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エネルギー使用量を考慮した社会基盤施設の新しい設計法

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Academic year: 2021

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Title

エネルギー使用量を考慮した社会基盤施設の新しい設計法(

本文(Fulltext) )

Author(s)

松尾, 稔; 本城, 勇介; 杉山, 郁夫

Citation

[土木学会論文集 = Proceedings of JSCE] vol.[553] p.[1]-[19]

Issue Date

1996-12-20

Rights

Japan Society of Civil Engineers (公益社団法人土木学会)

Version

出版社版 (publisher version) postprint

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12099/24265

※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。

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土 木 学 会 論 文 集No. 553/VI-33, 1-19, 1996. 12

招待論文

エネルギー使用量 を考慮 した社会基盤施設の新 しい設計法

A NEW INFRASTRUCTURE DESIGN METHOD CONSIDERING RESTRICTION OF ENERGY CONSUMPTION

松尾稔1・本城勇介2. 杉 山郁夫3

Minoru MATSUO, Yusuke HONJO and Ikuo SUGIYAMA

1正会員 工博 名古屋大学 工学部 理工科学研究 セ ンター長 土木学会会長 (〒464-01名 古屋 市千種区不老町) 2正会員 Ph. D. 岐阜大学 工学部 土木工学 科 助教授 (〒501-11 岐阜市柳戸1-1) 3正会員 工修 株式 会社 日建 設計 土木事務所 設計部長 (〒541 大 阪市 中央区高麗橋4-6-2)

Key Words: infrastructure design, environmental economics, energy consumption, sustainable development, carbon serviceability, design method, CO2 emission

1. まえが き 本研究の目的は, 20世 紀末の現在, これか ら人 類が 直面す るであろ う資源 ・環境 の制約の問題 を踏まえ, こ れ を社 会基盤施設 の設計 と言 う観点か ら捉え たときの, 新 しいアプローチの仕方 を模索 し, 試案 を提示すること にある. 我 々は, 今 日の根本 的な問題 を次の ように認識 している. 産業革命以来, 特に20世 紀の初頭, そ して第2次 世 界大戦以後, 近代の技術 と科学の発展 と普及に支え られ, 世界の物的生産, 消費は急激に拡大 し, 人 口も50年 ご とに倍増す るという著 しい増加を示 した. これは, 人類 の歴史の中で未曾有の急激 な変化で あることは間違 いな い. もちろんその背後 には, 化石燃料 など地球 の長い歴 史の中で蓄積 された資源の大量の消費 と, 温室効果ガス の発生に代表 される環境負荷の著 しい増大があった. このような, 著 しい経済成長を実現 したのは, 資本主 義経済社会体制であ り, また この中で発展を遂 げた科学 技術の応用による生産性の著 しい向上であ った. この シ ステムは, 人類の物的な欲望を刺激す ることにより, シ ステム全体 の効率化を極限まで追求する ことを可能 にし, またそれを強い るシステムであった. しか し, 一方で こ のシステムでは拡大 と成長 が前提 とされ, 成長 の停止を 許容す ることのできないシステムで もあ る. この システ ムではまた, 資源 ・環境が その成長の制約 となることは 前提 とされてい ない. 一 方で, この ような急激な成長 は全 世界で一様 に起 こったのではな く, 先進工業諸国 と言われる一部の北の 国々で先行 して起 こった変化であ った. 現在 では, 最 も 豊かな国 と貧 しい国の一人 当たりの所得 格差 は100倍 以上 に も達 してい る. このよ うな著 しい経済 的格差 は, 倫理的に も問題であるが, 世界全体の経 済 ・社会 システ ムの安全性の上で も見過 ごせない問題 である. この よう な格差を是正 し, 国際社会を安定な状 態に維持す るため に は, これ ら発 展途上 国の経 済 ・社会 的な成 長のため, 今後 と も相当程度 の経済成長を達成す る必要性があ る. . 先に言及 したよ うに, 今 日の成長を可 能に した資本主 義経済 システ ム と並ぶ もう一つの要素 は, 科 学技術 で あった. これ も経済 システムの枠組 みの中で, 経済 的な 効率性を追求することで著 しい進歩 を遂 げ, その結果 細 分化, 専 門分科 が著 しい. このよ うな枠組み の中で は, 個別の分野の科学技術 は, 社会 システム全体の 中で求 め られている目的を把握 し, これに整 合す る形で 自身 の個 別分野を発展させて行 くことが困難 にな りつつある。科 1

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学技術 において も総合化が必 要であ り, 個 々の分野で, 全体 を視野 に入れた 調和の とれた 目的の設定が重要な課 題である. 資源 ・環境問題を考え るに当た って は, 一部のいわ ゆ る 「環境主義者」が 唱え るよ うに, ただ昔の 「シンプル ・ライフ」 にか えれ ばよい と言 った解決 はあ り得な い. 今 日の人口は既に20世 紀半ばの2倍 以上 に達 してお り, これを維持 して行 くだけで もそのような選択はあり得な いからである。今 日では, この問題解決 のため, 新 しい パラダイムが求め られている. それは, 資源 と環境 の長 期的な保全を可能 にす る社会 システムと, これを支え る 調和のとれた新 しい科学技術 の構 築を 目指す もので ある 必要が ある。 このような新 しいパラダイムを視野 に入れ, 我 々は今 後必要とされる経済開発 を可能 に しつつ, エネル ギー使 用量や環境負荷 の低減を考 慮 した社会基盤施設の 設計法 に関する新 しいアプ ローチを提案す るのである. 新 しい 社会基盤施設の計画 ・設計 法とは, 現在 までに得 られて いる知識の総合化であ り, 人間活動 と自然 システ ムの調 和のとれた意思決定手法 の ことであ る. 2. 研 究 の背景 (1)人 唾 ・資源 ・エネルギーと環境負荷 現在各方面で議論 されて いる種 々の環境問題の背景に は, 周知のように人類の爆発的 な人 口増大, これ と合い まった工業文明の進歩による資源 とエネルギーの大量使 用の問題がある. 本 節で は, この点を基本 的な統計を参 照 しなが ら簡単に指摘す る. 図一1は, 1991年 に厚生省人 口問題研 究所 よ り発 表 された 「世界の人 口の推移」で ある1), これは種 々ある この種の推計の内, 中位 の部類に属する推計 と思われる が, これ によれば1950年 に約25億 人の人 口が, 1990年 に53億人とな り, 2050年 には約100億 人にな ると言 うま さに爆発的な人 口増加 を示 してい る, また, その増加 の ほとんどが途上国で起 こることに も注意す る必要がある. 図-2は, 世界のエネルギー利用の変遷 を示 した もの である. 第二次世界 大戦後の大量生産 ・大 量消費の進 展 に伴いこれ もまた人 口増加以上 の爆発的なエネルギー消 費が起こっているこ とが分かる2). またその主役 は, 石 油 ・石炭 ・天然ガス等の言わゆ る化石燃料 であ る. なお, 統計には示 されないが, 一人 当た りのエネルギー消費量 には世界で著 しい格差があ ることに も注 意を要する. た とえば, 全世界人 口の5. 2%を 占める北米のエネルギー消 費量 は全 世 界 のエ ネ ル ギ ー 消費 量の27. 5%で あ る の に対 し, 人 口 の12. 2%を 占 め る ア フ リカ の そ れ は僅 か2. 8% に過 ぎな い, 今 後 途上 国で 開 発 が進 め ば, エ ネル ギ ー使 用量 は, さ らに 増 加す る こ と は確 実で あ ろ う. 図一1 世 界 の人 口の 推 移1) 図-2 世界 のエネルギー利用 の推移2) 図-3 大気中の二酸化炭素の変動2)

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表-1に は, 1993年 に通産省 か ら発 表された主たる エネルギ ー資源の埋蔵量に関す る基本値を示 した3). 可 採年数を見 ると石油45年, 天然 ガス60年, 石炭200年 と なっている. 我 々が数億年の地球の歴史の中で固定 され てきた太陽エネルギーをいかに急激に消費 しようとして いるかが分かる. 表-2は, 1991年 現在 で推定 された主要金属元素の 可採年数の推定値 を示 した2). いくつかの ものは, 年間 生産量が世界埋蔵量 の数パーセ ントに達すると言 う異常 な状態で, これ もまた急激な消費であ ることが理解 され る. 以上のよ うなエネル ギー と資源 の大量消費は, 資源の 枯渇 と言 う意味で も大変大 きな問題であるが, 同時に温 暖化に代表され る地球環境に著 しい変化を もた らす と言 う意味で も極 めて深刻 な事態とな ってい る. 図 一3は, 18世紀末から今 日までの大気中の二酸化炭素濃度の変化 を示 している2), 極地の氷 に閉 じこめ られた古大気 の分 析より, 五千年∼一万年前か ら産業 革命頃までは, 大気 中の二酸化炭 素濃度は280∼290ppmで あ ったことが確 認 されてお り, 著 しい増 加を示 していることが分かる. 二酸化炭素の増加 と地 球の温暖化 の因果関係 について は, 研究者の 間で も多 くの議論 があ るが, 最近 のIPCC (気候変動に関する政府 間パネ ル)の 報告では, 人為 的 温暖化説 を採 るに至 っている4). - 以上示 した統計値は, この種 のもの と してはご く. 一部 であるが, それで もなお生物 と しての我 々が, 子孫 の生 存の可能な限 りの延長を, 今真剣 に考え るべき時で ある ことを教えるのに十分であろ う. (2)エ ネルギー使用量の低減を考慮 した社会基盤 施設 の建設 前節で述 べた よ うな地球規模 での環境問題を踏 まえ 1992年2月 に リオ ・デ ・ジ ャネ イ ロで 開催 され たのが, 地 球環 境サ ミッ トであ った5). そこで採択 された宣言 「ア ジェ ンダ21」 の 中心 的な概念は 「持続可能 な開 発 」(sustainab1e deve10pment)で あっ た. 環境破壊 を引き起 こさない環境容量範 囲にいて, 可能な限 りの経 済成長を成 し遂 げるとい うこの概念 は, 何人 にも反対す ることの出来ない理想的な概念 である. しか しそ もそ も 環境の保 全(susutain)と 経済 の開発(deve1opment) は トレー ドオフ関係 にある対 立概念で ある. 人 口の約2 割を占める先進諸 国でエネル ギーの約8割 を消費 してい るとい う現実がある. 途上国の経済開発 に伴い, エネル ギー使用量は増大 し, それは必然 的に環境負荷を増 大さ せることは必至である. 「持続可能な開発」 と言 う言葉 は, 環境 の保全 を望む北 と, 経済開発を望む南の国 々の, 両者を満足 させるための誰弁にすぎないと指摘す る向き もある くらいである. この ような観点に立てば, 「持続可 能な開発」の達成 は, 絶望感に襲われ, 気力が萎えるほ どの困難 さを感 じ させる. しか し我々は何か を しなければな らない. 上述 の困難 さを認識 した上で, 我 々に可能な ことか ら, 具体 的に行動 を始めな ければな らない と考 える. 環境問題を考え るときの 一つの基本 的な概念 は, 建設 ・生産 に要す る各種の資源 と, それが生み出す産 出物 と 表 一1 世界のエネルギ ー資 源埋蔵 量2) 表-2 世界の主要金属元素埋蔵量2) 3

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廃棄物の関係を, 出来 る限 り循環可能な 「閉 じたシステ ム」と して全体 を捉え ることである. そ して, 我々技 術 者の使命とは, この ような循環 の中で, 環境負荷が低減 され, 資源が有効利用 されて行 くような技術を開発す る ことであろう. この ようなアプ ローチに より, 従来 は廃 棄されていた材料を, 全 く異な った局面へ の活用を図 る と言った発想 も生 まれて くる. 本論文で我々は, この ような考 え方 を社会基盤構造物 の設計法に適用 しようとしている. 従来社会基盤施設の 設計は, 経済性 と安全性 と言 う2つ の トレー ドオフ関係 にある評価尺度を用いて行 われて きた. 一般 的には, 安 全性を安全率で表 した制約条件 と し, この上 で経済性が 最適化す るよ うに構造物は設計 されて きた. 信頼性設計 法は, 構造物の安全性 を破壊確率 と して評価 し, 構造物 が破壊 した ときの費用 と破壊確率 の関数である期待破壊 費用 と, 直接の建設費の和であ る, 総建設 費用を最小化 す るような設計代替 案を選ぷ という構造 を持 ってい る. これは, 経済性の制約 上, 我 々は無限に安全 な構造物を 建設することは出来 ないと言 う現実を反映 しているの. この ような従来か らの設計法の評価尺度 に, 経 済性, 安全性 の他に, 環境負荷を加 えた ときの設計法の定式化 がどの様な もの となるべ きか と言 うのが, この研究の最 初の着眼点である. これは先 に述べた, 「閉 じた システ ム」 として社会基盤施設の設計問題を定 式化 しようとい うところに, 狙 いがある. 本研究では, エネルギ ー使用量 の指標 と して, 発生す る二酸化炭素量を用い る. 二酸化炭 素発生量を指標 と し た理由は, これがエネルギー(特 に化石燃料起源のエネ ルギー)使 用量と密接に結びついて いることに もよるが, 地球温暖化など環境問題に直結 した指標であ ることも一 つの理 由である. ところで, 酒井 と漆崎7), 外岡ら8)の研究に よれば, わ が国の土木 ・建築を含む社会基盤施設の建設 と維持管理 より発生する二酸化炭素の, 日本全体での発 生量に対す る割合は, 約1/3(炭 素 換算 で約3億 トン)で あると言 う結果 も出ている. 途方 もない難題で ある地球規模 の環 境問題からすれ ば, 局所 的な ことで はあるか もしれない が, 上記の意味でエネルギー使用量 と環境負荷 を低減 さ せる社会基盤施設の設計方 法を考察す ることは, 環境負 荷を低減 させるサブ システムの一っ と して重要 な課題で あると考える. なお本研究 と類似 のアプローチ と して最近 注 目を集め

ているものにLCA(Life Cycle Assessment)が ある.

LCAは, 環 境 に や さい し商 品(Environmental

Conscious Product)の 開発 のため, 商品の生産 ・消費 ・廃棄 の全ライ フ・サイクル の発生する環境負荷を計量

し, これを低減す ることを 目指 している(Yamamot0, 19959); Boustead, 199510); Gotoh, 199511)). LCAは 本研究と極めて近い問題意識をベースと しているが, 著 者 らは少な くとも次の2点 で異なっていると考えている: 1)LCAは, 生産 にお ける環境負荷の低減 と経済開 発の競合的な関係を意識 した, 商品開発 における意思決 定 という意識は極めて乏 しい. 本研究が問題 としている ような社会基盤施設の計画 ・設計の問題では, これは避 けて通 ることの 出来ない問題であ り, この競合 関係を考 慮 した意思決定の方法が, 本研究の一つの 目的で ある。 2)LCAは, 本来大量生産可能な消耗品を主体 とし た製品を対象に発展 してきたため, 社会基盤施設 の計画 ・設計のように, 規模が大き く, 一品性で, 構成材料が 多様, 耐用年数 の長い構造 物へ の適用 について は未開発 である(Okada and Koizumi, 199512); Ikaga and Ishifuku, 199513)). 本研究で はこの ような構造物のエ ネルギー使用量 や環境負荷 を考慮する ことの意味 につい て もできる限 り考察を加 えた. 著者等は, 21世紀の社会基盤施設の設計代替案の採択 には, 従来の経済性 と安 全性 の尺度に加 えて, 環境負荷 やエネルギー使用量を評 価尺度 として取 り入れ なければ な らな くな ると信 じている. 3. 従 来の設 計 法 と新 設 計法 先に2章 でも述べ たように, 現在環境問題 として登場 している問題は, 従来経済発展 の前提条件 と して無限 と 考え られていた資源や, 環境容量 が実 は有限であ り, こ のため経済発展が資源 や環境容量 の有限性を考慮せずに は, もはや成 り立たな いことを示 している. 本章ではこの様な視 点より, 従 来か らの社 会資本整備 計画, 特にこの一部で ある社会基盤施設の設 計法 のあ り 方を反省 し, 将 来のあ るべき姿を考察すると ともに, 新 設計法の具 備すべ き条件を考察す る. (1)従 来の社会基盤施 設の計画 ・設計 法 現在最も一般 に行 われている社会資本整 備計画の評価 手法の一つは, 費用 ・便益分析であ る. そ こで は当該 代 替案の実施にともな い生 じる便益を消費者 余剰 として計 量 し, また代替案 の実施に伴 う直接的 な費用 を算 出 し, その差である純便益が大きい代替案を実施す るものであ る. 上記のような計画法を, 簡単な数式を用いて書 くと:

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(従来の計画法)

max B(a) = BT(a) - C7(a) (1)

ここに, B: 純便益, BT: プ ロジェク ト実施 によ り得 られ る余 剰的な便 益, CT: 総 費用, a: 代替案. 社会基盤施設の計画 法と設計法 が基本的に 同一 もので あることに着 目し, 設計法が一つ の意思決定問題 と して 定式化 できることを明確 な形で示 したのは松尾のである. すなわち, 社会基盤施設の個々の構造物の設 計では, 純 便益の最大化 と適正な安全性の確保 とい う2つ の指標 を 考慮 した意思決定問題 として設計法が定式化 できること を示 した. ところで, 構造物の設計では, そ の構造物の 建設によ り生ず る便益については, その構造 的な設計 に かかわ らずほぼ一定であると仮定できる場合がほ とん ど なので, 設計法の問題 は, 総費用 の最小化を 目的と した 意思決定 問題 として定 式化 される. 信頼性設計法では, 安全性 に関す る不 確実性 を設計の 中で陽に考慮 し, 構造物が破壊 した ときに生 じる期待損 失費用 と, 建設費用 の合計であ る総建設 費用を最小化 す ることにより, 設計代替案の選択を行 うことを提案 して いる. 換言すると, 安全性を期待損失費用 と言 う形で建 設費用 と同じ金銭タームの評価指標に置 き換え, この合 計である総費用を用いて, 意思決定を行 う設計法と見 る ことができる. この方法では, 経済 的な制約のため無限 に安全な構造物を建 設す ることはできない とい う現実を, 設計法の中に直接反映させている. この場合, 問題 は次 のように定式化される: (信頼性設計法)

min CT(a) = C(a) + Pa) CF (2)

ここに, Cc: 建設 費用, PF: 破壊 確率, CF: 破壊費用であ り, 構造物 の重要度は破壊費用CF の増大 として表される. しか し一方でその構造物の破壊費用や破壊確率を適切 に評価することは容易ではない. また, ルーチン的 に建 設 される構造物でこのような評価を行 うことは, 実務的 にも非能率的である. そこで慣用的に用 い られてい る安 全率を用いた設計法(部 分安全率を用いる設計法や, 限 界状態設計法を含 む)で は, 安全率を満 足させる という ことにおいて一定 の安全性 を構造物に保 証 している(規 格化 された安全性). これ は, 安全性 を制約条件と した 費用最小化問題 と見る ことができる. す なわ ち: (安全率を用いた設計法) min C(a) s. t. PF(a) < PF* (3) ここに, PF*は, ある規格化 され た破壊確率であ り, 通 常安全率 として与え られる. この設計法は, 総 費用最小 化 と言 う観点か らす ると, 1つ の簡易化 された設計法 と 見ることができる. 以上か らわかるように, 信頼性 設計法で も, 安全率を 用いる設計法で も, 設計法への安 全性 の採 り入れ方が異 なるとは言え, 経済的な便益を最 大化 しようとする点で は, 総便益の最大化 と言 う従来か らの社会基 盤施設の計 画法 と同 じ範疇 に属す る考 え方, さらに言えば伝統的な 経済学のパ ラダイムに基づ く考え方に よって, 定式化が 行われて いることがわかる. 前章までに詳 しく述べて きた ように, 資源や環境容量 を無限 と考えてきた従来の経済学のパ ラダイムは, すで に破綻の兆 しを示 してお り, 現在で は新 しいパラダイム が求め られている. 新 しいパ ラダイムとはどのよ うなも のか, またその元で社会基 盤施設の計画法や設計 法はど のような方向を 目指 して行 けばよいのか, それが 次節の 課題である. (2)新 設計法が具備すべ き内容 社会基盤施設の計画や設計は, 社会全体 の経済活動の 一部であ り, この意味で経済学の動 向を見てお くことは 重要である. 経済学の分野で も伝統 的な経済学 に対する 反省に立 ち, 資源や環境容量の有 限性 を考慮 した新 しい パ ラダイムに立 った理論 的な枠組み の構築が盛んに試み られている. 植田 ・落合 ・北畠 ・寺 西(1991)14)は, この ような経済学 の動 きを, (1)物質代謝 論アプロー チ, (2) 環境資 源論 アプ ローチ, (3)外部不 経済 論 ア プ ロー チ, (4)社会的費用論ア プローチ, (5)経済体制 論アプローチ の5つ に類型化 して いる. 物質代謝論アプローチは, 従来の経 済学が市場経済 の 分析に終始 し, 物質収支(マ テ リアル ・バ ランス)の 分 析をなおざりに して来たこ とを批判 し, 議論を展 開 して いる. このアプローチは, 物質収支の分析, 熱力 学のエ ン トロピー概念 を導入 した物質循環の不可逆性 の経済学 の導入等を通 し, 経済学 の根本 的な再構築を展 開 してい る. 環境資源論 アプ ローチは, 環境 をあ る特殊 性を持 った 資源(再 生産不可能 な ど)と 捉え, これを経 済分析モデ ルの定式化に取 り入れ, 特 に持続可能な資源 の合理的な 管理 を考え よ うとす る立場 であ る. このアプローチは, 規範分析的な側面が強 い. 5

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外部不経済論アプローチと, 社会的費用論 アプローチ は, 従来の経済学の中で も資源配分の 「効率 」, また所 得配分の 「公正」 と言 った経済状態の判断の基準を展開 することを問題 としてきた厚生経済学の分野 にルー トを 持つアプローチである. 特 に前者 は, 市場経済 に反映さ れない外部不経済による 「市場の失敗」を問題 と し, こ れを何 らかの手段(多 くは公共的な政策手段)を 用いて 市場 に内部化す るべ きだと言 う考え方を確立 してきた。 一方後者は, 市場 に外部的な社会的費用 は, 経済体制上 不可避であるとす る考え方を導入 するなど, より政治経 済学 的な志向を持 ってい る。 最後の, 経済体制論アプ ローチは, 社会経済体 制のあ り方が公害等の発生やそれに対す る対応の仕方 に違 いを もた らしうるという, 政治 経済学的な方法論である。 我 々はこの ような5つ の アプローチの内第1番 目の 「物質代謝論アプローチ」と, 第2番 目の 「環境資源 論 アプ ロー チ」が前節 で展開 してきた ような問題 に対 し, 最も根本的な批判を展開 してい ると考え, これ らのアプ ローチに即 して我々の考えを展開す ることにする. 従 っ て, これ らのアプローチについては, ここで少 し詳 しく 紹介する. 物質代謝 アプ ローチはまず, 従来経済学が分析の対象 としてきた市場 シス テムの枠を越えて, 人 間の経済活動 と, 資源や廃棄物 と自然の生態系全体を含 む自然 システ ムとの関連に注 目し, その全体での物質収 支を捕え, 分 析 しようとした(図 一4). このアプローチが登場 した 1970年 代初頭には, すで に公害 と言 った形 で環境汚染 の問題が深刻化 していた時代であ り, 従来 までの経済分 析がたとえば 「最終消費」 と して燃料, 原料, 最終製 品 のような物質が, あたか もどこかに消滅 して しま うよう な取 り扱いを しているの に対 し, これ らの物質収 支を明 確に し, これ らを制御す ることを主張 した. このよ うな物質収支の考え方と平行 して, 人 間の営む 経済活動を, 熱力学の第2法 則であ るエ ン トロ ピーの増 大と して捕え, 展開 しよ うという考え方 も出て きた. す なわち, 人間の経済活動は, 外的な 自然か らさまざまな 資源 と して低エ ン トロピー状態の物質を摂 取 し, 生産, 交換, 消費を通 して経済活動を支え, 高エ ントロ ピーの 排熱や廃棄物を外的な自然 に捨てると言う不可逆 過程 を 通過す ることに より成 り立 ってきた。この ような活動 は, 外的な自然が人間の経済活動に対 し無限 に大きい時には 可能であろうが, 人間の経済活動が拡大 し, その規模が 地球の自然 システムと対置 しうる大 きさに達 してきた と き, 危機を もた らす。 このよ うな反省に立ち, 現在の経 済 システム, 生産 システムを根源的 に問い直す ことが必 要であ ると主 張 した. 以上のような物質代謝 論アプローチを進めて行 くうえ で, 経済 システムと自然 システムの相互構造を捉える一 つの方法 として, 寺西は投入 ・算出分析 の方法を拡張 し た, 図 一5の ような表現 を提案 している. 図 一5の 領域(2)は<経 済 一経済>の 領域で あ り, 従 来か らの経済循環を表 し, いわゆる産業連関表によ り表 される. 一方, 領域(1)の<自 然 一経済>の 部分 は, 人 間の経済活動へ 自然 システ ムか ら投入 される物質収支を 記述す る領域 である。また領域(3)のく経済 一自然 〉の 領域は, 経済 システ ムか ら自然 システ ムへ排 出され るエ ネルギーや諸物質 に係わ る部分であ る. 最後 に領域(4) の<自 然 一自然>の 領域は, 自然 システムにおける物質 循環を表現する領域であ り, 自然 システムによるた とえ 図-4経 済システム と自然 システムにおける物 質収支 図一5経 済 システム と自然 システムの連関構造

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ば排 出され た諸物質 の分解, 拡 散, 固定, 蓄積過程 と, それ らが 自然 システムに与える影響 などの分析が行われ る部分である. 以上見てきたように物質 代謝論アプ ローチで は, 経済 システムと自然 システムの全てに関わ る物質収支を解 明 し, 環境や資源 の有限性を考慮 した経 済活動のあ り方を 模索 しようとしている. しか し, この ように個々の物質 の循環のメカニズムを全体的に捉え ることに多 くの未解 明な点のあることは明らかであろう. これに対 し, 2番 目の 「環境資源論アプローチ」は, 環境資源と言 うやや 抽象的な概念を用いて論を進めてお り, 前者が定量的な 分析を 目指 しているとすれ ば, 後者 はよ り規範的な分析 を 目指 していると言える. 北 畠14)は環境資源論アプローチの一つ の典型的なモデ ル として, 環境の 自己再生能 力に注 目す ることによって, 持続可能な開発の方途を模 索す るため次のようなモデル を提案 している. 環境の 自己再生産 能力は, 現在存在 し ている環境の蓄積量に依存 していると考え, まず これを 環境 ス トックS(t)と 定義 した. 環境ス トックはそれ 自身が存在す ることにより, 環境 を再生産する ものであ る. さらに現在 の環境 ス トックS(t)の 関数であ るよう な環境の自己再生能力をモデルに組み込んだ. これは環 境再生産関数H(S)と して定義 され, 単位 時間当たり の環境の自己再生能力を表す. この関数 はSに 関 して単 調増加(環 境 ス トックが大 きいほ ど再生産力 は大きい), 逓減的(環 境ス トックが大き くなるほど自己再生能力の 増加率が減少する)で あ ると仮 定す る. 一方開発 とは, 環境ス トックを投入することにより環 境以外 の何 らか の価値を産 出す ることで あると言え る. 従 って この場合, 開発 とは環境ス トックSを 取 り崩 し, それを消費 して環境以外 の何 らかの フローを生産する行 為 と言うことになる. このフローを環境負荷(北 畠では 開発 フ ロー)と 呼び, その単 位 時間 当た りの量 をz (t)で 表す ことにしよ う. 以上の準備の下 で環境ス トックの収支 を考え ると, 単 位時間当たり再生産 される環境ス トック量か ら, 開発に より単位時間に取 り崩され る環境負荷を差 し引いた もの が, 環境ス トックの変化率で あるか ら, 各時間ステ ップ において次式が成 り立っ:

1 ) IT = H(s(t)) - z(t)

(t=0, 1, T) (4) 北 畠(1991)はこの方 程式 を環境ス トックの蓄積方程式 と呼んだ. この方程式の初期条件 としては, 現在 の環境 ス トックの量を与え ればよい. 一方, 北 畠は開発効用関数を仮 定 し, 開発 により得 ら れる効用を計量 してい る. 結局 の ところこの ような効用 を計量できる実際的な指標は純便 益であると考え られ る か ら, 環 境負荷Z(t)に よ り生 み出 され る第t期 目の 純便益をB(z(t))と 置 く. 経済 学では ご く一般的 な仮定 であ る, Bの 単調増加性や, 逓減性を仮定す る. 以上の準備の下で持続可能な発展とは どのように定式 化され るであろうか. それは, 次のよ うに表 される: max Z B(Z(t)) (1 +r)- t=o s. t. dS(ti) d = H(S(t)) - z(t) ti (t=0, 1,oo) (5) ここに, r: 社会的割引率で与 件と して与え る. すなわち長期的な純便益の総計を, 環境ス トックの蓄 積方程式の制約の下で最大化す るような開発行為を選択 するのである. このような定式化を しなければ, 開発主 体は環境ス トックに関す る制約を無視 し, 短期的な視 野 に立 ち, 時間ステ ップごとに便 益を最大化す るような開 発行為(B(z(t))=0)を 繰 り返 し, 開発 フローの拡 大が環境ス トックの枯渇 を もた らし, 結局は開発 自体が 不可能 になるような事態 に突入 して しまう. それ が, 資 源や環境容量を無限と仮定 した, 従来の経済学 のパ ラダ イムでの開発の結果 であ る. 北 畠は, このような問題設定 の基で, この問題の定 常 点(dS/dt=0)に 到達 したとき, 環境ス トックは その限界再生産性が社会的割 引率と等 しくな る点で均衡 す る(H(S0)=r), またこの ときの環境 ス トック 量(S0)に 対応 した シャ ドー プライスに より開発税を 課す ことにより, 持続可能な開発が半永久 的に可能であ ること等を見いだ してい る. また, 現 時点か らこの よう な定常 点に収束 して行 くための開発税政策 につ いて も, 議論 している. この 「環境資源論アプ ローチ」 は, 環境ス トックの具 体的な姿が明確でない, またこれに付随 して実 際の環境 再生産関数Hを 決定す る方法が現在の ところない, 環境 負荷の分配の問題(南 北 問題)が 含 まれていない, 社会 的割引率を与件 として いる等多 くの単純 化はあ るものの, 環境ス トックの蓄積方程式を定義 することを通 じて, 環 境がそれ自身の有限性 に基づいて経済活動 に課 して くる 制約条件を定式化に取 り入れることにより, パ ラダイム の転換が表現されてい るところに意義がある. また, 資 源 の問題 を考 え るとき, 長期的 な視野 に立 った便益や, 環境負荷の考慮が重要 であることを示 している. いずれ 7

(9)

にせよ、このアプローチは, 環 境経済学の規範分析 の道 具 として発展 して行 くと考え られ, 実際の定量的な分析 に使用す ることは当分考え られない. 以上の考察よ り, 社会基 盤施設の新 しい計画法 や設計 法が具備すべき内容 と して, 以 下のよ うな点を上げるこ とができる. 1)純 粋に経済的なメ カニズムとは異な った, 資源や 環境容量の有限性か ら課せ られる制約 を定式化の中に取 り込む必要がある. 2)長 期 間に わたる視野が評 価に当た り重要であ る. すな わち, 少な くともプロ ジェク トの ライ フサ イクル (建設, 維持管理, 破棄)全 体 での経済効果と環 境負荷 の評価を行 う必要がある. 3)上 記の制約の基で, 経済 的な純便益の最 大化 を行 うことが, 人口の増大に対 し一定以上の福祉を保証 して 行 くような経済 開発を可能に して行 く上で必要 である。 4. 新 設 計法の 概念 と定 式化 (1)豪 説 本章では, エネルギー使用 量を考慮 した社会基盤施設 の新 しい設計法を提案す る. まず前章までの議論を踏ま え, 資源や環境の制約を考慮 した新 しいパラダイム に立 つ経済システムと自然 システ ムを 同時に考慮 したモ デル を説明す る(4(2)a)). 一般的 なモデルは非線形で極 めて 複雑なモデル とな るが, この経済 システムの部分を線形 化(あ るいは線形であると仮定 した)モ デルは, 産業連 関表 となり, これを用いることにより自然 システ ムか ら 経済 システムへの資源の入力や, 経済 システムか ら自然 システムへの廃棄 物の出力を ある程度定量的に捉え るこ とが出来 る可能性があることを示す(4. (2)b)). 自然 シス テム内の物質収支の問題 は極めて複雑であ り, 現在 これ を完全に記述できるモデル は存在 しないため, ここでは 前章で紹介 した環境 ス トックの蓄積方程式 を修正 した も ので説明する。 また自然システム内の物質収支の複雑さのため, 上記 のモデルで全ての資源や廃棄物の収支を計算す ることは 現時点では出来ない. そ こで本研究では, これ らを総合 的に計量する指標と して, 経済 システムか ら自然 システ ムに排 出され る二酸化炭素 量を選んだ. 4. (2)c)では, こ の指標を選択 した理 由及 び定量的な排出量の計算方法に ついて述べ る. 4.(3)は本論文の主要部分 であ り, 4. (2)で説明 したモ デルに基づ き, 新 しい社会基盤 施設の計画や設計手法を 定式化する(4. (3)a)). 新設計 法は, 経済 システム と自然 システムのメカニズ ムを制約と した上での純便益を最大 とする意思決定問題 と して定式 化され る. 本論文では特 に純便益の算定に当たり, 総便益を考慮す る必要があ る 問題を 「計画問題」, 総便益が 意思決定の結果に依 らず 一定と仮定でき, 従 って費用最小化に 目的関数が帰着す る問題を 「設計問題 」と定義 している. 定式化 された設計法では, 自然 システムに対す る二酸 化炭素の排 出量の許容値を算定す ることが, 自然 システ ムの複雑さのため現時点では困難である. 4.(3)b)で は, この点を暫定的に回避 し, 環 境負荷を設計法 に取 り込ん で行 く当面の指標 としてcarbon serviceability(CS) なる概念を導入す ることを提案す る. (2)経 済 一自然 システムの基本モデル とエネルギ ー使 用量の計量 a)一 般モデル 図一6に 本研究で提案 する経済 一自然 システ ムに関す るモデルを示 した. まず, 経済 システムにおける各産業 部門の生産量を表すベク トルをX(t)と し, こ の内最終需 要ベ ク トルをY(t)とする。 この とき, 産業連関方程式と して次式が成 り立つ:

Y(t) = F(X(t)

S(t))

(6)

ここに, S(t)は自然 システムの中のいろい ろな物質の蓄 積量を表すベク トルであ り, Sは 総 じて経済活動の環 境 に影響を与える. また, tは これ らが第t期 間の もので あることを示す. 一方, 式(6)のような経済活動 によ り生 み出される全 体の純便益(効 用 と言って もよい)は, 次の関数によ り 計量 されるとす る: 図-6経 済 一自然 システムの基本モ デル

(10)

B(x(r),

Y(t)fS(r))

(7)

投資は, この便益を増大させ るように行 われると考え ら れる. 経済 システムは, その活動のため 自然 システ ムよ り生 産量X(t)に応 じた資源ベク トルR(t)を摂取 し, また廃棄 物ベク トルW(t)を排 出 している. これ らは生産 量X(t)の 関数 と考え られ るか ら, それぞれ次のよ うに表される: R(t) =1(X(t) I s(t)) (8) W(t) = G(X(t) IS(t)) (9) これ らが環境ス トック量ベ ク トルS(t)で条件付 けられる のは 自然であ ろ う. ここに, 式(8)を資 源負 荷方 程式, 式(9)を廃棄物 負荷方程式 と呼ぶ ことにする. 自然 システムは, R(t)とW(t)をそれぞ れ出力 と入力と する極めて複雑 な, 物質収支 システムで ある. これを記 述す るこ とは 困難 であ るが, ここで は前章 で紹介 した 「環境資源論アプローチ」の考え方を借 り, これを環境 ス トックの蓄積方程式の形で与えることにす る: It=t = H(S(t)) - R(t) + W(t) (10) d ti ここに, H(S(t))は 環境の 自己再生能力を表す ベク ト ル関数であ り, 物質の蓄積量ベ ク トルS(t)の関数(す な わち多 くの環境ス トックが複雑 な相互作 用により自己再 生産を行っている)で あると考え られ る. なお, 式(10) は物質により異なった形を して いることが容易 に想像 さ れる. たとえば, あ る物質で はRま たはWが0に 近か っ た り, また自己再生能力がほとん どない物質 も存在す る と思われる. この方程式は, 自然 システムに関する我タ の知識が極めて不十分であるため, 多 くの未知の部分 を 含んでいるが, 資源や環境の有限性をモデル に取 り込 む と言う, 本研究 の目的のために は, 有用 な道具であると 考え られ る. 以上の様に経済-自 然 シス テムを記述す ることにより, 経済 システムばか りでな く, それに伴 う資源や環 境の自 然システムに対す る負荷を, おおよそモデル化できたと 思われ る. b)絵 形化モデル 図-6に 示 した一 般モデルは, あまりに も抽象的であ ると感 じられる読者 も多 いと思われる. そ こで, これを もう少 し具体的 にし, また物質の収支の計量を可能にす るため, このモデルを線形化 してみることにする. 非線形方 程式を線 形化す るもっ とも. 一般的な方法 は, テーラー展開の第一項 をとる方法であ る. 式(6)にこの 方法を適用す ると: aY(t)= aF Ix=xctax(t) (11) これは, 産業連関方程式を, 第t期 の 生産量X(t)と環境 ス トック量S(t)でXに つ いてテイ ラー展 開 したときの, 最終需要増分 δY(t)と総生産増分 δX(t)の関係を 示 した ものである. このときFが, 一般の非 線形関数であれば, 式(11)はX(t), S(t)における 接線勾配 となるが, もしF がもともと線形 関数であった と仮定す ると, これは通常 の産業連関分析の単位行列1nか ら投入係数行列A(t)を 差 し引いた値に一致する: SY(t) = (In-A(t))SX(t) (12) 式(7)は, 周 知 の よ う に総 生 産 量 増 分 δX(t)は, 最 終 需 要 増分 δY(t)と 中 間需 要増 分A(t)・ δX(t)の 和 に一 致 す る こ とを表 して い る: 8Y(t) + A(t)8X(t) = SX(t) (13) な お, Aがtの 関数 となってい るの は, これがテー ラー展開による近似で あり, 時間 とともにX(t)やS(t)が 変化すればAも 変化す ることを示 してい る. 産業連関分析 は, Leontiefにより既 に1930年代後半 に 考案され, その後発展 してきた国民経済の フロー面の解 析 を行 う枠組みである15). 単純化 されて い るとは言え, 一般均衡を簡単な枠組 みで記述 しているため, 多 くの応 用面を持 ってい る. 土 木計画学の分野では, プロジェク トの実施に伴 う投資効 果の予測や, 施設の立地に伴 う産 業構造 の変化の予測に この方法が用い られる ことがある. 式(12)を用いて, 最終需要量増分よ りレオ ンチェフ逆 行列を介 して, 総生産量増分 を求める ことが出来 る: SX(t) = (jaA)-1 8Y(t) (14) 次に式(8)と, 式(9)を線形化 する: l SR(t) = lx=x(r)SX(t) (15) 9

(11)

O W(t) = w I x=x(rS Xz

(16)

式(15)の係数行 列は, 生産量増分 δX(t)が発生す ること に よる, 資源摂取量増分 δR(t)を計算 す る行列であ る。 これは, 各生産部門で消費 される原材料の構成を調査す れば求めることの 出来る値で ある. この係数行列を, 摂 取係数行列Mと 置 く. 一方式(16)の係数行列は, 生産 量増分 δX(t)が発生す ることによる, 廃棄物排出量増分 δW(t)を計算す る行列 である. これは, 各生産部 門で排出される廃棄物の構成 を調査すれば求めることの 出来 る値である。事実本研 究 でも二酸化炭素の排 出量を この係数を求めることにより, 計算す る。この係数行列 を, 排出係 数行列Eと 置 く. 以 上の結果 より, 式(15)と(16)は, 次 の ようになる:

OR(t) = M 6x(t)

(17)

O W(t) = E tix(t)

(18)

もちろん, 式(17)と(18)をすべて の物質について求め る ことは不可能である. 後述す るよ うに, 本研究では経済 システムか ら排 出される二酸化 炭素量を計量することに より, これ らの式で表される物 質循環のおおまかな全体 像を捉えることとした。 環境 ス トックの蓄積方程式(式(10))に つい ては, こ こでは線形化 を行わない. 以上の結果を踏まえて, 図 一6に 示 した物質循環の関 係を行列 形式で書き直 したのが 図一7で あ る. c)エ ネルギー使用量の指標 と計量方 法 本節では, この研究 で用 いるエネルギー使用量の指標 の選択ど その計量方法 につ いて述べる. 結論か ら先に 述べれば, 本研 究では二酸化炭素発生量 をこの指標 と し て用いた. 二酸化炭素排出量を指標 に選んだ理由, 及び その発生原単位の推定法について述べるのが, 本節 の目 的である. 1)エ ネルギー使用量の指標 既に述べてきている ように, 本研究の 目的は, 資源や 環境容量が有限である と言 うことを認めた上 で, なお必 要な経済発展を持続的に可能 にす るよ うな, 新 しいパ ラ ダイムにおける社会基盤施設の設計法につい て提案す る ことである. この 目標 を達成するためどの ような指標 を 用いて, エネルギー使 用量や環境負荷 を定量 的に計量す るか ということが問題 である. 摂取資源や排 出廃棄物 を細部に渡 って考えて行 くと化 石燃料, 鉱物資源, 稀少金属, 温室効果ガス, 森林, 各 生物種 各種廃棄物量, 微量汚染物質, 土壌等無数 に存 在 し, これ らすべてを考慮 しモデル化す ることは不可能 である. これは, 図一7に 示 した物質収支の全 ての項 目 を考慮することに相 当す る. そこで, 本研究 ではこれ ら の負荷を大 まかに捕 らえ る指標 と して, 各経済活動によ り発生す る二酸 化炭素量 を用 いることに した. これは, 図 一6の 経済 システムか ら自然 シス テムへ排 出され る物 質の代表指標 として二酸化炭素を選んだ ことに相 当する (図一8). その理由は以下の通 りである: 1)資 源 の有限性が論ぜ られ るとき, その当面の 中心 的な課題 は石油, 石炭, 天然 ガス等のいわゆる化石燃料 の可採年数である. 二酸化炭素の発 生量は, これ ら化石 燃料の燃焼 と直結 してお り, 経済活動のエネルギー使用 量を計量する上で, もっ ともふ さわ しい指標の1つ であ ると考え られ る, 図一7経 済 一自然 システムの線形化モ デル 図一8本 研 究におけ る物質収支の とらえ方

(12)

2)現 在地球環境問題 として議論 されている問題の中 の多 くは, 図 一9に 示 され るように, 温暖化, 酸性雨, 途上国の公害等, 化石エネルギー使用量 と直接結びつ い ているものが多い. 従って, 化石燃料の使用量 と直接結 びついている二酸化 炭素発生量 は, 適当な指標である. 3)特に温暖化は, 二酸化炭素発生量 と直結 してい ると 考え られる. 文献によっては, 資源枯渇よ り先 に, 地球 温暖化の影響の方が人類の生存に とりク リテ ィカル とな り, 人類は資源の枯渇を待つ まで もな く, 温暖化による 海面上昇や気候の変動等 で決定的な危機 を向かえると予 測するものもある. 2)二 酸化炭素発生原単位の推定 ある財1単 位を使用 した ときに発生す る二酸化炭素量 を, 二酸化炭素発生原単位 と言 う. 原単位 の推定 は, そ の財の生産 にさかのぼ り, その工程で発生 したすべての 二酸化炭素を累 計す る必要 があ る. 本研究での原単位の 算出は, 産業連 関表を用 いる方法で得 られた ものを利用 する. わが国では, 1960年以来5年毎 に政 府 より産業連関表 が公表されてお り, わが国の経済の実態を把握す るため の貴重な資料 と して活用 されている. 産業連関表は, 種 々の産業間の財の入出関係を定量的 に記述 したものであ るので, た とえば本研究で求めよう としている二酸化炭素原単位の算 出を行お うとする場合 な ど, ある最終財を生 産す るために他 の財が どの様 に投 入されてきたかを求めることができる. 産業連関表を用いてCO2の 排出原単位を算 出方法の 基本的な考え方 は, 以下の通 りであ る. まず, CO2の 排 出につ ながる燃料 等のエネルギー材 に着 目し, 各材を生産す るときの, これ らエネルギー材 の燃料に使用 される割合, それぞれのエネルギ ー材の高 発熱量, 熱 量当 りのCO2発 生係数 等を調べ, これ よ り 排 出係数 ベク トルejを 求め る. この量は, 第j材 につ いてベ ク トルejと して表 され, エ ネル ギー材以 外の材 につ いての係数は0で ある. この とき参考 とす る資料は, 石油等消費構造統計, 鉄鋼統計, ガス事業統計等である. 例えば外 岡(1994)(8)は, 各部門材のejを, 次の ように求 めてい る: ej=(第iエ ネル ギ ー 材 の1単 位 の 重量; t) ・(第j部 門 材 の 生産 に投 入 され る第iエ ネル ギ ー 材 の 内, 燃 料 用 に使 用 され たエ ネ ル ギ ー材 の 割合) ・(第iエ ネル ギ ー材 の 高 発 熱 量; Gca1/t) ・(CO2排 出係 数; t/Gcal) (19) 一方, 第j材 を一 単位生産す るときの各材の投入量ベ ク トルXjは, 産業連関分析を利用 し, 式(14)を用いる こ, とにより次のよ うに計算 出来る:

x; = [I-AJ

-1f

(20)

ここに, fjは, 第j番 目の要素が1, その他 は0の 縦 ベク トル であ る. さらに, CO2の 発生 を考え る場合, 最 終財が燃料で ある場合, 最終 的にこれ も燃焼 され, CO2が 発 生する か ら, これを最終消費 による排 出と してCejで表す. 以上の準 備の もとで, 第j財 のCO2発 生原単位 を求 め る:

CBJ=e11 +C=e1I1A-1

+cJ

(21)

3)原 単位の算 出結果 前述 したよ うに, 本研究では外岡 ら8)の行 ったCO2原 単位の算 出方法を 中心に述べ, 算 出結果 については他 の 研究の結果 も従記す るものとす る. 外 岡は, 1985年 の産 業連関 表基本表(529行x408 列)よ り正方化 した406行x406列 の投入産 出表をつ く り, 内建設部 門11列 について建設部 門産 業連関表の66 列(中 間計を除 くと31列)x213列(基 本表529行 の う ち建設部門への直接投入のあ った行 のみ抽 出)を 用いて 細分化 し, 建設部門 を取 り込 んだ441行x441列 の正方 投入産 出表を作成 した. この正 方441部 門表 を用 いて (1-A)-1型 と(1-(1-A))-1型 の逆行列 を作 成 し, これより式(21)を用 いて, 各財 の誘発CO2排 出 量を推定 してい る. 外岡の推計方法が, 他の推計 と比較 して優 れてい ると 図-9地 球環境 問題 とエ ネルギ ーの関係 II

(13)

思われる理 由の一つ は, 各燃料 よ り発生す るCO2排 出 量の推計を, 相当丁寧に行 っている点 であ る. す なわち, CO2の 排 出が あるのは, 燃料製品等, 特定 の投入 に限 られるが, 投入金額か ら求めるよ り, 投入量か ら求める 方が正確である. 従 って, 物量表が ある場合はこれを用 い, 物量表がない場合は, 投入量が得 られ る他の統計 を 活用 し, 石油等消費構造統計, 電気事業統計, 鉄鋼統計, ガス事業統計, エネルギ ー生産需要 統計等か ら, 詳細 な 燃料種類別の投入量を推計 し, 補足 的な物量表を独 自に 作成 してい る. さらに投入 された燃料製品の燃料 として燃焼 される割 合, すなわち 「燃焼 比率」を石油等消費構造統計か ら求 め, また各燃料製 品の 「高発熱量原単位 」や 「CO2排 出係数」に関 して も, 諸機関か らの推薦値 を慎重に吟味 す るな ど, 多 くの細か い配慮を払 って いる. また, 特 に鉄鋼製 品については, 製造 が高炉転炉 によ る場合 と, 電炉 による場合で はCO2発 生量 に相 当な差 があることを考慮 し, 各鉄鋼製品毎 に高炉転炉綱 と電炉 綱の混合割合を鉄鋼統計 より工程別 に推計 し, 鉄鋼製 品 毎 に誘発CO2排 出量を補正 している. これに より, 鉄 骨 と鉄筋の誘発排出水準 の違い等 も評価 できる. 表 一3に 外岡の行 った推計結果を, 伊香 賀が二次加 工 した値 を, 当面我 々の関心のあ る項 目につ き整理 した16). また, このほかに酒井 らの推計7)と, 建設省土木研究所 の行 った推 計 結 果17)について も比 較 の た め示 した. CO2誘 発 量が多 いのは, 鉄鋼製 品, セメ ン ト製品が大 きい. なお, 表3に 記されているのは, 炭素発生量(kg-c)である. (3)新 設計法 a)基 本定式化 社会基盤施設の計画や設計では, 与え られたい くつか の代替案の中か ら便益の最大とな るものを選択 すると言 う意思決定が問題 となる. 代替案をaiと 表すと, これは 経済システムの中の一組 の最終需要量増分の組 み合わせ と して表現されるので, 次のように書 くことが 出来 るで あろう: a : SY(tIa1) (i=1, N) (22) このとき, この代替案aiの実施 によ り得 られ る各生産部 門の生産量の増加 は式(6)より:

SX(tIa. S(t)) = r lA, l PWl I SY(tla ) (23) この ときの便益は, 式(7)によ り計 量され: sB(tla) = a Y, x=x(r)sX(tla=) (24) 便益の計量方法には, 代替案実施による最終需要増分 の 波及効果による付加 価値の増加 を計算 した り, また費用 便益分析法を用い消費者余剰を計算す る等 いくつかの方 法があ り, ここではその方法は特定 しない. 一方, 代替案の実施 により発 生す る資源摂取増分 と廃 棄物排出量増分は, 次の様に計 算され る: 6R(tla=) = a Y 01 IX=X(t)SX(tla) (25)

b W(t

I ai) y X=I(i)

X(t I al)

(26)

このような資源摂取量 や廃棄物排 出量の増加は, 最終的 に環境ス ドックの蓄積方程式に次のような影響を与える:

dS

jL=t = H(s(t))

- R(t) - SR(t a

t) + W(t) + 8 W(t

I a)

(27) 表-3 主な建設材料の二酸化炭素発生量 原単位16) (原単位 はkg-c, すなわ ち炭 素発 生量で与え られてい る)

(14)

以上のような準備 の基で, 計画法や設計 法の一般的な 定式化は, 次のように書 くことが 出来るで あろう: max E 8B(t)at, S(t)) (1+r)-t =o T = E { 6B7(t (a1, S(t)) - SC7(t Ia; S(t)) }(1

ds(ti

-L

= = x(s(t))

s t

d

ti

t

- R(t) - SR(tIa) + W(t) + 6W(ta

t)

(t=0 1 T)

(28) ここに δBTは, 当該代替案の実施に より発生す る総 便益を, δCTは その総費用を表 してお り, Tは, 当該 社会基盤施設 の供用期間 であ る. 式(28)では, 便 益や費用が 環境ス トックS(t)の関数と なっており, またS(t)は代替案 の実施によ り発 生す る環 境負荷(資 源摂取量 と, 廃棄物排出量を合わせて環境負 荷と呼ぶ)の 影響を受けて変化 し, これが制約 と して考 慮されていることに注意を要す る. 先にも述べた ように, 伝統 的に土木工学では, 便益の 計 量を主 に考 慮す る問題 を計画 問題, その意思決定に よっては便益には大 きな変化 のないような問題 を設計問 題 と分類 して きた ように思われ る. そこで本研 究では, このような事実を考慮 し, 設計法を次のように定義する: 「社会基盤施 設計画 の意思決定 において, 当該プ ロ ジェク トの便益がその決定によ り影響を受 けない意思決 定問題」 上記の ように設計法を定義すれば, 式(28)の δBTは 一定 とな り, 設計問題 は式(28)に基づ き費用最小化問題 として, 次のよ うに定式化される: T min E CT(t Jai, S(t)) (1 +r)- t=o

s. t

d

-I

= H(S(t))

ti

- R(t) - SR(tIai) + W(t) + S W(t Ia

t)

(t=0, 1, T)

(29) 上の定式化で, その制約 条件をなす環境 ス トックの蓄 積方程式 について, 次の ことが言え る: 1)現在の環境ス トック量S(t)は, 極め て大 きな値であ り, ここで議論 している意思 決定問題とは関係な く, 与 え られていると考 えて よい. また許容される環境ス トッ クの変化率(左 辺)も, 既 に与件 と して与え られて いる と仮定 してよいであろ う. 2)時間ステ ップtに お ける当該代替案の実施以外で発 生する環境負荷R(t)やW(t)は, 当該 代替案の実施で発生 する環境負荷 δR(t)やδW(t)に比べ, 遥かに大 き く, 与 件 として与え られると考え られ る. 3)当該代替案の実施 で発生す る環境負荷 δR(t)やδW (t)は, 全体の持続的発展を可能にする環境負荷を上限と し, でき るだけ小 さい方が よい. 以上 より, 式(29)の制約条 件は次のよ うに書き直すこ とがで きる:

min E CT(t

jai, S(t))(1

+r)-t

t=0

s. t. 8W(tIa=)-SR(tIa1) s E*(t) = coast. (30) ここ に, Ea(t) = H(S(t)) - d(t) r=r - R(t(S(t)) + W(t(S(t) ti (t=4, 1, 2, T) 式(30)は, 環境負荷を考慮 した社会基盤施設設計法の 最 も基本的な定式化であ り, 以下では新設計法の基本定 式化 と呼ぶことにす る. 本研究では, 式(30)の制約条件をすべての物質につ い て行 うことは, 現在 我々の持 っている知識の範囲では全 く不可能であることを認識 し, それ らの代表値 として二 酸化炭素の発生量を とり, これ を制約する ような設計代 替案の選択を考える という立場を とる. このときδR(t) は, 当該代 替案 を実 施 した ときの二酸化炭素の固定量 (植林等), δW(t)はその発 生量, H(S(t))は 自然 シ ステムの二酸化炭素の固定を支配す る関数であるが, こ れは二酸化炭素のス トック量ばか りでな く, 他の環境 ス トック(例 えば森林の量)の 関数で もある ことには注意 を要す る, しか し, これ ら関数 を設定す る ことも現在の 我 々の知 識で は, 容易で はない. 制約値E*(t)を どの よ うに決定す るか も今後 の課題 とな らざるをえない. b)Carbon Seviceabimtyと実用 定 式化 1)Carbon Serviceability 本研究における環境負荷を考慮 した新設計法の基本定 式化を先 に, 式(30)に示 した. 本節では, この定式化を もう少 し具体 的に考え, 実際 に意思決定を行 うことがで きる ような形 に変形 す ることを考 える. まず は じめ に, この定式化の源泉 とな った考 え方 を再考察 してみたい. I3

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この式では, 総費用が最小化 され ることを 目的と して いる. これは, さかのぼれば純 便益 の最大化を考えた も のであ ったが, 設計問題のよ うな社会基盤施設計画全体 の中で下位の決定に属するような意思決定問題では, そ の決定の結果が総便益の評価 にはほとん ど影響 しない と 考えられるため, 総費用の最小化 とい う目的関数が採 ら れたのであった. ところで, 総費用の内訳は, 実際 に建設. 維持管理 ・ 破棄にかかる費用の他に, 万一構造物が破壊 したときに 発生する破壊費用が, その不確実性 を考慮 し, 期待破壊 費用 と言 う形で入 っている. これは, 経済的な制約のた め, 我々は無 限に安全 な構造物を作 ることはで きない と 言う動か しがたい現実 を, 定式化 した ものであ る. 換言 すれば, 構造物の安全性 は, 結局経済的な制約 で制限さ れてお り, 従 って金銭 タームで評価で されると した定式 化である. 一方, 環境負荷は環境 ス トックの使用に関す る制約条 件と言う形で, 定式化 に導入 されている. この ことを反 省すると, これは経済的価値では計量することの出来な い, 資源や環境容量 の有 限性か ら来 る制約を考慮 しなけ れば, 人類 の生 存そ の ものが危険に さらされ ると言 う, パ ラダイムの変化に起因 し, 課せ られる制約条件である と言える. この制約 は, 従来の市場 均衡か ら決 まる可変 な制約(石 油価 格が上が れば, 開発可能な油 田が増え, 供給量が増す)で はな く, 環境ス トックの蓄積方程式か ら来る絶対的な制約条件であ る. ところで, ここで環境負荷に関す る制約が絶対的な制 約条件であ ると記 したが, この具体的 な制 限値(Eつ を決定 す ることは, 現時点 では容易ではな い. 我 々が, 環境ス トックとその再生産関数について持 っている知識 は, 地球温暖化 問題の ように大きな注 目を集めている問 題でさえも, まだ非常に大きな未知の領域を含んで いる. 従って, 当面この絶対値 を決定することは, 困難 である と思われ る. (た とえ二酸化 炭素の発生量を1990年 レ ベル に押 さえると言 うことが全世界的 に合意され たと し て も, これを基 に規準値 を各 レベルで設定するこ とは, かな り難 しい と考 え られ る. しか しも, 1990年 の二酸 化炭素発生 レベルが地球温暖化 防止上, 必要かつ十分な 条件である という保 証は, 現在の ところ何 もない. ) この困難を, 当面便宜 的に回避 し, しか も環 境負荷を 出来 る限 り低減 させ て行 くため に有 効 な指標 と して, 我々は 「Carbon Seviceabmty(以 下CSと 呼ぶ)」 な る概念を提案す る. CSは, 次のように定義され る: 「当該プロジェク ト, 施設, 構造物, あ るいは部材が 提供する全供用期間 中のサー ビスの総量を, それらが建 設, 供用, 廃棄 の全期間に排出す る全二酸化炭素量で除 した値」 すなわち, 1単 位の二酸化炭素が提供するサ ー ビスの量 を, CSと 呼ぶ のであ る. ここでまず, 「サー ビス」 と言 う言葉 を用 いたのは, 我々はプロジェク ト, 施設, 構造物さ らにはその構成部 材の一つ一つに共通す る概念 を定義す る ことを意図 した か らで ある. す なわ ち, プロジェク ト, 施 設な どでは サービスは, 供用期間中の純便益の総量 と言 う言葉で置 き換え られてよい. しか し, 構造物, さ らには部材とな ると, その便益 を直接計量す ることはで きない. その 「サー ビス」は, ある機能 を一定期間果 たす, またある 荷重を一定期間支持す る, と言 う表現 しか取れない. 例 えば, 2車 線T-25荷 重, スパ ン30mの 道路橋梁を 25年 間機 能させ るとか, 径間7m, 0. 3t/m2の等分布荷 重を40年 間支持する単純梁 と言 った ものが, 「サー ビ ス」の具体 的な内容である. また, 特にサー ビスの提供を受 けられる時間の長さを 問題にするのは, 見 てきたようにエネルギー使用量や環 境負荷の問題では, 時間が非常に重要 な要因であるか ら である. 材料開発等 によ り, よ り長い期間機能を果たす 部材があれ ば, 結果 的にそのCSは 高 くな る. 以上 より分か るよ うに, CSは 我 々が社会基盤施設か ら受けているサー ビスが, どの程度 のエネルギー使用量 や環境負荷により支 え られてい るかを示す指標であると 言える. これは特に我々が この研究で問題 としている構 造物の設計をエネル ギー使用量 や環境負荷 との関係で考 えるとき, 有用 な指標 であ ると考 え られ る. 式(30)は 従 って, CSを 用いると, 次の様 に書 き換えることがで きる: T

min.

C7(t Iai)(1

+r)-

t=o s. t. CS(a) ACS (31) CSを 導入すると次の ような利点がある と考え られ る. 1)同 じ種類の, しか し異 なる量のサー ビスを提供す る構造物, 部材 などを, 相対 的に比較す るのに便利な指 標である. 2)CSの 下限値を何 らかの方法で決定できれば, こ れを制約条件と して費用の最 小化を行 うような設計代替 案の選択 を行 うことが 出来る. たとえば, 二酸化炭素排 出量を1990年 レベル に安定化 させ る と言 う目標が設定 されれば, このときの標準的な構造物, や部 材のCSを

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求め, 総量の減少のための低減率をこれに考慮 し, 制約 条件を設 定で きるであろう. 3)新 技術の開発 による直接的な二酸化炭素発生量の 低減や, 長寿命化の効果 などをCSを 通 じ直接 的に設計 に持ち込む ことが可能 となる. 2)実 用定式化 以上の考察の基で, 可能な実用定式化は, 表4に 示す ように, 次のよ うな ものが考え られ る. 碇 式化I: CS制 約を導入 した定式化) 式(31)の定式化通 り, 建設 費用等の直 接費用 と, 期待 破壊費用の合計である総建設 費用を, Carbon Service-ability制約の下 で, 最小化す る。この とき, CSの 許容 値を決定するのは必ず しも容易ではないが, 現状のCS と相対的な比較 を行 うなどすれば必ず しも不可能 ではな い. なお本研究の考察 の流れでは, 最 も自然な定式化で ある. (定式化T) (定式化 1)とほとん ど同様であるが, 構造 物の安全性 を, 目的 関数 に入れず, 制 約条 件 とす る. す なわ ち, CSと 安全性 に関する制約条件の基 で, 建設 費用等の直 接費用を最小化する. (定式化II: 環境負荷換算率を導入 した定 式化) 環境負荷に換算率 を掛けて金銭 ター ムに変換 し, これ と総建設費用の合計 とい う, 一元化 された評価関数を用 いた, 制約条件のない最小化問題 と して定式化す る. こ のとき, 換算率(例 えば, 炭素税)を うま く調整すれば, 定式化1で示 したCSを 満足す るように出来る. その意 味で, 定式化1とIIは, 等価な定式化 である。換言す ると, この換算率は炭素税の ような ものを考えており, この費 用を課すことによ り, 市場メカニズムを通 じて資源摂取 量や廃棄物排 出量が抑 制され, 結果的 にCS'が 達成 さ れるような換算率が選択 されるべ きである. (定式化II) (定式化 II)と類似 しているが, 安全性を 目的関数 に 入れず, 制約条件 とし, 建設費用等 の直接費用 と, 環境 負荷に換算率を掛 けた値 との和 よりなる目的関数を最小 化す る. (定式III: 環境負荷最小 化を導入 した定式化) CS制 約 の制限値 の決定が困難で ある ことを考慮 し, 総建設費用とCSを ともに最小/大 化するような, 多 目 的最適化問題 とい して定式化す る. ただ し, これ らの2 つの 目的関数を同時に最小/大 化する解が存在す るとい う保証 はな い. 多 目的計画 法で この問題 を解 いた場合, パ レー ト解 と呼ばれる幾つかの解を導 く. これ らパ レー ト解か ら最終的に一つの解 を選択す るためには, 多属性 効用関数論や階層分析法(AHP)な ど, 多軸評価尺度 を一元化する方法が必要で あると思 われる. (定式 化IIF) (定式化 III)と類似 してい るが, 安全性を 目的関数に 入れず, 制約条件 と した上で, 建設 費用等の直接費用と, CSを 同時にを最小/大 化する, 制約条件付 き多 目的最 適化問題 と して, 定式化す る。 表 一4 新設計法の実 用定 式化 一覧 (備考)Cc: 建 設、 維持管 理、廃棄 費用、 Cf: 破 壊費用、 Pt : 破壊 確率、 z: 環境 負荷、 aZ: 環 境負荷 の換算 率、 pf: 破壊 確率の 規準値(安 全率)、 z*: 環境 負荷 の規準 値、 CS: carbon seviceability、CS*: Garbon sevlceabilityの基 準値

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それぞれの定式化 の命名か らも分かるよ うに, CSま たは環境負荷 を, (1)制約条 件, (II)換算率 に よる金 銭 タームでの評価, (III)最大化, と して扱 っている点が こ の3つ の定式化の違 いで ある. それぞれ プライムのつ い ている定式化では, 安全性 に関す る評価 を 目的関数か ら はず し, 制約条件と して取 り扱 っている点 が異な ってい る. なお表5で は記述の簡素化のため省略 したが, それぞ れの代替案の費用や環境負荷の算定に 当たっては, プ ロ ジェク トライフを通 して, 建設, 供用, 廃棄の全過程で 発生する費用やCS(環 境 負荷)を 算 定 し, 考慮す る必 要があるのは, 言 うまで もないことである. CSの 具体的な利用例 は, 次章の例題を参照 されたい. 5. 簡 単 な例題 (1)単 純 梁の例 まず は じめ に単 純 梁 に関 す る例 題 を 示 し, CS を用 い るこ との意 味 を説 明す る. 例 題lA: こ の例 題 で は, スパ ン7.5mの 単 純梁 に お いて 材 料 を変 え, それ ぞれ の 環 境 負 荷 を計 算 して い る(表-5). こ の よ うな 場 合 各 設 計代 替 案の 二 酸化 炭 素 発 生 量 を 直 接 比 較 す る こ と に よ り, 環 境 負荷 を 比 較 し, ま た建 設 費 用 を 比 較 す る こ と に よ り経 済 性 を 比較 で き る. この 場 合, 木 材 が最 も環境 負荷 が少 な いこ とが分 か る. 例 題lB: 実 際 の 計 画. 設 計 で は, あ る幅 を 持 った 条 件 下 で の 環 境 負 荷 の 比 較 が 必 要 で あ る. 単 純梁 を 例 に とれ ば, 実 際 の設 計 条 件 は 特 に計 画 段 階で は例 題1Aで 示 す 「7. 5mの スパ ン」 と決 め られ て い るの で は な く, 「川 を 渡 る」 な どの条 件 の 下 で, 便 益 が スパ ンを変 え る こ と に応 じて 変化 す ると想定 し, 何 メ ー トル の スパ ンで 単純 梁 を設 計す るの が 最 も経 済 的 で あ るか, あ るい は 環境 負 荷 が少 な い か と言 う視 点 が 重 要 とな る. この よ う な場合, CSの 考 え 方の有 効性 が 現れ る. この例 題 で は, 5. 0m, 7. 5m, 10. 0mの3通 りの ス パ ン に対 してCSを 求 め た(表 一5及 び表 一 6). この結 果, スパ ン5mの もの が どの材 料 につ い て も最 大 のCSを 与 え た が, これ は総 便 益 が ス パ ン と寿 命 の 積 で あ る場 合 の結 果 で あ り, 例 え ば スパ ンの 代 わ りに最 大 曲 げモ ー メ ン トMmaxと 寿 命 の積 を 総 便 益 とす る と, スパ ン7. 5mの 場合 が ど の 材料 にお い て も最大 のCSを 与 え る. この よ う に単 位発 生 二 酸 化 炭 素 当 りの便 益, す なわ ちCS で比較 す る と, 木材 を 除 けば, スパ ンの違 いに よ 表 一5 例題1A: スパ ン7-5mの単純梁 の二酸化炭素発生量及 びCS 表-6a 例題1B: スパ ン5. Omの 単純梁 の二酸化炭素発生量及 びC 表 一6b 例題1B: スパ ン10. 0mの 単純梁 の二酸化炭 素発生量及 びC

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り最 大 のCSを 与 え る材 料 が 変 化 して い る な ど, い ろ い ろ多 様 な 比較 が で き, 実 際の 計 画 ・設 計 に CSを 導入 す る ことの有効性 を 示 してい る. な お, この 例 題 で は 問題 が 単 純 化 さ れ て お り, 梁 を 支 え る柱(あ る い は橋 脚)の 構 造 を 計 算 に入 れ て い な い こ と, 建 設 時 の 環 境 負荷 のみ 対 象 に し て お り維持 管 理 や 廃 棄 の 負荷 を無 視 して い る こ と, 材料 の 寿命 を木 材 で20年, その 他 の材 料 で40年 と した 点, 荷 重 を 単純 化 して い る こ と, お よび 材料 の 応 力 だ けで 断 面 を 決定 し, 変 位 につ い ての 検討 は 行 って い な い こ とな ど, 実 際 の 設 計 と は異 な る. (2)埋 立護 岸の設 計代 替案 の選択 の例 水 深4m, 海底 面下10mの 粘 性土 地盤 上 に, 海 底 面 よ り5m高 さ の埋 め立 て を行 うた め の護 岸 を設 計 す る問 題 を考 え る. この ケー スで は, 埋 立 を 排水 した ドライな状 態 で行 う ことを想定 してい るので, 護 岸は止 水性 を有 して い る必 要が あ る. 紙 面 の制 約 の た め詳 細 を 示 す こ とはで きな いが, 二 重 鋼 矢 板 式, 鋼 製 セ ル 式, ジャケ ッ ト式, ケー ソ ンと止水 壁 を組 み 合 わ せ た形 式, 捨 石 と 自立 鋼 矢 板 を 組 み 合 わせ た 形 式 の5つ の 形 式 が, 設 計 代 替 案 と して検 討 された. 表 一7に, それ ぞれ の 設 計 案 で 計算 さ れ た法 線 1m当 りの建 設 費用 と, 先 の 表 一3を 基 に計 算 した 炭素 排 出量 を 示 した. ま た, この と き法 線1m当 り 護岸 が 提供 す るサ-ビ スを1と す れ ば, CSは 炭 素 排 出量 の 逆数 とな り, これ も表 一7に 合 わせ て示 した. と こ ろで, 各設 計 案 で計 算 され た 炭 素 排 出量 の おお よその 内訳 を示 した のが, 図-llで あ る. 鉄 鋼, コ ンク リー トな ど二 酸 化 炭 素 を 多 く発 生 さ せ る製 造 工 程 を持 つ 材 料 の 使 用 の 多 い 設 計 案 が炭 素 の 発 生 量 が 大 き い と言 え る が, 捨 て 石 堤 な ど, 単位発 生量 の少 な い材料 を使 用す る案 で も, 使 用 量 が多 くな る と結 果 的 に は大 き な発 生 量 とな る こ とが分 か る. 図一10例 題1; 単純梁の費用 と環境負荷(炭 素換算CO2排 出量) A: 木 材 B: RC C: 鉄 骨 D: ア ル ミニ ウ ム 図一11例 題2: 設計代替案別炭素換算CO2発 生量の 内訳 ■ 鉄 鋼 ■ コ ン ク リ-ト □ 砂 利 ・砕 石 な ど 図-12例 題21護 岸 建 設 費 用 とCS 17

参照

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