フェーズフリーとその経済的普及の可能性
著者
岩岡 博徳
著者別名
IWAOKA Hironori
雑誌名
東洋大学大学院紀要
巻
57
ページ
33-58
発行年
2021-03
URL
http://id.nii.ac.jp/1060/00012718/
要旨 一般社団法人フェーズフリー協会やスペラディウス株式会社が提唱する防災における日常 時と非常時の区別をなくす「フェーズフリー」という概念が、大企業や自治体等で活用され るなど普及を見せている。今後、これらを一過性に終わらせずに持続性を確保するために、 経済活動として社会への浸透させる活動が一部で見られる。 大きな災害が発生すると、その直後には一人一人の防災意識が高まる。しかし時間の経過 とともにその意識は薄れていき、同じような被害がまた繰り返される。この点、既存の防災 の枠組みでは「悲劇や被害をいかに周知し潜在的な被災者の防災意識をいかに高めるか」と いう対策に終始しており、個人の意識に頼った対症療法から抜け出せていない。個人の意識 に頼る限り、「日常時には非常時をイメージ出来ない」点は変わらず、いざというときに自 身や大切な人を守ることが出来ない。これに対し、「人は日常時には非常時を十分に想像す ることはできない」ということを前提として、それでも人が災害から助かるための次の一歩 としての概念が「フェーズフリー」である。 フェーズフリーを普及させるためには、ユニバーサルデザイン(バリアフリー)や環境デ ザインの普及と同様、企業等にその価値を認識してもらい、持続的にするための経済的普及 が必要である。一般社団法人フェーズフリー協会やスペラディウス株式会社の普及活動も然 ることながら、地方自治体や大企業で活用され、最終的には中小企業にも普及させるために は、どのような活動が必要か、その可能性とともに考察する。 キーワード:フェーズフリー、経済的普及、日常時と非常時 目次 1 フェーズフリー (1)フェーズフリーとは
フェーズフリーとその経済的普及の可能性
経営学研究科ビジネス・会計ファイナンス専攻特任教授
岩岡 博徳
(2)フェーズフリーに関する評価項目 2 フェーズフリーの経緯 (1)繰り返される災害 (2)防災対策 (3)防災に関する意識調査 (4)繰り返される災害への対策や意識の限界 (5)防災用品やその備蓄の限界 (6)フェーズフリーの定義 3 社会デザインの経済的普及事例 (1)ユニバーサルデザイン(バリアフリー) (2)環境デザイン(エコデザイン) (3)社会デザインにおけるフェーズフリーデザインの比較 4 現在におけるフェーズフリーの経済的普及に関する取組み (1)インターネットによる経済的普及 (2)認証制度 (3)現状における経済的普及のまとめ 5 自治体や企業への導入事例 (1)自治体 (2)民間企業 6 フェーズフリーとその経済的普及の可能性に向けての提言 (1)ソーシャルビジネスとしての社会性・事業性の両立という観点 (2)サステナビリティとしての観点 (3)知名度としての観点 (4)企業規模別普及の観点 (5)人材育成の観点 注記 参考文献
1 フェーズフリー
(1)フェーズフリーとは 一般社団法人フェーズフリー協会やスペラディウス株式会社が提唱する防災における日常 時と非常時の区別をなくす「フェーズフリー」という概念が、大企業や自治体等で活用され るなど普及を見せている。今後、これらを一過性に終わらせず持続性を確保するひとつの手 法として経済的普及がある。経済的普及を通し、社会への浸透を図ろうとする活動が一部にみられる。 大きな災害が発生すると、その直後には一人一人の防災意識が高まる。しかし、時間の経 過とともにその意識は薄れていき、同じような被害がまた繰り返される。この点、既存の防 災の枠組みでは「悲劇や被害をいかに周知し潜在的な被災者の防災意識をいかに高めるか」 という対策に終始しており、個人の意識に頼った対症療法から抜け出せていない。個人の意 識に頼る限り、「日常時には非常時をイメージ出来ない」点は変わらず、いざというときに 自身や大切な人を守ることが出来ない。これに対し、「人は日常時には非常時を十分に想像 することはできない」ということを前提として、それでも人が災害から助かるための次の一 歩としての概念が「フェーズフリー」である。 (2)フェーズフリーに関する評価項目 近年においてフェーズフリーの研究は始まっている。松崎、 佐藤、 秦、 西原、 目黒(2018)1 は、フェーズフリーを「日常時や非常時などの社会のフェーズに関わらず、いずれの状況下 でも、適切な生活の質を確保する上で支障となる物理的な障害や、精神的な障壁を取り除く こと」と定義している。また、フェーズフリーを実現するためのデザイン指針を決めている。 本研究によると、フェーズフリーの評価項目は以下の5つである。 ・ 常活性:日常時だけでなく、非常時にも快適に活用することができる。 ・ 日常性:日常の暮らしの中で、その商品やサービスを心地よく活用することができる。 ・ 直感性:使用方法や消耗・交換時期などが分かりやすく、誰にも使いやすく利用しやすい。 ・ 触発性:フェーズフリーな商品・サービスを通して、多くの人に安全や安心に関する意識 を提供する。 ・ 普及性:安心で快適な社会をつくるために、誰でも気軽に活用・参加できる。また、これ 表1 5 原則に基づいたフェーズフリーの評価項目 (出典:松崎、佐藤、柏崎、秦、⻄原、目⿊ (2019)「フェーズフリーデザインの評価に対 するアプローチ」より抜粋) 表1
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2 フェーズフリーの経緯
(1)繰り返される災害 近年においても災害は繰り返し発生をしている。記憶に留まるところでは、兵庫県南部地 震(阪神・淡路大震災)(1995年)や新潟県中越地震(2004年)、岩手・宮城内陸地震(2008 年)等が挙げられる。近年では、新燃岳噴火や戦後最悪と言われる東日本大震災(2011年)、 平成26年8月豪雨、御嶽山噴火(2014年)、熊本地震(2016年)、平成29年7月九州北部豪雨 (2017年)、平成30年7月豪雨(2018年)等が挙げられる。そして、令和元年8月の前線に伴う 大雨、令和元年台風15号、令和元年台風19号(2019年)は記憶に新しい。2020年において は、新型コロナウィルス(COVID-19)による病原体感染災害が起こっている。このように、 災害は繰り返し発生しており、その種類は、地震、津波、火山噴火、洪水、台風、竜巻、 雷、熱波、寒波等の自然由来ものものだけでなく、エネルギー、交通、武器、兵器、情報等 の誤った使用方法による人的由来のものがある。そして、多くの人々の生活を脅かし続けて いる。 (2)防災対策 政府はこれに対し、防災対策として防災関係予算を計上している。昭和37年(1962年)か らの平成31年(2019年)で見た場合は、予算額の最大値は、平成7年(1995年)の約7.5兆円 であり、平成23年(2011年)からは約3~5兆円と高水準で推移している。 また、地方財政統計年報(平成 20 年度(2008年)~平成 29 年度(2017年))によると都 道府県の災害復旧費は東日本大震災後の平成 23 年度(2011年)に増加している。 防災関係予算や歳出額でみても過去と比較し、その金額は増加の傾向が見られる。しか し、このような対策をしても、完全にあるいは完全に近い形で災害が防げたかというとその ようなことにはなっていない。平成7年(1995年)の阪神・淡路大震災では6,437人、平成23 年(2011年)の東日本大震災では22,515人と突出しており、平成24年(2012年)以降も年間 77~344人の死者・行方不明者を出している。また、被災者の数になるとさらに多くなる。 このような現状からも政府や地方自治体の防災対策のみでは、限界があることがわかる。図1 年度別防災関係予算額 出典:『令和元年版 防災白書』「附属資料 33 年度別防災関係予算額」 図2 都道府県の災害復旧費(歳出決算) 出典:地方財政統計年報 瞬〗 寧度罰防災麟鐸予算額 8,000,000 12 7,000,000 一 防災関係予算合計予算額(惰正位予算顧) (還亨霞”畢.に!IIll,.のみ) 一← 防災隕係予算合計対一鮫 金1t IO 6,000.000 0 0 0 0 0 0 g 巫 s . 予 算 額 ︷ 百 万 円 ︶ 3,000,000 ︳般会計予算に占める硝合{% ) 8 6
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(3)防災に関する意識調査 これまではマクロの視点であったが、防災用品に関するアンケート調査を基にミクロの視 点でも挙げる。 図3によると、災害に十分に備えている人は全体の約3割である。このことから十分に備 えてない人は7割であることがわかる。また「どちらとも言えない」「あまり備えていない」 「ほとんど備えていない」と備えていない人をみると約5割であることがわかる。このように 繰り返される災害に対しても、備えられないという状況にある者は一定の割合でいることが わかる。 (4)繰り返される災害への対策や意識の限界 「繰り返される災害に対して、備えなければならない」という観点は、一連の防災対策に おいて重要である。しかし、一方で、国家予算であっても家計であっても、その財源は有限 であるためすべての災害に備え、完全に災害を防ぐことには限界がある。また、それ以前に 備えることに意識が向かない層も一定数存在する。これに対し、意識が向かない層を非難す ることもできるが、少なくとも日本においては、災害における非常時よりも、災害が起きて いない平常時の方が圧倒的に長い。また、複雑な世の中においては、防災よりも優先すべき ことは多々ある。各メディアが、阪神・淡路大震災や東日本大震災の被災を忘れてはならな い、風化させてはならないと叫んでも、人間は忘れる生き物である。意識が向かない、時間 とともに意識が遠のく層は一定数存在してしまうものである。現在においては、新型コロナ ウィルス(COVID-19)による病原体感染災害が起こっているが、これも、ウィルスに対す る抗体ワクチンの開発や浸透によって一定の解決がもたらされれば、次の未知なるウィルス に備えることは優先順位として低くなることは経験則からでも想像できる。このように繰り 図3 防災用品に関するアンケート調査 出典:マイボイスコム株式会社「防災用品に関するアンケート調査(第 2 回)」 罰3 防災朋贔に襲するアンケート闘奎 瞑 20., 凛 匈,2018/9)
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返される災害への対策や意識には限界があることを理解しなければならない。 (5)防災用品やその備蓄の限界 山田、須藤、笠岡、山村、山下、山本、下浦、小松(2015)が指摘しているように、自治 体における備蓄の整備を進めるとともに、家庭における備蓄等、災害に備えた自助努力を促 していくことも必要である3。しかし、防災用品は、災害時等の非常時において役立つ用品 であるが、災害がない日常時のほうが圧倒的に長いことを考えると、財の購入としては、優 先順位が低くなってしまう。そもそも備蓄には様々な問題がある。例えば、食品などでは賞 味期限があり、一定の期間で廃棄を伴うことがある。また、仮に賞味期限近くになり、食す ることになったとしても、その食で得られる「普段の食事と変わらぬおいしさ」や「健康的 な食材」が得られない。また、缶詰などの無機質であることから見た目の楽しさも損なわれ る。また、衣服にしても、普段の自分から着たいもの、自分らしさを出すもの、その他生活 のしやすさを助ける機能性衣料としてのものは持ち合わせていない。このように、QOL(ク オリティ・オブ・ライフ)という点においては、感情的にも機能的にも損なわれる点が多い。 また、備蓄に関しては、ある一定の置き場、スペースが必要となる。この点においては、特 に都市部においてスペースが限られる中、わざわざそのために確保するかどうかということ を考えるだけでも心理的ハードルは高くなる。そして、仮に置き場を確保しても、人目に付 くところに置けば美観が損なわれたり、人目につかないところに置けばその存在を忘れてし まったりする。これらのことから、普段から使われる財でないものは多くの点で限界やデメ リットがあり、防災用品が普及しにくい理由のひとつと言える。 (6)フェーズフリーの定義 繰り返される災害への対策や意識や防災用品やその備蓄には限界があることを指摘したが、 これらを解決の方向に導くにはどうすればよいか。その一つの答えは「防災用の財であるこ とを意識せず、普段から使っている財が災害時でも十分に機能する財」である。我々は多く の財に囲まれ、その恩恵に預かっている。しかし、災害時になるとその多くは機能を発揮し なくなると考えており、実際にそういう財も多い。しかし、普段から使っている財が災害時 にどのように機能するかを知ったり、あるいは、財の提供者がそのことを表現したり啓蒙す ることで、我々は普段と変わらない生活を送りながら防災対策も行っていることになる。こ れを概念化したものがフェーズフリーである。一般社団法人フェーズフリー協会代表でスペ ラディウス株式会社代表取締役の佐藤唯行は、「フェーズフリー(Phase Free)とは、平常 時に利用されるすべての商品およびサービスが持つ、災害時に役立つ付加価値である」と定 義している。ここでは、『「日常時」と「非常時」のフェーズの壁を乗り越え、日常時に付加 価値ある財が非常時においても同様あるいは用途を変化させて付加価値を保つことができる
財』と定義する。これまでの備蓄としての防災用品は、企業や家庭におけるコスト(費用負 担)であるものを、日常時も非常時でも使える財として価値を持続させるとも言える。コス トでない以上、最終的には政府の防災予算に頼らないでも国民一人が防災を意識しない防災 対策ができることにもつながると考えられる。
3 社会デザインの経済的普及事例
日常時でも非常時でも持続的な価値をもたらすフェーズフリーは、概念として社会的に意 義がある。しかし、それが社会に普及し定着するとは限らない。では、この概念が普及する ためにはどのような活動が必要であるのか、普及に至った2つの社会デザインを事例に見て いくことにする。 (1)ユニバーサルデザイン(バリアフリー) ユニバーサルデザインは1980年代にロナルド・メイスによって提唱されたとされる4。日 本ではバリアフリーとユニバーサルデザインが同時期に反映されたとされるため、しばしば 混同されるが、バリアフリーは障害のある人が社会生活をしていく上で障壁(バリア)とな るものを除去するという意味で、もともと住宅建築用語で登場し、段差等の物理的障壁の除 去をいうことが多いが、より広く障害者の社会参加を困難にしている社会的、制度的、心理 的なすべての障壁の除去という意味でも用いられる。」のに対し、ユニバーサルデザインは 「あらかじめ、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず多様な人々が利用しやすいよ う都市や生活環境をデザインする考え方」である。バリアフリーは健常である環境と「障 害」になる環境を取り除く概念であり、ユニバーサルデザインは、障碍者の社会参加を困難 にしている者を取り除くようにデザインをしていく」というように解釈できる。言い換えれ ば、バリアフリーは「健常」と「障害」をフリーにする概念で、それをデザイン化したもの がユニバーサルデザインといえる。今日では、ユニバーサルデザインは広く普及しており、 日本では1997年のグッドデザイン賞(Gマーク)で「ユニバーサルデザイン賞」が設置され た。バリアフリー化を義務付ける高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建 築の促進に関する法律(ハートビル法)(現:高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特 定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル新法))も施行された。このようなことか ら、ユニバーサルデザインであること自体が商品選択の基準のひとつとなっている。これは 経済的価値を持っているといえる。日常では、健常者でも障碍者でも使える幅広いトイレ、 誰でも感覚的にわかるピクトグラム、緩い傾斜のスロープ、キーボードやマウスなどの多様 な入力及び出力装置、シャンプとリンスのボタンの凹凸等が挙げられる。現在の日本おける ユニバーサルデザインの市場規模は約3兆円とされている5。(2)環境デザイン(エコデザイン) 「環境」というキーワードには生存環境や公害問題、その全体となる地球環境問題等があ る。この環境に関する問題の解決に向けたデザインを環境デザイン(エコデザイン)とい う。現在の企業では、地球環境問題に配慮した製品開発や経営がなされており、ライフサイ クルアセスメント(LCA)による循環型システムを確立している。これは、ISO14001認証 規格とも相まって、大企業のみならず中小企業にも普及している。すべての製品が環境に何 らかの影響をもたらし、その影響は製品のライフサイクルの1つまたはすべての段階(原材 料の調達、製造、流通、使用及び廃棄)で発生しうるからである。環境配慮製品への顧客、 利用者、開発者などの関心の高まりがある。その関心は、単に製品の環境側面と環境影響に 留まらず、費用低減、革新の推進、新たな事業機会、製品品質の改善等の市場での経済性に も反映するようになっていると指摘されている。(柿崎(2006))6高度成長期に見られた大量 生産、大量消費の動脈としての「消費社会」と「地球環境問題」の壁を取り払い、リデュー ス・リユース、リサイクルを考慮した静脈も取り入れた「循環型社会」を実現しているとい える。このような循環型システムにおける市場経済化を環境産業とすると、我が国の「環境 産業」の市場規模は105兆円に及ぶ。 (3)社会デザインにおけるフェーズフリーデザインの比較 社会デザインは通常の状態でも財としての価値を成立させるだけでなく、社会問題への配 慮すべき状態でも価値を生んでいる。ユニバーサルデザイン(バリアフリー)は、健常の状 図4 環境産業の市場規模推移 出典:令和元年度環境産業の市場規模推計等委託業務環境産業の市場規模・雇用規模等に関 する報告書(環境庁)を筆者にて加工 置叫 環霊奎睾の亨場鑓摸撞醤 l9 m.0Xl 1Jno,a:l 血 J四 g g g g 圧攣 -甕霞賽記 200J四 Q
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4 現在におけるフェーズフリーの経済的普及に関する取組み
現在のフェーズフリーにおける経済的普及の取り組みとしては、インターネットによるも のと、認証制度によるものが挙げられる。 (1)インターネットによる経済的普及 現在、インターネットによる経済的普及として挙げられるものとしては、EC サイト「ハ コブネ」7とフェーズフリー商品の事例を紹介し合うキュレーションサイト「イツモノ」8があ る。ともにスペラディウス株式会社が運営している。EC サイトのECとはElectronic Commerceの略であり、電子商取引を意味する。一般的には、インターネット上で商品やサ ービスを売買する仕組みを指す。そのECサイトを展開する上で、フェーズフリーを事業コ 図5フェーズフリーEC サイト「ハコブネ」 出典:https://hacobune.phasefree.jp/ 園5フェーズフ
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9-・ンセプトにしているのが「ハコブネ」である。「ハコブネ」はフェーズフリーにおける生産 者と消費者の接点として位置づけられている。 図5は「ハコブネ」のトップページである。フェーズフリーをコンセプトにしていること から、一般のECサイトよりも多くの特徴を有している。 図6の『濡れない風呂敷「ながれ」』を例にとる。このページを見ていくと、商品自体の 背景や特徴、機能について詳細に記述されており、動画でも紹介されている。また、カラー バリエーション等、多様な柄も準備している。その他、レビューの書き込み欄も用意されて いる。ここまではどこでも見るECサイトであるが「ハコブネ」については、図7の通り、 これだけでなくフェーズフリーの評価項目にレベルが示されている。 また、図8の通り、フェーズにフリーの「日常時」「非常時」についての例も記述されて いる。 図6フェーズフリーEC サイト「ハコブネ」の商品例 出典:https://hacobune.phasefree.jp/products/detail/23 図7フェーズフリーのレベル例 出典:https://hacobune.phasefree.jp/products/detail/23 國
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『ハニブ*」のヘッダー認よびグローパルナビゲーション キーワードを人力 Q S↓と 勺 し と遍
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)新規会貝登録)ログイン>閑琵躍歴)ご利用ガイド こんにちはゲストさま フェーズフリーとは hacobuneとは ~'t#@ 回
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*お気に入り モカート各カテゴリのうち「商品カテゴリから選ぶ」「日常のシーンから選ぶ」については、一般 的なECサイトでも見られる。しかし、ハコブネでは図11の通り「非常時のシーンから選 ぶ」というカテゴリを「災害予知」「災害発生」「被害評価」「災害対応」「復旧・復興」に段 階的に分けて、さらに細分化されている。 さらに、図12の通り、非常時を引き起こす「ハザード」という観点からの「ハザードか ら選ぶ」については、「ウィルス・花粉」「異常気象」「風水害」「地震」「情報」「交通」「エ ネルギー」に分けられている。 図10 「ハコブネ」のカテゴリ 出典 https://hacobune.phasefree.jp/ 図11「ハコブネ」の「非常時のシーンから選ぶ」カテゴリ詳細 出典 https://hacobune.phasefree.jp/ 罰1((l) 『I/\ロブネ』のカテゴリ +商品カテゴl」から浬ぷ 十日常のシーンから選ぷ +非常時のシーンから選ぶ +ハザードから選ぶ 姻 ・イ‘庁 リア 日用品 アウトドア,フィットネス 食呂 )ステーショナリ >ステーショナリ >アクセサリ >モビ1Jティ >食只 )ホビー >ホビー >ウェア >^Jしス >飲料 )キッチン >キッチン >バッグ >その他 >その他 )漣亘 小窃l >逹貝 小初 )その他 )庶明・ライト >熙胡,ライト )その他 >その他 會お気に入り 更カー テクノロジ一 > loT 9莞君・充君 )坦水・防水 )抗否 )その他 闘11
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ロコブ*」の『言信常騎のシーンから震ぷ』カテゴリ群隷 +商品カテゴリから選ぷ 十日常のシーンから選ぷ 十非常時のシーンから漢ぷ +ハザードから選ぷ 災吾予知 >惜報受信 >信報発信 )その他 災吾莞生 >地.君 >津 迂,洪水,台風 >熱法,寿注 >病原体 >交遥 >エネ)しギー >その 他 被吾評伝 >状況臼捏 > S05発信 災吾対応 >救命・救 助 >救援活勁 >二次災薔防止 俣旧,俣 興 >避華牛活 >修俣,修正 >その 他このように「非常時のシーンから選ぶ」や「ハザードから選ぶ」という機能をいれること により、ユーザーはアクセス時からフェーズフリーを意識するようになる。それが徐々にフ ェーズフリーをひとつの価値として感じられるようになり、商品価値を高めることにつなが るようにしている。 インターネットによる経済的普及を支えようとするもうひとつのサイトは、「イツモノ」 と呼ばれるキュレーションサイトである。こちらについてもスペラディウス株式会社が運営 をしている。フェーズフリーの概念が提唱されても、その価値を実際に表現する商品・サー ビスがなければ一般普及が困難になる。「イツモノ」は、その概念が持つ価値をアクセスユ ーザーによって具体的に表現したまとめサイトである(図13参照)。 ただし、「日常時」と「非常時」を連想すれば、どのようなものでもフェーズフリーであ るということになると、記事濫立の恐れがあり、価値の担保が困難になる。そこで「イツモ 図12「ハコブネ」の「ハザードから選ぶ」カテゴリ詳細 出典 https://hacobune.phasefree.jp/ 図13 フェーズフリーキュレーションサイト「イツモノ」 出典:https://itsumono.phasefree.jp/ 瞬〗 2 「/J \コブ*」の 「ハザードから置ぷ』カテ/リ辟鯛 +商品カテゴリから逗ぷ 十日常のシーンから選ぶ 十非常時のシーンから逗ぷ +ハザードから漠ぷ *お気に入り 戸カー
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IT・" * 'ア 9シ•9 a ヵル9町また、イツモノはハコブネと連携をしている。図16の通り、具体的には相互リンクを図 るようにしている。 このような相互リンクを図ることにより、「ハコブネ」からアクセスしたユーザーは、当 該商品に関してイツモノの記事をみることでより深く理解することができ、ロイヤリティが 図15 「イツモノ」の記事ページ② 出典:https://itsumono.phasefree.jp/posts/2278 図16 「イツモノ」の記事ページ③ 出典:https://itsumono.phasefree.jp/posts/2278 國15 『イツモ/」の記亭ページ② 鑓喪水こがらな∼と 凰圃:おホ企裏',,こ遍べtしふうんt・rI I ぇそれつてとうらう↓と9とS9て己t-::4"‘雙社こ寧. ても賓Aてみて1まレ山でm 猷9駈 雌
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超撥水風呂敷“ながれ" 商目名 超撥水風呂;;“ながれ” サイズ 70x70の,96x96cm lOSx 105cm 128x 128cm一
函 :超撥水具呂敷『ながれ』 officialサイト高まりやすくなる。一方で「イツモノ」からアクセスしたユーザーは、実際に商品をすぐに 購入することができ需要喚起につなげることができる。いずれの場合でも共通していること は、フェーズフリーに関する理解を深め、発想することができる効果が期待できるというこ とである。言い換えれば、経済活動を通して、フェーズフリーに関して社会参加を促してい る。 (2)認証制度 2018年12月7日にフェーズフリーに関する普及啓発を目指した一般社団法人フェーズフリ ー協会が設立された9。同法人はフェーズフリーに関する普及・広報事業、同調査・研究事 業、同企画・開発事業、同基準・認定事業、商品提案・提供事業、サービス提案・提供事業 を行っているが、その中でも中核の一つとして、フェーズフリー認証制度(以下、PF認証) が挙げられる。PF認証は主に商品やサービスに認証される「フェーズフリー認証」とフェ ーズフリーの理念に賛同し活動する団体に認証される「フェーズフリーアクションパートナ ー」がある。それぞれの認証マークは図17の通りである。 フェーズフリー認証は、商品・サービスにおける認証であり、現在では、21の商品が認証 されている10。認証を受けるための審査基準は、表1の5原則を採用している。この原則に基 づき、一般社団法人フェーズフリー協会の基準・認証委員会において審査されている。費用 としては審査料や使用料がある。 フェーズフリーアクションパートナーにおいては、団体に対する認証であり、現在では、 73団体が認証を受けている11。フェーズフリー認証との違いにおいては、申込でフェーズフ リーアクションパートナーの認証マークを使用でき、フェーズフリー協会による手続きはあ るものの、審査はなく使用料も発生しない。このようなことから、フェーズフリーアクショ ンパートナーについては、フェーズフリーの理念の広い普及と社会参加を呼び掛けたい同協 会の想いが見える。 図17 「フェーズフリー認証マーク」と「フェーズフリーアクションパートナーマーク」 「フェーズフリー認証マーク」 「フェーズフリーアクションパートナーマーク」 出典:一般社団法人フェーズフリー協会ホームページ 図可 7J 『フェーズフリー認罰マーク」と『フェーズフリーアクションパード]ーマーク」
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(3)現状における経済的普及のまとめ フェーズフリーにおける経済的普及を行うために、現状の活動として2点のことが見えて きた。 1点目は、インターネットによる商品売買活動を通して普及させる方法である。キュレー ションサイトを活用し、フェーズフリーの概念を事例として掲載しながら、ECサイトを通 して広く商品売買につなげていくようにしている。商品売買が促進すれば、生産者や中間業 者は事業機会につながり、消費者はフェーズフリーの価値を実感する機会を手にすることが できる。 2点目は認証制度の導入により、社会参加を促しやすい仕組みを整えていることである。 認証を受けるための仕組み・審査基準が存在し、認証をマークによりシンボリックに価値の 見える化を図ることで、商品やサービスにフェーズフリーを付加価値としてとらえやすくし ている。また、アクションパートナーとしての認証においても、当該団体が名刺やパンフレ ット、ホームページにアクションパートナーのマークを掲載し、団体自体がフェーズフリー の考え方を意識した活動が期待できる。 いずれにしてもこのような経済的普及を可能にしている要素は、①これまでにない概念で あり独創的であること、②誰もが賛同しやすい社会的脆弱性を軽減する活動であること、③ 概念に関する定義や審査基準や審査できる識者が明確であることが挙げられる。
5 自治体や企業への導入事例
では、実際にフェーズフリーの概念を取り入れた団体はあるのか、また、どのように活用 をしていくのかを事例を挙げる。 (1)自治体 いくつかの自治体ではフェーズフリーの概念を取り入れ始めている。例えば、豊島区では、 令和元年(2019年)第4回区議会定例会招集の区長あいさつでフェーズフリーという発想を 全国に先駆けて積極的に取り入れると述べている。調布市では令和元年(2019年)第4回調 布市議会定例会でフェーズフリーについて取り上げている。鳴門市においては、2018年2月8 日鳴門市地域防災計画・水防計画修正の概要-地域防災計画の中でフェーズフリーの研究及 び啓発を掲げている。このように自治体の議会や計画でも取り上げられてきたわけであるが、 具体的にどのような形でフェーズフリーという概念が実現されているのか、今治市クリーン センター「バリクリーン」12と豊島区「南池袋公園」13の事例を挙げる。 バリクリーンでは、今治市が2018年に稼働を開始した新たなごみ処理施設である。21世紀 のごみ処理施設として、3つの柱を掲げている。そのひとつが「地域を守り市民に親しまれ る施設」である。ごみ処理施設でありながら地域を災害時(非常時)から市民を守る施設であるとしている。この具体的な実現方法について、バリクリーンの設計・建設及び運営業務 を受託した株式会社タクマでは、このバリクリーンについて「フェーズフリー」の概念を取 り入れて図18の通りに説明している。 豊島区「南池袋公園」は豊島区の区画整理事業により2016年に開園された。コンセプトと して、南池袋公園を「都市のリビング」として位置づけており、日常時は賑わいの核となる カフェレストランを併設して快適な場を演出している。一方で、災害時(非常時)には、炊 き出し支援を行うようにしている。また、地元住民の参加による持続可能な公園経営を行う ための「南池袋公園をよくする会」も立ち上げている。南池袋公園を日常時、非常時で分け ると図19の通りである。 図18 「フェーズフリー」の概念を取り入れた今治市クリーンセンター「バリクリーン」 出典:今治市クリーンセンター バリクリーン(株式会社タクマ) https://www.takuma.co.jp/news/2018/pdf/pamphlet_20190320.pdf 園可 8 『フェーズフリー』の概念を取り入れた今治吉クリーンセンタ一『パリクリーン」
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6 フェーズフリーとその経済的普及の可能性に向けての提言
これまでフェーズフリーの概念及び経済的普及に向けた取り組みについて述べてきた。そ もそも、なぜフェーズフリーに経済的普及は必要になるのか。それは普及においては持続性 が求められるからである。価値を継続するためのひとつの手法は、ユーザーがその価値を活 用することにより機能性や情緒性に高いロイヤリティを保つようにすることである。すなわ ち、経済活動を通し、常に消費者にとって、訴求できるような商品やサービスを提供できれ ば、継続的普及が可能である。一方で、そのような活動でありながらも社会に対する貢献性 も維持する必要がある。言い換えれば、フェーズフリーを通し、社会参加しやすくするため には、フェーズフリーを事業・仕事として、身近に捉えていく感覚を社会に浸透させていく ことが必要である。では、フェーズフリーが今後、経済的普及の可能性を高めるためにはど のような観点で行うべきか考察を述べる。 (1)ソーシャルビジネスとしての社会性・事業性の両立という観点 ソーシャルビジネスでは竹内(2015)14らが指摘をしているように社会課題の解決と利潤の 追求において、社会課題解決偏重になると、資金的に事業の継続が困難になり、解決に向け ての取り組みが停滞、もしくは解散に陥りやすい傾向にある。フェーズフリーも災害に代表 される社会の脆弱性を解決するひとつの手法であるともいえるが、その取り組みには、その 活動を支える資金が必要となる。したがって、フェーズフリーの概念に基づいた商品やサー ビスの流通や価値の認証を通してゴーイングコンサーンとしての継続的活動を行っていかな ければならない。 (2)サステナビリティとしての観点 フェーズフリーを一種のブームで終わらせることなく、持続的価値(サステナビリティ) を持たなければならない。持続的価値を意識し、最終的には商品・サービスの選択を行う上での価値判断に活用できるようにする必要がある。ユニバーサルデザイン(バリアフリー)、 環境デザイン(エコデザイン)においても、現在では、財の購入において、消費者は購入判 断基準のひとつに使われるように、フェーズフリー商品を選ぶことが社会貢献にもつながる という感覚を浸透させれば、サステナビリティの実現に近づくものと想定される。 (3)知名度としての観点 現時点において、フェーズフリーに関する知名度は高いとは言えないと考えられる。 Googleサイトにおいて「フェーズフリー」を完全一致検索で行うと29,300件に留まる15。同 様に「ユニバーサルデザイン」で完全検索すると7,920,000件となっている16ことからもフェ ーズフリーの知名度は相対的に高いとは言えない。従って、今後の知名度を高め、フェーズ フリーの概念を浸透させていくかが課題となる。 知名度を上げていく活動として「フェーズフリーの基本となる書籍の発行」「インターネ ットによるマッチングサイトの開設」「ビジネスプランコンテストの開催」の3点を挙げた い。 第一に、フェーズフリーの基本となる書籍の発行をすべきである。フェーズフリーに関し てはスペラディウス株式会社から「フェーズフリーコンセプトガイドブック」が、一般社団 法人フェーズフリー協会から「フェーズフリーデザイン事例集」が発行されている。内容と しても直観的かつビジュアルを重視した内容であり、一般社会への理解を得やすい内容にな っている。ただし、同書籍は、一般の書店や大手ECサイト等には流通しておらず、一部の 希望するユーザーしか手にすることができない。今後は、出版社を活用した広いチャネルを 通して知名度を上げていく必要がある。 第二に「インターネットによるマッチングサイトの開設」である。このマッチングの対象 として想定されるのは2点ある。1点目は「フェーズフリー商品にアイデアがある者とそれを 形にすることができる製造業者・デザイナー、システム開発会社等とのマッチングである。 アイデアはあるが、ものづくりができない者は多く、一方でいつも下請事業を行ってきた結 果、自社商品開発をするアイデアが出てこないが新規事業を行いたい製造業等をマッチング するものである。2点目は、フェーズフリー商品を開発したいが、資金面に課題がある場合 に資金調達支援を実現可能する融資型、購入型、寄付型、投資型の4つに大別されたクラウ ドファンディング(竹内(2015))17である。特に購入型クラウドファンディングに着目する。 投資型クラウドファンディングではなく、購入型としているのは、日本においては実質的に 参入の規制がないためである。投資型クラウドファンディングは第2種金融商品登録が必要 であり一般的に許可をもらうのにハードルが高い。寄付型クラウドファンディングにおいて は、経済活動につながりにくいため、既述の通り、サステナビリティの観点で問題になる。 製造業等とのマッチングサイトにしても、購入型クラウドファンディングにしても知名度
において言えることはインターネットサイトを活用することにより、参加者を募りやすくす ることができるということである。また、特にクラウドファンディングにおいては、SNS(ソ ーシャル・ネットワーク・サービス)での書き込みによるバイラルマーケティングを行うこ とが一般的であり、それを行うことでフェーズフリーという概念が広がりやすい。また、購 入型クラウドファンディングにおいては、社会的に意義があるプロジェクトも出されており、 それに共感したものが資金を出す傾向もあり、フェーズフリーが持つ社会的意義に賛同する ものも見込まれる。 第三に「ビジネスプランコンテストの開催」である。フェーズフリーの創発性を事業とし て醸成していくためには、既存企業のみならず、今後、創業を考えている者も対象にすべき である。全国では、公的機関や各団体で創業にかかるビジネスプランコンテストが開催され ている。このビジネスプランコンテストには独自のプランが多く出され、ビジネスシーズを 生んでいる。中にはソーシャルビジネスに限定、地域の活性化をテーマにしたもの、女性、 若者、高齢者(シニア)に限定など、テーマを絞ったものも存在する。そこで、このテーマ を「フェーズフリー」に限定したビジネスプランコンテストで開催する。フェーズフリーと いう概念を取りいれた創業をビジネスプランとして作成し、プレゼンテーションを行う。こ のような場を設けることで、フェーズフリーとしてのビジネスシーズを醸成していくことが できる。また、ビジネスプランコンテストは審査員、専門家、その他のオーディエンスの前 で行うものであることからフェーズフリーという概念の知名度を高めることにも大きな役割 が期待できる。 (4)企業規模別普及の観点 一般社団法人フェーズフリー協会では、大企業や公的機関からの問合せが相次いでおり、 フェーズフリーの概念を取りいれた成長戦略策定や防災の日に合わせて、フェーズフリーを 取り入れた商品開発、商品企画等に関する相談が増加しているという。大企業としては、新 規事業開発を目的にしたもののみならず、CSR(企業の社会的責任)の観点からもフェーズ フリーのような新たな社会的観点への意識は高いものと推定される。しかし、一般社団法人 フェーズフリー協会によると中小企業からの問い合わせは大企業と比べると皆無であるとい う18。今後、フェーズフリーを経済的に普及させるためには、我が国の全企業数のうち、 99.7%を占める中小企業19での普及が重要となる。中小企業側においても、次のビジネスシ ーズを見つけ、事業開発を行うことは喫緊の課題のひとつとして挙げられる。一方で中小企 業が新規事業開発の方法についてそのノウハウを学ぶ研修やセミナーも開かれている20。こ のようなことから、中小企業においては、新規事業開発のノウハウに乏しいことも考えられ る。そこで、フェーズフリーの概念を基本とした新規事業の立て方を教育することで経済的 普及につなげられると考えられる。
(5)人材育成の観点 現在、一般社団法人フェーズフリー協会では佐藤唯行代表を中心にフェーズフリーに関す る研修やセミナー、コンサルティングを実施している。同協会によると、実質的にこれらの 活動できるのは、佐藤唯行氏のみになっている21。また、佐藤唯行氏は、ソーシャルベンチ ャー企業家として経済知識にも明るいものの専門領域は防災工学である。こういったことも 含め、今後、経済的普及をするためには、経済や経営に明るい専門家を認定アドバイザーと して養成することも経済的普及につながると考えられる。佐藤唯行氏が持つフェーズフリー の概念を経済の担い手である企業等が十分に活用できるように、そのアドバイザーを養成す るプログラムを開発する。これを受講したアドバイザーが伝道師となることで、フェーズフ リーの経済的普及につながる。
注記
1 松崎元、佐藤唯行、秦康範、西原利仁、目黒公郎(2018)「フェーズフリーの概念とフェーズ フリーデザインへの展開」日本デザイン学会研究発表大会概要集日本デザイン学会 第 65 回 春季研究発表大会p.114-115 2 松崎元、佐藤唯行、柏崎裕介、秦康範、西原利仁、目黒公郎 (2019)「フェーズフリーデザイ ンの評価に対するアプローチ」フェーズフリーデザインの評価に対するアプローチ 日本デザ イン学会研究発表大会概要集日本デザイン学会 第 66 回春季研究発表大会p.302 3 山田佳奈実、須藤紀子、笠岡(坪山)、山村浩二、山下雅世、山本眞由美、下浦佳之、小松龍 史(2015)「災害時の栄養・食生活支援に対する 自治体の準備状況等に関する全国調査 ~地 域防災計画と備蓄について~」日本栄養士会雑誌 第 58 巻 第 7 号 2015 年p.33 4 瀬口昌久(2004)「ユニバーサルデザインと技術者倫理」名古屋工業大学学術機関リポジトリ p.13 5 (公財)共用品推進機構「共用品市場規模金額の推移」共用品市場規模に関する2018 年度調 査に関する報告p.7 6 柿崎洋一(2006)「企業競争力としての環境経営 (日本発の経営力の創成と環境経営)」経営 力創成研究p.82 7 https://hacobune.phasefree.jp/ 8 https://itsumono.phasefree.jp/ 9 詳細は、一般社団法人フェーズフリー協会ホームページhttps://phasefree.or.jp/を参照 10 フェーズフリー認証商品一覧https://cf.phasefree.net/product/ 11 フェーズフリーアクションパートナー https://ap.phasefree.net/ 12 詳細は、「今治市クリーンセンター バリクリーン」パンフレットを参照13 詳細は、グッドデザイン賞2017「南池袋公園」を参照 14 竹内英二(2015)「わが国ソーシャルビジネスの「社会性」と「事業性」」日本政策金融公庫 論集p.1 15 2020年8月26日10:00 Google検索エンジンにて「“フェーズフリー”」検索結果 16 2020年8月26日10:00 Google検索エンジンにて「“ユニバーサルデザイン”」検索結果 17 竹内英二(2015)「中小企業やNPOの可能性を広げるクラウドファンディング」日本政策金融 公庫論集p.5-8 18 佐藤唯行氏へのインタビュー結果より 19 中小企業庁編「2019年版中小企業白書」p.335 20 公益財団法人東京都中小企業振興公社「東京都新サービス創出スクール」等でみられる 21 佐藤唯行氏へのインタビュー結果より
参考文献
単行本 スペラディウス株式会社『フェーズフリーコンセプト&ガイドブック』 一般社団法人フェーズフリー協会『フェーズフリーデザイン事例集』 建築設備綜合協会環境デザインマップ編集委員会 (編集)秋元 孝之 (監修)『環境デザインマッ プ』総合資格学院 D. A. ノーマン (著)、 岡本明 (翻訳)、 安村通晃 (翻訳)、 伊賀聡一郎 (翻訳)、 野島久雄 (翻訳)『誰 のためのデザイン?増補・改訂版 ―認知科学者のデザイン原論』新曜社 中小企業庁編「2019年版中小企業白書」 雑誌 岩岡 博徳「フェーズフリーと中小企業 : 経済的普及の必要性」『企業診断2019年12月号』同友館Abstract:
The concept of ”Phase-free”, which has been advocated by the PhaseFree Association and Speradius, Co.,Ltd. to eliminate the distinction between daily and emergency situations in disaster prevention, is now widely used by large companies and municipalities. In order to ensure that these activities are not only temporary but also sustainable, they are being promoted in society as economic activities.
In the immediate aftermath of a major disaster, people's awareness of the importance of disaster preparedness is heightened. However, with the passage of time, this awareness fades, and the same kind of damage is likely to occur again. In this regard, the existing framework for disaster management is all about ”how to raise awareness of the tragedy and damage and raise awareness of disaster prevention among the potential victims”. As long as we rely on our individual awareness, we will continue to be unable to imagine an emergency situation in our daily lives, and thus will not be able to protect ourselves or our loved ones in times of need. On the other hand, based on the premise that ”people cannot fully imagine an emergency situation in daily life”, the concept of ”Phase-free” is the next step to help people save themselves and their loved ones from disasters.
In order to popularize the Phase-free concept, as well as universal design (barrier-free) and environmental design, it is necessary to promote the concept economically in order for companies and others to recognize its value and to sustain it. In addition to the dissemination activities of the PhaseFree Association and Speradius Co.,Ltd, we consider what kind of activities are necessary to make the Phase-free movement more widely used by local governments and large companies, and eventually by small and medium-sized companies, as well as the possibilities.
Keywords: Phase-free, economic dissemination, daily and emergency