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島嶼地域高齢者の楽観性に関する研究 : 山形県酒田市飛島住民のライフスタイルとの関連

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(1)

島嶼地域高齢者の楽観性に関する研究 : 山形県酒

田市飛島住民のライフスタイルとの関連

著者

山下 匡将, 村山 くみ, 宮本 雅央, 小関 久恵, 嘉

村 藍, 竹内 夕紀子, 古川 奨, 大月 和彦, 志水

雑誌名

名古屋学院大学論集 社会科学篇

44

2

ページ

239-250

発行年

2007-10-31

URL

http://doi.org/10.15012/00000339

(2)

島嶼地域高齢者の楽観性に関する研究

―山形県酒田市飛島住民のライフスタイルとの関連―

山 下 匡 将

ⅰ)

,村 山 く み

ⅱ)

,宮 本 雅 央

ⅲ)

小 関 久 恵

ⅳ)

,嘉 村   藍

ⅴ)

,竹 内 夕紀子

ⅵ)

古 川   奨

ⅲ)

,大 月 和 彦

ⅶ)

,志 水   幸

ⅷ) ⅰ)名古屋学院大学人間健康学部 ⅱ)松本短期大学 ⅲ)北海道医療大学大学院 ⅳ)東北公益文科大学 ⅴ)仙台白百合女子大学 ⅵ)函館短期大学 ⅶ)文教大学 ⅷ)北海道医療大学 要  旨 【目的】 島嶼地域高齢者のサクセスフル・エイジング実現に資するべく,楽観的認知傾向とラ イフスタイル要因との関連性について検討する。 【方法】 山形県酒田市飛島に居住の40歳以上の住民288名を対象に,他記式質問紙票を用いた 訪問面接法によるアンケート調査を実施した。回収した質問紙票のなかから65歳以上の 住民97名分のデータを抽出し,SPSS 15.0J for Windows による集計および解析をおこ なった。なお,解析に先立ち,楽観主義尺度を用いて楽観的自己感情得点および悲観的 自己感情得点を算出した。解析内容は以下のとおりである。 単変量解析として,質的変数との関連性の検討にはt検定を,量的変数との関連性の 検討には相関分析(Pearsonの積率相関係数)をおこなった。次に,単変量解析の結果, 複数の項目との関連が確認された楽観的自己感情得点を目的変数,有意な関連が確認さ れた各項目を説明変数として,重回帰分析(ステップワイズ法)による多変量解析をお こなった。 【結果】 t検定の結果,「通院の有無」の項目において,「通院あり群」「通院なし群」両群の楽 観的自己感情得点(平均点)の差に有意差が確認された。また,相関分析では,楽観的 自己感情得点と「生活の主体性」「他者とのかかわり」「身近な社会参加」「生活の安心 感」「社会関連性指標得点」「健康生活習慣実践指標得点」「主観的健康感」「情緒的サ ポート(提供)」「手段的サポート(提供)」「ソーシャル・サポート(提供)得点」「人 生全体についての満足感」「心理的安定」「老いについての評価」「生活満足度尺度K得 点」の各得点との間に有意な相関がみられた。一方,悲観的自己感情得点は「他者との かかわり」の得点と有意な相関が確認された。 楽観的自己感情得点を目的変数,単変量解析において有意であった各項目を説明変数 として重回帰分析をおこなった結果,「通院の有無」「生活の主体性」「生活の安心感」「人 生全体についての満足感」「老いについての評価」の5項目が独立性の高い変数として選 〔論文〕

(3)

緒 言  超高齢化社会を迎えるわが国において地域福 祉の推進は,“新たな地域社会の構築”や地域 住民の“サクセスフル・エイジング実現”のた めの前提条件である。殊に,サクセスフル・エ イジングの実現には,健康寿命の伸長が不可欠 であり,「いかにして地域住民の健康の維持・ 増進を図っていくのか」が重要な課題となって いる。  社会福祉法第四条では「地域住民,社会福祉 を目的とする事業を経営する者及び社会福祉に 関する活動を行う者は,相互に協力し,福祉 サービスを必要とする地域住民が地域社会を 構成する一員として日常生活を営み,社会,経 済,文化その他あらゆる分野の活動に参加する 機会が与えられるように,地域福祉の推進に努 めなければならない。」と地域福祉の推進につ いて明示されており,各地方自治体では,市町 村地域福祉計画(社会福祉法第百七条),そし て都道府県地域福祉支援計画(社会福祉法第 百八条)の一環として健康の維持・増進に向け た具体的な取り組みがおこなわれている。  しかし,上記のような取り組みは,主に地域 における社会資源の連携・活用の促進による政 策目標の達成が意図されており,保健医療福祉 サービス等の社会資源が十分に整備されていな い島嶼地域においては,政策目標の達成に資す るべき社会資源の整備に関する地域間格差の是 正が最重要課題となっている。一方,島嶼地域 では,その地理的環境によって,健康状態の悪 化が島内での生活継続を困難な状態に陥れる大 きな要因の一つとなっており,社会資源によら ない健康の維持・増進方法を模索することが喫 緊の課題と考えられる。  以上のような問題意識をもとに,われわれは 島嶼地域における健康維持・増進対策に資する べく主観的健康感注) を鍵概念に採用し,「島嶼 地域住民の健康保持に関する調査研究」とし て,過去数回にわたり「粟島(新潟県粟島浦 村)」「飛島(山形県酒田市)」「天売島・焼尻島(北 海道苫前郡羽幌町)」を対象に,主観的健康感 の関連要因について検討してきた1 ~ 10)。これ らの研究では,社会関連性や老研式活動能力, 生活満足度等の向上が主観的健康感を高めるこ とを確認している。しかしながら,これまでの 研究では,対象者の行動を規定する要因の一つ と考えられる「物事に対する考え方」という側 面については検討してこなかった。  そこで本研究は,健康的なライフスタイルの あり方を模索すべく実施した調査研究「離島住 民の健康保持に関する実態調査」(2006年度北 海道医療大学志水ゼミナール実施)の成果をも とに,精神的健康との関連が報告されている楽 観的認知傾向に焦点をあて,1)社会関連性, 2)健康生活習慣,3)主観的健康感,4)ソー シャル・サポート,5)生活満足度など,ライ フスタイル要因と考えられる各項目との関連性 について検討することを目的とした。 択された。 【結論】 楽観的自己感情には「自身の生活実態に対する評価」が,悲観的自己感情には「他者 との交流」が影響していることが明らかとなった。したがって,島嶼地域高齢者の楽観 的認知傾向をポジティブに機能させるためには,自己肯定感ならびに他者との交流機会 に配慮した取り組みの励行が求められる。 〔キーワード〕サクセスフル・エイジング 高齢者 楽観的認知傾向

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Ⅰ.方 法 1 .研究の視点  楽観的認知傾向に関する研究には「学習性 無力感の研究における楽観性研究」「一般化さ れた結果の期待としての楽観性研究」の2つ の流れがあるが,本研究で扱うのは後者の楽 観的認知傾向である。「一般化された結果の期 待としての楽観性研究」については,Scheier とCarverが楽観的認知傾向を「好ましい結 果を期待する傾向であり,心身の健康にかか わる個人の特性である」と考えたことに端を 発する11)。Scheierらは,楽観主義尺度(Life Orientation Test:LOT)を開発し,楽観的認 知傾向と自我意識,身体症状および適応的スト レスコーピングなどとの関係について考察をお こなっている。本研究では,Scheierらが開発 した楽観主義尺度(Life Orientation Test)を 中村ら12)の研究グループが訳出したものを用 いて,対象者の楽観的認知傾向(以下,楽観性) を評価することとした。  なお,楽観性には「楽観的自己感情」「悲観 的自己感情」の2つの下位尺度が存在する。し たがって,両因子の得点を求め,各々の得点と ライフスタイル要因との関連性を検討する,ま た,基本的な生活習慣のみならず,社会とのか かわり方や生活の満足度等も含め,総合的に個 人のライフスタイルを判断することとした。 2 .調査方法および対象  山形県酒田市に属する孤立小型離島である飛 島に居住の40歳以上の住民288名を対象に, 他記式質問紙票を用いた訪問面接法(一部対象 者の都合により聞き取りが不可能であった場合 に限り配表留置法)によるアンケート調査を実 施した。調査期間は,平成18年9月4日~ 9月 6日の3日間である。なお,本研究の対象は, そのうち満65歳以上の住民179名である。 3 .質問項目  質問項目として,以下に示す計99項目を設 定した。 (1)基本属性等に関する8項目  性別,年齢,同居者の有無,親戚の有無(島 内・島外),持ち家の有無(島外),職業の有 無,収入源について尋ねた。 (2)社会とのかかわりに関する19項目(社会 関連性指標13)18項目含む)  社会関連性指標は「生活の主体性」(「生活 の工夫」「積極性」「健康への配慮」「規則的 な生活」の4項目),「社会への関心」(「新聞 の購読」「本・雑誌の講読」「便利な道具の利 用」「趣味」「社会への貢献」の5項目),「他者 とのかかわり」(「家族以外との会話」「訪問機 会」「家族との会話」の3項目),「身近な社会 参加」(「活動参加」「近所づきあい」「テレビの 視聴」「役割の遂行」の4項目),「生活の安心 感」(「相談者」「緊急時援助者」の2項目)の5 つの下位尺度からなる。「ほぼ毎日(いつもい る)」「週2度くらい(時々)」「週1度くらい(た まに)」の回答は1点,「月1度以下(特にいな い)」の回答は0点として集計する。 (3)交流の場に関する3項目  交流の場の有無,交流の場の必要性,交流の 場が必要ではない理由について尋ねた。 (4)社会活動性に関する9項目  町内会への加入,老人クラブへの加入,職場 以外の所属団体の有無および役職経験,友人や 知人との活動頻度,社会への関心,広報誌の活 用,選挙への参加,政治への関心について尋ね た。 (5)健康生活習慣に関する10項目(健康生活

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習慣実践指標14)8項目を含む)  健康生活習慣実践指標は,「朝食」「睡眠時 間」「栄養のバランス」「喫煙」「運動」「飲酒」 「拘束時間」「ストレス」の項目からなる。その 実践度(適正度)に応じて,実践群(適正群) には1点,非実践群(非適正群)には0点を与 えて集計する。 (6)健康状態に関する5項目(主観的健康感1 項目を含む)  主観的健康感は,「あなたは現在健康である と思いますか」の質問項目に対して,「非常に 健康だと思う」「健康な方だと思う」「あまり健 康ではない」「健康ではない」の4段階で回答 を求めた。 (7)健診受診状況に関する6項目  過去1年間で参加した健康診断の種類,健康 診断への参加率,健康診断に参加したきっか け,健康診断に参加しなかった理由,健康診断 に関する情報の獲得方法,現在加入している保 険の種類について尋ねた。 (8)ソーシャル・サポート15)16項目  ソーシャル・サポートとして,「情緒的サ ポート」(「心配事や悩みごと」「気配りや思い やり」「元気づけ」「くつろいだ気分」に関する 4項目),「手段的サポート」(「看病や世話」「長 期療養時の家事」「用事や留守番」「まとまった お金」に関する4項目)の計8項目について「享 受できる状態にあるか」「提供してもらえる状 態にあるか」の2側面から回答を求めた。享受 できる(提供できる)という回答は1点,享受 できない(提供できない)という回答は0点と して集計する。 (9)楽観主義尺度12項目  楽観的自己感情は「結果がどうなるかはっき りしない時は,いつも一番良い面を考える」「い つもものごとの明るい面を考える」「自分の将 来に対しては非常に楽観的である」「憂いの影 には喜びがあるということを信じている」の4 項目から構成されている。一方,悲観的自己感 情は「なにか自分にとってまずいことになりそ うだと思うと,たいていそうなってしまう」「自 分に都合よくことが運ぶだろうなどとは期待し ない」「ものごとが自分の思い通りに運んだた めしがない」「自分の身に思いがけない幸運が 訪れるのを当てにすることは,めったにない」 の4項目から構成されている。その他4項目は フィラー項目である。質問項目に対して「非 常に当てはまる(5点)」「ややあてはまる(4 点)」「どちらともいえない(3点)」「ややあて はまらない(2点)」「全くあてはまらない(1 点)」の5段階で回答を求め得点化した。 (10)現在の気持ちに関する11項目(生活満足 度尺度K16)9項目を含む)  生活満足度尺度Kは,「人生全体についての 満足感」(「人生は他人に比べて恵まれていた」 「人生をふりかえってみて満足できる」「これま での人生の中で,求めていたことのほとんどを 実現できた」の3項目),「心理的安定」(「物事 を深刻に考える」「今の生活に不幸せなことが ある」「小さなことを気にするようになった」 の3項目),「老いについての評価」(「去年と同 じように元気」「以前よりも役に立たなくなっ た」「生きることは大変厳しい」の3項目)の3 つの評価尺度からなる。ポジティブな回答には 1点,ネガティブな回答には0点を与えて集計 する。 4 .統計解析  回収した質問紙票をもとにMicrosoft Excel を用いてデータセットを作成し,SPSS 15.0J for Windows によって集計・解析をおこなっ た。解析内容を以下に示す。

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 第一に,楽観的自己感情得点および悲観的自 己感情得点と各項目間の関連の有意性を検討す るために,単変量解析をおこなった。単変量解 析では,質的変数との関連性の検討にはt検定 を,量的変数との関連性の検討には相関分析 (Pearsonの積率相関係数)を採用した。第二 に,交絡要因を検討するために多変量解析をお こなった。楽観的自己感情得点を目的変数,単 変量解析の結果有意な関連が確認された項目を 説明変数として,重回帰分析(ステップワイズ 法)による多変量解析をおこなった。その際, 性別,年齢を調整変数として投入した(質的変 数はダミー変数に変換し使用した)。なお,単 変量解析および多変量解析における有意水準 は,共に5%である。 5 .倫理的配慮  倫理的配慮として訪問時に,(1)本アンケー ト調査への回答は無記名であり,かつ統計的に 処理するため個人が特定されるようなことはな い,(2)本調査への参加を断っても不利益をこ うむることはない,(3)学術発表など,研究目 的以外でデータを使用することはない,以上の ことを対象者に確認した。 Ⅱ.結 果 1 .回収数・分析対象数  対象者数179名のうち,調査対象期間中に飛 島への滞在が確認され,かつ本研究の趣旨に同 意が得られた97名分の質問紙票を回収した。 回収した質問紙票のなかから,基本属性項目お よび楽観主義尺度への回答に不備のあるものを 削除した91名分のデータを分析した結果を以 下に述べる。 2 .基本属性および各指標の得点等  ここでは,調査対象者の基本属性および各指 標の得点等について概観する。  基本属性については,以下のとおりである (表1参照)。  対象者の性別では,男性36名(39.6%), 女性55名(60.4%)であった。また,平均年 齢(±SD)は,73.5歳(±6.58)であり,最 高齢は97歳だった。同居者家族の有無では, 同 居 者 あ り が74名(82.2 %), 独 居 が16名 (17.8%)であった。職業の有無では,有職が 63名(69.2%),無職が28名(30.8%)であった。  また,入院・通院状況については,過去1年 の入院の有無では,入院ありが6名(7.0%), 入院なしが80名(93.0 %)であった。過去 2 ヶ月の通院の有無では,通院ありが46名 (52.9%),通院なしが41名(47.1%)であっ た。  各指標の得点傾向および主観的健康感の回答 分布について,以下に示す。(表2参照)。  楽観主義尺度については,楽観的自己感情 平均得点(±SD)が15.6点(±3.73),悲観 的自己感情平均得点(±SD)が13.2点(± 3.06)であった。社会関連性指標平均得点(± SD)は,15.4点(±1.74)であった。健康生 活習慣実践指標平均得点(±SD)は,5.4点 (±1.32)であった。ソーシャル・サポート尺 度については,サポート(享受)平均得点(± SD)が6.8点(±1.52),サポート(提供)平 均得点(±SD)が6.5点(±1.60)であった。 生活満足度尺度K平均得点(±SD)は,4.7点 (±1.84)であった。  また,主観的健康感については,「非常に健 康だと思う」17名(18.7%),「健康な方だと 思う」38名(41.7%),「あまり健康ではない」 27名(29.7%),「健康ではない」9名(9.9%)

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であった。 3 .楽観性と基本属性との関連(対応のないt 検定)  表3に,楽観性と基本属性との関連を示した。  t検定の結果,「通院の有無」の項目におい て,「通院あり群」「通院なし群」両群の楽観的 自己感情得点平均点の差に有意差(p=.023) が確認された。 4 .楽観性と各指標との関連(相関分析)  表4に,楽観性と各指標との関連を示した。  相関分析では,楽観的自己感情得点と「生 活の主体性(r=.218:p=.041)」「他者との かかわり(r=.309:p=.003)」「身近な社会 参加(r=.272:p=.011)」「生活の安心感(r =.300:p=.004)」「社会関連性指標得点(r =.340:p=.002)」「健康生活習慣実践指標 得点(r=.318:p=.004)」「主観的健康感(r =.253:p=.016)」「情緒的サポート(提供)(r =.337:p=.001)」「手段的サポート(提供) (r=.254:p=.016)」「ソーシャル・サポート (提供)得点(r=.375:p=.000)」「人生全体 についての満足感(r=.305:p=.005)」「心 理的安定(r=.321:p=.002)」「老いについ ての評価(r=.337:p=.001)」「生活満足度 尺度K得点(r=.439:p=.000)」の各得点と の間に有意な相関がみられた。また,悲観的自 己感情得点と「他者とのかかわり(r=-.219: p=.037)」の各得点との間に有意な相関がみ られた。 表 1  基本属性の分布 項目 N カテゴリー n (%) 性別 91 男性 女性 36 55 (39.6) (60.4) 年齢 91 65 ~ 69 70 ~ 74 75 ~ 79 80 ~ 84 85 ~ 89 90 ~ 25 32 23 6 2 3 (27.5) (35.1) (25.3) ( 6.6) ( 2.2) ( 3.3) mean(± SD) MAX MIN MO 73.5 97 65 70 (±6.58) 同居者の有無 90 同居者あり 独居 74 16 (82.2) (17.8) 職業の有無 91 有職 無職 63 28 (69.2) (30.8) 入院の有無 86 あり なし 6 80 ( 7.0) (93.0) 通院の有無 87 あり なし 46 41 (52.9) (47.1)

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5 .楽観性と各指標との関連(重回帰分析)  楽観的自己感情得点を目的変数,単変量解析 において有意であった各項目を説明変数として 重回帰分析(ステップワイズ法)をおこなっ た(表5参照)。ただし,各指標の得点とその 下位尺度得点間の強い相関関係に考慮し,重回 帰分析には下位尺度得点のみを使用した。その 結果,「通院の有無(B=1.732)」「生活の主体 性(B=1.860)」「生活の安心感(B=3.193)」 「人生全体についての満足感(B=2.186)」「老 いについての評価(B=1.006)」の5項目が独 立性の高い変数として選択された(R2=.422: p=.000)。 Ⅲ.考 察  本研究は,島嶼地域高齢者のサクセスフル・ エイジング実現に資するべく,山形県酒田市飛 島に居住する満65歳以上の住民から得られた アンケート調査の結果から,楽観性とライフス タイル要因との関連性について検討した。その 結果以下のことが示唆された。 表2  各指標の得点傾向および主観的健康感の回答分布

項目 N mean(± SD) MAX MIN 楽観的自己感情得点 91 15.6(± 3.73) 20 4 非観的自己感情得点 91 13.2(± 3.06) 20 6 生活の主体性 社会への関心 他者とのかかわり 身近な社会参加 生活の安心感 88 89 91 86 90 3.9(± 0.30) 3.1(± 1.04) 2.9(± 0.37) 3.6(± 0.59) 1.9(± 0.40) 4 5 3 4 2 2 0 1 2 0 社会関連性指標得点 82 15.4(± 1.74) 18 9 健康生活習慣実践指標得点 82 5.4(± 1.32) 8 2 情緒的サポート(享受) 手段的サポート(享受) 91 88 3.7(± 0.82) 3.1(± 1.05) 4 4 0 0 ソーシャル・サポート得点(享受) 88 6.8(± 1.52) 8 0 情緒的サポート(提供) 手段的サポート(提供) 91 89 3.6(± 0.93) 2.9(± 1.07) 4 4 0 0 ソーシャル・サポート得点(提供) 89 6.5(± 1.60) 8 1 人生全体についての満足感 心理的安定 老いについての評価 85 89 89 2.1(± 0.66) 1.6(± 1.03) 1.0(± 0.87) 3 3 3 1 0 0 生活満足度尺度K 得点 85 4.7(± 1.84) 8 1 カテゴリー n (%) 主観的健康感 91 非常に健康だと思う 健康な方だと思う あまり健康ではない 健康ではない 17 38 27 9 (18.7) (41.7) (29.7) (9.9)

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表 3  楽観性と基本属性との関連(対応のないt 検定)

項目 カテゴリー 楽観的自己感情得点 悲観的自己感情得点 mean(± SE) p 値 mean(± SE) p 値

性別 男性 女性 16.0(± 0.60) 15.3(± 0.52) 0.337 12.9(± 0.52) 13.4(± 0.41) 0.422 同居者の有無 同居者あり 独居 15.6(± 0.45) 15.7(± 0.86) 0.898 13.3(± 0.36) 12.8(± 0.77) 0.581 職業の有無 有職 無職 16.0(± 0.47) 14.7(± 0.70) 0.134 12.9(± 0.39) 13.9(± 0.54) 0.179 入院の有無 あり なし 13.5(± 1.77) 15.7(± 0.41) 0.154 11.3(± 0.80) 13.3(± 0.34) 0.122 通院の有無 あり なし 16.5(± 0.49) 14.7(± 0.60) 0.023 13.1(± 0.48) 13.1(± 0.44) 0.963 表 4  楽観性と各指標との関連(相関分析) 楽観的自己感情得点 悲観的自己感情得点 項目 r p 値 r p 値 年齢 ―0.181 0.086 0.171 0.105 生活の主体性 0.218 0.041 * ―0.094 0.385 社会への関心 0.084 0.434 ―0.065 0.545 他者とのかかわり 0.309 0.003 * ―0.219 0.037 * 身近な社会参加 0.272 0.011 * ―0.169 0.120 生活の安心感 0.300 0.004 * ―0.013 0.904 社会関連性指標得点 0.340 0.002 * ―0.195 0.079 健康生活習慣実践指標得点 0.318 0.004 * ―0.035 0.752 主観的健康感 0.253 0.016 * 0.008 0.943 情緒的サポート(享受) 0.175 0.097 0.125 0.236 手段的サポート(享受) 0.168 0.117 ―0.027 0.805 ソーシャル・サポート得点(享受) 0.208 0.052 0.045 0.678 情緒的サポート(提供) 0.337 0.001 * ―0.035 0.743 手段的サポート(提供) 0.254 0.016 * ―0.099 0.356 ソーシャル・サポート得点(提供) 0.375 0.000 * ―0.088 0.415 人生全体についての満足感 0.305 0.005 * ―0.046 0.679 心理的安定 0.321 0.002 * ―0.094 0.380 老いについての評価 0.337 0.001 * 0.026 0.807 生活満足度尺度K 得点 0.439 0.000 * ―0.089 0.419 楽観的自己感情得点 1 ―0.018 0.864 悲観的自己感情得点 ―0.018 0.864 1  *:p<0.05

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 第一に,単変量解析の結果,楽観的自己感情 得点では「通院の有無」「社会関連性指標」「健 康生活習慣実践指標」「主観的健康感」「ソー シャル・サポート」「生活満足度尺度K」の各 指標との間に有意な相関がみられた。しかし, 悲観的自己感情得点は社会関連性指標の内「他 者とのかかわり」の1項目のみで有意な相関が 確認された。楽観的自己感情のほうが悲観的自 己感情よりも,より多様なライフスタイル要因 から影響を受けることが窺える。また,この結 果は,楽観的自己感情と悲観的自己感情が単に 単一次元の両極に位置するものではないとする 先行研究の結果を支持するものであると考えら れる17)  第二に,楽観的自己感情得点を目的変数,単 変量解析の結果有意な関連が確認された項目を 説明変数として重回帰分析をおこなった結果, 「通院の有無」「生活の主体性」「生活の安心感」 「人生全体についての満足感」「老いについての 評価」の5項目が独立性の高い変数として選択 された。その内,「人生全体についての満足感」 「老いについての評価」の2項目は生活満足度 Kの項目である。更に,「人生全体についての 満足感」については,5項目のなかで最も高い t値を示していた。生活満足度尺度Kの下位尺 度のうち「心理的安定」を除いた「人生全体を 振り返っての満足感」および「老いについての 評価」といった過去ならびに現在の自身の生き 方に対する評価項目が選択されていることか ら,「(過去には様々なことがあったが)現在, 自分は満足した生活を送っている」 という自 覚が,「自分には,何かあってもなんとかなる」 という自信につながり,楽観的な思考を支える 大きな要因となっていることが想像できる。ま た,「通院の有無」では,通院有り群と無し群 の楽観的自己感情得点を比較したところ,通院 有り群がより楽観的な傾向を示すことが看取さ れた。それは,通院を継続している人は,現在 自身が抱えている疾病について「通院していれ ば問題は無い」と自身で判断できている人であ ると考えると一様の説明がつく。「仮に好まし い結果が得られると予想される場合は,その結 果を招くべく積極的な行動に出る。しかし,そ うでなければ積極的に行動することはない」11) という素質的楽観性が表れた結果といえるだろ う。しかし,吉村(2007)は,楽観性は時に 「このくらいなら大丈夫だろう」「なんとかなる だろう」と健康に悪いとされる生活習慣へのた 表 5  楽観性と各指標との関連(重回帰分析) 項目 偏回帰係数 標準誤差 t 値 p 値 通院の有無 生活の主体性 生活の安心感 人生全体についての満足感 老いについての評価 1.732 1.860 3.193 2.186 0.928 0.709 1.066 0.996 0.598 0.423 2.444 1.744 3.206 3.653 2.194 0.018 0.086 0.002 0.001 0.032 重相関係数 寄与率 寄与率(自由度調整済み) 回帰式の有意性 0.650 0.422 0.374 P = 0.000 ・調整変数として,年齢,性別を投入した。 ・ステップワイズ法による変数選択基準は,F 値= 2 である。

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めらいのなさを支持する危険性を含んでいるこ とを示しており18),この結果を鑑みると,単に 楽観的になることは,自身の疾病を安易に楽観 視することにつながることが予想されるため, 以上の点に留意した対応が必要である。また一 方で,通院を継続している人は,医療機関とい う自身のことを相談できる拠り所を持っている ということも考えられる。自身に問題が起こっ たときには(病気にかかったときには),私に は相談に乗ってくれる人(私には相談に乗って くれる病院の先生)が居るから大丈夫と,その 拠り所が一つの安心感を与えてくれることによ り,自身の生活に楽観的になれるとういことが 窺える。自身の支えとなる相談者や援助者の存 在があることによって得られる安心感が,楽観 的な思考につながるという結果は,「生活の安 心感」および悲観的自己感情において「他者と のかかわり」が関連要因として抽出された結果 と併せて考えると非常に興味深い。なお,「生 活の主体性」に関しては,有意確率が0.086を 示しており,目的変数を予測する上で不要な変 数と考えられる。しかし,単変量解析において 目的変数との間に有意な関係がみられたこと, およびステップワイズ法を用いる際にF値=2 を変数選択の基準として設定していることを鑑 みると,目的変数と生活の主体性は無関係とは いえないだろう。今後,他の指標との相関関係 等,詳細な要因解析が必要である。  楽観的自己感情への関連要因について整理す ると,「人生全体についての満足感」は過去に 辿ってきた自身の人生へに対する評価であり, 「老いについての評価」は現在の自身の状態に 対する評価であると考えられる。これらに対す るポジティブな評価が自身の行動に対する自信 につながるため,より楽観的な思考をもつに至 ると思われる。「通院の有無」は,その評価の 表れである一方,「生活の安心感」とともに現 在の自身を取り囲む環境に対する評価であり, 前述の2項目と比較すると「間接的」に得られ る自信であると考察される。  第三に,悲観的自己感情に関して「他者との かかわり」との関連が確認された。この結果 は,物事が上手くはかどらずに悪い結果を予測 してしまうという悲観性の特徴を考慮すると 「他者との関わりをもたないことが悲観的な傾 向を強める」と解釈するよりは「悲観的な傾向 が強いため他者との関わりがもてない」と解釈 するほうがより自然ではないかと考えられる。 しかし,先の「通院の有無」「生活の安心感」 の結果を鑑みると,他者とのかかわりが少ない ということは自身の支えとなる相談者や援助者 の存在が少ないと考えることも可能であろう。  以上の結果から,楽観的自己感情には「自身 の生活実態に対する評価」が,悲観的自己感情 には「他者との交流」が影響していることが明 らかとなった。殊に,楽観的自己感情を支持す る自信(根拠)となるものが,「自身の経験」 「自身の現状」「自身を支える環境」の3つの評 価側面からなることが示唆された。それら3つ の側面は「~だから自分は大丈夫である」といっ た自己肯定感(I’m OK)を介在して楽観的思 考を支持していることが予想される。したがっ て,島嶼地域高齢者の楽観性をポジティブに機 能させるためには,自己肯定感の保持および他 者と関わる機会の確保に向けた取り組みの励行 が求められる。  本研究で得られた相関分析ならびに重回帰分 析の寄与率は,総じて低かった。しかし,有意 性の検定においては5%水準での有意差を確認 しているため,楽観性とライフスタイル要因と の間には何らかの関連があると考えてよいと思 われる。今後は,更なる交絡要因の検討を重ね,

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より説明力のあるモデルの提示を目指していき たい。また,今回調査をおこなった飛島は,そ の地理的環境の持つ特性上,高齢にあっても社 会での役割や近隣住民との交流が比較的持ちや すい状況にあるものと思われる。したがって, それらを保持することが比較的困難と思われる 都市部の高齢者を対象とした調査を実施し,結 果の比較をおこないたい。なお,本研究は横断 研究であるため,あくまで相互連関を確認する のみである点に留意し,縦断研究を視野に入れ た取り組みも検討していきたい。 結 語  本研究の結果,以下のことが明らかとなった。  1)楽観的自己感情のほうが悲観的自己感情 よりも,より多様なライフスタイル要因 の影響を受けることが窺えた。  2)楽観的自己感情には「自身の生活実態に 対する評価」が,悲観的自己感情には 「他者との交流」が影響していることが 明らかとなった。  3)島嶼地域高齢者の楽観性の向上には,自 己肯定感の保持および他者と関わる機会 の確保に向けた取り組みの励行が求めら れる。 注 注)主観的健康感  主観的健康感とは,調査対象者自らが自身の 健康度を評価する尺度である。基本属性や客観 的な健康指標等の要因による影響を調整した後 でも,なお生命予後を予測する効果が高い等, 多数の先行研究がその重要性を提唱している。 文 献 1 )志水幸(2000)「離島地域の高齢者福祉サービ スのあり方に関する基礎的研究―北海道羽幌町 天売島・焼尻島の調査結果を中心に―」『北海 道社会福祉研究』21,50―60。 2 )志水幸・他(2003)「離島高齢者の介護予防に 関する研究―離島高齢者の余暇活動および他者 との相互サポートを中心に―」『北海道医療大 学看護福祉学部紀要』10,87―97。 3 )志水幸・他(2003)「高齢者の健康保持に関す る基礎的研究―離島高齢者の社会関連性と主観 的健康感を中心に―」『北海道社会福祉研究』 24,41―49。 4 )志水幸・他(2004)「離島高齢者の社会とのか かわりの状況に関する研究―山形県酒田市飛島 における実態調査結果を中心に―」『北海道医 療大学看護福祉学部紀要』11,73―78。 5 )志水幸・他(2005)「島嶼地域高齢者の主観的 健康感の規定要因に関する研究」『北海道医療大 学看護福祉学部紀要』12,31―36。 6 )志水幸・他(2006)「高齢者のライフスタイル と健康に関する研究―島嶼地域高齢者の主観的 健康感の関連要因を中心に―」『北海道医療大 学看護福祉学部紀要』13,25―32。 7 )志水幸・他(2006)「島嶼地域住民の主観的健 康感の関連要因に関する研究」『厚生の指標』 53(13),14―19。 8 )村山くみ・他(2007)「島嶼地域高齢者の受診 行動の関連要因に関する研究」『東北福祉大学研 究紀要』31,59―68。 9 )志水幸・他(2007)「主観的健康感と社会との かかわりに関する研究」『北海道医療大学看護福 祉学部学会誌』3(1),29―34。 10)志水幸・他(2007)「粟島地域住民のライフス タイルに関する研究」『文教大学生活科学研究所 紀要』29,167―176。 1 1)S c h e i e r, M . F. , & C a r v e r, C . S . 1 9 8 5 「Optimism, coping, and health: Assessment

and implications of generalized outcome expectancies.」『Health psychology』4, 219―

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247. 12)中村陽吉(2000)『対人場面における心理的個 人差―測定の対象についての分類を中心にして ―』ブレーン出版。 13)安梅勅江(2000)『エイジングのケア科学』川 島書店。 14)星旦二,森本兼曩(1991)「ライフスタイルと 健康―健康理論と実証研究―」『生活習慣と身 体的健康度』66―71。 15)野口裕二(1991)「高齢者のソーシャルサポー ト―その概念と規定―」『社会老年学』34,37― 48。 16)古谷野亘(1990)「生活満足度尺度の構造―因 子構造の不変性―」『老年社会科学』12,102― 116。

17)Marshall, G, N., Wortman, C. B, Kusulas, J. W., Hervig, L. K., and Vickers, J. R. R(1992) 「Distinguishing optimism from pressimism:

Relation to fundamental dimensions of mood and personality.」『Journal of Personality and Social Psychology』62, 1067―1074.

18)吉村典子(2007)「楽観性が健康に及ぼす影響 ―リスクテイキング行動,生活習慣,楽観的認 知バイアス,健康状態との関連から―」『甲南 女子大学研究紀要』43,9―18。

表 3  楽観性と基本属性との関連(対応のない t 検定)

参照

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