ボルト・ナット製図の教育効果*
一低学年の製図教育の改善について一
重 松 清**,戸井詔彦**,里吉昭宣**
(昭和55年4月28日受理)
The lnstructional Effects of the Bolt−Nut Drawing
一 On the Improvement of the Drawing Instruction for the Lower Classes 一
(Received April 28, 1980)
1 緒 言
工業高専の機械工学科における設計製図教育は,実践を 重視するという特質を考えるとき非常に重要である。ま た,大学をも含めた高等教育機関においても,常に古くて 新しい工学問題であるから,工業高専の設計製図教育を担 当する教官は,その教育効果を向上させるために教育方法 等の改善に努力を重ねているのが現状である。すなわち,
工業高専における設計製図の教育方法の研究組織の一つと して「西日本地区工業高専,図学・製図研究会」が昭和39 年度より開催されており,設計製図の教育効果を向上させ るため,設計製図とそれ以外の専門科目とを関連させた教 育方法の改善)〜3)も試みられている。
とくに,昭和52年度から実施された新教育課程に対応し て, 「西日本地区工業高専,図学・製図研究会」では昭和 52年8月2日(鹿児島高専会場:第12回)と昭和54年8月
1日(津山高専会場:第13回)の2回にわたる研究会にお いて,学年別の製図課題および課題別時間配当について各 校の実情を紹介するとともに,これらに対する検討を重ね
た。
一方,昭和50年頃から高専の学生の資質が問題にされ始 め,設計製図の教育方法の改善の試みも設計製図教育その ものの改善と同時に,この低下する学生の資質に十分に対 応し得るものでなければならないことは言うまでもない。
このような背景のもとで,本報告は本校の機械工学科に
*「西日本地区工業高専,第13回下学・製図研究会(昭 54)」で講演
**機械工学科
おける設計製図の教育効果を向上させるには,どのような 教育方法を採用すればよいかという教育方法改善のための 基礎資料を得る目的で学生の製図力を調査したものであ る。調細は,主として機械工学科の第2学年から第5学年 に対して,最も基本的な機械要素であるボルト・ナットを 共通課題の実力試験で製図させ,学年進行に伴う理解度を 設計製図のみならず,工作法,機械工作実習,機械工学実 験材料学等の専門科目との関連性をも考慮して総合的に 検討したものである。
2 調 査 方 法
2−1 調 査 対 象
調査対象は,機械工学科の第2学年から第5学年の8ク ラス(各学年2クラス)である。
2−2 調 査 方 法
図1は調査のために実施した試験問題である。問1はボ ルト・ナットの材質に関係した材料記号の理解,問2はボ ルト・ナットのねじ部の各部名称,問3はボルト・ナット の製図力,ボルトねじ込み状態の製図力を調べることを目 的としている。
調査方式は実力試験方式とし,試験時間は100分間,配 点は問1が10点,問2,問3および問4がそれぞれ30点で ある。採点に際しては問1(B)および(C)については 多少の許容範囲を設けた。また,問3と問4については,
図2に示すようなチェックポイント(問4でボルト頭部の
形状の図示を省略)を設定し,各チェックポイント別に採
点を行ったが,これらの採点にも多少の許容範囲を設け
た。チェックポイントの詳細は次のとおりである。
津山高専紀要第18号(1980)
図1
ボルト・ナット製図の実力試験問題1.(A)左欄の材料名に対応する材料記号を右欄より選び記号で答えよ。
(1)一般構造用圧延鋼材
㈲ねずみ鋳鉄品
(3)炭素鋼鍛鎭1品
(4)クロム鋼鋼材
(5)炭素鋼鋳鋼品
(6)ニッケルクロムモリブデン鋤鋼材
(7)青銅鋳物
(8)機械構造用炭素鋼鋼材
(9)ステンレス鋼鋼材
OQニッケルクロム鋼鋤材
ぐf)FC30
(戸)sc3ワ
?SSF55
←)ss4ユ
(trgSB42
(Ns30c
(ト)SV34
(e)sNe2
(リ)BC2
(ヌ)SCr4
ρりSNCMg
tt)SUS364
解 答
(1) (2)5 ︶ 4 ︶ 5 ︶
(6) (ワ) (8)9 ︶ q
(B)材料記号「S30σ」の「30」は何を示すか。
(σ)材料記号「FG30」の「30」は何を示すか。
解 答 (B)
(c)
2.図中に示すねじの各部の名称を記せ。
ねじ山の角度
A創︸ ∩ 「
寸︸ ゆ︸
圏
〔1
團 画
3。下記の水平中心線を基準にM24六角ボルト及びM 24六角ナットの図を描け。
ただし①呼び径を基準にして各部を比例寸法で描く略画法で作図すること ②尺度は/ttとし,ナットはボルトに取付けた状態で作図すること
⑤ねじ部の長さは54mm,ボルトの長さは70mmとし,この寸法を泥中に記入すること ④ねじ先は「平先」とし,また不完全ねじ部も示すこと
ω
解答
(2)(5)
(4)
(5)
4.図に示す垂直中心線を基準に厚さ80mmの鉄板にM.30六角ボルト(ねじ部の長さは66mm,ボルトの長さは80mm)
を30mmだけねじ込んだ状態を作図せよ。
ただし①尺度はUsとする
②ねじ下穴キリ径は26.5mm,ねじ下穴深さは60m血とする
③めねじの深さは50mrnとし,不完全ねじ部も示すこと
④各部の寸法は図中に記入すること ⑤鉄板の断面にはハッチングを施すこと
1
墨
も魅
1
1
津山高専紀要第18号(1980)
2
5 5
3 8
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六角ボルトのチエツクポイント番号
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図2 六角ボルトねじ込み部のチェックポイント番号
(i)六角ボルト製図のチェックポイント(問3)
1:大略の形状,2=ボルト頭の寸法比率,3:ボルト頭 のR(アール),4:おねじの谷底線 5:おねじの不完 全ねじ部,6:完全ねじ部と不完全ねじ部の境堺線,7:
ねじ長さとボルト長さの寸法,8:ねじ先の形状 (ii)六角ボルトねじ込み部のチェックポイント(問4)
1:大略の形状,2:おねじ優先の原則,3:めねじの谷 底線,4:キリ先の形状,5:ねじ下穴キリ径,6:めね
じの不完全ねじ部,7:完全ねじ部と不完全ねじ部の境堺 線,8:めねじの切り始め部,9:めねじ部のハッチン
グ,10 :下穴深さとねじ深さの寸法
3 調査給果および考察3−1 総合点の正答率
図3は,全問題に対する学年別の正答率,および正答率 と人員割合の関係を示したものである。
学年別の正答率は各学年とも7割前後であり,学年進行 に伴う正答率の向上はまったく認められない。教育効果を 判断するのに,この7割の正答率が妥当であるか否かは客 観的な資料の不足のため速断できないが,学年進行に伴い ボルト・ナット製図の機会が増加し,材料などに関する知 識も深くなることを考えれば,正答率は当然増加するはず
別
年
学
答の
題
問串 正
図答
製正
図 3
i. o
であるにもかかわらず,この傾向がまったく認められない のは問題である。筆者らは,このことを低学年における教 育の重要性を示すものと解釈し,教育方法の改善を図って
いるが,具体的なことについては後述する。
正答率と人員割合の関係を見てみると,正答率が約8割 のところに人員割合のピークがあり,そのときの人員割合 は約3割である。教育効果を判断するに際しては,正答率 と人員割合の両方が高いことが望ましく,この観点から判 断すると,正答率が約8割のところに人員割合のピークが あるのは好ましいが,そのときの人員割合が約3割である ということは満足し得るものではない。この傾向は多少の 差異はあるが,各学年に共通するものがあり,望ましい教 育効果を得ようとすれば,正答率が6割から4割の範囲の 学生達の製図力を向上させなければならない。正答率が3 割以下の学生数は受験人員の約5%であるが,これらの学 生達は製図教育の改善だけでは解決し得ない学習意欲の喪 失などの問題を有していると思われ,全人的教育の面から の教育の必要性を痛感している。
3−2 材料記号の正答率
図4は材料記号に対する学年別正答率,および正答率と 人員割合の関係を示したものである。
学年別正答率のうち,選択解答方式の問1(A)に対す る正答率は各学年とも約8割であり,この割合は常識的に みて,教育効果の判定上,満足し得るものと考えられる。
しかし,材料記号の意味を記述解答する問1(B)および
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e e.2 o.4 o.6 o.8 1,0
正 答 率 図4 材料記号の学年別正答率
(C)の正答率は,第3学年においてやや高いが,他の学 年においては5割前後で全体としてはきわめて低い。図に
には示していないが,別に第1学年に実施した材料記号の 意味を問う問題(設計製図の学年末試験問題)の正答率が
4割に満たない結果をもあわせ考えると,材料記号の意味 を理解しているものは,全体としては約5割である。
学年別正答率において,とくに着目したいことは,第4 および第5学年の記号の意味に対する問題の正答率で,両 学年とも,第3学年までに機械工作実習において,各種の 機械材料の加工経験があり,第4学年では機械工学実験に おいて,各種の機械材料の機械的性質に関して,それぞれ 理解を深めているはずであるのに,予想に反して正答率が 低いことである。
このように学年進行に伴う正答率の向上がみられない主 因としては,学生達が設計製図と工作法,材料学,機械工 作実習,機械工学実験等の科目とを,有機的に結合して受 容していないことが考えられる。この問題を解決するため には,たとえば実習作品を実験材料や設計製図に利用する とか,設計製図で作成した製作図に基づいて工作実習を実 施する等の方法により,設計製図と専門科目とを実物の機 械要素,機械部品,工作物で直結させた教育が重要であろ
う。
正答率に対する人員割合の分布を見てみると,その分布 状態は各学年とも理想的状態とは言えず,また,各学年相 互には顕著:な特徴は認められない。
3−3 ねじの正答率
図5はねじの名称に対する学年別の正答率,および正答
〈U o. 4
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O一一一一〇 2学年 O一一一.O 5 .,
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一 一 S e
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〆ゑ \も
。
O.2 e.4 e.6 o.s
正 答 率
園5 ねじの名称の学年別正答率
1. 0
率と人員割合の関係を示したものである。
学年別の正答率は,各学年とも5割前後ときわめて低 い。また,正答率と入員割合の関係においても,正答率が 4割以下の人員割合が高くなっている。これは材料記号の 場合(図4)よりもさらに悪い状態である。このように正 答率が5割前後と低いのは,「谷の径」のようにめねじと おねじでは紛らわしくて聞違いやすい問題が含まれていた ことも一因であるが,それ以外の「ピッチ」や「外径」の ように工作に密接な関係を有するものを誤答している者が 多いことが大きく影響している。
このように,最も基本的な機械要素であるボルト・ナッ トの各部の名称に対する正答率が低いことについては,早 急な対策の必要性を痛感し,この調査ののち,外見上は外 径がほぼ同一である各種のねじモデルを実習工場の協力を 得て製作し,次年度からピッチゲージやノギスを使用する スケッチ方式によるねじの講義や製図を実施する予定であ
る。
3−4 六角ボルトの正答率
図6は六角ボルトに対する学年別正答率,および正答率 と人員割合の関係を示したものである。
学年別の正答率は各学年とも約8割で,教育効果の判定
上問題はないと思われるが,この場合も前述の材料記号や
ねじの名称の場合と同様に,学年進行に伴う正答率の向上
はまったく認められない。すなわち,低学年で修得したボ
ルトの製図力が,その後の製図の経験によっても向上しな
いことを意味しており,低学年においてもボルト・ナット
津山高専紀要第18号(1980)
1,0
O. 8 Ku
O. 6
H
2 学
s
4i年
5
(1)ボルトの大略形状
1.O. 5
1. o
2 5 4 5
O.6
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o. 2
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O一一一つ2学年
O一一一一〇3 ,.
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・r,,g,,XIICP
e,2 e.4 e.6 o.s
正 答 ・ 率
図6 六角ボルトの学年別正答率
O. 5
雄 2 s
(3)ボルト頭のR 1
o
l o
4 5
2 3 4
(4)おねじの谷底線寸法比率
5
1,0
製図の教育をスケッチ方式の製図を導入する教育方法に改 善し,製図力の向上を図ることで対処したい。
正答率と人員割合の関係では,正答率の高いところで人 員割合が高く,教育効果の判定上好ましい状態となってい る。正答率が1割以下の人員も多少存在するが,これは学 習意欲に欠ける学生達であると思われ,全入的教育に待た ねばならない。
図7および図8は,図6に示した正答率の内容をチェッ クポイント別に示したものである。チェックポイント番号
(.7)のねじ長さおよびボルト長さの寸法記入と(8)の ねじ先の形状において,第3学年以上の正答率が低くなっ ている。(7)および(8)のチェックポイントは,実用 上,非常に重要であるだけに,材料記号(3−2)のとこ
ろでふれたような教育方法の改善を考えている。
3−5 六角ボルトねじ込み部の正答率
図9は六角ボルトのねじ込み部に対する学年別正答率,
および正答率と人員割合の関係を示したものである。
学年別正答率は,図6に示した六角ボルトの正答率が約 8割であるのに比べて,6〜7割と低いが,学年進行に伴 う正答率はやや向上しているようである。また,正答率と 人員割合の関係も,正答率の低い学生の人員割合が高いこ とから,あまり好ましくないし,第3学年の正答率が他学 年よりも多少低い原因ともなっている。
このように,学年別の正答率が全般的に六角ボルトのそ よれりも低いこと,および正答率の人員割合の関係が好ま
。. 5
cN一一一一一一一一...一.....p一....一一一一一 一一 一一一一一〇
1. o
2
3学 4 年
図7 六角ボルトのチェックポイント別正蒼率
(5)おねじの不完全ねじ部
5
e. 5
...一一 一〇 b一 一 一一一〇一一一一一一一一.
ユ。o 甜
O.5
2 5 4 5
(6)おねじの完全ねじ部と不完全ねじ部の境界
。一一一一一一一一一一。>一一 p一
(7)ねじ長さおよびボルト長さの寸法記入
1. o
pt o. 5
x. o
o. 5
(8)ねじ先の形状
2 5 4 5
学 年
図8六角ボルトのチェックポイント別正答率II
嵜
e. 8
維
O. 6o
2
5学 4
年 5
O. 5 ぐロ
証O.2
亘
e. 1く
o
O一一一一一〇2学年
(N一一一一〇3
ge−aj 4 tl Ft. 一5 ,t
ごx,.P4
xN x
o.2 o,4 e.6 o.B
正 答 串
図9 六角ボルトねじ込み部の学年別正答率
1.o
しくない原因は,調査方式が実力試験方式の製図であった ため,時間的制約が大きかったと考えられる。しかし,ボ ルトねじ込み部のような簡単な製図では,時間的因子のみ が主因であるとは思われず,基本的には製図力の不足が主 因であろう。
10 1>六角ボルトねじ込み部の大略の形状
0 5
.一一/一一 一〇 X h C一一一一一一一〇
図10および図11は,前述のことを分析する意味をかね て,六角ボルトねじ込み部の正答率をチェックポイント別 に示したものである。チェックポイント番号(8)のめね じの切り始め,(9)のねじ部のハッチングおよび(10)
の下穴寸法とねじ深さの寸法記入では,チェックポイント 番号(10)を除けば,正答率は各学年とも5割以下と低
く,前述のことを裏付けしている結果である。
図12は,本校の機械工作実習において,フライス加工,
やすりがけ,穴あけ,リーマ通し,ねじ切り等を行なわせ た実習作品の一例である。これとは別に製作した円柱部と おねじ部を有する実習作品を穴部へさし込んだり,めねじ 部へねじ込んだりすることにより,精度,めねじの下穴,
ねじ切りの精度等について教育している。今回実施したね じ込み部に関する問題(問4)は,この図12の最:左端のね じ部におけるおねじとめねじのねじ込み状態を製図させた ものである。このことを念頭においてねじ込み部の正答率 を考えると,学生達は製図法のうち図示についての単純な 約束的事項は理解し,実践することが可能であるが,製作 上の約束をもあわせ有する製図法に対しては理解が十分で ないため,製図も不正確になって正答率も低くなったと思
われる。これまで教官側には,学生に機械工作実習等において体 験させておけば,設計製図の理解が早いであろうし,ま ユ。 (6)めねじの不完全ねじ部
。.5
...., fie =r−e:r−11e
(2/おねじ優先の原則
1. o
o.
1
(5)めねじの谷底線1.o
O. 5
(7)めねじの不完全ねじ部と完全ねじ部の境界線
即
O. 5
1. (4)キリ先の形状
。.5
1
O.5
(5)ねじ下穴キリ径とめねじの内径
2 5 4 5 学 年
図IO六角ボルトねじ込み部のチェックポイント別 正答寧 i
麟
(8)めねじの切り始め
。. 5
o
(9)ねじ部のハッチング
。.5
o
O.6
(10)下穴寸法およびねじ深さの寸法記入
2 5
学
4 年
5
図ユ1六角ボルトねじ込み都のチェックポイント別
正答率ii
津山高専紀要第18号(1980)
w (v)
oめ
M12ネジ深17下穴lO.5深21 M12ネジ下穴10.5
12リーマ ノ\11 8
12キリ︐ ︐
コ
1520 20 20
1
1
90
o⊃・q
30
5 20 5
1頃
めρ建 圏
を記号で選び出す選択解答:方式の問題4)を,
第4学年(実力試験時では第3学年)の進路 指導模擬試験として出題した。その中から,
実力試験問題の問3および問4のチェックポ イントに類似するものを抜き出し,両者の正 答率の比較をしたものが図13である。
正答率はいずれも選択解答方式の方が高 く,正答率の平均も8割5分以上と実力試験 の正答率の平均より2割以上高い。このこと は試験方式の特性から予測したとおりである が,実践を重視する高専では,選択解答方式 の正答率が高いからといって,正しい理解が なされていると考えてはならない。高専に要 求されているのは,この程度の製図では,実 践能力を試す実力試験方式の製図において,
8割5分以上の正答率が得られたと解釈して
いる。
図■2基本工作実習(1年) 穴あけ,ネジ立て 素材口32:
た,教室で教授したことを理解してくれれば,機械工作実 習や設計製図を十分に実践してくれるであろうという基本 理念があった。しかし,六角ボルトねじ込み部の製図に対 する正答率の低さは,この理念の訂正を示唆するものであ る。換言すれば,教育効果を向上させるためには教育方法 の大改善を要するものと受け止めたい。具体的には,3−
2節でふれたように設計製図と専門科目の直結授業を検討 している。
3−6 選択解答方式によるボルト製図の正答率 問いに対する解答を3例図示し,その申から正しい解答
おねじの不完全ねじ部
おねじ優先の法則
キリ先の形状
めねじの不完全ねじ部
。 む ら
正 察 率 1.o
図15 実力試験と模擬試験(選択解答方式)の正答率の比較
4 ま と め
工業高専の機械工学科における設計製図教 育の授業方法を改善して教育効果をあげる目的で,基本的 機械要素であるボルト・ナット製図の実力試験を実施し た。その結果,やや資料不足ではあるが,次のようなこと がわかった。
現行の教育方法では,学生達は設計製図と機械工作実 習,機械工学実験などの設計製図に深い関連を有する他の 専門科目との有機的結合を十分になし得ていないと思われ る。したがって,これらを有機的に結合するには,設計製 図と他の専門科目とを,実物により直結させた授業:方式を 導入することが必要である。機械工学科低学年の機械要素 に対する設計製図に限定すれば,機械工作実習の作品や市 販の製品実物に基づいて,その工作法や材質等をも検討し ながら,製図法を具体的に教育することが必要と考えられ
る。
幸い,機械工学科教官各位の特別の予算的配慮を頂き,
各種機械要素,模型,計測器具等を整備しつつあるので,
教育効果は漸次向上するものと期待している。
最後に,この調査の遂行にあたり,御指導と御協力を頂 いた本校機械工学科,三森太郎助教授と土井永淑助教授に 深く謝意を表します。
︶︶︶︶