1. はじめに
2013 年 8 月 1 日に設立された技術研究組合 国際 廃炉研究開発機構(IRID:International Research Institute for Nuclear Decommissioning)は、「廃炉 技術の基盤強化を視野に、当面の緊急課題である福 島第一原子力発電所の廃炉に向けた技術の研究開発 に全力を尽くす」ことを理念として、以下の研究開発 プロジェクトを展開してきている(図1)。 Ⅰ.使用済み燃料プールからの燃料取り出しに係る 研究開発 Ⅱ.燃料デブリ取り出し準備に係る研究開発 ⅰ)除染・線量低減技術 ⅱ)環境整備技術 ⅲ)内部調査・分析技術 ⅳ)燃料デブリ取り出し技術 Ⅲ.固体廃棄物の処理・処分に係る研究開発 IRID の活動概要については、原子力年鑑 2019 年 版を参照されたい。 本稿では、これらの研究開発プロジェクトの中で、 特に今後実施予定の福島第一原子力発電所 1 号機、2 号機における格納容器(PCV)内部調査技術につい て紹介する。なお、これらの研究プロジェクトは、経 済産業省「廃炉・汚染水対策事業費補助金」の一部と して実施されている。 2. PCV 内部調査技術の開発 PCV 内の状況は各号機毎に異なることから、各号 機の状況・調査内容に則した遠隔調査用ロボットを 開発してきている。これらのロボット開発の技術的 課題には、下記のものが挙げられる。 【PCV 内部調査用ロボットの技術的課題】 ① 高線量率環境への対応 ・~数十Gy/h、(累積線量:~数百 Gy) ・耐放射線性の高い電子機器、測定器、カメ ラの採用 ・照射試験による確証、測定誤差の検証 ② PCV バウンダリの確保 ・ロボットサイズ<貫通口径(走破性、搭載 機器制約) ・隔離弁の追設、シール機構、窒素加圧管理 ・チャンバー内にユニット化されたケーブル 送り機構 ・現地施工の取り合い、PCV 外装置設置エリ ア作業線量率の低減 ③ ケーブル、ケーブルマネジメント ・乱巻の抑制、干渉物の回避、ロボット放置 時の処置 ・ケーブル重量<ロボットのけん引力(調査 範囲を制約) ・ケーブルサイズ・特性[動力、制御、通信] (搭載機器を制約) ④ オペレーション ・(損傷)環境に応じた走破性 ・自己位置の確認方法、俯瞰カメラ、後部カ メラ、ランドマークの活用 ・徹底した訓練、実機モックアップ試験 (1) 1号機における PCV 内部調査 1号機のPCV 内は、水位が高い状態にあることから、 潜水機能付ボート型アクセス・調査装置(図2)を開 発している。装置は、ガイドリング取付用、計測用(サ ンプリング含む)の潜水機能付ボートが5種類、詳細 目視用の小型ボートが1種類の合計6種類(図3)の
福島第一原子力発電所の廃炉に向けた国際廃炉研究
開発機構(
IRID)における遠隔調査技術の開発
準備を進めている。 (2) 2号機における PCV 内部調査 2号機のPCV 内は、1号機と異なり水位が低く、気 中による調査が可能な環境にある。そのため、アーム 型アクセス装置(図4)を開発し、アーム先端にセン サを搭載する。アーム全長は約22m、アームの先端 には10kg までの調査装置を搭載できるように開発 している。 3. 今後の進め方 現在開発中の調査装置を使った PCV 内部調査を 確実に実施するため、装置開発後はモックアップ試 験等を実施し、開発装置の性能を検証すると共に、操 作員の訓練等も実施していく。今後も東京電力ホー ルディングスをはじめとした関係各所と緊密な連携 を構築、維持して安全かつ着実な技術開発を行って いく。 (関 修) 図1 IRID の研究開発プロジェクト 図2 1号機におけるPCV 内部調査のイメージ図 (1/2) .燃料デブリ取り出しに係る研究開発 2 .プール燃料取り出しに係る研究開発 1 3.廃棄物対策に係る研究開発 使用済燃料プールから取出した燃料集合体の長期健全性評価 2016.3終了 R/B内の 遠隔除染 技術 2016.3終了 除染・線量低減技術 PCV 漏えい箇所の 補修・止水 技術 環境整備技術 PCV 漏えい箇所の 補修技術の 実規模試験 2018.3終了 2018.3終了 PCV内 水循環 技術 PCV内 水循環技術 実規模試験 総合的な 炉内状況 把握 の高度化 RPV内 燃料デブ リ検知 技術 PCV 内部調査 技術 燃料 デブリ性状 把握・分析 RPV 内部調査 技術 内部調査・分析技術 <直接的調査> <間接的調査> 2016.7終了 2018.3終了 PCV 詳細調査 技術 燃料デブリ サンプリング 技術 2018.3終了 PCV詳細調査 X-6ペネ 実証 PCV詳細調査 堆積物 実証 2019.3終了 固体廃棄物の 先行的処理手法 技術 固体廃棄物の 処理・処分 技術 燃料デブリ取り出し技術 RPV/PCVの 耐震性評価 手法 燃料デブリ 収納・移送 ・保管技術 <安定状態の確保> <デブリ取り出し> 燃料デブリ・ 炉内構造物 取出技術 開発 燃料デブリ・ 炉内構造物取出 臨界管理 技術 RPV/PCVの 腐食抑制 技術 2017.3終了 2018.3終了 燃料デブリ・ 炉内構造物取出 基盤技術 2019.3終了 2019.3終了 燃料デブリ・ 炉内構造物取出 ダスト集塵 システム 2019.3終了 2018.9終了 燃料デブリ・ 炉内構造物取出 基盤技術 小型中性子 検出器 インストール装置 シールボックス 隔離弁 ガイドパイプ X-2ペネ ケーブルドラム 潜水機能付ボート型アクセス・調査装置 パンチルト カメラ 照明 スラスタ 調査ユニット (超音波距離計等) 約1m 約0.3m PCV内
図3 1号機におけるPCV 内部調査のイメージ図 (2/2) (a)アーム型アクセス装置 (b)PCV 内へのアクセス 図4 2 号機における PCV 内部調査のイメージ図 実施項目 作業の流れ(イメージ) インストール装置・ シールボックス設置 ガイドリング取付 詳細目視 堆積物3次元形状測定 堆積物厚さ測定 中性子束測定 堆積物 少量サンプリング インストール装置・ シールボックス撤去 ◼ 潜水機能付ボート型アクセス・調査装置については,機能毎に6種類準備する予定。 装置用ケーブル ガイドリング アクセス・調査装置 静止用アンカー 走査型超音波距離計により, 堆積物の3次元形状を測定 水位 堆積物※ 高出力超音波 センサにより 堆積物厚さを 測定 燃料デブリ※ ※:堆積物の厚さや燃料デブリの有無及び厚さは未知だが, 説明のためイメージとして記載 堆積物採取装 置により採取 ケーブル絡まり防止用に PCV内に設置 パンチルトカメラによる PCV内の状況確認 走査型超音波距離計により 堆積物の3次元形状を測定 高出力超音波センサにより 堆積物厚さを測定 検出器を用いて堆積物表面 の中性子束を測定 ※代わりにツールの搭載も可能 トロリ テレスコアーム ブーム 2軸関節 チルト機構 アーム先端にセンサを搭載 ワンド※