長江デルタの産業集積 (特集 中国の都市と産業集
積 -- 長江デルタで何が起きているか)
著者
日置 史郎
権利
Copyrights 日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア
経済研究所 / Institute of Developing
Economies, Japan External Trade Organization
(IDE-JETRO) http://www.ide.go.jp
雑誌名
アジ研ワールド・トレンド
巻
197
ページ
12-15
発行年
2012-02
出版者
日本貿易振興機構アジア経済研究所
URL
http://hdl.handle.net/2344/00004058
以後 、 中 国 の 沿海地域 に 、国 内外市場 で 大 き な シ ェ 業 集 積 が数 多 く 生まれ ﹁ 世 界の 工場 ﹂ と し て 台 頭 国 の モ ノ 作 り の 礎の 一 つ は 、 産 業 集 積 に あ る 。 の 産 業 集 積 に 関し て は 、 す 大 な 量 の 先 行 研 究 が 存 在 し 。 管 見 す る とこ ろ 、 そ れ ら 研 究 の 多 く は 、 フ ィ ール ド 各 種 文 献 資 料 な ど を 組 み る こ と に よ っ て 、 産 業 集 積 プ ロ セ ス 、 産 業 の歴 史 的 淵 商人ネ ッ ト ワ ー ク の よ う 、 集積形成 に お け る の 役 割 、 そ の 他産業集積 態 等 を 明 ら か にする こ と を 、 ど ち ら か と い え ば 記述的 ・ の 強 い も の が 多 か っ た 。 信 頼出来 る 統計 デ ー タ の 欠 、 産 業 集 積 を めぐる 各 種 的 分 析 は質 量とも に 発 展 の 余地 を 残 し て い る 。 この 点 に 鑑 み て 、 本 科 研 に お い ては 、 基 礎 的 な 定 量 研 究 と そ の 準 備作業 に 専念 す る こ と に し た 。 以 下、 一 連 の 研 究 と そ こ か ら 得 ら れ た知 見に つ い て述べ る 。
●
どこにどのような集積があ
るか
まず 、 長 江 デ ル タ の ど こ に ど の ような産 業 集 積 が あ る の か を 明 ら か にする必 要 があると 考 え 、 産 業 集積 の マ ッ ピ ン グ に 着 手 し た 。 こ うし た基 礎 作 業 が 定 量 的 実 証 研 究 には 不 可 欠 だ か ら で あ る 。 例 え ば 、 産業集積 と 生 産性 や 経 済成長 と の 関連性を 計量 的 に 分析 し よ う と す る場 合 、 あら か じ めど こ に ど の よ うな産 業 集 積 が あ る の かが か な り 細か く特 定さ れ て い な けれ ば な ら ない 。 産 業 集 積 か ら 周 辺 地 域 へ の スピ ルオーバ ーを 計 測 するよう な 場合 も 同 様 で あ る 。 集積地 図 の 作 成 は 、 筆 者 の ほ か に、 藤 井 大 輔 ︵ 神 戸 大 学 ︶、 橋 口 善 浩 ︵ ア ジ ア 経 済研究所︶ 、星 野真 ︵ 北 海道大学︶ 、 伊藤亜 聖 ︵慶応大学︶ が行 っ た 。 具 体 的 に は 、 ミ シガ ン 大学 ・ チ ャ イ ナデ ー タ セ ー タ ー が リ リ ースして いる 地 理 参 照 つきの 第一 回 経 済 セ ン サ ス ︵ 二 〇 〇 四 年 ︶ デ ー タ を 用 い て 、 製造業 ︵中 国標 準産業分類 の 三 桁 業種 一 三 一 か ら 四三 二 ︶ に つ い て 集 積 地 図 を 作 成 した ︵ 参 考 文 献 ① ︶。 中 国 の産 業 集 積の マ ッ ピ ン グに つ い ては 、 我 が 国では 、 丸 川 知 雄 氏の浙 江 省 温 州 市に関 す る研 究 を も っ て 嚆 矢 と す るが ︵ 参 考 文 献 ② ︶、 我々 の 研 究に おいて は 、① 対 象 地 域 を 江 蘇 省 ・ 浙江省 ・ 上 海 市 へ と 広 げ た 点 、 ② 最も細か い 郵 便 番 号 地 区 ︵ 概ね郷 鎮・ 街 道 レ ベ ル に 相 当 ︶ を 空 間 単 位と し て い る た め 、 一 つ の 市や県 の中で の 産 業 集 積 の詳 細 な 分 布 を 知る こ と が出 来る点 、 ③ 集 積 の 識 別に お い て 、 分 析 対 象 地 域 と そ の 周辺 地域と の 間 の 企業 立地数 に お け る 相 関 関係 ︵ 局 所的 な 空 間的自 己 相 関 ︶ の指 標 お よ び それを用 い た統 計 的 検 定 結 果 を活 用 出 来る よ うに 工夫 した 点 な ど が 特 筆 される 。 本産業集積地 図 に よ っ て 、 既存 研究 や 重 点政策支援対象 と し て と りあ げら れ て い る 産 業 集 積 をど の 程度識別 で き て い る か を チ ェ ッ ク すると 、 依 拠 し て い る 原 デ ータ の 制約 の た め に 識別出来 な か っ た ケー ス を 除 い て は 、 お おむね 良 好 な結果を 示し て お り ︵ 参 考 文 献 ①︶ 、 今 後 、 更な る 活 用が 期待 さ れる 。●
製造業の集積度はどれぐら
いか
地図 作 業 と並行し て 、 中 国 の製 造業 の 産 業集積が ど の 程度ま で 進 んで いるの か を 分 析 し た 。 全 く 基 本的 な 問 題 で あ る が 、 産業集積 の 定量 研究 の 出 発点 で あ り 、 実際 、 中国以 外 の 国 に つ い て そ の よ う な 実証研究 は 多 く世 に 問 わ れ て い る。 同 時 に、フ ィ ー ル ド ワ ー ク で の疑 問に答 え る 意 味 も あ っ た 。 海 寧 の 皮革産業 、 義 烏 の 雑貨産業 、デ
ル
タ
の
産業集積
日
置
史
郎
紹興 の 織 物産業 、 諸曁 大唐 の 靴 下 産業 な ど 著名 な 産 業集積を 尋 ね る と専 業 市 場と呼 ば れ る 産 地 市 場 が あり 、 圧 倒 的 な数 の商 業テナ ン ト の集 積 が 観 察 され る の だが 、 周 辺 の 工 業 団 地な どを 訪 ね て み ても 、 メーカー の 厚 い集 積 を 肌 身 で感じ るよ う な 経 験 は 、 大 唐 な ど を 除 け ば、 あまりなか っ た か ら で あ る 。 産業 の 集 積度 を 計 測す る 尺 度 に はい ろい ろ あ る が 、先 行 研 究 を 参 考に し て ︵ 参 考 文 献 ③ ︶、 地理 的 集中度 と 空 間 的自 己 相 関 と い う 二 つの 側 面 か ら 分 析 を 行 っ た 。 前 者 は 分 析が 行 わ れ る 各空 間単位 ︵ 本 研 究 で は 、 郷 鎮や街 道 レ ベ ル に 相 当す る 六 桁 の 郵便 番号地 区 ︶ に 産 業立 地 が ど れ ぐ ら い 集 中 し て い る かを 測 定 し 、 後 者 は産 業 活 動 が 集 中し て い る空間 単 位 が ど れ ぐら い 近 接 して 分 布 して いる か を 測 定 し てい る 。 両 者 を あ わ せ て み るこ と で 、 集積度が よ り よ く 把握出来 る 。 具体的 に は 、 浙江省 と 江蘇省 の そ れ ぞ れ に つ い て 、 製造業 ︵中 国 標準産業分類 の 三 桁業種 一 三 一 か ら 四 三 二 ︶ の 地 理 的集中度 ︵ 尺 度 は γ ︶と 空 間 的 自 己 相 関 度 ︵ 尺 度は モ ラ ン の I︶ を計 算し 、 全 業 種 の 平均値 に よ っ て 、 広東省 と イ タ リ ア と を 比 較 し て み た ︵広東省 は珠 江 デ ル タ の産 業 集 積 で 著 名 で あり 、 イ タリ ア は 中 小 企 業 が集 積 し た 産地 で 著 名 な の で 比較対象 に 選んだ︶ 。 地 理 的集中度 の 業 種平均値を み ると 、 浙 江 省 は〇 ・ 〇 二 〇 、 江 蘇 省 は 〇 ・ 〇 一 二 、 広東省 は 〇 ・ 〇 一二 、 イ タ リ ア は 〇 ・ 〇 二 二︵ 参 考文献③ に あ る 、 三 桁 分類 一 〇 三 業 種 の 平 均 値 ︶ で あった 。 江 蘇 ・ 浙江 両省 の 製造業 の 地 理 的 集中度 は 、 広東省 よ り も 高 く 、 な か で も 高い 浙 江 省 は イ タ リ ア に匹 敵 す る 水準 に 達 し て い る こ と が わ か る 。 空間 的 自 己 相 関 の 場 合 、 浙 江 省 と江 蘇 省 の 両 省とも大 部 分 の業 種 につい て 、 統 計 的 に 有 意 な 正 の 空 間 的 自己相関 が検 出さ れ た 。 こ の こ と は 、 両省 に お い て 、 製造業 の 大部分 の 業種 に つ い て 、 企 業が 多 く集ま っ て い る 郵 便番号地 区が 近 接し て凝 集 す る傾 向 が あ る こ と を 示し て い る 。 平 均 値 で みた場 合 、 浙江省が 〇 ・ 〇七 七 、 江蘇省が 〇 ・ 一 五 一 で あ り 、江 蘇省が 広東省 ︵〇 ・ 一 四 〇︶ に ほ ぼ 匹 敵す る レ ベ ル で あり 、浙 江 省 は そ れよりもやや 劣 っ てい る が 、両 者 と も イ タ リ ア ︵ 〇 ・ 〇 一 八 ︶ よりも は る か に高か っ た。 産業分類 や 空 間単位 の 相違 な ど の理 由 か ら 完 全 な 比 較 可 能 性 が 担 保さ れ て い る わ け で は な く 、 ご く 大雑把 な 比較 に す ぎ な い が 、 一 応 、 長江 デ ル タ 製造業 の 集 積形成 は 、 すでに 相 応の 水 準 に 達 し て い る と みて も 大 過 な いと 判 断 し た 。
●
なぜ企業は集積しているのか
さ て 、 長 江 デ ル タ 製造業 の 集 積 度 が 相 当 の 水 準 に 達 し て いるの だ とすると 、 企 業 を こ れ ほど集 積 さ せて いる 要 因 は な に か と い うこと が 次 の問 題 と なる 。 こ の問 い へ の ア プ ロー チ は いろ いろ 考 え ら れ る が 、今 回 の 研 究 ︵ 参考文献④︶ で は 、 企業 へ の 質問票調 査 に よ っ て 、 産 業 集 積に立地 し て い る 企業 が集 積 にど の よ うな利 便 性 を 見 出 し て い るかを 分 析 す る こ と に した 。 つ ま り産 業 集 積 に そ う し た 利便 性を強 く感 じ て い る が 故 に 、 企業 は 産 業 集積 に 集 ま っ て い る と み な す 訳 で ある 。 な お 、 長 江 デルタ の 産 業 集 積は多 種 多 様 で あ るが 、 こ の 地 の 産業集積 の 一 つ の 典型 と し て 軽 工 業の 集 積 を 採 り あ げる の が 適 切 で あ る と 考 え 、 浙江省北部地域 の 繊 維・ 服 装 産 業 の 集 積 を 調 査 対 象 に 選んだ。 現地 調査 は 、二 〇 一 〇 年 に 、 寧 波、 紹興 な ど の 繊 維 ・ 服装産業 の 集 積 地に 立 地 する 企 業 を 対 象 に 行 い 、 一 六 〇 社 か ら 有 効 回 答 が 得 ら れ た 。 質 問 票に お い て は 、 企 業に対 し て 産 業集積 の 利便性 に 関連 す る 様々 な記 述 を 示し 、 そ の内 容 が 現 地の 実 情 に ど れ ぐ ら い 合 致 して い るかを 企 業に 判 断 し て も ら っ た 。 例えば 、﹁ 本 地区 に は 同 業 種あ る い は関 連 業 種 の 企 業 が 集 積 し て い る ので 、 市 場 情 報 が 素 早 く 伝 達 す る ﹂ とい う よ う な 記 述 項 目 が 全 部 で 二 五あ り 、 それ ぞれに つ い て 現 実 合 致度 を 五 段階 で 評 価 し て も ら っ た 。 産業集積 に 関 す る こ れ ら の 記述 項 目は 、 先 行研 究や質問 票 調 査 に 先 立 っ て お こな っ た 予 備 聞 き 取 り 調 査から 得 た 知 見に基 づ い て 決 め た。 二五 あ る 質 問 項 目 の 一 つ 一 つ を 分析す る の で は な く 、 質 問 項 目 の 回答結果 の 背 後 に は 、 い く つ か の 利便性が 潜 ん で お り 、 そ れ ら が 関 写真1 浙江省大唐の靴下産業集積の専業市場長江デルタの産業集積
問 項 目 の 回 答 結 果 に 影 て い る と 考え 、 そ れら を 析 と呼 ば れ る統 計 分 析 手 法 て 析 出 した 。 の 結 果 、 大 き く い っ て 、 五 便 性 ︵ 因 子 ︶ が 見 出 さ れ た 。 に 、 産 業 集 積 の 外 部 経 済 に る 利便性 と 解釈 さ れ る 因 子 。 わかりやす く 言 え ば 、 企 に 立 地 し て い る た 業 集 積 に 集 まっ て い る 他 の 体 から 、 市 場でそれに見 合 対価を 支 払う こ と な く 享 て い る 利 便 性 を と ら え た 因 。質 問 項 目 と の相 関 関 係 断 し て 、 こ の利 便 性 に は 、 て 、 ⑴ 集 積 内の他 企 業 か ら る 市場情報 や 技 術知識 ︵知 報 の ス ピ ル オ ー バ ー︶ 、 ⑵ 集 あ る 補助産業 か ら 安 価 で バ ィ に富んだ部 品 や原 材 料 あ るい は 専 門 サ ー ビ ス を 享 受 出 来 る 利便性 ︵ 地域内補助産業 に と も な う金銭的外部経済︶ 、 ⑶整備 さ れ たイ ン フ ラから 得 られる 利 便 性 が 含ま れ て い る 。 マーシ ャ ル は 、産 業 の 地 域 集 中 によ っ て 生じる 外 部 経 済の 源 泉 と し て 、 ⑴ 情 報や知 識 の ス ピ ル オ ー バ ー 、 ⑵ 地 域 内補助産業 の 存在 、 ⑶地 域内 に 形 成 さ れ る 熟練労働力 のプ ー ル を挙 げ て い た 。 し か し 我々 の調 査 事 例 か らみ る 限 り 、 本 因 子 は、 労 働 力 に 関 連 す る 質 問 項 目 と はほ と ん ど 相 関 性 が な く 、 そ れ 故 、 地 域 内熟練労働力 プ ー ル か ら 外部 経済が 派 生 し て い る と い う よ う に は解 釈は出 来 な い 。 中 国 の 産 業 集 積 は 、 こ の 点 で マ ー シ ャルの 見 立 て 通 り に は な っ て い な い よう であ る。 このこ と は 、 現 地 ヒ ア リ ン グ で の見 聞 か ら 、 無 理 な く 理 解 出 来 る 。 つま り 、 製 造 ラ イ ン で 働い て い る 労働者 の 多 く は 、 農 村 か ら の 出稼 ぎ 労働者 ︵農民 工 ︶ で あ る が 、 戸 籍制度 や 都 市公共 サ ー ビ ス の 問題 から 、 彼 ら の 都 市 へ の 定 着 は妨 げ られ ており 、 ほ と ん ど の調 査 地 域 で 農 民工 の不 足 ︵ 民工荒 ︶ が深 刻 な問 題とな っ て い る 。 こ の ような 情況 の も と で は 、 集積地 の 企業が 、 地域 に 定 着 し た 熟 練労働力を 雇 用 しや す い と い う メ リ ッ ト を 強 く 実 感出来な い の は 当 然 で あ ろ う。 こ の ほ か に 、 ①新規起業を 促進 するよう な 利 便 性 、 ② 地 域 のサ ポーティ ン グ 組 織 からえられる 利 便性 ︵例 え ば 、地 方政府、 業界 団体、 近隣 の 大 学や 研 究 機関か ら 得ら れ る様々 な 支 援 など︶ 、 ③ 下 請関 係 先 の 見 つ けやすさ と い う 利 便 性 、 ④土 地 や 労働力 と い う 基本的生 産 要 素 の調 達 可 能 性 と コ ストにかか わる 利 便 性 、 とそ れ ぞ れ 解 釈 さ れ る四 つ の 因 子 が 析 出 さ れ た 。 各因子と強 い 相関を も つ 質 問項 目に対 す る評 価 の 平 均 値 か ら み る と、 以 上 の 五 つ の 利 便 性 の う ち 、 外部経済 に 関 連す る 利 便性 は 、 総 じて 多 く の 企 業 か ら 比 較 的 強 く 実 感さ れ て おり 、 逆 に 、 土地 ・ 労 働 力の 調 達 可 能 性 と 費 用 面で の 利 便 性は 、 多 く の 企 業 から実 感 さ れ て いな いと 判 断 出 来 る 。 前 者 は 、 集 積の要 因 を 外 部 経 済 に 求 め る マ ー シ ャルの 考 え 方 と 基 本 的 に 合 致 し てい る 。 後 者 は 、 近 年 、す で に 指 摘し た民 工 不 足に よ っ て産 業 集 積 地にお い て 労 働 力 を 調 達 す る の が 難し くな り 、 賃 金 が急 上昇し て い る事 情 、 それ に加え て 、 沿 海 地 域 で顕 在 化 し は じめた土地 不 足 の 問 題を 反映し た も の で あ ろ う 。 こ れ らの 事 情 は 、 企 業 や 地 方 政 府 か ら のヒア リ ン グ 調 査 で し ば し ば 耳 に した 点である 。 全体と し て み れ ば 、 多 く の 企業 から比 較 的 強 く 実 感され て い る の が外 部 経 済に 関 連 す る 利 便 性 で あ るとし て も 、 企 業 規 模 によ っ て 中 小企 業 と 大企 業 の 二 つ の グ ル ー プ にわ けると 、 前 者 の方 がより 強 く この 利 便 性 を 感 受 し て い る こ と が わか っ た ︵ 参 考 文 献 ⑤ ︶。 次に 、 現 地 産 業 集 積 の 問 題 点 を きいて み る と 、最 も 回 答 が 多 か っ た順に 、﹁ 低 価 格 競 争 ﹂ が 一 〇 三 回 答、 ﹁ 製 品 付 加 価 値 が 低 い ﹂ が 八 九回 答 、﹁ 製 品 同 質 化 ﹂ が 七 五 回 答であ り 、 産 地 内 で 製 品 差 別 化 が 行わ れず 、 付 加価値 の 低 い 製品 の 低価格販売競争が 存在 し て い る こ とが大 き な問 題と し て 認 識 され て いること が わ か る 。 同質化 さ れ た 製品間 の 激 し い 価 格競争 は 企 業 収益 率 を 引 き 下 げ る こと が 予 想 さ れ る が 、 企 業 に 直 近 二年 間の 損 益 状 況 を 尋 ねると 、 回 答のあ っ た 産 地 企 業 一 五 六 社のう ち八 割 の 企 業 は 二 年 と も黒 字であ り、後 の 年 に 黒 字 転 換 を 果 た し た 企業を含め る と 九 割を超え て い た。 更 に 、 最 近 三 年 間 に お け る 利 潤の 年 平 均 伸 び 率 を 尋 ねると 、 回 写真2 寧波市の服装企業に掲げられた「縫製工 求む」の看板
答のあ っ た 一 三九 社の平 均 値 は 八 ・ 八% で あ り、 大 多 数 の 企 業 が プ ラ スの 伸 び 率 を 保 っ てい た 。 これ らの 結 果 か ら 、 以 下 の よ う な像 が結 ば れ て き た 。 すな わ ち 、 調査 地 域 の 繊 維 ・ 服装産業集積 で は、 多 く の 企 業 と り わ け 中 小 企 業 が知 識 ・ 情 報 の ス ピ ル オー バ ー や 域内補助産業 か ら 供給 さ れ る 安 価 かつ 豊 富 な 原 材 料 ・ 専 門 サ ー ビ ス の供 給 、 良 好 なイ ン フ ラ 条 件 か ら 得ら れ る 利便性を強く実 感 し て 集 積し て お り ︵ お そ らくそ れ らを 一 つの 拠 り 所 と し て 経 営 が 成 立 し て いるので あ ろ う ︶、 多 く の 企 業 の 製 品差 別化 の 程 度 は 高 く な く 、 そ れ が激し い 価 格 競 争 を生 み出し て は いて も 、 現 時 点 で は 多 く の 企 業 が まが りな り に も収 益を上 げ て お り ︵直近 で は 伸 び て さ え い る ︶、 生 存 が可 能 と な っ て い る 。 こ の よう な 状態 で あ る か ぎ り 、 激 し い 競争 の 中で 淘 汰 される 企 業 は 多 く ても 、 産業集積 で は 新規起業が 比 較的容 易である こ と が 加 わり 、 新 規 参 入 は絶えず 、 か く し て産 業 集 積 の 拡 大は続く の で あ る 。