47
〈論 説 〉
非 監 護親 と子 との面接 交渉 の妨 害 と損 害 賠 償 につ いて
一 ドイ ツ に お け る交 流 権 に基 づ く 損 害 賠 償 を 中 心 と して 一
三 宅 利 昌
目 次
1.は じ め に
2.ド イ ッ 民 法 と交 流 権 の 侵 害 3.面 接 交 渉 の 妨 害 と損 害 賠 償 4.お わ り に
1.は じ め に
面 接 交 渉 とは、 離 婚 に 際 して 親 権 者 また は監 護 者 とな らな か っ た 父 母 の 一 方 が 、 子 と定期 的 に直 接 会 った り、 文 通 や 電 話 を す る な ど、 親 と して 子 と面 会 し た り接 触 交 流 を もっ こ とで あ る。 わ が 民 法 に は、 面 接 交 渉 に関 す る明 文 の規 定 が 置 か れ て い な い た め 、 それ が 権 利 と して 承 認 され るか ど うか 、 承 認 され る と
して も い か な る法 的性 質 を もつ もの なの か を め ぐ り種 々 の見 解 が 存 在 して い る (後 出3(1)参 照)。 現 在 の とこ ろ、 実務 で は、 当 事者 間 で面 接 交 渉 につ い て の 合 意 が で きな けれ ば、 家 庭 裁 判 所 の調 停 ・審 判 手 続 に よ り、 家 庭 裁 判 所 が 子 の 監 護 に 関 す る処 分 として 面 接 交 渉 の具 体 的 内 容 な ど を子 の 福 祉 の 観 点 か ら定 め
る とい う取 り扱 い が な され て い る。
家 庭 裁 判 所 の調 停 また は審 判 に よ り認 め られ た 面 接 交 渉 が 行 な わ れ な い と き は、 子 の 監 護 者 とな らなか っ た 父 母 の一 方(非 監 護 親)は 、 そ の 実 現 に 向 け て 、
り
履 行 勧 告(家 審 法15条 の5)や 再 調停 の 申立 な どの 手 段 を とる こ とに な る。 こ れ らの 手 段 に よ っ て も、 監 護 親 が 子 と非 監 護 親 との面 接 交 渉 の 実 現 に応 じ な い と き は、 強 制 執 行 とい う手 段 に よ り面 接 交 渉 を実 現 す る こ との 可 否 が 問 題 とな
る。
この よ う に面 接 交 渉 の 将 来 の履 行 の確 保 に 向 け た 手 段 が 問 題 に な る一 方 で 、 面 接 交 渉 が 実 現 され な か った こ とに よっ て 発 生 した 損 害 の 賠 償 請 求 の 可 否 が 問 題 とな る。 面 接 交 渉 の 実 現 の予 定 の も と、 そ の 準 備 に要 した 費 用 が 無 駄 に な っ た場 合 に、 非 監 護 親 は監 護 親 に対 して そ の賠 償 を請 求 す る こ とが で き るの か 。 本 稿 は、 ドイ ツ の 連 邦 通 常 裁 判 所 の最 近 の判 決 を素 材 と して、 家 庭 裁 判 所 の 決 定 に よっ て(わ が 国 で は家 庭 裁 判 所 の 調 停 ・審 判 に よ り)定 め られ た面i接交 渉 が実 現 され な か った場 合 また は父 母 間 の合 意 に よ る面 接 交 渉 が 果 た され な か っ た 場 合 の 非 監 護 親 に よ る損 害 賠 償 請 求 につ い て そ の可 否 お よ び 問題 点 を検 討 す
る。
な お 、 以 下 、 面 接 交 渉 に っ い て は 、 ドイ ッ法 を扱 う部 分 で は 、 ドイ ツ民 法 の 用 語 で あ る 「交 流(Umgang)」 を用 い る こ と とす る。
2.ド イ ツ 民 法 と交 流 権 の 侵 害
(1)ド イ ツ民 法 のお ける交流権 に関す る現 行規定
3)
ドイ ツで は 、1997年 の親 子 関 係 法 の 改 正 に よ り、 嫡 出子 と非 嫡 出子 の 区別 が
4)
撤 廃 され た 。 この 改 正 に よ り、 子 とそ の身 上 監 護 権 を有 しな い 父 母 の 一 方 との 交 流 に つ い て も、 子 が嫡 出 子 の場 合 と、 非 嫡 出子 の場 合 とを 区 別 しな い 統 一 的
ヨラ
な規 定 が 置 か れ た 。 加 え て 、 子 と父 母 以 外 の 者(祖 父 母 、 兄 弟 姉 妹 、 子 に対 し て 実 際 上 の責 任 を負 って い る そ の他 の 関 係 人)と の 交 流 も拡 大 され て い る。
① 子 お よ び 父 母 の 交 流 権
子 は、 父 母 が離 婚 す る と、 多 くの場 合 に父 母 の一 方 の とこ ろ で 生 活 す る こ と に な る。 そ の結 果 、 同居 して い な い 父 母 の̲̲̲.方と子 の 日常 の 接 触 が 失 わ れ 、 子 を そ の 父 母 の一 方 か ら離 反 させ る こ とに な り う る。 親 子 関 係 に お け る この よ う な潜 在 す る離 反 の 可 能 性 をで き るだ け取 り除 くた め に 、 改 正 法 は 「父 母 との交 流 は、 原 則 と して 子 の福 祉 に適 合 す る」(BGB1626条3項1文)と 明 確 に規 定 す る。 これ は 同居 して い な い 父 母 の 一 方 と子 との 交 流 を積 極 的 に実 現 す る姿 勢 を示 す もの で あ る。
非監護親 と子 との面接 交 渉の妨 害 と損害賠 償 につ いて
49
ま た 、 改 正 法 は、 「子 は父 母 の い ず れ と も交 流 す る権 利 を有 す る」 と規 定 し、
交流 権 を明 確 に子 の権 利 と して位 置 づ け て い る(BGB1684条1項 前 段)。 加 え て 、 子 の 固有 の交 流 権 に対 応 す る形 で 、 同 時 に父 母 の 交 流 権 に つ い て も 「父 母
は いず れ も子 と交流 す る義務 を負 い、 かつ 権 利 を有 す る」 と規 定 して い る(BGB l684条1項 後 段)。
父 母 が 子 と交 流 す る権 利 は、 基 本 法6条2項 に お い て 保 障 され て い る血 縁 に
6)
基 づ く親 の 自然 の権 利 に基礎 を置 くもの と解 され て い る。親 の 自然 の権 利 は、
連 邦憲法 裁判 所 に よれ ば、 親 の責任 を果 たす た め に保証 され る権 利 、 す なわ ち
7)
義 務 権(pnichtrecht)で あ る と さ れ 、 子 の 福 祉 に 反 しな い 限 りに お い て 権 利 と し て 認 め ら れ る 。
② 交 流 の 具 体 的 方 法 お よび範 囲 の取 り決 め
交 流 の 方 法 や 範 囲 につ いて は、 改 正 前 と同様 に 、 具 体 的 な規 定 は置 か れ て い な い。 交 流 は時 間 を 限 られ た 接 触(た とえ ば、 週 末 を共 に過 ごす 、 定 め られ た 時 間 に訪 問 す る、 電 話 に よ る会 話 、 手 紙 、 一 緒 に旅 行 す る な ど)に よ っ て 行 な わ れ る。 父 母 の 間 で 交 流 の 具 体 的 な方 法 や 頻 度 に つ い て 合 意 が 形 成 され た と き は、 そ れ に従 っ て 交 流 が 実 行 され る。合 意 の 形 成 の 際 に は 、 子 に固 有 の交 流 権
8)
が あ る こ とを考 慮 して 、 子 の 希 望 も可 能 な 限 り考 慮 され な けれ ば な ら な い。 父 母 間 で合 意 が形 成 され て い な い と き は、 家 庭 裁 判 所 が 交 流 権 の範 囲 を決 定 し、
また は そ の行 使 を、 詳 細 に取 り決 め る こ とが で き る(BGB1684条3項)。 家 庭 裁 判 所 の 決 定 に よ る交 流 の取 り決 め につ い て は 、 法 文 上 は、 当 事 者 の 申 立 は必 要 とされ て い な い 。 しか し、 家 庭 裁 判 所 の 介 入 は、 交 流 を め ぐ り父 母 間 に意 見 の相 違 が あ る こ と また は子 の 権 利 で あ る交 流 権 の 実 現 につ い て 父 母 が 無 関 心 で
9)
あ る こ とが そ の 前 提 と さ れ て い る 。 な お 、 そ の 場 合 で も、 裁 判 所 は 調 停 (Vermittlung)に よ り合 意 を得 る よ う努 め な けれ ば な らな い(FGG52条)。
実 務 に お い て は 、 家 庭 裁 判 所 に よ る交 流 の 内容 の 取 り決 め は、 あ ら ゆ る疑 い
ゆ
を排 除 す る明 確 さ を持 つ もの で な けれ ぼ な らな い とさ れ 、 交 流 の 日時 、 場 所 、 回 数 、 交 流 の 際 の子 の送 り迎 え の 方 法 な どを 精 確 に 定 め る こ とが 必 要 とされ て
ヱリ
い る。 交 流 の 内 容 の 取 り決 め が 不 完 全 また は あ い ま い で あ る と、 交 流 の 実 現 を 阻 害 す る こ とに な りか ね な い か らで あ る。 しか しそ の 反 面 、 取 り決 め の 内 容 の
硬 直性 の ゆ えに、場合 に よって は調停 の結果 として得 られ る合意 に基 づ く取 り
12}
決 め が 選 ば れ る。
③ 善 行 条 項(Wohlverhaltensklausel)
交 流 の 取 り決 め が機 能 を果 た す に は、 父 母 間 の協 力 と相 互 の 尊 重 が 前 提 とな る。 この こ とを考 慮 し、 改 正 法 も引 き続 き 、 父 母 双 方 に善 行 義 務 を負 わ せ る規 定 を置 い て い る。 父 母 は、 交 流 の 実 行 に あ た っ て 、 子 と父 母 の他 方 との 関 係 に 影 響 を与 え、 ま た は教 育 を妨 げ るあ ら ゆ る こ とを行 っ て は な らな い(BGBI684 条2項)。 た と え ば、 子 が 交 流 の た めの 準 備 をす る こ とを積 極 的 に助 け る こ と も
]3}
監 護 親 の 善 行 義 務 に含 まれ る とす る裁 判 例 もみ られ る。
善 行 義 務 に違 反 した場 合 につ い て は 、 特 に制 裁 規 定 は 置 か れ て い な い が 、 改 正 法 は、 義 務 違 反 の 当 事 者 に対 して 、 家 庭 裁 判 所 が 命 令 に よ って 善 行 義 務 の履 行 を促 す こ とが で き る と して い る(BGB1684条3項2段)。 これ に よ り、 父 母 の 一 方 が 善 行 義 務 に妨 害 的 に違 反 して い る場 合 に は 、 まず 善 行 義 務 の履 行 を命 令 し、 そ の 命 令 に従 わ な け れ ば監 護 者 の 変 更 や 交 流 権 の制 限 ・剥 奪 な どの措 置
を とる こ と に な る。
④ 家 庭 裁 判 所 の 取 り決 め の 実 行 の 強 制 と調 停 手続
裁 判 所 の 決 定 に よ る交 流 の 取 り決 め は、 父 母 の 一一方 に よっ て 交 流 が 妨 げ られ、
実 行 され な か っ た場 合 に は 、 強 制 金(Zwangsgeld)に よ り間接 的 な履 行 の 強
]4)
制 が 可 能 とな る(FGG33条)。 この ほ か 、 裁 判 所 に よ る交 流 の 取 り決 め の実 行 を め ぐ っ て 父 母 の 間 に 争 い が 生 じ た と き は 、 裁 判 所 に よ る 調 停 手 続 (Vermittlungsverfahren)を 選 択 す る こ と もで き る(FGG52a条)。 調 停 手 続 は父 母 の 一 方 の 申 立 に基 づ い て 開 始 す る。 交 流 権 を もつ 父 母 が 、 取 り決 め に従 わ な い で 不 定 期 に子 を訪 問 した り、 交 流 の 際 に子 の 送 迎 の 時 間 を 守 らな か っ た り、 あ る い は善 行 義 務 に違 反 した と きは 、 監 護 親 も調 停 手 続 の 申 立 を行 う こ と が で き る。 調 停 が 成 功 しな か っ た 場 合 に は、 裁 判 所 は、 交 流 に つ い て 強 制 手 段 が と られ な けれ ば な らな い か ど うか 、 交 流 の 内 容 が 変 更 され な けれ ば な ら な い か 、 また は さ らに親 と して の世 話 権 に関 す る何 らか の措 置(BGBl666条 、1696 条)が と られ な け れ ば な ら な い か を判 断 しな けれ ば な らな い(FGG52a条5項
非 監護親 と子 との面 接交 渉 の妨害 と損害賠 償 につ いて
S1
2段)。
な お 、 強 制 金 に よ る強 制 手 段 を とる場 合 に 、 調 停 手 続 を 事 前 に行 う必 要 は な い 。 強 制 金 に よ る強 制 手 続 と調 停 手 続 とは 、 それ ぞ れ 独 立 の 手 続 類 型 で あ り、
申 立 人 は、 自 らの選 択 に よ り、 交 流 の 実 現 に 向 け て 効 果 の期 待 で き る手 続 を選
15)
択 す る こ とが で き る 。
(2)交 流 権 の侵 害 と ドイ ツ の判 例
家 庭 裁 判 所 に よ り交 流 の 内 容 の 取 り決 め が 行 な わ れ た に もか か わ らず 、 世 話 権 を もつ 父 母 の一 方 が これ に従 わ な か っ た こ とに よ り、 交 流 権 者 に財 産 上 の 損 害 が 生 じ た場 合 に、 交 流 権 者 は どの よ うな根 拠 に基 づ き そ の 損 害 の賠 償 を請 求 す る こ とが で き るか 。
この 問題 につ き、 ドイ ツの 下 級 審 の裁 判 例 の 中 に は、 交 流 権 を 、 親 と して 世
I8)
話 す る権 利(RechtderelterlichenSorge;以 下 、 世 話 権 とす る)と 同 様 に、
絶 対 権 と位 置 づ け 、 絶 対 権 に 対 す る侵 害 を 理 由 とす る損 害 賠 償 請 求(BGB823
j7)
条1項)を 認 め る も の が い くつ か み られ 、 学 説 の 中 に も この見 解 を と る もの が
18)
あ る。 これ に対 して 、 最 近 の連 邦 通 常 裁 判 所 の判 決 で は 、 交 流 権 を もつ 父 母 の 一・方 と世 話 権 を もつ他 方 の父 母 との 間 に認 め られ る家 族 法 上 の 法 律 関 係 に着 目
して 、 そ こか ら生 ず る配 慮 義 務 の 違 反 と して構 成 す る見 解 が 示 され た 。
以 下 で は、 前者 の考 え方 を と る区 裁 判 所 お よ び 上 級 地 方 裁 判 所 の 判 決(① 、
②)と 新 た な考 え方 を示 した連 邦 通 常 裁 判 所 の 判 決(③)を み て い く こ とに す る。
39)
① エ ッセ ン 区裁 判 所1999年12月 工7日 判 決
父 母 間 で 交 流 につ い て の 合 意 が で きず 、 家 庭 裁 判 所 の 決 定 に よ り子 と父 親 の 交 流 の 内容 が 取 り決 め られ た 。 母 親(世 話 権 者)が これ を 不 服 と して 抗 告 した と こ ろ、 上 級 地 方 裁 判 所 の 決 定 に よ り、 子 と父 親 との 交 流 は、 毎 月 、 第 一 お よ び 第 三土 曜 日の午 前10時 か ら午後6時 まで とす る こ とが 新 た に取 り決 め られ た 。 交 流 の 期 日 に は 、 父 親 が 、母 親 の も とに子 を迎 え に行 くこ と とさ れ て い た 。 父 親 は交 流 期 日に 自動 車 で 子 を迎 え に 出 か け た が 、 母 親 は裁 判 所 の 交 流 の 取 り決 め に従 わ ず 、 子 を父 親 に 引 き渡 す こ とを拒 ん だ 。 母 親 は、 その 後 も交 流 の 取 り
決 め に従 わ ず 、 父 と子 との交 流 に 自分 が 同 行 で き る よ う家 庭 裁 判 所 に交 流 の 取 り決 め の 変 更 の 申 立 を行 っ た 。
父 親(原 告)は 、 母 親(被 告)が 子 の 引 渡 を拒 ん だ こ とに よ り、 交 流 が 実 現 せ ず 、 自動 車 で の 子 の 出迎 え が 無駄 に な った と して 、 自動 車 の 走 行 に費 や した 費 用 の賠 償 を求 め た 。 エ ッセ ン区 裁 判 所 は、 次 の よ うに述 べ て 、 父 親 の 請 求 を 認 め た 。
「BGB1626条3項 、1684条 、1685条 の定 め る交 流 権 は、BGB823条1項 の意 味 に お け る絶 対 権 で あ る。 交 流 権 が 絶 対 権 で あ る こ とは 、 基 本 法6条2項 か ら 読 み取 る こ とが で き る。BGBl684条 に規 定 され た 交流 権 は、基 本 法6条2項1 段 に保 障 さ れ た 親 の 自然 の 権 利 に 基 礎 を 置 く独 立 の 権 利(eigenstandiges Recht)で あ る。
上 級 地 方 裁 判 所1998年9月29日 判 決 に よれ ば、 原 告 は、 毎 月 、 第 一 お よ び 第 三 土 曜 日 の午 前10時 か ら午後6時 にか けて 子 と交 流 す る権 利 を有 して い た 。 被 告 は 、 交 流 の 予 定 日時 に原 告 が 子 を連 れ て行 く こ と を拒 ん だ こ とに よ り、 原 告 の 交 流 権 を侵 害 した 。
被 告 は、1998年12月9日 に、 家 庭 裁 判 所 に対 して、 上級 地 方 裁 判 所 に よ る交 流 の 取 り決 め を 自 らの 立 会 い の も とで の 交 流 に変 更 す る 申 立 を して い るが 、 こ れ に よ っ て 取 り決 め の 効 力 が 失 わ れ るわ けで は な い 。 それ に もか か わ らず 、 被 告 が 引 き続 き この取 り決 め に従 わ な い の は違 法 で あ る。
被 告 が 子 を原 告 に よ る影 響 か ら保 護 しよ う と考 え て い た こ と、 と くに性 的 虐 待 か ら守 ろ う と考 え て い た こ とは 、被 告 の 行 動 の正 当性 を理 由づ け る もの で は な い。 子 に対 す る性 的 虐 待 の 単 な る嫌疑 は、 通 常 、 交 流 権 の 排 除 の正 当 性 を理 由づ け る もの で はな い(OLGStuttgart,FamRZ,1994,718)。 こ う した嫌 疑 が あ る場 合 に 、 裁 判 所 が 交流 権 を排 除 す る こ とが で きな い と判 断 した 以 上 は、
被 告 も そ れ を排 除 す る こ とは で きな い 。本 件 に お い て は性 的 虐 待 の事 実 は証 明 され て い な い 。 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 被 告 に よ る原 告 の 子 に 対 す る性 的 虐 待 の嫌 疑 の主 張 につ き、 す で に交 流 権 の 新 た な 取 り決 め に 関 す る手 続 に お い て 、 子 の 聴 聞 お よび 鑑 定 の結 果 か ら、 根 拠 が な い と判 断 して い る。
被 告 の行 為 に は有 責 性 が認 め られ る。 被 告 に対 して は、1999年4月21日 の家 庭 裁 判 所 の 決 定 に よ り、 上 級 地 方 裁 判 所 の交 流 の取 り決 め に従 わ な い とき は、
非監護親 と子 との面接交渉 の妨 害 と損害賠 償 につ いて
53
強 制 金 また は強 制 拘 禁 が 課 され る こ とが 予 告 さ れ て い る。 す で に交 流 の 取 り決 め の変 更 の 申立 を行 な っ た に もか か わ らず 、 強 制 手 段 の予 告 が 行 な わ れ た の で あ るか ら、 被 告 は取 り決 め に従 わ な け れ ば な らな い こ とを認 識 して い た とい え
る。」
zo)
② カ ー ル スル ー 工 上 級 地 方 裁 判 所2001年12月21日 判 決
家 庭 裁 判 所 の 決 定 に よ る交 流 の 取 り決 め に よ り、 子 と父 親 の 泊 りが け で の交 流 の 日時 が 定 め られ 、 母 親(被 告)は 、 交 流 期 日 に子 に交 流 の準 備 を させ 、 父 親(原 告)に 子 を 引 き渡 す こ と とされ て い た 。 父 親 は、 交 流 の場 所 に赴 い た が 、 母 親 が 、 子 と父 親 との 交 流 を子 の 意 思 に 委 ね 、 積 極 的 に 交 流 の 実 現 に協 力 しな か った 。 この た め、 子 と父 親 との 交 流 は 実 現 せ ず 、 父 親 は、 無 駄 に な っ た 旅 費
とホ テ ル の宿 泊 費(キ ャ ンセ ル 料)の 賠 償 を 求 め た 。 カ ー ル ス ル ー 工 上 級 地 方 裁 判 所 は、 次 の よ うに述 べ て 、 父 親 の請 求 を 認 め た 。
「BGB1684条1項 の 定 め る父 母 の交 流 権 は 、BGB823条1項 の 意 味 に お け る
『絶 対 権(absolutesRecht)』 で あ り、 そ の侵 害 は 、 損 害 賠 償 義 務 を発 生 させ う る。 絶 対 権 と して の交 流 権 は、 第 三 者 に対 して の み な らず 、 世 話 権 者 ま た は 共 同世 話 権 者 に対 して も効 力 を もつ 。交 流権 は、一 身 の監 護 権(Personensorge)
の残 存 で は な く、 一 身 の 監 護 権 と並 ん で 、 基 本 法6条2項 に お い て 保 証 され て い る親 の 自然 の 権 利 に基 礎 を置 く独 立 の権 利 で あ る。 交 流 権 を もつ 親 も、 世 話 権 を もっ 親 も、 互 い に各 々 の権 利 を尊 重 しな けれ ば な らな い 。 特 に 、 単 独 の世 話 権 を 有 す る父 母 の 一 方 は 、 原 則 と して 、 父 母 の 他 方 と子 の 人 的 交 流(der personiicheUmgang)を 可 能 にす る よ う努 め な けれ ば な らな い。 以上 の こ と は、 交 流 権 を 、 監 護 権 者 の 権 限 を制 限 す る絶 対 権 と位 置 づ け 、 か つ これ を 刑 法
21)
235条 の保 護 の 下 に置 く連 邦 通 常 裁 判 所 の 見 解(BGH,FamRZ,1999,651)と 一 致 して い る。」
「交 流 権 は、BGB823条1項 の 定 め る その 他 の権 利(einsonstigesRecht)
で あ り、 被 告 は、 違 法 か っ 有 責 に この絶 対 権 を侵 害 した こ とに基 づ き、 これ に よ って 生 じ た損 害 を賠 償 しな けれ ば な らな い 。」
「交 流 権 は、 非 監 護 親 に、 子 の 身 体 的 お よび精 神 的 な 健 康 状 態 や 子 の発 達 を 自 分 の 目で 見 て 、 か つ 相 互 に対 話 を 交 わ す こ とに よ り絶 えず 確 か め、 親 子 関 係 が
断絶 す る こ とを防止 し、親子 相互 間 の愛情 の必要 性 を も考 慮 す るこ とを可 能 に
22)
す る もの で あ る。 交 流 権 を充 足 す るた め に 、 世 話 権 を もつ 父 母 の 一 方 は、 子 を 積 極 的 に 、 か つ 建 設 的 な雰 囲 気 の な か で 交 流 権 を もつ 他 方 の 親 に 引 き合 わ せ な けれ ば な らな い。 交 流 に よ る接 触 を一 い わ ば消 極 的 に一 未 成 年 の子 の 自 由 に任 せ るの で は不 十 分 で あ る。 本 件 に お い て 、 世 話 権 者 で あ る母 親 は、 自 らの 手 で 、 子 を父 親 に 引 き渡 す 積 極 的 義 務 を負 って い る。」
23)
③ 連 邦 通 常 裁 判 所2002年6月19日 判 決
X(原 告;父 親)とY(被 告;母 親)は 婚 姻 し、1990年9月12日 に子Lが 出 生 した 。 家 庭 裁 判 所 は、1996年2月2日 の判 決 に お い て 、XY夫 婦 の 婚 姻 を解 消 させ 、 子Lの 世 話 権 者 をYと し、 子Lが 就 学 す る まで の 間 のL(当 時5歳)
とXと の 交 流 の取 り決 め を行 な っ た 。
家 庭 裁 判 所 の取 り決 め に よ る と、Xは 、 特 定 の 週 末 に定 期 的 に、YとLが 居 住 して い る都 市Mに お い て 交 流 を行 い 、 また 他 の 週 末 お よ び休 暇 の 期 間 に は 、 Xの 居 住 して い る都 市Bで 交 流 を行 う こ と とされ た 。Xの 居 住 地 で 交 流 が 行 わ れ る際 に は 、YがLを 空 港 ま で送 り、B行 きの 飛 行 機 に乗 せ 、B空 港 に は、X が 出 迎 え に 行 く こ と とされ て い た 。 帰 路 つ い て は、 これ と逆 の や り方 をす る こ
とに な った 。 家 庭 裁 判 所 は、 交 流 の取 り決 め に っ い て 、 早 期 に効 力 を生 じ させ るた め、 他 の 事 項 と分 離 して 、 改 め て1996年2月21日 に 同一 内容 の取 り決 め を行 な っ た 。 これ に対 し被 告 は抗 告 した 。
上 級 地 方 裁判 所 は、1996年8月26日 の決 定 に よ り、 交 流 の 内 容 を見 直 し、X とLの 週 末 の定 期 的 な交 流 を 、YとLの 居 住 地 で 行 う こ と と した。 また 、 子L の飛 行 機 に よ る移 動 を伴 うXの 居 住 地 で の 交 流 は、 休 暇 の 期 間 に 限 る こ と とさ れ た 。
Yは 、 家 庭 裁 判 所 に よ る交 流 の 取 り決 めが 上 級 地 方 裁 判 所 に よ り修 正 さ れ る まで の 間 に 、 合 計6回 、 子Lを 飛 行 機 で 移 動 させ る こ とを拒 絶 した 。 そ の た め Xは 、 そ の 都 度 、 自動 車 で 子LをYの も とに迎 え に 行 っ た 。Xは 、 家 庭 裁 判 所 に よ る交 流 の 取 り決 めが 守 られ た 場 合 に生 ず る費 用 を超 え る経 費 の 賠 償 をYに 対 して請 求 した 。
区 裁 判 所 はXの 請 求 を一 部 認 容 した 。 これ に対 しYは 控 訴 し、 フ ラ ン ク フル
非監護親 と子 との面接 交渉 の妨害 と損害 賠償 につ いて
SS
ト上 級 地 方 裁 判 所 は、Xの 請 求 を棄 却 した 。 これ に対 しXは 上 告 した 。
連 邦 通 常 裁 判 所 は、 原 判 決 を破 棄 し、 上 級 地 方 裁 判 所 に事 件 を 差 し戻 した 。
「1 .上 級 地 方 裁 判 所 の 見 解 は つ ぎ の とお りで あ る。 世 話 権(daselterliche Sorgerecht)は 、BGB823条1項 の 『その他 の権 利 』 で あ り、 そ の侵 害 は損 害 賠 償 義務 を発 生 させ うる。 これ は、 絶 対権(absolutesAbwehrrecht)と して の世 話 権 の 機 能 か ら導 か れ る。 世 話 権 は、 第 三 者(父 母 の 他 方 を 含 め て)に 対 す る関 係 に お い て は 世 話 権 者 の 権 利 で あ り、 違 法 に子 を 引 き渡 さな い す べ て の 者 か らの 子 の 引 渡 を請 求 す る権 利 、 さ らに第 三 者 と子 の交 流 を決 定 す る権 利 を 含 む 。 これ に 対 して 、 世 話 権 を有 しな い 父 母 の一 方 の 交 流 の権 利 は 、 相 対 的 な 法 律 上 の地 位 で あ り、 交 流 権 者 と世 話 権 者 の 関 係 に お い て の み 権 利 お よび 義 務 を生 じ させ 、 通 常 は第 三 者 に よ り妨 害 され 得 な い もの で あ る。
この 見 解 が 妥 当 な もの で あ るか は疑 問 で あ る。 な ぜ な ら、 第 一 に、 交 流 権 は、
世 話 権 者 に対 して だ け で は な く、 子 が そ の監 護 の 下 に あ るす べ て の 者 に 対 して も存 す るか らで あ る。 交 流 権 は、 世 話 権 に 対 立 す る権 利 と して 現 れ るの で は な く、 世 話 権 者 自身 に も帰 属 す べ き権 利 で あ る。 た とえ ば、 子 が 世 話 権 者 の 意 思 に反 して い て も、 適 法 に 第 三 者 の も とに と どま っ て い る場 合 に は 、 世 話 権 者 は この第 三 者 に対 す る関係 で は交 流 権 を もっ(た とえ ぼ、BGBI632条4項 、1682 条 参 照)。 第 二 に、 子 の関 係 人(Bezugspersonen)ま た は世 話権 を 有 す る父 母
の0方 の 身 内 の者 が 、 父 母 の他 方 と この 交 流 を妨 害 また は侵 害 し よ う とす る状 況 は容 易 に想 像 で き る。 この よ うな場 合 に は、 一 一BGBI684条2項1段 の 善 行 義 務 に よ り確 定 され た 範 囲 を超 え て も 一 こ う した侵 害 に 、BGB823条1項 、 1004条1項 に よ り対 処 す る必要 が あ る こ とは、 簡 単 に否 定 す る こ とはで き な い で あ ろ う。
しか し、 本 件 に お け る問 題 は こ こで 結 論 が 出 て い るわ け で は な い 。 父 母 と子 との交流 権(BGB旧1634条1項1段=BGB1684条1項)は 、 交 流 権 を もつ 父 母 の一 方 と他 方 との間 に、家 族 法 上 の性 質 の法 定 の法 律 関係(eingesetzliches
RechtsverhaltnisfamilienrechtlicherArt:以 下 、 家 族 法 上 の法 律 関係 とす る)を 基 礎 づ け る。 この 法 律 関 係 は、BGB旧1634条1項2段=BGB1684条2
項1段 に よ って よ り詳 細 に形 整 され 、また この 関係 に は、受 益 者(BegUnstigter) と して 子 が 関 与 して い る。 交 流 権 の 行 使 に伴 う費 用 は、 原 則 と して 、 交 流 権 者
に よ っ て 負 担 され る必 要 が あ るの で(第12民 事 部 の1993年206事 件 に 対 す る
24)
1994年ll月9日 の 判 決)、 この 家 族 法 上 の法 律 関 係 は 、 一 子 の福 祉 に も資 す る よ う に 一 交 流 の供 与 に際 して 交 流 権 者 の財 産 上 の 利 益 に 配 慮 し、 交 流 権 者 に不 必 要 な 財 産 上 の 損 失 を負 わせ る こ とに よ り子 との 交 流 の 実 現 を 困 難 に しな い ま た は 一 子 の 福 祉 お よ び子 の 権 利 に反 して 一 将 来 に お い て わ ず らわ しい もの に しな い よ う にす る義 務 を包 括 す る。 この 義 務 の違 反 は、 一 積 極 的債 権 侵 害 の 法 理(diezurpositivenForderungverletzungentwickelten
Grundsatze)に 照 ら して 一 交流 権 を もつ父 母 の一 方 に対 す る損 害 賠 償 義務 を 発 生 させ う る。」
「2 .上 級 地 方 裁 判 所 は、 も ち ろん 、 交 流 権 を もつ 父 母 の̲̲̲.方の 財 産 上 の 利 益 に対 す る違 反 が す べ て 損 害 賠 償 義 務 を根 拠 づ け る もの で は な い とい う考 え 方 に 立 っ て い る。 こ う した 限 定 が あ る こ とは、 子 の 福 祉 の観 点 の も と、 具 体 的 な交 流 の予 定 日時 に お け るそ の 拒 絶 を必 要 ま た は正 当化 され る もの と評 価 させ う る
多 数 の 事 情 が 裁 判 上 で命 じ られ た 交 流 の 実 現 を妨 げ る こ とが あ りう る とい う状 況 か らす で に 明 らか とな る とす る。 そ の 場 合 に、 上 級 地 方 裁 判 所 は 、 この 境 界 を画 す るた め に必 要 な基 準 を権 利 の濫 用(Rechtsmif3brauch)に 求 め て い る。
そ の説 くと ころ は つ ぎ の とお りで あ る。 世 話 権 を有 す る者 は、 確 か に、 父 母 の 他 方 の 交 流 権 を 随意 に 拒 絶 して は な らな い。 しか し、 父 母 の 他 方 の財 産 上 の利 益 の保 護 の必 要 は 、 交 流 を拒 絶 す る す べ て の 場 合 に つ い て で は な く、 世 話 権 者 の濫 用 的 な拒 絶 の場 合 に 限 って 損 害 賠 償 請 求権 が 考 慮 さ れ る こ とで 、 十 分 に保 障 され て い る。 こ の立 場 は、 妻 が 所 得 税 に つ い て の 共 同 査 定 を拒 否 した こ とに 基 づ く夫 の損 害 賠 償 請 求 を 、 共 同 査 定 の拒 否 が 実 質 的 理 由 な しに行 な わ れ た こ
25}
とに、 つ ま り濫 用 的 に拒 否 され た こ とに基 づ かせ て い る連 邦 通 常 裁 判 所 の 判 決 に も一致 す る、 と。」
「上 級地 方 裁 判 所 が 決 定 的 な判 断 の 基 準 と して考 慮 して い る権 利 の濫 用 は、 権 利 者(InhabereinerformerRechtsposition)が 権 利 を是 認 され な いや り方 で(inzumiβbilligennderWeise)行 使 す る場 合 に は 、 確 か に認 め られ る。
しか し、 交 流 権 の 違 法 な侵 害 の場 合 に は、 この よ う な権 利 の 濫 用 にか か わ る問 題 で は な い。 子 が適 法 に そ の 監 護 の も とに あ り、 そ れ ゆ え父 母 の一 方 に交 流 を か な え な け れ ぼ な らな い者 が 、 そ の父 母 と子 との 交 流 を排 除 ま た は制 限 した と
非 監護親 と子 との面i接交 渉の妨 害 と損害 賠償 につ いて
57
して も、 そ れ は 自 己 の 権 利 を主 張 して い る わ け で は な い。 権 利 の濫 用 が 問 題 と な るの は、 権 利 が 行 使 され る場 合 で あ る。 この 場 合 、 監 護 親 は 、 む し ろ逆 に、
父 母 の他 方 の権 利 の 達 成 お よび 義務 の 履 行 を妨 げ て い るの で あ る(BGBI684条 1項 後 段 参 照)。」
「父 母 の一 方 は、 子 の福 祉 に 関 す る家 庭 裁 判 所 の判 断 に納 得 す る こ とが で き な い とき は 、抗 告 を す る こ とが で き る。 む ろ ん父 母 の 一 方 に よっ て 抗 告 が な さ れ て も、 それ に よっ て 家庭 裁 判所 の判 決 の拘 束 力(Verbindlichkeit)は 妨 げ られ な い。 抗 告 が 上 級 裁 判 所 に よ り認 め られ る とい う期 待 か ら、 家 庭 裁 判 所 の取 り 決 め に従 わ な い こ とが 許 され る わ けで は な い 。 これ は、 本 件 の よ うに、 抗 告 裁 判所 が 抗 告 に 関 す る判 決 の 前 に更 な る調 査 の必 要 が あ る と判 断 し、 当事 者 に そ の 通 知 が な さ れ て い る場 合 に も 同様 で あ る。 抗 告 裁 判 所 は、 こ の よ うな 場 合 に は、 仮 の命 令 に よ り家 庭 裁 判 所 の取 り決 め の実 現 を停 止 し また は 自 ら仮 の取 り 決 め に よ って家 庭 裁 判 所 の取 り決 め を修 正 す る こ とが で き る(FGG24条3項)。
抗 告 裁 判 所 が この 手段 を と らな い とき は、 一 抗 告 に対 す る判 断 が下 る ま で 一 家 庭 裁 判 所 の 取 り決 め に従 う ほか な い。」
「交 流 を か な え る義 務 を負 う両 親 の一 方 が 、 家 庭 裁 判 所 に交 流 の取 り決 め の 変 更 を 一 緊 急 の場 合 に は 、 仮 命 令 の 方 法 に よ り 一 申 し立 て る こ と も認 め られ て い る。 これ は、 家 庭 裁 判 所 に よ り考 慮 され て い な い 新 た な展 開 が あ っ た こ と
に よ り、 既 に行 な わ れ た取 り決 め の厳 守 が 困 難 とな り また は子 の福 祉 の 観 点 か らみ て 実 行 不 可 能 で あ る場 合 に は適 当 な手 段 で あ ろ う。 家 庭 裁 判 所 に お け る取 り決 め の変 更 の 可 能 性 が 認 め られ て い る こ と は、 当 事 者 に新 た に生 じた 問 題 に 柔軟 に対応 す る こ と可 能 に した だ けで は な い。 この 可能 性 は、一 逆 にみ る と 一 実 際 の また は推 定 上 の 変 更 の必 要 が あ る と き に、 裁 判 所 が か か わ る こ とな く単 独 で 、 裁 判 所 の取 り決 め の 効 力 を失 わ せ る こ とを禁 止 す る根 拠 に もな り う る 。 確 か に 、 当事 者 が 、 原 則 と して 家 庭 裁 判 所 の 判 決 に拘 束 され る とい う こ と は、
子 の福祉 とい う強 行 的 な 利益(zwingendeBelangen)を 家庭 裁 判 所 の 事 前 の 許 可(Gestattung)が な く と も単 独 の措 置 に よ り顧 慮 す る権 限 を全 面 的 に奪 う も の で は な い 。 しか し、 この よ うな権 限 が 認 め られ るの は、 通 常 は、 家 庭 裁 判 所 が 遅 滞 な くか か わ る こ とが 一 迅 速 手 続(Eilverfahren)と い う方 法 に よ っ て も 一 不 可 能 で あ り、 か つ 家 庭 裁 判 所 の取 り決 め に従 わ な い こ と を認 め させ
る利 益 が 、 そ の 取 り決 め後 に は じ め て発 生 し また は認 識 され た が 、 いず れ に し て も子 の 福 祉 の 評 価 の 際 に 家 庭 裁 判 所 に よ っ て考 慮 され て い な い こ とが 明 らか で あ る場 合 に 限 られ る ので あ る。 そ れ に 対 して 、 当事 者 に よ る子 の 福 祉 の判 断 と家 庭 裁 判 所 の見 解 とが 異 な る こ とは、 緊 急 の場 合 に お い て も、 家 庭 裁 判 所 の 取 り決 め に一 方 的 に従 わ な い こ とを 容 認 す る も の で は な い 。」
「3 .本 件 に お い て 、Y(母)が 家 庭 裁 判 所 に よ り確 定 され た交 流 の取 り決 め を守 らな か っ た こ とは、X(父)に 対 す る義 務 違 反 とな る。Yが 子 に 一 人 で 飛 行 機 移 動 を させ る こ とは子 の福 祉 を害 す る とい う確 信 を も って い た と して も、
そ れ に よ っ て 原 告 に 対 す る義 務 違 反 を正 当化 す る こ とはで き な い。Yの 母 親 と して の 心 配 を一 部 考 慮 して い る上 級 裁 判 所 の そ の後 の取 り決 め は、 家庭 裁 判 所 の取 り決 め に従 わ な い こ とを 容 認 す る もの で は な い。 ま た この取 り決 め の 仮 の 変 更(vorlaufigeAnderung)は 、 独 断 で 行 な う こ とが で き る もの で は な く、
そ の た め に用 意 され て い る仮 の法 的保 護 手 段 に よ って の み行 な う こ とが で きる。」
(3)交 流 権 の侵 害 に 関 す る ドイ ツ の 判 例 の検 討
下 級 審 の 二 つ の 判 決 は、 不 法 行 為 に基 づ い て 、 家 庭 裁 判 所 に よ る交 流 の 取 り 決 め を 監 護 親 が 守 らな か っ た こ とに よ っ て生 じた 損 害 の 賠 償 請 求 を認 めて い る。
す な わ ち、 交 流 権 は、BGB823条1項 の 意 味 にお け る 「その他 の権 利(絶 対 権)」
に あ た り、 世 話 権 の侵 害 が 絶 対 権 に 対 す る侵 害 と して 損 害 賠 償 請 求 権 を 生 じ さ
26)
せ るの と同 じ く、 交流権 の侵害 もまた損害賠償 請求権 を生 じさせ る として い る。
交流権 を絶 対権 と理解 す る点 は、連 邦通 常裁判 所 の判 決 も同 じで あ る。 これ は、
交流権 を相 対 的 な法律 上 の地位 にす ぎな い もの としてい た原 審(フ ラン クフル ト上 級地 方 裁判 所)の 判 決 に反 対 して い るこ とか らみて も明 らかで あ る。 しか し連 邦通 常 裁判所 は、二 つ の下 級審 判決 とは異 な る見解 を示 した。連 邦通 常裁 判所 は、交 流権 を有 す る父母 の一 方 の損 害賠 償請 求権 を、交 流権 者 と監護 親 と
の間 に存在 す る 「家族 法 上 の法律 関係 」か ら導 き出 して い る。 この両 者 の間 の 法律 関係 の も と、交流 に関す る費用 は原則 と して交流権者 が負担 す るこ とか ら、
監護 親 に は、 交流 の実行 にあた り、交流 権者 の財 産 上 の利益 に配慮 す る義 務 が 生 じる とす る。 そ して、 この父母 間 の法 律 関係 を債務 関係 と結 び付 けて 、 そ こ
に積 極 的債 権侵 害 の法理 を当て はめて法 律 関係上 の配 慮義務 の違反 は損 害賠償
非監護親 と子 との面接交 渉 の妨害 と損 害賠 償 につ いて
59
義務 を生 じさせ うる として い る。
以下で は、 この連邦 通 常裁判所 の判決(③)に つ い て指摘 された問題 点 を 中 心 にみ てい くこ とにす る。 同判 決 につ いて は、父 母 間 の家族 法 上 の法律 関係 は どの よ うな根 拠 に基 づ くか、家族 法 上 の法律 関係 に債権 法 上 の枠 組 み を適 用 す るこ との可否 、家族 法上 の法律 関係 にお け る財産 上 の利益 の配 慮 義務 を認 め る 場合 、 それ は交流 権 を有 す る父 母 の一方 の た め にだ け認 め られ るものか 、子 の
27)
福 祉 と配慮 義務 違反 の 関係 な ど、 さ まざ まな問題 点 が指摘 され て い る。
① 父 母 間 の 法 律 関 係
連 邦 通 常 裁 判所 は、 監 護 親 と交 流 権 を 有 す る父 母 との 問 に は、 家 族 法 上 の 法 律 関 係 が 存 在 す る とす る。 こ の 法 律 関 係 は 、 子 の 福 祉 の た め の 父 母 の 協 力 (Kooperation)の 必 要 性 か ら生 じる。 しか も交 流 権 を有 す る父 母 の一 方 と他 方 との 関 係 に お いて だ け で は な く、 子 に対 して と も に責 任 を負 い 、 か っ そ の 責 任 を果 た す た め に互 い に協 力 しな け れ ば な らな い父 母 間 に お い て 一 般 的 に生 じ る
2$)
とされ る。
ドイ ツ民 法 典 に は この 法 律 関 係 を定 め る規 定 は な い が、 つ ぎ の よ う に説 明 さ れ て い る。 た とえ ぼ 、 婚 姻 関 係 に あ る父 母 につ い て み る と、 婚 姻 関 係 の 場 合 に お い て は、 子 に対 す る父 母 の 義 務 は、 少 な くと も一 部 分 につ い て は、 婚 姻 上 の 義務 の 中 に統 合 され て い る。 す な わ ち、 夫 婦 は互 い に そ の労 働 お よび財 産 を 持 っ て 家 族 を相 応 に扶 養 す る義 務 を負 い(BGBl360条1段)、 この夫 婦 の相 互 の 扶 養 義 務 は 、子 の生 活 の必 要 を充 足 す る こ とに も及 ぶ とされ る(BGBI360a条1
項)。 した が っ て 、 夫 婦 関 係 上 の 義 務 に子 の 扶 養 も束 ね られ て い る こ と に な る。
子 の扶 養 は通 常 は、 子 に食 事 や 衣 類 を与 え、 子 の健 康iお よ び 身体 的成 長 や 子 の 精 神 的 発 達 に 配 慮 す る こ とに よ っ て行 わ れ る。 これ は子 の 育 成 お よ び教 育 とい う親 の責 任 を果 た す こ とに ほか な らな い。 父 母 は そ の 責 任 を果 た す に 当 た っ て 、 必 要 な場 合 に は、子 の福 祉 のた め に協 力 す る義 務 を負 う(BGBl356条1項 、1627 条 参 照)。 親 と して の責 任 は、 子 に対 して存 在 す る もの で あ るが 、 同 時 に父 母 が 相 互 の協 調 の下 に子 の 福 祉 の た め に協 力 す る限 りで は 、 父 母 間 の 法 律 関 係 を 生 じ させ る こ とに な る。 一 方 、 婚 姻 関 係 に な い 父 母 の 場 合 に は、 これ に比 肩 す る 規 定 は お か れ て い な い。 しか しそ れ で もな お 、 父 母 の 共 同 の 責 任 は 、 父 母 が 婚
姻 関 係 に あ るか 否 か に か か わ らず 、r的 に 、 子 の 福 祉 の た め に協 力 す る こ と が 必 要 とされ る 限 り、 父 母 間 に義 務 関 係 を生 じ させ る。 す な わ ち 、 父 母 の それ
ぞれ が 親 の 責 任 を 果 た す た め に他 方 との 協 力 が 必 要 不 可 欠 で あ る限 りで は、 子 に対 して だ けで な く、 父 母 の 他 方 に対 して も また 、 相 応 な 協 力 の 準 備 と努 力 を
29)
す る義 務 が 存 在 す る とい う こ とが で き る、 と。
②家族法上の法律関係 における義務違反 と損害賠償請求
34)
父 母 間 に家 族 法 上 の 法 律 関 係 が あ る こ とに は 異 論 は み られ な い。 しか し、 こ の法 律 関 係 を債 務 関 係 と して 、 そ の 関 係 にお け る義 務 違 反 の場 合 に損 害 賠 償 請 求 が 認 め られ るか は別 で あ る。 少 な く とも、 これ まで の 通 説 的 見 解 に よ る と、
家 族 法 上 の 義 務 違 反 につ い て は、 それ が 経 済 的 な給 付 にか か わ る婚 姻 上 の 義務 で あ る場 合 を 除 き、 債 権 法 上 の 規 定 は適 用 され な い と考 え られ て きた 。 た とえ ば、 「婚 姻 上 の 共 同生 活 の本 質 か ら生 じ る人 的 な義務(pers6nlichePflichten)
の履 行 は、 も っ ぱ ら 自 由 な決 定 に基 づ く婚 姻 上 の 心 情(Gesinnung)に よ って 保 証 され る」 もの で あ り、 違 約 罰 や 損 害 賠 償 請 求 を認 め るな どの 強 制 とは相 い
31)
れ な い とされ て い る。 父 母 の 子 に対 す る責 任 の 領 域 に お け る協 力 の 義 務 も、 同 様 に家 族 法 上 の 人 的 な 義 務(pers6nlichefamilienrechtlichePflichten)に
か か わ る問 題 で あ り、 そ の義 務 違 反 につ い て は、 親 子 関 係 法 上 の 措 置 に よ るべ き で あ り、 これ を債 権 法 の規 定 に基 づ く損 害 賠 償 の 請 求 に よ って 処 理 す る こ と
32)
に は疑 問 が 残 る との指 摘 が み られ る。
③ 交 流 権 者 の 財 産 上 の 利 益 の 考 慮
連 邦 通 常 裁 判 所 は 、 交 流 権 を 有 す る父 母 の一 方 と監 護 親 との 間 に認 め られ る 家 族 法 上 の 法 律 関 係 の 中 に、 子 の 福 祉 の た め に履 行 され な けれ ば な らな い人 的 義 務(personalePflichten)の み な らず 、 交 流 の供 与 に あた っ て交 流 権 者 の 財 産 上 の 利 益 に配 慮 す る義 務 お よ び交 流 権 者 に不 必 要 な財 産 上 の 損 失 を負 わせ る
こ とに よ り子 との 交 流 の 実 現 を 困難 に しな い また は将 来 に お い て わ ず らわ しい もの に しな い よ うに す る義 務 を包 括 して い る。 これ は、 子 の福 祉 の た め の 人 的 な 父母 の協 力 義務 と父 母 双 方 に相 手 方 の権 利 お よび法 益(Rechtsguter)に 対 す る配 慮 を義 務 づ け る債 務 関 係(Schuldverhaltnis)が 結 びつ け られ る こ とを前
非 監護親 と子 との面接 交渉 の妨害 と損害賠 償 につ いて
61
提 として い る(BGB241条2項 参照)。
連邦 通 常裁 判所 の判決 は、 交流権 の行 使 に伴 う費 用 は原則 として 交流権 者 が 負担 す る こ とを理 由 として、 世話権 者 が交流 権 者 の財産 上 の利益 に配 慮 す る義 務 を負 うとして い る。 しか し、親 の責任 を果 たす た めの父母 の協 力 の義務 が こ の判 決 の基礎 に置 かれ て い る とすれ ば、 相 手方 の財 産 上 の利益 に配慮 す る義務 は、世 話権 者 と交流 権者 との関係 におい てだ け生 ず るもので あ るの か、 また そ れ は交流権 者 の た めにだ け認 め られ うる もので あ るのか とい うこ とが問題 とな
33}
る。 た とえ ば 、 監 護 親 が 交 流 の 日時 に 、 交 流 権 者 に よっ て 子 が 世 話 され る こ と を信 頼 して 、 仕 事 や プ ライ ペ ー トで の予 定 を入 れ た 場 合 に、 交 流 権 者 が 取 り決 め に従 っ て 交 流 を実 行 しな けれ ば 、 監 護 親 に は 財 産 上 の 損 害(子 の 世 話 の 手 段 を確 保 す る費 用 あ る い は予 定 の キ ャ ンセ ル にか か る費 用 な ど)が 生 じ う る。 こ の場 合 、 交 流 権 者 に は、 監 護 親 の財 産 上 の 利 益 に配 慮 す る義 務 は な い の で あ ろ
34)
うか 。
この 判 決 が 基 礎 に お い て い る考 え方 に 従 うな らば 、 相 手 方 の財 産 上 の 利 益 に 配 慮 す る義 務 は、 世 話 権 者 と交 流 権 者 の 関 係 に お い て だ け で な く、 父 母 が 、 親 の 責 任 に お い て 、 子 の福 祉 の た め に協 力 す る義 務 を 負 うあ らゆ る場 合 に認 め ら れ な けれ ば な らな い と考 え られ る。 そ の 理 由 は っ ぎ の よ う に説 明 され る。 父 母 問 の協 力 義 務 は、 父 母 の 共 同 の 責 任 か ら導 き出 され る。 この協 力 義 務 は、 あ ら ゆ る種 類 の 父 母 の 共 同責 任 か ら生 じ る もの とみ な け れ ば な らな い 。 世 話 権 の 帰 属 の形 態 が どの よ うな も ので も(世 話 権 が 単 独 で行 使 さ れ る場 合 で も、 共 同 で 行 使 され る場 合 で も)、 父 母 の協 力 の 義務 は あ らゆ る場 合 に 存 在 す る。 父 母 は、
子 に対 す る共 同 の 責 任 を果 た す に あ た り、 そ の 世 話 権 お よ び交 流 権 の 帰 属 の 状 況 に応 じ、子 の福 祉 の 実 現 の た め に協 力 しな けれ ぼ な らな い 。 そ の際 、 父 母 は、
互 い に相 手方 の財 産 上 の利 益 に配 慮 しな けれ ぼ な らな い こ とに な るはず で あ る。
父 母 の 一 方 が この 配 慮 義 務 に違 反 す る とき は、 損 害 賠 償 義 務 が 生 じ う る。 これ
35)
は、 結 果 的 に、 父 母 問 の新 た な 紛 争 の 扉 を開 くこ とに な り う る。
④ 交流 の取 り決 め にお け る義務 違反 をめ ぐる問題
連 邦通 常裁 判所 の判 決 は、前述 の よ うに、交流 権 を有す る父母 の一方 と世 話 権者 の 間の家族 法 上 の法律 関係 には交流権 者 の財 産 上 の利益 の配 慮義務 が含 ま
れ る と して 、 そ こ に積 極 的 債 権 侵 害 の法 理 を当 て は め て結 論 を導 き出 して い る。
積極 的債 権 侵 害 に基 づ く損 害 賠 償 請 求 はつ ぎ の こ とを要 件 とす る。(a)債 務 関 係 の存 在(BGB241条2項)、(b)BGB241条2項 の 意 味 に お け る配 慮 義 務 の 違 反 、(c)債 務 関 係 に基 づ く義 務 の 違 反 が 、 債 務 者 の 責 め に帰 され る もの で あ
36)
る こ と(BGB281条1項2段)、(d)義 務 違 反 に よ る損 害 の 発 生 、 で あ る。 こ の うち 、 原 告 は義 務 違 反 の存 在 と損 害 の 発 生 に つ い て の証 明 責 任 を 負 う と され
る。 した が っ て 、 世 話 権 者 が 交 流 の 取 り決 め に従 わ な い とき は 、 交 流 権 を もつ 父 母 の一 方 が 世 話 権 者 の 義 務 違 反 を証 明 す る こ とに な る。 この場 合 、 交 流 権 者 は 、 配 慮 義 務 の 内容 を特 定 す る必 要 が あ る。 この 配 慮 義 務 は、 給 付 義務 とは 異 な り、 精 密 に特 定 され た 内容 を持 た な い 。 そ こで 、 配 慮 義 務 は 個 々 の 具 体 的 な
37)
状 況 との 関 連 に お い て そ の 内 容 を特 定 す る ほか は な い こ とに な る とさ れ る。
一 方、 被 告 は、 義 務 違 反 に よ る損 害賠 償 を免 れ る に は 、 そ れ が 自 己 の 責 め に 帰 され る もの で は な い こ とを立 証 す る必 要 が あ る。 連 邦 通 常 裁 判 所 の 判 決 に よ れ ば、 交 流 を供 与 す る義 務 を負 う世 話 権 者 が 家 庭 裁 判 所 の取 り決 め に従 わ な い 場 合 に は 、 た と え そ れ が 子 の 福 祉 に適 合 しな い との理 由 に基 づ くもの で あ っ た と して も、 原 則 と して 義 務 違 反 とな る とされ る。 しか し、 た とえ ぼ、 子 が 病 気 で あ る場 合 や 、 子 が 頑 強 に 交 流 を拒 絶 して い る場 合 は ど うか 。 世 話 権 者 は、 配 慮 義 務 違 反 に基 づ く損 害 賠 償 を回 避 す る に は、 子 の健 康 状 態 を 無 視 して 、 あ る
38)
い は子 に 対 して 強 制 手 段 を用 い て で も交 流 を実 行 しな けれ ば な らな い の か 。 こ の 点 にっ き判 決 は、 家 庭 裁 判 所 へ の遅 滞 の な い 変 更 等 の 申 立 が 不 可 能 で あ り、
か つ 裁 判 所 に よ る交 流 の取 り決 め の際 に予 測 され なか っ た また は考 慮 され な か っ た 特 別 の 事 情 に よ っ て 、 交 流 を実 行 す る と、 子 に 身体 的 お よび 精 神 的 な 損 傷 を 及 ぼ す 差 し迫 っ た 危 険 が あ る場 合 に は、 世 話 権 者 が 交 流 の 取 り決 め に従 わ な く
と も義 務 違 反 に は な らな い とす る。 そ の ほか の 場 合 に は、 抗 告 な どの 法 律 上 の 手 段 、 変 更 の 申立 な どの 手 続 を と らな けれ ば 、 義 務 違 反 とな り得 る。
連 邦 通常 裁 判 所 の 判 決 は、 明 らか に世 話 権 者 が 子 の福 祉 を根 拠 と して 交 流 の 取 り決 め に従 わ な い こ とを いか に して 阻 止 す るか を 問 題 に して い る とみ る こ と が で き る。 しか し、 交 流 の 取 り決 め の際 に は考 慮 され な か った また は 予 見 す る こ とが で き なか っ た 特 別 の 事 情 に よ り、 交 流 の 実 行 が 子 に損 害 を生 じさせ る場 合 に は 、 別 の考 慮 が 働 か な け れ ば な らな い。 交 流 が 裁 判 所 に よ って 取 り決 め ら
非監護 親 と子 との面接 交渉 の妨害 と損 害賠 償 につ いて
63
れた とい う理 由だ けで 、子 の福祉 に対 して交流権 者 の経済 上 の利益 を優 先 させ
39}
る こ とは正 当 化 され る も の で は な い とさ れ る。
⑤ 父母 の裁判 外で の合 意 に よ る交流 の取 り決 め と損 害賠 償
父 母 の一方 が父母 間 の裁判 外 で の交流 の合 意 に反 した場 合 につ いて も、 損害 賠償 請 求が認 め られ うるか 。連 邦 通常 裁判所 は、 この判 決 におい て 「家 庭 裁判 所 の決 定が効 力 を生 じる こ とに よって当事者 は具体化 され た義務 権 に拘 束 され
4D)4I)
る」 と述 べ て い る こ とか らみ る と、 これ を否 定 す る見 解 の よ うに思 わ れ る。 し か し、 この 判 決 の 前 提 に従 うな らぼ、 損 害 賠 償 を基 礎 づ け る義 務 違 反 は、 裁 判 所 の 取 り決 め に違 反 して い る か ど うか に よ っ て判 断 さ れ 得 な い こ とに な り う る
42)
との 指 摘 もあ る。 な ぜ な ら、 連 邦 通 常 裁 判 所 が 家 族 法 上 の 法 律 関 係 の 基 礎 に お い て い る父 母 の協 力 の 義 務 は、 そ れ が 裁 判 所 の判 決 に よ っ て 具 体 化 さ れ て い る か 否 か に よ っ て左 右 され る もの で は な い か らで あ る。 した が っ て 、 裁 判 所 に よ る交 流 の 取 り決 め の 違 反 に つ い て 述 べ られ て い る こ と は、 父 母 の 一 方 が 交 流 の 合 意 に よ る取 り決 め に反 して い る場 合 に も妥 当 しな け れ ぼ な らな い とされ る。
父 母 の0方 が 子 の福 祉 とい う理 由 か ら交 流 の合 意 をi撤回 した い と考 え る場 合 に は 、 新 た な合 意 また は家 庭 裁 判 所 の 決 定 に よ る取 り決 め を 求 め る方 法 が あ り、
合 意 の 一 方 的 な不 履 行 は、 子 の福 祉 が危 険 に さ ら され る差 し迫 っ た 事 情 の な い 限 り、 家 庭 裁 判 所 の 取 り決 め の 違 反 の場 合 と同様 に 、 父 母 の 法 律 関係 に お け る
43j
義 務 違 反 とな り うる とされ る。
3.面 接 交 渉 の 妨 害 と損 害 賠 償
(1)面 接 交渉 の法的性 質 とその権利性
わが 国で は、面接 交渉 に関 す る明文 の規 定 が な いた め、 その権 利性 や法 的性 質 をめ ぐって さ まざまな議 論 が な されて きた。 た とえぼ、面接 交渉 の権 利 性 に
ゆ
関 して は、 これ を承 認 す るのが裁 判例 ・学説 にお いて一般 的で あ るが、面 接 交 渉権 を法 的 に承 認 す る こ とは子 の利益 を害 す る場 合 が多 い として その権 利性 を
コ
否 定 す る見 解 もみ られ る。 ま た 、面 接 交 渉 の 権 利 性 を承 認 す る立 場 に お い て も、
そ の 法 的性 質 を め ぐっ て は、 親 子 とい う身 分 関 係 か ら 当然 に認 め られ る親 の 自
然 権 で あ る と と らえ る説 や 、 監 護 に 関連 す る権 利 と と ら え る説 、 親 権 な い し監
48)
護 権 の 一 権 能 とす る説 、 親 と して の 自然 権 で あ る と と も に具 体 的 に は監 護 に関
49}ら の
連 す る権 利 とみ る説 、 子 の権 利 と して と らえ る説 、 親 の権 利 で あ る と同 時 に子
5j)
の権 利 と と らえ る説 な どが主 張 され て お り、 い ま だ 見 解 は一 致 して い な い 。 な お 、最 高 裁 は、 近 時 、 別 居 状 態 の 事例 にお い て 、 「家庭 裁 判 所 は、 民 法766 条 を類 推 適 用 し、 家 事 審 判 法9条 乙 類4号 に よ り面 接 交 渉 に つ い て 相 当 な処 分 を命 じ る こ とが で き る」 と し、 非 監 護 親 と子 との面 接 交 渉 を子 の 監 護 に関 す る 処 分 事 件 と して 処 理 して き た 家 庭 裁 判 所 の実 務 の大 勢 に沿 っ た判 断 を示 して い
る(最 決 平 成12年5月1日 民 集54巻5号1607頁)。
(2)面 接交 渉 の妨 害 に関す るわが 国 の裁判 例
監護 親 が正 当 な理 由な く子 と他 方 の親 との面接 交 渉 を妨害 した場合 に、 わが 国の裁判例 の中 には、不 法行為 と して慰謝 料請 求 を認 め る ものが あ る。 一つ は、
親 権者 で あ る母 が、離 婚調停 の際 に父 母 間で合意 された面 接交 渉 の協 議 を定 め た調停 条 項 に従 わず、 面接 交渉 を拒否 した事件 に関 す る もの で あ り、 も う一 つ は、協 議 離婚 の際 に父 母間 で合意 された面接 交 渉が 子 の監護 者 で あ る母 に よっ て拒 否 され た事件 で あ る。
① 静 岡 地 裁 浜 松 支 部 平 成11年12月21日 判 決(判 時1713号92頁)
事 実 の概 要 は つ ぎ の とお りで あ る。X(原 告:父)とY(被 告:母)は 平 成 4年11月4日 に婚 姻 し、 平 成6年1月28日 に長 男 一 郎 が 出 生 した 。 そ の後X
とYは 不仲 とな り、Yは 一 郎 を連 れ て 実 家 に帰 って しまい、 以後 別 居 状 態 とな っ た。Yは 平 成7年8月 にXと の 離 婚 を求 め て 夫 婦 関 係 調 整 の 調 停 を 申 し立 て た が 、 不 調 に よっ て 終 了 した 。 一 方 、Xは 、 同年11月 こ ろYを 相 手 方 と して 、 一 郎 との面 接 交 渉 を求 め て調 停 を 申 し立 て た が 、 翌 年8月7月 に不 調 に帰 した 。 Yは 、 平 成8年7月17日Xを 相 手 方 と して離 婚 等 請 求 訴 訟 を提 起 し、 和 解 等 を 経 て 再 び調 停 に付 され た 。 そ の 結 果 、 平 成10年6月3日 、 「YはXに 対 し、 一 郎 と2ヶ 月 に1回 、1回 につ き2時 間 程 度 面 接 す る こ とを 認 め 、Xか らの 申 し
出 に よ り、 日時 、 場 所 、 方 法 等 に つ い て 協 議 す る こ と と し、Yは 子 の 面 接 交 渉 が 円滑 に行 わ れ る よ う に誠 意 を持 っ て これ に あ た る。 な お 、 面 接 場 所 に つ い て