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古書店のお茶

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Academic year: 2021

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熊本大学学術リポジトリ

古書店のお茶

著者 中村, 青史

雑誌名 東光原 : 熊本大学附属図書館報 = Kumamoto

University Library bulletin

巻 2

ページ 2‑2

発行年 1992‑06

URL http://hdl.handle.net/2298/10091

(2)

東光原

古書店のお茶

中村青史

ている。随筆集一 古書巡礼・の中に「売らな い本」もはいっている。内村鑑三の研究家で

もあるが,彼はよく世話の届く人である。東 大の明治新聞雑誌文庫の柳生四郎氏を紹介し てくれたのも彼である。新刊本でも,地方出 版のものや,小さな出版社のものは,一般の 新本屋では入手しにくい。品川さんは,そん な本を持っていて分けてくれる。鎧茶をいた だきながら,昨今の古書にまつわる話や,研 究者の動向など,耳学問ができるのもまたあ

りがたい。

まだ三省堂の漢和辞典編署・作者長沢規矩也 先生がお元気の頃だから,これは随分と古い 話だが,和服姿の先生の鞄持ちならぬ風呂敷 包み持ちで,神田の古本屋巡りをしていたこ ろを思い出す。お茶をいただいたのもその頃 がはじめてであったのだろう。そして,「君こ れ買っときなさい」と言われる。先生にとっ ては,安い掘り出しものなのだろうが,学生 の私にとっては大金であった。が,無理算段 して求めたものが,今でも手元に何冊かある。

その中で古い国会図書館の目録三冊がある。

最近の本の索引には役立たないが,明治。大 正期の本を探すときは重宝だった。国会図書 館の図書請求票を,ごっそり持ち帰っていて,

それに書き込んで行くので目録籍の前での時 間が節約できた。近ごろは請求様式が変って その便利さは失われたが,古びた図書目録はザ 恩師と古本屋の主人の顔を思い出させて,本 棚の隅に撲りをかぶって立っている。

(教育学部教授国文学)

古書籍収集にかけても第一人者であった徳 富蘇峰が,『骨董の説」(明40)という−文の 中で,「掘出しの特質は,意外にあり」「人間 の愉快は,意外より大鼓るはなし」と言って いる。その蘇峰が「熊本には本を売らない古 本屋がある」と言った,その古本屋に学生時 代の一年半ばかりを下宿した。それは「意外」

のことだったのかどうかは知らないが,とに かく現在な鎧古本屋さんとの付き合いは続い ており,熊本のみでなく東京でも懇意鞍古本 屋さんが数人いる。

古本屋と新本屋との大きな違いは,店頭で お茶が出るか出ないかにある。なじみの古本 屋さんでは,大ていお茶の馳走にあずかる。

買っても貢わ強くてもである。店の主人と潴 客は人間関係が濃厚である。のどかな雰囲気 がある。先のr本を売らない」というのは,

一冊しかない貴重な本は,特定の個人の所有 になってしまうと他の人が見れないというこ とである。だが,そんなことが現代のせちか らさから追放されるのかも知れない。昔風の 古本屋が年々なくなっていくのは寂しい。

「売らない本」と言えば,東京は本郷にペ リカン書房という古本屋がある。小さな間口 の目立た憩い店で,よく表のガラス戸が閉っ ている。このしやれた名前は,一時レストラ ンだったのをそのまふ使用しているからであ る。早稲田大学の竹盛天雄先生がそこを紹介 して下さったのは,もうかれこれ三十年昔に なろうとしている。ペリカン書房の主人の名 前は品川力という。本好きの者なら大てい知っ

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