令和元年度 修 士 論 文
トルクリプルの低減を考慮した電動パワーステアリング用
スロットレス永久磁石同期モータの最適化の検討
指導教員 石川 赴夫 教授 群馬大学大学院理工学府 理工学専攻 電子情報・数理教育プログラム 山崎 尚人・目次
1. 序論 1-1 研究背景 1-2 研究目的 2. 電動パワーステアリング 2-1 方式 2-2 永久磁石同期モータ 2-3 スロットレス構造のモータおよび原理 2-4 スロットレス永久磁石同期モータ 3. 本論 3-1 モータの設計概要 3-2 トルク式とフローチャート 4. 解析 4-1 数式モデルによる解析 5. 結論 5-1 まとめ 5-2 今後の課題1
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1. 序論
・1-1 研究背景
近年, 自動車には省エネルギーや環境への配慮, 快適性の追求が要求されて おり, 従来の油圧パワーステアリングに代わって電動パワーステアリング(EPS) が普及している。EPS に広く使用されているモータとして永久磁石同期モータ がある。通常のブラシ付モータは, 低コストかつセンサが不要というメリットが あるが, ブラシによる電気抵抗と発熱および損失, ブラシの摩擦トルクとノイ ズ, ロータイナーシャが大きいという欠点がある。それに対し, 永久磁石同期モ ータでは磁石による振動や磁石位置を検出する角度センサが必要となる代わり に, ブラシが要因となっていた電気抵抗や発熱, 摩擦トルク, ノイズがなく, イ ナーシャが低いという長所がある。界磁電流が不要なため界磁損失がなく, また 寿命やノイズの面で優れており本質的に低損失・高効率であるため, EPS に使用 されるモータは, 適用車格の大型化に伴ってブラシ付モータからブラシレスモ ータ(永久磁石同期モータ)へと変化していった。モータの設計・解析をより簡 易にするために, 分析モデルを用いた永久磁石による磁束密度が極座標で定式 化されている[1]。また, 永久磁石同期モータは無通電状態におけるコギングト ルクによって振動が生じてしまう欠点があるが, これに対し, 理論的にコギン グトルクのないひし形のコイルを用いたスロットレス構造のモータが開発され ている[2] モータの高効率化・小型化が進んでいく中で, フィーリングが良好であり軽量 化が可能, かつ高出力・高トルクという相反する要求を満たすことは難しい課題 となっている。・1-2 研究目的
そこで本研究では, 高出力かつトルクリプルの低減を目的として,スロット レス構造の永久磁石同期モータを提案し, 多くのパラメータの最適値を求める ための数式モデルによる解析を行う。2
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2. 電動パワーステアリング
・2-1 方式
EPS の方式を Fig.2-1 に示す。各 3 タイプの特徴は以下で説明する。 Fig.2-1-1 EPS の方式 ・コラムEPS 車室内にモータが配置されており, 搭乗者に近く前輪からは遠い位置にある。 環境条件は車室内に影響される。 ・ピニオンEPS エンジンルーム内にモータが設置されており, 搭乗者から隔絶され前輪に近 い位置にある。環境条件はエンジンルームに影響される。 ・ラックタイプEPS ピニオンEPS と同様, エンジンルーム内にモータを配置。搭乗者から隔絶さ れており前輪に近い位置にある。温度条件はエンジンルームに影響される。 本研究では, もっとも主流なコラムタイプとしている。 ステアリングホイール コラム モータ インター ミディエイト シャフト ラック&ピニオンギア モータ モータ3
・2-2 永久磁石同期モータ
モータへの高効率化の要求と高性能永久磁石の開発に伴って, 永久磁石(PM) モータが広く用いられるようになった。表面磁石PM モータ(SPMSM)の構造 略図と原理をFig.2-2 に示す。 Fig.2-2-1 PM モータの構造略図 永久磁石同期モータは, コイルに電流が流れることで発生する磁界が, 磁石 と反発, 引き合うことで回転する。SPMSM はロータ表面に磁石が張り合わせて あり, 制御性に優れ高効率という利点がある。そのため EPS の他, 電気自動車 や各種産業用モータとして使用されている。 𝑁 𝑆4 永久磁石同期モータのスロットコンビネーションをFig.2-2-2 に示す。 Fig.2-2-2 永久磁石同期モータの形式 本研究ではスロットレスモータとして, 18 スロットに相当する巻線方式として いる 表面磁石型モータ (SPM) 埋め込み磁石型 モータ(IPM) スロットレス型 モータ(コアレス) 誘導モータ 6 極 9 スロット 8 極 9 スロット 12 極 9 スロット 4 極 12 スロット 10 極 12 スロット 14 極 12 スロット 6 極 18 スロット 6 極 18 スロット 4 極 24 スロット 集中巻 分布巻 モータ形式 スロットコンビネーション 巻線方式
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・2-3 スロットレス構造のモータおよび原理
ここではスロットレスモータの原理について説明する。スロットレスモータ の断面図を Fig.2-3-1 に示す。ここで𝑟は軸からの半径, sはシャフト, 𝑚は磁石, 𝑒は囲い, 𝑐はコイル, 𝑦はヨーク, 𝑖はインナー(内側), 𝑜はアウター(外側)を 表している。 Fig.2-3-1 スロットレスモータの断面図 術語について次項に示す。 𝑟𝑦𝑜 𝑟𝑦𝑖 𝑟𝑠𝑜6 術語 𝐵𝑟 : 永久磁石の残留磁束密度 𝜇𝑟 : 永久磁石の比透磁率 𝜌𝑐 : コイル抵抗率 𝑁𝑡 ; コイル巻数 𝐿𝑠 : ステータ長 𝐿𝑟 : ロータ長 𝑟𝑠𝑜 : シャフト外半径 𝑟𝑚𝑜 : 磁石の外半径 𝑟𝑐𝑖 : コイル内半径 𝑟𝑐𝑜 : コイル外半径 𝑟𝑦𝑖 : ヨーク内半径 𝑟𝑦𝑜 : ヨーク外半径 Fig.2-3-1 に示すように, スロットレスモータのステータは通常コイルのみで 構成されている。コイルの六角形状になっており, エアギャップに対して一様に 挿入できるようになっている。スロットがないため, エアギャップにおけるスロ ット高調波がなく回転子の渦電流損が 0 であるため高効率である。したがって コギングトルクは理論上0 となり, コイルインダクタンスは低い。スロットレス 構造の大きな利点として, コイルをエアギャップ内に自由に挿入することがで きるため形状自由度が高く, 小型化・低トルクリプル化が可能である。
7 通常, ローレンツ力によりコイル(軸)に流れる電流によって回転トルクが発 生する。そのため最大トルクを得るためには軸に対して直線的に巻く必要があ る。しかし, モータの性能を上げるためにコイルエンドを考慮しなければならな い。大抵の場合において, コイルエンドはエアギャップ磁場が最も低い場所に位 置してあるため, トルクに寄与する力は小さい。さらにコイル抵抗も大きくなっ てしまう欠点がある。そのため, ステータに依存しない構造が求められる。本研 究はスロットレスコイルによるモータ設計を行う。コイルの形状は六角形とし 一様に挿入できる形としている。スロットレスコイルの原理図をFig.2-3-2 に示 す。 Fig.2-3-2 スロットレスコイルの原理図 𝜙は周方向の角度で𝑍は軸方向の長さとなっている。コイルは以下で示す 3 つの セグメントから構成されている。 セグメントI:開き角𝛽と𝜙 = ±𝜋/2𝑝を中心としたときの軸方向巻線 セグメントII:距離𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑を始めとした, 角度𝛼の対角巻線。 セグメントIII:開き角𝛾の周方向部分の巻線 −𝜋 2− 𝛽 2, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 −𝜋 2− 𝛽 2, 0
𝑧
𝑇 𝜙𝑛2 𝜙𝑛1 𝐵𝑂𝑇𝑇𝑂𝑀 𝐿𝐴𝑌𝐸𝑅 𝑇𝑂𝑃 𝐿𝐴𝑌𝐸𝑅0
𝜋 6 𝜋 3 𝜋 2 2𝜋 3 −𝜋 6 −𝜋 3 −𝜋 2 −2𝜋3 𝐵 α𝑇 α𝐵 −𝜋 2+ 𝛽 2, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝜋 2− 𝛽 2, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 −𝜋 2+ 𝛽 2, 0 𝜋 2+ 𝛽 2, 0 𝜋 2+ 𝛽 2, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝜋 2+ 𝛽 2, 0 𝜙𝑛2 , 𝑧𝑛2 𝜙𝑛2 , 𝑧𝑛2 −𝛾 2 , 𝐿𝑤 2 𝛾 2 , 𝐿𝑤 2𝜙
𝐼 𝐼𝐼 𝐼𝐼𝐼 𝑃𝑖𝑛𝑡 0 , 𝑧𝑖𝑛𝑡8 コイルは上層𝑇𝑂𝑃と下層𝐵𝑂𝑇𝑇𝑂𝑀の 2 層で作られており, これらの層の中心 半径はそれぞれ次の式で与えられる。 𝑟𝑇 = 1 4𝑟𝑐𝑖+ 3 4𝑟𝑐𝑜 (2-3-1) 𝑟𝐵= 3 4𝑟𝑐𝑖+ 1 4𝑟𝑐𝑜 (2-3-2) セグメントIII はコイル層が交わる部分である。平均半径𝑟̅は, 𝑟̅ =1 2𝑟𝑇+ 1 2𝑟𝐵 (2-3-3) となる。セグメントII で平行に曲がり, コイルの重複を避けるために交差点𝑃𝑖𝑛𝑡 の軸座標は次のように等しくなければならない。 𝑍𝑖𝑛𝑡 = 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑+ 𝐿𝑤 − 2𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝜋 + 𝛽 − 𝛾 𝜋 2− 𝛽 2 (2-3-4) コイルの全ての端側が定義されると,巻線(𝑁𝑡巻)をセグメント内に挿入するこ とができる。
9 透磁率∞のシャフトと鉄のステータヨーク, ハルバッハ磁化の永久磁石と仮定 したとき, 1 極ペアのエアギャップ径方向誘導磁場は次のようになる。 𝐵𝐼𝑟 = 𝐵0((𝑟𝑚𝑜 𝑟𝑦𝑖) 2 + (𝑟𝑚𝑜 𝑟 ) 2 ) cos 𝜙 − 𝜃 (2-3-5) 𝐵0は, 𝐵0 = 𝐵𝑟[( 𝑟𝑠𝑜 𝑟𝑚𝑜) 2 − 1] 1 − 𝜇𝑟[(𝑟𝑟𝑠𝑜 𝑚𝑜) 2 − 𝑟𝑚𝑜 𝑟𝑦𝑖 2 ] + 1 + 𝜇𝑟 [ 𝑟𝑟𝑠𝑜 𝑦𝑖 2 − 1] (2-3-6) となる。ここで𝜃はロータの機械角, 𝐵𝑟は磁石の残留磁束密度, 𝜇𝑟は磁石の透磁 率である。
10 永久磁石の磁束密度とコイル電流の相互作用によって発生するコイルトルク は,ローレンツ力より計算できる。軸方向に流れる電流と半径方向の誘導磁場の みが回転トルクに寄与する。 最大トルクを与えるロータの機械角𝜃を考慮し, 電流が正弦波であると仮定す ると, 1つのコイルのトルク定数𝐾𝑇は次のように円筒座標で評価できる。 𝐾𝑇′ = ∫𝑟𝐵 𝐼𝑟 𝑟, 𝜙 𝑑𝑧 𝑐 (2-3-7) ここで𝑐はコイルの経路である。 コイルは𝑁𝑡巻で構成されているため, 1層のセグメント I のトルク定数への 寄与は, 2 層であることを考慮して次のようになる。 𝐾𝑇𝐼′ = 2𝑟𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑∑ 𝐵𝐼𝑟 𝑟, 𝜙𝑛1 𝑁𝑡 𝑛=1 (2-3-8) ここで𝑟は層の半径である。 1層のセグメント II において, 変数の変えた後のトルク定数への寄与は次の ようになる。 𝐾𝑇𝐼𝐼′ = 2𝑟𝐵0((𝑟𝑚𝑜 𝑟𝑦𝑖) 2 + (𝑟𝑚𝑜 𝑟 ) 2 ) ・∑ sin 𝜙𝑛2− 𝜃 − sin 𝜙𝑛1− 𝜃 Δ𝑍𝑛 Δ𝜙𝑛 𝑁𝑡 𝑛=1 (2-3-9) ここで, Δ𝑍𝑛とΔ𝜙𝑛はそれぞれ Δ𝑍𝑛 = 𝑍𝑛2− 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 (2-3-10) Δ𝜙𝑛 = 𝜙𝑛2− 𝜙𝑛1 (2-3-11) である。
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セグメントIII は周方向に置かれているため, トルク定数には寄与しない。コ イルの全体のトルク定数𝐾𝑇は, 2つのセグメントのトルク定数を足し合わせて
得られる。
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・2-4 スロットレス永久磁石同期モータ
本研究で提案するモータ形状をFig.2-4-1 に示す。ただし, 図は 1 極対分を示 している回転子は表面磁石型で, ステータ鉄心の内側にステータコイルを置く。 コイル部の磁気特性は空気と同じであるので, スロットレスモータのギャッ プ長はギャップ部+コイル部となるため, 磁石トルクは一般に小さくなる。通常 のモータでは, 鉄心が存在する有効な軸方向長の両側の端部にコイルがはみ出 しており, その部分ではトルクは発生しない。それに対して提案するモータでは, スロットレスモータのトルクをなるべく大きくするために, 軸方向の両側のコ イル端部まで磁石及びステータ鉄心を配置する。Fig.2-4-2 は 1 極対 1 相分の六 角形コイルで, 軸に平行な部分は電気角の 180 度ピッチとなっている。このコ イルが1 極あたり 3 相分あり, 重ね巻の構造をしているが, コイルは半径方向に 2 重とし, 3 重にならないように配置する。 Fig.2-4-1 スロットレス永久磁石同期モータ Fig.2-4-2 六角形コイル13
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3. 本論
・3-1 モータの設計概要
モータ設計の概要について説明する。ハルバッハ方向の磁化に対するギャッ プおよびコイル部の磁束密度が次のように与えられている。 𝐵⃗ = 𝜇0𝜇𝑟𝐻⃗⃗ + 𝜇0𝑀⃗⃗ (3-1-1) 𝑀⃗⃗ = 𝑀𝑐𝑜𝑠 𝑝𝜃 𝑒⃗⃗⃗ ∓ 𝑀𝑠𝑖𝑛 𝑝𝜃 𝑒𝑟 ⃗⃗⃗⃗ 𝜃 (3-1-2) ここで𝑝はロータの極対数, 𝑒⃗⃗⃗ と𝑒𝑟 ⃗⃗⃗⃗ はそれぞれ𝑟方向および𝜙方向の単位ベクト𝜙 ルである。1 極対および 3 極対の場合は次のようになる。 Fig.3-1-1 1 極対の場合のハルバッハ磁化 Fig.3-1-2 ハルバッハ磁化(3 極対) Fig.3-1-3 平行磁化(3 極対) ハルバッハ磁化 ・平行磁化と異なる ・𝑟方向磁化において𝐴′ > 𝐴, 𝐵′< 𝐵 45° 45° 平行磁化と同様 𝐴 𝐵 𝐴′ 𝐵′14
・3-2 トルク式とフローチャート
次に, (2-3-5)式よりトルクを求める。 Fig.3-2-1 セグメント I にかかるローレンツ力 𝐼 𝐼𝐼 −2𝜋 3𝑝 2𝜋 3𝑝 𝑓 𝑖 𝜙𝑛1 − 𝜋 𝜙𝑛2 3𝑝 𝜋 3𝑝 𝜙 𝑍𝑛2 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝜙𝑛2’ 𝛼 𝑓 𝑓𝑡 𝛼 𝑟 𝜙𝑛1 𝑟 𝜙𝑛2 𝑐 Fig.3-2-2 セグメント II にかかるローレンツ力15 Fig.3-2-1 よりセグメント I におけるトルク𝑇𝐼は, 𝑇𝐼 = 𝑟 𝑖 ∫𝐵𝐼𝑟𝑑𝑙 𝑐 = 2𝑟 𝑖 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑∑ 𝐵𝐼𝑟 𝑟, 𝜙𝑛1 𝑁𝑡 𝑛=1 cos 𝜙𝑛1− 𝜃 (3-2-1) となり, Fig.3-2-2 よりセグメント II のコイルに作用する力𝑓𝑡は, 𝑓𝑡 = 𝑖 ∫𝐵𝑑𝑙 𝑐 (3-2-2) したがってトルク𝑇𝐼𝐼は 𝑇𝐼𝐼 = 𝑟 𝑓𝑡 𝑎 = 𝑟 𝑖 sin 𝛼 ∫𝐵𝑑𝑙 𝑐 = 𝑟 𝑖 sin 𝛼 ∫ 𝐵 𝑟 cos 𝛼𝑑𝜙 𝑐 = 2 𝑟2𝑖sin 𝛼 cos 𝛼𝐵𝐼𝑟∫ cos 𝜙 − 𝜃 𝑑𝜙 𝜙𝑛2 𝜙𝑛1
= 2 𝑖 𝑟 𝑟 tan 𝛼 𝐵𝐼𝑟∑ sin 𝑝 𝜙𝑛2− 𝜃 − sin 𝑝 𝜙𝑛1− 𝜃 ×
1 𝑝 𝑁𝑡 𝑛=1 (3-2-3) となる。ここで, 𝑟 tan 𝛼 = 𝑟 𝑍𝑛2− 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑟 𝜙𝑛2− 𝜙𝑛1 = Δ𝑍𝑛 Δ𝜙𝑛 (3-2-4) である。
16 セグメント I, II では磁束密度𝐵の向きが逆になるので, トルクは同じ方向と なる。 Fig.3-2-4 に径方向および周方向の巻線断面図を示す。コイル銅線の半径を𝜙𝑐𝑜𝑖𝑙 とすると, それぞれの巻数𝑁𝑟と𝑁𝜙は 𝑁𝑟 =𝑟𝑐𝑜− 𝑟𝑐𝑖 2𝜙𝑐𝑜𝑖𝑙 (3-2-5) 𝑁𝜙= 𝑟𝑐𝑖× 2𝜋 6𝑝 𝜙𝑐𝑜𝑖𝑙 (3-2-6) となる。したがって全コイル数を𝑁として, 𝑁 = 2𝑝 𝑁𝑟 𝑁𝜙 (3-2-7) が得られる 𝑟𝑐𝑖 𝑟𝑐𝑜 𝐼 𝑖 𝑓 𝑓 𝑓 𝑓 ′ ′ 𝐼 𝐼 𝐼𝐼 𝐼𝐼 Fig.3-2-3 領域 I, II に働くローレンツ力 Fig.3-2-4 径方向および周方向の巻線
17 𝑁 = 24巻に対応した𝜙𝑛1について, セグメントI,II に𝑁 = 24巻を挿入する。巻数に応じた𝜙𝑛1は次のようになる 𝑁𝑡 = 24巻, 𝛽 = 60 = 𝜋/3なので 𝜙𝑛1= 49𝜋/144, 51𝜋/144, 53𝜋/144, … … … 95𝜋/144
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18 コイルの幅について, Fig.2-3-2 ではコイル大きさは セグメントI > セグメント II > セグメント IIIとしていたが, 実際のコイル幅は 一様である(Fig3-2-6)。したがって 3 相分がオーバーラップしないよう考慮す る必要がある。このとき, セグメント III の軸方向に流れる電流成分は, トルク に寄与しない(ほぼ0)であると考えて無視し, 𝐿1 > 𝐿2 = 𝐿3 として𝐿1の占積率 を小さくする(Fig.3-2-7)。 𝐿1 𝐿2 𝐿3 Fig.3-2-5 理論上のスロットレスコイル(𝐿1> 𝐿2> 𝐿3) Fig.3-2-6 実際のスロットレスコイル(𝐿1= 𝐿2= 𝐿3) 𝐿1 𝐿2 𝐿3 Fig.3-2-7 占積率を小さくしたスロットレスコイル(𝐿1> 𝐿2= 𝐿3) 𝐿 𝐿 𝐿
19 セグメントII おけるコイル幅(挿入できる幅の上限)を考慮し, 半径方向 および周方向のコイル巻数を数式化する。開き角は𝛽 = 𝛾 = 60° としている コイル巻数, 周方向(𝜙)には𝑛 = 1 … 𝑁𝑝まで挿入すると仮定し, このときの 𝜙n1, 𝜙n2, 𝑍𝑛2, 𝜙n1′, 𝜙n2′は次のようになる。 𝜙𝑛1= −𝜋 2− 𝛽 2+ 𝑛 − 0.5 𝛽 𝑁𝜙 → − 2𝜋 3𝑝+ 𝑛 − 0.5 𝑁𝜙 𝜋 3𝑝 (3-2-8) 𝜙𝑛2= −𝛾 2+ 𝑛 − 0.5 1 𝑁𝜙 𝛾 2→ − 𝜋 6𝑝+ 𝑛 − 0.5 𝑁𝜙 𝜋 6𝑝 (3-2-9) 𝑍𝑛2 → 𝑍𝑜− 𝑍𝑜− 𝑍𝑖 𝑛 − 0.5 𝑁𝜙 (3-2-10) 𝜙𝑛1′ → 2𝜋 3𝑝− 𝑛 − 0.5 𝑁𝜙 𝜋 3𝑝 (3-2-11) 𝜙𝑛2′ = 𝜋 6𝑝− 𝑛 − 0.5 𝑁𝜙 𝜋 6𝑝 (3-2-12) また, 半径方向(𝑟)には𝑚 = 1 … 𝑁𝑟まで挿入すると仮定し, このときの𝑟𝑚, 𝑟𝑚1, 𝑟𝑚1′ は次のようになる。 𝑟𝑚 = 𝑟𝑐𝑖+ 𝑛 − 0.5 𝑁𝑟 𝑟𝑐𝑜− 𝑟𝑐𝑖 (3-2-13) 𝑟𝑚1 = 𝑟𝑐𝑜− 𝑟𝑐𝑖 2 + 𝑚 − 0.5 𝑁𝑟 𝑟𝑐𝑜− 𝑟𝑐𝑜+ 𝑟𝑐𝑖 2 (3-2-14) 𝑟𝑚1′ = 𝑟𝑐𝑖+ 𝑚 − 0.5 𝑁𝑟 𝑟𝑐𝑜+ 𝑟𝑐𝑖 2 − 𝑟𝑐𝑖 (3-2-15)
20 電流は三相電流とし, 正弦波および矩形波で平均トルク及びトルクリプルを 求める。 Fig.3-2-9 三相矩形波電流 𝑖𝑢 𝑖𝑣 𝑖𝑤 Fig.3-2-8 三相正弦波電流 𝑈 𝑉 𝑊 𝜋 𝑝 2𝜋 𝑝
21 U, V W 相で三相電流を印加し, トルクを求める。 Fig.3-2-10 スロットレスモータ U-V-W 相
𝑈
𝑈
𝑉
𝑉
𝑊
𝑊
22 磁石位置と流す電流について, トルクをなるべく大きくするために, 磁石の 中心がある場所で電流が流れるようにしている。 Fig.3-2-11 最大トルクのときの電流位相と磁石位置 巻線上の層 巻線下の層 𝑖𝑢 𝑖v 𝑖w 𝑈 𝑈 𝑈′ 𝑈′ 𝑉 𝑉 𝑉′ 𝑉′ 𝑊 𝑊 𝑊′ 𝑊′ 𝜃
23 中心位置𝜃と電流位相の対応を以下に示す。 Fig.3-2-12 磁石の中心位置と流れる電流位相 磁石の中心位置𝜃 流れる電流 −5π 6p ~ − 3π 6p −3π 6p ~ − π 6p −π 6p~ π 6p π 6p~ 3π 6p 3π 6p ~ − 5π 6p 5π 6p ~ 7π 6p 7π 6p ~ 9π 6p
𝑖
𝑢−𝑖
v𝑖
w−𝑖
w−𝑖
v𝑖
𝑢𝑖
𝑢𝑖
w−𝑖
w−𝑖
v−𝑖
v−𝑖
𝑢−𝑖
𝑢−𝑖
v24 トルク算出のフローチャートをFig.3-2-13 に示す。 Fig.3-2-13 数式モデルのフローチャート START END 定数決定 𝑁𝑟, 𝑁𝜙, 𝑁 𝑖 = 0, 𝜃 = 0 𝑖𝑢 𝑖𝑣 𝑖𝑤 𝑠𝑢𝑚 = 0 𝑈, 𝑉, 𝑊相 𝑛 = 1 𝑚 = 1 𝑖 = 𝑖 + 1 𝜃 = 𝜃 + 1 𝑗 = 𝑗 + 1 𝑛 = 𝑛 + 1 <=𝑁𝜙 𝑚 = 𝑚 + 1 <=𝑁𝑟 𝜙𝑛1, 𝜙𝑛2 𝜙𝑛2’, 𝜙𝑛2′ 𝑍𝑛1 𝐵𝐼𝑟 𝑇𝐼 𝑇𝐼𝐼 𝑠𝑢𝑚 = 𝑠𝑢𝑚 + 𝑇𝐼+ 𝑇𝐼𝐼
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フローチャートよりトルクを算出するプログラムを作成し, 各パラメータ(ステ ータ長𝐿𝑠, 磁石外径𝑟𝑚𝑜, コイル𝑟𝑐𝑖, 𝑟𝑐𝑜, ヨーク外径𝑟𝑦𝑜, 軸方向の銅線長𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑, 極
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スロットレスコイルをFig.3-2-14, Fig.3-2-15 に, モータの概観を Fig.3-2-16 示す。極対数3, コイルは 18 スロット分としており, コイル幅はセグメント I = セグメントIII > セグメント IIになっている。磁石厚さ, コイル半径, ステータ 長さを変えて検討を行う。 Fig.3-2-14 スロットレスコイル Fig.3-2-15 スロットレスコイル(概観) (a) 1 層 (b) 2 層
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・
4. 解析
・4-1 数式モデルによる解析
数式モデルを用いて, 軸に平行なコイル部(セグメント I)と軸に対して斜め なコイル部(セグメントII)のトルクをそれぞれ求め, 平均トルクを算出するプ ログラムを作成した。プログラムより, 各パラメータ𝐿𝑠, 𝑟𝑚𝑜, 𝑟𝑐𝑖, 𝑟𝑐𝑜, 𝑟𝑦𝑜, 𝑝を 変え, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑を0~8mm まで変えたときの平均トルクとトルクリプルを求めた 𝐿𝑠 = 52.00mm, 𝑟𝑚𝑜 = 29.00mm, 𝑟𝑐𝑖 = 30.00mm, 𝑟𝑐𝑜 = 36.00mm, 𝑟𝑦𝑜 = 40mm, 𝑝 = 3, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 16.00mm のときシミュレョン結果を次項に示す。 ただし, 電流はそれぞれ正弦波 60A, 矩形波 80A としている。29 ① 正弦波電流 60A Fig.4-1-1 回転角に対する平均トルク解析結果(正弦波 60A) 平均トルク : 3.091 [Nm] トルクリプル : 0 [Nm] Fig.4-1-2 三相電流(正弦波) 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 3.500 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
-100 -50 0 50 100 -40 -20 0 20 40 60 80 電流 [A] 回転角[deg.]三相正弦波電流
U相 V相 W相30 ② 矩形波電流 80A Fig.4-1-3 回転角に対する平均トルク解析結果(矩形波 80A) 最大トルク : 3.366 [Nm] 最小トルク : 2.892 [Nm] 平均トルク : 3.214 [Nm] トルクリプル : 0.148 ※ トルクリプル =トルク平均トルクpeak to peak= 3.366−2.8923.214 = 0.148 Fig.4-1-4 三相電流(矩形波) 2.800 2.900 3.000 3.100 3.200 3.300 3.400 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m ] 回転角[deg.]
回転角に対するトルク
-100 -50 0 50 100 -40 -20 0 20 40 60 80 電流 [A] 回転角[deg.]三相矩形波
U相 V相 W相31 同様に, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑を0~8(0~16)まで変えたときのシミュレーション結果を示す 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 0 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 1 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 2 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 3 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 4 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 5 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 6 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 7 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑= 8 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑
32 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 7𝑚𝑚 Fig.4-1-5 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 7𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波印加) 平均トルク : 3.025 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-6 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 7𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波印加) 最大トルク : 3.293 [Nm] 最小トルク : 2.827 [Nm] 平均トルク : 3.144 [Nm] トルクリプル : 0.148 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 3.500 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.800 2.900 3.000 3.100 3.200 3.300 3.400 -40 10 60 110 160 210 260 310 360 トルク [N m] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
33 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 6𝑚𝑚 Fig.4-1-7 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 6𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波印加) 平均トルク : 2.957 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-8 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 6𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波印加) 最大トルク : 3.220 [Nm] 最小トルク : 2.762 [Nm] 平均トルク : 3.074 [Nm] トルクリプル : 0.149 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 3.500 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.700 2.800 2.900 3.000 3.100 3.200 3.300 -40 10 60 110 160 210 260 310 360 トルク [N m] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
34 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 5𝑚𝑚 Fig.4-1-9 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 5𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波印加) 平均トルク : 2.890 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-10 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 5𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波印加) 最大トルク : 3.147 [Nm] 最小トルク : 2.697 [Nm] 平均トルク : 3.004 [Nm] トルクリプル : 0.150 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 3.500 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.650 2.700 2.750 2.800 2.850 2.900 2.950 3.000 3.050 3.100 3.150 3.200 -40 10 60 110 160 210 260 310 360 トルク [Nm] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
35 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 4𝑚𝑚 Fig.4-1-11 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 4𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波印加) 平均トルク : 2.823 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-12 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 4𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波印加) 最大トルク : 3.074 [Nm] 最小トルク : 2.632 [Nm] 平均トルク : 2.934 [Nm] トルクリプル : 0.151 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.600 2.650 2.700 2.750 2.800 2.850 2.900 2.950 3.000 3.050 3.100 -40 10 60 110 160 210 260 310 360 トルク [N m] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
36 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 3 Fig.4-1-13 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 3𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波印加) 平均トルク : 2.756 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-14 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 3𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波印加) 最大トルク : 3.001 [Nm] 最小トルク : 2.567 [Nm] 平均トルク : 2.864 [Nm] トルクリプル : 0.151 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.500 2.550 2.600 2.650 2.700 2.750 2.800 2.850 2.900 2.950 3.000 3.050 0 50 100 150 200 250 300 350 400 トルク [N m ] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
37 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 2𝑚𝑚 Fig.4-1-15 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 2𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波印加) 平均トルク : 2.689 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-16 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 2𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波電圧印加) 最大トルク : 2.928 [Nm] 最小トルク : 2.502 [Nm] 平均トルク : 2.794 [Nm] トルクリプル : 0.152 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.450 2.500 2.550 2.600 2.650 2.700 2.750 2.800 2.850 2.900 2.950 -40 10 60 110 160 210 260 310 360 トルク [N m] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
38 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 1𝑚𝑚 Fig.4-1-17 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 1𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波電圧) 平均トルク : 2.621 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-18 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 1𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波電圧) 最大トルク : 2.855 [Nm] 最小トルク : 2.437 [Nm] 平均トルク : 2.724 [Nm] トルクリプル : 0.153 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.400 2.450 2.500 2.550 2.600 2.650 2.700 2.750 2.800 2.850 2.900 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m ] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
39 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 0𝑚𝑚 Fig.4-1-19 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 0𝑚𝑚のときのトルク波形(正弦波印加) 平均トルク : 2.554 [Nm] トルクリプル : 0 Fig.4-1-20 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 0𝑚𝑚のときのトルク波形(矩形波印加) 最大トルク : 2.781 [Nm] 最小トルク : 2.372 [Nm] 平均トルク : 2.655 [Nm] トルクリプル : 0.154 0.000 0.500 1.000 1.500 2.000 2.500 3.000 0 50 100 150 200 250 300 350 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対する平均トルク
2.350 2.400 2.450 2.500 2.550 2.600 2.650 2.700 2.750 2.800 2.850 -40 10 60 110 160 210 260 310 360 トルク [N m ] 回転角[deg.]回転角に対するトルク
40 数式モデルとシミュレーションモデルの解析結果をFig4-3-21 に示す Fig.4-1-21 シミュレーションモデルと数式モデルの解析結果 数式による解析結果は平均トルク3.092[Nm], トルクリプルは 0 であり, 3 次元有限要素法を用いたシミュレーション結果では, 平均トルク 2.908[Nm], トルクリプルは0.009 であった。平均トルクについては数式による解析が 6.3% 大きい結果となった。これは鉄心の透磁率を∞にしているためと考えられる。 2.5 2.6 2.7 2.8 2.9 3 3.1 3.2 0 10 20 30 40 50 60 トルク [N m] 回転角[deg.]
回転角に対するトルク, 比較
シミュレーション 数式モデル 数式モデル, 平均トルク=3.092, リプル=0 シミュレーション, 平均トルク=2.908, リプル=0.00941 各寸法に対する平均トルクと以下に示す。 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑖 = 30.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑜 = 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑦𝑖= 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 𝑟𝑚𝑜 [𝑚𝑚] 平均トルク[Nm] 25.00 1.70 26.00 1.99 27.00 2.32 28.00 3.68 29.00 3.09 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑚𝑜 = 25.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑜 = 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑦𝑖= 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 𝑟𝑐𝑖 [𝑚𝑚] 平均トルク[Nm] 26.00 1.85 27.00 1.81 28.00 1.76 29.00 1.73 30.00 1.70 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑚𝑜 = 25.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑖 = 26.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑦𝑖 = 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 𝑟𝑐𝑜 [𝑚𝑚] 平均トルク[Nm] 32.00 2.01 33.00 1.96 34.00 1.92 35.00 1.89 36.00 1.85 𝑟𝑚𝑜、𝑟𝑐𝑖 、𝑟𝑐𝑜を変えた場合、平均トルクは磁石の厚さ、コイル外径、コイル面積 の順に影響することが確認できた。
42 磁石-コイル半径を変えたときの平均トルク 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑚𝑜 = 26.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑖 = 27.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑦𝑖 = 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 𝑟𝑐𝑜 [𝑚𝑚] 平均トルク[Nm] 33.00 2.23 34.00 2.18 35.00 2.15 36.00 2.11 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑚𝑜 = 27.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑖 = 28.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑦𝑖 = 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 𝑟𝑐𝑜 [𝑚𝑚] 平均トルク[Nm] 34.00 2.47 35.00 2.44 36.00 2.40 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑚𝑜 = 28.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑖 = 29.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑦𝑖 = 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 𝑟𝑐𝑜 [𝑚𝑚] 平均トルク 35.00 2.76 36.00 2.73 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑚𝑜 = 28.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑐𝑖 = 29.00 [𝑚𝑚] , 𝑟𝑦𝑖 = 36.00 [𝑚𝑚] , 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 𝑟𝑐𝑜 [𝑚𝑚] 平均トルク[Nm] 36.00 3.09 トルクは磁石面積とコイル面積に比例していることが確認できる。
43 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑚𝑜 = 30.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑐𝑖 = 31.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑐𝑜 = 37.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑦𝑖 = 37.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑦𝑜= 40.00, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 →平均トルク : 3.26 [Nm] 𝐿𝑠 = 52.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑚𝑜 = 31.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑐𝑖 = 32.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑐𝑜 = 38.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑦𝑖 = 37.00 [𝑚𝑚], 𝑟𝑦𝑜= 40.00, 𝑍𝑏𝑒𝑛𝑑 = 8.00 [𝑚𝑚], 𝑝𝑜𝑙𝑒 = 3 →平均トルク : 3.42 [Nm]
44
・
5 結論
・5-1 まとめ
EPS 用モータとして高効率・高出力の永久磁石同期モータの欠点でもあるト ルクリプルの低減を目的として, 原理的にコギングトルクがないスロットレス 構造のモータのトルクを求める数式モデルによる最適化の検討を行った。数式 モデルによる平均トルクは, シミュレーションモデルのものと比較し, 6.3%高 い結果となり, 鉄心の透磁率を考慮するとほぼ妥当な値を示した。またスロット レス(巻線コイルを用いた)としたことで, スロット付モータと比較してトルク リプルの低減を達成することができた。45
・5-2 今後の課題
理論上スロットレスコイルの幅の大きさは, セグメント I > セグメント II > セグメント II となっているが, 実際は全て等しい大きさ・幅になる。したがっ てコイルをエアギャップに挿入するときにオーバーラップしないよう配慮する 必要があるため, 巻数や形状が制限されてしまう。今後は, コイルだけではなく 回転子も含めたモータ全体の形状を考慮し, モデルの最適化を行っていく。・謝辞
本研究を進めるにあたり, 終始熱意あるご指導, ご鞭撻いただきました群馬大 学理工学府 電子情報部門 石川 赳赴 教授に心から感謝と御礼を申し上げます。 また, 研究に関して様々な協力や激励を頂きました石川研究室の皆様に深く感 謝いたします。
・参考文献
[1] Z. P. Xia, Z. Q. Zhu, and D. Howe ;”Analytical Magnetic Field Analysis of Halbach Magnetized Permanent-Magnet Machine”, IEEE TRANS
MAGNETICS vol.40 No.4 (2004)
[2] Guillanme Burnand, Douglas Martins Araujo and Yves Perriard, “Optimization of shape and topology for slotless winding in BLDC machine”, 2018 21st International Conference on Electrical Machines and Systems
(ICEMS) October 7-10, (2018) [3] 日本精工株式会社 コラム EPS 高出力化に向けたモータドライブシステム 技術 [4] 日本精工株式会社 EPS モータ仕様の概要