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良好な夫婦システムに影響を及ぼす コミュニケーション行動

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(1)

愛知淑徳短期大学研究紀要 第38号 1999  1

良好な夫婦システムに影響を及ぼす

     コミュニケーション行動

永 田 忠 夫

The Correlation between Good Marital Relationships     and Communication Between Partners

Tadao Nagata

1.問題

 夫婦関係の健全さは,夫婦システムの安定化した状態であるといえる。その夫婦システムの 維持・発展あるいは崩壊に夫および妻の夫婦関係におけるコミュニケーション行動が関与する

と考えられる。

 円環モデル(Olson, D. H.ら:1979〜 )では,家族システムや家族システムの下位システ ムである夫婦システムの健全さを凝集性,適応性,コミュニケーションの3つの次元でアセス メントする。このモデルでは,夫婦・家族システムが健康で良好な状態であるためには,凝集 性尺度(夫婦・家族成員間の情緒的な結びつき)と適応性尺度(夫婦・家族がシステムでおき た問題や危機に対処できる能力)の得点がそれぞれ中庸な程度であることとしている(カーブ リニアな尺度)。また,積極的に夫婦・家族システム維持・発展をはかるエネルギーとして,

あるいは凝集性と適応性が中庸な範囲を逸脱したり偏りが大きすぎて夫婦・家族システムの機 能に支障が生じたときにそれを修復させるパワーとして,各成員間で適切なコミュニケーショ ン活動がなされることが必要であるとしている。凝集性と適応性は,夫婦・家族システムにお ける本来的で基本的なシステム機能が維持されているかどうかを把握する2次元であり,コ

ミュニケーション次元はそれらの機能が円滑に運用されるように機能しているかどうかを把握 する次元(促進的役割をもつ次元)であると考えられている。

 人間関係をシステムとして把握するとき,その形成・維持・発展にコミュニケーション活動 が重要な役割をなしているといえる。たとえば,友人関係においても,相手本位の態度,相手 の立場に立った気配り,相手を知る努力,明朗でとっつきやすい雰囲気,本音の自己開示,相 互の自己開示の許容,などコミュニケーション活動における送り手や受け手の関わり方・態度 や伝達のスキルが友人関係の深化に関わる要因であることを検証している(楠見:1988)。

(2)

 夫婦・家族システムのアセスメント・テストとして,Olson, D. H.らは,凝集性と適応性尺 度の2次元からなる自己報告形式のFACES(Family Adaptability and Cohesion Evaluation Scale)を作成した。

 永田(1992a)は, FACES皿(カップル版)をもちいて,夫婦システム評価尺度(適応性と 凝集性の2尺度で構成されている)の検討をした。適応性と凝集性の2次元で構成されている 20項目を因子分析した結果,凝集性・協調性・ tt役割分担の3因子が抽出され,凝集性は因子と して抽出されたが適応性に属する項目が明確に因子として抽出されなかった。適応性項目が抽 出されにくい結果は,カップル版のみならず,家族システム環境尺度・家族満足度尺度に関す る日本訳の研究(黒川:1990,永田:1992b,茂木:1994)でもその傾向がみられた。日本の 文化背景から,適応性尺度は明確には成り立ちにくいと考えられている。

 夫婦・家族システムのコミュニケーション次元のアセスメントについては,Olson, D. H.ら

(1989)が直接観察法の評価表としてClinical Rating Scaleを作成した際に,凝集性次元尺度・

適応性次元尺度のほかに,コミュニケーション次元尺度を加えた。それは,1.話題の連続・一 貫性,2.他者の尊重と他者へり関心,3.メッセージの明瞭性,4.表現の自由度,5.コミュニケー

ション・スキル(①聞き手のスキル,②送り手のスキル)という評定項目で構成された。

 しかし,円環モデルの検証において,自己報告形式で得られたデータを用いて,凝集性尺度 と適応性尺度の2次元による「夫婦システム評価」に,促進的役割を持つと考えられているコ ミュニケーションがどのように関与しているかについて検討されt;研究はない。家族システム については,大塚ら(1994)が検討している。むしろ,家族システムの研究でも自己報告形式 でコミュニケーション次元が測定される場合は他の要因と並列的に扱われていることが多い

(西出:1993 など)。

 永田(1997)は,夫婦間システムにおける夫婦の相互のpミュニケーション行動を,自己報 告形式と観察的方法言い換えれば自己認知と他者評価のデータによって測定する尺度を作成す る試みをした。

 本研究では,FACES皿の「夫婦システム評価尺度」を再検討し,夫婦システムのアセスメ ント尺度を作成し,夫婦システムを評価するのに,コミュニケーション行動(コミュニケーショ ン・スタイルとコミュニケーション・スキル)がいかなる影響を与えているかを明らかにする を目的とした。

 コミュニケーション・スタイルについては,交流分析における理論的概念を用いて作成した

(永田:1997)CPcs[批判的な親の心に基づくコミュニケーション・スタイル]尺度, NPcs

[保護的な親の心に基づくコミュニケーション・スタイル]尺度,Acs[大人の心に基づくコ ミュニケーション・スタイル]尺度,FCcs[自由な子どもに基づくコミュニケーション・ス タイル]尺度,ACcs[順応した子どもの心に基づくコミュニケーション・スタイル]尺度の 5尺度(各6項目による構成)(自己認知用と配偶者認知用)を用いた。

 また,コミュニケーション・スキル尺度については,因子分析と尺度構成の信頼性を用いて

(3)

良好な夫婦システムに影響を及ぼすコミュニケーション行動  3

検討し,1.相互尊重,2.他者否定,3.接近躊躇の3下位尺度を作成したが(永田:1997),夫婦 あるいは夫や妻個人のコミュニケーション・スキルという技術的な能力の測定尺度としては,

必ずしも概念的に明確な分類とはいえなかった。したがって,Olson, D. H.らの臨床評価表を 参考にして作成しなおすことにした。

ll.方法

1.調査対象およびその属性

夫婦 106組。調査対象者の特徴(属性)は,表1〜3のようである。

表1 調査対象者の年齢      表2 夫婦の結婚年数

年齢 夫(構成比) 妻(構成比) 結婚暦年 カップル数(構成比)

20〜24歳 25〜29歳 30〜34歳 35〜39歳 40〜44歳 45〜49歳 50〜54歳 55〜59歳 60歳以上

2(L9)

9(8.5)

4(3.8)

5(4.7)

12(11.3)

46(43.4)

23( 21.7 )

3(2.8)

2(1.9)

3(2.8%)

8(7.5)

5(4.7)

8(7.5)

28( 26.4  ) 42( 39.6  )

10(9.4)

0(0.0)

2(L9)

5年未満

5〜9年

10〜14年 15〜19年 20〜24年 25〜29年 30〜34年 35年以上

13( 12.3%)

5(4.7)

4(3.8)

7(6.6)

60( 56.6 ) 14( 13.2 )

1(0.9)

2(1.9)

表3 調査対象者の職業

職  業

被雇用者(会社員・公務員など)

雇用者(団体役員・会社役員など)

自営業(商売・農業・自由業など)

パートの仕事 無職

79( 74.5%)

4(3.8)

23( 21.7  )

0(0.0)

0(0.0)

17( 16.0%)

0(O.O)

19( 17.9  ) 27( 25.5  ) 43( 40.6  )

2.調査年度 1997年度

3.調査方法

学生を調査員とし,父母や兄姉・知人等の夫婦を対象に質問紙調査をする。

4.調査票の構成

 1)夫婦システム評価尺度項目

(4)

 夫婦システム評価尺度は,FACES皿(カップル版)の項目を翻訳したものを用いた。円環 モデルでは,下位尺度は,凝集性と適応性の2次元尺度で,カーブリニア(数値が極端に高い のも低いのも問題を持つ)変数であると考えている。(表4参照)

 (1)凝集性(凝集性の次元は,密着状態/結合状態/分離状態/遊離状態として捉えられる。)

 (2)適応性(適応性の次元は,硬直状態/構造的/柔軟的/無秩序状態として捉えられる。)

 回答法は5段階評定法。(1:全く当てはまらない,2:どちらかと言えば当てはまらない,

3:どちらともいえない,4:どちらかと言えばよく当てはまる,5:非常によく当てはまる)。

表4 夫婦システム評価尺度(FACEsm)の構成

2次元の項目とその概念構成

 【1.凝集性】(夫婦システムにおける2者の情緒的な結びつき)

1.私たち夫婦は,お互いに助け合っている。

7.家族を除けば,私たち夫婦は,どの人たちよりも親密である。

11.私たち夫婦は,お互いに親密で信頼しあっている。

5.夫婦で一緒にいろいろなことをするのが好きである。

9.私たちは,自由時間を2人で一緒に過ごすことが好きである。

17.私たち夫婦は,何かを決めるときには、お互いの意見をききあう。

3.お互いに,つれあい(配偶者)の友達も大切にしている。

13.私たち2人は,趣味や関心のあることを一緒に楽しむ。

15.夫婦として一緒にすべきことを,すぐに思い浮かべることができる。

19.夫婦がまとまりをもっていることが最も大切なことである。

(相互援助:相互依存)

(親密性:最も親密な関係)

(親密性:相互信頼)

(内部境界:共通空間)

(内部境界:共通時間)

(内部境界:共通意思)

(外部境界:友人の共有)

(外部境界:趣味の共有)

(外部境界:興味の共有)

(共同体:夫婦連合)

 【H.適応性】(夫婦システムとしての問題解決能力)

2.2人の間で問題が生じると,妥協しあう。       (リーダーシップ:自己主張)

18.2人の間で、どちらがリーダーであると言いきるのはむつかしい。  (リーダーシップ:統率力)

4.2人の間で意見のくい違いがあっても,それを寛容に認めあっている。(話し合い様式:他者尊重)

12.生活してゆく上で決めなくてはいけないことは,2人で一緒に決める。(話し合い様式:合議制)

8.家事がうまくやっていけるように,夫婦で工夫しあっている。

10.何か問題が生じたとき,私たちは今までのやり方にこだわらずに  解決しようとすることができる。

14.私たち夫婦は,生活での約束ごとをしゃくし定規には考えない。

6.2人の関係においては,時と場合に応じてリーダー役を交代しあう。

16.私たちは,家事をする役目を交代することができる。

20.私たち夫婦の間では,どちらが家事をすべきかを決めてはいない。

(ルール 解決手段の柔軟性)

(ルール:解決方法の柔軟性)

(ルール:約束ごとの柔軟性)

(役割交代:リーダー)

(役割交代:家事の役目)

(役割分担:家事)

2)コミュニケーション・スタイル尺度(自己認知用と配偶者認知用の2種類)

下位尺度は,5尺度で各6項目から構成された。(具体的な質問項目は結果の表参照)

(1)CPcs[批判的な親の心に基づくコミュニケーション・スタイル]

      :批判的態度・懲罰的態度・考えの押しつけ・厳格さ・礼儀の重視 など

(2)NPcs[保護的な親の心に基づくコミュニケーション・スタイル]

(5)

      良好な夫婦システムに影響を及ぼすコミュニケーション行動  5

      :慰安を与える・思いやり行動・面倒をみる・優しく接する・相手への配慮 など

(3)Acs[大人の心に基づくコミュニケーション・スタイル]

      :冷静な対処・現状の受容・理性的応対・調査的態度 など

(4)FCcs[自由な子どもの心に基づくコミュニケーション・スタイル]

      :自由奔放さ・素直な感情表現・感嘆詞の使用・関わりへの積極性 など

(5)ACcs[順応した子どもの心に基づくコミュニケーション・スタイル]

      :感情抑制的態度・取り入るような接近・関わりへの消極性・相手の顔色をうか        がう など

回答法は5段階評定法。(1:全く当てはまらない,2:どちらかと言えば当てはまらない,

3:どちらともいえない,4:どちらかと言えばよく当てはまる,5:非常によく当てはまる)。

 3)コミュニケーション・スキル尺度項目

下位尺度5尺度で,合計19項目について質問した。(具体的質問項目は結果参照)

(1)夫婦の会話スキル[夫婦の話し合いを発展させる夫妻相互の会話能力]

       :①表現の自由度 ②話題の一貫性③他者尊重的態度 ④話題の明瞭性        ⑤素直な自己開示 ⑥自由な感情の発露

(2)私の送り手スキル[コミュニケーション活動における送り手スキルの自己評価]

       :①自己開示の幅②素直な自己開示③自己主張

(3)私の受け手スキル[コミュニケーション活動における受け手スキルの自己評価]

       :①共感的理解②傾聴的態度③会話促進的態度(自己開示の禁止的態度)

(4}配偶者の送り手スキル[コミュニケーション活動における送り手スキルの他者評価]

       :①素直な自己開示 ②率直な表現(碗曲的否定表現:皮肉) ③他者肯定的         態度(他者否定;小言) ④他者の尊重(他者の非尊重;値引き)

⑤ 配偶者の受け手スキル[コミュニケーション活動における受け手スキルの他者評価]

       :①傾聴的態度 ②他者理解 ③共感的聴取態度

回答法は5段階評定法。(1:全く当てはまらない,2:どちらかと言えば当てはまらない,

3:どちらともいえない,4:どちらかと言えばよく当てはまる,5:非常によく当てはまる)。

 4)夫婦の生活についての満足度項目

 コミュニケーション・スキル尺度19項目の最後に「20.私は,私たちの夫婦の生活に満足し ている。」という項目を入れ,5段階評定で回答を求めた。

5)その他

被調査者の属性 年齢,夫婦の結婚年数,職業 など。

(6)

Ill.結果および考察

各尺度構成についての検討をおこない,夫婦間で交わされるコミュニケーション行動が夫婦 システムの良好な状態にどのような影響を及ぼしているかを検討した。

1.夫婦システム評価尺度構成の検討

 1)因子分析による尺度構成項目の検討

 夫および妻の回答を結果を用いて因子分析(主因子法,共通性:反復推定しない,共通性の 初期値:SMC,因子の基準化行わない,直行回転:バリマックス法)を行った。回転前の固 有値が1.00以上であるのは2因子であったので,共通因子数を2として計算した結果を表5に 示した。

表5 夫婦システム評価項目の因子分析結果(主因子法 バリマックス法)[標本数 212]

変数名 因子1 因子2 共通性

11.私たち夫婦は,お互いに親密で信頼しあっている。

7.家族を除けば,私たち夫婦は,どの人たちよりも親密である。

12.生活してゆく上で決めなくてはいけないことは,2人で一緒に決める。

1.私たち夫婦は,お互いに助け合っている。

10.何か問題が生じたとき,私たちは今までのやり方にこだわらずに解決  しようとすることができる。

9.私たちは,自由時間を2人で一緒に過ごすことが好きである。

4.2人の間で意見のくい違いがあっても,それを寛容に認めあっている。

5.夫婦で一緒にいろいろなことをするのが好きである。

17.私たち夫婦は,何かを決めるときには,お互いの意見をききあう。

13.私たち2人は,趣味や関心のあることを一緒に楽しむ。

2.2人の間で問題が生じると,妥協しあって仲直りする。

15.夫婦として一緒にすべきことを,すぐに思い浮かべることができる。

3.お互いに,つれあい(配偶者)の友達も大切にしている。

16.私たちは,家事をする役目を交代することができる。

20.私たち夫婦の間では,どちらが家事をすべきかを決めてはいない。

18.2人の間で,どちらがリーダーであると言いきるのはむつかしい。

8.家事がうまくやっていけるように,夫婦で工夫しあっている。

6.2人の関係においては,時と場合に応じてリーダー役を交代しあう。

14.私たち夫婦は,生活での約束ごとをしゃくし定規には考えない。

19.夫婦がまとまりをもっていることが最も大切なことである。

,.84 li   .070   .712

.778、   .135   .623

.ii:f2 @  .097   .516

:皇9ξ…:   .116   .497

.690    .001   .476

 .6421

..

U31、

U04i

・・694i

 .530  .587  .577  .536  .155

−.058

−.008  .378  .346  .284  .417

032550315216772336143592224437404240226543221 709195724682074907174971776830545443334212112

固有値 6.109 1.945 寄与率 30.5% 9.7%

(7)

良好な夫婦システムに影響を及ぼすコミュニケーション行動  7

 その結果,第1因子の固有値が6.109,寄与率30.5%で,第2因子は,固有値1.945,寄与率 9.7%となった。負荷量の.500以上の項目が,第1因子では13項目,第2因子では2項目であっ

た。第1因子は,夫婦仲が良く,個人を尊重し,協力し合って良い夫婦システムを維持できる ように努力している内容を含み,第2因子は,家庭内における役割分担に関する内容を含むと 考えられる。いずれの因子にも負荷量が.500に満たなかった項目の特徴として,項目18は第2 因子に,項目19は第1因子に偏よって高く,項目の8,6,14は,いずれの因子の因子負荷量 も低くしかも均衡している。第1因子を「良好な夫婦システム」因子,第2因子を「役割分担」

因子とした。

 2)「良好な夫婦システム」尺度の構成と信頼性の検討

 第1因子と第2因子の間に固有値およびその寄与率に段差があり,第2因子に寄与する項目 が少なかったので,第1因子の負荷量.500以上の項目で「良好な夫婦システム」尺度のみを作 成することが妥当であると考え,それに合致する13項目を対象に尺度構成および信頼性の検討 をおこなった。「良好な夫婦システム」尺度項目の主成分分析,相関係数,およびCronbackの α係数による構成項目の検討をした。

表6 「良好な夫婦システム」尺度構成の検討 [標本数 212]

変数名 平均値(標準偏差)単相関 主成分

11.私たち夫婦は,お互いに親密で信頼しあっている。

7.家族を除けば,私たち夫婦は,どの人たちよりも親密である。

9.私たちは,自由時間を2人で一緒に過ごすことが好きである。

5.夫婦で一緒にいろいろなことをするのが好きである。

12.生活してゆく上で決めなくてはいけないことは,2人で一緒に決める。

L私たち夫婦は,お互いに助け合っている。

10.何か問題が生じたとき,私たちは今までのやり方にこだわらずに解決し  ようとすることができる。

13.私たち2人は,趣味や関心のあることを一緒に楽しむ。

17.私たち夫婦は,何かを決めるときには,お互いの意見をききあう。

15.夫婦として一緒にすべきことを,すぐに思い浮かべることができる。

4.2人の間で意見のくい違いがあっても,それを寛容に認めあっている。

3.お互いに,つれあい(配偶者)の友達も大切にしている。

2.2人の間で問題が生じると,妥協しあって仲直りする。

3.98( 0.91)

3.96( 0.96)

3.44( 1.09)

3.56( 1.06)

4.07( 0.85)

4.10( 0.87)

3.61( 0.78)

3.18(1.10)

3.73( O.93)

3.28( 0.87)

3.54( 0.84)

4.00( 0.78)

3.74( 0.81)

.816

.788

.788

.766

.725

.708

.661

.700

.663

.664

.623

.629

.579

.831

.797

.775

.749

.735

.719

.676

.675

.663

.661

.626

.626

.580

      「良好な夫婦システム」得点 48.20(8.35)

(Cronbachのa信頼性係数 0.914) 主成分の固有値 6.45;寄与率49.65%

 その結果は,表6に示すとおりである。主成分の負荷量はいずれも.500以上であり,固有値 6.45,寄与率49.65%で,Cronbackのα係数は,.914と高い信頼性を示した。また,内的整合 性を見るために,ある項目を除いた合計値とその項目の値との相関係数を算出した結果,.579〜

7

(8)

.816といずれも高い相関がみられた。なお,各項目を除いたα係数を算出した結果,この13項 目によるα係数よりも低かった。したがって,13項目で構成された内的一貫性・信頼性のある

「良好な夫婦システム」尺度を作成した。尺度得点の平均値は48.20,標準偏差は,8.35であっ

た。

 「良好な夫婦システム」尺度に含まれる凝集性項目(原版の10項目)は,項目19を除きすべ て含まれている。ただし,その項目19も第1因子の負荷量が500以下ではあったが,第1因子 に偏っている。また,適応性項目(原版)のうち,項目12(話し合い様式:合議制),項目10

(ルール:解決方法の柔軟性),項目4(話し合い様式:他者尊重),項目2(リーダーシップ

:自己主張)の4項目が含まれた。このことは,日本の夫婦・家族成員を対象とした研究では,

日本語訳そのものが欧米における個人主義に立脚した文章化が十分考慮されていなかったり,

たとえ個人主義的に日本語訳された適応性項目でも,夫婦・家族成員が問題解決のために自立 した個人として対処する意味として読み取れず,情緒的で集団主義的な意味合いで解釈して回 答しているとも考えられる。

 3)カーブリニアな尺度かリニアな尺度かの検討

 FACES皿では,凝集性および適応性尺度は,カーブリニアな尺度(両極端に偏った得点は 不健康なシステム状況を表し,中庸な得点は健康な状態である。)として考えられている。

「良好な夫婦システム」尺度がカーブリニアな尺度かリニアな尺度かを検討するために,夫婦 の生活に対する満足度の5段階評定を3群に区切り分散分析をおこなった。全体的に満足度が 高かった[M=48.2,SD=8.3]ので, 「1.全く当てはまらない」と「2.どちらかと言えば当 てはまらない」, 「3.どちらともいえない」と「4.どちらかと言えばよく当てはまる」, 「 5.非常によく当てはまる」の3群に区分した。3群の「良好な夫婦システム」尺度得点につ いて分散分析をおこなった結果,3群の間に有意な差が見られた(F=70.05,p<.001)。

Scheffeの対比較の結果,各群の平均値は,満足の程度の順に「良好な夫婦システム」得点が 危険率0.1%水準以下で有意に高かった(1.と2群η=16,〃=36.50,SD=7.54,3.と4.群n=

126, M=45.98,SD=6.62,5.群n=70, M=54.86, SD=5.84)。したがって, 「良好な夫婦シス テム」尺度は得点が高ければ高いほど良好な夫婦システムを示すリニアな尺度であるといえる。

 さらに,夫婦の生活に対する満足度(5段階評定)と「良好な夫婦システム」尺度との相関 を求めた結果,相関係数r.=.699(有意確率5%水準以下)であり,高い相関がみられた。

2.コミュニケーション・スタイル尺度の検討

 永田(1997)は,コミュニケーション・スタイル(自己認知)尺度,コミュニケーション・

スタイル(配偶者認知)尺度の検討を,(1)主成分分析による検討,(2)G−P分析による検 討,(3)Cronbackのα係数とその項目を除く尺度得点と項目の相関係数による検討によって

(9)

良好な夫婦システムに影響を及ぼすコミュニケーション行動

9

尺度を作成した。コミュニケーション・スタイルの下位尺度は,CPcs[批判的な親の心に基 つくコミュニケーション・スタイル]尺度,NPcs[保護的な親の心に基づくコミュニケーショ ン・スタイル]尺度,Acs[大人の心に基づくコミュニケーション・スタイル]尺度, FCcs

[自由な子どもに基づくコミュニケーション・スタイル]尺度,A(已[順応した子どもの心 に基づくコミュニケーション・スタイル]尺度の5尺度で構成された。

本研究では,コミュニケーション・スタイル尺度の全項目を用いて因子分析をおこない,交 流分析における理論的な5つの自我状態に対応するようなコミュニケーション・スタイル因子 構造がみられるかを検討した。また,Cronbackのα係数,相関係数,主成分分析を用いて各 下位尺度構成項目の検討をした。

1)因子分析による尺度構成の検討

表7 コミュニケーション・スタイルの自己認知(自己評定)の因子分析(バリマックス法)

変数名

因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 共通性

1.私は□が間違ったことをしたときは,すぐとがめる。

2.私は口の言葉をさえぎって自分の考えを述べることがある。

3.私は口の礼儀・作法について厳しくチェックする。

4.私は口を厳しく批判するほうである。

5.私は口が時間やお金にルーズであることがいやである。

6、私は口に対して「おまえはダメだねえ一」といった言い方をよくする。

7.私は口に何か買ってあげることが好きである。

8.私は口の話に耳を傾け,共感しようと努力する。

9.私は口の面倒をよくみる。

10.私は[コが元気のないときには,慰めたくなる。

lL私は[コに対して思いやりのあるほうだと思う。

12.私は□のしてくれることに対して,感謝の言葉をよくかける。

13.私は□をとがめる前には,そうなった事情をよく調べる。

14.夫婦間に問題が起きても,私は落ち着いて現状を受けとめる。

15.私は口に対して理性的に話すことができる。

16.私は□との仲がうまくいかないときがあってもあまりカァーとしない。

17.私は□に何か主張するとき,感情的になることはない。

18.私は家庭内で問題を口と話し合うとき,冷静に話し合おうとする。

19.私は夫婦関係をよくするために,自分から積極的に取り組む。

20.私は口と一緒にふざけたり,騒いだりすることがある。

21.欲しいものがあるとき,私は□によくおねだりする。

22.私は口に,自分の夢や望みについて話をすることが楽しみである。

23.私は口に冗談を言ったり,からかったりすることが好きである。

24,私は口との会話の中で「わあ一!」「すごい!」などの感嘆詞をよく使う。

25.私は口に対して,遠慮がちで,消極的なほうである。

26.私は口に対して,思ったことが言えず,後悔することがよくある。

27.私は口の顔色をうかがって,行動するようなところがある。

28.無理をしてでも,私は口からよく思われようと努める。

29.本当の自分の考えよりも,口の言うことに影響されやすい。

30.私は□に対して,いやなことを「嫌だ!」と言わずに,抑え込んでしま  うことがよくある。

530411870944874524450132540272894670073230714686101100000100001110020000

一    一一一一一一 一一  一一一一一一

三798

.746

汲4:

V01

1. 625

;!764

⑭瑚研卿⑭脚翅砲語騨鰯磁脚政捌㎝陶祝邸m皿磁m筋頂迎㎜鵬鴎㎜

  ゜ ° ° ° 一゜三 ゜・ °・ °﹁二 ゜ ° ° ° ° °  ° ° ° ° ° ° ◇ ° ° ° °  一  一 一 一      一 一     一     一 一 一   一

一。117  .543

−.089   、.鎚尋  .040    :63g

−.112   1.672  .222    .373

−.029    .489,

一.075    .069  .088  −.231  .012  −.040  .203    .049  .359  −.036  .097  −.053  .342  −.001 1:687    .024

「:712・   .024  .505『 一.301

;.516. 一.295

.626i −.080  .052    .089  .009    .008

−.140  −.001  .124    .162  .032    .065

−.032    .078  .094  −.026

−.006    .063

−.072    .091  .005    .114

−.172  −.161

−.059    .003

293646774732437024051276127276026211213400001021020100010026

      一    一 一

.514  .683

.468

−.111

−.112

−.036  .070

−.045

−.067

369532555891129384846555102393474114351031205775894010717i69334523254555255334343553665545

因子負荷量の2乗和 因子の寄与率(%)

累積寄与率(%)

3.45 11.48 11.48

3.42   2.38   2.22   2.Ol 11.41   7.92   7.40   6.69 22.89   30.81   38.21   44.90

*(妻用)6.…  「あなたってダメだわねえ一」…

(10)

表8 コミュニケーション・スタイルの他者評価(配偶者認知)の因子分析(バリマックス法)

変数名

因子1 因子2 因子3 因子4 因子5 共通性

1.□は私が間違ったことをしたときは,すぐとがめる。

2.口は私の言葉をさえぎって自分の考えを述べることがある。

3.口は私の礼儀・作法について厳しくチェックする。

4.口は私を厳しく批判するほうである。

5.口は私が時間やお金にルーズであることがいやである。

6.口は私に対して「おまえはダメだねえ一」といった言い方をよくする。

7.口は私に何か買ってくれることが好きである。

8.口は私の話に耳を傾け,共感しようと努力している。

9.口は私の面倒をよくみてくれる。

10.□は私が元気のないときには,慰めてくれる。

1L□は私に対して思いやりのあるほうだと思う。

12。口は私のしてくれることに対して,感謝の言葉をよく言う。

13、口は私をとがめる前には,そうなった事情をよく調べる。

14.夫婦間に問題が起きても,口は落ち着いて現状を受けとめる。

15.□は私に対して理性的に話すことができる。

16.口は私との仲がうまくいかないときがあってもあまりカァーとしない。

17.□は私に何か主張するとき,感情的になることはない。

18,□は家庭内で問題を私と話し合うとき,冷静に話し合おうとする。

19,□は夫婦関係をよくするために,自分から積極的に取り組もうとする。

20.□は私と一緒にふざけたり,騒いだりすることがある。

21.欲しいものがあるとき,□は私によくおねだりする。

22,口は私に,自分の夢や望みについて話をすることが楽しみのようだ。

23.口は私に冗談を言ったり,からかったりすることが好きである。

24.口は私との会話の中で「わあ一!」「すごい!」などの感嘆詞をよく使う。

25.口は私に対して,遠慮がちで,消極的なほうである。

26.口は私に対して,思ったことが言えず,後悔することがよくあるようだ。

27.口は私の顔色をうかがって,行動するよ.うなところがある。

28.口は無理をしてでも,私からよく思われようと努めている。

29.口は本当の自分の考えよりも,私の言うことに影響されやすい。

30.□は私に対して,いやなことを「嫌だ!」と言わずに,抑え込んでしま  うことがよくある。

20 S9 O4 U5

≠V22350810888田30592869086806796034787816額九13

1011000000000111111120017﹁8凸7.66

ト  び  び  び  び  エ  エ  ェ   一一     一

・ ・ . . . . . . . . . . s w ▼ ◇ パニ◇二呼゜. .

一 一一一  一一一  一

36 R8 O0 Q1 P4 R7 U6 U0

 一 ﹁ 一〆  T     F    一一一 001202467777322002520322001110 T7

オ9609138361573379913563300427266533196612

一.067

−.233

−.021

−.242

−.056

−.091

−.005

   一.022    −.010     .016   一.OIO    −.050    −.111

.699  −.033

727191554935867452654567000161636646742001947910011100111010010100100

=一一一 ゜一一一一一一 一一   二

375009521925926408971427498878012012147777610101

一.060

−.114

−.075

−.013

−.072

−.047

、256

、036

.075

.272

.022

.156

.081 一.008

−.040  .045  .131

−.062

.223

.675

.510

.483

.〔681

.536

.173

.004

.056

.082

.009

.Ol3

1279i6612156316072671601509819932579119825338090477447979929344614355675366666453353565444

因子負荷量の2乗和 因子の寄与率(%)

累積寄与率(%)

4.05    3.45    3.38    2.54 13.51  11.51  11.27   8.45 13.51  25、02  36.28  44.73

2.02 6.74 51.47

*(妻用)6. ・・「あなたってダメだわねえ一」…

コミュニケーション・スタイル尺度(自己認知および配偶者認知)の項目30項目をもちいて 因子分析(主因子法,バリマックス回転)をした結果は,表7・8のようであった。なお共通 因子数は5とした。

因子分析の結果は,自己認知および配偶者認知(他者評価)ともに抽出された5因子とも固 有値は2.00以上であった。負荷量の4.50以上の項目に注目するとほぼ理論的な5つの自我状態

に属する6項目の因子項目群に分類できた。理論に基づいて文章化した項目が因子分析結果と 不釣合いであったのは,項目19と項目5,項目7,項目13である。FCcsとして文章化した項

目19(夫婦関係をよくするために積極的に取り組む)が,NPcsの因子に負荷量が高かった。

FCcs内容としての夫婦関係をよくするための「自発性で積極的に取り組む姿勢」よりも,

NPcsとしての夫婦関係をよくしようとする「やさしさ」に重点をおいて解釈されたのであろ う。項目5(CPcs),項目7(NPcs),項目13(Acs)はいずれも,他の4つの因子負荷量より

(11)

良好な夫婦システムに影響を及ぼすコミュニケーション行動  11

高かったが,負荷量自体の数値があまり高くなかった。この2つの項目については,今後文章 表現を検討する必要があると考えられる。

 2)尺度構成とその信頼性の検討

 やや問題のある項目はあったが,先行研究との関連や下位尺度の項目数の統一を考慮して,

各下位尺度6項目で尺度構成と信頼性の検討をおこなった。

 各下位尺度の平均値と標準偏差,a係数を表9に示した。 a係数は,.705〜.872の範囲にあ り尺度の内的整合性があり,尺度の信頼性は保たれていると考え,各下位尺度6項目の尺度構 成にした。

 表9に5つの下位尺度間の相関関係を示した。自己評価の場合には,Acs×CPcs・A Ccs(p<.05)およびFCcs×ACcs(p<.01)に逆相関が, NPcs×Acs・FCcs(p〈,001)に有 意な相関がみられた。他者評価の場合には,CPcs×NPcs・FCcs(p<.05)・Acs(p<.001)

に逆相関およびNPcs×Acs・FCcs(p〈.001)の相関がみられた。

表9 コミュニケーション・スタイル尺度の検討[標本数:212]

変数名  平均値 標準偏差 α係数 私二CPcs 17.170 4.106

私:NPcs 20.868 3.753 私:Acs  19.255 3.603 私:FCcs 18.693 4.186 私:ACcs 13.741 4.732 あなた:CPcs 16.835 4.441 あなた:NPcs 20.637 4.555 あなた:Acs 19.113 4.629 あなた:FCcs

      18.264   4.046 あなた:ACcs

      12.958   4.528

.705

.794

.752

.757

.872

.779

.856

.863

.746

.858

[相関] NPcs Acs FCcs  ACcs

一.126   −.154 *   .094     .067      .292 ***  .492 ***一.164*

      .067    −.038        −.191**

一.162* 一.251 ***一.158*   .097      .405***  .511 ***  .010

      .173*  一.077       .028

*** 吹メD001, **p<.01, *p<.05

3.コミュニケーション・スキル尺度の検討

 1)下位尺度項目の構成について

 Olsonら(1989)はClinical Rating Scaleの家族コミュニケーション次元として,1話題の 連続・一貫性,2.他者の尊重と他者への関心,3.メッセージの明瞭性,4.表現の自由度,5.

コミュニケーション・スキルをあげ,コミュニケーション・スキルをさらに,①聞き手のスキ ル(a.共感能力,b.傾聴),②送り手のスキル(a.自己開示・自己主張, b.他人の話しをし ない,c.でしゃばらない・話の腰を折らない・話をすぐ終わらせようとしない)に分類して

いる。

(12)

 この家族コミュニケーション次元の構成を参考に,(1)夫婦の話し合いを発展させる相互の 会話能力(夫婦の会話スキル:①表現の自由度,②話題の一貫性,③他者尊重的態度,④話題 の明瞭性,⑤素直な自己開示,⑥自由な感情の発露夫婦の会話スキル),(2)コミュニケーショ ン活動における送り手スキルの自己評価(私の送り手スキル:①自己開示の幅,②素直な自己 開示,③自己主張),(3)受け手スキルの自己評価(私の受け手スキル:①共感的理解,②傾 聴的態度,③会話促進的態度),(4)送り手スキルの他者評価(配偶者の送り手スキル:①素 直な自己開示,②率直な表現,③他者肯定的態度,④他者の尊重),㈲ 受け手スキルの他者 評価(配偶者の受け手スキル:①傾聴的態度,②他者理解,③共感的聴取態度)の5つの下位 尺度項目を作成し,夫および妻のデータを込みにした尺度構成の信頼性と項目の整合性の検討 をおこなった。

 2)下位尺度構成とその信頼性の検討

 Cronbackのa係数,相関係数,主成分分析を用いて各下位尺度構成項目の検討をした。な お,信頼性の最も高い項目群で下位尺度を構成するために,尺度に含まれる各項目を除いたと

きα係数が下がるときは,その項目を削除した。その結果は表10のようである。

 配偶者の送り手スキルと考えて作成した項目の内, 「12.□は私に,自分の気持ちを素直に 話してくれる」は下位尺度から排除した。他の項目が逆転項目であることや内容的にもやや他 の項目と異なることが,この項目が下位尺度の項目として整合性を下げる原因になったと考え

られる。

 検討後の5つの下位尺度のα係数は,.693〜.833の範囲にあり,夫婦の会話スキルは6項目,

私の送り手スキル,私の受けてスキル,配偶者の送り手スキル,配偶者の受け手スキルはそれ ぞれ3項目で構成することが最も信頼性があるという結果となった。

4.「良好な夫婦システム」評価に影響を与えるコミュニケーション行動

 「良好な夫婦システム」の評定を規定するコミュニケーション行動要因としてコミュニケー ション・スタイルとコミュニケーション・スキルを取り上げ重回帰分析を用いて検討した。夫 婦関係良し悪しについての評価にあたっては,コミュニケーション行動が相互作用によって成 立することを考慮すると,単に自己認知や他者評価を独立して捉えるのではなく, 「私」と「

あなた」のコミュニケーション行動をどのように評価しているかを問題にする必要がある。し たがって,「良好な夫婦システム」評価に影響を与える説明変数として,私のコミュニケーショ ン行動(自己評価)と配偶者のコミュニケーション行動(他者評価)の両方を込みにして用い

た。

1) 「良好な夫婦システム」評価に影響を及ぼすコミュニケーション・スタイルの検討

(13)

良好な夫婦システムに影響を及ぼすコミュニケーション行動 13

表10 コミュニケーション・スキル尺度構成の検討 [標本数 212]

変数名 平均値ほ準偏差)単相関 主成分

 【1.夫婦の会話スキル】

#10.夫婦の会話は,いつも話の内容があいまいのまま終わってしまう。 3.42(1.01)

 13.2人で話しをしているのが楽しい。      3.63(O. 93)

 1.私たち夫婦の間では,言いたいことは何でも言える雰囲気がある。 3.99(0.91)

#8.私たち夫婦の会話では,お互いの気持ちや感情への配慮が欠ける。 3.31(0.99)

 IL夫婦の会話の時には,おたがいに素直に発言しあう。   3.82(0.92)

#5.私たち夫婦の会話は,話題があちこち飛び,まとまった話ができない。3.64(0.93)

.790    .785

.756    .767

.733    .743

.750    .742

.732    .742

.665    .646

(Cronbachのα信頼性係数 .833)

夫婦の会話スキル得点21.81(4.19)

     主成分の固有値 3.27;寄与率54.55%

【2.私の送り手スキル】

9.口には,自分の気持ちを素直に表現できる。

4.私は,心配事があれば,口に何でも話す。

18.□との会話の時,私は自分の考えをはっきり主張する。

3.78( 0.91)  .882   .889 3.67( 1.01)  .852    .830 3.87( 0.77)  .741    .758

(Cronbachのα信頼性係数 .766)

私の送り手スキル得点11.32(2.23)

     主成分の固有値 2.05;寄与率68.50%

 【3.私の受け手スキル】

 17.□との会話の時,私は□の話しに耳を傾けて聴くことができる。  3.84(0.78) .817  .854  15,□との会話の時,私は□の立場に立って気持ちを理解しようとする。 3.66(0.84) .801  .825

#19.□との会話の時,私は□との話しを早く終わらせようとしてしまう。 3.47(1.02) .806  .750

(Cronbachのα信頼性係数 .724)

私の受け手スキル得点10.98(2.13)

     主成分の固有値 1.97;寄与率65.72%

 【4.配偶者の送り手スキル】

#16.□は私に,よく小言を言う。       3. 25(1.14) .832 .842

#7.口は私に,言わない方がよいことまで口に出して言うことがある。 3.19(1.10) .768  .769

#2.口は私に腹を立てたときに,皮肉をよく言う。      2,84(1.12) .761 .748        配偶者の送り手スキル得点 9.28(2.65)

(Cronbachのα信頼性係数 .693)        主成分の固有値 1.86;寄与率62.03%

【5.配偶者の受け手スキル】

14.□は,私のものの見方を理解しようと話しを聞いてくれる。3.49(O.98) .861 .873 3.口は,いつもよく話しを聞いてくれる。        3.67(1.03) .861 .867 6.口は,私が何も言わなくても私の気持ちを知っている。  3.21(1.01) .792  .774

       配偶者の受け手スキル得点10.37(2.53)

(Cronbachのα信頼性係数 .788)       主成分の固有値 2.11;寄与率70.44%

12.□は私に,自分の気持ちを素直に話してくれる。→【4.配偶者の送り手スキル】から排除

#は逆転項目。数値は逆転後の値で計算。

 「良好な夫婦システム」得点を基準変数とし,自己および配偶者のコミュニケーション・ス タイルの10下位尺度得点を説明変数として重回帰分析をおこなった結果を表11に示した。

 夫婦が相互に交わすコミュニケーション・スタイル10尺度が全体として「良好な夫婦システ ム」の評価にどの程度影響をもつかを示す重相関係数は,.816であり,その説明力(決定係数

;重相関係数の二乗)は,.666と非常に高く,コミュニケーション・スタイルが夫婦関係の良

(14)

表11良好な夫婦システムとコミュニケーション・スタイル;重回帰分析結果 [標本数:212]

説明変数

・標準偏回帰       F値(P値)係数(βう

単相関

W数(γ) 寄与率(%)

変数減増法の結果

@(β) F値 私:CPcs

一〇.009    0.040(.842) 一.171* 0.2%

私:NPcs

0.290   29.202(.000)*** .656*** 19.0

0.296 30.256*躰 私:Acs

0.078 3.052(.082) .281紳* 2.2

0.093 4.567*

私:FCcs

0.113 4.381(.037)* .485轄* 5.5

0.150  9.617榊

私:ACcs

0.009 0.032(.858) 一283*** 一〇.2

あなた:CPcs

一〇.162   10.767(.002)** 一.360*林 5.8 一〇.182 18.072***

あなた:NPcs

0.341  38.129(.000)*** .653*** 22.3 0.404 69.910***

あなた:Acs

0.093 4.064(.045)* .400*紳 3.7

あなた:FCcs

0.096 3.068(.081) .510*轄 4.9

あなた:ACcs

一〇.155   11.890(.000)***

一207轄

3.2 一〇.157 14.292***

重相関係数 (二乗)R=.816(.666)F(10,

201)=40.025精*

Rr809(.654)

自由度調整済重相関係数

.806(.649) F(6,205)=64.703***

*** 吹メD001, **p<.01, *p<.05

さを感じさせる促進的要因であるといえる。なお,私:ACcsが抑圧となっている原因は,基 準変数である「良好な夫婦システム」との間に負の有意な相関関係(r=一.283)がみられる のに対して,説明変数との相関係数を見ると,あなた:CPcs(r=.436),あなた:ACcs(r ==

.249)との間に高い正の相関が見られ,それ以外の相関係数は,私:CPcs(r=.067)以外が 負の相関係数(r=一.038〜一.238)を示したためと思われる。しかし,標準偏回帰係数の値 および寄与率が低いので全体の分析には問題がないと判断した。

 コミュニケーション・スタイルの10尺度それぞれが「良好な夫婦システム」評価を説明する のにどの程度寄与しているか(標準偏回帰係数β)あるいは各尺度それぞれが単独でどの程度 説明できるか(寄与率=標準偏相関係数×単相関係数)をみると,配偶者と私自身が,保護的 な親の心に基づくコミュニケーション・スタイル(NPcs)で交流することが特に重要な要因 であることがわかる。

 「良好な夫婦システム」の評価を説明するのに最も良い2者のコミュニケーション・スタイ ル組み合わせを調べるために,さらに変数減増法をもちいて分析した。変数の出し入れの基準 は,標準偏回帰係数の有意水準が5%となる値に近いF=4.00を用いた。その結果,標準偏回 帰係数の絶対値が大きい順に,あなた:NPcs(β=0.404),私:NPcs(β =O.296),あなた

:CPcs(β=−0.182),あなた:ACcs(β=−0.157),私:FCcs(β=0.150),私:Acs(β=

0.093)であり,6尺度全体での重相関係数は,.809(決定係数=.654)であり,10尺度におけ る係数とそれほどかわりがなく,6尺度が「良好な夫婦システム」認知に影響のあるコミュニ ケーション・スタイルといえる。

 以上の結果から,「良好な夫婦システム」であると評価するためには,あなたも私も保護的 な親の心に基づくコミュニケーション・スタイル(NPcs;慰安を与える・思いやり行動・面 倒をみる・優しく接する・相手への配慮 など)を基本と したコミュニケーション行動をとり

(15)

良好な夫婦システムに影響を及ぼすコミュニケーション行動 15

あい,あなたが批判的な親の心に基づいたコミュニケーション・スタイル(CPcs;批判的態 度・懲罰的態度・考えの押しつけ・厳格さ・礼儀の重視 など)や順応した子どもの心に基づ くコミュニケーション・スタイル(ACcs;感情抑制的態度・取り入るような接近・関わりへ の消極性・相手の顔色をうかがう など)をせずに,私が自由な子どもの心に基づいたコミュ ニケーション・スタイル(FCcs;自由奔放さ・素直な感情表現・感嘆詞の使用・関わりへの 積極性 など)と大人の心に基づくコミュニケーション・スタイル(Acs;冷静な対処・現状 の受容・理性的応対・調査的態度 など)をとっていると認知していることが必要となる。

 どちらかといえば,「良好な夫婦システム」評価は,自分のコミュニケーション・スタイル よりも配偶者のコミュニケーション・スタイルに影響されているといえる。

 2) 「良好な夫婦システム」評価に影響を及ぼすコミュニケーション・スキルの検討  「良好な夫婦システム」得点を基準変数とし,自己および配偶者のコミュニケーション・ス キルの5下位尺度得点を説明変数として重回帰分析をおこなった結果を表12に示した。

表12良好な夫婦システムとコミュニケーション・スキル 重回帰分析結果 [標本数:212]

説明変数

標準偏回帰       F値(P値)係数(β)

単相関

W数(r)

寄与率(%)

変数減増法の結果

@(β) F値 夫婦の会話スキル

0.365  21.563(0.000)*** .750杜* 27.3% 0.333 19.496***

私の送り手スキル

0.206   11.338(0.000)*** .665榊* 13.7 0.194 10.210**

私の受け手スキル

0.128   4.359(0.038)* .640*** 8.2

0.132 4.648*

相手の送り手スキル

一〇.067    1.981(0.160) .298*** 一2.0

相手の受け手スキル

0.245  14.365(0.000)*** .703*** 17.2 0.253 15.351***

重相関係数(二乗)

R=.803(.645) F(5,206)=74.759*** R=.801(0.641)

自由度調整済重相関係数 .798C636)

F(4,207)=92.515***

*** 吹メD001, **p<.Ol, *p<.05

 夫婦2人の間でコミュニケーションをとるときにもちいるコミュニケーション・スキル5尺 度が「良好な夫婦システム」評価にどの程度影響をもつかを示す重相関係数は,.803(決定係 数=.645)であり,コミュニケーション・スキルが夫婦システムの良し悪しの評価を決める要 因であるといえる。なお,相手の話すスキルが他の変数と比べて他の変数間に極めて低い相関 を示したため弱い抑圧となる結果となった。

 「良好な夫婦システム」評価を説明するのに最も良い2者のコミュニケーション・スキルを 調べるために,さらに変数減増法をもちいて分析した。変数選択・削除の基準は,スタイルの 分析と同様F=4.00を用いた。その結果5尺度のうち4尺度が残り,標準偏回帰係数の絶対値 が大きい順に,夫婦の会話スキル(β=O.333),配偶者の聞くスキル(β=0.253),私の話す スキル(β=O.194),私の聞くスキル(β=0.132)であった。この4尺度による重相関係数は,

.801(決定係数=.645)であり,相手の話すスキルを入れた5尺度の結果とほとんど変わりが なかった。      /

(16)

 「良好な夫婦システム」であると評価するには,第1に,夫婦が会話を交わすとき,表現の 自由度,素直な自己開示,自由な感情の発露といった自由な雰囲気を保ち,他者尊重的態度で 接し,話題の一貫性や話の内容が明瞭であるようにできるスキルが必要である。第2に,配偶 者の受け手スキル(傾聴的態度,他者理解的態度,共感的聴取態度)が優れていると認知する 必要がある。第3に私側の問題として,私の送り手スキル(自己開示の幅が広い,素直な自己 開示や自己主張ができる)や私の受け手スキル(共感的理解,傾聴的態度,相手め自己開示に 禁止的態度をとらない)を有していると思っていることが必要となる。配偶者の話し手として のスキルは,影響がほとんどない。

 夫婦個々人のスキルと夫婦の会話スキルの関係をみるために,重向帰分析をした結果を表13 に示した。良好な夫婦システムを維持するすることと同様に,夫婦の会話スキルの良し悪しは,

送り手のスキルよりも受け手のスキルが重要である。

表13 夫婦の会話スキルと送り手・受け手スキル:重回帰分析結果

説明変数 標準偏回帰

係数(β)

F値      寄与率(%)単相関

係数(r)

私の送り手スキル    0.199 私の受け手スキル    0.325 配偶者の送り手スキル  0.173 配偶者の受け手スキル  0.363

14.OOO***   .693#*

43.489**‡    .718***

18.456***    .464***

50.039***    .740***

13.8 23.4 0.8 26.9

重相関係数(二乗)R=.849(.721)F(4,207)=133.419***

自由度調整済重相関係数 .846(.715)

*** 吹メDOO1, **p<.Ol, *p<.05

 3)夫と妻の違いについての検討

 夫婦間で「良好な夫婦システム」評価に影響するコミュニケーション行動に違いがあるかを 検討するために,夫および妻それぞれについて重回帰分析を試みた。

 ①コミュニケーション・スタイル

 夫が評価した「良好な夫婦システム」得点と夫婦相互の「コミュニケーション・スタイル」

尺度の重相関係数は,10尺度で.829(決定係数=.687),変数減増法(選択・削除の基準はF=

4.00)の結果では5尺度で.821(.674)であった(表14)。 変数減増法の結果から夫が「良好 な夫婦システム」であると評価するのは,妻が思いやりがありやさしく包み込むような関わり 方[妻:NPcs]をしてくれ(β=0391),あまり批判的で自分の考えを押し付けること[妻

:CPcs]がないので(β=−0.157),それに自分もやさしく応える[私:NPcs]ことができ

(β=0.295),妻の顔色をうかがうような気使い[私:ACcs]をしなくて(β=−0.138)自 由に素直に振舞える[私:FCcs]ときである(β=0.156)。

 一方,妻が評価した「良好な夫婦システム」得点と夫婦相互の「コミュニケーション・スタ

参照

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