エコキャンパス実現の実践的研究と環境評価 その2.静岡大学の環境パフォーマンス評価
工学部 前田 恭伸
ジャストミート・コーポレーション 松坂 光照
〔研究の概要〕
1.はじめに
「静岡大学をエコキャンパスにする」と言う のは簡単である。だがそれを実現するとなると、
何を実施すればいいのであろうか。やるべきこ とは山ほどある。しかし、何から手をつければ 良いかということを考え始めると、その決定を 下すのはそれほど簡単なことではない。そこで 本研究では、静岡大学の活動が環境にもたらす 影響と、その対策の効果を評価するための指標
を開発した。
本研究に先立つ1999年度の学長プロジェク ト「人間と地球環境」のなかで、著者はすでに 静岡大学の環境影響の試算を行っている1)。こ の先行研究では、環境影響の評価にEPS2)とい うスウェーデン環境研究所の開発した環境影 響評価手法を用いた。しかしこの手法はスウェ ーデン国内での使用を前提に作られており、静 岡大学の実情には必ずしも合致していない(た とえば森林への環境影響の評価において、EPS は針葉樹林への影響しか評価していない)。そ こで、本学の状況により合致した環境影響評価 手法を構築するというのが本研究の目的であ
る。
環境影響評価の尺度としては、EPSと同様、
貨幣価値を用いている。将来的に、静岡大学の 環境マネジメントシステム(EMS)を導入するこ
とになれば、環境マネジメントのPlan_Do_
Check−Actionのサイクルを大学運営の中に 定着させる必要があるが、このCheckのための 評価指標を開発するというのが本研究の意図 である。何らかの環境改善が計画され(Plan)実
施された(Do)ときに、その計画が本当に有効で あったのかどうかを検証するためには数値尺 度が必要である。もし環境改善の便益(効果)
を貨幣評価することができれば、費用便益分析 の枠組みの上で環境マネジメントのCheckを 行うことが可能になる。これは現在公共事業の 再評価で行なわれている方法と同じ枠組みで ある。また、環境改善に予算を費やすというこ とは、教育・研究に回るはずの潜在的予算を減 らすことになる。このことの正当性を示すため にも、使われた予算がより大きな環境改善の便 益をもたらしていることを明らかにすること が、これからの大学運営においては大学の説明 責任として必要になってくるだろう。このよう な考えから、本研究では貨幣価値によって環境 影響と環境改善の効果を評価している。
2.大学活動に伴う環境負荷・環境影響の評価 体系
環境影響評価の基本的考え方は以下の通り である。まず、環境への影響に関連する大学活 動の実態を調査する。ここでは、大学での電力 やガス等の消費量、通勤・通学の実態、紙の使 用量、排水や廃棄物の量などを調べた(以下、
これらを調査項目と呼ぶ)。
次に、得られた調査項目を、環境影響に直接 関与する環境負荷因子の量として把握する(こ れを環境負荷量と呼ぶ)。ここで扱う環境負荷 量は、CO2,CFCs等の年間総排出量、ガソリン、
重油等の年間総消費量などである。
第三に、1年間の環境負荷量が実際にどのよ うな環境影響をもたらすのかを求めるため、環
−32−
調査項目 → 環境負荷量
各種エネルギー
CFC等 排水 コピー用紙
廃棄物 通勤・通学
CO2
CFC等
自動車起源の 有害化学物質
NOx,SOx
排水中の 有害化学物質
COD
ガソリン、軽油、
A重油、灯油
普通鋼銅材、
アルミニウム 銅
→環境影響項目→保農対象
>
ト
、\−\
地球温暖化 オゾン層破壊
有害化学 物質汚染 大気汚染 酸性雨 水質汚濁
、、 \ 石油資源消費
/一一一金属資源消費
図1:大学の環境影響評価の枠組み
境負荷量の様々な環境影響項目への換算を行 う。ここでいう環境影響項目とは、地球温暖化、
オゾン層破壊、大気汚染等、具体的な環境影響 の事象のことである。
ところでこれら環境影響項目であるが、なぜ これらが問題視されるかというと、それはこれ
ら項目が、われわれ人類が保護すべきだと考え ている対象にインパクトを与えるからである。
例えば、保護すべき対象として考えられるもの には、人類の生存や健康、生態系、枯渇性の資 源などがあるだろう。そこで第四として、先の 環境影響項目を、それらが保護すべき対象(以 下、保護対象と呼ぶ)に与える影響ごとに整理 し、それぞれの影響項目がどの保護対象にどれ だけのインパクトを与えるのかを見積もる。
そして最後に、得られた保護対象へのインパ クトを貨幣価値として評価する。一般に、ある 財に関する需要関数は、その財の−単位の入手 に消費者が支払っても良いと考えている金額
(支払い意志額) を表すが、これはその財によ ってもたらされる効用の、一単位あたりの増分 を貨幣単位で表したものにはかならない。つま
り貨幣単位での効用関数を微分したものにな る。したがって財の変化量について需要関数を 積分すれば、その変化によってもたらされた
(正または負の)効用を、貨幣価値で評価でき ることになる。今回は、各保護対象に対する支 払い意志額を求め、それに基づいて保護対象へ のインパクトを貨幣価値で評価する。
この評価の枠組みを図1に示す。図に示すよ うに、本研究では保護対象として、人間の健康
(生存)、生物多様性、枯渇性資源の三つを取 り上げている。この三つは、環境影響評価の既 往研究でも、保護対象(safeguardsubjects)とし て取り上げられているものである。これ以外に 既往研究2,3,4)で取り上げられている保護対象と
しては、生活の質、精神的健全性、審美的価値、
生産などがある。しかし以下の理由からここで
はこれらの項目を保護対象としては 取り上げていない。第一に、生活の質 や精神的健全性についてはその低下 を評価するための指標の設定が難し い。第二に、審美的価値は個人の価値 観に左右される側面が大きく、大学構 成員が合意できる指標の設定が困難 であると考えられる。しかし、もし大 学構成員の総意として大切にすべき 審美的価値について同意できる状況 になれば、審美的価値も保護対象に含 めるべきであろう。そして第三に、生 産はその基盤を資源に依存しており、
枯渇性資源は生産の代理指標と考え ることもできるので、重複をさけるた めにここでは生産を扱わないことに
した。
この三つの保護対象へのインパク トを評価するために、本研究では環境 影響項目を、地球温暖化、オゾン層破 壊、有害化学物質汚染、大気汚染、酸 性雨、水質汚濁、石油資源消費、金属 資源消費の9つと設定した。ここで有 害化学物質汚染とは、アセトアルデヒ
ド、ベンゼン等、健康への影響が懸念
表1:調査項目と調査結果
調査項目 静岡 浜松 全学 各種エネルギー消費
電力(GWh)
都市ガス(m3)
ガソリン(L)
軽油(し)
A重油(L)
灯油(L)
GFC等排出量(kg)
排水
排水量(m3)
CODくmg/L)
ベンゼン(mg/L)
ジクロロメタン(mg/L)
四塩化炭素(mg/L)
1,2−ジクロロエタン(mg/L)
コピー用紙使用量(kg)
廃棄物
可燃物(t)
スチール缶(t)
アルミ缶(t)
その他不燃物(t)
通勤・遺筆:年間総移動距離 ガソリン車(千人km/年)
ディーゼル車(千人km/年)
二輪車(千人km/年)
原付(千人km/年)
電車(千人km/年)
バス(千人km/年)
8.06 6.64 14.70 310.967 276,782 587,749 5,789.6 1,432.9 7,222.5 169.2 457.0 626.2 69,000.0 0.0 69,000.0 0.0 927.2 927.2
172,402 99,726 272,128 3.63 0.008 0.005 0.0025 0.0025 2,465,500 1,003,500 3,469,000
124.84 50.01 174.85 40.74 7.67 48.41
8.73 1.64 10.37 30.00 79.00 109.00
5
2 0 0 3
5 3 5 4 7 5 6 8 5 2 4 0 3 2 9 9 0 0
8 1 1
︵ 0 7 2 0 0 3 0 7 6 9 1 6 8 4 4
1
3 4 6 0 4 7
7 8 8 3 2 6
2 3 5 7 5 4 氏 叫 1 3 9 3
される有機系化合物による汚染を考える。一方、
大気汚染としてここで扱っているのは、地域レ ベルでの汚染である。水質汚濁は、ここでは有 機物による汚濁だけを扱う。
そして上記9つの環境影響項目の評価のた めに、環境負荷量の調査を、CO2、CFC等(オ ゾン層破壊物質)、自動車起源の有害化学物質、
NOx・SOx、排水中の有害化学物質、COD、石 油資源消費(ガソリン、・軽油、A重油、灯油)、
金属資源消費(普通鋼鋼材、アルミニウム製品、
伸銅製品)の8つの分類について行うこととし、
それを踏まえて実際の調査項目を、各種エネル ギーの消費量、CFC等の排出、排水、コピー用
紙の消費量、廃棄物、通勤・通学の6項目に設 定した。
以下、次の節では1998年度の各調査項目の 実績値およびそこから算出した環境負荷量を 報告する。その環境負荷量をもとに、第4節で は各環境影響項目への大学活動からの寄与度 を評価する。そして第5節では、3つの保護対 象へのインパクトの大きさおよびその経済価 値を評価する。第6節では評価結果について考 察を行うとともに、環境負荷削減のいくつかの シナリオについて、どれだけの環境改善がもた らされるのかをシミュレーションする。第7節 ではまとめを行う。
−34−
表2:自動車利用による各物質の環境負荷原 単位
環境負荷原単位 物質 (mg/kg−燃料)
ガソリン車 ディーゼル車 アセトアルデヒド
キシレン類 トルエン ベンゼン ホルムアルデヒド
エチルベンゼン
1.4 94.8 14.7 28.0 15.5 14.2 8.6 28.0 1.5 250.0 3.7 7.0
3.静岡大学からの環境負荷量 3.1 大学の環境調査項目
まず1998年度の一年間に大学活動が環境に 与える影響について、各種エネルギーの消費量、
CFC等の排出、排水、コピー用紙の消費量、廃 棄物、通勤・通学といった項目を調査した。各 種エネルギーの消費量、CFC等の排出、排水、
コピー用紙の消費量については、事務局に聞き 取り調査を行った。廃棄物については、一部に ついてサンプリング調査を行い、その結果と事 務局への聞き取りをもとに全体の量と中身の 推定を行った。通勤・通学については、1998 年10月に教職員・学生向けにアンケート調査 を行い、その回答から全学の通勤・通学での交 通機関の利用実態を推定した。
その結果をまとめたのが、表1である。CFC 等オゾン層破壊物質については、その回収作業 が行われていないので、量を把握できなかった。
以下の分析ではCFC等の量をゼロとして扱う ことにする。また排水に含まれる各種汚濁物質 の濃度については、静岡・浜松両キャンパスの 平均値を推定している。
3.2 環境負荷量の推定
次に、得られた各調査項目のデータをもとに、
各環境負荷量の推定を行う。いま、m個の調査 項目も(i=1,…,m)と、n個の環境負荷量項目も
(j=1,…,n)の間に、
表3:静岡大学からの1年間の環境負荷量 項目 環境負荷量
602−C(t)
CFC等(kg)
自動車起源の有害化学物質
アセトアルデヒド(kg)
キシレン類(kg)
トルエン(kg)
ベンゼン(kg)
ホルムアルデヒド(kg)
エチルベンゼン(kg)
NOx(t)
SOx(t)
排水中の有害化学物質
ベンゼン(kg)
ジクロロメタン(kg)
四塩化炭素(kg)
1,2−ジクロロエタン(kg)
COD(kg)
石油貴需
ガソリン(kL)
軽油(kL)
A重油(kL)
灯油(kL)
金属責漏
普通鋼(t)
アルミニウム(t)
銅(t)
8028773684489.3263995821 8 1 0 0 71
6 3 3 8
2 2 1 1
⁚ 9
1 9 9 9
7 3 6 0
7
4 2 2
8 2 10 11
lJ=AJlも
なる関係があるとき、Aiを調査項目iの環境負 荷量jに対する環境負荷原単位と呼ぶ。この原 単位を求めることによって、各環境負荷量の値 を推定する。
既にほとんどの原単位は既往研究5)において 求められているので、その値を用いる。文献5)
で明らかになっていない原単位には次のもの がある。
ガソリン車・ディーゼル車(軽油)由来の 有害化学物質排出量
・不燃性廃棄物に含まれる金属資源の量 このうち前者については文献6)をもとに表2 のように原単位を設定した。後者については本
研究では以下の様に不燃性廃棄物に含まれる 普通鋼、アルミニウム、銅の比率を推定した。
まず普通鋼については、学内での廃棄物サンプ リング調査から比率を0.55と設定した。アルミ ニウムと銅については、普通鋼と比べた国内の 年間販売重量比と同じ比率だけのアルミニウ ムと銅が廃棄物に含まれると仮定し、それぞれ の値を0.017,0.011とした。
これら原単位を用いて推定した、静岡大学の 1年間の活動による環境負荷量を表3に示す。
4.各環境影響項目の評価
ここでは、前節で求められた環境負荷量をも とに、静岡大学の活動が各種環境影響項目にど れだけの寄与をしているのかを評価する。0個 の環境影響項目について、それぞれへの寄与度
をek(k=1,…,0)と表す。
ekの定義は次の通りである。まず、環境影響 項目ekに対応する影響の−単位を考える。例え ば環境影響項目「地球温暖化」に関しては影響 の一単位を「地球の年平均気温が1℃上昇する こと」と設定する。そして環境負荷jが影響の 一単位をもたらすのに要する負荷量をBkjとし たとき、ekは次式で与えられる。
ek=も/Bkj
以下、このB垣を単位負荷量と呼ぶ。
4.1 環境影響の−単位
本節では、図1に示す地球温暖化、オゾン層 破壊、有害化学物質汚染、大気汚染、酸性雨、
水質汚濁、石油資源消費、金属資源消費の8つ の環境影響項目について、影響の一単位とそれ
をもたらす負荷量Bkjを検討する。
(1)地球温暖化
ここでは前述のように「地球の年平均気温が 1℃上昇すること」を一単位とする。次に環境 負荷C02が上記一単位をもたらすのに要する 単位負荷量について考える。
気象研究所の全球大気海洋モデル7)によれば、
毎年1%ずつCO2濃度が上昇すると考えたとき、
平均気温が1℃上がるのに42年かかる。そし てその間の大気中へのCO2蓄積量は、炭素ベー スで368Gtと推定される8)。以上により地球温 暖化に対するC02の単位負荷量は、368Gtと推 定された。
なお、地球温暖化に対する CFCの単位負荷 量は、C02のそれを単純にCFCの地球温暖化 係数(GWP:ここではCFC・11の20年の値を 使用する)の5000で割って、73.6Mtとした。
(2)オゾン層破壊
オゾン層破壊の影響の一単位を、ここでは
「緯度60度以上の高緯度地域において、オゾ ン量が4%減少すること」とした。文献9)など をもとに、この一単位に対応するCFCの単位 負荷量は、2.14×107tと推定された8)。
(3)有害化学物質汚染
環境への影響の分類項目として考えた場合、
「有害化学物質汚染」を単一の項目としてとら えるのは難しい。汚染の影響として、人間の健 康への影響だけでなく、生態系への影響も懸念
されるからである。そこでここでは影響の一単 位を、人間の健康(生存)に関するものと生物 多様性に関するものを個別に設定する。
人間の健康に関する有害化学物質汚染の影 響の一単位は、「各物質の大気曝露により10・5 の生涯発ガンリスクを生じること」と設定した。
また影響の範囲を、静岡・浜松両キャンパスか ら各々半径10km以内、上空2kmまでの空間 内とした。
表3に書かれた有害化学物質のうち、大気中 に排出される自動車起源の物質を考え、このう ちユニットリスク(濃度当たりの生涯発ガン確 率)が明らかになっている、アセトアルデヒド、
ベンゼン、ホルムアルデヒドについて、単位負 荷量を推定する。ユニットリスクから10・5の確 率に相当する濃度を求め、生涯(ここでは80
ー36−
表4:人間の健康に関する有害化学物質の単 位負荷量
物賞 アセトアルデヒド
ベンゼン ホルムアルデヒド
単位負荷量(kg)
1.37×108 9.16×107 2.81×107
表5:生物多様性に関する有害化学物質の単 位負荷量
物賞 アセトアルデヒド
キシレン類 トルエン ベンゼン ホルムアルデヒド
エチルベンゼン ジクロロメタン
四塩化炭素 1,2−ジクロロエタン
単位負荷量(吋
2.5×108 1.6×107 1.9×107 4.0×106 1.6×106 4.0×106 1.4×107 3.6×107 8.5×108
年とした)にわたって対象空間のこの濃度を維 持し続けるだけの排出量を単位負荷量として 求めた8)。その結果を表4に示す。
一方、生物多様性に関する影響の一単位は、
「対象物質の濃度が、駿河湾内の海岸線から沖 合10km以内の海域で予測無影響濃度(PNEC)
になること」と設定した。ここでは簡単のため、
静岡・浜松両キャンパスの排水とも、駿河湾に 到達すると設定した。また大気中に排出された 物質も降雨等によって水圏に到達すると仮定
した。
表3に列挙されている有害化学物質につい ては、水圏生態系について何らかの生態毒性値 のデータが得られている10)ので、それらの値を
もとに各物質のPNECを推定し、その値に想定 海域の体積を乗じた値を単位負荷量として求 めた8)。その結果を表5に示す。
(4)大気汚染
大気汚染に関しては「静岡・浜松両キャンパ スから半径10km以内、上空2km以内の空間 において、NOx,SOxの年平均濃度が0.01ppm 上昇すること」を影響の一単位とした。この−
単位をもたらすための単位負荷量は、NOx,SOx それぞれ2470t,2100tとなる。
表6:静岡大学の環境影響への寄与度
環境影響項目 地球温暖化
環境負荷 寄与度e
CO2
オゾン層破壊
CFC等 有害化筆触貫:健康への影響
アセトアルデヒド ベンゼン ホルムアルデヒド 有害化学物質:生物多様性への影響 アセトアルデヒド キシレン類
トルエン ベンゼン ホルムアルデヒド エチルベンゼン ジクロロメタン 四塩化炭素 1,2−ジクロロエタン 大気汚染
NOx SOx
酸性雨
SOx,NOx
水貫汚濁
COD
石油貴需
ガソリン 軽油 A重油 灯油 金属貴賓
普通鋼 アルミニウム 銅
8.76×10 ̄9
2.83×10●8 6.42×10●8 3.19×10 ̄7
1.6×10 ̄8 5.9×10●7 5.0×10 ̄7 2.0×10 ̄6 5.6×10 ̄6 5.9×10 ̄7 9.3×10 ̄8
1.8×10■8 7.6×10 ̄10
4.98×10 ̄3 3.14×10 ̄3
4.86×10 ̄8
1.12×10 ̄6
771,000 39.000 69.000 900
(5)酸性雨
酸性雨に関しては、「日本・韓国・中国での 降水中のpHが1減少すること」を影響の一単 位とした。この影響をもたらす単位負荷量は、
単純に降水中の酸性化物質が現在の10倍に なった場合の酸性化物質量と考え、現在のこの 地域での酸性化物質排出量の値をもとに、3.13 億tと推定した8)。なおこの値はSOx,NOxを酸
性度で等価なS02の量に換算したうえでの数値 である。
(6)水質汚濁
水質汚濁については影響の一単位を、「駿河 湾内の海岸線から沖合10km以内で、COD値 が1mg/L上昇すること」と設定した。キャンパ スと駿河湾の関係は、(3)有害化学物質の場 合と同様に考える。対象海域の体積は810km3 になるので8)、求める単位負荷量は、8.1×108kg である。
(7)石油資源消費および金属資源消費 ここでは影響の−単位を「資源の単位量(石 油なら1し、金属ならlt)の消費」とする。単 位負荷量はもちろん1Lおよび1tである。
4.2 静岡大学の活動による環境影響 次に、第3節で得られた環境負荷量ljと前節 で得られた単位負荷量Bkjから、静岡大学の活 動の「環境影響の−単位」への寄与度ekを計算 する。その結果が表6である。なおこの表の中 で、酸性雨への寄与度は、大学から排出された SOx,NOxを酸性度が等価なS02の量に換算し た上で、それを単位負荷量で割って求めた。
5.保護対象への影響の評価
本節では評価の最終段階として、各環境評価 項目の寄与度から各保護対象へのインパクト を求め、その経済価値(貨幣価値)を評価する。
まず各環境影響項目が保護対象に対してどれ だけのインパクトをもたらすのかを推定し、次
にそのインパクトの経済価値を評価する。
5.1 保護対象へのインパクト
ここではまず、保護対象へのインパクトの尺 度を定義する。次に環境影響項目の−単位が各 保護対象に与えるインパクトを推定し、この値 と環境影響への寄与度から、静岡大学の活動の 保護対象へのインパクトを求める。ここで環境
影響項目kによる保護対象h(h=1,2,3)へのイ ンパクトをsbkとすると、Sbkは次式によって求 められる。
Sbk=Cbkek
ここにCbkは、環境影響項目kの影響の一単位 によってもたらされる保護対象hへのインパク
トである。
保護対象の尺度として、人間の健康(生存)
については、環境影響による超過死亡によって 表す。またひとりの超過死亡は4000日の余命 を損失することと等価であると設定する8)。生 物多様性については、環境影響による種の絶滅 をもって尺度とする。そして枯渇性資源に関し ては、資源の消費量をそのまま尺度とする。
では各環境影響項目の一単位による保護対 象へのインパクト Cbkをどのように推定する か?本研究で扱う三つの保護対象のうち、枯渇 性資源の減少については、石油資源・金属資源 の消費量をそのまま減少量と見なすことがで きる(Cbk=1)。有害化学物質の人間の健康への影 響については、影響の一単位を10・5の発ガン確 率としているので、仮に発ガンを致死であると 仮定すれば、この確率に対象地域の人口を乗じ ることによって、影響の一単位による超過死亡 数を推定することができる。静岡・浜松両キャ ンパスから半径10km圏内の人口を100万人と すれば、Cbk=1×10・5+6=10となる。同様に有 害化学物質の生物多様性への影響も、環境影響 の寄与度から求めることができる。ここでは、
有害化学物質の濃度がPNECに達したとき、そ の海域でもっとも脆弱な種が絶滅してしまう
と仮定し、Chk=1とする。
しかしそれ以外の環境影響項目と保護対象 の関係については、それらを明らかにするのは 容易ではない。例えば地球温暖化の人間の健康 への影響をどのように見積もれば良いのか?
このような問いに答えるために、本研究では全 国の環境研究の専門家を対象にした簡易デル
−38−
フアイ法を実施し、環境影響項目と保護対象と の関係についての見積もりを行った。ここで簡 易デルファイ法と称しているのは、本来デルフ ァイ法とは専門家の集団に対しアンケートと その結果のフィードバックを繰り返すことに よって、ある課題に対する意見の集約を行う手 法であるが、今回は1回だけのアンケートに基 づいてその結果の統計的分布から専門家の判 断の傾向を求めようとしていることによる。
本研究では、(社)環境科学会に所属する正 会員から選んだ1000人を対象として簡易デル ファイ法のためのアンケートを郵送した。この うち196人から返信があったが、このうち95 人は「回答するための知識を持ち合わせていな い」等の理由で回答辞退を申し出ており、結局 有効回答数は101人であった。今回アンケー トで聞いたのは、以下のような項目である。ま ず人間の健康(生存)に対する影響については、
以下の11個のシナリオについて、各シナリオ における超過死亡数を推定してもらった。
(a)地球温暖化について
al:夏期の猛暑により特に高齢者の循環器 系・呼吸器系疾患が増加する
a2:異常気象で洪水・嵐などの災害頻度・
規模が増し、死傷者が増える
a3:海面が現在よりも20cm近く上昇し、
これにより死傷者が増える
a4:海面上昇により台風の規模・勢力が増 して高潮などの頻度・規模が増し、死傷者が 増える
a5:植生や生物相の変化により、動物媒介 感染症・伝染病患者が増加する
a6:地域によっては新たな飢餓・栄養失調 者を生じる
(b)オゾン層破壊について
bl:オゾン層が4%増加すると、白色人種 の皮膚ガンの発症が5%程度増加する
b2:オゾン層の減少により、免疫抑制が生
じる
(C)大気汚染について
Cl:濃度上昇により呼吸困難などの健康影 響が生じる
(d)酸性雨について
dl:湖沼等が酸性化して有害金属が溶出し、
それが濃縮された魚の摂取により健康影響 が生じる
d2:酸性雨により酸性化された作物の摂取 による健康影響が生じる
同様に生物多様性については、以下の様なシ ナリオについて、それぞれの状況下での絶滅す る種の数を答えてもらった。
(e)地球温暖化
el:気温上昇に対し生息地の移動(高緯度 地域への)の追いつかない種(主に植物)が 絶滅する
e2:気温上昇に対し生息地の移動(高標高 地域への)の追いつかない種(主に植物)が 絶滅する
e3:分布域の狭い野生生物種(動物・植物)
が絶滅する
e4:動物媒介感染症・伝染病により絶滅す る種が生じる
(f)オゾン層破壊
fl:オゾン量減少により陸生生物の生育が 阻害され、絶滅する種が現れる
f2:オゾン量減少により水圏生態系での生 物種の生育が阻害され、絶滅する種が現れる
(g)大気汚染
gl:濃度上昇により呼吸器系などの機能が 阻害され、絶滅する動物種が生じる
g2:濃度上昇により枯死し、絶滅する植物 種が生じる
(h)酸性雨
hl:湖沼などが酸性化して底質の有害金属 が溶出し、魚類などの絶滅が生じる
h2:湖沼などが酸性化し、植物ブランクト
表7:各シナリオにおける保護対象へのイン パクト
保護対象 シナリオ インパクト 人間の健康 al lxlOt4
2 3 4 5 6 1 2 1 1 2 a a a a a b b C d d
5×10 ̄4 5×10 ̄6 5×10 ̄4 9×10 ̄4 2×10●3 5×10 ̄4 1×10 ̄4 1×10 ̄4 5×10■6 0
生物多様性 el成由dfl佗g
l或hl佗吊il
0 0 0 0 0 5 0 0 0 0 0 2 0 5 0 2 2 1 1 1
1 1
ンが減少して食物連鎖が狂い、絶滅する種を 生じる
h3:土壌が酸性化し、樹木の成長が阻害さ れ、周辺の生物種の絶滅が生じる。
(i)水質汚濁
il:COD値の上昇によって駿河湾内沖合 10km以内で、酸素欠乏により水生生物種が 生じる。
以上のシナリオに対する回答から、各シナリ オにおける、環境影響の一単位による保護対象 へのインパクトを見積もった。その結果が表7
である。ここではアンケートの結果から特に過 大評価と思える回答を取り除いた上で、回答の
中央値を採用した8)。
また、この結果を環境影響の一単位からの保 護対象へのインパクトCbkとして整理したのが 表8である。このCbkに、各環境影響への寄与
表8:環境影響一単位による保護対象へのイ
ンパクト
保護対象 環境影響項目 地球温暖化 オゾン層破壊 有害化学物質
アセトアルデヒド 人間の健康 ベンゼン
ホルムアルデヒド 大気汚染
NOx SOx
酸性雨
__ _ Chk
4.01×10 ̄3
0.0006
0 0 0
1 1 1
1×10 ̄4 1×10 ̄4
5×10 ̄6
地球温暖化 オゾン層破壊 有害化学物質
アセトアルデヒド キシレン類 トルエン 生物多様性 ベンゼン
ホルムアルデヒド エチルベンゼン ジクロロメタン 四塩化炭素 1,2−ジクロロエタン 酸性雨
水質汚濁
l l 1 1 1 1 1 1 1 0 2
3
石油資源 ガソリン 軽油 枯渇性資源 A重油
灯油 金属資源
普通鋼 アルミニウム 銅
度ekを乗じることにより、保護対象へのインパ クト shkを求めることが出来る。このようにし て得られたsbkを表9に示す。この結果を大雑 把に解釈すれば、静岡大学の1年間の活動は、
人類の期待寿命を4.93×10−6だけ引き下げ、駿 河湾の生態系の最も脆弱な種の絶滅確率を 1.55×10・5だけ押し上げ、かつ表9下部にある
−40−
ような石油資源と金属資源を消費しているこ とになる。ではこのインパクトを経済価値に直 すといくらになるのか?次節ではそれを評価 する。
5.2 保護対象へのインパクトの経済価値 ここでは保護対象へのインパクトの経済価 値(貨幣価値)を求める。
第−に人間の健康(生存)について考える。
本研究では、人ひとりの超過死亡を4000日の 余命損失と等価であるとしているので、この余 命損失の経済価値を推定する。ここではEPS2)
において40年の余命損失を日本円で約1億円 と評価していることを受けて、4000日の余命損 失を2700万円と評価した。すなわち、一人あ たりの超過死亡を2700万円とここでは評価し ている。
次に生物多様性の価値であるが、本研究では 生物多様性へのインパクトの尺度としてひと
つの種の絶滅を取り上げているので、ここでは 種の絶滅に対する支払い意志額を推定する。結 論から言えば、本研究で利用できる、種の絶滅 に対する支払い意志額推定の既往研究はなか った。そこでいくつかの手がかりをもとに種の 絶滅に対する支払い意志額を推定した。
まず先行研究としてEPSでの推定をみると、
EPSでは政府(この場合はスウェーデン)が種 の保護の為に直接的に透視している額はその 社会が種の保護のために支払っていいと思っ ている額を反映していると仮定し、その額の1 0倍を国民全体の種の絶滅に対する年間支払 い意志額であると推定している。この論法をわ が国に適用すれば、わが国の国民全体が種の絶 滅を回避する為に支払っていいと考えている 額は2750億円となる8)。国民ひとりあたりに 直せば2300円である。
一方、栗山10)は、函館市松倉川の生態系保全 に関する支払い意志額について函館市民と札
表9:静岡大学の活動による保護対象へのイ
ンパクト
保穫対象 環境影響項目 S..
地球温暖化 3.51×10 ̄‖
オゾン層破壊 有害化学物質
アセトアルデヒド ベンゼン
人間の健康 ホルムアルデヒド 大気汚染
NOx SOx
酸性雨
2.83×10 ̄7 6.42×10 ̄7 3.19×10 ̄6
4.98×10 ̄7 3.14×10●7
2.43×10 ̄13
地球温暖化 2.37×10 ̄6 オゾン層破壊
有害化学物質 アセトアルデヒド キシレン類 トルエン 生物多様性 ベンゼン
ホルムアルデヒド エチルベンゼン ジクロロメタン 四塩化炭素 1,2−ジクロロエタン 酸性雨
水質汚濁
1.60×10 ̄8 5.90×10 ̄7 5.00×10 ̄7 2.00×10 ̄6 5.60×10 ̄6 5.90×10 ̄7 9.30×10▼8 1.80×10 ̄8 7.60×10 ̄10 1.46×10 ̄6
2.24×10 ̄6
石油資源 ガソリン 軽油 A重油 枯渇性資源 灯油
金属資源 普通鋼 アルミニウム 銅
771000 39000 69000 900
幌市民を対象に調査を行い、ひとりあたり支払 い意志額として3500〜5000円という値を得て いる。
本研究ではこれら先行研究の結果を踏まえ て、種の絶滅の回避に対する支払い意志額を一 人あたり3000円と設定した。これに世界の人 口を乗じれば、人類が生物種の絶滅回避に感じ る支払い意志額を求めることができ、18兆円と
評価される。
石油資源と金属資源に関しては、市場価格か ら支払い意志額を推定し、これら枯渇性資源の 価値を評価することとした。基本的な考え方は 以下の通りである。
一般にある財に対する需要曲線は、その財に 対する支払い意志額を反映していると考えら れている。したがって、図2のように財が価格 Pで数量Qだけ市場に供給されているとき、消 費者の効用は、需要曲線を財の数量0からQま で積分することによって得られる。しかし実際 には消費者は対価としてPXQを支払っている ので、差し引き消費者が感じる効用は図2の着 色された部分の面積に相当する。これは消費者 余剰と呼ばれる部分である。本研究では消費者 余剰をもって各資源の経済価値を評価した。ま ず各資源の国内における消費者余剰を求め、こ れを国内年間消費量で割ることにより、各資源 の単位量当たりの消費者余剰を求め、これを資 源消費によって失われる経済価値の単位とし
た。
消費者余剰を求めるためにはまず需要曲線 を求める必要がある。本研究では、
・市場価格が単純に需要曲線と反映している
・需要曲線は直線である
というふたつの仮定を置いて、過去の販売実績 から回帰分析によって需要曲線を推定した。そ
表10:資源の単位あたり消費者余剰
貴賓 消費者余剰 単位量当たり消費者余事
(×10億円)
ガソリン 4,235 軽油 1,204 A重油 410
灯油 704
普通鋼 4.450 アルミニウム 639
7 7 8 2 7 2 1 2
(円/L)
(円/L)
く円/L)
(円/L)
65.000 (円/t)
310,000 (円/t)
鋼 373 290,000 (円/t)
してその需要曲線をもとに各資源の消費者余 剰を求めた8)。その結果を表10に示す。
こうして得られた保護対象の−単位あたり の経済価値を、前節で求めたインパクト sbkに 乗じることで各保護対象の経済価値が求まる。
その結果、静岡大学の一年間の活動による保護 対象への影響は、
・人間の健康(生存)について、271,900円
・生物多様性について、21,200円
・枯渇性資源について、72,860,000円 と評価された。
6.考察
6.1 評価結果について
このように、本研究では、静岡大学の一年間 の活動は総額で約7320万円相当の環境へのイ
ンパクトをもたらしているものと評価された。
しかもこのうち約6000万円はガソリンの消費 によるものである。これをどう解釈すべきであ ろうか。
この評価を正しいものとする立場に立てば、
大学の環境マネジメントのための方針は明ら かで、大学活動に伴って消費されるガソリンを 減らすことが、大学からの環境影響を減らす一 番の近道ということになる。この立場に立てば、
真っ先に考えるべきなのは、通学通勤における、
自動車・バイクから公共交通へのモーダルシフ トであろう。このような対策はC02や大気汚染
ー42−
表11:リサイクルセンターの効果 金属貴賓 削減量(t) 削減効果(円)
普通鋼 6 390,000 アルミニウム 0.18 60,000
銅 0.12 30,000
物質、有害化学物質の削減ももたらし、それに よる環境影響の低減をも期待できるであろう。
しかし、ガソリン消費だけで6000万円もの 環境影響をもたらしているという評価は、あま りにもバランスを欠いている。この値が過大評 価である疑いは捨てきれない。これが過大評価 であるなら、その理由は以下のようなものであ ると考えられる。第一は、元データの仮定であ る。本研究では市場価格が消費者の支払い意志 額を反映していると仮定している。しかし、実 際には石油製品の小売価格は需要と供給のバ ランスだけでなく、政府による政策的介入に左 右される。第2に、本研究では市場価格の実績 から需要曲線を回帰分析によって推定したが、
得られるデータはどうしても現在の市場価格 の近傍のデータだけになり、y軸近くの需要曲 線の振る舞いに関しては、大胆な外挿を行って いることになる。これは誤差を生み出すもとで ある。以上のようなことを考えると、資源の経 済価値の評価については、別の手法によって検 証を行う必要性があるだろう。
6.2 環境負荷削減計画の評価
ここでは静岡大学のためのふたつの環境負 荷削減計画についてその効果を評価してみる。
(1)キャンパスリサイクルセンター構想 この研究班の研究分担者はキャンパス内で 発生した不要物の再利用促進のため、キャンパ スリサイクルセンターの実現に向けて取り組 みを進めている。この効果をここでは推定して みる。ただし、キャンパスリサイクルセンター はまだ形ができたばかりで、まだ本格的な運用
表12:仮想的負荷削減計画の効果
項目 削減量 効果(円)
CO2 696t−C 12,000(健康)
700(生物多様性)
NOx 3.6t 38,000(健康)
SOx 1.2t 15,000(健康)
ガソリン 612000L 47.000,000(資源)
軽油 38000L 1,000,000(資源)
をスタートさせておらず、効果を推定するデー タがない。そこでここでは仮にリサイクルセン ターの効果として不燃性廃棄物の量を10%削 減できたと仮定し、その効果を評価する。
その結果が表11である。貨幣価値にして年 間およそ48万円の価値を生み出すと評価され た。
(2)仮想的負荷削減計画
昨年の学内特別プロジェクト「人間と地球環 境」の中でも、著者らは本学の環境負荷削減の ため、いくつか仮想的な提案を行っている1)。
ここではその効果の貨幣価値による評価を行
う。
想定する対策は次のようなものである。
・エアコン・照明などの節電を徹底する
・全てのコンピュータディスプレイを液晶型 に置き換える
・暖房給湯用のA重油を都市ガスに転換する
・コピー用紙使用量を1割削減する
生ゴミを全てコンポスト化し、廃棄物のう ち可燃物・不燃物を各々20%,40蛸り減する
・通勤・通学については、原付→自転車、自 動車→バスのようなモーダルシフトを徹底
して導入する。
この効果をまとめたのが表12である。人間 の健康について65,000円、生物多様性につい て、700円、枯渇性資源について4800万円の 価値を生み出すと評価された。もちろん、資源 についての高い評価を生み出した要因は、通 勤・通学におけるモーダルシフトである。
7.おわりに
本研究では静岡大学の活動による環境影響 および環境改善計画の評価を念頭にした、環境 影響の経済的評価の手法を開発した。またその 手法を用いて静岡大学の1998年度の一年間の 環境影響を評価し、人間の健康(生存)につい て271,900円、生物多様性について21,200円、
枯渇性資源について72,860,000円という評価 結果を得た。
地球温暖化にかんする政策論議の中でしば しば聞かれる言葉にNoregretpolicyという言 葉がある。予想される温暖化が真実であれ誤り であれ、いずれにしても後悔しない政策を作っ ていこうという考え方である。大学の環境マネ ジメントにおいても同様の発想が必要かもし れない。環境マネジメントには何がしかの予算
と資源を必要とするだろう。しかしそれら予算 が本来の教育・研究を圧迫したり、資源消費が 別の問題を引き起こしていたのでは何にもな
らない。後悔しない政策を考えるためには、そ の政策の効果をきちんと見極める手法の確立 が求められるだろう。
本研究の評価によれば、ガソリン消費の削減 が、最も高い環境改善効果をもたらすことにな る。しかし仮にこの評価が誤りであっても、枯 渇性資源であるガソリン消費のスピードを抑 制することが、社会にとって有益であることは 疑いもない。このような「いずれにせよ後悔し ない政策」を中心として、大学の環境負荷の削 減を考えていくことが、今後は必要となるだろ
う。
[謝辞]
多くの資料をいただきました、経理部契約室 調達第二係長西川正孝様、経理部会計事務セン タ一室施設係寺田周様に厚く御礼申し上げま す。
[参考文献]
1)前田恭伸,松坂光照:エコキャンパスマス タープランのための基礎的研究 一静岡大 学の環境負荷とその削減方策に関する考察
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2)Steen,BengtandSven−0lofRyding:me EPg 血l加一月Cのm如 腸班od IVL Report,IVL,Sweden,1992.
3)寺園淳他:問題領域と保護対象に基づく環 境影響総合評価の枠組み,環境科学会誌,
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4)Goedkoop,M.:TheEco・indicator95丘nal report. NOH report 9523, The
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5)松坂光照,前田恭伸:静岡大学の活動によ る環境負荷・環境影響と今後の環境マネジ メン寸,静岡大学工学部研究報告,第50号,
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9)地球環境工学ハンドブック編集委貞会:地 球環境工学ハンドブック,582−589,オーム 社,1991.
10)栗山浩一:環境の価値と評価手法 CVM による経済評価.北海道大学図書刊行会,
1998.
−44−