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IRUCAA@TDC : 日野市立病院歯科口腔外科の過去・現在・未来

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Academic year: 2021

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Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/

Title

日野市立病院歯科口腔外科の過去・現在・未来

Author(s)

大泰司, 正嗣

Journal

歯科学報, 110(5): 568-571

URL

http://hdl.handle.net/10130/2107

Right

(2)

はじめに 日野市は東京都のほぼ中央,都心より約35km 西 方に位置する人口約17万人の都市です。北を多摩川 が流れ,昭島市,立川市と隣接しています。また, 南には多摩川の支流である浅川が流れ,多摩市と接 しています。川に挟まれていることから用水路や緑 地も多く残っていましたが,近年道路の整備や宅地 化が進み,緑は失われつつあります。それでも,市 の南の丘陵地帯にある多摩動物公園や新撰組の土方 歳三の菩提寺として有名でもある高幡山金剛寺(高 幡不動尊)周辺には,まだまだ多くの緑が残ってい ます。 病院の沿革 病院は市の中心よりやや西方に位置し,住宅街に あります。最寄り駅は中央線の豊田駅になります。 昭和36年10月に5診療科,一般病床20床の日野町 立国民健康保険病院として開設されました。 昭和41年4月より8科100床となり,昭和43年4 月に総合病院の指定を受け日野市立総合病院とな り,昭和56年10月に手術棟の新築,外来棟の増設を 行い,11診療科162床の病院となりました。 しかし,病院開設後35年以上が経過し,老朽化し た建物や時代遅れの設備が教育や先進医療の提供に 障害となってきました。計画立案から実に10数年を 経て,平成14年6月に16診療科300床の新病院が完 成し,名称も日野市立病院となりました。今後,隣 接地に放射線治療や RI 検査を行う施設の建設が予 定されています。 歯科口腔外科の生い立ち 昭和57年7月に歯科として開設され,初代医長と して目黒英朗先生(東歯大48年卒)が就任され,主に 障害者と生活保護を受けている患者を対象に診療を 行っていました。その後,目黒先生の退職により, 著者が昭和60年7月より歯科口腔外科医長として慶 應義塾大学医学部歯科口腔外科学教室より赴任しま した。 赴任当初は前任者の引き継ぎ診療が主で,一般診 療が中心でした。院内において口腔外科の認識は乏 しく,歯の治療と義歯の作成,抜歯をするぐらいに しか思われていませんでした。まだ若かったため か,怒りと失意の日々が続きましたが,病院の規模 が小さかったのが幸いし,他科の医師や看護師等と の日々の交流を行う内に,口腔外科がどのような科 であるかが理解されるようになりました。また,歯 科医師会の協力も得ることが出来るようになり,い わゆる口腔外科的な患者の紹介が増えていきまし た。 歯科口腔外科の今 外来は診療ユニット3台,常勤歯科医師2名,非 常勤歯科医師2名,歯科衛生士3名で歯科地域医療 連携制度にのっとり,口腔外科的疾患を中心に,障 害者,有病者,入院患者や病院職員の治療を行って います。 基本的には紹介および予約診療ですが,救急患者 や予約外でも随時,可能な限り診療を行っていま す。

東京歯科大学創立120周年記念記事

「継承と発展」―各界の卒業生に聞く―

日野市立病院歯科口腔外科の過去・現在・未来

大泰司 正 嗣

昭和52年卒業 日野市立病院歯科口腔外科 部長 568 ― 14 ―

(3)

口腔外科としての診療内容については,主なもの は表1に示すとおりです。 このほかに近年特に力を入れているのは,口腔粘 膜疾患,口腔顔面の難治性疼痛(いわゆる顎関節症 を含む),インプラント治療です。特に,非歯原性 歯痛を含む口腔顎顔面痛の治療に関しては,米国口 腔顔面痛学会認定医が,ペインクリニック科や精神 科と協力して治療に当たっております。 口腔粘膜疾患は,症状・病態が多様で複雑化する ため,まず鑑別診断を行うことに重点を置いていま す。全身疾患の一症状であったり,前癌病変や感染 症である場合もあり,慎重な対応が必要です。 また,抗血栓療法施行中の患者の抜歯や小手術に ついては,主治医と相談の上,極力休薬や減量する ことなく行っています。 最近問題となっているビスフォスフォネート製剤 服用中の患者に関しましても,口腔外科学会や整形 外科学会のガイドラインやポジションペーパーに 沿った院内ガイドラインを作成し,患者本人や主治 医と相談しながら治療を進めております。口腔ケア に関しては,歯科衛生士の糖尿病教室への参加など 糖尿病患者や入院患者,障害者などに紹介を中心に 行っています。必要に応じて,生活指導も行います。

院内においては NST(Nutrition Support Team) に参加しており,経口摂取機能回復へのサポートを 行っています。 最近5年間の延べ外来患者数は伸び悩んでいます (表2)。病態の多様化や長時間のカウンセリングの 必要性などが一因と思われます。また初心患者数も 延びていませんが,紹介患者数,紹介率は増加傾向 にあり(表3),紹介型口腔外科へと変化しているよ うです。 他科からの依頼に関しては,データを採りだして 3年しか経過しておらず,また,内容分析も十分で はないため,はっきりとした傾向はわかりません (表4)。 糖尿病患者の口腔ケア,顎関節症や口腔顔面痛, 表1 外来手術件数 平成19年度 平成20年度 平成21年度 埋伏歯抜歯 240件 234 239 普通抜歯 163 214 249 歯根端切除術 8 19 18 消炎手術 不明 23 14 組織生検 16 29 36 腫瘍・膿胞摘出術 27 88 56 その他(*) 91 90 91 545件 697件 703件 (*)外傷・歯周外科・小体形成術など 表2 延べ外来患者数 平成17年度 6744名 平成18年度 6277 平成19年度 6168 平成20年度 6129 平成21年度 6799 表3 初診患者及び紹介率 初診患者数 紹介患者数 紹介率※ 平成17年度 1575名 474名 30.2% 平成18年度 1509 417 31.2 平成19年度 1392 493 35.9 平成20年度 1312 494 38.2 平成21年度 1422 532 38.5 ※紹介率=紹介患者数÷(初診患者数−救急車搬送患者− 6才未満) 表4 他科以来件数 平成19年度 平成20年度 平成21年度 内科 40 73 74 循環器内科 8 16 18 外科 17 33 26 整形外科 28 26 27 耳鼻咽喉科 11 27 21 産婦人科 1 2 13 皮膚科 1 3 8 泌尿器科 1 5 1 小児科 1 2 6 麻酔科(*) 3 2 6 眼科 0 1 0 精神神経科 1 1 1 脳外科 0 2 0 (*)ペインクリニックを含む 歯科学報 Vol.110,No.5(2010) 569 ― 15 ―

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舌痛や口腔乾燥,抗血栓療法下での抜歯などに関し ての依頼が増加しているように思います。 入院治療に関しては,4階西病棟に定数2床を持っ ています。 インプラント埋入術は日帰り入院で行っていま す。最近5年間は,入院患者数,症例共に,ほとん ど変化はありません(表5)。 悪性腫瘍の治療は,施設上の問題や治療スタッフ の不足などから,比較的限局した症例(T1∼T2) しか治療できていません。手術あるいは化学療法+ 手術が第一選択で,化学療法は,CDDP+5FU が 主流で,場合によっては CDGP+TS−1を選択し ます。その後,CO2レーザーメスにより切除し,テ ルダーミスにて被覆します。 最近5年間の治療成績を表6に示しました。 平成17年4月から平成21年3月までに26名の悪性 腫瘍患者が来院し,このうち15名を当科において治 療を行いました。 部位では,舌10例(67%),歯肉3例(20%),口底 2例(13%)でした。 14例が SCC,1例が ACC でした。男女比はほぼ同 数でした。 初診後の転院理由は,大学病院や癌専門病院での 治療を希望された方や専門領域外の方10名,理由不 明(来院せず)1名です。 今後の課題あるいは未来に向けて 病院歯科の現状は厳しく,将来的にも楽観できる ものはありません。当院のような公的病院であって も,当然のことのように収支改善(利益率の向上)を 求められています。利益率向上のために,インプラ ント治療のような自費診療,入院治療や利益優先の 手術を優遇するようになれば,必然的に本来公的病 院が担うべきものが抜け落ちてしまうことになりま す。 診療スタッフの数や歯科独特の診療機材(大きい ものも小さいものも)の問題も含め,どこで,どの ようにバランスを取っていくかが存続のための重要 な問題となっています。 紹介率の向上や院内外での存在感を増すために, 口腔外科的疾患の治療のみならず,①抗凝固療法患 者やビスフォスフォネート製剤服用中の患者の生活 指導や口腔管理,②知的障害者の全身麻酔下での治 療(麻酔科,病棟,主治医,家族とのカンファレン スや入院のためのシステムの構築),③ NST や糖 尿病教室の活動を通して経口摂取や口腔ケアの重要 性のアピール,④地域歯科医師会との合同カンファ レンスや講演会 などを行っております。さらに, 今後は,消化器外科患者の術前口腔清掃のルーティ ン化も考えております。 しかし,他科入院患者の病棟での口腔ケアや看護 に対し,歯科での適切な診療保険上の対応がなく, 表5 入院症例数 平成17年度 平成18年度 平成19年度 平成20年度 平成21年度 歯性感染症 8 7 2 10 10 嚢胞性疾患 8 7 5 4 8 悪性腫瘍 9 5 7 9 2 インプラント 5(14本) 10(20本) 12(26本) 7(26本) 7(20本) 良性腫瘍 2 2 3 8 4 唾液腺疾患 0 0 4 4 2 骨折 2 3 0 2 1 その他 4 3 5 5 5 計 38件 37件 38件 49件 39件 全麻手術件数 15件 17件 19件 23件 20件 歯科学報 Vol.110,No.5(2010) 570 ― 16 ―

(5)

入院患者の NST や口腔ケアの重要性が言われてい るわりには病院歯科が強くアピールできないところ もあり,政治的解決を望んでいます。 おわりに 当院では顎関節・口腔顔面痛専門外来として,難 治性顎関節症,口腔・顔面の慢性的神経痛や非定型 歯痛,頭痛や咀嚼筋痛から生じるいわゆる非定型歯 痛に対して,理学療法や薬物療法を中心とした治療 を行っております。 十分な問診と診療に長時間かかるため,完全予約 制となっております。このような「痛み」でお困り のときは是非ご紹介をお願いします(日野市立病院 歯科口腔外科 予約電話番号:代表042−581−2677 あ る い は 医 療 連 携 室 電 話:042−581−2741 FAX:042−581−2874)。 表6 最近5年間の悪性腫瘍治療成績 症例 年齢 性別 部位 TNM 分類 組織型 治療法 経過 平成17年度 1 86 女 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 平成18年度 2 37 男 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 3 77 女 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 平成19年度 4 78 男 舌 T4N2M0 SCC 化学療法+放射線療法 死亡 5 65 女 口底 T1N0M0 ACC 部分切除 再発なし 6 50 男 口底 T1N0Mx SCC 部分切除 頚部リンパ節転移→転院 7 77 女 歯肉 T2N0M0 SCC 区域切除 再発なし 8 35 男 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 9 67 男 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 平成20年度 10 88 女 舌 T2N0M0 SCC 部分切除 再発なし 11 52 男 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 12 70 女 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 13 54 男 歯肉 T2N0M0 SCC 化学療法後区域切除 再発なし 平成21年度 14 47 男 舌 T1N0M0 SCC 部分切除 再発なし 15 90 女 歯肉 T2N2Mx SCC 経口化学療法 増悪 歯科学報 Vol.110,No.5(2010) 571 ― 17 ―

参照

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