『ドイツ型銀行類型』とベルリン大銀行
著者 居城 弘
雑誌名 靜岡大学法経研究
巻 44
号 2
ページ 1‑38
発行年 1995‑07‑25
出版者 静岡大学人文学部
URL http://doi.org/10.14945/00005823
﹃ド イ ツ型 銀 行 類 型
﹄と ベ ル リ 大ン 銀 行
居 城 弘
︽一
︾ 課 題 と限 定 いわ
ゆ る﹁ イド ツ型 銀行 類 型﹂ は︑ 正 規 の銀 行業 務 と並 ん で証 券業 務 や投 資銀 行業 務 を兼 営す る銀 行業 の 一類 型 であ り
︑ 今 日 の ユ ニバ ーサ
・ル バ クン の原 型 をな すも の であ るド︒ イ のツ 信 用制 度 の中 心的 な構 成 部 分を なす 株式 信 用銀 行 は ︑ 一 九 世紀 の五 年〇 代 の﹁ 第 一次 設立 期﹂ と 七︑
〇年 代初 め の﹁ 第 二次 設立
﹂期 の三 度 の会 社 設立 o創 業 ブ ーム のな か で誕 生 した
︒ 生 成当 初 のド イ ツの 諸 銀行 は︑ イギ リ スの 銀行 な とど 比較 す とる 大︑ くき 異 たっ 特徴 を も つも ので あ たっ 具︒ 体 的 に は
︑ ド イ ツの 産 業革 命 の金 融的 課題 を達 成 す るも との し て産︑ 業 企業 の創 業 や株 式社 債 など 証券 の引 受
・発 行 一冗︑ 買 な ど の業 務 傾に 斜 し そ︑ こ に力 点 を置 いた こと であ る︒ しか し ワ﹂︑ う たし 当 初 の性 格 は そ の後 七︑
〇年 代以 降 の展 開 の中 で変 化を 遂 げ い︑ わ ゆ る正 規 の銀 行業 務 の分 野 を強 化
・拡 大 し そ︑ の基 礎 のう え 証で 券
・投 資銀 行業 務 を有 機 的 に兼 営 す ると いう 業 態 的 質特 を も つ﹁ ド イ ツ型 銀 行 類型
﹂を 成 立 さ せた ので あ たっ こ︒ うし た﹁ 銀 行類
﹂型 は いか な る背 景 と 諸 契 機 よに てっ 生 み 出 さ れ る とこ なに たっ のか さ︑ ら には
﹁ド イ
ツ型 銀行 類型
﹂は ど のよ うな 特 質
・性 格 を ちも 金︑ 融 シ ステ ム の全 体 に対 し い︑
﹁ド イツ 型銀 行類 型﹂と ベル リ 大ン 銀行
一
法経 研究 四四 巻二 号
︵一 九九 五年
︶ 一
一 か な る規 定 的 な影 響 をも た すら も の あで たっ のか を解 明す る こと が必 要 あで ろう こ︒ れを 明 確 にす る こと を 通じ て︑ 兼 営 銀行 制 を中 核 と す る イド ツ型 金 融 シ ステ ム の特 質 と問 題 点も 明︑ ら かと な るも のと 思 われ る︒ 小稿 は こ の課 題 の遂 行 に向 け た 一連 の作 業 の 一環 を 成す も ので あ る︒ と く に︑ ここ では 十九 世 紀七
〇年 代以 降 の段 階 にお け る ベ︑ リル 大ン 銀 行 自 体 の業 態 構 造 の変 化
・展 開過 程 の考 察 に主 眼を お く こと とす る︒ さき に筆 者 は︑ イラ ウン エス ト フ アー レ ン の地 方 銀 行 に焦 点 を当 てそ の業 態 の変 化 に つい て検 討 す る機 会 があ たっ が 今︑ 回 は ベ ルリ ン大 銀行 の考 察 を行 い︑ 今後 そ の全 体 を総 合化 す るた め の準 備 作 業 と たし い︒
︽二
︾
﹁設 立 ブ ー ム﹂ の 崩壊 と恐 慌 後 の ベ リル 大ン 銀行 一八
七
〇 年代 初 め の﹁ 設 立ブ ーム
﹂と そ の崩 壊 は︑ 銀行 業 の分 野 にも 大 き な影 響 をも たら し だ
︒ こ のブ ーム の中 でお よ そ 一三
〇行 に のぼ る銀 行 の創 業 が行 われ たが ワL︑ れ ら の中 には 後︑ に ベ リル 大ン 銀 行 に成 長 す るド イ チ バェ クン
︵一 八 七
〇年
︶や メコ ル ツ銀 行 2 八七
〇年
︶ド︑ レ スナ ー銀 行 2 八七 二年
︶の かほ に︑ 多数 の有 地力 方 銀行 含も ま れ て い想
︒ し か し ま た︑ 投 機 的 な 証券 取引 を主 た る業 務 と す るも のや
︐不 動 産投 機 に傾 斜 し た業 務 に重 点 を置 くと い たっ 泡沫 的 な 銀 行 も か な り の数 のに ぼ たっ の あで る︒ 七 三年 月四
︐ウ イ ー 取ン 引 所 の崩 壊 と そ のド イ ツヘ の波 及 は
︑ ベ リル 取ン 引所 の暴 落 を 契機 とし て︑
﹁設 立 ブ ー
﹂ム 崩の 壊 をも た らし た︒ 恐 慌 商は 業 流︑ 通 か ら産 業全 般 まに でひ ろが てっ いき
︑ 過 剰 な 在 庫 を抱 え たま ま支 払 い不 能 に陥 る企 業 が続 出す る にい た たっ 生︒ 産 の領 域 ので 全般 的 な過 剰 生 産 の顕 在 化 と販 売 の困 難 当︒ 然 こ の影 響 は銀 行業 まに で波 及 し 銀︑ 行 貸付 の固 化定 や回 収 不能 事の 態 が広 がる と とも に︑ 証券 投 機 の損 失 から 巨 額 の欠 損 を生 じ さ せ 倒︑ 産 に追 い込 まれ る銀 行 が続 出 した
︒
ブ ー ム期 の創 業活 動 の失 敗 や 投︑ 機 な的 証 券業 務 に深 くか かわ てっ 支︑ 払 い不 能 や倒 産 追に い込 ま れ た銀 行 は 清︑ 算 に よ り消 滅 す るか 他︑ 有の 力 銀行 に吸 収 され る こと にな たっ こ︒ れ は︑ 慌恐 を契 機 とす る︑ 破 産 に瀕 し た 銀 行 の吸 収
・合 併 の進 展 であ り 事︑ 実 上 の銀 集行 中 にほ かな らな か たっ
︒
︵1
︶恐 慌後 の ベ リル 大ン 銀 行 恐 慌 は有 力 な ベ リル 大ン 銀 行 にも 深 い影 響を 与 えた ブ︒ ーム の中 で大 銀 行 も創 業 や証 券 引の 受 け
・発 行 深に くか かわ っ たか ら であ る︒ と く に証 券 業務 ので 損 失 の大 き さ は︐ そ の後 の銀 行 の在 り方 にも 大 き な影 響 を 及 ぼ さ ず にお か な か たっ
︒ 恐慌 後 の ベ リル 大ン 銀行 が 産︐ 業 企 業 の創 業 や株 式 の引 受 け o発 行業 務 にた いし て︑ 慎 重 な態 度 を取 る こと にな たっ 事 は うい ま でも な いが さ︑ ら にそ の後 の不 況期 おに てい ベ リル のン 大銀 行 は︑ 次 の二 つの 動 きを 強 め る こと にな たっ
︒ そ の第 一は 金︑ 融 市場 の中 心 の地 位 を固 め つ つあ たっ ベ リル 金ン 融市 場 を活 動 の基 盤と し て︑ 外国 証 券 や公 債 など 引の 受 け
・発 行 業務 の拡 を大 目 指 し た事 であ る︒ 公債
・地 方 債
・外 国 債 鉄︑ 道 証券 不︑ 動産 抵 当信 用な ど の証 券 の引 受 け
︒発 行 業務 の拡 大 に向 か たっ 背 景 には 以 下 のよ う な事 情 が あ たっ 不︒ 況 の持 続 によ てっ 産︑ 業 の資 金需 要 が 低 迷 す る中 で︑ 銀 行 にと てっ の確 実 な収 益確 保 の手 段 とし て︑ ワしれ ら の確 定利 付 き証 券 の引 受
・売 り出 し業 務 重が 視 され た こと 銀︑ 行 の顧 客
・ 投資 家 に対 し ても 株︑ 式 に代 わ る安 定 的投 資 対象 と し て確 定利 つき 証券 を提 供 す る こと が求 め られ た こと であ る︒ さら に︑ プ ロイ セ のン 公 債発 行 に つい ては 従︑ 来 ま では ゼ ー ハン ド ル クン
︵プ ロイ セ ン邦 立銀 行
︶の 単独 発 行 に よ てっ 行 わ れ てき た が 公︑ 債 の発 行額 増の 加 や︑ 七
〇年 代末 の鉄 道国 有化 政策 伴に う国 債 への 転換 業 務も 加 わ たっ とこ か ら 民︑ 間 銀 行 を 参 加 さ せ たプ イロ セ ン コ ソン チル ウ ム︵引 受 シ ジン ケ ート
︶を 構成 し
︑ これ を 通 じ て行 わ れ るよ う にな たっ こと があ げ ら れ る︒
︐ しの プ イロ セ ン コン ソ チル ウ ム おに い て︑ 実質 的 に指 導 的 な役 割を イデ ス コン トゲ ゼ ルシ フャ がト 果 たし た の であ る︒
﹁ド イツ 型銀 行類
﹂と型 ベル リン 大銀 行
三
¨ 四 法経 研究 四四 巻 二号
︵一 九九 五年
︶ 内外の公債等の証券発行業務において︐デイスコントゲゼルシャフトが強い影響力を発揮するような地位を築くように なった重要な契機は︑六〇年代に外国公債︵オーストリー公債︶の取引や︑バーデンおよびバイエルンなど南ドイツ諸国の 国債取引を成功させたことであった︒それまで外国公債や国債発行に関しては︑ロートシルドによる圧倒的な支配が続い てきたのであるが︑ワしれに対してデイスコントゲゼルシャフトは︐諸外国の銀行や国内の有力個人銀行家などを引受けコ ンソルチウムに組織して︑その主導のもとにベルリンの金融市場をバックにして証券の引受け売出しと巨額の融資を実 現したのであった︒この背景には︑同行の指導者ハンゼマンの政治的な影響力があったということに加えて︑ベルリン金 融市場の地位がフランクフルトを凌駕するようになったことを物語るものでもあった︒こうして︐外国債に関するロート シルド・コンソルチウムにおいても︐デイスコントゲゼルシャフトが大きな影響力をもつようになったのである︒鉄道証 券︑抵当証券の発行においても強い影響力を発揮した︒七〇年代に入り︑その指導性は一層顕著になり︑国内外の鉄道証 券︑外国債のほかに︑産業の株式社債の引受け・発行も拡大する︒公債︑地方債や外国債などの取引を巡り︑ワ﹂れに参加し ようとする諸銀行との競争も激しくなった︒特に新しく登場したドイチェバンタの公債などの業務への進出については︑ プロイセンコンソルチウムやデイスコントゲゼルシャフトとの対立や抵抗が生じることとなった︒この問題については 複雑な経過があったが︑結局のところ︑七七年の公債借り換えを契機に両者の妥協が成立し︑最初は控えめな参加割合で︑ ドイチェバンクのプロイセンコンソルチウムヘの参加が認められることになった︒これは︑創業して十年もたたずして︑ ドイチェバンクのベルリン金融市場における地位が定着し︑無視し得ない存在として成長したことを示すものでもあっ た︒︵∪Φ●雰
o FoRw井
・ 〇・ ︲
・い∞﹃﹃b・卜・ い∞﹃∞・ 卜〜い︶ 第二に︑以上の動きと並んで︑ベルリン大銀行が七・八〇年代にかけて︑本格的に正規の銀行業務の領域拡張に向かう ことになったことが挙げられる︒そのためには︐諸銀行が産業の取引先顧客の範囲を広げることが急務となったが︑フ﹂の
課題 は︐長 び く不 期況 の状 況 の下 では 容易 には 達 成 され な か たっ
︐ し︒ の中 で︑ 先 にも 指 摘し た よう に︑ 経営 危 機 に陥 たっ 銀 行 の清 算 を引 き受 け そ︑ れら の銀 行 の優 良 な顧 客 と の取 引 関係 を引 き継 ぐ こと によ てっ 取︑ 引 先 を拡 大 し た り あ︑ る い は ま た よ︑ り積 極的 に︑ 新 し い技 術 的革 新 に基 づ い て発 展 の芽 を のば し つ つあ たっ 電気 や化 学 な ど の︐新 興産 業 の若 い企 業 を 育成 す る とこ よに てっ 顧 客層 の開 拓を 行 うな ど さ︑ まざ ま な試 みが な さ れた ので あ る︒ 新 し い顧 客 の獲 得 と と も に フし︑ れ ま で の取 引 先顧 客 と の銀 行取 引関 係 が見 直 さ れ る こと と な たっ 好︒ 期況 行に われ た貸 付 けが 固 定 化 し回 収 困 難 にな っ たも のや 産︑ 業 の証 券 引受 業 務 の破 綻 から 売 残れ り部 分 を抱 えた 状態 から の脱 却 を迫 れら たか ら であ たっ そ︒ のた め には
︑ 顧 客 の経 営 立の て直 とし 健 全化 のた め に︑ 長期 的 な展 望 の下 で︑ 取引 先 と の恒 常 的 な関 係を 強化 す る こと が必 要 であ たっ
︒ 交 互計 算 取引 を基 盤 と し 支︑ 払 い取 引 の媒 介 や手 形 割引 交︑ 互計 算
・当 座 越貸 な ど の信 用取 引 を重 視 す る傾 向 が 強 ま たっ の あで る︒ 銀 行 の業 務 の重 点 が 従︑ 来 以上 に︑ 正 規 の銀 行 業務 の領 域 にお か れ よる う にな たっ こと を 意 す味 る︒ こう たし 動 きを 加速 し た のが
︐七
〇年 初代 め 登に 場 し た イド チ バェ クン よに る積 極的 な預 金業 務 の展 開 あで たっ そ︒ こ でベ ルリ 大ン 銀 行 によ る業 態 構造 の転 換 の検 討 入に る前 にド︑ イ チ バェ クン によ てっ 導主 され た預 金 業務 に つい て見 てお く こと にし す卜 つ︒
︵2
︶ ド イ チ バェ クン と預 金取 引 イド チ バェ クン が イド のツ 通商 貿易 の推 進 のた め 海︑ 外 と の貨 幣
・信 用取 引 貿︑ 易 金融 の媒 介 を 業︐創 にあ た てっ の課 題 と し て前 面 に掲 げ て登 場 し た こと はよ く知 ら れ てい るし︒ かし 国︑ 際 金融 業 務 の拡 大 のた め には 強︑ 力 な 国内 銀 行 業 務 の基 盤 が 構築 され けな れ なば なら いと いう こと か ら取 り組 ま たれ のが 預金 業 務 であ っだ そ︒ れ は 銀︑ 行 業 務 の基 礎 預は 金業 務 にあ とる す る︐同 行 の指 導 者 たち の認 識 よに るも ので あ たっ そ︒ れ によ れば ド︑ イ ツの 銀行 制度 にお い て︑ 外海 と の取 引 の
﹁ド イ ツ型 銀 行類 型﹂と
ベル リ ン大 銀行
五