1
北 陸 大 学 紀 要 第11号 (1987)pp .165〜194
西 ドイ
ツ
の
オ
ー ル
タ
ナ
テ
ィ
ヴ
運 動 試論
一
概 観
と
関 連
年 表
田村
光
彰
・Versuch
ttber
die
Alternativbewegung
in
der
Bundesrepublik
Deutschland
Uberblick
und zusammenhljngendeZeittafel
Mitsuaki
Tamura
Received
Oc
‘ober28 ,
1987匠
}
は じめ にオ
ー
ル タナ テ ィヴ運 動と は何か (1
) 訳語 オー
ル タナテ ィ ヴAlternative
の 辞 書 的な意 味には,
次の2
つ がある。 (1
}2
つ の とるべ き可 能 性 を 前に し た,
い ず れか一
方の選択,
既成
の 選択に代っ て, 2
つ ま た は多数
の 可 能 性の 中 か ら, 1
つ を 選ん で 対 置す ること。 {1
)では, 2
つ の 選 択 肢は価 値 と して は等 価で あ る が,
で は既 成の選 択肢
は否 定され,
乗り超 え られるべ き価 値 と見な されてい る。 西 独のみ な らず,
と り わけ先 進 資本
主義 国に 広 ま っ て い る オー
ル タ ナティ ヴの 思 想は(2
)iC
基い て い る。Alternative
の 日本 語 訳 と して は次のよ うな語が あて ら れて き て い る。
{1
)「社
会 的に み て ●。
●
●
・
〔1} 既 成の文学
コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン にたい し,
r
もう ひ とつ の文 学コ ミュ ニ ケー
ショ ンを 志す運 動』」●
o●
・
{2,●
(傍 点 筆 者,
以 下 同じ) (2
)「オー
ル タナ ティ ヴ (代替社
会) を めざす 」C3
)「ケル ン に花 開 く対。
。
。
抗 文化
」。 〔2
)
と(3
}で は 「社
会 」,
「文 化 」を も含めて 訳 語と して い る。(
1
)〜
〔3
)
いずれ に も共通 し て いる視 点は,
既 成の文学,社
会,
文 化が もつ 価 値 感へ の単な る反 対や抗 議で は な く,
これ らに 対 置さ れ る新 しい創 造である。 オー
ル タ ナ テ ィ ヴの運 動に参 加 する 主体か ら 見 れば,社
会参
加 であ る。 私は,
この本稿
に おい て は第
一
に.
文 化.
社 会とい う個 別カ テ ゴ リー
を使
わ ない で い なが ら,
これ らを 包含し,
第二 に,
創 造 と参
加 を 特に意 識 して選 ばれ たと 思われる 「対 案 実 【4) 現」を 適 語 と考え る。 (2
) 規 定r
草の根運動の現 代 的 位 相』(高
田昭彦
) にな らっ て,
オー
ル タナテ ィ ヴ 運動
を 「各自
の 日常
生 活の中か ら発 想された問 題に対 して,
生 活 者 と して の個 人 が 自発 的に参 加 した社 会 (5} 運 動 」と規 定 し たい。 以下,
こ の規 定を も と に, オー
ル タ ナテ ィ ヴ 運動を,
運動 形 成の要
素,
組織 ,
参 加 者の意識
に分け て叙 述 し たい。 *教・
養 部2
田 村 光 彰圍
オー
ル タナ テ ィヴ運 動 形 成の 要 素 (1
) 社 会 的 契機 社
会 的 契 機と して は,
危機
感を抱か せ る事 象の発 生,
存 在が あ げ られる。 ド イツ史 をふ り返 れ ば 社 会民主 党は1959
年11
月の ゴー
デス ベ ル グ 基 本 綱 領によっ て,
党 結 成以来、
堅持は名 目だ けで,
実 際は たて まえ として の み残して いた マ ル クス 主 義を捨て,
「はっ き りと 体 制 内 存 在」へ と変る。 重 要 産 業の国 有 化か ら市場
経 済に依 拠す る 「可 能な限りの競
争」へ 。60
年にNATO
の肯 定。66
年12
月,
保 守二党と共に連 立 政 権 (保 革 大 連 合 ) を 樹 立。 議 会で は 保 守二党 と 社 民 党の中 間に位 置す る最 小 勢 力の 自 民 党のみが 野 党 とな るが,
実質
的に は,
批 判勢
力を欠い た,
「野党
の いない 議 会 」が続
く。69年 9
月,
大連合
に代 わ り,社
民 党一
自 民 党 の連 立 政 権 (プラン ト首 相 )が成 立する。 こ の連 立 政 権 下で,
原 子 力 発 電の増 設,
ヒ ロ シマ 型原爆
が3 百
万 発 世 界中
に蔓 延 して い る時
に,更
に加えて米 新
型 核 ミ サ イル,
パー
シ ングH
・IOS
基 と巡 航 ミ サ イル96
基 を 配 備 す るNATO
の 「二重 決 議 」の 受 け 入 れが な され た。 企 業の 重 金 属たれ 流 しが容 認され,
「運 河の泥 土の な か に は,
ヒ トに枢 吐 を 伴 う下 痢 を 誘 発 し,少
量で も 微 生 物を殺 す 銅が,
例え ば基 準 値の314
倍にも 達 し………
重 度の 神 経 障 害と麻 痺 を 惹 き 起 こす 水 銀は,
基 準 値 を70
倍 も上 まっ てい る。 ガ ンを 発 生させ る ヒ素は63
倍,
脳 と血 行に障 害 を 与え [61 る鉛は32
倍………
。」 とい う環 境 汚 染が広がっ た。 核 戦 争の危 機 と全 生態系の汚 染は,
運 動の 社 会 的 契 機を形 成 し た。 主体 的
契 機こ こで は価 値 観の
転
換と リー
ダー
の存
在 とい う 2 点 を挙
げよ う。
価 値 観の転 換 戦 争と環 境 汚 染の危 機,
差 別と抑 圧 とい う社 会 的 事 象を乗 りこえ る対 案 を 支 え る視 座は,
人 間 と 自然との 共 生,
人 間 と人 間 との 共 生とい う思 想で あ る。
こ の 思想は 西欧思 想一
「人 間に よ る自然の抑 圧 」とする俗 説に よ っ て無 視 されつ づ けて きた。 人 間 も 全 生 態 系の一
部であ り,
部 分 は 全 体 と 関 連 し,
結 びつ いてい る,
とす るエ コ ロ ジー
の思 想は,
地に深 く沈潜
し,
遠 くギ リシ ア思想か ら,
中 世の神
秘主義,
フ ラ ンチェ ス コ 派,
ス ピ ノザ,
ロ マ ン主 義,
ハ イネ,
ゲー
テ,
フ ォ イエ ル バ ッ ハ,
マ ル クス 主 義,
リル ケ,
シ ュ ヴァ イ ツ ァー
そ してル ドル フ・
シ ュ タ イ ナー
らに脈々 と 流 れて い る。
「エ コ ロ ジー ・
平和
一
これ は 生命
を お び や かすあ 〔7〕 らゆる もの に対す る抵
抗を含めて,
生 命をいつ くしむことで ある。」こ の章で は,
エ コ ロ ジー ・
平 和 を 基に1980 年,
多 種 多 様 なオー
ル タ ナティ ヴ運 動 を 統 合 し,
議 会 外 住 民 運 動 と議 会の 双方 で対 案 実 現を く り ひ ろげて い る緑の党の人の流れ にのみ着
目して み よ う。社 民 党も保 守二覚
,
そ れに自民 党 も経 済 成 長と国 民 総 生 産の 増 大を最 優 先さ せ る点で全 く変
{8) わ り は な い 。 「緊 張 緩 和 政 策以外に差 異はない」 た めに,
これらの政 党に エ コ ロ ジー ・
平 和を 主 題 とする価値観
の転
換を求
め るこ と は無 意 味で ある。緑
の 党の中
に は,
自然 との 共 生,
人 間 と人 間の 共 生を求めて既 成 政 党や既 成グルー
プ か ら訣 別 して き た 人 は多い 。 保 守 党の キ リス ト 教社
会 同盟か ら はヘ ル ベ ル ト・
グルー
ル が党 創 設 者の一
人 とし て参 加。
著 書r
掠 奪さ れ る惑 星」 は,75
年に出 版さ れ, 2
年 間で20
万 部が売れ,
ベ ス トセ ラー
入 りを果た し た。 現連邦 議 会 議 員 アル フ レー
ト・
メ ヒ テル スハ イマー
は,
バー
デ ン = ヴュ ル テ ン ベ ル ク州で かつ て は 保守 党の キ リス ト教 民主同盟員。 社 民 党か らは かつ て 党 代 表の一
人ペー
トラ・
カー
リン・
ケ リー
。 バー
デ ン = ヴュ ル テ ン ベ ル ク州 議 会 議 員 を 務め たハー
ゼ ン クレー
ヴァー
は,77
年に社 民 覚が原 発 政 策 の継 続 を 党 大 会で決 議 し た 直 後,
党に脱 党 届 をだ した。 ブレー
メ ン市 緑の 党創
立者の一
人、
オ ラー
フ ・ デ ィ ネ は社民党に訣 別を し,
初めてエ コ ロ ジー
的 政 策と,
教条
的左翼との相 違を 理 論 化 した 。 左 翼 グルー
プ か ら は元 ド イ ツ 共 産 党KPD
の ヴィ ン フ レー
ト・
ク レ ッ チ ュ マ ン や,
西 ド イ ツ のオ
ー
ル タナ ティ ヴ運 動 試 論一
概 観 と関 連 年 表3
デ ィー
ター ・
クン ツ ェ ル マ ン,共
産 主 義 者 同盟KB
か らは ラ イ ナー
ト ラ ン ペ ル ト,
卜一
マ ス エー
バー
マ ン。 後の2
人の う ち 前 者は前 党 代 表,
後 者は現 党 代 表の1
人である。
共にマ ル ク ス 主 義 とエ コ ロ ジー
の価 値 観の統一
に,
努
め てい る。
西 独史上初
の緑の党と社
民 党との連立政 権 下で,
環 境 大 臣に就 任 した ヨ シュ カ・
フ ィ ッ シャー
は,
フ ラ ン ク フ ル ト の非 教 条左翼 “Sponti
” か らエ コ ロ ジー ・
平 和の 価値 観に共鳴
し て緑
の党に参
加 し た。 人 間と自 然,
人 間と人 間との共 生 をめざす棍 座は,
権 力の一
点へ の集 中や統 合 を 廃 し,
分 権 と各 個 人の 自立によ る連 帯 をめざす。 こ の点で東
欧の現存
する社
会主義
も対案
に は な りえ ない。 東 欧か ら参 加 し た入々 には,
チ ェ コ の77
年 憲 章の署 名 者であ るミラン・
ホ ラ チ ェ クがい る。 ま {9} た東 独 ・ 社 会主義 統一
党の エ リー
ト経 済 官 僚でr
社 会 主 義の新
た な展 望』を 著わ し た ため に8
年の 刑 後,
国 外 追 放に な っ た ドル フ・
バー
ロ。
現 在緑
の 党を脱
党してはい る が,
エ コ ロ ジー ・
平 和を求めて党 創 立に加わっ た一
人である。こ う して保 守二党
,社
民 党,
左 翼,
東 欧 社 会 主 義の もつ 既 成 価 値 観 からの脱 却 が,
オー
ル タ ナ テ ィ ヴ 運動の形成
要素
の一
つ を成
す。 (囲
を 参 照 ) リー
ダー
の存 在60
年 代の社 会 運 動は,
リー
ダー
が,
執 行 委 員 会なり運 動 委 員 会に加わ っ て リー
ダー
ジッ プを発揮
し た が.70年
代の オー
ル タナテ ィ ヴ 運動では,
委 員 会その ものが存 在 し ないケー
ス が多
い。 リー
ダー
と運 動体
構成
員 との差は ほ とん ど な く,
ヒエ ラル ヒー
の 構 造 を も ae た ない。
リー
ダー
は 2 人 以 上い る場 合が多 く (「多
頭 的」で あ る),
固 定 化 されて い な い 。團
オー
ル タナ テ ィヴ 運動の綿 織 {1
) 原理運
動
の原理 は参
加民 主 主義
であ り,
分権 ,
連 合である。 誰かに 自分の意 志 を 代 行し て も ら うことが 多い既 成の 運 動は,
意 志・
思 想 と行 動・
実 践が分 離 し や すい。 オー
ル タ ナ テ ィ ヴ 運動は こう し た分 離を 避 け,
思想と身 体の統一
を目ざす。 参 加 者 全 員の 討 議で,
決 定 した事 項 は 全 員の参 加で実 現 して い く。 重 視 されるの は,
決 定す るこ と よ り も,
決 定に至る プ ロ セ ス で ありt その プ ロ セ ス での各
個 人の意
識の変
革と成
長で ある。誰
も が変 わ り うるのだ,
とい う プロ セ ス を 大 切にす る。 こ の点で緑の党は,
結 論の で て いない党 内の論 争 点につ い て,
・
その対 立の 論 旨 をその ま ま 綱 領に も併 記す る。
例えば,
刑 法第
218条 ,
い わ ゆ る妊 娠 「中絶禁
止」条
項
に関し て,
ザー
ル ブ リュ ッ ケ ン綱 領は次のよ うに記 し た。 「妊 娠 中 絶の問 題を論 ず る と き,
緑の党 はふ たつ の根 本 目標の 間で矛 盾 (傍 点筆者
)に陥っ て しまう。 つ ま り私たちは一
方
で は 男 女の完
全な自
己決 定を支持
し よ うと 意 を固めて い る し,
他 方では人 間の い のちはあ ら ゆる領 曲 域で 守ら ねばな ら ない か ら である。」矛 盾は,
党の 理 論 と運 動の 現 在の一
到達 点で あ る。
他 党 は こ うし た緑
の 党の矛盾
を指し,
瞹 昧である と批 判 する。 だ が,
こ の よ うに批 判 する既 成 政 党 は,
自身の党 内で対 立する両 論はあた か も対 立して い ない かの ように粉飾
処理 を しが ちで あ る。各オ
ー
ル タ ナテ ィヴ 運動
体が矛盾
を 湖塗せず,
対 立 点の ど ち ら かを,
上位
の機 関に か けて決 着 するこ と を多
くの場 合に避け,
今 後の運動と理論の発 展にゆだ ね る姿 勢は,
参 加 者の自 発 性 を 尊 重す ることであり,
同 時に,
「自 由 とは,
異 な る考えを もつ 者の 間の自
由 で あ る 」 (ロー
ザ・
ル クセ ン ブル グ)とい う 自 由 観の現 実 化で もある。こ の ような 自 由観に基 く運 動 体は相 互に影 響しあい ネッ トワ
ー
クを作
っ て い る。各
運動 体が ネ ッ トワー
クの一
部 分で あ り.
自 律 した組 識である。 こう した オー
ル タナ ティ ヴ な 運 動 体の一
つ と して連 邦 環 境 保 護市
民 運 動 連 盟BBU
を挙
げることが で き る。1972年創
立の こ の 運動体
は,
4
田 村 光 彰 「勇気 を もっ て もっ と民 主 主 義 を」 とい うプ ラン ト首 相の発 言の実 質 化 を 目標に した。 千 を 越 え る各 地の組 織,
約30
万 人が加盟 するBBU
で は,各
グルー
プの自
主性
と自
立性
を保障
する た め に上か らの指 導,
操 作,
動 員は行わ ない 。 各 グルー
プは,
互い に集 中や集 権 を 排 し,
連 合 を 基に して い る。 大 き さ参 加 民主 主義
,
連合,
分 権を原理的特徴
とする各グルー
プ は,
構 成メ ンバー
数が 膨 張 する と,
原理 その もの に抵 触して くる。 従っ て各オー
ル タナテ ィ ヴ 運 動体
は等 身 大を 目ざ す。 生産 者との 直 接の 流通ルー
トを 拡 大 してい るグルー
プ,
無 農 薬,
有 機 農 法の野 菜を扱う生 産 者消費者
グルー
プ。 居 住共 同体
を構 成す るメ ンバー。
共 同経 営・
自 主 管理 をモ ッ トー
にReformnaus
自然 食 品の店や リサ イ クル 運動に関わ る 人々。20
万 入 以 上 が こ う し た オー
ル タ ナ テ ィ ヴ 企業に従事
してい る。 各グルー
プ は生 活に根 ざし
た 地 域 運 動 といえる。 こ の場 合 地 域 とは一
般に,
自転 車でまわ れ る程 度の広が りで あ る。 この広さ は メ ンバー
間の連 絡 を 要 易に し,参
加 民 主 主 義 を 支え る場 となれる単 位である。 團 参加者の 意識こ こ で は運 動 を 構 成す るメ ンバ
ー
の意 識,
価 値 観に焦 点を絞 り.
次の特徴
を抽出
し たい。(
1
}
地方
と世 界へ の帰 属 意 識 (2
)万 物 との共 生非 暴 力
(
4
}脱 産 業 社 会 {5
〕フ ェ ミニ ズム。
す で に 「オー
ル タ ナ テ ィ ブ 運動 形 成の要 素」の章で,
主体
的契機
の一
つ と して 「価値
観の転
換」 に ふれ た。
そ こで は,
他 党か ら縁の党の価 値 観に共 鳴 して 入 党 してきた人々 のみを と り あ げた。一
方.
こ の1
か ら5
まで の特 徴 もすべ て,
価 値 観の転換
に係わ っ てい る。 こ こでは政 党 レベ ル 以外の 分野 につ い ての 価 値 観の 変 化 を 述べ たい。 (1
) 地 方 と世 界へ の帰 属意識運動の
参
加 者には国 家へ の 帰 属 意 識は極め て少ない 。 こ の理 由 は第一
に,
ナ チ ス が目 論ん だ ド イツ民 族一
ド イ ツ国 家に よ る世 界 制 覇へ の反 省で ある。 1985 年5
月8
日, リヒ ャ ル ト・
フ ォ ン・
ヴ ァ ィ ツ ゼ ッ カー
大 統 領 (キ リス ト教 民 主 同盟)は ド イ ツ の 国家
主義にふ れ次の よ うに 演 説してい る。
「ヨー
ロ ッ パ では百 年以上にわ た っ て国 家 主 義 が 余 りに も高 ま り,
そ の衝 突に苦 しんできたの で あ り ま す。 第一
次 大 戦が終る と一
連の平 和 条 約が締結
さ れ ま し た。 し か し,
これに は平 和 を 樹 立す る力 が 欠 けてお りま した。 国 家 主 義 的 な 激 情 の炎が再 び 燃 え あが り,
社 会の窮 状 と結びつ くこ と と な っ たの で あ ります。」 「国家
主義
」 に あ お られた 「激 情の炎」 は,
人 種,
宗 教,
イ デ オロ ギー,
政 治 上 異 なる人々 の 肉 体 と意 志 も焼 き っ くして しまっ た。 国 家へ の無批 判な帰 属意識の行きつ くところ は自
国と世 界の 破 局で あっ た。 第二の 理 由は,
地 球 規 模の汚 染の 現 実である。 そ の第一
は生 産 力至上主義に よっ て生み だ さ れた フ ロ ン ガスや炭 酸 ガス 等の 化 学 物 質の 地 球レベ ル で の 蔓 延で あ る。
これ は 地 球の 平 均 気 温 を 上昇 さ せ,
都 市の水
没 や耕
地の砂
漠化
を 促すだ けで は ない。
合 成化学
物質
は大 気 中の オゾン 層 を破 壊す る た めに,
人 類が受け る紫 外 線 量が増 大す る。 これは皮 膚ガンを発 生 しや す くする。 同 時に 地球上の全 酸素
の2
/3
を 生 産 してい る海中
の プラン ク トンを も襲う。 食 物 連 鎖の 中で,
プ ラン ク トン に依 存す る全 生 物の生 態 系 が 破 壊 さ れ,
それは人 類の生 存そ の ものを脅や かす。 汚染
の現 実の第二は ,1979
年の ア メ リ カ・
ス リー
マ イル島
と,1986
年ソ連の チェ ル ノ ブ イ リで おこ っ た原 子 力 発 電 所の事 故である。 汚 染は国 境 を 意に介 し ない 。 第三 は全 地 球を おお う酸性
雨で あ り,
第四は,
「核の冬 」をひ きお こす限 定 核 戦 争用 の兵 器を は じ め と す る大量 の核兵
器 の 生 産で あ る。
こう し た全 地 球 規 模での 生 態 系の 破 壊 を もた ら す危 機は み な国 家 的エ ゴ イ ズ ム西 ド イ ッの オ
ー
ル タ ナ テ ィヴ 運動 試 論一
概 観 と関 連 年 表5
の下で加 速 さ れて きた。 オー
ル タ ナ テ ィ ヴ運 動の参 加 者は,
国 家 主 義で は な く,
国 境 を 超 えた 地 球 レベ ル に視 野 を 据え る。
意 識は世 界.
し か し行 動は地 域 す な わ ち,
理念 と して か か げら れ る 地球 市民の対案実
現の場が 地域であ る。 生 態系を守るエ コ ロ ジー
の思 想 は,
地 域→
国 家→ 地 球 か ら国 家 を 意 識 的に欠 落 させ,
地 域2
地 球の相 互 連 関 を 密にす る 。 こう した視 座 が 次 の 万物との共 生の 意識
と連 動す る。 万 物 との共 生 オー
ル タ ナ テ ィ ヴ運 動に参 加する人々 の抱い て い る人 間と自 然,
人 間 と人 間 との 共 生の 視 点は ヨー
ロ ッ パ 思 想の 古い 時 代に 源 流を もつ 。 こ れ まで くり返 し流布 さ れて い る 「西 欧 思 想一
人 間に よ る 自 然の抑
圧・
搾
取,東洋
思想一
人 間 と自
然 の調和」 とい う単 純な二 分 法は思 想 史へ の 無 知に由 来 して い る。 第一
に,
西 洋,
東 洋それぞれ を 共に一
元 的な文 化 圏 と する誤 りを指 摘 し な け れ ば な ら ない 。 西洋
とい っ て も等質
で は な く,少
く とも島 国の イ ギ リス 文 化 圏,
アル プス の北の文 化 圏.
南の ラ テン文 化 圏,
東 欧 諸 国 文 化 圏 等が存 在 し,
東 洋には イ ス ラム 文 化 圏,
中 国・
イン ド文化
圏が存在
し, 更に こう し た文 化 圏が そ れ ぞ れ 異質の文 化 域を 内 包 している。 「西 洋 」 「東 洋 」 と して一
元 化,
単一
化 するこ と は差 異 性 を 無 視 するこ とに な る。 第二 に.
「東 洋 思 想 が 人 間 と 自然の 調 和で ある」 とすれ ばt 今日の 日本 を 含め た 「東 洋」の 自然 環 境の 汚 染と破 壊をい か に説 明 するの であ ろうか。 植 林な しの東南
ア ジ アに お け る 熱帯 雨 林の伐 採,
森 林 破 壊。 敦 賀・
浦 底 湾一
帯の原 発 廃 水によ る 海 洋 汚 染。 光 化 学ス モ ッ グ,
水 俣 病 等に よ る 人 間 と自
然へ の挑戦
。 観 光道路
建 設が ひ き お こす 緑の乱 開発。
酸 性雨
に よ る森 林の枯 死。 河 川 と湖 沼の全 国 規 模で の汚 染。 ヘ ドロ の海 と化 して い る海 岸 線,
自 然に還 元できない化 学 物 質に よ る自 然へ の抑
圧 。 も しすべ て の社
会 的な 諸事象
のよ っ て き た る原 因を 思想に求
め る ことを 正 しい方 法 と前 提すれ ば,
こ こ には調 和で は ない,
「東 洋=
破 壊の 思 想 」 も ある こと を 指 摘 し な け れ ば な ら ない であ ろ う。第三 に
,
「西 欧思 想 」 と して表 現さ れる実体
の一
つ は,論者
た ちによ れ ばキ リス ト教で しか な く,
し かも異 端 を含め ない,
正 統キ リス ト教であ り,
この 正 統キ リス ト教 を もっ て 西 欧 思 想 を代 表さ せ る方 法は,
一
部 分を もっ て全体を結 論づけ る手 法に等しい 。 日本
文化論
の イ デ オロー
グたちは 「東 洋 思 想;
調 和,
西 欧 思 想;
抑 圧」を 人 間 と 自 然に定 義づ けるだ けではな く,
人 間 と人 間の関 係に も あては め よ うとする。 そ れ は 「戦
闘 的な西洋
, 平和
的な東洋
」観を 生 み だ し てい る。 そ して戦 闘 性の例 証 と して挙 げ られるの は,
旧 約 聖 書,
創 世 記の次の 箇 所で あ る。 「神 は自
分の か た ちに人 を創
造さ れ た。 (略
)神
は彼ら を祝
福し て言わ れ た。r
生め よ,
ふ え よ,
地 に満 ちよ,
地 を 従 わせ よ 。 また海の魚と,
空の鳥 と地に動 くすべ て の生 き 物と を治め よ。』」ところで
,
キ リス ト教 を 根 拠 とす る 「戦 闘 的な西 洋」観 を 論 理 化す るために は,
少 く と も次 の 命 題が証 明 さ れな け れ ば な らない。 すな わち,
キ リス ト教が,
とりわ け先の創 世記の部
分が 西洋とい う全 域にわ たっ て,
人々の 思 想 をお おいつ く してい る こと,
である。
だ が これは事 実に反 する。 第一
に,
確か にパ ウロー
ア ウグス テ ィ ヌ スー
トマ ス・
ア ク イナ ス に 流 れ る 思想の一
部に は 「生 き物 を 治め 」,
生 き物 を 支 配,
服 従す る視 点がある。 例えば,
イ エ ス が悪 霊 を 「豚の群 れの中につ か わ」 (マ タイに よ る福 音 書,
第8
章31
節 ) すと,
豚の 群れ は 「が け か ら海へ なだれ を打っ て駆け下
り,水
の 中で死ん で し ま っ た 」(同上,32
節 ) とい う ガダラの豚の事 件につ い て,
ア ウ グス チ ヌ ス は 次のよ うに述べ て い る。 「こ の挿 話が教えて い るの は,
わ れ わ れ は動物
に対
して義務
を負
っ てい ない とい うこ とだ。」 だが こ う した動 物観
に6
田 村 光 彰 対 して(1
)公認の キ リス ト教 内に そ して異 端 とさ れ た人々 に(3
)キ リス ト教の思想外
に自
然 万物
との 「調 和 」 を 原 点 とする思 想 を 歴 史は数 多 く教えて くれる。まず
.
(1
)に関 し て は修 道 院には入らずに,
使 徒 的な清 貧 に徹 し.
放 浪 説 教 を続
け たア ッ シ ジ の聖フ ラン チ ェ ス コ。 こ の伝 導 者は.
動 物に も隣れ みの情 を 示 した。 アル ベ ル ト・
シ ュ バ イッ アー
は生 きと し生け るもの すべ ての 生命
へ の畏 敬 を 説い た。 ニー
チェ の 超 人の 思想か らで は な く,
トル ス ト イ の博 愛 主 義 か ら畏 敬の視 点 を学ん だ。 自然 万 物 との共 生の思 想である。次に につ い て例 を
挙
げよ う。中
世 は 正統
キ リス ト教の唯
一
の一
元支
配 で は決
し て な く,
都 市 を 囲 む 城 壁の外 側に は多 くの異 端 とみ な さ れたグルー
プ が清 貧,
質 素 をモ ッ トー
に独 自の教 会 を 造っ て 信 者 を 集めて い た。 大 都 市にな ると城 壁の内 と外の教 会の 比 率は半々 に も及ぶ ほ ど の都市
も存在
し た。
そ して こ の城 壁外
の異端
の多
くには 人 間 と自
然の融
合を基本
とする 汎神
論 を 内に含
む神 秘 思想
の影 響が み られ る。 ま た,1738
年,
ロー
マ 教 皇 庁か ら異 端の宣 告 を 受け た フ リー
メー
ソ ン は,
単に自 由,
平 等,博
愛,
人 道 尊 重,
諸宗
派へ の寛容 ,
理想社
会の 実現 とい う世 界 主 義 的 な 要 素だ け を 掲 げたの で はない。 同 時に,
こ の結 社 は 「創 世 記 」に見 られるよう な タテ系
列 の神
一
人 間一
動 植 物とい う ヒエ ラル ヒー
で は な く,
これ ら相互の 対 等・水
平 的価値
観 を もっ て いた。 こ う した(1
),
(2
)の世 界 観はある 日突 然 出 現し たわけ で は ない 。 ヨー
ロ ッ パ 思 想の 源 流に は,
神々一
人間一
自
然 が一
体と な っ た,
汎神論
的な ギ リシ ア神
話の世
界観 が あ る。
人間 にも自
然 万 物に も霊 を 考 える。 とすれ ば,
霊によっ て人 聞 も 自 然 万 物 もつ な がっ て い る。 「霊 」t 「精 霊 」,
「た ま 」で表 現さ れ る共通の 観 念は ヨー
ロ ッ パ だけ で は な く,
人類
の普
遍 的な観 念で あ る。自
然 も人 間 も霊 的 なもの によ っ て息づ い て い るとするア ニ ミズ ム には,
自然 万 物へ の崇 拝 す ら存 在す る。 例えば 「動 物 崇 拝」 「植 物崇拝
」 「鉱物 崇 拝」 「岩
石崇拝
」 「天 然 崇 拝」 等で あ る。 オー
ル タ ナ テ ィ ブ 運動に は,
こ うし た ギ リシ ア の昔に人々 が抱い て いた自然 観を共 有 するグルー
プ も存 在す る。 今 まで み てき たように,
「西 洋 思 想一
自 然 支 配」説は 差 異 性 を もっ た西 洋 を一
元等質
視してい る と同時
に これ と対を な して提出
さ れ る 「東
洋思 想=自
然 との 調 和」説は,
現 代の自 然 環 境の汚 染と破 壊を説 明で きない 。 更に は史 上,
東 洋 諸 国 間の戦 争 と殺 戮 を も解 釈 で き ない。
またこ の 説 は.
人 間 と 自然 との連 続 性,
水 平 化 を 中心の原 理にもつ 汎 神 論や.
動植
物との共 生 を説 く 人 々 を も一
括して 西 欧思想とする 無 理 を お か して い る。とこ ろで人間に 自 然 支配 を意
識
的に可能
に さ せ たの は た か だ か16
世 紀以来で あ る。 近世自
然 科 学の発 達 を 背 景に,
デ カル ト哲 学が,
「精 神 」 と 「肉 体 」 を 分 離 して以 来,
中 世 的 世 界 観 は くずれ始
め た。自
然万物に霊的
なもの を 認 め,自
然は霊的
な もの の力に よっ て も動か さ れ る と い う世 界 観に立 ち むか っ たデカル トは,
自然 万 物か ら霊 的 な もの を と り去 り,
自 然 界 を 機 械 的 な体系
とし て,神
で も,
霊で もない 力学
の支
配す る世 界 と見な し た。一
方 霊 的なもの は人 間に のみ 備 わ る もの と した。 自然 は脱 霊 魂 化 され,
自 然 科 学の 力で平 等に支 配 さ れ る量 的 存 在 と さ れ た。 自 然が神
や霊の力によ らず,
科 学と し ての,
そ れ自 身の 因 果 法 則に従っ て い ると見な す か らこ そ,
人 間はこ の法 則を利用 し,
自然を支 配 するこ と が可 能にな る。 ま さにベー
コ ン の言 う 「知は 力な り 」に基い て,
人 間に よ る自 然 支 配は急 速に度 を 深めた。 デ カ ル トの 自 然の脱霊
魂 化,
物心分 離の 思 想それ 自身が近 世の 自 然 科 学の 発 達か ら生ま れ た。
そ して こ の 生 ま れた思 想 が,
更に 自然 科 学と技術
の発 達 を促 して い っ た。 「自 然の支 配」の直 接 的 推 進 力は歴 史 貫通 的には 自然 科 学の発 達で あ り,
個 別 歴 史 的には こ西ド イッ のオ
ー
ル タ ナテ ィ ヴ 運動試論一
概 観と関 連 年 表 7 れ を 利用 し た16
世 紀以降の 工 業 文 明で あ る。 こ う し た文明化を 思想が支え た と し て も そ れ は 「西洋
思想」で一
括 同 質 化で き る思 想では ない。 神 秘 主 義.
汎 神 論 はデカル ト以 前 も以降 も姿,
形 を 変 えて西 洋 思 想の 中に 出 現 してい る。万 物の 内 在 的 原理を 神に求め
,神
即 自 然を説い たス ピノ ザの 汎神論
は,
1656 年ユ ダヤ教 団か ら無 神論
の烙印
を押さ れ た。
だ が,
その汎神 論の系 譜は,
レ ッ シ ン グ.
ヘ ル ダー,
ゲー
テ,
ハ イ ネらに うけつ が れて い る。 自然が,
デカル ト流の 人 間にとっ ての 単な る客 観 的 対 象で は な く,
aq 「生 産 的 活 力 とその生 きい き とし た形 態 形 成」 を もち,
「根 源 的に生 産 的」 で あ る と把 え たの は ゲー
テ で あ り,
ル ドル フ・
シュ タイー
の人智 学である。 「世 界 霊 」にお い て,
ゲー
テ は次の よ うに言 う。 さて万 物 は 神のごと く大 胆に/ 自らを 越え て成り出で る。 /水
さ え,
実り な き水
さ え,青
ずみ,
ち りぢ りの塵 も ま た活
く。 次に,
キ リス ト教 外で は,
キ リス ト教 を 人 間 と 自然 を 切り離す思 想 と判 断 し たルー
ト ヴ ィ ヒ ・ ア ン ドレア ス・
フ ォ イ エ ル バ ッ ハ は 原始宗教
を評 価 し た。 その 理由は、
原 始 宗 教の 中に 人 間と自
然との結
びつ き を 見 た か らで あ る。 人 間 自身
が 自 然 万 物の一
員であると するフ ォ イ エ ル 征臼 バ ッ ハ につ づい て,
カー
ル・
マ ル クス は,
な るほど,
「自然 に働 きか けてそ れを 変 化 さ せ る 」 qη 人 間の自
然 「支配 」 を説
い た が,
し か し無 前提で は な く,
人間自
身も一
っ の 「自 然 力 」であ る ことを 措 定と した上で の対 自然 観で あっ た。 自然 と人 間の相 互 作 用.
す な わ ち人 間が自
然 へ の 働 きか け に よっ て,
同 時に自
分の 自然
を変
えて い く,
とするマ ル クス の視 座は少 くとも働 きか け るべ き 自然が健 全である こ と を 前 提とす る。マ ル クス をも含めて西 洋 思 想 として
一
括 し,
これ す な わ ち自然 支配で あ る と断罪 す る 比較
文 化 論の イ デ オ ロー
グ た ちの 所 説は,
結 局の ところ,東
洋か西 洋か,
のあれ か これ か をのみ論 じ,
その共
通 性を論理化 しない。 そ も そ も 「西 洋 」 な る諸 思 想 を たっ た一
語で 「戦 闘 性」 と 断 定す るところ に無理 がある。
同 時に 日本
を,
「甘 え 」 「タ テ」 「柔構
造 」 な ど と わずか一
語で 定 義 する こと も論理の 粗 雑 性を増 すであ ろ う。オ
ー
ル タ ナ テ ィ ヴ運 動は,
西 洋 思 想に も東 洋思想に も共通 に見ら れ る 人 間 と自然との有機
的 連関,
共 生,
人 間と人 聞との共 生 をめ ざ して い る。 例 え ば,
古 代の 原 始 宗 教の 中に人 間の 共 同 性 を 見いだ し,
自然 との 調 和 を模 索す るグルー
プ。 生 態系
を宇宙
次元 に まで拡 大 し.
人 間とこ れ との一
体化
を 理論 化 するR
.
シュ
タ イナー
の グルー
プ。 核に よ る人 間 と全 自然 系へ の 破 壊 を 生活 基 盤で食いと め.
新た に共 生 を 創り だ そ う と す るグルー
プ。自
然 を抑
圧 し ない生 き 方が,
オー
ル タナテ ィ ヴ 運動
の共通項であ る。
非 暴 力
オ
ー
ル タ ナテ ィ ヴ 運動の非 暴力性
は第一
に,
可視
的・
物理的 暴 力へ の対案
で あ る と共に,
第二 に不 可 視の暴 力 性へ の対 案で も ある。 前 者 は反 核 運 動に象 徴されるよ うに,
軍 事 的 手 段を用い た平 和と安全の 保 障に 反 対 する非 暴 力 不 服 従運動に貫徹
さ れて い る。 運動は, こ う した核,
通 常 双 方の兵 器 体 系という見える暴 力と.
同 時に,
人 間を抑 圧する一
切の官 僚 機 構,
支配・
統 治 機 構,
更に は外 国 人,
障害
者,
女 性へ の 差 別とい う,
即可視
的に は な ら ない が,
厳 然 と して存 在す る暴 力へ の対 案 実 現 をめ ざ して い る 。 前 者 も後 者 も社 会の徹 底 した民 主 化と不可分
で あ る。 (4
) 脱 産 業 社 会 化 産 業 社 会の もつ 価 値 観へ の対 案と して運 動 は 多 様 な 試 行を展 開 して い る。 既成 文壇 がもつ 創 作の私 的 作 業 性へ の対 案と して1970
年に発 足 し た労 働 者 文学
動 体 「作 業 集 団・
労 働 世 界の文 学 」。 こ こ で は文 学の市 場 化・
商 品 化に抗 して,
生 産一
媒 介一
受 容を視 野 に入れ8
田 村 光 彰 つ つ,
共 同 制 作を試みてい る。 異っ た体 験を もっ た労 働 者と知 識 人・
学 生が共 同 作業
によ っ て,
商 品 化 さ れな けれ ば 受 容 者の手に届か ない現 実へ の対 案と して,
受 容 者 との直 接 コ ミュ ニ ケー
シ ョ ン を もっ朗
読 会が重視
さ れ てい る。 価 値 合 理 性 を 自 由 時 間にお き,
上 役の いない企業 作 りが 全 国 各 地に広が っ て い る。 こうし た オー
ル タ ナ テ ィ ヴ 企業は 共同 経 営,
自主管理 が原 則であ る。 シュ タ イ ナー
学 校に見 られる ように,
規 格 化 され ない学 校,
点 取 り競 争に追わ れ ない学 校 も オー
ル タ ナ テ ィ ヴ な運 動の一
環である。 フ ェ ミ ズム70
年 代の フ ェ ミズム 運 動の世 界 的 潮 流は西 独に も大 きな影 響 を 与え た。
階 級一
元 論に陥 入っ て しま う伝 統 的 社 会 主 義 婦 人 論に代っ て,
男 性一
女 性 間の構 造に もメス を 入 れ,
家 父 長 制 を も同 時に崩 してい く運 動 が 展 開 されて い る。 女 性の夜 間の社 会 的・
文 化的 ・
政 治 的 生 活 を 行い や す くす る目 的 を もっ た,
女 性 用 夜 間 割 引タ ク シー
を実 現 させ るグルー
プ。 女 性の 自己決 定 権の拡 大 を 視 野ic
入 れ,
刑 法218
条を撤 廃 させ る運 動。 すべ て の 分 野で 男 女 同数化
を 目標
にするグルー
プ。 夫.
父 親 か らの 急 増 す る 虐 待 と暴 行か らのが れ る と同時
に,抑
圧の構 造 を 自 ら学んで い く場一
女 性の家の設 立 を 求め るグルー
プ。 学 校の成 績は全 国 平 均 する と女 子の 方がい い にも か か わ らず,
職業
教 育の場
が男
子よ りも少
ない現実
を変
えて い こうと す る グルー
プ。 人 間 との共 生 を,
男子間の み で は な く,
真に男 女に おい て実 現さ せ るこ とをめざす運 動は,
既 成の性 差 によ る分 業のパ ラダイム をこわ して い く。以
下
で は, これ まで述べ て きた オー
ル タ ナ テ ィ ヴ運 動 関 係の 年 表 を 作 成する 。 私は,
作 成に あ たっ て 次のような困難
につ き あ た らざるをえ ない。
第一
に,
既述 し た よ う に,
も と も とこの 運 動が巨 大 な 組 織 や 世 間 周 知の運 動 形 態を とらず,分権
的,分散
的,
反ヒエ ラル ヒー
的で あ り,
国 家 的 視野を もっ た統一
運 動で はな く,
地 域 を 場 と して各 地が 自立 した集 合 体 を もつ の で,
そ の各々 の始
ま り と終
わ り が 見 え に くい 。 運動の 実 体が な くて も,
組 織 だけを 残す とい う よ う な 組 織 推 持 を 自 己 目 的 化す ることは せず ,
既成マ ス メデ ィ アが とらええ ない,
外 縁 部で運 動 が 展 開さ れ る こと も多いた め,
主 と して既成
マ ス メデ ィ アに頼ら ざ る を え ない私に とっ て,情報
の 獲 得の限 界につ き あ たらざるをえ ない 。 第二 に,
私の力 量 が かべ とな っ て い る。 すべ ての分 野 に精 通 するこ と はで きない の で,私
の視
野と関
心 か ら は,
ザル か らもれ出
る ような部 分
が多
い 。 こ の 二点 は,
こ の拙 稿の 限 界を成して いる。 そ して、
これ は、 “ 私の研 究” とい う研 究の個的 性 格に大 部 分 を負っ てい ると思 う。 こ の場 を か りて 、 広 く、 共 同 研 究 をよび かけ たいと 思います。関 連
年
表
西 ド イツの オ
ー
ル タ ナ テ ィ ヴ 運動 試 論一
概 観と関 連 年 表9
6
「作 業 集 団・
労 働 世 界の文 学」第一
回 全 国 代 議 員 大 会,
「芸術と しての 文学」では な く 「現 実と して の文 学 」(ギュ ンター・
ヴ ァ ル ラフ)8 .
12 プラン ト西 独 首 相とコ ス イギン ソ連 首 相に よ り西 独・
ソ連 条 約の 調印 12.
7 西 独・
ポー
ラン ド両 首 相 間で 「関係正常化 の基 礎に関する条約 」に調 印1971
9
米 英 仏ソ によ る 「ベ ル リン四 大国協定」仮 調 印 (72.
6.
3本 調 印 )19721
.
28 職業禁止令4
ヴュ エ ル ガー
ゼ ンの プロ シャ電 力,
200
トン ンの冷却 材 喪 失 事 故 8.
26 米.
NOW に よ る女 性 解 放の た めの全 国ス ト9 .
5 椿新潟 大教 授,
ス モ ンの原 因に , キノ ホル ム関 係あり と発 表 11 ス ナ ッ プ (ポロ ニ ウム210,
出 力500W )を 積んで月にむ かっ た米ア ポ ロ 13号,
故 障で 大 気 圏 再 突入,
放 射能電 池、
トンガ付 近の 海 中に放置 12.
14 ポー
ラ ン ド,
食 糧,
生活品 値 上に反 対 する 暴 動 発 生.
各地に波 及2
米,
男 女 平 等 を うたう憲 法修正,
上院可 決 4 イ タ リア共 産 党内に イル ・ マ ニ フェ
ス トグル
ー
プ 成 立,
ユ ー ロ コ ミュ ニ ズム 路線発 展 5.
9EC ,
西 独 マ ル ク の変 動 為 替 相 場制 採用 認 め る 6.
30
神通 川 流域の イ タ イ イタイ病 第一
次 訴 訟判 決 公判に て,
富 山 地裁 「カ ド ミ ウムが主 因 」 と判 決8
ス イス に婦人 参政権 9.
29 阿 賀 野 川 水 銀 中毒訴 訟 に て新 潟 地 裁,
原 告 に勝 訴 判 決10.
25 国 連 総 会,
逆 重 要 事 項 指 定決議案を否 決 し 「中国招 請,
台 湾 追 放 」 提 案 可 決12.
1810
ケ国蔵 相会 議,
金 1オンス=38
ドル で合 意 (ス ミソ ニ ア ン体 制 ) 3.
22 米.
男 女の差 別 を 禁 じる憲 法 修 正 第27
条 (ERA ) 上 院通 過 4.
10 生 物 兵 器 禁止 条約47
ケ国調 印6 .5
初の国 連 人 間 環 境 会 議,
ス トッ クホル ム で 開 会 7.
24 四 日市 公 害 訴 訟で津 地 裁t6 社に8 ,
800
万 円の支 払 を 命 ずる 8.
16 森 永ヒ素 ミル ク事 件で森 永 乳業の責 任 を認 め,
未確 認児に も救 済 補 償を認め る10
田 村 光 彰9
プラン ト首 相,
連邦 議会解 散 11.
8
東 ドイッ との 間に 「基 本条 約」 ま と ま る11.9
連 邦 議 会 選挙1973
6 .
15
西独,
国連へ の加盟申請6
ブイッ シ ャー
文庫,
作業集 団叢 書を 刊行 12.
11 プラ ン ト首 相とシュ トロ ラガル チ ェ コ 首相 国 交正常 化 条 約に調 印 (プ ラハ ) 1974 2 「作 業 集 団・
労 働 世 界の 文 学 」 準 備 員 も含 め270名に増 大,
35の作業場4 .5
連 邦 参 議 院,
東 独との常 駐 外 交 施 設 交 換 法 案を可 決 4.
29 ギョー
ム ス パ イ事 件,
東 独との外 交 使 節 交 換を無 期凍結 5.
6
プラ ン ト首 相, 個 人 秘 書の ス パ イ事 件で 引 責 辞 任 9。
12 ワル シ ャ ワ条 約機構軍,5
ケ国が10万人,
チェ
コ 領内で大規模演 習9 .
14NATO
軍,
北大西洋全域 大演 習9 .
29
日本・
中 国,
日中共 同 声 明に謁 印,
外 交 関 係樹立 1.
27
ベ トナム和 平パ リ協 定 調 印 3.
11EC 閣 僚 蔵 相 会 議 開 催, マ ル ク3% 切 り上 げ 3.
29 南ベ トナム,
米軍撤退 完了6 .
20
米ソ首脳 会談 継 続,SALT
五の 基 本 原 則 に調 印 8.
4
米 連 邦 最 高 裁ダグラス判 事,
カンボ ジァ爆撃 即事停 止 要 請の提 案 を 認め
,
政 府に爆 撃 中 止 命 令8 .
31
ソ連 自 由 派 知 識 人ヤキー
ル,
ク ラシ ン両 人 ic・3
年の禁 固 刑の求 刑9 .
11
チ リ で軍 事クー
デ ター,
ア ジェ ンデ人 民 連 合政 権 崩壊。 こ の事件を きっ か け に伊 共 産 党 は 「歴史的妥 協」 に む か う。
9 .
13
第28
回 国連 総会,
東西両独の加 盟 承 認 12.
28 パ リに て 「収 容 所 列 島 」(ソル ジ ェ ニー
ツ ィ ン)公 刊。1 .3
欧 州 通 貨 暴 落 1,
26 べ 平 連 解 散 集 会 (東 京)「危機の中での 出 直 し」2
ユー
ゴ で新憲 法 公 布,
自 主 管理社会 制 度の 発 展 2.
11 エ ス トニ ア の ド イッ 系 市 民,
モ ス クワ にて 西独 移住 拒 否の抗議デモ2
ユ3 ソル ジェ ニー
ッ ィ ン, 市 民 権 剥 奪, ソ連 よ り国 外 追 放,
西 独 入 り西 ドイツ の オ
ー
ル タ ナ テ ィヴ運 動 試 論一
概 観と関 連 年表11
5.
16 連 邦 議 会に てヘ ル ムー
ト・
シュ ミッ ト社民 党副 党首を首 相に選 出9 .
19 西 独・
フィ ンラン ド国 交正常化1975
2
3 ヴュー
ルの 原 発 建 設 予 定 地の 占 拠,
仏,
ス イス 国境の 人々 と共に。
局 地 的,
バ ラバ ラ だっ た市 民運動が全国 規模の エ コ ロ ジー
運 動に成 長 連 邦 憲 法 裁判所は 「現行の年 金 制 度 上の 男 女の 異な る取 扱いは違 憲である 」と して年 金に関 す る 男女 平 等 化判決 19761 ネッ ト ワー
ク,
西ベ ル リンに誕生,
オー
ル タナ ティ ヴ運 動の財 政 的 基 盤を担 う 6 刑 法 第218
条 発効5 .
18 イン ド地下核 実 験6 .
17
仏ム ル ロ ア環 礁で核 実 験,
オニ ス ト ラ リア , ニユー
ジー
ラン ド抗 議6 .
18NATO
の閣僚理事 会 開 催,
厂大 西 洋 宣 言 」 に 調印 7.
20 トル コ 軍6,
000
人,
陸 海 空 か らキ プ ロ ス に 上 陸,
ギ リシア全土に総動員 令8 .4
日本の プロ テス タン ト・
カ トリッ ク両キ リ ス ト教 界合同に よ る 日韓キ リス ト者 合 同 会 議 発 是 8.
8 ニ クソ ン大 統 領,
ウォー
ター
ゲー
トもみ消 し事件で辞任 10.
20 スイス 国 民 投票,
外国 人労 働者 締めだ しの 憲 法 改 正 否 決,
女 性 初 投 票12.
14
国 連 総 会,
「侵 略の定 義 」を表決ぬ きの総意 で採 決 1 仏 で 妊娠 中 絶 自 由 化 法 案 成 立 2.
26
トル コ「
,NATO
演習参加拒否 通 告 4、
30
ベ トナム解 放 軍サ イゴン解放6.
19〜7.
2 メ キ シ コ で国 際 婦 人 年 世 界会議,
参加133
ケ国 ;41
団 体9 .4
東海村 核 燃 料 再 処理 工場の ウ ラン試 験 始 ま.
る。 以降汚染事故続 出 12 英,
男 女 平 等 賃 金 法,
性 差 別 禁止法 施 行 2.
4 米上院 外 交委員会多国籍 企 業 小 委 員 会でロ ッ キー
ド事 件 発 覚 4.
5 北 京に て 天 安 門事件 4,
25 ポル トガル に社 会 党 政 権 誕生8 .
6〜7
ペー
トラ・
ケ リー
日本 講 演 旅 行12
田 村 光 彰 11 プロ ク ドル フ原 発 反対デモ。
運 動が世 界の 注 目 を 集め はじめ る12
12 12 プロ ク ドル フの原 発,
行 政 裁 判 所に より 「 建 設の一
時 停 止」判 決。 「緑の リス ト・
環 境 保 護 」,
ハー
メル ン市 と ヒ ル デス ハ イム 市に初め て立 候 補 ペー
トラ・
ケ リー
,
ヴュー
ル の南の ザス バ ッ ハ の市 民 大 学 「ヴュー
ルの森」に招かれ る 19772
33
3 3 ブロ ッ ク ドル フ に 3万 人,
イェ ッ ホー
市に2
万人 が反 原発集 会 シ ュ レ ス ヴィ ヒ=
ホル シュ タイン州の シ ュ タ イ ンブル ク郡会 選挙に てr
緑の リス ト」 初 議 席 ヴュー
ル 原 発につ いて,
フ ライ ブル グの行 政 裁 判 所,
着工差し と め判 決 グロー
ンデ反 原 発 闘 争,
市民 層 か ら拒否さ れる 社 民 党 青 年 部の青年 社会主義者同 盟JUSO
新 委員 長に最 左 派 (「シュ タモ カ ッ プ 」)ク ラ ウス・
ウベ・
ベ ネッ タ を選 出4 .
27
社民 党K ・
ベ ネッ タの党 員 活 動 停 止 処 分 5 ニー
ダー
ザ クセ ン環境党 結 成8 .
22 『シュ
ピー
ゲル 』 誌8月22日号にル ドル フ・
バー
ロ 論文 「党 と官 僚 」(後に論 文 もふ くめてDie
Alternative,
Europ 翫 sche9
,
9 毛 沢 東 死10.
12 中 国 四 人 組 事 件11.
4r11 月4日号ニ ュー
サ イエ ン テ ィ ス ト』lc
て,
ジョー
レ ス・
メ ドヴェー
ジェ フ,
初め て 「ウ ラルの核 惨 事 」・
に ふ れる 12.
150PEC 総 会 (ドー
ハ ) 原 油の 二重 価 格 決 定1
チェ
コ 自 由 派 知 識 人 ら 「憲章77」 発表 7.
28
核 問 題7
ケ国協議 グルー
プ,
国 際 核 燃 料サ イ クル 評 価計画をス ター
ト 8.
22 ル ドル フ・
バー
ロ,
東独に て逮捕 (一
年後,
8
年の 自由 刊 ) 8.
29 国 連 砂 漠 化防止会 議 (ナ イロ ビ)Verlagsanstalt と して出 版 )が掲 載 され る。
R .
バー
ロ は東 独政府に直ちに逮 捕 9.
5 シュ
ラ イ ヤー
事件9.
17・
−
19 社民党連邦党規 約 委 員 会,
クラ ウス・
ウベ・
ベ ネッ タを 除 名 10 ヒ、
ル デ ス ハ イ ム郡 議 会選挙 「環境保 護・
緑 の リス ト」1.
2% 10.
18
シ ュ タムハ イム刑 務所 (シュ トゥ ッ トガル ト)に て赤 軍 派三人が 「集 団自殺」11
シュ ミッ ト首 相,NATO
の軍 備 増 強 を要 求西 ドイツ のオ