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スマートな都市づくりに向けた海外での先行活動

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Academic year: 2021

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  featur e ar ticle Vol. No. - 次世代都市

スマートな都市づくりに向けた

海外での先行活動

Smart Infrastructure, Smart Society Activities towards International Market

社会コストや環境負荷の増大,社会効率低下が喫緊の課題 になっている。これらの状況を踏まえ,経済発展と低炭素 社会の両立に向けて,都市建設とインフラ整備が同時進行 している。 一方,少子高齢化が進む先進国では,社会コストや環境 負荷軽減,社会効率向上をめざした都市づくりとして,エ ネルギーの地産地消や職住近接などを進めた「コンパクト シティ」という概念が提案されている。現在,先進国の都 市における社会インフラ再構築は,スマート化のコアとな る技術を大規模実証する段階にある。 地域ごとにふさわしい社会インフラのイノベーションが 求められ,経済政策とあわせて多くの国々が政策的にイン フラ投資を表明している。 3. ライフライン整備における先行活動 水や電気,ガスなどのライフラインの整備をどのように 行うかは,スマートな都市づくりの中核を成すものである。 以下に,さまざまな地域でのライフライン整備の先行活動 について述べる。 3.1 インドにおける水インフラの整備

インドでは,

DMIC

Delhi-Mumbai Industrial Corridor

デリー・ムンバイ間産業大動脈)構想1)に基づく都市開発 プロジェクトが進められている。

2006

12

月,インドの 商工大臣と日本の経済産業大臣の間で

DMIC

構想の推進 に合意した。

DMIC

構想はインドの首都デリーとインド最大の都市 ムンバイ間を大容量の高速貨物鉄道で結び,その沿線の工 業団地や道路・港湾など,総合的なインフラ開発を行うも のである(図1参照)。 日立グループは,この構想において社会インフラシステ 創業

100

周年記念特集シリーズ

次世代都市

feature article

日立グループは,ライフライン(電気・ガス・水など)や交通(鉄道・ 自動車など)をはじめとする社会インフラの設備,情報,運用・保 守サービス事業を行っている。さらに,昨今求められている社会イ ンフラのイノベーションへの取り組み強化のために,2010年4月に スマートシティ事業統括本部を,同年6月には水環境ソリューション 事業統括本部を設立し,国内外で環境配慮型の次世代都市建設 (スマートな都市づくり)をめざしている。 現在は,グローバルで活発化している実証実験や,エコシティなど の都市開発のプロジェクトに参画し,先進技術を実フィールドに適用 することで,製品開発や製品の付加価値を高める活動を進めてい る。また,社会インフラのイノベーションを推進するうえで,都市や コミュニティ固有の状況を踏まえた先行活動が重要と考え,政府の 推進テーマと連携したフィージビリティスタディに取り組んでいる。 1. はじめに ライフラインや交通など都市における社会インフラ整備 は,高効率で安定したインフラを構築することにとどまら ない。都市計画を反映し,インフラの運営の高度化や都市 の目標を考慮したシステム化への取り組みが世界的に盛ん になりつつある。また,サービス供給側と利用者側のさま ざまな情報を交換することにより,サービス向上にフィー ドバックするスマートな都市づくりに期待が高まっている。 ここでは,日立グループが海外の社会インフラ整備に関 するフィージビリティスタディや大規模実証実験プロジェ クトに参画し,社会インフラを高度化する新技術を検証し ている先行活動について述べる。 2. 社会インフラのイノベーションの動向 社会インフラ整備は,各国の制度や環境に応じて活動形 態が異なり,多様な取り組みがなされている。 新興国では,都市部への経済や人口の過度な集中が進み,

紅林

利彦

升山

義弘

森田

清紀

Kurebayashi Toshihiko Masuyama Yoshihiro Morita Kiyonori

谷口

直行

水木

文夫

(2)

  . ムのパッケージ化やスマート化を,工業団地への電力供給, 水処理,交通などの分野で関連各社とコンソーシアムを組 んで検討している2)。 ここでは,水インフラ整備に向けたフィージビリティス タディを紹介する。 3.1.1 水インフラ実態調査と整備計画調査 インドは高い人口増加率と経済成長率を維持しながら発 展を続けているため,水など社会インフラの整備が進むと 考えられる。 日立グループは,日本の技術で地球規模の水問題の解決 をめざす「海外水循環システム協議会」の一員として,

2010

年にインド水インフラ実態調査に参加した。 インドにおける上水道の普及率は

69

%(

2007

年現在)と 低く,さらに給水が間に合わず,断水がしばしば発生して いることから,主要都市においても

1

日当たりの給水時間 は

10

時間以下となっている(図2参照)。また,下水道設 備の整備も進められているが,家庭から下水道への接続や 工場排水の処理などの課題から,普及率は

33

%にとどまっ ている。さらに,工業用水も不足しており,これが原因で インドへの進出を躊躇(ちゅうちょ)する企業もある。

DMIC

開発公社(

DMIC

の推進体制として

2008

1

月 に設立)は,水インフラに関する全体計画を以下の二つに 分けて実施することを検討中である。

1

PPP

Public Private Partnership

)での事業化を前提と した事業シミュレーションを行う。 (

2

)排水処理のフィージビリティスタディを実施する。ス ケールアップによる初期投資と運営コストの低減を図ると ともに

Zero Discharge

(排水ゼロ)を実現する。 3.1.2 水インフラ整備への日立グループの取り組み 日立グループは,経済産業省から

2010

年度に受託した 「低炭素型・環境対応インフラ/システム型産業のコンソー シアム形成等支援事業」で事業シミュレーションを実施し, さらに事業性調査の精度を高めていく。 その結果を踏まえ,モルディブでの上下水道事業の合理 化促進,

UAE

(アラブ首長国連邦)ドバイ首長国における 生活排水の再生事業3) などで実績のある水環境ソリュー ションによってインドの水インフラ整備を支援していく。 3.2 中国でのエコシティ建設における先行活動 中国では,住宅,商業,産業などの多機能を有した環境 配慮型の都市づくりが「エコシティ」と称して数多く進め られている。投資会社がリードする大規模開発が多く,技 術を持つパートナー会社が集結して実システムを開発して いく都市づくりは,海外市場における社会インフラ整備の トレンドと言える。 日立グループは,中国におけるエコシティ建設プロジェ ク ト に 参 画 し,

CEMS

Community Energy Management

System

:地域エネルギーマネジメントシステム)基盤など を利用した社会インフラの開発に取り組んでいる4) 。例え ば,エネルギー管理システムを投資会社と組んで開発・整 備していくことにより,今後の急拡大が計画されている他 のエコシティへの先行活動にもなると考えている。 3.3 米国でのスマートグリッド実証の取り組み 日立グループは,

2009

年度に独立行政法人新エネル ギー・産業技術総合開発機構(

NEDO

)から「米国ニュー メキシコ州における日米スマートグリッド実証事業」5)を 受託し,米国ニューメキシコ州でのスマートグリッド実証 に取り組んでいる。実証プロジェクトは他の参画企業と共 (時間/日) 出典 : JICA(独立行政法人国際協力機構)資料 ム ン バ イ コ ル カ タ デリ ー チ ェ ン ナ イ バ ン ガ ロ ー ル 12 10 8 6 4 2 0 図2│インド主要都市における1日当たりの平均給水時間 インド主要都市では水不足という課題を抱えている。 デリー ムンバイ J.N.Port ハリヤナ州 ウッタル ・ プラデシュ州 Dadri マディヤ ・ プラデシュ州 マハシュトラ州 グジャラート州 ラジャスタン州 図1│DMIC構想1) DMICの規模は,デリーとムンバイの間約1,500 km,南北の幅は300 kmに 及ぶ。

注:略語説明  DMIC(Delhi-Mumbai Industrial Corridor:デリー・ムンバイ間産業大 動脈)

(3)

  featur e ar ticle Vol. No. - 次世代都市 この実験では,北京市のタクシー

2,000

台から位置情報 を収集して渋滞などの交通情報を生成し,

FM

Frequency

Modulation

)多重放送を用いて実験車両

10

台に搭載した ナビゲーションシステムの地図上に重ねる形で情報提供す ることに成功した。その後北京市では実際のサービスが開 始され,渋滞回避や緩和に貢献している。このような試み は他の都市でも有効と考えられ,この技術を用いた交通情 報システムを海外の各都市に展開することを検討中である。 (

2

)流入規制システム 混雑地域への自動車の流入を抑制するためには,ロード プライシングと呼ばれる課金制度を導入することが有効で あるが,地域に流入するたびに対象車を停止させて集金し ていたのでは,かえって渋滞を助長することにもなりかね ない。このため画像認識技術によってナンバープレートを 読み取り,後日課金する方式(ロンドンで実施)や,日本 の

ETC

Electronic Toll Collection

)のように専用の車載器 と通信を行う方式(シンガポールで実施)などが運用され て実績を上げている。しかし,これらの方式は道路際に センサーや通信装置の設置が必要になるなど,インフラ投 資 が か さ む と い う 課 題 も あ る。 こ の た め

GPS

Global

Positioning System

)などを用いて自動車の位置を測定し, 規制地域に入った際に課金処理を行う方式も有効と考えら れる。日立グループは,国内における画像認識や

ETC

, 衛星測位の実績を有しており,海外のニーズにも対応する ために調査・検討を進めている。 4.2 EVの導入に向けた取り組み 地上交通における

CO2

削減対策の切り札として,世界 的に

EV

の導入が進められる機運にある。自動車メーカー からは

EV

の発売が続いており,各国政府により,

EV

向 け充電インフラの整備も開始されている。しかし現時点で の

EV

は内燃機関車に比べると,航続距離が短く,エネル ギーの充塡(てん)に長い時間を要するなど,輸送機関と して脆(ぜい)弱な側面を持つ。このため充電インフラの 量的な拡大と同時に,路上での電気切れを防ぎ,効率的に 充電を行う情報システムによる支援が有効と考えられる。 また,

EV

は大量の電気エネルギーを抱えて移動し,任意 の地点で充電を行うため,大量に普及すると不安定な電力 需要をもたらすため,配電網の対策が必要である。

EV

の走行状態を監視し,適切なタイミングで走行支援 を行うシステムを検討しており,常時接続でこのようなシ ステムを実現することによって,都市の道路交通に幅広く 対応するソリューションが提供できると考えている。また,

EV

に短時間で充電を行う急速充電器の製品化とともに, 配電網との関係にも注目し,蓄電・充電スケジュールの調 同で進めており,日立グループは,ロスアラモス郡の実電 力系統での実証システム開発およびデータ検証に取り組ん でいる。鉛蓄電池で構成する蓄電設備を,他種の蓄電設備 とともに稼動させ,太陽光発電モジュールの発電電力を電 力系統に接続する

PCS

Power Conditioning System

)の高

度運用による効率・品質を検証する。

2010

3

月に現地 の電力系統や立地環境について先行調査を行い,今後,実 証システムの開発を進めていく考えである。 4. 道路交通インフラ整備における先行活動 海外の道路交通に関連する課題として,都市部の渋滞解 消と,

EV

Electric Vehicle

:電気自動車)の導入に向けた インフラ整備に着目した日立グループの先行活動について 述べる。 4.1 都市部の渋滞解消に向けた取り組み 爆発的な膨張を続けるアジアメガシティでは,道路の慢 性的な交通渋滞が社会問題となっている。交通渋滞による 人・モノの輸送の遅延は経済損失につながる。また,環境 面から見ても,

CO2

排出量の増加という悪影響をもたら すために対策が急がれている。抜本的な解決は環状道路・ 放射道路といった道路ネットワークの整備や,他の公共交 通機関の整備など,物理的な対策に拠らなくてはならない。 しかし一方で,渋滞の発生状況を的確に把握して交通管理 者や利用者に提供するなど,情報面での支援も即効性やコ ストの面から有効と考えられている。 (

1

)交通情報生成システム 交通情報生成のためには,道路上を走行する一部の車(プ ローブカー)からリアルタイムに位置や走行状況に関する 情報を収集し,都市の広域的な交通情報を生成する技術が 有効である。日立グループは,

2006

年に北京市でプロー ブカーによる交通情報の収集から提供に関する実験を実施 している6) (図3参照)。 タクシー(プローブカー) 位置情報 ・ 時刻情報 交通情報 運行管理システム プローブ交通情報システム FM多重放送 カーナビゲーションシステム 図3│北京市プローブ交通情報システムの概要 2,000台のタクシーから位置情報を収集して交通情報を生成し,実験車両の カーナビゲーションシステムに渋滞情報を提供した。 注:略語説明 FM(Frequency Modulation)

(4)

  .

整・自然エネルギーの利用などで,配電網への影響を最小 限にとどめるようなソリューションの開発を検討してい る。日立グループは,人と道路と車両を情報通信で結んで 実現する

ITS

Intelligent Transport Systems

)の実績を基に,

EV

関連のグローバルソリューションを推進していく(図4 参照)。 5. おわりに ここでは,日立グループが海外の社会インフラ整備に関 するフィージビリティスタディや大規模実証実験プロジェ クトに参画し,社会インフラを高度化する新技術を検証し ている先行活動について述べた。 経済発展と環境に配慮した循環型社会の両立をめざすス マートな都市づくりを実現するための社会インフラ整備 が,多くの国や地域で進められている。 日立グループは,関係機関・各社との協力体制を構築し, 先行活動に取り組むことにより,さまざまな社会インフラ のイノベーションを推進し,国際社会に貢献していきたい と考えている。 1) 経済産業省:デリー・ムンバイ間産業大動脈プロジェクトと東アジア経済統合, http://www.iitjapan.org/Masakazu.Toyoda_METI.pdf 2) 村井,外:インド日系工業団地へのスマートグリッドの導入による電源ソリュー ションの開発,日立評論,92,3,242∼245(2010.3) 3) 大熊,外:グローバル水環境への日立グループの取り組み,日立評論,92,6, 464∼469(2010.6) 4) 吉川,外:低炭素社会の実現に向けた社会基盤システム「CEMS」,日立評論,92,8, 592∼595(2010.8) 5)より豊かで成熟した社会の実現へ,日立評論,92,5,339∼344(2010.5) 6) 横田,外:プローブカー情報を基にした道路交通情報の生成,日立評論,88,8, 628∼633(2006.8) 参考文献など 紅林利彦 1989年日立製作所入社,社会・産業インフラシステム社社会シ ステム事業部戦略企画本部海外事業推進部所属 現在,水分野を中心としたソリューションエンジニアリング業務 に従事 日本土壌肥料学会会員 升山義弘 1983年日立製作所入社,トータルソリューション事業部産業・ 流通システム本部所属 現在,グループ連携を伴うソリューションの取りまとめ業務に 従事 森田清紀 1990年日立製作所入社,スマートシティ事業統括本部グローバ ル事業推進センタ所属 現在,社会システムのソリューションエンジニアリング業務に従事 日本原子力学会会員,日本音響学会会員 谷口直行 1991年日立製作所入社,トータルソリューション事業部公共・ 社会システム本部道路交通システム部所属 現在,道路交通分野のソリューションエンジニアリング業務に従事 水木文夫 1984年日立製作所入社,水環境ソリューション事業統括本部企 画部所属 現在,社会システムの水環境ソリューションエンジニアリング業 務に従事 執筆者紹介 グリッド制御システム ・ ・ 電力需要予測 ・ 制御 決済システム ・ ・ ユーザー認証 ・ ・ カード決済 ・ ・ 充電スタンド情報 ・ ・ 充電予約 EV 急速充電 (DC500 V) 普通充電 (AC100, 200 V) ・ ・ EV支援システム 安定電源 不安定電源 電力網 情報網 火力 ・ 水力 ・ 原子力 太陽光 ・ 風力 蓄電設備 変電 ・ 配電設備 オフィス ・ 住宅 充電ステーション 図4│EV向け走行支援・充電システムのコンセプト EV・充電システム・走行支援が連携し,スマートグリッドを形成する。 注:略語説明 AC(Alternating Current),DC(Direct Current),EV(Electric Vehicle)

参照

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