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静 岡赤 十 字 病 院   脳 神 経 外 科

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VOL 24 N0 1 2004 静岡赤十字病院研究報

素 正 田 原 山 笠

静 岡赤 十 字 病 院   脳 神 経 外 科

1)  同    放 射 線 科

2)  同    検 査 部

要 旨 :我 々 は ,手 術 と術後放射線療 法 に よ り ,三 年間再発 を認 めず ,良 好 な経過 をた どって い る頭蓋 内 Malignant peripheral nerve sheath tumorの 1例 を経験 したので報告す る。

症例 は 33歳 女性 ,3歳 時 に類 もや もや病 及 び von Reckhnghausen病 の診断 を受 け ,外 来 で 経過観察 されていた。 2000年 8月 MRIに て,右 中頭蓋底 に側頭下官の骨破壊 を伴 う,径 約 5

cmの 境界 明瞭 な腫瘍 を認 めた。そのた め同年 8月 18日 右前頭側頭 開頭腫瘍摘 出術 を施行 し た。病理診 断 は Malignant peripheral nerve sheath tumorで あった。2001年 4月 6口 局所 再発 に対 し腫瘍摘 出術 (亜 全摘 )を 施行 した .残 存腫瘍 には拡大局所 60 Gyで 放射線 治療 を 施行 した。腫瘍 は消失 し ,約 3年 間再発 な く現在 まで経過良好 であ る。Malignant penpheral nerve sheath tumorが 頭蓋 内に発生す る ことは非常 に稀 である .自 験例 を含 めた過去 の報告 例 24例 か ら放射線 治療 の有効性 を検討 した。

Key words:悪 性末槍神経輸腫瘍 ,放 射線 治療 ,レ ック リングハ ウゼ ン病

I   は じ 2わ に

Malignant schwannoma(悪 性神経鞘腫 )は 従来 か らいわれ て きた Schwann細 胞 の ほか に ,近 年 は

神経周膜起源 とす る報告 も見 られ るようになった。

末槍神経鞘構成細胞 の悪性腫瘍性増殖 を示 した腫瘍 との概 念 か ら ,名 称 も Malignant schwannoma(悪 性ネ 申経輪 腫 )か Malignant Peripheral Nerve Sheath TumOr(MPNST:悪 性 末槍神経輪腫瘍 )ヘ

と変更 されつつ ある 1)。 MPNSTは von Recklingh ausen病 と合併 す る こ とが多 く ,合 併率 は 40〜 52%

との幸長告が ある 2〜 り。今回我々は ,von Recklingh ausen病 に合併 し ,三 叉神経 か ら発症 した と考 え ら れ る頭蓋 内 MPNSTの 一例 を経験 した。再発後 に手 術 と放射線 治療 を施行 し腫瘍 の消失 をみ とめ ,そ

後 3年 の良好 な経過 をた どってい る稀 な症例 を経験 したので文献 的考察 を加 えて報告 す る。

放 射 線 治療 が著効 した と考 え られ る頭 蓋 内 Malignant Peripheral Nerve Sheath Tumo r A I ffil

狩 野 忠 滋   安 心 院 康 彦

篠 田   純   1)

行 男 2)

Ⅱ .症 例 提 示 患者 :33歳   女性 主訴 :頭 痛

現病歴 :3歳 時 よ り von Reckhnghausen病 及 び類 もや もや病 と診 断 され外来 で保存 的 に経過観察 中で あった .2000年 7月 ,慢 性 の頭痛 が次第 に増強 して きたた め頭部 Magneuc Resonance lmaging(以 下 MRI)を 施行 した .頭 部 MRIに て右 中頭蓋底 に巨大 な腫瘍 を認 め , 8月 10日 手術 目的で入院 となった。

既往歴 :上 記以外 は特記すべ きことな し。

家 族 歴 :両 親 に von Recklinghausenり 丙を み とめ ず。

入院時現症 :意 識 レベ ル は Glasgow Coma Scale

E4ヽ r5N16, Wechsler Adult lntenigence Scale‐

Revised IQ65,右 頼部 の腫脹 と三叉神経第 1枝 か ら 第 3枝 領域 の知覚低下 を認 めた。明か な運動麻痺 は 認 めなか った。右側頭部 に頭痛 を認 めた。全身 にカ

フェオ レ班 と神経線維腫 を認 めた。

‑117‑

(2)

血 液 生 化 学 的検 査 所 見 :HemOg10bin 10 9 g/dlと 軽度 の貧血 を認 めた以外 には特記 すべ き所見 は認 め なか った。

神 経放射線 学 的所 見 :頭 部 MRIに て右 中頭蓋底 に

Tl強 調画像 で low intendty,T2強 調画像 で high intensity, Gadrinium diethylene  triamine pentaacetic acid,ガ ドリニ ウムで不均一 に造影効 果

を認 め る,4.5× 5× 5 cmの 境界 明瞭 な腫瘍 を認 め た。一部 ,側 頭下宿 の骨破壊 を伴 っていた (図 1).

臨床経過

:

2000年 8月 18日 ,右 前頭側頭 開頭 に よる腫瘍 摘 出 術 を施行 した .腫 瘍 は硬膜 外 に存在 し ,硬 膜 を外層 と内層 に分 け外層 とともに腫瘍 を全摘 した。本例 で は類 モヤモヤ病 を合併 してお り両側 の内頸動脈 は閉 塞 していた ,脳 実質 への血流 を維持 す るために浅側 頭動脈 ―中硬膜 動脈吻合術 (STA‐ MMA吻 合術 )お

よび encephalo‐ myo‐ synangiosis(EMS)も 同時 に 施行 した。術後 に新 た な脳 虚血症状 の出現 は認 めな か った。 MRIで は明 らか な残 存 腫瘍 は認 め な か っ た。病理組織診 で は ,細 胞 密度 が高 く ,腫 瘍細胞 は

静岡赤十字病院研究報 紡錘形 で胞体 に乏 し く ,schwann細 胞 に特徴 の波状 の蛇行 ,細 長 い核 を認 めた。免疫染色で は少数 の細 胞 が S100蛋 白に陽性 で あった。 MIBlは 15.4%と 悪性度 の高 い腫瘍 で あ るこ とが示唆 された。以上 の 所見 か ら MPNSTと 診 断 した (図 2).術 後経過良 好 にて 2000年 9月 10日 に退院 となった。

そ の後 経 過 良 好 で あった が 2001年 3月 29日 の

MRIに て右 中頭蓋底 か ら翼 口蓋 官 にか けて造 影効 果 を示 す腫瘤 をみ とめ再発 と診 断 した (図 3)。

2001年 4月 6日 局所再 発 に対 し腫瘍摘 出術 を施 行 した .腫 瘍 は周囲組織 に浸潤 してお り全摘 出 は困 難 であった。再手術 時 の病理所見 は初 回手術 時 と比 べ細胞密度が さらに高 くなっていた ものの ,全 体 の 組織像 は変化 な く MPNSTの 再発 と診 断 した.術後 4月 24日 か ら残存腫瘍 (図 4)に 対 して拡 大局 所 tota1 60Gyに て放射線治療 を施行 した。

放射線 治療 に よ り腫瘍 は消失 し ,以 後 3年 間 にわ た り再 発 な く経 過 良好 で あ る。 図 5に 最 新 の MRI

を示 した。

a   b

図 1  術前 MRl(2000年 7月 8日 施行 )

:Tl強 調画像水平断 (ガ ドリニウムによる造影 ),

:Tl強 調画像冠状断 (ガ ドリニウムによる造影 ),右 中頭蓋官に 45× 5× 5cmの 境界明瞭な腫

瘍 を認めた。

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VOL 24 N0 1 2004 静 岡赤十字病院研究報

図 2  病理組織学的所見

a:HE染 色 100倍 ,b:HE染 400倍 ,C:免 疫染色 S‑100蛋 自 100倍 ,di免 疫染色MIB1 400 倍 ,細 胞密度が高 く紡錘形の細胞が schwann細 胞に特徴の波上の蛇行 を示 している

.

図 3  再発時 MRl(2001年 3月 29日 施行 )

Tl強 調画像水平断 (ガ ドリニウムによる造影 ),

Tl強 調画像冠状断 (ガ ドリニウムによる造影 ),右 中頭蓋底か ら翼 口蓋宮に造影効果 を示す腫 瘍 をみ とめた。 (矢 印に示す )

a   b

― ‑119‑

(4)

T 丁 a   b

図 4  再手術後 MRl(2001年 5月 2

1強 調画像水平断 (ガ ドリニウムによる造影 ),

1強 調画像冠状断 (ガ ドリニウムによる造影 ),

日施行 )

矢印に残存腫瘍を示す。

図 5  放射線治療後 3年 経過 MRI(2004年 9月 9日 施行 )

a:Tl強 調画像水平断 (ガ ドリニウムによる造影 ),

b:Tl強 調画像冠状断 (ガ ドリニウムによる造影 ),腫 瘍 は消失 し再発所見 は認めない。

(5)

author,year 19e location,origin lumor removal

radiotherapy outcome

Cune● ・ 1952 M に ■■ │■ lang轟 。 n ,art● : 』 Ivё 13 ■

Kull11 983 一 RtiCPal感 1苺 │ n● 臨 1● │●

=│ ″麟 11

L納 :19̀31

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﹂ 一

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RtiCa erim‐ ol.qliO● │ 甚た緩

│ ltumoto,19901 Rt.CI:■ dll" 由劇

ta13Mll

IDae Hbe Han,19921 :47 F RtiCPlat101籠 lotallll Jll● 11

IKawagり chi,19901 IM L● 軸 晨alぉ ranteniLt.V 轟 bt薇 議 │ まё d

Dinakar,1971 M Lt.Gasserian ganglion lartial perfomed attve 2M

Hedeman,1978 Rt.Gasserian qanqlion 。

│。

psy attve 1 4M Hedernan,1978 Rt.Gasserian qanolion ;ubtotal 51 75Gy alive 1 8M

Karmody,.1979 Rt V2,3 Dartial 60Gy died l l M

Liwnic2,1979 Rt V3 total 36Gy died 4Y

Lewy, I 983 M Rt.Gasserian qanqlion )artial a‖ ve 10M

Robertson,1983 M Rt V2 total :erfomed after 2nd ope died 9Y

Maroun, I 986 F Lt′ V2 olopsy 30Gv al″ e

Stefanko,1986 M intmcerebral total 50Gy died 9M

Atum、 1993 F Rt.iuqular foramen し otal 50Gy died 3Y

MFak,1994 M LI.CP angle lli total rerfomed atter Znd ope alive 4Y

Yamashiro,1994 F Lt V2 total 50Gy ahve SY

Miyamori,l997 F middle fossa,Rt V total 20Gy after 2nd ope dled 7M

Akimoto,2000 F midd:e fossa,Lt,V total died 1 6M

Ueda,2004 M Lt V3 subtotal died 1 0M

Present case F middle fossa,Rt V subtotai 60Gy after 2nd ope alive 3Y

VOL 24 N0 1 2004 静岡赤十字病院研究報

Ⅲ .考    

MPNSTは 5年 生 存 率 が 34%と 報 告 され て お り 4)予 後不良 な疾患 であ る。 MPNSTは 通常,坐 骨神 経 ,上 腕神経 ,お よび脊髄 神経 な どの深部神経 か ら 発生 しり ,脳 神経 由来 の頭蓋 内 MPNSTは きわ めて 稀 であ る。我 々 の調 べ えた限 りで は頭蓋 内 MPNST

は自験例 を含 め 24例 の報告 のみであ る 5〜 .

24例 を表 1に ま とめた。平均年齢 は 46歳 ,男 女比 は 17:8で 男性 に多 い傾 向がみ られた。 MPNST全

体 で は von Recklinghausen病 との合併 は予後不 良 因子 とされ てい るが4),頭 蓋内 MPNSTに おいて は その傾 向 はあ きらかで はなか った。腫瘍 の好発部位 は第 V脳 神経,第 Ⅵ‖ 脳神経 で あ る .」 ugular fOramen に腫瘍 が存在 し第Ⅸ脳神経 ,第 X脳 神経 由来 の腫瘍 と考 え られ る症例 も報告 されてい る 25)。 治療 は基本 的 に は周 囲組 織 も含 め た radical resecaonが 原 則 とされ る。術 後補助療法 は ,化 学療法 は効果が乏 し い とされ てい る 2)が ,̲方 で放射線 治療 をお こなっ てい る症例 は多 く見 られ ,24例 中 16例 に放射 線 治 療 がお こなわれていた。初 回手術 か ら 1年 以上 の生 存期間 を示 した例 を長期生存例 とす る と ,長 期生存 例 は放射線治療群 に多か った .し か し ,放 射線著効

表 1  頭蓋 内 MPNST 24例 の検討 VRNF=von Recklinghausen neurofibromatosis

例 は非常 に少 な く ,我 々の ほか には Hedemannら が 54 Gy照 射後 に症状 の消失 した 1例 を報告 す るのみ で あ り 10,画 像上 明 らか な腫瘍 の消失 を認 めていた の は ,我 々の報告例 ただ 1例 のみで あった。今 回の 検討 か ら放射線 治療 の奏功率 を算 出す るこ とはで き ないが ,少 な くとも放射線治療 を行 うことが予後 の 向上 に寄与 す る可能性 が あ る と考 え られた。

Ⅳ   結    語

今 回我 々 は,手術後 に再発 した頭蓋 内 MPNSTに

対 し放射線 治療 が著効 した 1例 を経験 したので報告 した。頭蓋 内 MPNSTは その症例数 自体 が非常 に少 ないた め ,放 射線治療 の有効性 を証 明す るの は困難 と考 え られ る。しか し ,頭 蓋 内 MPNSTは 予後 が悪 いた め ,手 術 にて根治が期待 で きない と予想 され る 症例 には積極 的 に放射線 治療 を推奨 すべ きで はない か と考 え られた。

文   

1)姥 山勇二 ,井 復和男 ,山 脇慎也 ほか。悪性神経 鞘腫 の臨床 .臨 整外 1995;30:929937

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38‑44

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VOL 24 N0 1 2004 静岡赤十字病院研究報

A case of Intracranial Malignant Peripheral Nerve Sheath

Tumor which showed Remarkable Response to Radiotherapy

Tadashige Kano, Yasuhiko Ajimi, Motoyuki Yamada, Jun Shinoda, Naoyuki Shigematu'), Masao Kasahara2)

Department of Neurosurgery, Shizuoka Red Cross Hospital

1) Department of Radiology, Shizuoka Red Cross Hospital 2 ) Department of Pathology, Shizuoka Red Cross Hospital

Abstract: We experienced a case of malignant peripheral nerve sheath tumor which have been presented three years of good course with operation and adjuvant radiother- apy after the tumor recurrence.

A 33 year-old female, who was identified von Recklinghausen's disease and similar Moyamoya disease at three years old, have been observed in outpatient clinic of our hospital. She complained of worse of chronic headache in Aug.2000. Magnetic resonance imaging revealed well demarcated tumor, about 5cm in diameter, located mainly in middle cranial fossa. Magnetic resonance imaging also showed bone destruction of infratemporal fossa. Tumor resection was performed via front-temporal craniotomy on Aug. 8. 2000. The histological diagnosis was malignant peripheral nerve sheath tumor.

Subtotal tumor resection was performed for the tumor recurrence on Apr. 6 2001.

Postoperatively, radiotherapy (60Gy) was given to residual tumor. Tumor was disappear- ed completely. She have been good condition for three years.

Intracranial malignant peripheral nerve sheath tumor is extremely rare. We studied 24 cases of malignant peripheral nerve sheath tumors including our case and examined effectiveness of radiotherapy.

Key words: malignant peripheral nerve sheath tumor, von Recklinghausen's disease, radiotherapy

連絡先 :狩 野 忠滋 :静 岡赤十字病院   脳神経外科

〒 4200853  静 岡市追手 町 82 TEL(054)2544311

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図 2  病理組織学的所見

参照

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