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問題解決の力を育成する理科授業に関する研究

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問題解決の力を育成する理科授業に関する研究

日 暮 利 明・益 田 裕 充

A study on science class to raise the ability of the

solution to the problem

Toshiaki HIGURE and Hiromitsu MASUDA

群馬大学共同教育学部紀要 自然科学編 第69巻 61―69頁 2021 別刷

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問題解決の力を育成する理科授業に関する研究

日 暮 利 明1)・益 田 裕 充2)

1)群馬大学共同教育学部附属教育実践センター

2)群馬大学共同教育学部理科教育講座

(2020年9月30日受理)

A study on science class to raise the ability of the

solution to the problem

Toshiaki HIGURE

1)

and Hiromitsu MASUDA

2)

1)Center for Educational Research and Practice, Cooperative Faculty of Education, Gunma University Maebashi, Gunma 371-8510, Japan

2)Department of Science Education, Cooperative Faculty of Education, Gunma University Maebashi, Gunma 371-8510, Japan

(Accepted on September 30th, 2020)

1 はじめに

 小学校学習指導要領が告示されて3年間が過ぎた。 平成29年から3年間の小学校理科の授業参観記録 を振り返ると,予想や考察の場面で子供たちの話し 合いの場を重視する等,「主体的・対話的で深い学 び」を意識した授業実践が見られるようになってき た。しかし,表1のとおり「理科の見方・考え方」 を働かせることを意識した授業実践は少ないと考え られる。  このことに関して,髙橋(2020)は,新学習指導 要領理科の改訂の趣旨の理解や授業改善への意識の 高まりについて調査を行っている。その結果,新学 習指導要領の趣旨を概ね理解し,問題解決活動を重 視する意識の高まりは見られるものの,「理科の見 方・考え方」を働かせること等については,十分理 解されていないことを指摘している。また,「子供 が理科の見方・考え方を働かせるとはどのような姿 なのかについて,その具体的な姿をイメージできる ことが授業改善に繋がる」と述べている。つまり, 「理科の見方・考え方」を働かせる子供の姿を具体化 した授業づくりについて課題があると考えられる。  一方,平成30年全国学力・学習状況調査小学校 理科の結果から「観察・実験の結果を整理し分析し て考察した内容を記述することや,予想が確かめら れた場合に得られる結果を見通して実験を構想し, 実験結果を基により妥当な考えに改善し,その内容 を記述すること」が明らかとなった(国立教育政策 研究所,2019)。このことから,問題解決の各過程 表1 理科授業参観の評価 授業参観数 21 「主体的・対話的で深い学び」を取り入れた 授業数 17 「理科の見方・考え方を働かせること」を取 り入れた授業数 4 平成29 年度∼令和元年度 小学校理科授業参観記録より 群馬大学共同教育学部紀要 自然科学編 第69 巻 61―69 頁 2021 61

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図1 「理科の見方・考え方」と資質・能力の関係 で子供たちがこれまで以上に問題解決の力を発揮す ることを求められていると考えられる。  以上のことから,問題解決の各過程で「理科の見 方・考え方」を働かせる子供の姿を具体化し,問題 解決の力を高めるための授業づくりのポイントを明 らかにすることは意義があると考え,研究を進める こととした。

2 研究の背景

2.1 「理科の見方・考え方」を働かせる子供の姿を 具体化するための捉え  まず,「理科の見方・考え方」を働かせることが 十分に理解されていない現状を踏まえて,新学習指 導要領の改訂の趣旨を整理する必要がある。  小学校学習指導要領理科解説編においては,従来, 「科学的な見方や考え方」を育成することを重要な 目標として位置付け,資質・能力を包括するものと して示してきた。そして,「見方や考え方」とは,「問 題解決の活動によって児童が身に付ける方法や手続 きと,その方法や手続きによって得られた結果及び 概念を包含する」という表現で示されてきたところ である。今回の改訂では,資質・能力をより具体的 なものとして示し,「見方・考え方」は資質・能力 を育成する過程で児童が働かせる「物事を捉える視 点や考え方」であること,更には教科等ごとの特徴 があり,各教科等を学ぶ本質的な意義や中核をなす ものとして全教科等を通して整理されたと示してい る(文部科学省,2017)。  これらを整理すると図1および表2から表4のと おりとなる(独立行政法人教職員支援機構,2019)。 表2 理科において示された「見方」 領   域 エネルギー 粒 子 生 命 地 球 見   方 自然の事物・ 現象を主とし て量的・関係 的な視点で捉 える 自然の事物・ 現象を主とし て質的・実体 的な視点で捉 える 生命に関する 自然の事物・ 現象を主とし て多様性と共 通性の視点で 捉える 地球や宇宙に 関する自然の 事物・現象を 主として時間 的・空間的な 視点で捉える 例 例:豆電球の 明るさについ て,電池の数 (量)や直列・ 並列つなぎの 関係で捉える 例:物の性質 について,形 が変わっても 重さは変わら ないことから 実体として存 在することを 捉える 例:昆虫や植 物の成長や体 のつくりにつ いて,多様性 と共通性の視 点で捉える 例:土地のつ くりや変化に つ い て, 侵 食・運搬・堆 積の関係を時 間的・空間的 な視点で捉え る これら以外にも,原因と結果,部分と全体,定性と定量な どといった視点もあることに留意 表3 理科において示された「考え方」 領   域 エネルギー 粒 子 生 命 地 球 考え方 「比  較」  複数の自然の事物・現象を対応させ,比べること 「関係付け」  自然の事物・現象を様々な視点から結び付けること 「条件制御」   自然の事物・現象に影響を与えると考えられる要因に ついて,どの要因が影響を与えるかを調べる際に,変 化させる要因と変化させない要因を区別すること 「多面的に考える」  自然の事物・現象を複数の側面から考えること これまで理科で育成を目指してきた問題解決の能力を基に 整理を行った。 表4 理科において示された「問題解決の力」 現行学習指導要領 新学習指導要領 比較しながら調べる 差異点や共通点を基に,問題を見い だす力 関係付けながら調べる 既習の内容や生活経験を基に,根拠 のある予想や仮説を発想する力 条件に目を向けながら 調べる 予想や仮説を基に,解決の方法を発 想する力 推論しながら調べる より妥当な考えをつくりだす力 ・自然に親しみ, ・理科の見方・考え方を働かせ, ・見通しをもって観察,実験を  行うなど 自然の事物・現象についての問題を科学 的に解決するために必要な資質・能力 ⑴  自然の事物・現象についての理解を 図り,観察,実験などに関する基本的 な技能を身に付けるようにする。 ⑵  観察,実験などを行い,問題解決の 力を養う。 ⑶  自然を愛する心情や主体的に問題解 決しようとする態度を養う。

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図2 問題解決の過程  つまり,「見方・考え方」の定義が変わっている ため,これまでと同じように用いることができない 点に注意する必要はあるが,「理科の見方・考え方」 を働かせて,問題解決の力を高めることは,新学習 指導要領における思考力・判断力・表現力等を育成 することそのものであると考えられる。  鳴川(2019)は「理科の見方・考え方」について, 「見方・考え方を働かせることができれば,自分な りに解決してみたいという問題が生まれる。その問 題を抱えているときも見方・考え方を働かせてい る」と述べている。つまり,「理科の見方・考え方」 は,問題解決の過程の中で子供たちが,無意識に働 かせているものであり,これまでも子供たちは,「理 科の見方・考え方」を働かせているのではないかと 考えられる。  このことに関して,太田(2019)は,過去の実践 を振り返り,理科の見方・考え方を働かせる授業が 行われていた可能性が十分あり,「理科の見方・考 え方」を働かせながら子供たちは,学ぶことができ ていることを明らかにしている。そして,子供が「理 科の見方・考え方」を働かせられるような教材や状 況を,指導者がどのようにつくるかが重要であるこ とを指摘している。つまり,「理科の見方・考え方」 を働かせることについて全く新しい指導方法を求め られているわけではない。教師が「理科の見方・考 え方」を働かせている子供の姿を把握することが大 切であると考えられる。これらのことから,過去の 実践を振り返り,教師の働き掛けや「理科の見方・ 考え方」を働かせる子供の姿を分析することとす る。 2.2 問題解決の各過程で問題解決の力を発揮する ことについての捉え  「理科の見方・考え方」を働かせる姿は,問題解 決の中で表れる。そのため,問題解決の各過程で「理 科の見方・考え方」を働かせて,問題解決の力を発 揮する場が必要となる。このことから,小学校の理 科の授業づくりにおいては,単元構想が大切である と考えられる。  このことについて,小学校学習指導要領解説総則 編には,「主体的・対話的で深い学びは,必ずしも 1単位時間の授業の中で全てが実現されるものでは なく,学びの深まりをつくりだすために,児童が考 える場面と教師が教える場面をどのように組み立て るか,といった観点で授業改善を進めることが重要 であり,主体的・対話的で深い学びの実現に向けた 授業改善を考えることは単元や題材など内容や時間 のまとまりをどのように構成するかというデザイン を考えることが大切である」と示している(文部科 学省,2017)。  このことについて小学校理科においては,問題解 決の過程を図2のように示している(文部科学省, 2011)。このように,単元など内容や時間のまとま りをどのように構成するかというデザインを考える ことはこれまでも大切にされてきている。  しかし,これまでの授業参観記録等を振り返ると, 問題と結論が正対していなかったり,問題について の予想をしていなかったりするなどの授業も見られ, 問題解決の各過程を関連付けて「構造化」した授業 づくりは難しいと思われる。  このことに関して,半田・星野・益田(2015)は, 構造化の実態を調査し,「構造化」に至らない授業 が多いと述べている。また,教師が,「問題解決の 過程」を問題を解決するストーリーとして,各局面 間の関係を関連付けられていないことを述べている。 問題解決の力を育成する理科授業に関する研究 63

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図3 理科授業デザイン構造化シート そして,益田(2020)らは,表5のとおり探究の各 過程を関連させる際の観点を示している。また,理 科授業デザインベース構造化シート図3を用いて, 探究の各過程の構造化を図っている。  その結果,中学校理科指導法の授業において,大 学生が授業を構想する際には,特に観点1と観点3 に課題が見られることを指摘し,導入時の自然事象 の提示と課題,予想・仮説と検証計画の立案を関係 付けて授業を構想することを充実させる必要がある と述べている。  この先行研究は,教員養成課程の中学校理科指導 法を受講する学生を対象に行った調査であるが,中 学校学習指導要領解説理科編には,探究の過程は, 基本的に小学校及び中学校でも同様の流れで学習過 程 を 捉 え る こ と が 示 さ れ て い る( 文 部 科 学 省, 2017)。このことから,各学習過程の関係性を捉え た単元構想について,益田らの指標を用いて分析す ることとする。

3 研究の目的

 過去の実践を振り返り,問題解決の各過程の関係 性を捉えた単元構想や理科の見方・考え方を働かせ る子供の姿や教師の働き掛けについて分析すること で,授業改善のポイントを明らかにする。

4 研究の方法

4.1 調査方法  過去の授業実践において,各学習過程の関係性を 捉えた単元構想ができているか益田らが開発した観 点を用いて分析する。また,「理科の見方・考え方」 を働かせている子供の姿について教師の働き掛けや 子供の発話等を分析する。このことを通して,「理 科の見方・考え方」を働かせて,問題解決の力を高 める授業づくりのポイントを明らかにする。 4.2 調査対象  平成26年度A国立大学法人附属小学校  第5学年 1クラス Base1 考察は何か 実験の結果をもとに考察で生徒に書かせた い言葉を生徒の言葉で考える。 Base2 課題 考察で書かせたいことが答えの文になるよ うに探究の過程の「課題」を考える。 Base3 自然事象 1 子どものつぶやき 導入で課題を生徒が設定できるような自然 事象との関わり(体験)を考える。 Base4 課題に対する予想 生徒が,何を根拠に,どのような予想を立 てるか考える。 Base5 検証計画の立案 仮説を立証するための観察・実験を考える。 自然事象1と観察・実験事象・教材の関係。 Base6 観察・実験 課題を解決する観察・実験であるかを考え る。結果:得られた事実を課題/仮説を解決 するために的確に整理(表出)させるには。 Base7 考察 結果から予想・仮説は立証されたのか,よっ て課題に正対する答えは何か。 表5 構造化するための観点 観点 内    容 1 対象となる自然の事物・現象から問題意識を醸成し,子ども自身に目的意識や問題意識を持たせる 2 予想は課題で問われた問いに対する予想をさせる 3 子どもと共に,子どもの予想・仮説を検証する計画を立てさせる 4 検証計画に基づいた観察・実験を行わせる 5 観察・実験のデータを一定の視点を基にした観察結果を出させる 6 観察・実験の結果を吟味し,分析・解釈させる 7 課題と考察が正対する 8 実験は予想・仮説を検証するために行わせる 9 予想と結果を関連づけて考察させる 10 子どもたちが分析・解釈した考察を一般的なものにしたり,自然の事象例を示したりする

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図4 学びのプロセス

5 授業の実際

5.1 問題解決の能力と単元の基本方針  目指す子供像に迫るために,各過程で発揮する問 題解決の力を図4として捉え,問題解決の力を発揮 できるよう,第5学年「電気の働きを調べよう」に おいて,表6のような単元構想を行った。 表6 単元構想の実際 「ふれる」過程で,電磁石の強さには違いがあるこ とに気付けるように,動物キャッチ体験Ⅰを位置付 ける。 「ふれる」過程で,どのようにしたら,強力な電磁 石がつくれるかという問題を見出し,追究の見通し をもてるように,体験から得た気付きや疑問とその 根拠を説明する場を設定する。 「さぐる」過程で,見出した問題を調べるために, 条件を制御して行う実験(電磁石の強さと電池の数 やコイルの巻数の関係)を位置付ける。 「さぐる」過程で,強力な電磁石をつくるためには, 電池の数を増やし,コイルの巻数を多くすればよい という答えとその根拠を説明する場を設定する。 単元を通して,強力な電磁石がつくるという問題意 識を持続できるように,持ち上がりそうで持ち上が らない重さの鉄球を教具として工夫する。 指導計画(全12時間) 目 標 電磁石の導線に電流を流したときの,電磁石 の強さの変化を追究する活動を通して,電流 の性質や働きについての見方や考え方をもつ。 評 価 規 準 ⑴ 電磁石の導線に電流を流したときの電磁 石の強さの変化に興味・関心をもち,電流 の働きを見通しをもって追究している。 ⑵ 電磁石の強さを調べるための条件に着目 して予想したり,追究した結果を基に電磁 石の強さと電流の働きとを関係付けて考察 したりして,表現している。 ⑶ 条件を制御しながら,電磁石の強さや極 の変化を調べ,その結果を分かりやすく記 録している。 ⑷ 電流はコイルの中の鉄心を磁化させる働 きがあり,電流の向きが変わると電磁石の 極が変わること,電磁石の強さは電流の強 さやコイルの巻数によって変わることを理 解する。 過程 時間 学習活動 ふれる 1 ○電磁石クレーンの映像を見たり,導線1 本に電流を流したときに,方位磁針が動 くことを確かめたりして電磁石を知る。 1 ○クリップの付いた動物を持ち上げる体験 「動物キャッチ体験Ⅰ」をし,一人一人 がもった気付きや疑問を基に話し合い, 学習のめあて「強力な電磁石クレーンを つくろう」をつかむ。 1 ○問題「どのようにしたら,強い電磁石が つくれるのだろう」について,共通体験 や学習経験を基に予想し,実験計画を立 てる。 2 ○電池の数やコイルの巻数を変えて,電流 の強さと電磁石の強さの関係を調べる。 さぐる 1 ○それぞれのグループの実験結果を基に, 分かったことや考えたことを話し合って まとめる。 1 ○N極とS極を表にした磁石を貼り付け た動物を持ち上げる体験「動物キャッチ 体験Ⅱ」をし,電磁石を強くしても動物 を持ち上げられない理由について話し合 う。 1 ○電磁石に方位磁針を近付けて,電流の向 きと電磁石の極の関係を調べ,まとめる。 実感する 3 ○体験「自分の電磁石クレーンづくり」を 行う。 1 ○体験「動物キャッチゲーム大会」を行 う。 問題解決の力を育成する理科授業に関する研究 65

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5.2 表出された学習者のすがた(5年「電流の働 きを調べよう」) 5.2.1 「ふれる」過程における学び(第1・2時)  まず,清掃工場の作業員が手元のスイッチを入れ たり,切ったりすることで,大型の電磁石が鉄を引 き付けたり,離したりする映像を提示し,気付いた ことを話し合う場を設定した。  T:教師 K,C:児童  下線ゴシックは,「理科の見方・考え方」を働か せていると考えられる子供の発話等 発話1 K:鉄が引き付くから磁石と似ているな。 C:スイッチを切ると鉄が離れるから磁石とは違う ね。  次に,1本の導線に電流を流し,方位磁針を近付 ける活動を行った。そして,一人一人が電磁石をつ くることを通して,電磁石を知った。  最後に,グループごとに,赤の電磁石クレーン(電 池2個・100回巻)と黄の電磁石クレーン(電池1 個・50回巻)を使って,重さの違う鉄のクリップ が付いた動物を持ち上げる体験「動物キャッチ体験 Ⅰ」を行った。 発話2 K:ウサギが持ち上がった。(黄のクレーン) C:ライオンが持ち上がった。(赤のクレーン) K:黄のクレーンはウサギしか持ち上がらないね。 (赤のクレーンと比べて) T:なぜ持ち上がらないの。 C:黄のクレーンは,電池が 1 個だから電磁石が弱 いんだよ。 K:赤のクレーンは電池が 2 個つないであるよ。だ から電磁石が強いのかな。 C:よく見ると,コイルの太さも違うよ。 K:2 つを並べてみると,赤のクレーンの方が導線 がたくさん巻いてあるよ。  その後,教師は,それぞれのグループに,さらに 重い鉄を付けた動物を置いた。交替で,何度も新た な動物を持ち上げようと試みた。しかし,鉄球が重 いために,少しだけ持ち上がり,落ちてしまう。子 供たちは,強い電磁石をつくりたいという思いをも ち,問題「どのようにしたら,強い電磁石がつくれ るのだろう」を把握した。 5.2.2「さぐる」過程における学び(第3時~第9時)  問題「どのようにしたら,強い電磁石がつくれる のだろう」について,一人一人が前時の共通体験を 基に問題の答えを予想した。 発話3 K:電池の数が多い赤のクレーンの方が,重いもの が持ち上がったので,電池の数が増えると,導 線に電流がたくさん流れて電磁石が強くなる。 C:巻数が多い赤のクレーンの方が,重いものが持 ち上がったので,巻数も関係している。 K:巻数が増えると,導線に流れる電流が増えて電 磁石が強くなるのかな。  Kの班は,電池の数とコイルの巻数の違いによる 電磁石の強さの違いについて,条件を制御した実験 計画を構想し,調べることとした。 実験結果は,表7の通りである。  それぞれのグループの実験結果を基に話し合いが 行われた。発話4から発話5はそのときの発話であ 表7 実験結果 〈コイルの巻数の条件を制御し,電池の数を変えて釘 を持ち上げた数を調べた実験結果〉 100回巻 電流 1回目 2回目 3回目 平均 電池11A 3544本 電池22A 5676本 〈電池の数の条件を制御し,コイルの巻数を変えて釘 を持ち上げた数を調べた実験結果〉 電池1個 電流 1回目 2回目 3回目 平均 100回巻 1A 3544本 200回巻 1A 8978

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り,記述1に抽出児Kの結論を示す。 発話4 C:電池の数が増えることで,流れる電流の量が増 え,強い電磁石になることが分かった。 K:コイルの巻数が増えても強い電磁石になってい るといえるね。でも,電流の量は変わってない よ。 発話5 C: 1本の導線の中に流れる電気の量は変わらない けど,コイルの巻数が増えることで,電気が何 回も同じところ通っていることになるよ。 K:そうか,コイルの巻数が増えると,1本の導線 に流れる電気の量は変わらないが,1 本 1 本の 導線の中の電気がつくる磁力が集まるから電磁 石が強くなるんだね。 抽出児 K の結論 K:電池の数が増えると,1本の導線の中に流れる 電気の量が増え,強い電磁石になる。コイルの 巻数が増えると,電気が通る束ができて強い電 磁石になる。だから,電池の数を直列で増やし, コイルをたくさん巻けば,強い電磁石をつくる ことができる。 記述1  第7・8時では,N極とS極を表にした磁石を貼 り付けた動物を持ち上げる体験「動物キャッチ体験 Ⅱ」を行った。電磁石を強くしても持ち上がらない ときがあるという気付きや疑問を基に,追究した。 (略)また,「実感する過程の学び」として,第9時∼ 第12時では,これまでの学習を生かして,体験「自 分の電磁石クレーンづくり」と体験「動物キャッチ ゲーム大会」を行った(略)。

6 まとめ

6.1 単元構想の評価  過去の実践においても図4のように,各過程に問 題解決の力を位置付けている。また,体験と説明活 動を繰り返し位置付けることで,問題解決の各過程 のつながりを意識した単元構想をしていることが分 かる(表6)。しかし,益田らの観点を用いて分析 を行うと,表8のとおりの結果となった。  次に分析の詳細を示す。 観点1について  電磁石に一人一人がふれる機会をもち,子供の中 から「電磁石を強くしたい」いう思いを引き出して いることから,子供自身の目的意識や問題意識をも たせることができていると考えられる。 観点2について  電磁石を強くする要因を予想していることから, 問題について予想をすることができていると考えら れる。 観点3について  子供たちは,電磁石を強くする要因として,電池 の数とコイルの巻数を取り上げてはいるが,数値の 決定や条件制御等,実験結果等の見通しについての 検討が不十分であるために,電流の量を図る意図も 明確でない。これは,子供と共に実験計画を構想し ているとは考えられない。 観点4について  観点3が不十分のまま,実験を行っているため不 十分であると考えられる。 表8 構造化するための観点を用いた評価 観 点 結 果 1 ○ 2 ○ 3 × 4 × 5 ○ 6 ○ 7 ○ 8 ○ 9 ○ 10 ○ 問題解決の力を育成する理科授業に関する研究 67

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観点5について  電磁石を強くする要因を視点に,実験結果を数値 化して表現していることから,正しく結果を表出さ せることができていると考えられる。 観点6について  複数の実験数値を基に,巻数が変わっても電流の 量が変わらないことを含めて考察していることから, 実験結果を吟味して考察していると考えられる。 観点7について  問題に対して,電池の数と巻数を増やすことでコ イルに流れる電流の量が増えることを見いだすこと ができていることから,問題と正対させた考察がで きていると考えられる。 観点8について  電池の数を増やす,巻数を増やすと電磁石が強く なるという子供たちの予想・仮説を検証する実験は できていると考えられる。 観点9について  巻数を変えても電流の大きさが変わらないことを 指摘していることから予想と考察の関係付けができ いると考えられる。 観点 10 について  子供たちが見いだした電磁石を強くする方法を確 かめる場として,強い電磁石をつくる場をつくり確 かめる活動を設定していることから,一般化できて いると考えられる。  本実践においては,観点3,4に課題が見られた。 これは,新学習指導要領で示された問題解決の力の 中で,予想や仮説を基に,解決の方法を発想する力 を育成することに課題があると言える。その要因と しては,「何をどのようにして調べるのか」について, 子供たちの主体的な活動する場が不十分であった。 また,どのような結果が得られるのか,実験結果の 見通しをもつ場も不十分であった。 6.2 「理科の見方・考え方」を働かせることについ て  本実践においても,子供たちの発話等の中に,「理 科の見方・考え方」を働かせている姿が表れている ことが分かった。  分析の結果は,次の通りである。 差異点や共通点を基に,問題を見いだす力について (発話2より)  体験活動を設定することで,子供たちは,2つの 電磁石を共通性と多様性の視点で,比較し,問題を 見いだしていると考えられる。 既習の内容や生活経験を基に,根拠のある予想や仮説 を発想する力(発話3より)  体験活動での気付きを予想の根拠として,問題の 答えについて一人一人が,電池の数やコイルの巻数 と電磁石の強さを量的・関係的の視点で捉えている ことから,電磁石を強くする要因と電流の量を関係 付けて根拠のある予想をしていると考えられる。 予想や仮説を基に,解決の方法を発想する力  子供たちが主体的に予想を検証するための実験計 画について,話し合いが十分に行われていないため, 見方・考え方は働かず,解決の方法を発想する力は 高まっていないと考えられる。 より妥当な考えをつくりだす力(発話4および発話 5 より)  実験結果を丁寧に整理し,複数の実験結果を比較 させ,話し合いの時間を設けることで,コイル一本 あたりに流れる電流が束ねられているから電磁石が 強くなるという別の量的・関係的な視点で,多面的 に考えさせ,妥当な考えをつくりだすことができて いると考えられる。  これらのことから,過去の理科授業の実践におい ても,子供たちが問題解決の各過程で「理科の見 方・考え方」を働かせることで,問題解決の力を発 揮していることが分かる。また,その際には,「理 科の見方・考え方」を働かせる場を教師が設定して いることが分かった。しかし,解決の方法を発想す

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る場の設定が不十分のため,「理科の見方・考え方」 が働かないことが分かった。このことは,単元構想 上の課題とも重なる。また,教師が子供たちが働か せている「見方・考え方」に気付かなければ,それ を問題解決につなげることはできないことも考えら れる。  今単元では,主に,量的・関係的視点での「理科 の見方」を働かせる姿が見られた。今後は,学習内 容に応じて,主に働かせたい「理科の見方」を想定 し,単元構想をした実践を増やすことが必要である と考えられる。 引用文献 ・文部科学省:小学校学習指導要領解説総則編,2017. ・文部科学省:小学校学習指導要領解説理科編,2017. ・文部科学省:中学校学習指導要領解説理科編,2017. ・文部科学省:小学校理科の観察,実験の手引,2011. ・国立教育政策研究所:平成30 年度 全国学力・学習状況 調査 報告書,文部科学省,2019. ・鳴川哲也:小学校学習指導要領理科改訂のポイント 新学 習指導要領No.1,独立行政法人教職員支援機構,2019. ・半田良廣,星野沙織,益田裕充:「理科授業の構造化と「主 体的な問題解決」を支えるメタ認知に関する研究(一般口 頭発表)」,日本理科教育学会関東支部大会研究発表要旨集, 理科教育学会事務局,2015. ・益田裕充,半田良廣,田村敏之,藤本義博,栗原淳一: 「大学生の理科授業を構想する能力に関する研究-理科授 業デザインベース構造化シートを用いた課題の抽出-」, 群馬大学教育学部紀要,自然科学編,第68 巻,pp.27-35, 2020. ・鳴川哲也:『理科の授業を形づくるもの』,東洋館出版,p.65, 2020. ・髙橋泰道:「学習指導要領改訂に向けた小学校理科につい ての教員の意識∼小学校の校内研修等を通して∼」,日本 科学教育学会研究会研究報告,VOL.34,No.9,pp.23-26, 2020. ・太田雄久:「理科の見方・考え方を働かせる小学校理科の 授業づくりの一考察-小学校第3 学年 風やゴムの働きの 実 践 よ り -」, 奈 良 学 園 大 学 紀 要, 第7 巻,pp.15-22, 2017. ・日暮利明,吉田恵一,針谷尚志:「体験を通して自然への 理解を図り,自然への見方や考え方を深める子ども」群馬 大学附属小学校 紀要 64,pp.37-44,2016. 問題解決の力を育成する理科授業に関する研究 69

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