原 著 〔東女医大誌 第62巻 第11号頁1118∼1136平成4年11月〕
.筋ジストロフィーの遺伝相談
一その問題点とジレンマ
問題解決の回り歩一
東京女子医科大学 小児科学教室(主任:福山幸夫教授) オオサワマ キ コ フクヤマ大澤真木子・福山
シシクラ ケイコ スズキ宍倉 啓子・鈴木
イケナカ ハルミ ヒラヤマ池中 晴美・平山
国立精神神経センター精神保健研究所 シラ .白 ユキオ スミダ サワコ イケヤキヨコ 幸夫・炭田 澤子.・池谷紀代子 ハルコ タカハシリエコ ァライ陽子・高橋里恵子・新井 ゆみ
ヨシト サイトウカ ヨ コ義人・斎藤加代子
社会精神保健部社会文化研究室(室長 イ ヤス コ 井 泰 子 白井泰子) (受付平成4年8月18B) Genetic Counseling for Muscular Dystrophy−Problems a血d Dilemma: APractical Proposa藍for Problem So藍ving一Makiko OSAWA, Yukio FUKUYAMA, Sawako SUMIDA, Kiyoko IKEYA,
Keiko SHISHIKURA, Haruko SUZUK:1, Rieko TAKAHASHI, Yumi ARAI, Har腿mi IKENAKA, Yoshito mRAYAMA and Kayoko SAITO Department of Pediatrics(Director:Prof. Yukio FUKUYAMA), Tokyo Women’s Medical College Yasuko SIIIRAI Section of Society and Culthre Research〈Head:Yasuko SHIRAI>,. Division of Sociocultural Environmental Research, National Institute of Menta田ealth Despite progress in molecular genetics, several problems remain with regard to its implementa− tiOn in genetiC COUnSeling SerViCeS. Part of the results of a questionnaire survey on et亘ical issues in genetic counseling, based on responses obtained from members of the Research group on the cl孟nicopathology, genetic counseling and epidemiology of muscular dystrophy, under the sponsorship of the Ministry of Health and Welfare, is reported in terms of carrier d6tection and prenatal diagnosis. Additionally, two illustrative cases of genetic counseling for muscular dystrophy, are presented to highlight various aspects of problems encountered in practical genetic counseling. It was proposed that a personal.card be issued on which medical as well as genetic profiles of the individual would be comprehensively and succinctly documented. The card would be kept in the patient’s hand, thereby effect孟vely serving the patient’s needs whenever he/she sought consultation with different clinics. 緒 言 遺伝医学の進歩に伴い,Duchenne型筋ジスト ロフィー(DMD)1)では, X染色体短腕21(Xp21) 部のDNAの欠失や重複があり,その遺伝子産物 である細胞骨格蛋白dystrophinが欠如ないし不 完全であることが判明し,現在患者における異常 発見率は約60%である2)∼‘). 遺伝相談の目.的として,遺伝的問題に関する悩みを解決する援助,遺伝性疾患の発生予防,早期 診断・早期治療などへの貢献があげられる.しか しその目標の主眼は特に個人の立場に置くべきで ある.科学の進歩が集団としての人類全体にとっ ては福音でも,科学情報が不完全であったり,そ ㊧情報が不用意に扱われたり,情報を得た後の対 策を建てるための援助体制が確立されていなけれ ぽ,個人にとっては弊害ともなり得る6)∼9). ここでは,厚生省神経研究委託費,筋ジストロ フィーの臨床病態と遺伝相談および疫学に関する 研究班において,遺伝相談倫理についての合意形 成にむけての基礎資料作成のために平成3年度の プロジェクト研究として行った『遺伝相談倫理に 関するアンケート調査』10)∼12)の中から,保卜者検 索,保留者告知,出生前診断に対する意識調査の 結果を紹介し,特に保話者診断,出生前診断の問 題を考察する.またあえて遺伝相談上問題が生じ 著者が苦慮した例を紹介し,その問題点を明らか にし,問題解決への第一歩一手段としての患者健 康管理手帳の作成を提案する. 方 法 1.アンケート 1)アンケートの対象 厚生省神経研究委託費,筋ジストロフィーの臨 床病態と遺伝相談および疫学に関する研究班(班 長:高橋圭一)の班員および顧問の所属する57施 設(国立療養所31,大学病院臨床教室16,同基礎. 教室3,公立病院2,研究所5)を対象とし,各 施設へ班員を含む3名分,延べ171名分のアンケー ト用紙を送付した10)∼12). 2)アンケートの方法 調査実施時;期は1991年10月で,実施に際しては, 自己記入式の調査用紙に返信用封筒を添えて関係 者に送付した.40施設(延べ79名)から回答を得 た(回収率は70,2%)10)∼12). アンケートの内容を表1に示す.この中で母に 対する画因者検索および出生前診断についての説 明相手の選択では,1項目のみを選ぶ形式をとっ たが,姉妹,および保因者のそれについての選択 では,複数項選ぶ形式とした. 結果分析に当り,一部は遺伝相談の経験ありと する者(A群)と同経験の無い者(B群)で差を 検討した.統計学的検定にはカイニ乗検定を用い た. 結 果 1.回答老の属性 回答者の遺伝相談の経験の有無,経験年数,相 談内容などは表2に示す通りであった.回答者の うちA群は43%で,その経験年数は,神経筋疾患 およびその他の疾患共に10年未満の者が最も多 かった. 2.アンケート内容の分析 1)保因者診断としての血清クレアチンカイ ネース(CK)値の検査 (1)血清CK検査をする意味の説明の必要性 説明の必要有りと回答した者が53名(69.7%, A群所属者の76.5%相当の26名,B群所属者の 64.3%相当の27名),無しと回答した者が2名 (2.6%,A群0名, B群の4.8%相当の2名),ど ちらともいえないと回答した者が21名(27.6%, A群の23.5%相当の8名,B群の31.0%相当の13
名)であった.A群B群の比較では有意差はな
かった. (2)血清CK検査の勧め方 説明の必要ありとした者に対する,検査の勧め 方についての設問では,積極的に検査を勧めるが 26名(49.1%,A群所属者の42.3%相当の11名, B群所属者の55.6%相当の15名),希望があれぽ検 査するが27名(50.9%,A群所属者の57.7%相当 の15名,B群所属者の44.4%相当12名)であった. A群B群間に有意差はなかった. (3)一般の母のCK検査の意味を何時・誰に話 すべきか(図1) 説明の必要有りと回答した53名に,時期・説明 相手を質問した設問の回答は以下の通り. 時期については,『患児の診断説明直後』,『母が 衝撃から立ち直り,次に生まれる子の発病の可能 性を問合わせてきた時』に必要と回答した者が最 も多く34名,『患児の診断過程』が31名,『母が次 妊娠を考慮し生まれる子の発病の可能性を問合わ せてきた時』が27名;『母の次妊娠時』が26名であっ た.表1 アンケート調査の質問内容 1.次項Q1−4は5段階尺度(eg.,5.極めて必要,4.どち らかと言えば必要,3.どちらとも言えない,2.どちらかとい えぽ不必要,1.全く不必要) Q.1,患者の遺伝子診断,保々者診断,出生前診断の実施決定に 際し,被相談者に下記項目を説明する 必要性:検査の性質と精度,診断のメリット・デメリット, 母体や胎児への影響,流産の危険性,検査結果判明時 に本人及び家族が直面する意思決定の性質, Q2.カウンセラーの任務として本人またはその家族の次の行 為を援助することの重要性: a.診断・疾患の現れる過程,疾患の管理等の医学的事実を 理解する b.遺伝がその疾患に寄与する仕方や特定の親族に再発す る可能性につき判断する c.当該疾患の再発の可能性に対処のために,どの様な選択 肢があるかを理解する d.再発の可能性や家族目標を考慮し,適切と考える行動を 選択する e.自らの決定に即した行動をとる f.患者の疾患を受容し,最善のかたちで対処する 9.当該疾患の再発の可能性に対し最も適切なかたちで対 処する Q3.遺伝相談の目標としての次項の重要性: a。遺伝病あるいは異常の予防 b.患者や家族の不安や罪悪感の軽減 c.人口集団における遺伝病の保因者数を減少させる d.遺伝的健康水準を高め,人口集団の活性化を図る e.問題を抱えている個人や夫婦(婚約者)が当該の遺伝 的問題を直視し,これに対処できるよう援助する f.個人や夫婦が抱いている“自分達の子を持ちたいという 願望”を到達するよう援助する Q4.遺伝相談カウンセラーとして次項の行動を取ることの重 要性: a。種々の問題に関わる意思決定は当事老自身がすべきで, この点は力になれないと明言 b。当事者自身の決定に対しては可及的に援助する用意の あることを知らせる c.同じ立場に立たされた他の人達の行動につき話す d,カウンセラー自身が同じ立場だったらどうするかを話す e.当事者のなすべき行為の具体的助言を与える H.次項Q5∼8は,適当と思うものを尋ねた. Q5. Duchenne型筋ジストロフィー児の母が,同じ病児をも つ可能性のある他の親族にp診断及び関連遺伝情報を開示 する事の必要性を説得しても拒んだ場合のカウンセラー の対処法 1.被相談者の意向を尊重し,情報を伝えない 2.説得しても同意が得られない場合は,被相談者の意向 を尊重し,情報を伝えない 3。やむをえず被相談老の意向に反しても,当該清報を関 係者に知らせる 4。被相談者の意向に拘らず,関係者のリスクに直接関連 する情報に限り被相談者の親族に知らせる 5.関係者(他の親族)が希望する場合のみ当該情報を知 らせる 6,診療記録の一部として情報を被相談者の紹介医に送 り,同氏に任せる Q6.保因者の可能性のある女性に対する保因者検索の必要 性の有無と方法:本人または家族に a.特に理由は説明せず必要な検査として採血 b.説明し,積極的に検査を勧める c.説明し,希望があれば検査 Q7.同法実施の可能性についての説明の必要性 Q8.出生前診断に関する説明の適当な時期: a.患者の診断過程 b.患者の診断を説明した直後 c.患者本人の診断を説明した後,適応期に入り,次妊娠 で病児出生の可能性を尋ねてきた時 e.母の次妊娠時 保因姉妹が a.小児期,b.思春期頃, c。20歳過ぎ頃, d.結婚話 が出て.くる頃,e.婚約時, f,結婚後妊娠前,9.妊娠 中 説明相手(母の場合:) 本人,夫,本人と夫,その他; (姉妹の場合:) 母,父,本人,姉妹,兄弟,婚約者,夫 その他; III. Q 9.患者の遺伝子診断,保評者診断,出生前診断(絨 毛,羊水)実施の際の具体的配慮の有無 IV. Q 10。人工妊娠中絶の事由に(必ずしも法的に認めら れていない)関する賛否を5段階尺度(非常に賛成,ど ちらかといえば賛成,どちらともいえない,どちらかと いえば反対,全く反対)で尋ねた. a.母体の生命保護以外の人工妊娠中絶を禁止,b.経済 的理由,c.胎児の重篤な異常, d.本人又は配偶者 の遺伝性疾患,e.本人又は配偶者の四親等以内の血 族関係者の遺伝的疾患を理由とする人工妊娠中絶を 容認 V.Q11.遺伝相談の有無,年数,件数 各々の時期の説明相手の選択では,絶対数でみ ると『託児の診断過程』で母に話す,『母が衝撃か ら立ち直り,次に生まれる子の発病の可能性を問 合わせてきた時』および『母が次妊娠を考慮し生 まれる子の発病の可能性を問合わせてきた時』に, 母自身とその夫に話す,とした者が各19名で最も 多く,『診断の説明直後』に母とその夫に話すとし た者が18名で次に多かった.
表2 回答者の遺伝相談経験 (a)遺伝相談経験の有無 性別 樺k経験 男性 女性 無答 Tota1 経験有り o験無し ウ 答 30 i48.4%)
@30
i48.4%) @ 2 i3.2%) 4 i30.8%) @ 9 i69.2%) @ 0 一 @一@4
i!00%) 34(43.0%) R9(49.4%) U(7.6%) Tota1 62i100%) 13i100%) 4i100%) 79(100%)
(b)遺伝相談の経験年数 経 験 年 数 回 答 者 数 ∼10年未満 P0年以上∼20年未満 Q0年以上 17(51.5%) P1(33.3%) T(15.2%) Total 33(100%) (c)遺伝相談の件数 相談内容 署 神経筋疾患 その他の疾患 TotaI ∼10件 P1件∼20件 R0件以上 18(58。1%) W(25.8%) T(16.1%) 8(53.3%) T(33.3%) Q(13.3%) 26(56.6%) P3(28.3%) V(15.2%) Tota1 31(100%) 15(100%) 46(100%) 患者の 診断過程 診断説明直後 61、3% 患者の 診断過程 診断説明直後 保因者が 思春期 20歳過ぎ 縁談の頃 婚約後 結婚後妊娠前 〃 妊娠中 0 10 20 30 40 50 50 ア0 80 90 100%
・…面詰璽霧;=コ
・…睡羅油画コ
…羅羅可罰翻コ
・38・躍甲羅聾コ
・41)壁皿羅躍麺
・…睡羅西北羅コ
・38・睡羅羅醗羅羅翻・36・醗羅擁羅手空
圏;必要あり遺伝相談経験あり 幽:必要あり遺伝相談経験なし [コ:必要なし遺伝相談経験あり 躍:必要なし遺伝相談経験なし 図2 保因者の可能性のある患者姉妹に血清CK測定 による訴因者診断の説明をする必要性 各グラフの右側の数値は,その項目の回答者数.斜 線で示した部分は遺伝相談経験なしの者の割合 母が衝撃から立ち直り、次に 生まれる子の病気の可能性を(34) 尋ねてきた時 母が次妊娠を考慮し、生まれ る子の病気の可能性を尋ねて きた時 母の次妊娠時 :: (31)LF o ;: (34)1F o l: 1: o l: (27)1F 1: (26):: : 355賄 32% 442覧 529瓢 29究 55.9% アむヒ お 本人 夫 本人と夫 □遺伝相談 経験あり 國遺伝相談 経験なし 図1 保因者の可能性のある患者母に血清CK測定に よる保因者診断の説明をする必要性一その時期と相 手一 各グラフの左側の数値は,その時期に説明が必要と 回答した者の数.グラフの各棒上の数値は,必要と 回答した者の中で該当項目に丸を印した人が占める 割合. 各々の時期に説明が必要であると回答した老に おける説明相手の選択をみると,『患児の診断過 程』では母に話すが最も多いが,『母が次妊娠を考 慮し生まれる子の発病の可能性を問合わせてきた 時』,『母の次妊娠時』では,母のみが順に29.6, 38.8%で,母とその夫の両者に話す者が70.4, 61.5%であった.A群.B群間には有意差はなかっ た. (4)患者の姉妹に対して 説明の必要有り.と回答した53名に,時期・説明 相手を質問した設問の回答は以下の通り. イ)各時期におけるCK検査の意味を説明する 必要性(図2) 絶対数としては,『診断説明直後』と『保因者の 縁談の時期』に必要と答えた者が36名と最も多 かった.無回答の者を除き,必要ありとした者の 割合をみると,保三者の縁談時期(87.8%),結婚 後妊娠前(84.2%),妊娠中(83.3%)に多かった. 次で『診断説明直後』(76.6%),『婚約した頃』 (75.0%),『20歳過ぎの頃』(73.7%),『思春期の 頃』(54.1%)の順で,『患老本人の診断過程』で 必要ありとする者は45.0%で半数以下であった. A群B群には有意差はなかった. ロ)各時点で誰にそのことを話すか(図3)患者の 診断過程 α8鐸 { 診断説明直後(36)li 該当女性が 思春期 =1遺伝相談経験あり 800% 窪 550% (20)1言 250%200% 囮遺伝相談経験なし 20歳過ぎ 縁談時期 婚約時期 ,28,1536%53・% %35・% (36)ll (27)陰 結婚後妊娠前(32)1: 〃撫中(3・)1 472% 417%528% 278% アイ あ 370%333% 296% 222% 688% 344%281% 281% 4。6% 患者の ii 診断説明直後 (34>ll 母が衝勤。立。臥次、こ 塁 生まれる子の蔽の可能性を(3・)ll 尋ねてき塒
@ β
lll篶羅毒細1
一 一ii
了9.砺 300% 33% 657亮 230% 769瓢 300究 70脇 本人 夫 本人と夫 733% 433% 267%233% 300% 33% 母 父 本人 姉妹 兄弟 夫 図3 保因者の可能性のある患者姉妹に血清CK測定 による保因者診断の説明をする時期と相手 各グラフの左側の数値は,その時期に説明が必要と 回答した者の数グラフの各棒上の数値は,該当項 目に:丸を印した人の,必要と回答した者の中で占め る割合.1人の回答者が複数項に:丸を印している. 各々の時期に話す必要があると答えた者の,説 明相手の選択をみると,『患児の診断過程』では母, 父に話すが共に77.8%,『診断の説明直後』では母 が80,6%,父が63.9%,『該当女性が思春期』では 母が80.0%,父が55.0%と保護者に話すとする者 が多いが,本人に話すとする者も各時期順に4名 22.2%,6名16.7%,5名25.0%にみられた. 『該当女性が20歳頃』では,母,父に話すが共 に53.6%,本人が57.1%,『該当女性の縁談時期』 では本人に説明する者の割合が多くなり,さらに 『該当女性が婚約した頃』では母が37.0%,父が 33.3%,本人が74.1%,婚約者が22.2%であった. 『該当女性が結婚後妊娠前』では本人が68.8%と最: も多いが,夫が40.6%,と両親よりも夫に話す者 の割合が多くなり,『該当女性が妊娠中』でも,同 様であった.A群B中間には有意差はなかった. 2)出生前診断の意味を説明する必要性 (1)保三者の可能性のある女性に対し出生前診 断の意味を説明する必要性 説明の必要有りと回答した老が49名(66.2%, A群所属者の78.8%相当の26名,B群所属者の 56.1%相当の23名),無しが3名(4.1%,A群所 属者の3.0%相当の1名,B群所属者の4.9%相当 □遺伝相談 経験あり 躍遺伝榛炎 経験なし 図4 保勇者の可能性のある患者母に出生前診断の説 明をする必要性一その時期と相手一 国グラフの左側の数値は,その時期に説明が必要と 回答した者の数グラフの各棒上の数値は,該当項 目に丸をした人の,必要と回答した者の中で占める 割合. の2名),どちらともいえないと回答した者が22名 (29.7%,A群の18.2%相当の6名, B群の39.0% 相当の16名)であった.A群B山間に有意差はな かった. (2)母に対する出生前診断の意味について,何 時・誰に話すべきか(図4) 説明の必要有りとした者49名に,その時期と説 明相手を尋ねた設問の回答は以下の通り. 時期については,『患児の診断説明直後』が34名 で最:も多く,『母が衝撃から立ち直り次に生まれる 子の発病の可能性を問合わせてきた時』が30名, 『母が次妊娠を考慮し生まれる子の発病の可能性 を問合わせてきた時』が26名,『母の次妊娠時』が 20名であった。 各々の時期の説明相手の選択については,『患児 の診断説明直後』に母とその夫に話すとした者が 27名,『母が衝撃から立ち直り次妊娠で生まれる子 の発病の可能性を問合わせてきた時』と,『母が次 妊娠を考慮し生まれる子の発病の可能性を問合わ せてきた時』に母自身とその夫に話す,というの が共に20名,「母の次妊娠時』が14名であった. A群B群間には有意差はなかった. (3)患者の姉妹に対し出生前診断の意味につい て説明する必要性(図5) 絶対数としては,『保因者の縁談時期』に必要と患者の 診断過程 診断説明直後 該当女性が 思春期 20歳過ぎ 縁談時期 婚約時期 結婚後妊娠前 〃 妊娠中 図5 説明をする必要性 0 1D 20 30 ξD 50 50 7G 80 90 10Gκ ・31)睡璽聾心=コ ・…
・3・睡郷コ
・34・睡暗黙蓬瞳コ (34)・…睡懸甕魏コ
・31)睡醗羅璽毛頭 (29) 羅難遜i鎌v 國:必要あり遺伝相談経験あり 睡翻:必要あり選伝相談経験なし □:必要なし遺伝相談経験あり 匿圏:必要なし遺伝相談経験なし 保思者の可能性のある紅型姉妹に出生前診断の 各グラフの左側の数値は,その項目の回答者数斜 線で示した部分は遺伝相談経験なしの者の割合. 答えた者が28名と最も多かったが,無回答の者を 除いて必要ありどした者の割合をみると,『妊娠 中』,『結婚後妊娠前』,『保因者の縁談の時期』に は順に86.2%,83.9%,82.4%であった.次いで 『20歳過ぎの頃』(70.6%),『婚約した頃』(66.7%), 『診断説明直後』(63.9%)の順で,『患者本人の診 断過程』(48.4%),『思春期の頃』(45.2%)に必 要ありとする者は半数以下であった. A群B二間には有意差はなかった. (4)各時点で誰にそのことを話すか(図6)・ 各々の時期の話す必要があると答えた者の説明 相手の選択をみると,『患児の診断過程』,『診断の 説明直後』,『該当女性が思春期』では保護者に話 すとする者が多いが,本人に話す必要があるとす る者も順に6名(40.0%),5名(21.7%),5名 (35.7%)にみられた. 『該当女性が20歳頃』では母66.7%,父・本人 共に50.0%,『該当女性の縁談時期』では母が本人 に説明する者の割合が過半数となり,さらに『該 当女性が婚約した頃』では母が55.0%,父が 45.0%,本人が65.0%,婚約者が25.0%,『該当女 性が結婚後妊娠前』では,本人が73.!%,夫が 38.5%と父よりも夫に話す者の割合が多くなり, 『該当女性が妊娠中』では,両親より夫に話す者の 割合が多くなった. 患者の 1: {慧姦:1::;i 。。女性。、:i 思春期 (14) 20歳過ぎ (24> 733%667% 400%333% ロ遺伝相談経験あり 囮遺伝相談経験なし 26 609% 217%391% 857% 571% 357%214% 667% 500%500% 333% 縁談時期 (28) 571% 607% 429% 321% 婚約時期 (20) 結婚後妊娠前(26)・・ 〃 妊娠中(25)1・母父本人姉妹兄弟夫
図6 塚目者の可能性のある患者姉妹に出生前診断の 説明をする時期と相手 各グラフの左側の数値は,その時期に説明が必要と 回答した者の数.グラフの各棒上の数値は,該当項 目に丸を印した人の,必要と回答した者の中で占め る割合。1人の回答者が複数項に丸を印している. A群B群の比較では有意差はなかった. (5)保因子である可能性を否定できない女性に 対し出生前診断の意味を説明する必要性(図7) 絶対数としては,『保因者の縁談の時期』に必要 と答えた者が33名と最も多く,ついで『結婚後妊 娠前』が31名であったが,無回答の老を除き必要 とした者の割合をみると,『妊娠中』,『結婚後妊娠 前』,『保曝者の縁談め時期』に必要とする者が順 に90.3,88.6,84.6%と多かった.次いで『婚約 した頃』(75.8%),『20歳過ぎの頃』(73.0%)の 順で,『小児期』(48.6%),『思春期の頃』(42.9%) に必要とする者は半数以下であった.A群B群の 比較では有意差はなかった. (6)各時点で誰にその事を話すか(図8) 各々の時期に話す必要があると答えた者の説明 相手の選択をみると,『小児期』,『該当女性が思春 期』では保護者に話すとする者が多いが,本人に 話す必要があるとする者も順に2名(11.1%),・4 名(26.7%)にみられた. 『該当女性が20歳頃』,『該当女性の縁談時期』該当女性が 小児期 思春期 20歳過ぎ 縁談時期 婚約時期 結婚後妊娠前 〃 妊娠中 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100陛
・37・瞬翻醗羅=コ
・35・㈹月ャコ
・37・融融璽駿]
・39・睡羅璽翻
・33・・35・睡騒纒i璽翻
・31)醗羅羅羅茸
山;必要あり遺伝相談経験あり 睡國=必要あり遺伝相談経験なし 〔コ=必要なし遺伝相談経験あり 躍:必要なし遺伝相談経験なし 図7 保端者の可能性を否定できない女性に出生前診 断の説明をする必要性 該当女性が 小児期 (18)1・ 944% 833% 111%56% ロ遺伝相談経験あり 囮翻遺伝相談経験なし 思春期 (15)・5 20歳過ぎ’ 〔27) 憾 縁談時期 (33):: 鞠嘲(25)li 結婚後妊娠前(31)・・ ” 妊娠中(28)1・ 86了%733% 267% 67% 704% 593% 481% 185% 576% 455% 727% 440%400% 212% 840% 323% 258% 200% 280% 161% 484% 286%250% 821% 179% 50Q% 母父本人姉妹兄弟夫 図8 保臣事の可能性を否定できない女性に出生前診 断の説明をする時期と相手一 各グラフの左側の数値は,その時期に説明が必要と 回答した者の数グラフの各棒上の数値は,該当項 目に丸を印した人の,必要と回答した者の中で占め る割合.1人目回答者が複数項に丸を印している. では共に本人に説明する者の割合が多くなり,さ らに『該当女性が婚約した頃』では母が44.0%, :父が40.0%,亀入が84.0%,婚約者が28.0%,『該 当女性が結婚後妊娠前』では父よりも夫に話す老 の割合が多くなり,『該当女性が妊娠中』では両親 よりも夫に話す者の割合が多くなった. A群B群の比較では有意差はなかった. 3.問題のあった遺伝相談の事例 1)事例1 1982年7月当院通院中の患児の母が次子を希望 し遺伝相談に来院した.患児(4歳6ヵ月,男児, 1977年12月27日生)の臨床像は以下の通り. 家族歴:両親に近親婚無く,父27歳,母(血清 CK正常)25歳の時の子,:父も2歳まで歩行開始し なかったという. 妊娠歴:胎動も弱くなく,特に異常なし. 現病歴:胎盤機能不全にて予定日より10日早 く,誘発分娩にて2,085gで出生(T−SFD),仮死 なし.吸畷力,暗泣力は強かったが,黄疸強く, 光線療法2回施行.この玉高CK値を指摘された. 以後生後3ヵ月より,某院で筋炎の可能性も考え, デカドロン⑧S18m1/d投与開始.投与開始後2週 間でCK値270mU/mlまで低下,副作用のため, 同薬剤減量し1歳時には再びCK 2,200mU/d1と 高値となったため1歳1ヵ月時中止.’1歳1ヵ月 時当科受診入院精査. 1歳1ヵ月時現品:身長一3.3SD,体重一2.8 SD,筋萎縮認めず.坐位保持可なるも脊柱後攣あ り.自発運動活発.腹臥位を嫌がるが,肩・頸は 挙上可能.引きおこし反応陽性なるも弛緩肩現象 軽度あり.立位姿勢で足関節外旋位.仮性肥大(下 腿,三角筋,僧帽筋)有り.膝蓋腱反射正常,股 関節開排制限,膝・指応問関節軽度伸展制限,足 関節過伸展性を認めた.皮膚は色黒だが,皮下結 節なく,皮下組織も硬くない.頭部,肩,背部に 湿疹. その後の経過:2歳1ヵ月より独立歩行開始, 腰椎前面あり.歩行可なるも膝を曲げずに,歩幅 を広くとり,足内反傾向を示す.口を開いている こと多く,流誕有り.2歳8ヵ月より立ち挙がり 可能なるも登墓性起立を認める.4歳3ヵ月上肢 挙上可,膝蓋腱反射,アキレス腱反射共に正常, ストロー吹ぎ可.仰臥位からの立ち上がり所要時 間14秒,登墓性起立陽性(図9,10). 運動発達:定頸4ヵ月,三位保持7ヵ月,物に っかまって立位を保持するのは9ヵ月だが,寝返 り1歳,つかまり歩行1歳4ヵ月,sit up可1歳11ヵ月,独立歩行開始2歳1ヵ月.床からの立ち 挙がり2歳8ヵ月と遅かった. 知的発達:あやし笑い1.5ヵ月,遠視2ヵ月,言 語は1歳1ヵ月でマンマがでたが,2歳5ヵ月で 図9 患児4歳6ヵ月時の全身像 下腿および上腕前腕の筋は肥大している,軽く口は開 いており胸部がやや盛り挙がった感はあるが,鼻唇溝 は浅くなく,潮筋罹患は先天型ほど明瞭ではない. 脅 鰯選良“ 蔓 ㌔浅 鷺
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謄 図10患児4歳6ヵ月時の立ち上がり方 四つ這い位置から両下腿を伸展して腰を挙上し,大腿 下部を上肢で押して立ちあがる.この際歯を食いし ばっている.二筋罹患は明瞭ではない. も有意語は,ママのみ,2歳8ヵ月;単語10語, 3歳8ヵ月;単語20回目身振りで意思表示する, 4歳;二語文,4歳6ヵ月でも数・色の理解なし. 検査所見:頭部CT(1歳3ヵ月)軽度脳萎縮. 透明中隔のう胞. 発達指数:1歳1ヵ月DQ 86.7(運動8ヵ月, 知的発達1歳相当),1歳11ヵ月DQ 52(運動10カ 月,その他の発達1歳5∼6ヵ月相当). 筋生検:開放生検(1歳1ヵ月)筋線維大小不 同,再生線維群,中心核増加,ring且ber, moth eaten, subsarcolemmal hyper activity,結合織・ 脂肪の増加を認め,炎症性細胞は認めず,総合的 には筋ジストロフィー所見と判断された. 以上臨床的には筋ジストロフィー(PMD)はま ちがいないと思われたが,知能障害,筋力低下, 関節拘縮が強く,2歳頃より顔筋罹患もあり,典 型的なDMD型ではなく,また乳児期にステロイ ドを投与されていたこともあり,遺伝形式匠つい ても断定できない状況であった.両親の希望もあ り,針生検(4歳6ヵ月)を実施した.筋線維大 小不同,結合織増加の所見を得,DMDに最も近い と判断した.当時はジストロフィン染色13)は不可 能であり,断定不可能であるが,我々の提唱した severe Duchenne型14)15)に最も近いと診断した. 母の血清CK値が正常であり,孤晶晶であること から,常染色体性劣性遺伝の型も否定できず,X 連鎖性劣性遺伝としても突然変異の可能性が高い と説明した.両親はX連鎖性劣性遺伝の可能性を 重要視し,第2回妊娠時に某産婦人科で羊水診断 を受けたが検査直後腹痛が生じ,男児を自然流産 したという.しぼらく来院しなかったがこの間, 母は『食事による男女生みわけ法』を研究し,さ らに2回妊娠.羊水診断を別の産婦人科で受け, 女児と判明し出産していた.この女児はいずれも 健康(図11). この間の丁丁の経過:4歳9ヵ月膝蓋腱反射陰 性化,歩行動揺性,指節骨間・股・膝関節伸展制 限軽度,三関節過伸展性,筋力低下(躯幹,四肢), 階段昇り両手手摺にて可. 6歳9ヵ月 歩行動揺性,膝から崩れるように転 倒する.6歳11ヵ月 物に掴まらずには立ち上がり不可 能. 7歳1ヵ月 インフルエンザ罹患後,独立歩行不可 能,つたい歩き可. 7歳4ヵ月 立位保持不可能. 7歳11ヵ月 長下肢装具にて歩行,四つん這い可, 寝返り可. 9歳1カ.月 寝返りは布団の上では不可能. 9歳4ヵ月 アキレス腱反射陰性化,長下肢装具 にて歩行可能. 11歳1ヵ月 上肢挙上困難寝返り畳の上でかろ うじて可能. ユ2歳9ヵ月 四つん這い不可能. 13歳8ヵ月 いざり這い移動不可能,坐位保持可 なるも脊柱後轡. Cκ→ □F工嵩○ 圏 ? ロFエ;○ 璽 晶 羊水診断 し CK→ 闇 ロ ○ O SA CK CK → → レ 回 ロ ○ ○ ●6mo 14y†SA肇墜CK↑ 図11 事例1(図10)の患児の家系の変遷 1982年の遺伝相談例.Duchenne型にしては知能障害 が強く,運動機能も悪い筋ジストロフィー男児をもつ 家系で母の血清CKは正常.患児の次の妊娠は某医で 羊水穿刺を受けた直後に自然流産(男児)(2段目). 母は自分で男女生みわけのための食事療法を実施し, いずれの妊娠も女児と判明し出産(3段目).3女が, 運動発達悪く当科受診血清CK高値(6,0001U〃),染 色体46XX. Floppy infantである.このことが判明し たとほぼ同時に長男が,14歳時心不全で他界.剖検で 骨格筋の項ジストロフィン免疫染色陽{生.剖検脳で, 多小脳回があると判明.最終診断は,先天性筋ジスト ロフィーIII/IVを考えている(下段). 14歳 下痢・嘔吐を伴う感染症で,近医にて加療 されていた.夜間胸部苦悶感を訴えていたが, 家族が気付いた時には心停止,救急車で来院, 蘇生に反応なく永眠される. 全体の経過:運動機能は,5歳頃が最も良好で あった.階段昇降も可能.しかし両足跳び,走る ことは終生不可能.筋力低下,関節拘縮は徐々に 増強していた.知的能力も上昇し,13歳時には, 一桁のたし算可能,生物と機械の区別は可能で知 的レベルは5,6歳程度と推測された.痙攣は1 歳頃より熱性痙攣,10歳11ヵ月に無熱性の複雑部 分発作を生じた. 家族員に関するその後の経過(図11):母は患児 が13歳時,5回目の妊娠をし同様に女児と判明し, 1991年秋に出産していた.この児は8ヵ月面当料 初診し(患児が他界する前日),坐位保持未,深部 腱反射陰性,且oppy infantで,血清CKは6,000 mU/dlと高値,染色体分析では46XX正常女性で
あった.1歳5ヵ月時の筋生検で筋ジストロ
フィー所見.兄よりは筋力低下が著明で,深部腱 反射は陰性である. 本例(発端者)の詳細は別途報告予定であるが, 剖検が得られた.多小脳回その他の脳の奇形を認 め,また死後約5時間の剖検であったが骨格筋の ジストロフィン免疫染色が陽性であった.最終的 に,本症はX連鎖性遺伝をとるDuchenne型では なく,常染色体性劣性遺伝であり,先天畑鼠ジス トロフィーのIII/IV型16)であった可能性を推測し ている. 2)事例2 (1) 事伽噸2−1 1986年1組の若い夫婦が相談に来訪(図12).同 婦人の兄はPMD(病型不詳)で20歳で他界し,彼 女は当時妊娠9週であった.『PMDはX連鎖性劣 性遺伝であり,彼女の子は息子ならPMDになる かもしれないが,娘ならば発病しない』というこ とを本で読み,また一方新聞記事から人工授精に よる男女生みわけの可能性17)の情報を得ており, 「現在妊娠中の児を中絶し,人工授精により女児を 授かりたい」と切望していた.兄は孤島例であり, 情報からはDMDが最も考えられ易いが,当時は未だ遺伝子異常も不明,ジストロフィン染色も普 及しておらず,例外的に存在する常染色体性劣性 遺伝形式1}のものも完全には否定不可能であっ た.彼女はCK検査を受けたことはなく,妊娠中 では本来CKが高値を示す女性でも正常値をとり うるので,彼女が保強者か否かは不明であった. 相談の結果,とりあえず妊娠継続し,当院産婦人 口 ○ 口O O O 口
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Oロ ロ ロロ〔〕OOロロロ M? ロ ロ ロ=__」■一一L
【コ ○ ■ O O ロ ロ O Q 口 O ロ ロ 諾+斗一一」「幽 Ooロ ロロ[⊃OOロ千日 図12 事例2の家系の変遷 1989年の遺伝相談例.Duchenne型に最も近いが確定 的ではない(DNA検索,ジストロフィソ免疫染色は未 実施,患者は他界)筋ジストロフィー男児を兄にもつ 家系.妊娠中に夫とともに来院.妊娠中絶し,人工授 精による男女生みわけで女児を生むことを希望(上 段).相談の結果取敢えず妊娠継続,羊水検査により女 児と判明妊娠継続し,女児を出産した(2段目).次の 妊娠では羊水検査で男児と判明,人工流産(他院).更 に次妊娠で,某医で絨毛検査を受け女児という判断下 妊娠継続するも,別の某医で羊水検査で男児と判明. 妊娠26週,当科に相談に来院(3段目).相談の結果, 妊娠継続し健康男児出産(下段). 科の羊水検査で女児と判明し,妊娠継続,無事女 児を出産した. (2)事例2−2 1989年再び同じ女性が相談に訪ずれた(図12). 「長女出産後,1988年に妊娠,A病院で羊水検査で 男児と判明,中絶し,さらに1989年出生前診断可 能という情報を得て,B病院で彼女と彼女の母が 検査を受けたが,結果が出ない前に再び妊娠,絨 毛検査で女児といわれ妊娠継続していたが,不安 になり再びA病院で羊水検査を受けた所,男児と いわれ,どうずればよいか」との相談であった. 既に妊娠26週であり,中絶も不可能な時期であっ た.この時には,彼女の非妊娠時および彼女の母 の血清CK値が正常であることが他院の情報から 得られていた.そこで,X連鎖性劣性遺伝と仮定 し,点心者でありながら血清CKが上昇しない可 能性1/3を条件確率に用い,Bayesの理論で,彼女 が保因者である確率,その息子が病児である確率 を計算した.彼女の母が保因者である確率は2/5, 彼女が保因者である確率が1/13で,その息子が病 児である確率は1/26,3.8%となり,96%の確率で 病気ではないと結論した.その後健康男子を無事 出産した. 考 案 1.病因老検索と訴因者告知 保湿者であることあるいは可能性があることを 伝えることで,該当女性に対策を立てる機会が与 えられる.しかし同時に新たな不安や悩みを提供 することにもなり,「保惑者である」と断定された 場合には,必然的に該当女性の悩みや苦痛を増加 する.班員へのアンケート結果では,話劇者であ る可能性のある母に対し,その一手段である血清 CK検査の意味の説明が必要とした者が69.7%, どちらともいえないと回答したものが27.6%で, 無しと回答しえた者が2名2.6%であった.この無 しと回答した者は遺伝相談非経験者である.その 検査の勧め方については,積極的に実施と希望が あれば実施とが各々半数を占めていた.時期につ いては,『患児の診断説明直後』と『母が衝撃から 立ち直り次妊娠について問い合わせてきた時』が 最も多かった.歯面が診断されるであろう年齢を考えると,できるだけ早期に説明しなけれぽ,次 の家族計画には間に合わなくなる可能性があり, この時期の選択は当然であろう.その説明相手に は,次子を考慮する時には保因者の可能性のある 母とその夫の両者を選ぶ者が大半を占めていた. 家族計画が夫婦合意の上で行われることを考えれ ば当然のことであろう.ただし特に母が保三者で あることが明確になった場合には,慎重な態度で 説明が行われるべきである.また『診断過程』と 『診断説明直後』に,夫(父)のみに話すという回 答が1名あった.誰に話すかは,その夫婦の各々 の理解度・人としての幅の広さなどの準備状態に もよる.母の準備状態が不十分と考えられれぽ, 夫のみに説明することも必要となるかもしれない が,保因者と判定される可能性ぽ母にあるので, この行動は原則的に好ましくない. 姉妹に対する同検査の説明については,該当女 性に『縁談話が生ずる頃』,『結婚後妊娠時期』,『妊 娠中』では約80%以上の者が必要あるとしていた. 『思春期の頃』や『患児の診断過程』で必要とする’ 者は半数ないし半数以下であった.またその説明 相手としては,該当女性が思春期以前では,保護 者が多く,『婚約時期』以降では本人に直接話す者 の割合が70%を越え,結婚後には夫にも話すとす る者が40%に達していた.ただしここで,該当女 性が『思春期』あるいはそれ以前と思われる『診 断過程』や『診断説明直後』にも約20%が本人に 説明するとしている.該当女性の年齢的要因がら, その理解度,精神的安定性などの準備状態を考慮 すると,その際は特に充分なafter careが必要で ある. 2.出生前診断
DMD患者の約60%ではX染色体短腕上の遺
伝子の異常が発見されることが判明し,出生前診 断が可能となった.出生前診断により,「該当する 病気ではない子」を持てる可能性が親に与えられ る.しかしながら現状では,医学の限界による問 題 と本質的問題が残されている5)8)9). 医学の診断・知識の限界による問題としては,DMDにおけるcDNAを用いた異常発見率が
60%程度しかないこと,Englandからの報告18)の ようにDNA異常があっても臨床的には極軽微な 症状のみしか呈さない例が存在し,DNAと臨床 像の不一致があること,Isaacsらの報告7)のよう にDMDの保因女性が遺伝相談をうけて妊娠し女 児であったので継続したが,その女児が発症した 例等があり,女性発症例があることの問題5)があ る.RFLPsを用いた連鎖分析の場合には組み換 えによる誤診の問題がある.特にBoileauらの報 告6)は,RFLPsを用いた判定で生殖細胞モザイク の問題を見逃したために正常児を流産してしまら たというショッキングなものであった. 出生前診断が確実安全なものとなったら,両親 の希望を全て受けいれて良いかという点が本質的 な問題として残される.この点については今回言 及しないが,人工中絶という過程を回避する目的 で,着床前の操作が試みられている19). 患児の母に対し,出生前診断の可能性を説明す る必要性については,約65%の者が必要あり,約 30%がどちらともいえない,約4%が必要無しと 回答した.時期としては,血清CKの測定と同時 に『患児の診断説明直後』が最も多かった.’出生 前診断の可能性を説明することにより,子を設け ることを諦めていた人に希望を与え,既に妊娠中 で,無差別な中絶を考慮していた女性にそれを回 避する機会を提供するという点で価値がある.し かしながら,一方では保武者の妊娠の機会を増加 し,結果的に人工妊娠中絶の機会を増す可能性も 否定できない. 現状におけるDMDの出生前診断の意義につい ての生命倫理的考察は既に述べてきた5)8)9).家系 の患児のDNA異常が不明でも,クライアンドが 既に受胎しており,中絶希望の場合には,女児な ら救済可能,正常男児を救済可能という点で意義 がある.しかしこの場合にDNA異常を発見不可 能でも生まれてくる男児が病児である可能性が残 る.その家系の患児のDNA異常が認められない 場合には,性別判定は可能だが,出生前診断は不 可能である.家:族員多数例のRFLPsを用いた連 鎖解析により確率を出すことは可能だが,組み換 えの可能性は否定できない.その家系の患児のDNA異常が判明していれ
ぽ,女児・正常男児を救済可能,かつ正常なら精 神的安定が得られるという点で価値がある.女子 医大では,大学の倫理委員会から,この場合のみ 出生前診断実施の許可を得ている.現実にはこの 条件に該当する例は少なく,非該当例は他院に紹 介している. 患者の姉妹に対し出生前診断の意味を説明する 必要性については,母の場合とは異なり,姉妹に おける血清CKの測定と同様に『保因者の縁談の 時期』に必要と答えた者が最も多く,『妊娠中』, 『結婚後妊娠前』,『縁談の時期』には必要とする者 が80%を占めていた.『患児の診断説明直後』とし た老は63.9%であった.また説明相手の選択では, 該当女性の思春期以前では保護者が多く,成人に 達した以降は本人が半数を越えた. 保二者の可能性を否定できない女性に対し出生 前診断の説明をする必要を問うた質問に対して も,該当女性が『20歳以上』では70%以上が必要 としていた. 実際には,妊娠後に遺伝相談に訪れる場合が多 く経験され3)∼5)20),相談されても何も術がない場 合もある.したがって,『患児の診断説明直後』に とりあえずその可能性を保護者に説明しておき, 縁談の時期には再び訪れるよう話し,その時には 該当女性本人に直接説明するようにしておく必要 がある. 3.遺伝相談の実際における問題点 さきにあげた事例は数多くの問題点を示してい る.第一に該当患者の診断を確実にし得ないため に保点者か否かの判定できないことから生ずる問 題である.この際,患者が非典型的であり,また その時点の最高の医学的知識と技術をもっていて も診断できない場合と,患者が診断された時代に は正確な診断でも,医学の進歩とともに診断基準 が変化し,相談時には既に患者が他界しており, その資料を入手し得ないために新しい研究成果を 適応できず,正確な最終診断に到達できない場合 がある. 診断を確実にすることは,遺伝相談の際の最も 重要な点である3)∼5)20).その点で事例1のように, 臨床診断に問題のある場合は原則的に遺伝相談が できない.本例においては,相談の際にいくつか の可能性を述べているが,最終的には両親が,『母 がX連鎖性劣性遺伝の保母者』と仮定して行動し ていた.当時はDNA異常も不明,ジストロフィン 免疫染色も開発されておらず,これ以上確実な診 断は困難であった.この例では,3女が発症した ことおよび本人(発端者)の剖検でジストロフィ ン免疫染色陽性であったことから,その遺伝子異 常が常染色体上にあることが判明した.もしこの 家系で,3女が出生せず,患児の剖検が実施され ないままであれぽ,長女と次女は結婚適齢期に臨 み,事例2のように保虚者の可能性を残したまま 苦悩することとなる. 我々の教室ではこの症例以外にも,他の国立療 養所で臨床的に疑いもなくDMDと診断されてい た孤発例で,当科に転科後,臨床的にやや非典型 的なことから筋生検し,ジストロフィソ染色で全 ての抗体に陽性を示し,DMDではなく,いわゆる 常染色体性劣性遺伝の小児期発症肢帯型PMDと 診断した例15)がある.過去に用いられてきた『いわ ゆるDMD』の診断基準のみでは,遺伝形式を含め た正確な診断は下しえない.我々の教室に受診し ている例でもかつて筋生検を受けていてもジスト ロフィソ染色については未実施の例は多い.この 他にもたとえぽ,現在国立療養所に入所中の患者 で,かつて筋生検をうけていてもジストロフィン 染色までは実施されておらず,また今後の新たな 検査に応用可能な検体保存はされていない例が多 いと推測される.これらの例においては,どこま で検査が実施され,遺伝形式,遺伝子異常を含め どこまで診断が確実かを明らかにしておくべきで あろう.また以前にも述べたが,できれば遺伝情 報を得ることができる組織・資料を将来の新しい 研究成果を応用できる形で保存することが重要で ある8).そうすることによって,家系図上から場合 によっては保因者である可能性を否定できない女 性の数を減ずることが可能である. 従来,DMDの保因者診断は,陽性と判定する方 法しかなかったが,最近,家系によっては家系図 上保直心の可能性のある女性に対し,「保因者では ない」と診断することが可能となってきた5).リン
パ球よりDNAを調製し, southern blottingで cDNAプローブを用いて遺伝子欠失を同定し,同 部のgene dose測定で判定する方法5)2D∼23), jun・ ctional fragmentで判定する方法22)23),リンパ球 由来のmRNAのnested PCR法24), PCR−RFLP によるCA repeatの多型解析25)∼27)等である.家 族歴陽性例では,「保唖者ではない」という結果が 得られる可能性があれぽ是非検査を受けたいと思 うであろう.しかし患者が既に他界しており,患 者における遺伝子異常を明確にし得ない場合に は,保因者診断も100%確実にすることは不可能で ある. 第二には,医学の進歩と技術的熟練め間にある 個人の犠牲である.医学の進歩は目ざましいが, それに対応する技術の未熟性により,個人の犠牲 が生ずる.技術的限界として,絨毛採取における 自然流産誘発の危険性,母体組織の採取による誤 診の可能性があり,羊水診断では,最近はPCR (polymerase chain reaction).の応用によりかな り改善させれた28)が,判断されるまでに時間的制 約がある.男児であったのでこの両親がその時点 でとった行動を推測すれぽ,結果的には同じで あったと考えられるが,事例1の女性は羊水検査 をうけて即流産してしまっている.現時点で,こ の家系を分析すれぽ,この男児については筋ジス トロフィーではなかった可能性が3/4である.また 我々は他に,DMDの保昌昌である事が確実な女 性で,他院で絨毛検査をうけ,その5日後に女児 であったにもかかわらず自然流産となってしまっ た例を1990年に経験している.また事例2の女性 では絨毛検査で母の組織を誤認され,男児を女児 と判定され,その後男児と判明している.』この女 性の場合,もともと保病者である可能性は低く, 絨毛検査で女児と誤認された結果,健康男児を出 産できたという点で却ってよかったのかもしれな いのだが….いつの時点でも医学の新技術が導入 される場合には,それなりの危険が伴うが,新技 術の適応は,その時点で他になすすべがない場合 に限り許されることである. 第三はマスメディアによる情報伝達とそのアフ ターケアーの問題である.事例2の女性は,本か ら自分が保因者である可能性を学び,それに対す る不安を持ちながら,そのことを検討する機会も なく初回の妊娠を迎えていた.またその時点で, マスコミから男女生みわけ可能という最先端の研 究結果17)の情報を得て,即実行が可能と思い込み
健康管理手帳
(案) 1992マ了.15 東京女子医科大学小児科 大澤真木子 掛り付けの病院名 A.昭和、平成 年 月 日∼ 年 月 日 住所 電話 病院名 診療科 科 協力=白井泰子、斉藤加代子、池谷紀代子 監修:福山幸夫 担当医師 カルテ番号 その他関連番号 B.昭和、平成 年 月 目∼ 年 月 日 住所 電話 病院名 診療科 科 担当医師 カルテ番号 その他関連番号 図13 健康管理手帳の表紙(左)と1,2頁(右)来院した.もし相談に来院せずに中絶していれぽ 長女の誕生はなかった.この女性は一般女性の中 では,比較的知識レベルも高く,積極的,前向き に行動可能であると推測される.自分の息子が PMDになるかもしれないという不安に伴う動揺 は相当強く,それに対する各病院の対応は不十分 であったことが,病院を巡り歩いていることから も伺おれる.科学は時々刻々進歩している.しか し,その進歩が確実かつ安全に実際に応用される までには,時間的ギャップがある.一般に,マス メディアにより報道されると,患者/家族は即それ が可能であると思い込んで行動するきらいがあ る.情報伝達に当り,情報を受ける側の準備状態 を考慮し,何がどこまでどのように可能であるの かを正確かつ充分に伝える必要がある.またその 際のその情報を受けた人が情報を消化しうるよう
にアフターケアーの体制を確立する必要があ
る9).遺伝的問題に関していえば,医科大学におい て遺伝学講座を早急に設立すること,専門家の養 成である.また患者の診療にあたっている者とし ては,その家族/親族が疑問を抱き相談したいと希 望した時には窓口を開いておく必要があろう. 4.遺伝相談でのトラブルを減ずるための一提 案 PMDは,医学の中では旧くから遺伝性疾患の 代表とされてきた29).しかしこのことを患者/家族 に伝えることはタブー視される傾向にあり,ある いば臨床医の遺伝に対する理解が不十分であるた めに,患者あるいは家族への説明の際に配慮が行 きF届かず,余りに直接的な表現や誤った説明がな される場合もあった.その結果,患者および家族 は本症が遺伝性疾患である事実を拒否し,あるい は解らないまま恐れて無用の人工中絶を経験した り,家族が結婚を諦めるなどの悲劇も生じてき た20). 著者らは,20年にわたり本症患児の診療にあた り,患児/家族と苦痛・苦悩そして喜びの一端を共 にしてきた.また厚生省神経疾患委託費の筋ジス トロフィー研究班に属し,種々の観点からその研 究に従事,特に近年は,臨床遺伝の立場から,PMD 患者の直接の診療に関わる医師に対する遺伝相談 に関する啓蒙30),患者/家族に対する啓蒙活動31)32) に努めてきた.そして患者の協力団体である筋ジ ストロフィー協会の協力を得て,患家向けの遺伝 相談に関する啓蒙書を発行する33)に至った.現在 氏名 (男、女) 生年月日 昭和、平成 年 月 日生 (西暦 年) 診断名:a,9uchenne型、 b, Becker型、 c,小児期発症肢帯型、d,その他( ) 診断の確実性:確実、疑 臨床経過=(典型例、非典型例) 筋生検:(未実施,実施) ジストロフィン染色:(未実施、実施) DNA分析:(未実施、実施) 遺伝形式に関する診断 a.突然変異 (不確実,確実) b.X連鎖性劣性遣伝(不確実,確実) 根拠:家族歴:無し、有り( ) c.常染色体劣牲遺伝(不確実,確実) d.常染色体優性遺伝(不確実,確実) 家族歴1父 歳、母 歳時の子 両親の近親婚(無し、有り ) 1人子、兄弟 人、姉妹 人 孤発例、兄弟発症(無,有),姉妹発症(無,有〉 母姉妹のCK高値(無,有)見開き頁参照 筋生検: 未実施、 実施 凍結検体保存(無し、有りNo ) 実施者 実施者所属施設 実施年月 年 月 生検所見コメント 図14 健康管理手帳の3頁(左)と4頁(右)患者/家族には,『DMDを始めとするPMDは遺
伝子異常によって重要な蛋白質が作られないため に生ずる病気であり,この遺伝子の異常は親から 子へ伝えられる場合もあるが突然変異で起こるこ ともあり,人間である以上誰にでも起こり得る問 題』:として理解され始めている.ヒトゲノム解析 ジストロフィン ウエスタンプロッティング= 実施者 未実施 、 実施 実施.者所属施設 実施年月 関連番号 年 月 1.ジ.ストロフィンの存在 a,脳く、.b.3−10%、c,10−20% 2.分子量=a,400Kd,b,4GOKd以下 c.40GKd以上 コメント欄 ( ) ’ ヤ ロ ∴ K =)㌧ 忌 レ ∂ ヨ 潔 ⊃ ヨ 舶 ∂ ○ 以 侭3 暇拍 沼ド 図15 健康管理手帳.の5頁(左)と6頁(右) も 巽 寸.」Ω玄1 のむ D I≧o−7 マ 出 σ1 町 1 ヨ ; ロ 爲1 ユ 1 む てラア 嘱1 言ど1 で1 蔓i 警111 !1 出 の 1置 も ・謹£ む 正左雛
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皇轟 蔚巽 家族員に於け.る血清CK値(妊娠中に検査した場合は低目にでるので注意) 1 □ CK CK CK CK. ( )( )( )( 〉( ○ □ Ck CK CK CK CK CK CK CK )( )( )( )( )( )( )( )(O
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) 実施.者名 所属 コメント 図16健康管理手帳の7,8頁(見開き)計画が世界的規模で開始されはじめており,将来 的には,患者の資料がなくてもある個人の遺伝子 を保因者か否かを含め全て明らかにしうる時代が くるかもしれない.しかし日本の医療制度の中で‘ は患老の診療録保存のi義務は5年間であり,我々 が現在診療に当っている小児期にある患者やその 姉妹が,遺伝の可能性について悩む時代に,我々 が情報提供可能であるとは限らない.またその時 点で資料が保存されているとも断定できない.い ま我々が遺伝相談にあたっている患者/家族の場 合のように,その患者の情報・資料が不足してい るために遺伝相談上問題が生ずる可能性も高い. 文献的にも本症の遺伝子異常に関わる研究は多 く,実際検査を受けた三児およびその数は多い. しかし,その採血の意味や結果は,どれだけ正確 にどれだけ詳細に患者およびその家族に説明され ているであろうか.正確なデーターはないが,筆 者が接する患者あるいは家族が意味を知らずに他 院で採血されていることは多いし,またその結果 を告げられたが理解不十分という人も多い.検査 実施に当ってのinformed consent,特に患者が未 成年の場合の代理人の選択の問題なども今後の課 題として残されている.実際,今の日本の医療体 制の中で,医学の最先端の内容を患者あるいは家 族が再現できる形で説明し理解してもらうという のは不可能に近い.そこで,得られた情報を患者/ 家族が最大限利用可能となることを目的とし,患 者/家族に自己管理してもらい,随時専門家に検査 結果の記入を依頼し,必要な時には持参して遺伝 相談を受けられるような,遺伝情報をも記載可能 な健康管理手帳を作成した(図14∼18).取敢えず 当科で使用開始する. 日 銭 齪
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実施者名 ll 所属 ll ] コメント 図18 健康管理手帳の14,15頁(見開き) 結 論 厚生省神経疾患研究委託二筋ジストロフィーの 臨床病態と遺伝相談および疫学に関する研究班の 『遺伝相談倫理に関するアンケート調査』から,保 因者検索,保因者告知,出生前診断を報告した. また敢て,筆者が苦慮した問題ある遺伝相談例を 紹介し問題点を上げた.これらの問題を最小限に するために『患者/家族に役立ち得る情報』を最大 限に利用し得る状態で彼等に還元すること,また 新たな研究技術を応用し得られた情報を彼等に還 元しうるよう,患者から得られた材料を全国規模 で保存する体制作りが重要であることを述べた. 現在小児期にある患児の同胞や親族が,遺伝に悩 む時代に,現時点で研究・診療に従事して、いる我々 が情報提供可能とは限らず,この問題解決への一 歩として,遺伝相談に有用な資料を記録する患者 健康管理手帳の作成,患者/家族への配布を提案し た. 本論文の要旨は厚生省神経疾患研究委託費筋ジス トロフィーの臨床病態と遺伝相談および疫学に関す る研究班(班長:高橋圭一)の平成4年度ワーク ショップ(1992年7月15日,於:国立精神神経セン ター)で報告した. 本研究の一部は,山川寿子学術研究奨励金ならびに 厚生省神経疾患研究委託費筋ジストロフィーの臨床 病態と遺伝相談および疫学に関する研究班研究費,平 成3年度,平成4年度の援助を受けた. 本論文を福山幸夫教授開講25周年記念論文として 捧げます. 文 献 1)大澤真木子,宍倉啓子,福山幸夫:筋ジストロ フィー:小児科の立場から.新小児科学大系,15, 小児の運動器病学1.pp243−302,中山書店,東京 (1986) 2)大沢真木子,岡田典子,平沢恭子ほか:小児難病 の病因論の展開,筋ジストロフィー.小児診療 51:597−603, 1988 3)大澤真木子:ミオパチーの遺伝相談.内科Mook, 41,ミオパチー(阿部正和,尾前照雄,河合忠一編 集主幹),pp23−42,金原出版,東京(1989) 4)大澤真木子,斎藤加代子:Duchenne型筋ジストロフィー症の遺伝相談.小児科学年鑑1989,小児 科の進歩9(前川喜平,今村栄一編),pp59−67,診 断と治療社,東京(1989) 5)大澤真木子,斎藤加代子,池谷紀代子ほ.か:Du− chenne型筋ジストロフィ.一.症の遺伝相談。脳神経 43:429−441, 1991 6)Boileau C., Junien C:Misdiagnosed normal fetus owing to undetected ge㎜inal mosaicism for DMD deletion. J Med Genet 26:79ひ792, 1989 .7)1saacs H, Badenhorst M:Female carriers of Duchenn台muscular dystrophy:Adilemma. Clin Genet 31:288−296,1987 8)大.澤真木子:ワークショップ.,第1部,遺伝相談・ 遺伝.子診断,遺伝相談の問題点.筋ジストロフィー の臨床病態と遺伝相談及び疫学に関する研究 平 成3年度研究報告書,327−331,1992 9)Osaw.a M:Genetic counseling from perspec− t量ve of a mother and a woman(a papel discus一. sion)。 Human Genome Research and Society, Proceedings of the Second International Bioethics Seminar in Fukui,(Fujiki N, Macer Deds). pp173−178, Eubios Ethics lntsitute, Christchurch・Tsukuba(1992) 10)福山幸夫,白井泰子,大澤真木子ほか:Duchenne 球筋ジストロフィーの遺伝相談倫理についての検 討.プロジックト研究1.遺伝・疫学B.遺伝相 談。遺伝子診断,筋ジストロフィーの臨床病態と 遺伝相談および疫学に関する研究.平成3年度研 究報告書,35−38,1992 11)白井泰子,大澤真木子,福山幸夫ほか:Duchenne 型筋ジストロフィーの遺伝相談倫理の検討.遺伝 相談の定i義にかかわる問題を中心にして.筋ジス トロフィーの臨床病態と遣伝相談および疫学に関 する研究.平成3年度研究報告書,87−91,1992 12)shimi Y, osawa M, Fロkuyama Y:Ethical considerations in genetic counseling. Human Genome Research and Society. Proceedings of the Second International Bioethics Seminar in Fukui,(Fujiki N, Macer D eds). pp138−144, Eubios Ethics Institute, Christchurch・Tsukuba (1992) 13)三池輝久:ジストロフィソ総論一ジストロフィン. とその抗体について.筋ジストロフィーの臨床病 態と遺伝相談および疫学に関する研究.平成3年 度研究報告書,334−337,1992 14)福山幸夫,平山義人,鈴木賜子ほか:先天型進行 性筋ジストロフィー症の臨床遺伝学的,疫学的, 疾病分類学的研究.厚生省筋ジストロフィー症の 病因の究明に関する研究.昭和50年度研究報告 書,123−129,1976 15)福山幸夫,大澤真木子,池谷紀代子ほか:比較的 良好な経.過を示したいわゆるDuchenne型筋ジ ストロフ.イー症の.臨床特徴.厚生省新薬開発研究 費,低分子酵素阻害物質による難病治療薬.の開発. 研究.・平成2年度研究報告書,43−45,1991 16)Osawa M, Arai Y, Ikenaka H et al: Fu・ kuyama type congenital progressive muscular dystrophy. Acta Paediatr Jpn 33:26.1−269,1991 17)兼子 智:性の選択(ヒトX,Y精子の分離法).細 胞.21:327−329,1989 18)England SB, Nicholson LVB, Joknson M et al:Very mild muscular dystrophy associated with the deletion.of 46%of dystrophin. Nature 343:180−182, 1990 19)Suzumori K:. New advances in prenatal diag・ nosis:Implications of the preimplantation diagnosis of genetic disease. Hunlan Genome Research and Society, Proceedngs of the Sec− ond International Bioethics Seminar i駐Fukui, (Fuj.iki N, Macer D eds), pp72−75. Eubios Ethics Institute, Christchurch・T合ukuba(1992) 20)大澤真木子:遺伝相談の実際.厚生省神経疾患委 託研究,筋ジス.トロフィー症の疫学・臨床および 治療に関する研究.昭和58年度研究報告書,75 −85,1984 21)den Dunnen JT, Glrootscholten PM, Bakker E et al:Topography of the Duchenne musculr dystrophy(DMD)gene:FIFE and cDNA analy・ sis of 194 cases reveals 115 deletions and 13 duplications. Am J Hum Genet 45:835−847, 1989 22)斎藤加代子,田中あけみ,原田隆代ほか:Dystro− phinのcDNAのプローブを用いたDuchenne型 進行性筋ジストロフィー症家系の遣伝子診断.脳 と発達 21:361−368,1989 23)Saito K, Ikeya K, Yamauchi A et aL Mo豆ec− u1ar暮enetic analysis of Duchenne/Becker mus・ cular dystrophy families. In Fetal and Prenatal Nuero豆ogy(Fukuyama.Y, et al eds), pp46喝9, Karger, Basel(1992) 24)Roberts RG, B6ntley DR, Barby TFM et a1: Direct diagnosis of carriers of Duchenne abd Becker muscuiar dystrophy by ampli且caton of. lymphocyte RNA。 Lancet 336:1523−1526,1990 25)Beggs AH, K皿nkel LM:A polymorphic CACA repeat in the 3〆untranslated region of dystrophin. Nucleic Acid Res 18:1931,1990 26)Feener CA,80yce FM Kunkel LM: Rapid detection of CA polymorphisms in cloned DNA:Application to the 5’region of the dystrophin gene, Am l Hum Genet 48:62}627, 1991 27)Clem6ns PR, Fenwick RG, Chamber雇ain JS et