秋田県平鹿町浅舞地区における生活組織と社会組織による空間構成
細 谷 直 子
キーワー ド:集落 生活組織 空間構成 生活空間
Ⅰ は じめに
人間 は、諸活動 を営む際に、生活す る地域 におい てあ らゆる組織 を形成す る
( Dol l f us
, 山本 。高橋,1 9 7 5 )
。本研究 は、秋 田県平鹿 町浅舞地区を対象地 域 と し (第 1図)、 どのよ うな生活組織 によ って生 活空間が構成 されているかを聞 き取 り調査 を中心 に 明 らかに し、抽 出された生活組織 の特徴 と相互関係 を考察す る。第
1
図 研究対象地域( 2 0 0 3 )
(秋田県平鹿町発行5万分 の1平鹿町管内図 (平成11年修 正測量) より作成)
秋 田県平鹿町は、平鹿盆地南部 の湧水帯 に位置す る。浅舞地区 は平鹿町西部 にあたる大字浅舞 のほぼ 中央 に位置 し、平鹿町の主要施設が集 中 して立地す る地域である。浅舞地区には
1 2
の単位集落 (部分集 落)が存在す る (第2
図)。浅舞地区は
、2 0 0 3
年4
月現在、人 口2 4 9 4
、世帯数7 5 8
、一世帯平均人員数3 . 2
で、各単位集落 の規模 に は大 きな差異が ある (第 1表)。浅舞地 区 は、集落 の周囲を水 田に囲 まれ、周辺 の集落 と地域的な距離 が大 きい 。第2図 秋 田県平鹿町浅舞地区における 単位集落の広が り
( 2 0 0 3
年9
月) (二聞 き取 り調査、及 び秋田県平鹿町発行5千分の1白地図 (昭和55年測量) より作成)第1表 秋 田県平鹿町浅舞地区における単位集落 の 構成
( 2 0 0 3 年 4 月)
単 位集落 世帯数(戸)構成員数(人 ‑世帯平均人員数(人) 農家数(戸) 農家世帯の割合(鶴)
伊勢堂 80 244 3.0 28 35.0
蒋沼 62 209 3.3 19 30.6
栄町 22 99 4.5 12 54.5
覚町上 45 147 3.2 13 28.8
覚町下 69 198 2.8 7 10.1
新町 79 277 3.5 29 30.9
仲町 60 205 3.4 22 36.6 六日町 66 220 3.3 36 54.5 宿立 46 134 2.9 16 34.7 本町 50 158 3.1 9 18.0 匹いソ関 76 238 3,1 19 25.0
田 中
103 367 3.5 36 34.9(聞 き取 り調査、及び平鹿町役場資料 より作成)
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Ⅱ
秋 田県平鹿町浅舞地区 にFSr,する生 活組織1.自治組織
自治組織 とは、 その地域 内における自治 ・余暇活 動等、多様 な機能 を有す る組織で、原則 と してその 地域 の全住民が所属す る。浅舞地 区には単位集落 を 基礎 とした町内会があ り、その下部組織が班である。
班組織 は隣接す る数世帯か ら構成 され る (第
3
図)。第
3
図 秋 田県平鹿町浅舞地区における 伊勢堂町内会 の班構成( 2 0 0 3
年7
月) (聞 き取 り調査、及 び秋 田県平鹿町発行5千分 の1白地図 (昭和55年測量) よ り作成)町内会が内包す る青年部、婦人部、老人会、子 ど も会、PTA等 の組織 は、 それぞれが専門的 に活動 をす る (第
4
図)。 これ ら組織間の結 びつ きの強弱 は、町内会 の活動性、住民 の注 目度が影響す る。浅舞地区では縁辺部 の町内会活動が盛んで、 中央 部 の町内会 は活動が比較的消極的である。 それぞれ の町内会 によ って活動 の差異がみ られ ることは特徴 的である。
町内会 は、行政機関 との関わ りが強 く、行政事務
第
4
図 秋 田県平鹿町浅舞地区における新町町内会 の内部組織( 2 0 0 3
年5
月)(聞 き取 り調査 より作成)
嘱託員、衛生事務嘱託員等 の町役場 の非常勤特別職 がそれぞれで選 出され る。単位集落 ごとに町内会が 形成 され ることも行政的な一面 であるといえ る。
2 .
広域 自治組織自治組織 と広域 自治組織 の相違点 は、 その最小組 織が単位集落を越 えて形成 され ることにあ る。浅舞 地区で これに該 当す る組織 は、常備消防 と しての消 防署 と非常備消防 と して地域住民か ら形成 され る消 防団である。消防署 は消防団の直轄上位組織 とは言 いがたいが、 目的を同 じくし、互 いが連携 しなが ら 活動す る。
浅舞地区を管轄す る消防署 は、横手平鹿広域市町 村圏組合消防の平鹿町分署 である。救急業務 や災害 時の出動 のみな らず、防災活動や消防団への技術指 導、地域住民対象 の救急救命講習会等 を開催す る。
平鹿 町の消防団 は
、 3
分 団1 9
部5 0 0
人体制 で編成 され る。大字浅舞 を第 1分団 と し、浅舞地区 は第1
部 に所属す る。部 は集落の範囲を越 え、複数 の集落よ り形成 され る
。2 0 0 3
年4
月 よ り、構成員 の高齢化 と減少 に伴 う活動 の非効率性か ら、 このよ うに組織 が再編成 された。 しか し、人員不足 は現在 も解消 さ れていない。3.
生産組織ここで取 り上 げる生産組織 とは、農作物 の生産 ・ 出荷等、他農業者 に関わ る組織 をい う。 ほとん どの 場合、農業協同組合 の下部組織 と して存在す る。
地区別支部 は、農家数 に関係 な く、単位集落 ごと に形成 され、浅舞地区には
1 2
の支部が存在す る。支 部 は1 0
人以下あるいは5 0
人 を超え る構成員か らな り、規模 に大 きな差異がある。
生産品 目別部会 は、名称通 り生産品 日ごとに形成 され る
。JA
秋 田ふ るさとの管轄全域 に広が りを も ち、農作物 によ って形成範囲が異 なる。各農作物 に‑ 3 8‑
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応 じた専門的な活動が中心で、 ひ とっの農家が複数 の生産品 目別部会 に所属す る場合がある。組織 の形 成範囲が広大であるため、地区別支部 を通 して各種 情報が伝達 され る。
これ らの生産組織 は同地域 に重複 して存在 し、構 成員 も複数 の生産組織 に加入 している。
浅舞地区には、上記以外の生産組織 と して、漬物 を生産 ・出荷 をす る企業がある。原料 となる農作物 は浅舞地区を中心 に大字浅舞 の農家か ら栽培契約分 を仕入れ る。減反 による余剰野菜 の利用 として考案 され、現在では約
2 4 0
軒 の農家が協力す る。第
5
図 秋 田県平鹿町浅舞地区における玄福寺 の 護持会構成員 の分布( 2 0 0 3
年1
1月) (聞 き取 り調査、及び秋田県平鹿町発行5千分 の1白地図 (昭和55年測量) よ り作成)Ⅲ 秋 田県平鹿町浅舞地区における社会組織
1
. 祭礼組織浅舞地区の南東部 には、浅舞八幡神社がある。当 地区の祭礼 は浅舞八幡神社祭典 と呼ばれ、毎年
9 月 1 5
日に行 われ る。住民 は単位集落 ごとに曳山を所有し (写真 1)、 お嚇子 と共 に浅舞地 区を一 日か けて 歩 き回 る。 この祭典 は本来、五穀豊穣 を祈願す る行
事である。 しか し、現在 その意味合 いはほとん ど失 われている。浅舞地区を歩 き回 る曳山は、浅舞八幡 神社 の敷地内を通 らないのである。 この ことは、 こ の祭典が、住民の余暇的行事 に変容 した ことを明 ら かに している。
写真
1
浅舞八幡神社祭典 の曳山( 2 0 0 3
年9 月 1 5
日)2 .
檀家組織浅舞地区には
2
つの寺院があ り、 それぞれ護持会 という檀家組織 を有す る。護持会 は、檀家数 に関係 な く単位集落 を基盤 に形成 され る。第5
図 はその一 例である。本家の信仰 に分家が添 うことはあって も、従来 の研究で注 目され る、本家一分家関係が檀家組 織 の形成 に影響す る事例 はみ られなか った。
3.
民間信仰組織この組織 は浅舞地区の高齢者数名か ら構成 され る。
組織単位で活動せず、個 々人が交代で地蔵堂 の清掃 等 を行 う。構成員が高齢者 のみであることか ら、 こ の伝統的組織が、若年層へ継承 されてはいない。
4.
余暇組織浅舞地区に存在す る余暇組織 は、小学生 を対象 と したスポーツ少年団 と、創友会 という老人会である。
スポーツ少年団 は、学区を基盤 とし、町単位で形成 される。創友会 は、単位集落 を基盤 と し、町単位で 形成 され る。 これ らは同世代間の交流 を目的に設立 された組織 である。他 の余暇組織 は、他 の生活組織 にその役割が組み込 まれていることが多 い。 自治組 織 の町内会 は、夏祭 りや地域間交流 とい った役割 を 有 する。同様 に、生産組織である地区別支部 に も含 まれる。余暇組織 は、単独で存在す ることが少ない。
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Ⅳ 諸組織の空間構成
各生活組織 の階層性 を第
6
図 と第7
図 に示 した。自治組織、広域 自治組織、生産組織 は多層 の階層 性 を もっ。 自治組織 は行政下部組織 の一面 もあ り、
町の範囲を越 えた県や国等 の機関 と関係す る。 ただ し、住民が直接関係す る地域 は町 までである。単位 集落でまとま り、内部が数世帯単位 に分かれて、住
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亡佃 奴的 広 域 自地組紙 生産7Aぬ CHL抽稚 拙豪放軸 足間借仰El的 余l鵬l繊
第
6 図
秋 田県平鹿町浅舞地区 における諸組織 の 階層性( 2 0 0 3
年1 2 月)
(聞 き取 り調査 よ り作成)
生産組推
地区別支那
第
7
図 秋 田県平鹿町浅舞特 における生活組織 の 空間構成( 2 0 0 3
年11月)(聞 き取 り調査 より作成) 注)品 目①〜③ は生産品 目別部会の異なる部会を示す。
民 の意思反映がで きる限 り可能 になる。
広域 自治組織 は、階層性が強いが、 自治組織同様、
住民 に関係す るのは町までである。人員不足が今後 の組織形成 に も影響す る。
生産組織 は、直接 的に生産 に関わ る組織 で、組織 が細か く部門化 し、 い くつ もの階層性がみ られ る。
このよ うな多層性 は、生産組織が住民 にとって重要 性が高 い生活組織 であることを示 している。浅舞地 区で は、生産組織か ら派生 した地場産業企業組織 も み られた。
祭礼組織、檀家組織、民間信仰組織 は、浅舞地区 内で完結 している。余暇組織 は、単独で存在す る組 織 は少 なか った。 いずれ も自治 ・生産関係 の生活組 織 と比較 して階層性が低 い。 これ らの生活組織 は、
日常生活か ら離れた、地縁的っなが りによ って形成 された存在である。
Ⅴ おわ リに
本研究 は、秋 田県平鹿町浅舞地区を対象地域 とし、
その地域的な生活組織 を抽 出 した。
浅舞地区に存在す る生活組織 のほとん どは単位集 落を基礎 と して構成 されていることが明 らかにな っ た。 この ことは、単位集落内の住民間の結 び付 きが 強 い ことを示す。 それが浅舞地 区に存在す る生活組 織 の空間構成 に反映 している。
本研究 の現地調査で は、平鹿町住民 の多 くの皆様 か ら非常 に暖かいご協力をいただいた。本稿 の制作 にあた っては、秋 田大学教育文化学部 の篠原秀一先 生か ら始終貴重 な ご指導 とご助言 を]創 、た。末筆 な が ら、以上 の方 々に深 く感謝致 します。
文 献
Do l l f us , 0. ( 1 9 7 0 ): Le s p a c ege o gr a p hi q ue , P. U. F.
, 山本正三 ・高橋伸夫訳( 1 9 7 5 )
『地理空間』 白水 社,1 2 0 p .
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