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平成20年度修士論文要旨(経営学専攻)

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 107

平成 年度修士論文要旨

(経営学専攻)

氏 名 学 位 論 文 題 目 審 査 委 員 ○は指導教員 于 麗欣 BSCによるセブン―イレブン・ジャパンと 北京の経営情報戦略の分析 ○谷口 伸一 齋藤 邦彦 内藤 雄志 魏 芳 バランス・スコアカードの保険会社への適用 ○小田切純子 後藤 實男 宮西 賢次 喬 鋭 中日個人所得税制についての考察 ―個人所得税制の中日比較から わが国への示唆― ○添田 八郎 北村 裕明 只友 景士 張 寧 なぜ若者は早く離職するのか ―成果主義人事制度をめぐる一試論― ○澤木 聖子 伊藤 博之 谷上 亜紀 張 華麟 J-SOX法におけるIT統制の事例研究と中国版 SOX法への応用 ○谷口 伸一 齋藤 邦彦 内藤 雄志 張 攀 中国進出の日系企業における人材定着について ―労働契約法改正に焦点をあてて― ○澤木 聖子 高橋 勅徳 山田 和代 田 国春 中国のソフトウェア業界の発展モデルの比較分析 ○齋藤 邦彦 堀本 三郎 谷口 伸一 那須幸太郎 相続税に関する一考察 ○添田 八郎 北村 裕明 只友 景士

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108 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 白 金峰 日本企業の対中進出戦略に関する研究 ―松下電器の事例を中心に― ○澤木 聖子 伊藤 博之 竹中 厚雄 MOLOMDAGVA TSEVELSUREN 日本企業における成果主義人事制度の成功に 関する研究 ○澤木 聖子 高橋 勅徳 竹中 厚雄 雷 䆾 実体−関連モデルによる観光コンテンツ モデリングについて ○谷口 伸一 齋藤 邦彦 内藤 雄志 李 国旗 中国先進企業のルーツとしての郷鎮企業 ―美的集団の事例分析を中心にして― ○伊藤 博之 澤木 聖子 高橋 勅徳 李 少飛 現代中国におけるいわゆる「三農問題」 ―山東省青島市店上村と峴沽村の調査事例を 中心に― ○阿知羅隆雄 宇佐美英機 三ツ石郁夫 李 梅花 モバイルコマースの現状と展望 ○堀本 三郎 齋藤 邦彦 村松 郁夫 魏 雨竹 中国郷鎮企業の民営化過程にみる組織内部の 成長要因に関する研究 ―浙江天通電子股份有限公司の事例を通じて― ○澤木 聖子 伊藤 博之 高橋 勅徳

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 109

BSCによるセブン―イレブン・ジャパンと

北京の経営情報戦略の分析

経営学専攻

于 麗欣

日本では, 年のバブル経済の崩壊以後,経済が停滞し,多くの企業が業 績悪化に陥っている。しかし,一方で従来の不況とは異なり,産業間に格差が 見られるし,さらに同一産業においても業績の良い企業と業績の悪い企業が同 時に存在しており,一般的には,「勝ち組」「負け組」と呼ばれる現象が顕著になっ てきている。こうした第三次産業革命の大きな変化の中で,近年急速に新しい ビジネスモデルが発展している。特に,小売業を含むサービス部門で,こうし た動きが顕著である。中でも,コンビニエンス・ストアや電子商取引の発展は めざましく,日常生活においてなじみ深いものになっている。セブン―イレブ ンの場合, 年 月末で本家セブン―イレブン( ―Eleven, Inc.)のアメリカ国内 店舗数が , 店,カナダ国内店舗数が 店となっている。一方,近年のアジ アの伸びはいっそう急速で,日本では , 店,台湾 , 店,タイ , 店, そして中国 , 店となっている(第 表参照)。 日 本 , マレーシア スウェーデン アメリカ , メキシコ デンマーク 台 湾 , カナダ タ イ , オーストラリア 韓 国 , シンガポール 中 国 , (内 北京 ) フィリピン ノルウェー 合計 , 表 世界のセブン―イレブン ( 年 月末現在) 出典:http://www.sej.co.jp/

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110 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月

第三次産業革命の一つの大きな動きがME(マイクロエレクトロニクス)やIT (情報技術)の企業システムへの利用であろう。日本における 年代後半以後 のコンビニエンス・ストアの急速な発展も,POSをベースにした高度なMIS (Management Information Systems:経営情報システム)の構築によるものと考え られる。また, 年代後半からは,コンビニエンス・ストアの店舗システム をプラットフォームとする電子商取引の急速な発展も見られるようになった。 この電子商取引のためのシステムをベースに,セブン―イレブン・ジャパンは イトーヨーカ堂とともにアイワイバンク銀行(IYバンク)を設立して銀行業務 へ,さらには食事配達サービスに進出している。 本論文の主題は,セブン―イレブンを事例とするコンビニエンス・ストアの 経営情報戦略の研究である。日本におけるコンビニエンス・ストアという小売 制度は,中小企業庁が 年 月に発行した「コンビニエンス・ストア・マニュ アル」で次のように定義している。①住宅地周辺に位置して,② 平方メート ル以下の小型店舗,③絞り込んだ最寄り品を揃え,④セルフサービス方式で, ⑤営業時間が地域のどの店よりも長く,⑥年中無休を原則とし,⑦従業員は, 店主と若干の店員でまかなう省力型経営で,⑧顧客と親密な人間関係をつくる。 一方,セブン―イレブン・ジャパンでは,自らの小売形態を「精選された食料 品,ファーストフード,乳製品,衣料,雑貨,その他日用品および特殊品を供 給し,顧客の満足を最大限に拡大することを特質とする小売店」と定義してい る。創業以来,日本経済の浮き沈みとはまったく関係なく,セブン―イレブン・ ジャパンは三十三期連続して増収増益を達成している。流通先進国といわれる 米国でも,日本で進化したセブン―イレブン流の経営手法が浸透しつつある。 世界最大の小売業,米ウォルマート・ストアーズがセブン―イレブン・ジャパ ンの商品開発,情報システム,物流システムなどの経営ノウハウを徹底的に研 究し,今でも時折,ウォルマート首脳がわざわざ来日し,鈴木敏文会長に教え を請いにやって来るほどである。 年 月,中国政府認可の初の外資系コン ビニとしてセブン―イレブン第一号店,「東直門」店を開業し,大盛況を呈し入 場制限が三日間続いた。現在 店舗に増え,おでんや弁当,おにぎりが好評と

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 111 いう特徴を持っている。しかし,フランチャイズ展開も始まったが,いろいろ な問題も出てきた。北京の市場では,セブン―イレブン・北京が一石を投じる ものとして,業界内の注目が集まっている。今現在,一番大事な成長期にある。 そこで,セブン―イレブン内部からの視覚として,バランス・スコアカードに より分析を行ったところ,今最も重要なことは財務重視ではなく,従業員たち を育て,業務を改善して,顧客を重視することであることが分かった。 バランス・スコアカード(以下,BSCと記す)とは,経営戦略の立案を支援す る手法である。四つの視点で経営のチェックをスコアカードで評価しようとす るもので,米国のハーバード大学教授ロバート・キャプラン(Robert S.Kaplan) とコンサルタント会社社長テビット・ノートン(David P.Norton)によって考案 された。戦略的マネジメントツールとしてもビジネスパーソンに必須の経営手 法といわれている。ここで四つの視点とは,❶財務の視点,❷顧客の視点,❸ 内部業務プロセスの視点,❹学習・成長の視点をいう。BSCによる分析の結果, セブン―イレブン・北京は 年代の米国の産業界とほぼ同じ状況であり,企 業の財務状況中心としている。 年代の米国では,財務の視点に偏りすぎた 短期的志向の経営が産業界にまかり通っていた。そのため,長期的視点を中心 とした日本の製造業に席巻され,企業経営の活力を失いつつあった。そのため 米国企業は産業競争力の回復に国家を挙げて取り組み始めていた。このような 中で,キャプランらは,米国産業の衰退の要因分析を徹底的に行った。その結 果,米国企業の経営の活力を奪っているのは,当座の決算書を取り繕う過程で 将来を抵当に入れてしまう,短期的視点の財務偏重型経営であることを発見し た。長期的価値を生み出すために企業は何をしなければならないかという視点 が,米国の企業経営者には欠落していたともいう。BSCは,このような背景の 中で,短期的志向の視点ともいえる財務の視点だけではなく,非財務的な長期 的視点を取り入れて企業経営を評価するというフレームワークを提供するもの として編み出された。 本論文では,BSCの手法を使って,セブン―イレブン・ジャパンとセブン―イ レブン・北京の現状を比較しながら問題点を解明し,特に,経営情報戦略の在

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112 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 り方について論述する。セブン―イレブン・北京に対して,ビジョンや戦略を 明確にしたうえで,全員参加型の戦略志向の組織を構築し,経営戦略を提案す る。ここでは,鳥瞰的な戦略マップというものが作成され,経営的視点として 不可欠な四つの視点からなる評価によって,目標と達成度合いのギャップを数 値で把握し,セブン―イレブン・北京の将来を展望する。

バランス・スコアカードの保険会杜への適用

経営学専攻

魏 芳

年 月 日に日産生命に対して,戦後,生命保険会社としては初の業務 停止命令が発動され,破綻した。ところが,日産生命という戦後初の生命保険 破綻が起きてからたった 年ほどの間に,日本で つの生命保険会社と つの損 害保険会社が次々と破綻し,日本の保険会社,保険制度に対する消費者の信頼 を大きく損ねた。また,近年,日本の保険会社では,保険金不払い問題が数多 く発覚した。 年 月に,生保 社,損保 社で「不当な支払い」があったと判 明した。その後,保険業界全体規模での「支払い漏れ」などが発覚した。各社の 調査結果を受けて,金融庁が不十分と判断して再調査命令を出し,業務停止命 令・業務改善命令発動といったルーチンが,以後 年半に渡り繰り返されてき たというのが大きな流れである。 保険は一般企業リスク移転の手段として,保険企業は一般営利企業と国民の リスクの負担者になっており,保険を通じて国民福祉の達成を図るという政策 性も加味されていることなどいわゆる公共性・社会性・福祉性と称される性格 や特徴があって,他の一般産業とは異なる事業であるとされている。社会に対 して保険企業の倒産および社会的責任は,他の企業より,一層深い影響を与え ていると考えられる。 年,日本の保険業界における不祥事の多発と共に, 経営危機に直面してしいた米大手証券リーマン・ブラザーズも倒産した。現在,

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 113

全世界でも深刻な金融危機に直面しなければならなくなっている。

筆者は中国の大学で会計課程を卒業して,中国の最大手保険会社の中国人民 保険株式会社(The people’s insurance company of China, PICC)に数年間勤務して いたので,長らく,会計知識がどのようにうまく保険会社に活用すればよいか 考えてきた。 年代,Kaplan and Nortonが創始したバランス・スコアカード (Balanced scorecard)が注目を集めつつある。バランス・スコアカードは管理会 計の手法として, 年ごろアメリカの保険会社に導入され,成功した事例が よく出てくる。しかし,世界経済の発展と時代の変化に対応し,バランス・ス コアカードの本来の つの視点だけではなく,社会的責任(CSR)も加えて,保 険会社に消費者の信頼を取戻し,以前のような活性化および社会貢献できるよ うに考えてみたいと思っている。 筆者は第Ⅰ章で,バランス・スコアカードの仕組みと特徴を紹介する。バラ ンス・スコアカードの基本モデルは,「財務的視点」,「顧客の視点」,「社内ビ ジネスプロセスの視点」,「学習と成長の視点」という つの視点から構成され, これらの視点から業績評価基準を設定することにより,短期的利益と長期的利 益のバランス,全社目標と部門目標のバランス,あるいは株主・顧客・従業員 などの利害関係者間のバランスを維持しながら企業変革を推進することができ る。 第Ⅱ章では,生命保険会社と損害保険会社の歴史と経営の特徴を考察したう えで,保険会社の収益構造と資産運用は近年日本保険会社の倒産や不払い問題 などの不祥事が起こった原因になっていることを明らかにしている。 第Ⅲ章では,バランス・スコアカードを損害保険会社に導入した成功事例を 紹介した。北欧最大の保険会社であるスカンディア社,シグナ社の傷害火災保 険事業部およびアメリカの大手保険会社の事業部であるNational Insurance社を 含めて つの損害保険会社をとりあげている。また,バランス・スコアカード の生命保険会社への構築についても考察したいと思っている。 第Ⅳ章では,保険企業における倒産や保険金の不払い問題など,社会的責任 を問われる事件が昨今続発している状況において,社会全体が保険企業に対し

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114 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 て社会的責任を果たしたうえで,それぞれの行動上の目標を達成することが今 日強く要求されている。この意味においては,保険企業の社会的責任は現代の 重要なテーマであるとともに,社会的責任は生損保険会社が意識しなければな らない問題となっている。長期的利益の確保のためには長期にわたる顧客の信 用獲得を常に志向しなければならないので,その基盤としての社会的責任パ フォーマンスの向上を計画的に目指すことは必要なことになる。保険に対する 失われた信頼を取り戻すことができるのか,バランス・スコアカードを推進し ながら,社会的責任の有効性を発揮することが期待できると思っている。 第Ⅴ章では,中国企業におけるバランス・スコアカード導入の失敗原因を分 析し,また,中国の新奥集団と青島ビール集団のバランス・スコアカード導入 と運用の事例を簡単に紹介し,最後に,中国の保険会社に向けて,財務・顧客・ 社内ビジネスプロセス・学習と成長および社会的責任という つの視点を持っ ているバランス・スコアカードが中国の保険会社への評価指標・システムを考 察している。 改革開放後,中国の保険事業は急成長し,WTO加盟後,保険市場をめぐる 争奪・混戦状態が激しくなり,それにより,経営破綻に追い込まれる保険会社 が出ることも想定されている。中国の保険会社の倒産と不祥事の発生を防止し, 中国の社会安定を守るために, つの視点を持っているバランス・スコアカー ドをぜひ中国の保険業界に活かしたいと思っている。

中日個人所得税制についての考察

―個人所得税制の中日比較からわが国への示唆―

経営学専攻

喬 鋭

中国では 年に 税が統一され,新たな個人所得税法が公布実施された。 中国個人所得税は分類徴収制を採用しているが,分類所得税には,

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 115 .所得が月ごとに課税徴収されているため,年間所得の課税に比べ,個人 所得税の分配作用が十分に発揮できず,公平で合理的な税負担の原則を実 現し難い。 .現在の異なる所得項目に対する異なる税率・控除による課税方法は,納 税者が所得を分解し,複数の所得控除を受け,税を免れることを容易にし てしまう。 .給与所得の限界税率がかなり高く,税率段階が多すぎ,税負担が不公平 になっている。 .給与所得の定額控除が全国一律となっており各地域の生活コストを反映 していない。 .徴収管理のレベルはまだ高くない。 のような問題を内包しそおり,分類徴収税制の問題点が存在することにより, 個人所得税が財政収入構成及び所得分配の調節・貧富格差の縮小作用に直接的 に悪影響を及ぼしており,社会において個人所得税をさらに改革し,完備すべ きという声が日増しに強くなっている。経済の発展と国民所得が向上する一方, 格差の拡大が深刻度を増大するなかで,こうした問題を解決し,所得税が財政 を支える中心的な税制の一つとして発展するためには,所得税制度の抜本的見 直しが避けられない。 総合所得税制が本来,最も望ましい課税方法とされる。ただし,総合課税を 適正,公平に執行するには所得の把握体制が十分に整備されることが前提であ り,わが国の現実の制度の沿革を見ても,この考え方に完全に即した税制となっ ていたとは言い難い。そこで,分類税制と総合税制を併用する個人所得税体系 を確立し,個人所得税の所得分配調節作用を十分に発揮させる。改革の初歩的 な構想としては,次のものを考えている。 .給与所得,生産経営所得,役務報酬所得,資産賃貸所得等の連続性,経 常性のある所得を総合所得の徴収項目に入れ,統一的に適用する累進税率 を制定する。資産譲渡所得,特許権使用料所得,利子所得,配当所得,一 時所得,その他の所得に対しては比例税率により個別に徴収する。

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116 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 .課税期間を統一する必要がある。連続性,経常性のある所得について課 税期間が一年間となれば人的諸控除(基礎控除,配偶者控除,寡婦控除, 障害者控除,医療費控除,社会保険料控除,生命保険料控除)の導入や社 会保険の厳密な適用も可能になる。この上で,各納税者および各家庭の差 異を考えて,課税最低限を明確化し,所得再分配機能を拡充する。 .個人所得税の限界税率を適当に引き下げ,累進段階を減少する。具体的 には給与所得の課税期間を一年にすることや定額控除の大幅引き上げが前 提であるが,個人事業所得との間で異なる二つの超過累進税率を給与所得 に対するそれに一本化することである。この場合,給与所得の税率ブラケッ ト数が 段階であるが,世界の各国の所得税率を見ると最高税率の引き下 げ,税率構造のフラット化(最高税率と最低税率の格差を縮小する)税制改 革,すなわち, 段階か 段階に減少させることも課題となる(表 ― :世界 の所得税率)。 .企業会計の厳密化と個人事業者において簿記会計の定着が前提,そのた めには国民と企業が個人所得税に対して正しい理解ができるような広報, 教育を多様な方法で広く行うことである。 中国国内の地域格差が非常に大きい。 年の一人当たりのGDPを見ると, 一番高い上海と一番低い貴州省を比べると, 倍近い格差になっている。そこ で,中国の地域による所得格差や生活コストの違いを考慮し,地域に応じた給 与所得の定額控除を設定することにより課税の公平及び住民の生活向上に役立 つものと考える。定額控除に関する改革の具体的な構想としては,次のものを 考えている。 .胡鞍鋼先生の つの世界論を参考し,中国各地域の生活コスト指数を踏ま えて,中国の全国を地域別に つのレベルに分ける。具体的には,生活コ スト指数( .以上)の極めて高い地域(上海,北京,深圳)を級 にし; .― .を級 にし; .― .を級 にし; .以下の地域を級 に区分する。 . 年の定額控除 元を基準にCPI連動にして,定額控除を引き上げる。 この定額控除は全国的に平均的な水準となっている。魏教授の見方によれ

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 117 ば,上海の定額控除を 元に引き上げることが妥当であるとしているが, 各地域の生活コスト指数の上限をもとに つの地域別に定額控除を試算す ると第四章第二節のとおりに,級 の上海等が 元,級 の広東等が 元,級 の天津等が 元,級 の重慶等が 元となり,これは魏教授の 主張ともマッチするものであり,住民の生活向上にも役立ち所得税の健全 な発展に貢献するものと考える。なお,個人所得税の徴収管理を強化する ために,納税者番号制度の導入も考慮すべきだ。納税者番号制度をわが国 に導入する進め方として,以下の通りである。 .法律上の根拠を持つこと。付番の根拠法を「社会保障法」及び人口登録制 度に関する政令とする。 .全国一律の番号によって,多数の国民を,二重付番なく生涯にわたって カバーしていること。 .番号を付与した後の住所,氏名等の異動を管理できる体制となっている こと。 .民間利用が許容され,納税者と相手方との自己証明,本人確認の場面で 活用できること。 .プライバシー保護を含めたシステムにおけるセキュリティが十分確保さ れること。 上記のような改革を進めることが,中国個人所得税が今後基幹となる税制と して発展する上で不可欠と考える。

なぜ若者は早く離職するのか

―成果主義人事制度をめぐる一試論―

経営学専攻

張 寧

本論文は,日本の若者の早期退職と,成果主義人事制度といった,二つのキー

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118 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 ワードに対して,その関連性について議論するものである。具体的には,若者 の早期退職,成果主義のそれぞれの現象が生じた発生要因,導入背景,現状に ついてとりあげている。 本論文の問題意識は二つの社会現象に根ざしている。論文題目が示している ように,一つは,特に近年ではマスメディアの報道などに通じて,社会問題と して重視されつつある新卒入社した若者が早く離職する現象である。もう一つ は,成果主義人事制度である。そもそも 年代のバブル経済崩壊以降,長期 不況の影響の下で,日本社会における労働・雇用情勢は変容していった。その 変容を引き起こした原因の一つとして,成果主義人事制度がよく取り上げられ てきた。そのことに対する評価や意見なども,論者によってさまざまである。 本論文では,成果主義人事制度がもたらした労働・雇用情勢の変容と,若者 の早期離職の発生要因との関係に注目して,そのプロセスの解釈について試論 することを目的とした。 本論文は,第一章の問題提起,第二章の問題の現状,第三章の問題の原因に なる成果主義人事制度に対する考察,第四章の事例研究と第五章の結論から構 成されている。第一章では,若者の早期離職,成果主義人事制度といった二つ のキーワードをめぐって,本論文での問題意識を明らかにした。主に,論文の 研究動機と用いる研究手法について説明している。第二章では,前章で触れた 二つのキーワードの現状を述べた上で,その二つのキーワードの因果関係にち なんで,その発生要因について議論した。第三章では,前章で提起された論題 である成果主義人事制度の導入背景,年功序列制度それぞれのメリットとデメ リットに対する比較分析を試みた。第四章では,前章での成果主義人事制度に 対する議論を踏まえて,富士通を事例に取り上げた。第五章で問題意識と研究 目的に対する解を導き,成果主義と若者の早期離職との因果関係について整理 することを目的として結んだ。 本論文では,なぜ時下の若者は早く離職するという問題に対して,賃金を切 り口にした成果主義制度の議論を整理してきた。その結果,次のようなことが 明らかにされた。

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 119 若者が早く離職する根源的理由としては,バブル経済崩壊直後から残存して いる年功序列的価値観の働きにも左右されたことがあげられる。賃金改革と経 営再建を目的として企業に導入された成果主義人事制度は,一部形骸化してい た。公平公正的原則の下で,個人は自分のがんばった分に対価する報酬が獲得 できるはずであるが,しかし長期不況の影響で,企業の収益は以前のように, 社内の全員を満足させるような賃金と待遇をカバーすることができなくなっ た。また,成果主義人事制度の一環として,就職活動に参加する学生たちに過 度の能力と資格が期待されていると筆者は考える。しかし,入社してから求め られた能力と資格を活かす機会は少なく,入社後数年は基本的に新入社員らの 個々の知見や創意工夫を活かせる仕事はほとんど与えられない。さらに,仕事 の内容に対する理解と社内のコミュニケーションの視点から考察した場合,上 司である中堅層従業員の現状を見て,自分の将来像に重ねると,現在勤務して いる組織に対して,不安や失望感を抱くことも推察される。このような不満が 生じれば,離職や転職行動への傾向も助長されると考えられる。 本研究は,筆者の就職活動の経験を通じて疑問に感じたことを研究動機とし て執筆を進めたものである。 年現在,日本の労働市場において,若者の就 職は困難になりつつあるが,一方で人材不足の解消を求める企業が存在してい ることも事実である。組織にとって必要な人材を確保し,若者の能力を有効に 活用するためには,処遇や評価を中心とする人事制度がどのようなものである べきか,筆者は自分自身の問題として,今後も追究し続けたいと考えている。

J-SOX法におけるIT統制の事例研究と中国版SOX法への応用

経営学専攻

張 華麟

SOX法はエンロン事件やワールドコム事件など 年代末から 年代初頭 にかけて頻発した不正会計問題に対処するため制定されたもので, 年 月

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120 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月

に大統領署名により法律として承認された。 年の連邦証券法, 年の証 券取引所法制定以来,最も大きな変更といわれる。正式には「Public Company A㏄ounting Reform and Investor Protection Act of :上場企業会計改革および 投資家保護法」といい,法案を連名で提出したポール・サーベンス(Paul Sar-banes)上院議員,マイケル・G・オクスリー(Michael G. Oxley)下院議員の名に ちなんで,「サーベンス・オクスリー法」と呼ばれる。日本では「企業改革法」と 意訳されることが多い。全 章 の条文から構成され,上場会社会計監視審議 会(PCAOB:Public Compmy A㏄ounting Oversight Board)の設置,監査人の独立 性,財務ディスクロージャーの拡張,内部統制の義務化,経営者による不正行 為に対する罰則強化,証券アナリストなどに対する規制,内部告発者の保護な どが規定されている。 同法は米国の公開企業とその連結対象子会社が適応対象となるほか,外国企 業であっても米国各証券市場で株式公開をした場合には原則として適用され る。特に注目されるのは第 条。これはCEOとCFOに対してSEC(米国証券取 引委員)へ提出する書類に“虚偽や記載漏れがないこと”“内部統制の有効性評 価の開示”などを保証する証明書と署名を添付することを求めている。虚偽が あった場合には個人的な責任が問われることになり,罰則として罰金もしくは ∼ 年の禁固刑という厳しい刑事罰が設けられている。また財務報告の透明 性を確保するため,その基礎となる企業内の各データ,業務プロセスを含めて 明確化,文書化することも義務付けられている。これはERPや会計システムな どの情報システムそのものや,システムの開発/保守/運用といった業務プロ セスにも及び,システムへのアクセス権限のルールや管理,外部ITベンダへの 委託契約方法を含めて,公正で明確な手続きによって遂行され,それが証明で きるようになっている必要がある。 以上の状況を踏まえて,日本,イギリス,カナダ,韓国,フランスなどの先 進国が,米SOXの成立を受けて企業の財務報告の不正を防ぐ法規制を実施して いる。経済が急速な発展をしている中国の企業も経済グローバル化に向けて, 内部統制厳格化の動きには拍車が掛けられることとなる。そのため,中国も

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 121 年に中国版SOX法を制定し, 年 月 日に実施することになった。 年 月 アメリカ――上場企業会計改革および投資家保護法(SOX法) 年 月 日 日 本――金融商品取引法(J-SOX法) 年 月 日 中 国――企業内部統制基本規範(中国版SOX法 班斯法案) 三国の法律の目的は内部統制を再確認して,企業会計や財務報告の透明性, 正確性を高めることである。日本版SOX法(以下,J-SOX法)は米国SOX法を元 にして作られた法律であるが,米国版SOX法を改善し,ITへの対応を加えて, より効率的内部統制が達成できると思われる。中国版SOX法は一番遅く作られ て,立法も企業側の対応も遅れている。本研究はこのような状況を踏まえて, 日本版SOX法を元にして,ITへの対応及びIT統制の有効性と重要性について考 察を行う。更に,中国版SOX法が 年 月に実施されることにより,上場企 業には経営者による内部統制の評価,報告及び外部監査人による内部統制の監 査が義務づけられることになり,いわゆる中国版SOX法への対応というものが, 企業において喫緊な課題となっている。 全体的に見ると,中国企業は近年から内部統制の重要性をだんだん認識して きたが,日本とアメリカの企業を比べると,認識度が低い,健全な内部統制組 織がない,企業の信頼度と透明性が低いなどの問題点が存在している。更に, 会社業務の完全システム化の普及率が先進国と比べると低く,システム化がで きている企業の中で,世界基準の内部統制基準を満たしている数も少ないこと が現状である。 本論文では,中国企業の内部統制基準が低く,また企業の信頼度と透明性を 支える管理システムが不健全である状況を踏まえて,日中米三国SOX法の中で 最も特徴がある日本版SOX法のIT統制を中国企業のSOX法へ応用することを提 案する。それにより,企業の内部統制を強化でき,人的関与を最大限に下げて, 企業会計や財務報告の透明性,正確性を高めることを述べる。同時に,情報シ

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122 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 ステムの有効性と効率性を高めるなどのメリットも生じる。本研究の研究成果 に基づき日本版SOX法のIT統制を中国企業へ導入できれば,中国企業の情報シ ステム化をより進歩させるのみならず,健全かつ強固な内部統制システムが構 築でき,中国企業の透明性と信頼性も高めることを実現する。

中国進出の日系企業における人材定着について

―労働契約法改正に焦点をあてて―

経営学専攻

張 攀

キーワード:人材定着,中華人民共和国労働契約法改正 グローバル化がますます進む中,特に 年代以後,日本企業は積極的に海 外進出し,日本本土以外での企業活動は日本の経済への影響をますます大きな ものにしている。海外への進出は,近年,経済が著しく発展しているBRICs諸 国への投資に大きな割合を占めている。ブラジルやロシアへの投資額は大幅に 増加しているが,中国への投資は依然として日本のBRICsに対する海外投資総 額に占める比重の中で一番高い。したがって,中国における事業活動の成否は 企業のグローバル戦略そのものに影響を与えている。中国進出の原因を見てみ ると,中国へ進出するメリットの一つに,豊富な労働力を安価に確保すること による価格競争力の強化があると言われている。しかし多くの日本企業が中国 に進出し,中国で生産することは,もはや日本企業にとって当たり前という状 況となっている中で,安価に労働力を確保することだけでは,価格競争力を維 持できなくなる。さらに, 年以降,中国の高速的な経済成長とともに,中 国国内市場も拡大しつつある背景で,中国を輸出製品の生産基地と位置づける のでなく,中国国内での販売を目的とする企業が増えてきている。今まででは, 中国の安価な労働力を利用するために,現地での雇用対象の主体は生産ライン

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 123 の従業員などいわゆるブルー・カラーとなっていたが,これからは中国国内市 場の開拓と他社との競争の背景で,現地の事情を熟知し,現地市場への対応に 経験を持っている高等教育を受けた,会社の経営に大きな役に立てるホワイ ト・カラーに変わって行っている。しかし,中国進出の多くの日系企業は,現 地市場重視の経営戦略が変わったものの,人事制度においては,ブルー・カラー の教育や管理に対して役立った日本の工場従業員管理は,現在のホワイト・カ ラーに通用せず,多くの問題が起こっている。例えば,「採用したい日本企業 に合う優秀な人材が少ない」,「優秀な人材が流出してしまう」,「法令が厳しい」, 「人件費が高騰している」,「人材育成の体制が充分に整っていない」,「日本企 業の価値観や理念を身につけさせることがうまくいかない」などが挙げられる。 これらの現状の中には,中国のホワイト・カラー人材の管理における大きな困 難の一つは人材定着に見られると考えられる。特に中国では 年以降,加工 貿易制限の拡大と企業所得税法の改定による外資優遇政策の方針転換を背景と し, 年 月 日から,新労働契約法が施行され,あらゆる企業を対象に,全 面的に長期的な雇用体制を導入しようとしている。この新しい労働契約法は中 国の人材市場に非常に強いインパクトを与えている。特に新法により,長期雇 用などが義務付けられ,人事管理のコストがより多くかかるので,育成した人 材が定着できるかどうかは企業の経営にもとても重要なことになってくる。本 稿は中国進出の日系企業において,ホワイト・カラーに対象を絞り,人材定着 の問題を研究することを踏まえて,労働契約法改正後の人材定着の傾向を研究 し,企業側の対策も試論したいと考えている。本研究は,中国進出の日系企業 における人材定着の状況を対象に, 年 月 日施行された新しい労働契約法 を焦点にして研究を進めている。 本研究では,まず問題意識で多くの中国進出の日系企業を困らせる現地での 人材定着の問題,いわゆる今まで中国進出の日系企業は人材定着に対してどの ような課題を抱えているか,そして人材定着と労働契約法改正との関係を提起 する。さらに先行研究では,文献や記事などを通じて,人材定着と労働契約法 改正についてそれぞれの背景と影響などに関する資料を収集し,問題意識を強

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124 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 化する。次は論文の第 章で,なぜ人材定着は中国進出の日系企業において重 要なのか,そして日系企業の現地人材の定着状況はどうなっているかなどにつ いて,先行研究を踏まえて説明していきたい。第 章では, 年に中国のあ らゆる企業の人事制度に莫大な影響を与えた新しい労働契約法を中心にして, 新法施行の背景,旧法と比べて増やした規定などの特徴を分析し,さらに新し い労働契約法が企業の人事制度に与えた影響を文献中心で述べていく。そして 実際では,新しい労働法は企業の人事制度及び人材定着にどのような影響をも たらしてきたかを検証するために,中国天津にある日系自動車関連企業を対象 にして,人事の担当者をインタビューした結果を整理し,新法の影響を分析し ていきたい。最後のまとめでは,労働契約法が改正されてから,中国進出の日 系企業における人材定着にどのような影響を与えたか,そしてこれからの人材 定着はどのような方向に発展していくかを試論してみたいと考えている。

中国のソフトウェア業界の発展モデルの比較分析

経営学専攻

田 国春

現在,中国は日本のソフトウェア産業の海外発注先として最大の基地となっ ており,日本の海外発注総額に占める中国の割合はおよそ %に達している。 「欧米諸国はよくインドをソフトウェアの海外発注基地としているが,ほとん どの日本企業は中国を選んでいる。両国が隣接し,文化も似通っていることか ら,製品の日本への輸出が便利である。また,中国自身が大きな市場であるこ とも魅力的である」ということが中国と日本のソフトウェア業界関係者の共通 認識となっている。中国の情報産業省の 年白書によると,去年のソフトウェ ア業界の売り上げは,前年度の同じ時期より %増え, 億元に達している。 中国では,デジタル化,ネットの普及が加速されるとともに,基本ソフトやセ キュリティーソフトなどの応用が拡大され,高い利潤を生み出している。

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 125 本稿の目的は,現在の中国のソフトウェア業界はどんな状態であるか,そし て,中国のソフトウェアの将来はどんな方向に発展すべきかを分析によって明 らかにすることである。 一章:世界のソフトウェア業界の現状 ソフトウェア産業の発展モデルの適 切な設定は産業の健全な成長のための条件である。ソフトウェア産業, ソフトウェアの発展の歴史と具体的な国情によって産業の発展のモデル が存在する。世界の代表的なソフトウェア産業の発展のモデルはインド のモデル,米国のモデル,日本のモデル,アイルランドのモデルである。 二章:中国のソフトウェア産業の現状とモード この章で中国のソフトウェ アの現状を紹介する。中国のソフトウェア会社の規模,売り上げ,地域 特性とソフトウェア会社の発展状況,中国のソフトウェア会社の発展モ デル,その長所と短所か,中国のソフトウェア人材の教育の問題点につ いてこの章で詳述する。 .中国のソフトウェア産業の特徴 ①中国のソフトウェア企業はアウトソーシングすることを急速に発展す るが,国際市場の中で占有率は低い。 ②中国のソフトウェアの人材の需要は満たず,産業構造も合理的とは限 らない ③企業の規模は小さく,製品の競争力は弱い。 ④ソフトウェア産業の発展はバランスが取れていない。 .中国のソフトウェア産業の将来モデル例 中国のソフトウェア業界の将来の発展について,四つの仮説の例をあ げて論証する。この四つの例は輸出モデル,システムインテグレーショ ンのモデル,ソフトウェアパークのモデルと国内需要中心モデルである。 三章:中国のソフトウエアの業界の発展の道 ソフトウェア産業の発展は中 国の競争力を高める重要な方法で,中国が国際競争に参与するために必 要な戦略である。ここ数年来,中国のソフトウェア産業は盛んに発展し て,規模は増大しつつあって,ソフトウェアの大国の潜在力を示した。

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126 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 中国はソフトウェア産業を発展するならば,必ず動態的な発展のイメー ジが必要であり,積極的に国内の調和がとれているソフトウェアの発展 の環境を作り上げて,国民経済変動が激しい背景の下で,潜在力を深く 開発して,産業チェーンを改善する。また多国籍のソフトウェア会社の 協力を強化し,積極的に国際競争に参与して,中国の国情に適った多元 化と革新の道を展く。 ここ数年来中国の経済は持続的に急速に発展して,これはソフトウェア産業 の発展にいい環境を提供した。 年余りの発展を経て,中国のソフトウェア産 業の総額は全世界のソフトウェア産業の総額の比重を占めて絶えず向上させ た。ソフトウェアのサービスとシステムインテグレーションの市場も次第に拡 大して,ソフトウェアの企業の規模は次第に拡大した。産業の規模は優位の地 区に集中し,企業はますます自身の基礎的な訓練を重視して積極的に国際競争 に参与し続けている。その他に,中国はマンパワーの方面で巨大な潜在力を持っ て,更に多くの国外の投資家を引きつけた。今世紀に,グローバル化の発展の 新しい成り行きとソフトウェア産業の発展の新しいモデルに直面して,中国は ソフトウェアの大国になると期待する。

相続税に関する一考察

経営学専攻

那須 幸太郎

.研究の目的 本稿は,現行の相続税の課税方式(法定相続分課税方式)が 年(昭和 )年に導入されたものであるが,導入から 年という歳月が経過 していることもあり,現在においては,高齢化,及び経済のストック化の進行 など,導入当時の状況とは大きな変化が見られるとの指摘があるほか,相続税 の課税ベースや事業承継に係る優遇措置の見直し等の議論が見られる。本研究 はこのような状況のもとわが国の相続税の課税方式やその計算構造の在り方に

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 127 ついて考察を行うとともに,相続税の資産格差是正効果を各種統計データを用 い検証し,望ましい相続税のあり方を模索するものである。 .本稿の概要 第一章,相続税の概要として,第一に相続税の課税根拠に ついては,「富の再分配機能」が重視されてきたことが確認できた。第二に,相 続税の課税方式である遺産課税方式と遺産取得課税方式の特徴,長所,短所を 確認した。また現行の法定相続分課税方式についてはその計算構造,及び特徴 を確認している。それぞれの課税方式において「富の再分配機能」についての長 所,短所は,遺産課税方式は,遺産の分割如何により税額の変動は生じないた め富の分散促進が図れないことがあげられ,遺産取得課税方式については,富 の集中の抑制を図るという目的に最も適合していることがあげられる。第三に, 相続税の沿革をたどる。わが国において相続税制が設けられたのは, 年(明 治 年)である。この時期は遺産税方式がとられ,家督相続を優遇する措置が とられていた。その後, 年のシャウプ勧告により相続税制は大きく改正さ れる。その後,税務執行上その維持が困難である等の理由により, 年,(昭 和 年),には遺産取得課税方式から現行方式(法定相続分課税方式による遺産 取得税方式)に移行している。この改正以後現在に至るまで法定相続分課税方 式による遺産課税方式は維持され, 年の間その課税システムの変更は加えら れないまま,課税ベース,税率構造,税額控除等に修正を加えることにより, 現在に至っている。 第二章では,現行方式の問題点を制度面,及びその負担水準の変化より確認 した。まず制度面の問題点は,①財産の事後移動,②取得とは関係のない基礎 控除,③加算税,④連帯納付,⑤共同申告の問題をあげ,昭和 年当時,現行 方式に改正せざるを得なかった状況とは,改正後 年を経過する今日において は,その社会情勢は変化しており,上記のような弊害をもたらしていることが 確認できた。負担水準からの問題点は,相続税の国税に占める割合は低く,バ ブル経済の影響を受けて一時上昇した相続税の比率が,その後現在に至るまで 低下傾向にあること。また,平均負担率については,平成 年度の平均負担率 が .%であり,平成 年の .%に比べると,半減するまでにいたっている

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128 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 ことが確認できた。そこで,その要因について,相続税の「課税最低限」および 「税率構造」の推移を確認すると,確かに相続税の改革は,その時々の国民経済, 国民の財産保有状況との調整を考慮して講じられたものではあるが,それら通 じた課税最低限の大幅な引き上げや累進構造の緩和は,相続税のもつ資産再分 配効果に大きな影響もたらしてきていることが確認できた。 第三章では,格差と相続税として,現在の格差の状況を確認し,実際の相続 税の格差是正効果を計測し,その推移を確認した。現在の格差の状況について は,厚生労働省の「所得再分配調査」より当初所得のジニ係数が昭和 年より上 昇を続けており,平成 年には . に至っていること。また「全国消費実態調 査」からは,高齢者世帯における貯蓄残高を確認し,その格差がかなり大きい ことが確認できた。最後に国税庁の統計年報書より,相続財産の分布状況を確 認したが,やはり,バブル期のほどの資産分布の不平等は見られないが,それ でもわずか .%の上位層によって,課税価格の .%が占められており,資 産の分布状況にはかなりの偏りがあると推測できた。 上記の状況を踏まえて,相続税の格差税制効果を確認するために,ジニ係数 とその平準化係数の推移を確認した。長期的な推移をみると,平準化係数は低 下しており,相続税の格差是正効果は,昭和 年までの期間に比べてそれ以降 は弱体化してきていることが指摘でき,これは全期間を通じて,課税最低限が 引き上げられてきていることと,累進度が緩和され,平均負担率も低下してい ることと明らかに整合性があることが確認できた。 第四章では,今後の相続税の課題と方向性を模索する上で,特にその基礎控 除と税率構造に焦点をあて,基礎控除額及び平均実効税率を変更した場合につ いてシミュレーションを行い,その結果を確認した上で,若干の提言を加えた。 シミュレーションは,昭和 年の水準での基礎控除,及び平均実効税率を平成 年のデータにあてはめ,その試算値を計測した後,ジニ係数,及び平準化係 数の変化を確認した。その結果,基礎控除と税率構造とでは,その変動に伴う 影響が課税価格階級の層によって異なることが認識できた。具体的には,基礎 控除額の引下げは課税価格階級の低位の層に効果が大きく,税率の引上げ,ブ

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 129 ランケットの見直しは課税価格の高位の層に有効であることが確認できた。こ の結果を踏まえ,抜本的改正前の昭和 年の水準を目途に基礎控除額及び税率 構造の見直しを提言するとともに,これらの見直しが現行の課税方式から遺産 取得課税方式への移行に合わせて行われることが望ましいことを提言した。 本稿においては,扱うデータの制約上,必ずしも十分な検証が行えたわけで はないが,弱体化する相続税の格差是正効果の見直しを図る上で,今後の制度 設計に対する十分な示唆が得られたとともに,現行方式の維持では,相続税本 来の格差是正効果が期待できないことに加え,速やかな遺産取得課税方式への 移行が期待されることを提言している。

日本企業の対中進出戦略に関する研究

―松下電器の事例を中心に―

経営学専攻

白 金峰

中国経済は 世紀に入り高度成長が続いてきた。多くの日本企業は中国を生 産基地もしくは市場として活用し,中国進出を積極的に進めている。中国の統 計によると, 年 月まで日本企業の対中投資は累計で .万件であり,中国 で操業している日系企業は約 万社にのぼると見られる。しかし,中国経済の 高度成長のもとで他の外資系企業の実績と比較すると,中国における日系企業 の経営は成功とは言えず,様々な問題を抱えている。中国における日本企業の 現状を検討し,問題点を見出し,経営改善につなぐ提案をすることが本論文の 目的である。こうした目的に基づき,日本企業の中でも積極的な海外展開を行っ てきた松下電器産業をとりあげ,中国における進出と現地経営に関する実態を 探ってみた。 第一章では,研究背景と問題意識・研究目的と方法を述べた。様々な問題を 抱えている日系企業の中,本論文では,日本企業の人の現地化の問題に焦点を

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130 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 当てた。中国における日本企業の発展は,人材の現地化と切り離しては語れな い。現地の中国人社員を経営幹部に積極的に選抜,登用し,信頼して大胆に事 業を任せ,インセンティブを与えて組織に引き止めることは,中国での事業展 開,市場開拓に不可欠なことである。人材現地化の成否は中国における日系企 業の事業成功の最も重要なポイントであると言っても過言ではない。第一章で は,以上のように,研究の前提となる問題意識と論文の構成について整理して いた。 第二章では,中国における日系企業の経営特徴,まず,日本の対中国直接投 資の推移について述べた。中国における日本の家電製造業の特徴に注目した。 特に, 年代における日本の対中直接投資は,中国家電産業の発展にきわめて 大きな役割を果たし,中国の輸入代替化の達成と量産体制の確立は基本的に日 本に依存していたとも言える。中国の国有企業や地元資本の企業による努力も 看過できない。中国側は,海外から導入した技術をよく吸収・消化し,さらに 改造・改良によって技術の蓄積を進め,独自の生産技術を確立した。例えば, 牡丹電子集団(以前の北京電視機厰)は 年以降,松下電器産業や米国のGE などからの技術導入によって量産技術を確立していたが,その際,以前の自主 技術開発によって蓄積された知識と経験が,導入された技術の吸収に生かされ, その一例として,その後のベルトコンベアの製造技術の自立化につながった。 第二章は,以上のような外資をめぐる技術の送り手と受け手の双方の立場につ いて言及した。 第三章では,松下電気産業会社の概要と中国の事業展開の状況について述べ た。松下電器各種製品の製造と販売拠点は,北の瀋陽から南の香港まで沿海部 にベルト状に の拠点がプロットされている。華南エリアには 拠点,華中, 華東エリアは 拠点,中でも杭州には 製造拠点が集中している。北京・天津 周辺の華北地区は 拠点,大連,瀋陽の東北地区は 拠点,山東は 拠点である。 これらの現地拠点の実情について,日系企業の人材現地化の遅れと弊害,なぜ 現地化が進まないか,人材の現地化の進め方はどのようになっているか等の視 点から調べた結果をまとめた。

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 131 第四章では,本論文の結論を述べた。日本企業の対中進出戦略について整理 した二章と松下電器産業の事例を踏まえた三章から得られた知見に基づき,今 後の中国戦略について述べた。本研究では,特に中国における日系企業の人材 現地化問題を取り上げてきた。このような問題点に対して,日系企業は積極的 に改善に努力しなければならないことが再確認できた。まず,戦略的調整が重 要である。中国経済の発展や,市場の変化に対応して,中国事業の戦略も調整 する必要がある。中国市場への資源投資を強化し,既存企業・事業の統廃合も 積極的に進める。中国子会社により多くの権限を委譲し,その自立を促す。更 に,現地化の実施を加速し,現地の人材を大胆に抜擢し,より重要な業務を任 せるべきである。 また,問題解決に積極的に取り込むことも不可欠である。この数年間,さま ざまな調査で示された中国における日系企業の苦情,問題点はほぼ同じであり, 問題の解決が進んでいないとも受けとめられる。問題の発生に対し,日系企業 側は,中国政府の対応,中国のビジネス環境やビジネス慣行に対して不満を示 すことが多いが,日系企業自らの改善努力ができていないと筆者は考える。ま ず,自らの範囲内で改善できることを先に着手する努力が重要である。 さらに,日本的経営と中国での相性を認識する必要がある。日本の企業制度, 企業経営の慣例など,日本的経営は,日本企業の発展に大きく貢献してきたが, 中国で事情に合わないものもあり,かえって問題を引き起こすこともある。そ の中で,日本企業の人事制度が中国で適用できないことを認識しなければなら ない。中国では,信賞必罰が重要であり,権限と責任,実績と報酬のリンケー ジが不可欠であり,年功序列や責任不明が通用しない。また日本人派遣社員の 強みと弱みを認識し,現地幹部を大胆に活用しなければならない。以上が本研 究の結論である。 本論文にはいくつかの反省点がある。まず,研究に十分な時間を使えなかっ たことである。そのために,資料収集に偏りが生じた。また,論文執筆過程に 生じた世界同時恐慌による中国経済の停滞が反映されていないことなどがあげ られる。今後の中国市場における人材の問題はますます複雑になると予測される。

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132 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月

日本企業における成果主義人事制度の成功に関する研究

経営学専攻

MOLOMDAGVA TSEVELSUREN

日本企業は 年以前高度経済成長期を経て劇的な経済成長を成し遂げた が, 年以降はかなり深刻な長期の不況に突入した。その結果,日本企業は不 況脱出のため今まで日本で構築してきたシステムを変更させ,不況脱出の糸口 を見出そうとした。その一つに成果主義賃金への変更がある。かつて経済成長 が右肩上がりの時,日本は終身雇用,年功賃金を柱とした賃金システムを構築 し,それが経済パフォーマンス向上への重要な一因とも考えられていた。しか し,経済が不況に突入する中,従来の賃金システムでは立ちいかないと判断す る企業が多く現れ,システム変更の試みがなされた。その一つが成果主義賃金 への移行である。 またバブル崩壊直前の当時は,成果主義賃金への変更を促すような風潮も あった。その結果どうなったであろうか。結果は多数の企業でパフォーマンス の低下,内部の混乱が生じた。プラスの効果をもたらすどころか,かえって不 況を伸ばす要因になってしまった。メディアでは相変わらずリストラや株価低 迷の報道ばかりがなされていた。成果主義賃金の導入はアメリカに倣ったもの である。日本が不況に差し掛かっていた頃,IT景気を始めとしてアメリカ経済 のパフォーマンスは向上していた。日本企業はアメリカの成功にあやかろうと, こぞって視察に出かけた。そこでみたものは成果主義賃金に基づいていきいき と仕事を行う従業員達の姿であった。多くの日本企業は成功の要因はその成果 主義にあると考え,富士通を始めさまざまな企業がすぐに自社への導入を決め たが,導入から 年経つ 年現在は,成果主義の導入でうまくいっている企 業もある反面,うまく機能していない企業もあるという現状である。 成果主義賃金とは,直感的に言えば仕事を行った結果もらえる給料は,個人 の頑張りが反映されるものである。つまり,仕事を頑張れば頑張るほど,もら

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 133 える給料は上がり,逆に仕事をサボれば給料は下がってしまう。逆に従来の年 功賃金とは,個人の頑張りは給料には直接的には反映されない。その代わり賃 金は勤続年数を重ねるごとに確実に増えていくシステムである。つまり終身雇 用で一つの企業にい続ければ,そのうち高額な賃金がもらえるのである。勤続 年数を重ねず,頑張ればすぐにでも高額な賃金が保証される成果主義賃金が何 故日本に機能していない傾向が多いのであろうか,成果主義の成功には何が必 要なのか。以上のような問題意識のもとに,本研究を進めることにした。 本研究の目的は,日本企業における成果主義人事制度の成功を検討し,成功 に何が必要かということを事例,議論,先行研究,データに基づいて自分の考 えを示すところにある。研究方法としては,現在に至るまで企業内のデータが 少ないことから,先行研究やデータを用いる方法を採用した。 第 章では筆者の研究の問題意識や動機または研究の目的,方法などを述べ た。 第 章の 節では日本の人事処遇制度を時系列から概観していくことにした。 年∼ 年, 年∼ 年, 年∼ 年の第 期にわけて賃金を中 心とする処遇の特徴を整理した。同時に,戦後の様々な経済全般の歴史的変遷 に言及した。 第 章では実在する日本企業における成果主義人事制度の現状,問題点,成 功の鍵となる条件を探るために,日本企業の成果人事制度の事例研究を行った。 ここでは失敗事例(富士通,武田製薬,日立)や成功事例(NEC,キャノン)を取 り上げた。成功事例や失敗事例を選んだ理由としては,両方の考えを持ってこ そ人事制度に対する問題や改善などがより明確になると考えたからである。 第 章では先行研究や事例を踏まえて成果主義人事制度の有効条件には産業 (業種)特性,社員構成,目標設定,評価基準・方法,社員教育,企業文化など が大きく影響することを先行研究の議論や事例をもとにして述べた。 本研究は,日本に留学して成果主義と言われる人事制度を耳にして興味を 持った筆者の純粋な関心から始まったものである。先行研究や事例研究を通じ て,成果主義人事制度の成功につながるポイントを探った。事例研究は文献を

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134 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 中心に行ったため,細かいデータが不足していると思われる。企業内のデータ に基づいた先行研究が少ないことから,方法上の限界を招いたことが反省点の 一つである。 成果主義の実態を探るために企業内のデータをより多く研究し,これからの 方向を検討することが今後の課題である。今後機会があれば,本研究では取り 上げなかった中小企業における成果主義の実態についても事例を検討し,考察 していきたい。

実体−関連モデルによる観光コンテンツ

モデリングについて

経営学専攻

雷 䆾

本稿は,現在提供されている観光客向けの観光コンテンツの実態を調査し, 有効な観光コンテンツの作成手法を検討した上で,実体関連モデルを応用した 効果的なコンテンツの作成技法を提案する。Webによる観光コンテンツは旅行 業の宣伝をするための手法として幅広く使われており,観光名所・路線・伝統 文化及びイベントなど,さまざま旅行情報を紹介することを通じて観光客を集 め,最終的に経済効果をアップすることを目的としている。調査の結果,観光 コンテンツの主な構成は大きく以下の つのパターンに分けることができる。 ①ジャンル,②お勧めコース,③各地域の特徴(お祭,イベント,伝統など) である。 しかし,現在観光客に提供されている観光コンテンツがどの程度観光客の ニーズに応じており,本当に有効な情報を提供しているのかは疑問である。さ らに各地域のホームページ等を見ればわかるように情報の質・量には大きな差 があり,観光客に対する情報提供の取り組みには各地域で大きな差がある。 それらの主たる問題点は以下のようにまとめることができる。

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 135 .提供された情報が充実していないこと。 .観光コンテンツ間の関連が考慮されていないこと。 .観光スポットの情報が関連していないので,地域全体の観光魅力を伝 えられていないこと。 .地域の特徴をアピールするために,各観光スポットを繋げることが必 要。 .観光客の知的な好奇心を満たす内容が必要。 すなわち観光コンテンツの利用者達にとっては,知りたい情報が利用者の ニーズに応じて手に入るかどうか,興味が持てるかどうかが観光ホームページ に対する基本要件となる。一般的にこの状況に応じるコンテンツには以下の つの要件が考えられる。 ・利用者が求める生きた情報の提供が必要となる。 ・地域の特徴を踏まえた観光コンテンツの適切な提供が求められる。 ・客別のニーズを捉えたコンテンツ提供と提供ツールの組み合わせが必要 となる。 観光客の興味や関心に応じる有効な観光コンテンツのモデリング手法とし て,本稿では実体−関連モデル手法を提案する。実体−関連モデル(Entity/Rela-tionship Model)は,ピーター・チェン(Peter Chen)により提唱されたデータモデ リング手法の つで,モデル化対象(実世界)を“実体”とその“関連”からなるも のとして定義,構造化し,静的な概念データモデルを記述,実世界の対象を実 体集合と実体間の関連を表す関連集合によって表現する。一般にデータベース 設計に用いられる。 この実体−関連モデルを用いて個々の観光スポットを文脈的に繋げることが でき,ホームページの利用者が本当に必要とする観光コンテンツの作成が可能 と考えている。観光客がどの程度旅行先の観光魅力について知っているか(例 えば名前の由来・歴史の出来事・名産物などについて)の程度によって,観光 客が観光ホームページを見る視点が異なる。しかし,現在一般的な観光コンテ ンツが提供している情報は単独的で,観光客が求める情報としてうまく繋がっ

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136 彦根論叢 第 号 平成 ( )年 月 ていないのが現実である。 実体−関連モデルを用いて作った観光コンテンツは,普通に見るとあまり関 係なさそうな観光スポットが文脈を形成し,ドミノのような効果を生み,利用 者が調べたい情報,もともと知らない情報,知っていたら面白いと思う情報を 提供することができるようになる。 その有効性は以下のようにまとめることができる。 .「実体関連図」は視覚的で分かりやすいこと。 .システム作成を専門家に依頼する際の設計図になり,あやまりが少な くなること。 .コンテンツ作成者の知識に差があったとしても,実体−関連図を作成 していく過程で補完され,知識力の差に強く依存しないこと。 .一定なレベルを保証することができること。 本稿では,中国の湖北省にある赤壁という観光地を例にし,実体−関連モデ ルを使って「三国志・赤壁の戦い」再現コンテンツを作成した。まず,本を読ん だり,インターネットを調べたり,赤壁に関する主な実体を集める。そして, 実体と実体の関連を見つけて,実体−関連図を作成する。最後に,その実体− 関連図を設計図として,観光コンテンツを作成する。そうすると,必ずしもそ の観光魅力の専門家でなくてもコンテンツを作成することができるようにな り,さらに連鎖的な想起により拡張ができ,魅力的なコンテンツ生成が可能に なることを示した。また,一般的な観光コンテンツと比較しながらその有効性 を説明した上で,実体−関連モデル手法を観光客に有効な観光コンテンツ作成 方法の一つとして提案できたと考えている。 今後の課題はオブジェクト指向モデルの導入である。オブジェクト指向モデ ルの上位または下位クラスは必要に応じて拡張することができる。そうすると, 同様に複合オブジェクトは,本来語られるべきひと固まりの文脈のある情報と して提供できるようになる。実体−関連モデルおよびオブジェクト指向モデル でコンテンツ設計を標準化することで,地方都市の観光魅力をコンテンツ作成 者の能力に強く依存せずとも表現できるようにするとともに,ハイパーリンク

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平成 年度修士論文要旨(経営学専攻) 137 によるWebコンテンツの連鎖想起から,潜在観光魅力を発掘させることを可能 にする。

中国先進企業のルーツとしての郷鎮企業

―美的集団の事例分析を中心にして―

経営学専攻

李 国旗

.問題意識 年に中華人民共和国が成立してからの 年間というもの, 中国政府は計画経済体制を維持し続けてきた。政府の専門的部署が各経済分野 の目標を計画し,また制定してきた。この体制は,中国経済を計画的で安定的 に発展させたが,中国経済の活力とその発展のスピードに制約を課したことも 否定できない。そして,今日,中国政府は,経済体制の改革・開放政策に重点 を移行させている。 中国の経済改革,いわゆる市場経済化の試みは農村から出発し,その結果, 中国の農村経済は大きな変化を遂げた。その変化過程で,最も重要な役割を演 じているのが郷鎮企業である。郷鎮企業の生成と発展は農村経済のみならず, 国民経済にも影響を与えた。郷鎮企業は,中国農村経済体制の改革と中国経済 発展戦略の推進に重要な役割を果たしたと言いうるのである。また,郷鎮企業 は,農民の就業・所得機会を拡大すると同時に,郷鎮企業は中国の外貨獲得に 大きく貢献した。鄧小平が 年の「南方視察談話」の中で,郷鎮企業は「別働隊 のように突然現れた」(原文=異軍突起)とこれを評価したように,郷鎮企業は すでに中国の国民経済の中心的存在となったのである。 年に郷鎮企業の企 業数 社,就業者数 , 万人,総生産額 億元に達していた。 年現在 の中国農村地域の郷鎮企業は,社数 万社を超えており,GDP(国内総生産) 総額の約 分の ,工業生産額の半分近くを占めるまでになった。更に,郷鎮企 業の従業員数は約 憶 万人で,全農民収入の %が郷鎮企業によるもので

参照

関連したドキュメント

平成21年に全国規模の経済団体や大手企業などが中心となって、特定非営

※短期:平成 31 年度~平成 32 年度 中期:平成 33 年度~平成 37 年度 長期:平成 38 年度以降. ②

第1回 平成27年6月11日 第2回 平成28年4月26日 第3回 平成28年6月24日 第4回 平成28年8月29日

事業の財源は、運営費交付金(平成 30 年度 4,025 百万円)及び自己収入(平成 30 年度 1,554 百万円)となっている。.

※短期:平成 30 年度~平成 32 年度 中期:平成 33 年度~平成 37 年度 長期:平成 38 年度以降. ②

「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号

「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号 平成20年12月26 日)、「持分法に関する会計基準」(企業会計基準第16号

「事業分離等に関する会計基準」(企業会計基準第7号 平成20年12月26 日)、「持分法に関する会計基準」(企業会計基準第16号