を む す ぶ メ ジ ャ ー な ハ イ ウェイともいえるマラッカ海道ではなく、オーストラリア 北部からスラウェシ島西側を通過し、中国へと北上するマ イ ナ ー な 海 道 ―― マ カ ッ サ ル 海 道 ―― を 想 定 し (鶴 見 一 九 八 七 ) 、 こ の 海 道 に 隣 接 す る マ カ ッ サ ル 海 域 圏 が ナ マ コ 貿易を通じて形成された一つの文化圏であるとしたことに ある。同様に鶴見は、蝦夷地を含む江戸時代の日本列島か ら中国大陸にいたった海道にも着目し、オーストラリア北 岸から蝦夷地にいたるまでの「ナマコ海道」圏とも表現す べき海域連鎖の歴史を再構築してみせた * 2 (鶴見 一九九〇 ) 。 鶴 見 の ナ マ コ 海 道 圏 仮 説 は、 「島 国 根 性」 と い う 熟 語 に 象徴されるように、グローバリゼーション下の今日におい て も 日 本 を 閉 じ た 社 会 と み な す、 「鎖 国」 信 仰 を 打 破 す る うえで重要な問題提起となっている。同時に宮本常一や網 野善彦らに通じる海世界への関心は、鶴見自身が中央主義 史 観 と 呼 ぶ、 「ま ず 国 家 あ り き」 と の 歴 史 観 へ の 批 判 を こ めたものでもあった。 もちろん、こうした東南アジア史におけるナマコの位置 づけについて学び、わたしも、ナマコ研究の可能性を感じ て は い た。 し か し、 わ た し が ナ マ コ に 魅 せ ら れ た の は、 まったくの偶然であった。東南アジア海域世界のダイナミ ズムを分析する視角として「フロンティア社会論」がある が (土 屋 一 九 八 八 ; 田 中 一 九 九 九) 、 そ の モ デ ル の 検 証 と して一九九七年七月にマレーシアと国境を接するフィリピ ンの離島、マンシ島を訪れてからのことである。マンシ島 の成人男性およそ二〇名が、二カ月間にもわたって船上で 共 同 生 活 を 営 み な が ら、 南 沙 諸 島 ( Spratly Islands ) と い う中国やベトナムをはじめ六カ国が領有権を主張しあう海 域に散在するサンゴ礁でひたすらナマコを獲りつづける操 業形態とその規模の大きさに、わたしは驚愕させられてし まった (赤嶺 一九九九 ; 二〇〇〇 ; 二〇〇一 ; 二〇〇二 ; 二 〇 〇 三 ) 。 そ れ は、 鶴 見 の え が く 牧 歌 的 な ナ マ コ 世 界 と、 まったく対照的であったからである。 マンシ島では密輸やダイナマイト漁を含む数々の違法行 為 も 横 行 し て い た (赤 嶺 二 〇 〇 二 ) 。 し か し、 国 家 に 依 存 せずに「自立」したマンシ島漁民たちの姿に、わたしはフ ロンティア社会のダイナミクスを看取し、感動さえしてい たものである。だから、というわけでもないだろうが、当 時 の わ た し は、 管 理 は お ろ か、 「水 産 資 源 の 持 続 可 能 な 利 用」などといった表現は、政治的スローガンとしか考えて いなかった。
ところが、ある日、突然、そんなわたしの姿勢を一変さ せる転機が訪れた。二〇〇三年六月のことである。水産庁 か ら 電 話 が か か っ て き た の で あ る。 「ワ シ ン ト ン 条 約 で、 ナ マ コ が 絶 滅 危 惧 種 か 否 か を め ぐ っ て 議 論 さ れ て い る の で、 話 を 聞 か せ て ほ し い」 と い う。 そ れ ま で に も 、 鼈 甲 の 原 材 料 と し て 流 通 し て き た タ イ マ イ ( Eretmochelys imbricata ) や シ ャ コ ガ イ 科 ( Tridacnidae ) の 全 種 が ワ シ ン トン条約による規制の対象となっており、自由に取引がで きないという程度のことは知っていたものの、ワシントン 条約そのものについては無知であった。ましてや、その電 話が、日本国内で調査を行う契機ともなり、その後のわた しの研究の方向性を左右することになろうとは、当時は思 いもよらなかった。
Ⅱ
ワ
シ
ン
ト
ン
条約
と
同条約
に
お
け
る
水産物
の
管理
ワシントン条約は、正式には「絶滅のおそれのある野生 動 植 物 の 種 の 国 際 取 引 に 関 す る 条 約」 ( CITES: Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora ) と い う。 一 九 七 三 年 に 米 国 の 首 都 ワ シ ントンで成立したことから、ワシントン条約との通称で知 ら れ て い る も の の、 一 般 に は、 英 文 の 頭 文 字 を と っ て C サ イ テ ス ITES と呼ばれている。 CITESには、二〇一三年九月二〇日現在で一七八カ 国が加盟しており、現在、国連に加盟する一九三カ国の九 二・二パーセントを占めている。ほぼ世界中を網羅する、 まさにグローバルな条約であり、その実効性が期待される 所以でもある * 3 。 同条約では、絶滅の危機度に応じて生物種を三段階に区 分し、それぞれに異なる管理を義務づけている。絶滅の危 機に瀕している生物は附属書Ⅰに掲載され、原則として商 業目的の輸出入が禁止されている。ゾウやトラ、ゴリラな ど動物園でおなじみの大型哺乳動物の多くが附属書Ⅰ掲載 種である。附属書Ⅱに掲載されるのは、現在はかならずし も絶滅の脅威にさらされてはいないものの、将来的に絶滅 する可能性のある生物である。附属書Ⅱ掲載種の輸出にあ たっては、輸出国政府の管理当局が発行した輸出許可書の 事前提出が必要となるし、輸入に際しては輸出許可書の提 示が求められる。 附 属 書 Ⅰ と 附 属 書 Ⅱ へ の 掲 載 ( と 削 除 ) に は 、 二 年 ~ 三 年 ご と に 開 催 さ れ る 締 約 国 会 議 ( 以 下 、 CoP: Conference of the Parties ) に お い て 、 白 票 を の ぞ く 有 効 票 の 三 分 の 二 以 上 の 承 認 を 必 要 と す る 。 他 方 、 附 属 書 Ⅲ は 、 附 属 書 Ⅰ や 附 属書Ⅱ とは異なり 、締 約国が自国内 で捕獲採取を 禁止ある学名 和名 英名 APP. 備考
Cetorhinus maximus ウバザメ Basking shark Ⅱ ウバザメ科
Carcharodon carcharias ホホジロザメ Great white shark Ⅱ ネズミザメ科
Rhincodon typus ジンベエザメ Whale shark Ⅱ ジンベイザメ科
Pristidae spp. ノコギリエイ類 Sawfishes Ⅰ/Ⅱ Pristis microdon(ラージ トゥース・ソーフィッシュ) のみ附属書Ⅱで、それ以 外のノコギリエイ科全種 (2属6種)は附属書Ⅰ ACIPENSERIFORMES spp. ヘラチョウザメ類、チョウザメ類 Sturgeons Ⅱ 附属書Ⅰに掲げる種を のぞくチョウザメ目全 種(2科6属25種)
Acipenser brevirostrum ウミチョウザメ Shortnose sturgeon Ⅰ チョウザメ科
Acipenser sturio ニシチョウザメ Baltic sturgeon Ⅰ チョウザメ科
Anguilla anguilla ヨーロッパウナギ European eel Ⅱ ウナギ科
Chasmistes cujus クイウイ Cui-ui Ⅰ カトスムス科
Caecobarbus geertsi カエコバルブス African blind barb fish Ⅱ コイ科
Probarbus jullieni プロバルブス Esok, Seven-striped barb Ⅰ コイ科
Arapaima gigas ピラルクー Pirarucu Ⅱ オステオグロッサム科
Scleropages formosus アジアアロワナ Asian arowana Ⅰ オステオグロッサム科
Cheilinus undulatus メガネモチノウオ Humphead wrasse Ⅱ ベラ科
Totoaba macdonaldi トトアバ Totoaba Ⅰ ニベ科
Pangasianodon gigas メコンオオナマズ Giant catfish Ⅰ パンガスィウス科
Hippocampus spp. タツノオトシゴ類 Seahorse Ⅱ ヨウジオウ科タツノオトシゴ属全種(47種)
Neoceratodus forsteri オーストラリアハイギョ Australian lungfish Ⅱ ケラトダス科
Latimeria spp. シーラカンス Coelacanth Ⅰ ラティメリア科
表1 CITES 附属書Ⅰおよび附属書Ⅱに掲載されている魚類(23属、93種)
(出所)CITES Species Database[http://www.cites.org/eng/resources/species.html], http://www.trafficj.org/ aboutcites/appendix_animals.pdf 学名 和名 附属書 発効年 Acipenser brevirostrum ウミチョウザメ Ⅰ 1975 Acipenser sturio ニシチョウザメ Ⅰ 1975 Chasmistes cujus クイウイ Ⅰ 1975 Probarbus jullieni プロバルブス Ⅰ 1975 Scleropages formosus アジアアロワナ Ⅰ 1975 Pangasianodon gigas メコンオオナマズ Ⅰ 1975 Arapaima gigas ピラルクー Ⅱ 1975 Neoceratodus forsteri オーストラリアハイギョ Ⅱ 1975 ACIPENSERIFORMES spp. ヘラチョウザメ類、チョウザメ類 Ⅱ 75/83/92/98* Latimeria spp. シーラカンス Ⅰ 1975/2000* Totoaba macdonaldi トトアバ Ⅰ 1977 Caecobarbus geertsi カエコバルブス Ⅱ 1981 Rhincodon typus ジンベエザメ Ⅱ 2003 Cetorhinus maximus ウバザメ Ⅱ 2003 Hippocampus spp. タツノオトシゴ類 Ⅱ 2004 Cheilinus undulatus メガネモチノウオ Ⅱ 2004 Carcharodon carcharias ホホジロザメ Ⅱ 2005 Pristidae spp. ノコギリエイ類 Ⅰ/Ⅱ 2007 Anguilla anguilla ヨーロッパウナギ Ⅱ 2007
(出所)CITES Species Database[CITES n.d.]
(注)*=発効年に複数の年の記載があるのは、附属書の改訂があったため
いは制 限している生 物に関し 、締約 国各国の協力 をあおぐ た め に 独 自 に 掲 載 す る こ と が で き る 。 と は い え 、 C o P の 議 決 を 経 て い な い た め 、 締 約 国 へ の 拘 束 力 は 限 定 的 と な る 。 CITES事務局のホームページによれば、二〇一三年 九月二〇日現在、動物のうち約五千種が同条約の管理下に あ る と い う ( CITES n.d. ) 。 こ の う ち、 附 属 書 Ⅰ と 附 属 書 Ⅱに掲載されている魚類、一八科二三属九六種をまとめる と表1のようになる。なお、二〇一三年三月にバンコクで 開 催 さ れ た C o P 16で は、 あ ら た に サ メ 類 五 種 (ヨ ゴ レ C ar ch ar hi nu s l on gim anu s 、 ア カ シ ュ モ ク ザ メ Sp hy rn a l ew ini 、 ヒ ラ シ ュ モ ク ザ メ S. m ok ar ra n 、 シ ロ シ ュ モ ク ザ メ S. zig aena 、 ニ シ ネ ズ ミ ザ メ La m na na su s ) と マ ン タ 類 二 種 ( M an ta alf red i, M . b iro stri s ) が 附 属 書 Ⅱ に 掲 載 さ れ る こ と に な っ た (写 真 1) 。 通 常、 附 属 書 の 改 訂 は C o P 終 了 後 九 〇 日 を も っ て 発 効 す る が、 C o P 16で 掲 載 が 決 ま っ た 板 ば ん さ い る い 鰓 類 (サ メ 類 と エ イ 類) 七 種 に つ い て は、 関 係 国 が 多 く 執 行 体 制 を 構 築 す るために一八カ月間の猶予が必要ということで、二〇一四 年九月一四日から発効することになっている。 たしかに種数だけをとりあげると、附属書Ⅰと附属書Ⅱ に記載されている魚類は、多すぎるというわけではない。 しかし、視点をかえると、ある傾向があらわれてくる。C ITES事務局での勤務経験をもつ保全生態学者の金子与 止男は、表1を時系列に整理しなおした分析を行っている (表 2) 。 す な わ ち、 (一) C I T E S が 発 効 し た 一 九 七 五 年の時点で附属書Ⅰもしくは附属書Ⅱに記載されていた魚 類 三 五 種 は、 シ ー ラ カ ン ス を の ぞ き、 す べ て が 淡 水 魚 で あ っ た (も っ と も、 チ ョ ウ ザ メ の 一 部 は ウ ミ チ ョ ウ ザ メ な ど、 海 か ら 河 川 へ の 可 塑 性 を も つ) 。 (二) そ の 後、 一 九 七 〇年代と一九八〇年代を通じて附属書に掲載されたのは、 わずか二種にすぎなかった。しかも、一九九〇年代に掲載 さ れ た 魚 類 は 皆 無 で あ っ た。 と こ ろ が、 (三) 二 〇 〇 二 年 に 開 催 さ れ た C o P 12以 降 は、 海 産 種 を 中 心 に 五 九 種 (こ の う ち、 属 の す べ て が 記 載 さ れ た タ ツ ノ オ ト シ ゴ 類 が 四 七 種 と 八 割 ち か く を 占 め る) が 掲 載 さ れ る に い た っ て い る * 4 (金 写真1 CoP16にてシュモクザメ類の保護への投 票を訴える環境 NGO (出所)2013年3月、筆者撮影
子 二〇一〇) 。 すべて否決されたとはいえ、二〇一〇年三月にカタール で開催されたCoP 15で提案された附属書改正案のうち、 魚類の提案が大西洋クロマグロにサメ類八種の合計九種に のぼったことは記憶にあたらしい。しかし、大西洋クロマ グ ロ を 附 属 書 Ⅰ に 掲 載 す る と い う モ ナ コ 提 案 が「賛 成 二 〇、反対六八、棄権三〇」の大差で否決されたことに始ま り、サメ類についての附属書Ⅱへの掲載提案も、すべてが 否決されてしまった。 た し か に マ グ ロ 類 も サ メ 類 も 野 生 生 物 で は あ り 、 C I T E S が 保 護 す べ き 生 物 だ と い え る 。 し か し 、 C o P 15の 結 果 は 、 ( 稀 少 生 物 で も あ る 一 方 で ) 食 料 資 源 で も あ る 水 産 種 の 管 理 と 利 用 は 、漁 業 管 理 を 専 門 に す る 地 域 漁 業 管 理 機 関 ( RFMO: Regional Fisheries Management Organizations ) や 国 連 食 料 農 業 機 関 ( FAO: Food and Agriculture Organization of the United Nations ) な ど の 専 門 機 関 に 任 せ る べ き だ、 と の 締 約 国 各 国 の 意 志 表 示 だ と う け と め る こ と が で き る (と、少なくとも、わたしはそのように考えていた) 。 と こ ろ が 、 C o P 15の ほ ぼ 三 年 後 に 開 催 さ れ た C o P 16 で は 、 提 案 さ れ た 七 種 す べ て の 魚 類 が 附 属 書 に 掲 載 さ れ た わ け で あ る 。 C o P 15と C o P 16に 参 加 し て 感 じ た の は 、 会 場 の 空 気 が ま っ た く 異 な っ て い た と い う こ と で あ る 。 C o P 15で は 、 各 提 案 に つ い て 賛 否 両 論 の デ ィ ベ ー ト が 展 開 さ れ 、 オ ブ ザ ー バ ー と し て も 熱 い デ ィ ベ ー ト を 楽 し む こ と が で き た 。 し か し 、 C o P 16で は 附 属 書 へ の 掲 載 提 案 へ の 賛 成 意 見 ば か り が つ づ き 、 反 対 意 見 は ポ ツ ポ ツ と 「 息 絶 え 絶 え 」 で あ り 、 デ ィ ベ ー ト に は な り え な か っ た ( 写 真 2 ) 。 こ う し た C I T E S の 空 気 が 激 変 し た 背 景 に つ い て は 、 や や長期的な観察をふまえ多角的に考察していく必要がある も の の 、 C I T E S に お け る 海 産 物 、 と く に 商 業 的 に 利 用 さ れ て き た 水 産 種 ( CEAS: commercially exploited aquatic species ) は、 今 後 も 重 要 度 を 増 し つ づ け る も の と 思 わ れ る。 そうした傾向を裏づけるため、表2にかかげた魚類が食 写真2 サメ類の附属書Ⅱへの掲載を祝う環境 NGO (出所)2013年3月、筆者撮影
用となるかどうかをみてみよう。上記三点とは異なる性格 が洞察できよう。シーラカンスはもとより、アジアアロワ ナもオーストラリアハイギョも、非食用種である。コンゴ 盆地の洞窟に生息し、目が退化したカエコバルブスも同様 である。 他 方、 ク イ ウ イ は、 米 国 ネ バ ダ 州 ピ ラ ミ ッ ド 湖 と ト ゥ ラ ッ キ ー 川 に 固 有 の 淡 水 魚 で、 周 囲 に 生 活 す る ネ イ テ ィ ブ・アメリカ人たちに食され、そうした人びとには民族的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の よ り ど こ ろ と な っ て い る。 カ ン ボ ジ ア、ラオス、ベトナム、タイ、マレーシアに生息するプロ バル ブ スも、カンボジア、ラオス、タイ、ベトナムに生息 するメコンオオナマズも、こうした国々では貴重な食料と して流通してきた。世界最大の淡水魚として水族館でおな じみのピラルクーは、ブラジル、ペルー、ガイアナに生息 し、 同 地 域 の 先 住 民 に と っ て 貴 重 な 食 料 で あ る (大 橋 二 〇 一 三) 。 ト ト ア バ は、 メ キ シ コ で 食 用 と さ れ て き た 海 水 魚である。 こうしてみると、二〇〇〇年代以前に掲載されてきた魚 類の多くは非食用であったし、かつ食用とされてきた魚類 の 多 く は 生 息 域 が 限 定 的 で (キ ャ ビ ア を 産 す る チ ョ ウ ザ メ 類 を 除 き) 、 国 際 貿 易 と い う よ り は、 む し ろ、 生 産 国 内 で ローカルに利用されてきたものであることがわかる。これ に対して、二〇〇二年以降に記載された魚類は、すべてが 食用となるものであり、生息域も広汎におよび、その消費 は生息域内ではなく、むしろアジア市場である。この意味 において、国際貿易を規制することで野生生物を保護しよ うとするCITESが管理するにふさわしい魚種だともい え る。 し か し、 問 題 は、 こ う し た 魚 類 は、 ア ジ ア の「伝 統」的商品であったということである。これが、CITE Sにおける水産物管理の四点目の特徴である。 加 え て ジ ン ベ エ ザ メ (最 大 体 長 一 三 メ ー ト ル) と ウ バ ザ メ (同 一 〇 メ ー ト ル) は、 そ れ ぞ れ 魚 類 の な か で 一、 二 位 の大きさをほこり、その大きさだけでも、圧倒される存在 で も あ る (写 真 3) 。 と く に ジ ン ベ エ ザ メ は、 そ の 愛 嬌 あ 写真3 フィリピンでは、ジンベエザメの餌付け がなされており、年間を通じて観光客が訪れる (出所)2013年2月、筆者撮影
る体形とおだやかな性格から、水族館の人気者でもある。 最大体長二メートルにもなる、ナポレオンフィッシュも、 ダ イ ビ ン グ や 水 族 館 で の 人 気 者 で あ る。 他 方、 広 東 語 で 蘇 ソーメイ 眉 と呼ばれる同種は、はちきれんばかりのゼラチンがつ まった口唇が特徴であり、このゼラチンに大枚をはたく食 通 も 少 な く な い (写 真 4) 。 タ ツ ノ オ ト シ ゴ は 漢 方 薬 の 原 材料とされているが、この奇妙な魚類も、そうであるだけ にいとしく、保護すべき対象ともなりうる。つまり、巨大 であり、かつ、奇妙な動物であるからこそ、環境保護のシ ン ボ ル (エ コ・ ア イ コ ン) た り う る の で あ る。 つ ま り、 エ コ・アイコン化しやすい魚種が記載されていること、これ が第五点目の特徴である。 ま と め よ う 。 ( 一 ) ワ シ ン ト ン 条 約 が 発 効 し た 一 九 七 五 年の時点で附属書Ⅰもしくは附属書Ⅱに記載されていた魚 類 は 三 五 種 に の ぼ り 、 そ の ほ と ん ど す べ て が 淡 水 魚 で あ っ た 。 ( 二 ) そ の 後 、 一 九 九 〇 年 代 末 ま で に あ ら た に 附 属 書 に 掲 載 さ れ た の は 、 わ ず か 二 種 に す ぎ な か っ た 。 ( 三 ) 二 〇 〇 二 年 以 降 は 、 海 産 種 を 中 心 に 五 九 種 が 掲 載 さ れ る に い た っ て い る 。 ( 四 ) 過 去 一 〇 年 間 に 掲 載 さ れ た 魚 類 は 広 範 囲 に 生 息 し て い る 一 方 で 、 そ の 消 費 は 、 ほ ぼ ア ジ ア 地 域 に 限 定 さ れ て い る 。 ( 五 ) こ う し た 魚 類 に は 、 野 生 生 物 保 護 の シ ン ボ ル (エコ・アイコン) として機能するものが多い。
Ⅲ
ワ
シ
ン
ト
ン
条約
に
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け
る
ナ
マ
コ
問題
現在、CITESの規制をうけるナマコ類は、拘束力の 弱 い 附 属 書 Ⅲ に 記 載 さ れ て い る フ ス ク ス ナ マ コ ( Isostichopus fuscus ) の み で あ る。 こ れ は ガ ラ パ ゴ ス 諸 島 での違法操業を問題視したエクアドル政府が、二〇〇三年 に記載したものであり、CITESにおけるナマコ問題の 発 端 と な っ た 生 物 で あ る * 5 (前 掲 の 表 1、 表 2 は 附 属 書 Ⅰ と 附 属 書 Ⅱ に 記 載 さ れ た 魚 類 の み で あ る。 ナ マ コ は 棘 皮 動 物 で あり、CEASではあっても魚類ではない) 。 写真4 海鮮料理店の水槽で飼育されているメ ガネモチノウオ (出所)2013年11月、筆者撮影ナ マ コ 類 が C I T E S の 俎 上 に の ぼ っ た の は 、 二 〇 〇 二 年 一 一 月 、 サ ン チ ャ ゴ で 開 催 さ れ た C o P 12で の こ と で あ る 。 厳 密 に い う と 、 提 案 国 で あ る 米 国 は 、 附 属 書 へ の 掲 載 を も と め た の で は な く 、「 ナ マ コ 類 を 附 属 書 Ⅱ へ 記 載 す る こ と に よ っ て 、 ナ マ コ 資 源 が 保 全 さ れ う る の か ど う か 」 の 議 論 を 提 案 し た ( CoP12 Doc. 45 ) 。 こ れ を う け 、 C o P 12で は 、 ナ マ コ 資 源 の 利 用 実 態 を 明 ら か に す る た め の ワ ー ク シ ョ ッ プ の 開 催 が 決 ま り 、 そ の 成 果 を 次 回 C o P 13ま で に 吟 味 す る こ と が 動 物 委 員 会 ( AC: Animals Committee ) に 義 務づけられた * 6 (決定 12.60 ) 。 CoPは二~三年に一度開催されるため、その間にさま ざまな案件を整理・検討するのは、毎年開催される各種の 委員会である。ナマコ類の場合には、ナマコ類が動物であ るため、ACがその任にあたった。 ワークショップ開催にむけての作業は、CoP 12閉会直 後 に 開 催 さ れ た A C 19(二 〇 〇 三 年 八 月) か ら 開 始 さ れ ( AC19 Doc. 17 ) 、 二 〇 〇 四 年 三 月 に、 「ク ロ ナ マ コ 科 と シ カ ク ナ マ コ 科 の ナ マ コ 類 の 保 全 に 関 す る 専 門 家 会 議」 ( Technical Workshop on the Conservation of Sea Cucumbers in the Families Holothuridae and Stichopodidae 〈 Decisions 12.60 and 12.61 〉) と題してマレーシアのクアラ ル ン プ ー ル で 開 催 さ れ た * 7 (以 下、 K L 会 議) 。 し か し、 決 議12・60がもとめるように、ACには同年一〇月に開 催 さ れ た C o P 13で 成 果 報 告 を 行 う 時 間 的 余 裕 は な か っ た。 結 局、 C o P を 目 前 に ひ か え た A C 20(二 〇 〇 四 年 四 月) に お い て、 米 国 が C I T E S 事 務 局 と 協 力 し て 報 告 書 を ま と め る こ と が 決 ま っ た (
AC20 Summary Report: 22
) 。 そ こ で C o P 13で は 、 エ ク ア ド ル か ら の 提 案 を 採 用 し ( CoP13 Doc. 37.2 ) 、 A C に 対 し て C o P 14( 二 〇 〇 七 年 六 月 ) ま で に 締 約 国 が 判 断 で き る よ う な 資 料 を 作 成 し て お く こ と を 再 度 、 義 務 づ け た ( 決 議 13.48 ) 。 こ の 原 案 を 作 成 す る に あ た り 、 A C 21( 二 〇 〇 五 年 五 月 ) で は 、 K L 会 議 の 評 価 を コ ン サ ル タ ン ト に 依 頼 す る こ と が 決 ま り ( AC21 WG5 Doc. 1 )、 二 〇 〇 六 年 七 月 に 開 催 さ れ た A C 22に お い て A 四 判 二 八 頁 に お よ ぶ 資 料 が 配 布 さ れ た ( AC22 Doc. 16 ) 。 C o P 14で は 、 関 係 者 か ら な る 作 業 部 会 が 組 織 さ れ 、 あ ら か じ め A C が 作 成 し て い た 決 議 案 原 案 の 修 正 が 行 わ れ た * 8 。 CoP 14での決定では、関係各国に資源管理策の策定をも とめる一方、同条約による規制が漁業者の生活へおよぼす で あ ろ う イ ン パ ク ト も 考 慮 す る こ と が 義 務 づ け ら れ た し (決 定 14.98 ) 、 A C に 対 し て は、 あ ら た に F A O が 主 催 す るナマコ資源の持続的利用に関するワークショップの成果 を取り込むことが課された (決定 14.100 ) 。 F A O に よ る ワ ー ク シ ョ ッ プ は、 二 〇 〇 七 年 一 一 月 に 「ナ マ コ 資 源 の 持 続 的 利 用 と ナ マ コ 漁 の 管 理 の た め の F A O 専 門 家 会 議」 ( FAO Technical Workshop on Sustainable
Use and Management of Sea Cucumber Fisheries ) と題し て ガ ラ パ ゴ ス 諸 島 の プ エ ル ト・ ア ヨ ラ で 開 催 さ れ た。 同 ワークショップの報告書が二〇〇八年一一月に刊行された こ と を う け ( Toral-Granda 2008 ) 、 二 〇 〇 九 年 四 月 に 開 催 さ れ た A C 24に お い て ナ マ コ に 関 す る 作 業 部 会 が 設 置 さ れ、 F A O 会 議 の 報 告 書 に も と づ い た 議 論 が な さ れ た * 9 ( AC24 WG6 Doc. 1 ) 。 参 加 し た の は 、 カ ナ ダ 、 中 国 、 日 本 、 サ ウ ジ ア ラ ビ ア 、 米 国 の 五 カ 国 と 政 府 間 機 関 の 欧 州 共 同 体 ( European Community ) に N G O の ア ー ス ト ラ ス ト ( Earthtrust ) 、 ス ワ ン ・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル ( SWAN International ) 、 ト ラ フ ィ ッ ク ( TRAFFIC ) の 三 団 体 で 、 米 国 国 務 省 の ナ ン シ ー ・ デ イ ビ ス ( Nancy Davis ) 氏 が 議 長 を つ と め た 。 同 作 業 部 会 で は 、 ( 一 ) F A O の ガ ラ パ ゴ ス 会 議 の 中 心 課 題 が C I T E S の 附 属 書 掲 載 を め ぐ る 可 否 に あ っ た わ け で は な く 、 よ り 広 義 の 資 源 管 理 の 方 策 に あ っ た こ と 、 ( 二 ) そ の た め同報告書にはCITESの附属書掲載についての提言が 直 接 的 に な さ れ て い な い こ と が 確 認 さ れ 、 ( 三 ) 作 業 部 会 と し て 同 報 告 書 の 評 価 は く だ し が た い と の 結 論 に い た っ た 。 し か し 、 ガ ラ パ ゴ ス の 事 例 を 分 析 し た 論 文 は 検 討 に あ た い す る も の で あ り 、 C I T E S 事 務 局 に 対 し 、「 F A O の 報 告書の要約とともにガラパゴスの事例研究についての要約 を行うこと」を提案した ( AC24 WG6 Doc. 1 ) 。 FAOの報告書でガラパゴスの事例について考察したベ ロ ニ カ・ ト ラ ル ― グ ラ ン ダ 氏 は、 A C 22に お け る 議 論 の た たき台を作成した研究者でもある。同報告書において彼女 は、 個 人 的 な 意 見 と し な が ら も、 「違 法 操 業 や 密 輸 に つ い ての監視体制がととのっていない状況では、CITESは 機能しえないとし、エクアドルのような途上国政府にとっ て は、 そ う し た 監 視 体 制 の 強 化 も 政 治 経 済 的 な 重 荷 と な る」とCITESの附属書掲載についての消極的な展望を のべている ( Toral-Granda 2008: 250 ) 。 しかし、ACとしての見解をその後も集約できず、二〇 一〇年三月に開催されたCoP 15でも、ナマコ類の管理問 題 は 継 続 審 議 と な っ た。 そ の 事 情 は、 つ づ く A C 25(二 〇 一 一 年 七 月) で も 同 様 で あ っ た。 と い う の も、 A C に は、 附属書Ⅱに掲載された動物のなかから、とくに大規模に貿 易 さ れ て い る 種 を 監 視 す る 仕 事 ( RST: Review of Significant Trade ) が 課 さ れ て お り、 C o P を 重 ね る ご と に種が増えていく野生動物の国際貿易モニタリング評価を かぎられた時間内にやることだけでも大変な作業なのに、 まだ記載されてもいないナマコ類の問題を議論する余裕な どないのが実情であった * 10 。 二 〇 一 二 年 三 月 に 開 催 さ れ た A C 26に お い て、 「ナ マ コ 類は各国の責任で管理すること」が確認され、二〇一三年 三 月 の C o P 16に お い て A C の 提 案 が 原 案 の ま ま 採 択 さ
れ、一〇年におよんだCITESにおけるナマコ問題は幕 を閉じた。
Ⅳ
マ
ル
チ
・
サ
イ
テ
ッ
ト
・
ア
プ
ロ
ー
チ
の
可能性
二〇〇二年一一月のCoP 12における米国による問題提 起から一〇年強のあいだ、二〇〇四年のKL会議をのぞく と、CITESではナマコの管理について議論らしい議論 はなされなかった。結果的に国連の専門機関であるFAO の 研 究 成 果 に 依 拠 し た 形 で 問 題 は 決 着 し た。 K L 会 議 に も、FAOのワークショップにも、またCoPにも、AC にも参加してきたわたしとしては、ナマコ類が回遊魚では な く、 地 先 に 定 着 し た (底 棲) 動 物 で あ る こ と を 考 え る と、 「ナ マ コ 類 を 各 国 の 責 任 で 管 理 す る こ と」 は、 最 初 か ら自明の結論だったように思えてならない。 たしかにACやCoPでは議論のための議論を行ってい たように感じはするものの、CITESという国際会議に 参 加 す る よ う に な っ た こ と が、 わ た し の 研 究 の 転 換 点 と なったことはまちがいない。それまでも無自覚であったつ もりはないが、CITESを契機に研究成果の流通とその 社会的責任について、つよく意識するようになったからで ある。 というのも、ACやCoPで参照されるのは、欧米の科 学専門雑誌に掲載された論文か、もしくはFAOなどの実 績ある専門機関が編纂した論文集に収録されたもののみで ある。こうした媒体に研究成果が掲載されないかぎり、国 際会議の場で自分の研究成果が流通することはない。 他方、KL会議やFAOのワークショップに参加して思 う の は、 「ナ マ コ 狂」 ( holothurian enthusiast ) を 自 認 す る、生物としてのナマコの不思議さに憑かれた生物学者の コミュニティが存在し、専門家としてのかれらの発言が、 国際社会を動かしうるという責任の重さを、研究者も、わ たしたちも、理解しておく必要があるのではないか、とい うことである。専門分野のちがいといえば、それまでであ るが、ナマコを生物としてとらえるのか、あるいはナマコ を人間の生活と関係づけて考えるかによって、管理の方向 性は当然、ことなってくる。要は、問題の奥行きと広がり をどこまでとらえるか、その想像力の多寡である。 わたしは、マンシ島で乾燥ナマコの生産過程の調査を開 始した当初から、こうした商品がどうやって流通し、消費 されていくのか、の一連のシステムに関心をもっていた。 生産現場を消費される社会とつなげて理解することで、現 代社会の問題点をあきらかにすることができると考えてい た か ら で あ る。 そ れ は、 「ナ マ コ 学 の 祖」 と で も い え る 鶴 見 良 行 が 意 識 し て い た モ ノ 研 究 の 手 法 で も あ る し (鶴 見一九八二 ; 二〇〇〇) 、アジア・太平洋をフィールドにコモ ン ズ 研 究 を 展 開 し て き た 秋 道 智 彌 (一 九 九 五) が、 輸 出 志 向の強い海産物の生産から流通にいたる過程にさまざまな 民族が関与していることに着目し、それらの民族間ネット ワークをエスノ・ネットワークと呼び、資本関係を含めた 民族間関係や生業基盤に応じた民族間分業の動態を明らか に し て い く こ と を 海 洋 民 族 学 の 課 題 と し て い た か ら で も あった。 マンシ島から出荷される乾燥ナマコの集散地であるパラ ワ ン 島 の プ エ ル ト ・ プ リ ン セ サ の 仲 買 人 ま で は 、 調 査 は 容 易 で あ っ た 。 点 と 点 を つ な ぐ だ け だ っ た か ら で あ る 。 し か し 、 そ こ か ら 先 が 問 題 で あ っ た 。 プ エ ル ト ・ プ リ ン セ サ か らマニ ラへ船で移出 されることは事 実であるが 、 肝心のマ ニ ラ 在 住 の 輸 出 商 が 会 っ て く れ な か っ た 。 プ エ ル ト ・ プ リ ン セ サ の 仲 買 人 た ち に 紹 介 を 依 頼 し て も 、「 ボ ス が 嫌 が る か も し れ な い 」 と 端 か ら 相 手 に し て く れ な か っ た 。 そ れ は 、 多 分 に ビ ジ ネ ス の 琴 線 に 触 れ る 問 題 だ っ た か ら で あ る 。 ことは香港でも同様であった。香港で乾燥海産物があつ ま る 地 域 は 南 北 行 ( Nam Pak Hong ) と 呼 ば れ て い る。 南 北行は南北雑貨をあつかう店といった意味で、香港島の上 環 地 区 内 の 一 部 を さ す 総 称 で あ る (地 図 に そ の 呼 称 は 記 載 さ れ て い な い) 。 一 九 世 紀 に 開 港 し た 当 初 は、 タ イ か ら の 米 の 輸 入 で 繁 栄 し た も の の (王 二 〇 〇 三) 、 現 在 は 漢 方 薬 や乾燥海産物の問屋が集中する地域となっている。南北行 の 中 心 は、 乾 燥 海 産 物 問 屋 が 集 中 す る Bonham Strand West (文 咸 西 街) と Wing Lok St. (永 楽 街) で あ り、 た がいに並行する三百メートルほどの街路に大小の問屋がひ しめいている。若気のいたりそのものであるが、一九九九 年以降、わたしは、思いつくかぎりの伝手を頼り、また素 手での体当たり調査を何度も試みては、店頭で追い返され るのが常であった。 そんな状況に転機がおとずれたのは、二○○四年であっ た。KL会議が開催されて以降のことである。香港の貿易 商 た ち の (一 部 の) 態 度 が 協 調 的 に な っ た の で あ る。 ナ マ コ 類 だ け で は な く、 す で に サ メ 類 も C I T E S の 俎 上 に あ っ た し (二 〇 〇 四 年 一 〇 月 の C o P 13で は、 ジ ン ベ エ ザ メ も ウ バ ザ メ も 附 属 書 Ⅱ に 掲 載 さ れ た) 、 関 係 者 の 一 部 に C ITES問題と腰を据えて取り組まなくてはならない、と いう気運が醸成されつつあったのである。 グローバリゼーション、あるいは世界システム下にある 今日の人類学のあり方を模索しつづけてきた文化人類学者 の ジ ョ ー ジ・ マ ー カ ス ( George Marcus ) は、 調 査 地 社 会 の全体像をえがくためにも、複数の地域における調査をふ まえ、調査地のおかれた状況をより大きなシステムに位置 づ け る 必 要 性 を 主 張 す る (マ ー カ ス 一 九 九 六: 三 一 〇 ― 三 一 一 ) 。「マ ル チ・ サ イ テ ッ ト・ ア プ ロ ー チ ( MSA:
multi-sited approach ) 」 と し て 知 ら れ る、 マ ー カ ス ( Marcus 1995 ) が 提 唱 し た こ の 研 究 手 法 は、 文 字 ど お り に 複 数 ( multi-) の場所 ( site ) での調査を前提としている。 マーカス自身が期待を寄せるように、MSAは、生産・ 分配・消費を俯瞰する資本主義システムの研究に適してい る で あ ろ う し ( マ ー カ ス 一 九 九 六: 三 一 一 ) 、 送 り だ し 側 と 受 け い れ 側 が 明 確 な 移 民 研 究 に 向 い て い る ( Coleman and von Hellermann eds. 2011 ; Falzon ed. 2009 ) 。しかし、 MSAの可能性は、それだけではない。というのも、マー カスの提案が、マリノフスキー以来の人類学の伝統を、現 代社会に即した方向に改善していこうとするものであり、 多岐にわたる戦略を含意しているからである。 した がって MSA を理 解するに あた っては 、 場所の 複数 性 に こ だ わ る よ り も 、 マ ー カ ス が 採 用 し た site の 同 義 語 と し て 、 よ り 主 体 的 な 「 立 ち 位 置 」 と も 訳 す べ き position ( ポ ジ シ ョ ン ) を 想 定 し 、 そ の こ と の 意 義 を 重 視 す べ き で は な い か 、 と わ た し は 考 え て い る 。 た と え ば 、 マ ー カ ス が 述 べ る よ う に 、 H I V 患 者 支 援 組 織 の 研 究 を 行 う 過 程 で 、 研 究 者が研 究と並行して 患者の支援運動 にかかわる ことは 、当 然 の 帰 結 で あ っ て 、 そ も そ も 研 究 と 運 動 ・ 実 践 の あ い だ に 明確な線を引くことは困難である ( Marcus 1995: 113 ) 。 日本語の「二足の草鞋」には、どことなくネガティブな イメージがつきまとうが、マーカスが言わんとするところ は、研究者と運動家なり、研究者とプロデューサーなり、 なんでもいい、複数の草鞋を履いてみよう、ということで ある。そして、より重要なことは、草鞋の履き方を議論す るのではなく、まず履いて歩いてみようという、行動/実 践なのである。 白状しよう。CITES問題を契機として香港の問屋さ んたちの姿勢が解放的になったとき、わたしは、自身のモ ノ研究に厚みがでることを直観できた。難攻不落だと思っ て い た ナ マ コ・ ネ ッ ト ワ ー ク の 頂 点 に の ぼ り つ め た 思 い だった。事務室に招き入れられ、給仕してくれた普洱茶を 飲みながら、内心、ほくそ笑んだものである。しかし、か れらと懇意になるにつれ、かれらなりの危機感に共感でき るようになった。どうすればよいのか? また、国内のある研究会で「文系の研究発表は、なるほ ど な ぁ、 と 問 題 の 分 析 視 角 に 驚 か さ れ る し、 勉 強 に も な る。しかし、そのような分析をもとに、どのような助言を 漁業者に行えばよいのでしょうか」と地方自治体で水産行 政にたずさわる方から質問されたことがある。なに一つ技 術をもたないわたしが漁業者に助言するなど、おこがまし いかぎりである。しかし、現実に漁業者はさまざまな問題 に直面している。どうしたらよいのか? このような問いに自問自答しながら、自分の研究方向と その実践方法を模索しているときに、わたしはMSAに出
会い、背中をおしてもらった。正直に言えば、東南アジア 地域研究者を標榜しながらも、世界の主要都市で開催され る国際会議をハシゴすることにためらいがなかったわけで はない。また、フィリピンからの帰りに香港にストップ・ オーバーし、なんの成果もないままに麺をすすって帰国す るほど惨めなことはなかった。 もちろんマーカスに背中をおされたからといって、問題 が解決したわけではない。しかし、自分のなかでの迷いは 消えた。グローバリゼーション下の今日、水産物のモノ研 究やエスノ・ネットワーク研究を行うには、生産・流通・ 消 費 の 一 連 の シ ス テ ム に 加 え、 い ま や 国 際 会 議 と い う 場 (サ イ ト) も、 必 要 不 可 欠 な 調 査 地 (フ ィ ー ル ド) で あ る ことはまちがいない。そうした複数のサイト/フィールド を 往 還 し な が ら、 研 究 と 運 動・ 実 践 と を 区 別 す る こ と な く、さまざまなことに挑戦してみるしかない。
お
わ
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に
グローバリゼーションについて積極的に発言をしている 米 国 人 ジ ャ ー ナ リ ス ト の ト ー マ ス・ フ リ ー ド マ ン は、 グ ロ ー バ リ ゼ ー シ ョ ン を 冷 戦 崩 壊 後 の 世 界 シ ス テ ム と と ら え、東西両陣営への分断が冷戦下の世界システムであった ならば、グローバル化システムの特徴は市場の統合だとい う (フ リ ー ド マ ン 二 〇 〇 〇: 上 二 九 ― 三 〇 ) 。 米 ソ と い う 超大国の均衡で維持されていた冷戦下の世界システムを構 成した単位は国家であった。しかし、フリードマンによれ ば、 そ れ ま で バ ラ バ ラ に 進 化 し て い た I T 技 術、 投 資 方 法、情報収集法という三つの変化が一九八〇年代後半に一 気に統合した結果、冷戦下に築かれたあらゆる壁を瓦解さ せ、 世 界 は グ ロ ー バ ル 化 シ ス テ ム に 統 合 さ れ た の だ と い う。 当 然、 冷 戦 シ ス テ ム 下 で 所 与 の も の と さ れ た 国 家 と (グ ロ ー バ ル) 市 場 の、 ま た 国 家 と 個 人 の バ ラ ン ス も さ ま ざまな境界も、ゆらぐこととなる。 わたしは、なにもフリードマンがいうグローバル主義者 (グ ロ ー バ リ ス ト) を 賛 美 し た い わ け で は な い。 し か し、 フットワークのよさといい、世界を多次元から複眼的に眺 め、かつその複雑な現代社会の様相を平易な文章で報告す るかれの著述姿勢に共感している。 フリードマン ( 二〇〇〇:上四一 ) はいう。 現在、政治や文化、技術、金融、国家安全保障、生態 環境学をおのおの独立させていた伝統的な境界が、どん どん消滅している……。このうちのどれかひとつの問題 を説明しようとすれば、しばしばほかの問題にも触れな くてはならず、全体を説明しようとすれば、個別の問題すべてに触れなくてはならない。つまり、有能な国際情 勢コラムニスト、あるいは記者でありたいなら、たがい に共通性のないさまざまな見地から情報を仕入れ、 …… それらの情報をひとつに撚り合わせる方法を学び、 ただ 0 0 ひとつの見地に立っていたらけっして手に入らないはず 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 の一枚の大きな世界図を織り上げる必要 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 がある。 …… 人 と 人 と が こ れ ま で に な く 密 接 に 結 び つ い た こ の 世 界 で は、 さまざまな関係を読み取り、点と点を結んでいく能 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 力こそ、ジャーナリストが提供できる本当の付加価値に 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 なる。相互関係を読み取らないと、世界全体を見たこと 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 にはならない 0 0 0 0 0 0 。 (傍点筆者) 本稿でわたしが強調したいことは、右に引用したフリー ドマンの主張につきる。これまで冷戦システム下よろしく 細 分 化 さ れ て き た 学 問 を、 有 機 栽 培 で 育 っ た 野 菜 の よ う に、より太く、全体が見とおせるものにしていこう、とい うものである。そのためにも、細分化ではなく、さまざま な異業種間、ことなるキャリア、立場の人びとと交流し、 発想をゆたかにしていこう。こうした立場にたてば、そも そも、研究者/運動家といった二項対立的なとらえ方は現 実的ではないはずだ。すべての境界が溶けていくのが現代 社会の宿命だとしたら、少なくともグローバルスタディー ズ / 地 域 研 究 を 志 す 者 は、 専 門 家 (ス ペ シ ャ リ ス ト) と い う壁にまもられた存在ではなく、ともに十種競技よろしく 万能家 (ジェネラリスト) をめざしていこうではないか。 ◉注 * 1 本 稿 は 、 す で に 発 表 し て い る 赤 嶺 ( 二 〇 一 三 a ) と 赤 嶺 ( 二 〇 一 三 b ) に 加 筆 修 正 し た も の で あ る 。 な お 、 本 稿 は 日 本 財 団 ア ジ ア ・ フ ェ ロ ー シ ッ プ ( API Fellowship: Fellowship for Asian Public Intellectuals ) の フ ェ ロ ー と し て わ た し が コ タ キ ナ バ ル ( マ レ ー シ ア ) に 滞 在 中 に 執 筆 し た も の で あ る 。 同 フ ェ ロ ー と し て の わ た し の 研 究 課 題 は 、 第 Ⅳ 節 で 論 じ た マ ル チ ・ サ イ テ ッ ト ・ ア プ ロ ー チ の 一 環 と し て 、 コ タ キ ナ バ ル 周 辺 の ナ マ コ 産 業 の 関 係 者 を 組 織 し 、 ナ マ コ 保 全 に つ い て の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム ( Gamat. Net ) を 組 織 す る こ と で あ る 。 フ ェ ローシップ中の研究成果については、いずれ論じてみたい。 *2 わ た し は 鶴 見 の「ナ マ コ 海 道」 仮 説 を う け、 そ の 延 長 線 上 と し て、 日 本 と 東 イ ン ド ネ シ ア と の つ な が り に つ い て 考 察 し た こ と が あ る(赤 嶺 二 〇 一 〇) 。 シ カ ク ナ マ コ( Stichopus chloronotus ) が、 現 在 の 東 イ ン ド ネ シ ア で trepang jipung (日 本 な ま こ) と 呼 ば れ て お り、 か つ、 こ の 名 称 が 一 八 世 紀 の オ ラ ン ダ の 史 料 に も 記 さ れ て い る こ と か ら( Sutherland 2000 )、 少 な く と も 一 八 世 紀 に は、 日 本 と 当 時 の 蘭 領 東 イ ン ド の 島 嶼 と を つ な ぐ コ モ デ ィ テ ィ・ チ ェ ー ン が 存 在 し た 可 能 性 を 提 示 し た。 な お、 中 国 史 家 の 濱 下 武 志 は、 独 自 の 視 点 か ら、 ナ マ コ に 特 化 し た 鶴 見 モ デ ル よ り も、 よ り 一 般 的 な ア ジ アにおける海域世界の連鎖を論じている(濱下 一九九七) 。 *3 台 湾 は C I T E S の 締 約 国 で は な い た め、 台 湾 政 府 関 係
者 は ス ワ ン・ イ ン タ ー ナ シ ョ ナ ル( SWAN International ) と いうNGOとしてオブザーバー参加している。 *4 C I T E S に お い て サ メ 類 の 管 理 が 最 初 に 議 題 と な っ た の は、 一 九 九 四 年 に 米 国 で 開 催 さ れ た C o P 9 で あ り、 提 案 国 は 米 国 で あ っ た。 そ の 後 C o P 11(二 〇 〇 〇 年) に お い て 再 提 案 さ れ、 今 日 に い た っ て い る。 ワ シ ン ト ン 条 約 に か ぎ ら ず、 サ メ 類 管 理 の エ コ・ ポ リ テ ィ ク ス は、 水 産 資 源 学 者・ 中 野秀樹の著書(中野 二〇〇七)に詳しい。 *5 C I T E S に お け る ナ マ コ 問 題 の 推 移 の 詳 細 は、 赤 嶺 (二〇一〇)を参照のこと。 *6 C I T E S で は、 C o P の 決 定 事 項 に Decision と Resolution と が あ り、 日 本 語 訳 と し て は、 前 者 に「決 定」 、 後者に「決議」をあてることになっている。 *7 K L 会 議 の 報 告 書 は、 Bruckner ed. ( 2006 ) を 参 照 の こ と。 レ タ ー サ イ ズ 判 二 四 四 頁 に お よ ぶ 同 報 告 書 は、 米 国 商 務 省 海 洋 大 気 庁( NOAA: National Oceanic and Atmospheric Administration ) の 刊 行 物 と し て 出 版 さ れ た。 C I T E S に 関 係 す る N O A A の 出 版 物 の ほ と ん ど が イ ン タ ー ネ ッ ト で 入 手 で き る も の の、 二 〇 一 三 年 九 月 二 〇 日 現 在、 本 報 告 書 は イ ン タ ー ネ ッ ト で 入 手 で き る 状 況 に な い。 な お、 事 業 予 算 八 万 米 ド ル と み つ も ら れ た 事 業 予 算 の う ち、 C I T E S 事 務 局 が 二万米ドルを用意し( AC19 Doc. 17: 2 )、それ以外の資金は、 N O A A と マ レ ー シ ア 政 府、 T R A F F I C 東 南 ア ジ ア が 提 供 し た( Bruckner ed. 2006: iii )。 N O A A が ど れ ほ ど 負 担 し か の か は 開 示 さ れ て い な い が、 大 部 分 を N O A A が 提 供 し て い る と す れ ば、 説 明 責 任 上、 同 報 告 書 を W E B 上 で 公 開 し な い理由が気になるところである。 *8 ナ マ コ 類 保 全 作 業 部 会 の 構 成 は、 中 国、 エ ク ア ド ル、 フィジー、 アイスランド、 インドネシア、 日本、 ノルウェー、 韓 国、 米 国 に、 オ ブ ザ ー バ ー と し て 政 府 間 機 関 の F A O、 東 南 ア ジ ア 漁 業 開 発 セ ン タ ー( SEAFDEC )、 N G O の IWMC World Conservation Trust 、 Species Management Specialists 、 TRAFFIC が 参 加 し た。 議 長 は 欧 州 共 同 体 か ら 選 出 さ れ、 開 催 国 オ ラ ン ダ の 外 務 官 僚 が そ の 任 に あ た っ た (
CoP14 Com. I, Rep. 2
〈 Rev. 1 〉, p. 2 )。 *9 F A O に よ る、 こ の 会 議 の 成 果 物 に は、 Purcell ( 2010 ) と FAO ( 2010 )もある。 * 10 通 常、 C o P は 一 二 日 間、 A C は 五 日 間 の 開 催 と な る。 わ た し は、 C o P 14(二 〇 〇 七 年) か ら す べ て の C o P に、 A C 23(二 〇 〇 八 年) か ら す べ て の A C に 参 加 し、 さ ま ざ ま な 機 会 を と ら え、 ナ マ コ 問 題 に つ い て の 意 見 を 訊 い て き た が、 C I T E S に し ろ A C に し ろ、 あ ま り に も 議 題 が 多 す ぎ て、 「ナマコなど議論する余裕はない」という声が多かった。 ナ マ コ に 議 論 の 時 間 が 割 か れ な い こ と に つ い て 米 国 政 府 の 関 係者は、 「CITESコミュニティからの支援が得られない」 とこぼしていた。 ◉参考文献 赤 嶺 淳(一 九 九 九) 「南 沙 諸 島 海 域 に お け る サ マ の 漁 業 活 動 ―― 干 魚 と 干 ナ マ コ の 加 工・ 流 通 を め ぐ っ て」 『地 域 研 究 論 集』二巻二号、一二三―一五二頁。 赤 嶺 淳(二 〇 〇 〇) 「熱 帯 産 ナ マ コ 資 源 利 用 の 多 様 化 ―― フ ロ
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◉ 著者紹介 ◉ ①氏名…… 赤嶺淳 (あかみね・じゅん) 。 ② 所 属・ 職 名 …… 一 橋 大 学 大 学 院 社 会 学 研 究 科・ 教 授( 二 〇 一 四 年四月より) 。 ③生年・出身地…… 一九六七年、大分県生まれ。 ④ 専 門 分 野・ 地 域 …… 東 南 ア ジ ア 地 域 研 究、 食 生 活 誌 学、 海 域 世 界研究。 ⑤ 学 歴 … … フ ィ リ ピ ン 大 学 大 学 院 人 文 学 研 究 科( フ ィ リ ピ ン 研 究 専 攻 )。 ⑥ 職 歴 …… 日 本 学 術 振 興 会 特 別 研 究 員、 国 立 民 族 学 博 物 館 C O E研究員を経て名古屋市立大学勤務。 ⑦現地滞在経験…… フィリピン共和国、マレーシア。 ⑧ 研 究 手 法 …… フ ィ リ ピ ン、 イ ン ド ネ シ ア、 マ レ ー シ ア を 中 心 に 島 嶼 社 会 で の フ ィ ー ル ド ワ ー ク を 行 っ て い る。 同 時 に、 水 産 資 源 管 理 に 関 係 す る 国 際 条 約 の 会 議 に お け る エ コ・ ポ リ ティクスの参与観察も実施している。 ⑨ 所 属 学 会 …… 野 生 生 物 と 社 会 学 会、 日 本 オ ー ラ ル ヒ ス ト リ ー 学会。 ⑩ 研 究 上 の 画 期 …… 一 九 九 五 年 に ガ ラ パ ゴ ス 諸 島 で 生 じ た ナ マ コ 戦 争。 こ の 事 件 を 契 機 と し て、 水 産 業 の 現 場 と 国 際 条 約 の 関 係 性 を 考 察 す る こ と の 必 要 性 を 感 じ、 マ ル チ・ サ イ テ ッ ト な研究姿勢の重要性を考えるにいたったから。 ⑪ 推 薦 図 書 …… 鶴 見 良 行『 バ ナ ナ と 日 本 人 ―― フ ィ リ ピ ン 農 園 と 食 卓のあいだ』 (岩波新書、 一九八二年) 。日本と東南アジアの関係 性 を 歴 史 的 か つ 政 治 経 済 的 視 点 か ら 重 層 的 に 描 い た、 モ ノ 研 究 の 代 表 作。 文 章 も 平 易 で 読 み や す く、 三 〇 年 前 の 著 作 な が ら、 今日でも読み応えある作品である。