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浜田圭之助・森下浩史 長崎大学教育学部化学教室

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Academic year: 2021

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(1)

二硫化炭素および二酸化炭素の 回転‑振動ラマン・スペクトルの線形

浜田圭之助・森下浩史

長崎大学教育学部化学教室 (昭和48年10月51日受理)

The Band Contours of Rotation‑Vibrational Raman Spectra of Carbon Disulfide

ard Carbon Dioxide

Keinosuke HAMADA and Hirofumi MORISHITA

Faculty of Education, Nagasaki University, Nagasaki 852 (Received Oct. 31, 1973)

Abstract

Rotation‑vibrational Raman spectra of gaseous CS2 and CO2 in multi‑pass cell are recorded on JEOL JRS‑SlB spectrophotometer using argon ion laser at room temperature.

The O and S envelopes of symmetrical S‑C‑S stretching vibration have been obtained for the first time, and rotational constant, B is calculated to be 0.109 cm‑1 using separation of maxima of O and S envelopes.

It is well known that the Fermi resonance in CS2 is not so strong as in

CO2 based on the intensities of v1 and 2v2. The present paper reports that

the band contours of v1 and 2v2 in CS2 are independent of each other, but

dependent of in CO2. This supports strong Fermi resonance in CO2 and very

weak (or no) Fermi resonance in CS2.

(2)

1.緒

 二硫化炭素(CS。)および二酸化炭素(CO。)は,共に直線分子であることは周知の事実で ある。したがってラマン・スペクトルは,互に良く似ていることが予想された。しかしながら CS2の対称伸縮振動,ツ、(馬)バンドは,平行バンド特有の0,QおよびS枝より成っており,

対称変角振動,δ・(レ2)の倍音,2ン2バ、ンドは,Qダブレットより成っている・一方CO2にお いては,ツ豊およば2レ2バンド共にQダブレットより成っている。これらスペクトルの線形と Fermi共鳴との関係を考察した。

 なお,CS。の0,S枝の包絡線の最高値の間隔から,回転定数Bを計算し0.109cm一一を得

た◎

2.実

 気体のCS2およびCO2共に多重反射セルに入れ,JEOLlJRS−SIB型,A.+レーザ・ラマ ン分光々度計を使用して,ラマン・スペクトルを測定した。CO2の圧力は76mmHg,CS2の 圧力は室温(27℃)におけるCS。の蒸気圧である。液体のCS2はテスト・チューブに封入し

て測定した。

3.結果およぴ考察

 気体のCS2の場合,レ、バンドは662cmdに現われ,平行バンド特有の0,QおよびS枝

より成っている一)。 (図1(A)参照)

Stoicheff2)は,ガス状のCS2のラマン・スペクトルを詳細に研究しているが,本研究はン!

の0,S枝の包絡線を得,その最高値の間隔(15.5cm顛1)を式3)∠レ(0−S間隔)=2.558 〆7勇cm−1(Tは絶対温度)に代入して,回転定数βを求めたはじめての例である。

得られたβ値は0.109cmdで,Stoicheff2)が純回転スペクトルの線問隔から得た値0.10910 cm需1と良く一致している。

 変角振動,δ8(ン2)は,ラマン不活性*1)であるが,その倍音2ッ2は気体では810cm幡!*2)

に弱く現われた。 しかし強度が弱いので,気体での2ン・の回転r振動スペクトルは測定でき なかった。

回転一振動スペクトルは液体においても,場合によっては固体においても観測されるというこ とは,よく知られた事実である4)。

液体のCS2の2ッ2バンドは,図2に示すように,Qダブレット5)より成ることが分った。液 体のCS、のン,バンドは図1(B)に示すように,Q枝*3)が非常に強く現われ,0枝は中程度 の強さで現われるが,S枝は現われない。このことは気体のスペクトルとの比較から問違いの ないところである。しかしながら,直線分子の平行バンドであるという予備知識なしにスペク

トルを見た時,S枝が現われないところから,0枝がQ枝とダブレットを形成している,っ

柴一)液体においては,402cm一一に弱く現われる。これは分子間相互作用による。

*2)液体においては,805cm に2レ2が現われた。

*3)気体と液体においては,波数に若干のずれが見られる。

(3)

A》Ga8

⊂B,LI,quユd  −9

     

  一D■■レ6■9

    ド つ

    し、J Q     r一■〆659     11     1 量    1 8

    1     0       1

Q_画l l 毒

        《 662     1  J l         り       巳         」1    塵  1 8    1 馳 , l          l    l  l 

   l  l, l    l  lJ l

      覧」  監    8      1    0      監    量       覧    書       、

、、

      675      650

Fig.1. Theン1Raman Band Contours of CS2in Gas State値)

    and in Liquid State(B)

scan speed, (4)

      (B)

sensitivity, (A)

      (B)

slit   ,囚       (B)

1 ×10cm一一

〇.25×100 〃

1×1×250pps 16×1×250〃

6.8cm?一×10mm

5.4〃  ×  〃

excitation,(A)

     (B)

expansion,㈱

     (B)

ce11     ,(A)

     (B〉

Ar+4880A

  〃 125cm『1

  グ

multi−passcell

test tube

まりQのないO,S枝と見誤るか,0枝を別のバンドの倍音あるいは結合音などと,間違う 可能性が多分にあるように思われる。

 CO2のラマン・スペクトルについてはYoshinoとBemstein6)が詳しく研究しているとこ ろであるが,CS2のスペクトルの線形との比較の便のため,著者の測定したものを図5に示 す。一般に倍音2ン2は基音,レーに比して,はるかに強度が小さいはずである。事実CS2の場 合にはそのようになっている。 ところがCO2の667cm哨1バンド(レ2)の倍音の波数,

1,534cm−1がレーの波数と極めて近く,Fermi共鳴が生じた結果,1,593cm}1と↑,290cm に強いFermiダブレットを生じている。そして,それぞれ1,415cmdおよび1,270cm弓バ ンドを衛星として,Qダブレットを形成していると考えられる。 これらはツ2の倍音の波数 1,554cm囎 から,ほぼ等間隔にあり,線形も同じで何れを馬または2ン2に帰属すべきか区

男晒できない。

(4)

801

808

816

788

{〃,

{山

825 800 775

Fig2.The2レ2Raman Band of CS2in Liquid State

scan speed,0。25×100cm『一/min.

sensitivity, 4×1×250pps slit    ,5.4cm噛一×10mm

excitation,Ar+4880A expansion,125cm−1

test tube

 CS2の場合,Fermi共鳴が生じていないことは,残に比し2レ2の強度が極度に弱いこと,

および2ッ2の波数805cm 1*2)に対して,ン2の波数が805cm一一の%にほぼ等しい402cm需一*1)

であることから明らかである。此の場合には残,2レ2への帰属ははっきりしている。

Stoicheff7)によればCS2は場合,レーと2ツ2の強度差が非常に大きいので,Fermi共鳴はCO2 の場合程,強くないと表現しているが,ン2・と2レ2の波数および波形の関係も,Stoicheffの 云うところを裏付けている。

4.結

 CS2およびCO。は直線分子で,慣性能率が比較的,小さいところから,純回転および回転 一振動ラマン・スペクトルの研究対象となっている一・5・6、。 しかしながら本論文はCS2にっ いて,平行バンド特有の0,QおよびS枝を包絡線として測定し,その0−S間隔から回転定 数を計算した,はじめての例である。

(5)

(〃)

11μ5

1395 惣90

1270

(⊥)

1尊50 1耳oo 1550 1300 1250

Fig.5. Theレーand2ッ2Raman Bands of CO2in Gas State

scan speed,0.25×100cm一一/min.

sensitivity, 1×1×250pps slit    ,14cm『一×10mm

excitation,Ar+4880A expansion,500cm一一 multi−pass celI

 CS2ではレーと2レ2のFermi共鳴は殆んど生じていないが,CO2では両者の間でFermi 共鳴を生じていることは,馬と2ン2のバンド強度および擁と2レ2の波数の点から,すでに

明らかにされている。

本研究では,Fermi共鳴の生じていないCS2の場合,レ,は対称伸縮振動バンド(平行バン ド)特有の0,QおよびS枝より成り,2レ2はQダブレットより成っているが,Fermi共 鳴の生じているCO2の場合,レ1,ン2ともに特有のQダブレットより成ることを明らかにし た。Femi共鳴と線形との関係を示す一例として報告する。

 なお,液体試料の場合の回転一振動スペクトルについて考察したが,CS2のン1,2ン2とも にrotational wingを持っている。単純な分子構造であるため,その帰属がはっきりした が,複雑な分子ではrotational wingと基音,倍音,結合音などとの識別は困難であろう。

 本研究に使用したレーザ・ラマン分光光度計は,昭和47年度文部省科学研究費補助金による ものである。当局に深く感謝するものである。

(6)

   x   

l)  2)  5)  4)  5)  6)  7) 

K. Hamada, J. Phys. Soc. Japan, 35, 1564 (1975)  B.P. Stoicheff. C'an. J. Phys. 86, 218 (1958) 

M. Davies "Infrared Spectroscopy and Molecular Structure" N.Y., 1965, p,144. 

M.F. Crawford, H.L. Welsh and J.H. Harrold. Can. J. Phys, 30, 81 (1952)  G M. Barrow "Introduction to Molecular Spectroscopy" N.Y. 1962, p,148. 

T. Yoshino and H.J. Bernstein, J. Mol. Spectr, 2, 215 (1958) 

B P Storcheff "Hrgh Resolutron Studres of Vlbration Rotatron Structure" in Advances  en Spectroscopy, 1, 91 (1959) 

参照

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