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東アジア統合プロセスの特徴とオーストラリアの関与 (特集 国際シンポジウム 東アジア地域統合と日本 -- 国家・市場・人の移動)

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Academic year: 2021

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(1)

東アジア統合プロセスの特徴とオーストラリアの関

与 (特集 国際シンポジウム 東アジア地域統合と日

本 -- 国家・市場・人の移動)

著者

岡本 次郎

権利

Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア

経済研究所 / Institute of Developing

Economies, Japan External Trade Organization

(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp

雑誌名

アジ研ワールド・トレンド

164

ページ

16-17

発行年

2009-05

出版者

日本貿易振興機構アジア経済研究所

URL

http://hdl.handle.net/2344/00004757

(2)

アジ研ワールド・トレンド No.64(2009. 5)― 6   ま ず 現 在 進 行 中 の 東 ア ジ ア 統 合 、 協 力 プ ロ セ ス の 特 徴 を 示 し 、 そ の 特 徴 を 生 み 出 し て い る 要 因 を 考 察 す る 。 そ し て 過 去 二 〇 年 ほ ど の オ ー ス ト ラ リ ア の ア ジ ア 関 与 政 策 の 変 遷 を 通 し て 、 統 合 プ ロ セ ス の 本 質 を 説 明 し た い 。 東 ア ジ ア へ の 帰 属 が 微 妙 な オ ー ス ト ラ リ ア の ア ジ ア 関 与 政 策 は 、 世 紀 の 変 わ り 目 を 境 に 大 き な 変 化 を 遂 げ た 。 変 化 前 と 後 の 政 策 意 図 と そ の 成 果 を 比 較 検 討 す る こ と で 、 東 ア ジ ア 統 合 プ ロ セ ス の 本 質 を 浮 き 彫 り に で き る と 考 え て い る 。

  特 徴 の 第 一 は 、 統 合 、 協 力 が 分 野 別 ・ 機 能 別 に 行 わ れ て い る こ と で あ る 。 例 え ば 、 こ の 一 〇 年 ほ ど の 間 に 東 ア ジ ア 域 内 外 に 自 由 貿 易 協 定 ( F T A ) が 張 り め ぐ ら さ れ た 。 F T A は 典 型 的 な 機 能 別 統 合 で あ る 。 一 方 、 A S E A N 地 域 フ ォ ー ラ ム ( A R F ) な ど は 安 全 保 障 協 力 を 主 な 目 的 と し て 設 立 さ れ て い る 。 二 番 目 の 特 徴 と し て 、 同 じ 分 野 の 統 合 、 協 力 に お い て も 二 国 間 と 多 国 間 の 両 プ ロ セ ス が 併 存 し て い る こ と が あ る 。 A S E A N 加 盟 国 が 個 々 に F T A を 追 求 す る と 同 時 に 、 A S E A N 全 体 と し て も F T A を 締 結 し て い る こ と は 好 例 で あ る 。 東 ア ジ ア 地 域 の 安 全 保 障 枠 組 み は ア メ リ カ を ハ ブ と す る 二 国 間 協 定 の ネ ッ ト ワ ー ク を 基 本 と し て い る が 、 先 述 し た A R F の よ う な 多 国 間 枠 組 み も 役 割 を 変 え て 存 在 す る 。 三 番 目 の 特 徴 は 、 東 ア ジ ア 統 合 、 協 力 プ ロ セ ス に は 一 般 に 域 外 国 と 想 定 さ れ る 国 々 が 多 く 参 加 し て い る こ と で あ る 。 経 済 分 野 、 政 治 ・ 安 全 保 障 分 野 と も ア メ リ カ 、 E U 、 オ ー ス ト ラ リ ア 、 イ ン ド な ど が 例 外 と い う よ り は 通 例 と し て 参 加 し て い る 。   な ぜ 東 ア ジ ア 統 合 、 協 力 プ ロ セ ス は こ の よ う な 特 徴 を 示 す の だ ろ う か 。 そ の 要 因 は 三 つ ほ ど 考 え ら れ る 。 一 つ は 、 東 ア ジ ア 諸 国 は 同 プ ロ セ ス に 比 較 的 短 期 で 実 際 的 な 政 治 的 ・ 経 済 的 利 益 を 求 め て い る こ と で あ る 。 二 つ 目 は 、 実 際 的 な 利 益 を 追 求 す る に 際 し て 、 東 ア ジ ア 諸 国 は 協 力 を 行 う 場 と し て 特 定 の 地 理 的 範 囲 に 縛 ら れ て い な い こ と で あ る 。 三 つ 目 は 、 東 ア ジ ア 諸 国 は 統 合 、 協 力 プ ロ セ ス で 特 定 の 国 の 影 響 力 が 突 出 し な い よ う バ ラ ン ス に 配 慮 し つ つ 、 同 プ ロ セ ス に 自 ら の 選 好 も 反 映 さ せ よ う と し て い る こ と で あ る 。

  一 九 九 〇 年 代 末 ま で の オ ー ス ト ラ リ ア の ア ジ ア 関 与 政 策 に は い く つ か の 重 要 な 背 景 が あ っ た 。 一 つ は 、 一 九 八 〇 年 代 の 半 ば 以 降 オ ー ス ト ラ リ ア は 自 由 化 、 規 制 緩 和 の 導 入 に よ る 経 済 構 造 改 革 を 進 め て い た こ と 、 二 つ 目 は 、 東 ア ジ ア 諸 国 が 後 に 「 東 ア ジ ア の 奇 跡 」 と 呼 ば れ る 高 度 経 済 成 長 期 に あ っ た こ と 、 三 つ 目 は 、 当 時 の オ ー ス ト ラ リ ア の 政 治 指 導 者 た ち が 非 常 に リ ベ ラ ル な 思 考 を 持 っ て い た こ と で あ る 。 こ の よ う な 背 景 か ら 、 一 九 九 〇 年 代 の オ ー ス ト ラ リ ア の 対 外 政 策 で は 多 国 間 ア プ ロ ー チ が 顕 著 に な る 。 ア ジ ア に 対 し て は 包 括 的 関 与 を 宣 言 し 、 特 に 一 九 九 〇 年 代 前 半 に は 経 済 の み な ら ず 、 政 治 、 社 会 、 文 化 の す べ て の 面 で 東 ア ジ ア と の 一 体 化 が 追 求 さ れ る よ う に な っ た 。   こ の 時 期 の ア ジ ア 関 与 政 策 の 成 果 と し て は A P E C の 創 設 が あ げ ら れ る 。 安 全 保 障 の 分 野 で は 、 カ ン ボ ジ ア 問 題 解 決 や A R F 設 立 の 初 期 段 階 で オ ー ス ト ラ リ ア の 果 た し

岡本次郎

国際シンポジウム

東アジア地域統合と日本

―国家・市場・人の移動

(3)

 ―アジ研ワールド・トレンド No.64(2009. 5) た 役 割 は 大 き か っ た 。 一 方 で 、 オ ー ス ト ラ リ ア は E A E G / C ( 東 ア ジ ア 経 済 グ ル ー プ / 協 議 体 ) の 潜 在 的 メ ン バ ー か ら は 除 外 さ れ る 。 ま た ア ジ ア へ の 包 括 的 関 与 と い う 意 思 と 期 待 と は 必 ず し も 一 致 し な い A F T A プ ロ セ ス も 開 始 さ れ た 。 包 括 的 な ア ジ ア 関 与 政 策 は 東 ア ジ ア 、 特 に A S E A N に 必 ず し も 十 分 に は 受 け 入 れ ら れ な か っ た 。

  オ ー ス ト ラ リ ア の ア ジ ア 関 与 政 策 が 世 紀 の 変 わ り 目 に 変 化 し た 背 景 に は 、 一 〇 年 以 上 続 く 経 済 構 造 改 革 政 策 へ の 疲 弊 感 が 国 民 ( 特 に 地 方 の 中 間 層 ) に 蓄 積 さ れ て い た こ と 、「 オ ー ス ト ラ リ ア の ア ジ ア 化 」 路 線 へ の 不 安 感 、 不 快 感 が 高 ま っ て い た こ と が あ り 、 こ れ を 受 け て 一 九 九 六 年 の 総 選 挙 に 勝 利 し た ハ ワ ー ド 政 権 の 指 導 者 た ち が 、 よ り 現 実 主 義 的 な 考 え 方 で 政 策 に あ た っ た こ と が あ る 。 こ れ は 、 国 家 間 関 係 を 最 重 要 視 し 、 国 際 組 織 や 多 国 間 枠 組 み に は 重 き を 置 か ず 、 二 国 間 関 係 を 構 築 す る 際 に は 利 益 の 共 有 と 相 互 の 尊 重 を 基 礎 と す る 考 え 方 だ っ た 。 当 然 、 ハ ワ ー ド 政 権 の ア ジ ア 関 与 は 二 国 間 ア プ ロ ー チ を 中 心 と す る よ う に な り 、 お 互 い の 相 違 を 前 提 と し つ つ 、 具 体 的 な 相 互 利 益 を 求 め る 方 向 に 変 化 す る 。   ハ ワ ー ド 政 権 の 二 国 間 ア プ ロ ー チ は 、 東 ア ジ ア 諸 国 と の F T A 締 結 と い う 成 果 を 生 ん だ 。 安 全 保 障 分 野 で は 、 A S E A N 原 加 盟 五 カ 国 す べ て と 二 国 間 対 テ ロ 協 力 覚 書 に 調 印 し て い る 。 二 国 間 ア プ ロ ー チ が 「 二 国 間 成 果 」 を 生 む の は あ る 意 味 当 然 だ が 、 当 初 の 想 定 外 と 思 わ れ る 成 果 が 現 れ て い る こ と は 注 目 さ れ る 。 そ れ は 、 一 つ は A S E A N 全 体 と の F T A ( 二 〇 〇 九 年 二 月 署 名 ) で あ り 、 も う 一 つ は 二 〇 〇 五 年 に 始 ま っ た 東 ア ジ ア サ ミ ッ ト へ の 当 初 か ら の 参 加 で あ る 。 一 九 九 〇 年 代 末 ま で の 多 国 間 ア プ ロ ー チ で は 達 成 で き な か っ た 「 多 国 間 成 果 」 を 、 二 国 間 ア プ ロ ー チ を 進 め る こ と で 獲 得 し た と い う 意 味 で 、 逆 説 的 な 状 況 が 生 じ て い る 。

  オ ー ス ト ラ リ ア の 二 国 間 ア プ ロ ー チ 成 功 の 要 因 と し て は 、 そ れ に 対 応 す る 側 の 東 ア ジ ア 諸 国 の 事 情 も 考 慮 に 入 れ る 必 要 が あ る 。 ま ず ア ジ ア 通 貨 危 機 の 影 響 が 大 き か っ た 。 通 貨 危 機 の 打 撃 を 受 け た 国 々 が 得 た 教 訓 は 、 安 定 し た 経 済 運 営 を 行 う た め に は 政 治 経 済 ガ バ ナ ン ス の 質 を 向 上 さ せ 、 市 場 の 信 任 を 得 な け れ ば な ら な い と い う こ と だ っ た 。 ま た 九 ・ 一 一 テ ロ 事 件 の 後 、 東 南 ア ジ ア 地 域 が 国 際 テ ロ リ ス ト の 活 動 拠 点 の 一 つ と 見 ら れ た こ と も 、 政 治 経 済 ガ バ ナ ン ス の 質 を 高 め て 世 界 に ア ピ ー ル す る こ と の 重 要 性 を 高 め た 。 ガ バ ナ ン ス 向 上 の 手 段 を 域 内 協 力 に 限 定 す る 必 要 は な く 、 A S E A N 諸 国 は オ ー ス ト ラ リ ア と の 協 力 を そ の 一 助 に し た 。   オ ー ス ト ラ リ ア が 東 ア ジ ア サ ミ ッ ト に 招 か れ た の は 、 同 国 が 東 ア ジ ア に と っ て 重 要 だ か ら と い う こ と だ け が 理 由 で は な い 。 東 ア ジ ア サ ミ ッ ト へ の 参 加 国 を A S E A N + 3 に し た い グ ル ー プ と A S E A N + 6 に し た い グ ル ー プ が 存 在 し 、 両 グ ル ー プ 間 の 妥 協 の 結 果 と し て オ ー ス ト ラ リ ア 、 ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド 、 イ ン ド が 同 サ ミ ッ ト に 招 か れ 、 ア メ リ カ 、 ロ シ ア は 招 か れ な か っ た 。   ま た A S E A N が オ ー ス ト ラ リ ア と F T A を 締 結 し た の も 、 東 ア ジ ア 統 合 プ ロ セ ス で の 「 周 辺 化 」 を 避 け た い A S E A N の 思 惑 か ら も 理 解 す る 必 要 が あ る 。 A S E A N は 中 国 、 韓 国 、 日 本 と い う 域 内 諸 国 に 加 え 、 イ ン ド 、 E U と の F T A も 追 求 し 、 そ の 存 在 意 義 の 確 保 に 腐 心 し て い る 。

  東 ア ジ ア 統 合 は 少 な く と も 当 面 の 間 は 実 際 的 、 具 体 的 な 利 益 の 確 保 を 追 求 す る プ ロ セ ス の 積 み 重 ね に な る だ ろ う 。 何 ら か の グ ラ ン ド ・ デ ザ イ ン を 描 き 、そ の 実 現 に 向 か っ て い く と い う プ ロ セ ス は 東 ア ジ ア 全 体 で は 考 え に く い 。 ま た 、 東 ア ジ ア 諸 国 の 政 策 選 好 は 必 ず し も 一 様 で な い た め 、 似 た よ う な 分 野 で 似 た よ う な 機 能 を 持 つ 協 力 枠 組 み が 併 存 す る 状 況 も 続 く と 思 わ れ る 。 さ ら に は 、 そ の よ う な 協 力 枠 組 み へ の 域 外 国 の 参 加 も 、 具 体 的 な 相 互 利 益 が 存 在 す る 限 り 拒 否 さ れ る こ と は な い だ ろ う 。 ( お か も と  じ ろ う / 前 ア ジ ア 経 済 研 究 所 新 領 域 研 究 セ ン タ ー )

国際シンポジウム

東アジア地域統合と日本

―国家・市場・人の移動 岡本次郎 氏

参照

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