ネワール語の能格現象
著者 長野 泰彦
雑誌名 国立民族学博物館研究報告
巻 11
号 4
ページ 811‑835
発行年 1987‑03‑31
URL http://doi.org/10.15021/00004358
長 野 ・ ネ ワー ル 語 の能 格 現 象
ネ ワ ー ル 語 の 能 格 現 象 ・
長 野 泰 彦 *
Ergativity of the Newar Language
Yasuhiko NAGANO
Newari, a Tibeto-Burman (TB) language spoken in Central Nepal, has had written documents since the 14th century and is the fifth oldest TB language with manuscripts. This language is now spoken by half a million people, most of whom inhabit the Kathmandu Valley.
Despite its long history and large population of native speakers, Newari has attracted relatively little scholarly attention, and there are few reliable publications on it. Much more research should be conducted on this language, since it has several important keys for examining the proto-TB morphosyntax, providing link among TB sub-groups.
This paper is a checklist on Newari ergativity. Ergativity has a close connection with pronominal morphology of TB, one of the good historical criteria of the language group. Bauman [1975] made an extensive comparison of pronominal aspects of TB, thus providing the global scope of TB transitivity types as well as split. However, he did not discuss Newari directly.
Stimulated by Bauman [1975] and DeLancey [1981], GivOn presented a paper describing Newari ergative morphology.
Although further analysis may be required, his paper provides the best starting point for the present work. This paper attempts to supplement that by GivOn.
Ergativity is one of the most controversial morphosyntactic topics of TB linguistics. `Ergative' is, as I understand it, one of the transitivity structures in which the transitive agent is marked syntactically and/or morphologically.
As Bauman pointed out [BADMAN 1975: 221-222], TB has a variety of morphological types of ergativity, the appearance of
*国立民族学博物館第 1研究部
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国立民族学博物 館研究報 告 ・11巻 4号
which varies among languages. Hayu, on the one hand, represents an extreme in which ergative markers consistently occur and no accusative type is observed. In some languages, on the other hand, a high optionality of markers (ergative and accusative) is seen. A very limited number of the TB languages are consistently ergative and many others belong to 'split- ergative' type. This will be further sub-classified according to the degree of optionality and mixture of case markers.
Newari is said to belong to split-ergative type; therefore, the description here will be focussed on how 'split' and/or 'mixed' it is in terms of ergativity.
0. は じめ に
1. 能 格現 象 の捉 え 方 を め ぐる諸 問題
2. ネ ワール語 に お け る能 格 現象 の 事 例 3. むす び
・O. は じ め に
ネ ワ ー ル (N ewar) 語 は ネ パ ー ル 中 央 部 を 中 心 に 話 さ れ る チ ベ ッ ト ・ ビ ル マ (TB)
系 の 言 語 で , 之 を 母 語 と す る 人 々 は ネ パ ー ル 全 土 で 50万 弱 , そ の 内 65% は カ トマ ン ド ゥ盆 地 に 居 住 して い る1)。
こ の 民 族 の 歴 史 は 不 明 な 部 分 の 方 が 多 く , 5世 紀 以 前 の こ と は全 く分 か ら な い 。 史 学 的 に 存 在 を 実 証 し得 る ネ パ ー ル 最 古 の 王 朝 は リ ッチ ャ ヴ ィ (Lichh亀vi) 王 朝 で あ る
が , こ の 王 朝 の 支 配 層 と て , ネ ワ ー ル 族 な の か , イ ン ド北 部 か ら の 征 服 者 な の か さ え , 定 説 が な い 2)。 そ の 後 数 世 紀 の 歴 史 的 ブ ラ ン ク3)を 経 て , 13世 紀 初 め , ア バ ヤ ・マ ラ 王 が カ トマ ン ド ゥ盆 地 を 平 定 して マ ラ (M alla)王 朝 が 成 立 ,14M 5世 紀 に は 仏 教 ・ ヒ ン ド ゥ ー 教 双 方 の 宗 教 文 化 が 最 隆 盛 期 を 迎 え た 。 マ ラ 王 朝 の 出 自 は , 伝 承 で は イ ン ド の タ ク ー ル で あ る と さ れ て い る が , マ ラ王 朝 最 盛 期 の 文 化 の 担 い 手 が ネ ワ ー ル 族 で あ
1) K .P. M alla教 授 の 御 教 示 に よ る 。 1961年 の セ ンサ ス で は 総 人 口 38万 7千 ; 又 , Bista [1976:
17]で は 40万 と な って い る 。 ・ ・ .
2) Ch, von Furer−H aim endorf[1956:15−38] は ,.ネ ワ ー ル は 5世 紀 以 前 か ら の 先 住 者 で あ る と い う 。 Regm i[1969] は , キ ラ ン テ ィ と リ ッ チ ャ ヴ ィ 双 方 の 祖 先 と して ネ ワ ー ル を 考 え て い る 。
3) チ ベ ッ ト側 の 若 干 め 史 料 は 無 い 訳 で は な い 。 例 え ば , 7世 紀 に は チ ベ ッ ト王 ソ ン ツ ェ ン ・ガ ン ポ に ネ パ ー ル 王 妃 (の 化 身 )が 降 嫁 し た 。 『赤 冊 史 』 は 「(ソ ン ツ ェ ン ・ガ ン ポ は ) ネ パ ー ル か ら ア ン シ ュ ル ヴ ァル マ ン王 の 娘 ブ リ ク テ ィ ー の 化 身 , ネ パ ー ル 女 テ ィ ツ ゥ ンを 姿 り」 と 記 し て い る 。 彼 女 の 入 蔵 時 期 は 634年 で あ る 。 こ の 間 の 事 情 に つ い て は , [山 口 1978]を 参 照 。 812
長野 ネ ワール語の能 格現 象
っ た こ と は 実 証 さ れ て お り, 現 存 す る ネ ワ ー ル 文 献 の 古 い 層 は こ の 時 期 の 仏 教 文 献 で あ る。
16世 紀 , マ ラ王 朝 は カ トマ ン ド ゥ (カ ン テ ィ プ ー ル ), パ タ ン (ラ リ トプ ー ル ), バ ドガ オ ン (バ ク タ プ ー ル ) に 分 裂 し, 次 第 に 衰 退 に 向 か う。 1768年 ゴ ル カ 4)王 プ リ ト ヴ ィ ・ナ ラ ヤ ン ・ シ ャ ー は マ ラ系 3王 国 を 倒 し, 印 欧 系 の 言 語 を 話 す 支 配 層 に よ る ゴ ル カ 王 朝 が 成 立 して , 現 在 に 至 っ て い る 。
ネ ワ ー ル の 歴 史 は , い わ ば イ ン ド文 化 (時 と して チ ベ ッ ト文 化 ) と の 接 触 の 歴 史 で あ り , そ れ は 4世 紀 に は 始 ま っ て い た と 考 え られ て い る 。 高 度 に 分 化 し た 職 能 カ ー ス ト (c£ [BIsTA l 976:18−19;石 井 1980:133−190]) や 15世 紀 以 降 の ネ ワ ー ル 古 典 語 に 接 す る と き , 我 々 は ネ ワ ー ル の 特 に Sanskritization が 緩 や か に , しか し, 極 め て 深 く浸 透 し て い る事 を 実 感 す る の で あ る 。
0.1 こ の よ う な 状 況 の た め , 言 語 の 面 で も分 か ら な い 面 が 多 い 。
普 通 TB 祖 語 は , チ ベ ッ ト語 群 , ロ ロ ・ビ ル マ 語 群 , チ ン 語 群 , ボ ド ・ナ ガ 語 群 , カ レ ン語 群 , に 分 類 さ れ , こ の 他 に 諸 語 群 の 特 徴 を 併 せ 持 つ ,所 謂 「媒 介 言 語 」5)が 幾 つ か あ る 。 ネ ワ ー ル 語 を は じめ とす る ネ パ ー ル 内 の T B 諸 語 は , こ の ど こ に も帰 属 が 決 定 さ れ て い な い 。 今 の と こ ろ , 全 く地 理 的 に TB s in N epalと して ま と め ら れ て
い る に 過 ぎ な い 。
語 彙 の 音 形 式 の 比 較 か ら, グ ル ン , タ カ リー , マ ナ ン, タ マ ンの 4言 語 は 1グ ル ー プ を な し, 共 通 祖 語 を 設 定 し得 る段 階 に 達 して い る 6》が , そ の 他 の 言 語 群 に つ い て は 記 述 資 料 が 揃 わ な い こ と も あ っ て , 研 究 が 遅 れ て い る 。 小 文 で 扱 う ネ ワ ー ル 語 も 長 い 文 献 7)の 歴 史 を 有 す る に も 拘 らず , 言 語 史 に せ よ , 他 言 語 と の 比 較 に せ よ , 本 格 的 な 研 究 は 緒 に つ い た ば か り と 言 わ ざ る を 得 な い 。 筆 者 は 語 彙 レ ベ ル で は , ネ ワ ー ル 語 , 4) マ ラ王 朝後 期 に は西 ネパ ー ル とカ トマ ン ドゥ盆 地 の 間 に各 々22侯 国 と24土 侯 国 が あ り, 統 一 の権 力 は無 か った 。 漸 次 カ トマ ン ドゥに最 も近 い侯 国 ゴ ル カ がチ ョウ ビシ, ジ ュム ラ,バ イ シ,
ガ ル ワー ル 等を 抑 え , 遂 に マ ラ王 朝 を も倒 す に至 った 。 そ の後 東 西 に 勢 力 を拡 張 し, 3代 目の 王 , ラナ ・バハ ドゥー ル ・シ ャーの 時代 に は, ネパ ー ル の実 効 支 配 は ガ ル ワ ール (現 在 イ ン ド,
ウ ッタル プ ラデ シ ュ州 東部 ) か ら シ ッキ ム にま で 及 ん で い た。 現 在 の 国境 が確 定 す る の は, 英 国 との 所 謂 ゴ ル カ戦 争 (1814 16)後 で あ る 。
5) 西 田 [1978]の 術語 法 に よ る。 媒 介 言 語 は TB 諸語 群 の特 徴 を 併 せ持 ち, 各語 群 や語 系 を 歴 史 的 に継 ぐ橋 渡 し役 を 演 ず る 。全 語 群 を継 ぐもの と して はギ ャ ロ ン (嘉 戎 ) 語 (中 国 四川 省 西 北 部 :c£ [NAGANo l984])や カ チ ン (=チ ンポ ー 景 頗 ) 語 (ビル マ北 部 及 び 中 国雲 南 省 南 部 ) が あ り,又 , チ ン語 群 と ボ ド ・ナ ガ語 群 を 継 ぐ ミキ ル語 があ る。
6) タ マ ン等 の共 通 祖 語 再 構 を 含 む言 語 学 的 研究 につ いて は [西 1977]が最 良 で あ る 。 7) ネ ワ ール 古典 語 文 献 が 従来 ほ とん ど刊 本 に な って い な い ことが , この言 語 の 研 究 が進 ま な か
った原 因 の ひ とつで あ るが , 西 独 の Nepal Research Programme に よ り古 典 文 献 の刊 行 が 開 始 さ れ よ う と して い る , と き く。
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国立民族学博物館研究報告 t11巻4号 ラィ語 8), リンブ語 9)は系 統 的 に互 に近 い と考 え て お り, 更 に ボ ド ・ナガ 語 群 と共 通 す る形 式 も散 見 され る こ とか ら, ヒマ ラヤ南 麓 沿 いの 東 か ら西 へ の民 族 移 動 の 可 能 性 を 仮 に考 えて は ど うか と思 って い る が ,音 韻 対 応 は余 り に散発 的 で あ って , 到 底 仮 説 を立 て 得 る段 階 で はな い。
又 ,形 態 手 続 の面 で は, 非 生 産 的 で は あ る が人 称 接 辞 (又 はそ の痕 跡 ) を留 めて い た り,動 詞 の動 作 方 向 , 様 態 , アス ペ ク トを示 す 接 辞 が 数 多 く機 能 して い る等 々, ネ ワー ル語 に は TB 祖 語 の再 構 に貢 献 す る要 素 が少 な くな い10)。 Jorgensen [1941] は 文 語 につ いて これ らに関 す る報 告 を発 表 して い るが ,体 系 的 で は な い。 この よ う にネ ワー ル語 は TB 研 究 に お い て も っと注 目を 集 め て 当然 な の で あ るが , 今 の と ころ研 究 状 況 は余 り明 る くな い。
この よ うな状 況 を改 善 す るた め , ネ ワ ー ル語 に関 す る記述 資 料 を積 み 上 げ て ゆ くこ とが急 務 で あ り,現 に ご く近 年 幾 つか の 論 考 が 発 表 さ れ る よ うに な った 11)。 小 稿 は格 助 辞 と動 詞 の関 係 を 明 らか にす る一 助 と して , ネ ワ ール 現代 ロ語 カ トマ ン ドゥ方 言 に お け る能 格 現 象 を記 述 す る。 次 章 で述 べ る通 り, 能 格 性 の 意 味 づ け や定 義 その もの が 未 だ安 定 して い な いか ら, この 記 述 に も若 干 の 問題 点 を 残 す で あ ろ う こ とは予 測 され な い で は な い が , チ ェ ック リス トと して の機 能 は果 た し得 る と思 う。
0.2 前 節 に触 れ た 通 り, 16世 紀 後 半 マ ラ 王 朝 は 3 王 国 に 分 裂 す る 。 現 代 ネ ワ ー ル 語 方 言 は こ の 3王 国 の 拠 点 即 ち カ トマ ン ド ゥ, パ タ ン , バ ドガ オ ン の そ れ で あ る。 この 内 , バ ドガ オ ン 方 言 が 文 語 の 特 徴 を よ り 多 く残 し て い る と い う意 味 で 保 守 的 で あ り , カ トマ ン ド ゥ方 言 が 最 も 改 新 的 で あ る。
小 稿 で 記 述 す る の は カ トマ ン ド ゥ方 言 で あ り , イ ン フ ォ ー マ ン トは ト リ ブバ ン大 学 教 授 K am al P・M alla 氏 で あ る 。 同 教 授 は 同 方 言 を 母 語 と し,ネ ワ ー ル 文 法 [M ALLA 1985] の 著 者 で もあ る 。 調 査 は 1984年 7〜 8月 , 文 部 省 科 研 現 地 調 査 「ネ パ ー ル に お け る 国 民 形 成 過 程 の 人 類 学 的 言 語 学 的 調 査 」 (代 表 者 :北 村 甫 氏 ) の 一 環 と して , カ トマ ン ド ゥ市 で 行 な っ た 。
こ の 現 地 調 査 報 告 は [N AGANo l986] と して 既 に 英 文 で 発 表 し, 西 田 龍 雄 教 授 8) ネパ ール 東部 キ ラ ン ト地 区 , ドゥー ド ・コ シと アル ン川 の本 支 流 の谷 間 に 分 布 し,約 25万 の 話 し手 がい る。
9) リンブ (Limbu)語 は ネパ ー ル東 部 キ ラ ン ト地 区 , タ ムー ル川 流 域 に分 布 し, 人 口 は約 14 万 。 ラ イ語 とは 系統 関 係 が あ り,双 方 で キ ラ ンテ ィ語 と総称 され る こ とがあ る。 [W EIDERT&
SUBBA 1985]が最 も信 頼 で きる資 料 で あ る 。
10) [CoNRADY 1891] は この こ とを 最初 に指 摘 した 労作 で あ るが , 語 彙 の 比較 対象 は主 と して チ ベ ッ ト語 及 び 西 ネパ ール 諸語 であ り, 又 ,形 態 手 続 の比 較 は行 な ってい な い 。
11) [GiV6N 1983]は理 論 的 に は好 論文 で あ る が , イ ンフ ォー マ ン トの質 に若 干 問 題 が あ る。
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長野 ネ ワール語の能 格現 象
(京 大 ) の 主 宰 す る 研 究 会 で も 口 頭 発 表 した 。 そ れ ら に 対 して 寄 せ られ た コ メ ン トを 参 考 に 改 訂 を 施 した の が 小 文 で あ る 。 又 , マ ラ教 授 と の 調 査 後 , カ トマ ン ド ゥ方 言 の 別 の 話 し手 で , 且 つ , バ ドガ オ ン方 言 を も よ くす る Iswaranand Shresthacarya 氏
(西 独 N epal Research Pr()ject 研 究 員 ) と も 同 様 の 調 査 を 行 な った が , 興 味 深 い 相 異 点 も多 い の で , 註 の 形 で 資 料 を 挙 げ て お く こ と と した 12)。
0.3 略 号 表
A agt.
AUX :E AUX: S bnf.
CAUS CLA COP DAT DEM ERG FUT goa.
INF IPF LOC N NEG NP NMR P PRO PTB ptt.
agent (動 作 者 ) agent (動 作 者 )
auxiliary verb of exis tence (存 在 の 助 動 詞 ) auxiliary verb of statem ent (叙 述 の 助 動 詞 ) beneficiary (受 益 者 )
causative (使 役 ) classifier (類 別 辞 ) copula (繋 辞 ) dative (与 格 )
dem uniative (縮 小 辞 ) ergative (能 格 ) future (未 来 ) goal (ゴ ー ノレ)
infinitive (不 定 法 ) Im perfective (未 完 了 ) locative (於 格 ) noun (名 詞 ) negative (否 定 )
noun phrase (名 詞 旬 )
nom inalizer (名 詞 化 の マ ー ク ) patient (被 動 作 者 )
progressive (進 行 )
proto−T ibeto−Burm an (チ ベ ッ ト ・ ビ ル マ 共 通 祖 語 ) patient (被 動 作 者 )
12) シ ュ レス タ チ ャ リヤ 氏 の 発 話 表 記 は マ ラ 氏 の そ れ に standardize して あ る 。
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国立民族学博物館研究報告 11巻 4号
QUO S TB V VP
quotative (引 用 辞 ) subject (主 語 )
T ibeto−B urm an (チ ベ ッ ト ・ ビ ル マ ) verb (動 詞 )
verb phrase (動 詞 句 )
1. 能 格 現 象 の捉 え方 を め ぐる諸 問題
能格 性 は近 年 の言 語 の類 型 研 究 で 注 目を 集 め る よ う にな った格 関 係 に関 す る タ イプ の ひ とつ で , 大 雑 把 に 言 え ば , 自動 詞文 の主 語 (S と略 す) と他 動 詞 文 の 被 動作 者
(P と略 す) が格 の上 で 同 じ扱 炉 を うけ , 他 動 詞文 の動 作 者 (A と略 す ) が別 の 扱 い を う け る仕組 み の総 称 で あ る。 チ ベ ッ ト語 は この 特 徴 を持 って お り13》,例 え ば ,
lcags-O gser-du 'gyur.
iron-0 gold-LOC change (VI)
鉄 が 金 に変 わ る。
slab-dpon-gyis lcags-0 gser-du bsgyur.
guru-ERG iron-0 gold-LOC change (PFT: VT)
阿 閣 梨 が鉄 を金 に変 え た。 [山 口 1974 =52−53]
の よ う に , 自 動 詞 文 の 「が NP」 (S) と他 動 詞 文 の 「を N P」 (P) で あ る 「鉄 」 は 形 態 的 に ゼ ロ マ ー ク (無 標 ) で あ る の に対 し , 他 動 詞 文 の 「が N P」 (A ) で あ る 「阿 閣 梨 」 は 一gyisに よ っ て マ ー ク さ れ て (有 標 ) い る。
こ れ に 対 し , 上 の 例 文 の 日 本 語 を 見 る と , 自 動 詞 文 の S−N P も 他 動 詞 文 の A−NP も共 に 「が 」 で 格 標 示 さ れ て お り , 一 方 , 他 動 詞 文 の P−N P は 「を 」 に よ っ て マ ー ク さ れ て い る。 従 っ て , こ の よ う な 構 文 に 関 す る 限 り , 日本 語 は能 格 言 語 で は な い 。 尚 , こ の よ う に P−N P が 特 に 有 標 と な る 言 語 を 「対 格 型 」 と し て 能 格 型 と対 比 さ せ る 考 え 方 が あ る が , 後 に述 べ る通 り , 「能 格 」 と 「対 格 」 は 必 ず し も 同 一 レ ベ ル で 論
じ られ な い 面 が あ る点 は 留 意 して お く必 要 が あ る。
1.1 能 格 性 は確 か に言 語 の 一 類 型 と して 興 味 深 い現 象 で あ るが , これ の捉 え方 に は
13) 詳 細 は 拙 稿 [1985a]参 照 。 816
長野 ネワール語の能格現 象
様 々の 立 場 が あ り,種 々 の解 釈 が示 され て い る。 小 稿 で 扱 う能 格 性 を 明 確 にす るた め に も, ここで 能格 の 捉 え 方 を め ぐ る 諸 々の 悶 題 点 を 書 き出 して お くこ と に しよ う。
尚 , 以 下 の 議 論 の詳 細 に つ いて は, [松 本 1986] 及 び [柴 谷 1986] を参 照 され た
い 。
1.2 本 章 の 初 め に 能 格 に つ い て の 大 雑 把 な 捉 え 方 を 示 し た 。 格 の あ り方 に つ い て , S=A ≠ P と な る の が 対 格 型 , S=P≠A と な る の が 能 格 型 , と い う 訳 で あ る。 これ が 伝 統 的 解 釈 で あ り, 広 く受 け 入 れ られ て い る も の で あ る が , 実 は こ の 定 義 そ の も の に 大
き な 矛 盾 が 潜 ん で い る 。
A (動 作 者 ) と か P (被 動 作 者 ) と か 言 う概 念 は そ も そ も 意 味 論 的 レ ベ ル の も の で あ る が , 自 動 詞 文 の 「主 語 」 (S) と い う の は 統 語 上 の 問 題 で あ っ て , 意 味 的 に は A の 場 合 も あ れ ば , P の 場 合 も あ り, E (経 験 者 格 ) の 場 合 も あ る 。 S を 構 成 す る 「主 格 」
(nom inative) は 「対 格 」 と ペ ア に な り う る 概 念 で あ る が , A や P と は 異 な る 次 元 に 属 す る 。従 っ て , こ の 定 義 は 意 味 機 能 と 文 法 (統 語 ) 関 係 が 混 在 した 所 産 と 言 わ ね ば な らな い 。 現 に S に 能 格 マ ー ク の 付 く言 語 が あ り, こ れ を active language (動 格 型 言 語 ) と言 う が , そ こ で ぽ 自 動 詞 /他 動 詞 の 区 別 よ り も ,動 作 性 の 有 無 の 区 別 に 重 点 が 置 か れ て い る の で あ り, そ う い っ た 言 語 に は 古 典 的 定 義 は 当 て は め ら れ な い の で あ る 14)。 た だ , nom ina1な 格 表 示 に 限 って 言 え ば , 類 型 と し て , S=A ≠ P 及 び S=P≠ A と
い う一 見 対 照 的 な グ ル ー プ 分 け が で き る こ と が 多 い こ と は 事 実 で あ る の で , S・A ・P と い う 区 分 が 極 め て 便 宜 的 な も の で あ る 点 に 留 意 した 上 で , 小 稿 で は タ ー ム と して は こ の 定 義 に 沿 う て お く。
1。3 能 格 は 基 本 的 に 名 詞 句 の 格 標 示 と い う形 で 現 れ る も の で あ る が , こ れ 以 外 に 動 詞 句 内 で の 人 称 標 示 所 謂 agreem ent(呼 応 ) と して 現 れ る こ と が あ る 。N P の み の 標 示 , V P 内 の み の 標 示 , 双 方 で の 標 示 , の 三 通 り あ り得 る が , TB 諸 語 に は そ の す べ て が あ る。 チ ベ ッ ト語 (c£ 長 野 [1985])や 小 稿 で 扱 う ネ ワ ー ル 語 は N P の 格 標 示 の み , リ ン ブ 語 は V P の み , ギ ャ ロ ン語 (c£ 長 野 [1985b]) は 双 方 で 南 る・
統 語 レ ベ ル に お け る能 格 性 に は言 語 に よ って 様 々 の 現 れ 方 が あ り得 る。 例 え ば , 再 帰 化 , 関 係 節 化 , 名 詞 句 削 除 法 , 等 を 支 配 す る syntactic pivotが , S=P で あ れ ば 能 格 性 を 有 す る こ と に な る。
更 に談 話 (discourse)の レ ベ ル に な る と , 談 話 の 基 幹 を 成 す ト ピ ッ ク の 選 択 の 仕 方
14) c£ [M ERLAN 1985}。
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国立民族学博物館研究報告 11巻 4号 が , A よ り も P の 方 に 重 点 が 置 か れ る な ら , 能 格 的 性 格 を 持 つ , と言 え な い で は な い 。 例 え ば , ギ ャ ロ ン語 の 場 合 , 形 態 レ ベ ル で の 一 致 又 は 呼 応 (agreem ent) が 被 動 作 者 の ト ピ ッ ク 化 と 解 釈 さ れ 得 る 面 が 確 か に あ る [長 野 1985b:593−594]。 し か し な が ら, ト ピ ッ ク そ の も の の 定 義 に , ま だ 相 当 の 「ゆ れ 」 が あ り , 又 , 能 格 性 と トピ ッ ク性 は 必 ず し も 平 行 しな い と の 主 張 も示 さ れ て い る 15》 こ と か ら , 筆 者 と して は こ の 談 話 レ ベ ル で の 議 論 に は 立 ち入 ら な い こ と に す る 。
小 稿 に お け る能 格 性 の 扱 い は , あ くま で も形 態 論 の レ ベ ル で あ る こ と を お 断 わ り し て お く。
1.4 上 記 の 三 つ の レベ ル の 何 れ に お い て も, 能 格 性 が原 理 と して 貫 徹 され て い る言 語 は極 め て少 な い。 必 ず と言 って よい程 ど こか に 「漏 れ 」 が あ る。 で は そ の 「漏 れ 」
は何 か ?
従 前 そ れ は対 格 的 要 素 と され , 能格 の 分裂 (split)は, 能 格 性 と対格 性 の併 存 な い し混在 と して 規 定 され て きた よ うに 思 わ れ る。 しか し, 少 な くと も格 標 示 の場 合 , TB 諸 語 にお け る splitは対 格 性 を 併 存 す る形 で具 現 して い るの で はな い16)。 む しろ 動 詞 の 意味 或 い は他 動 詞 性 と直 接 結 び付 い た分 裂 で あ り,対 格 性 を考 慮 外 に置 いて 充 分 成 立 す る性 格 の もの で あ る。
そ もそ も,能 格 性 とい う もの は語 彙 の 意味 機 能 の問 題 で あ り,一 方 ,対 格 性 は談 話 を ベ ー ス に した それ で あ って ,両 者 を 同一 レベル で 比 接 す る こ と自体 に無 理 が あ る と 筆者 は考 え て い る。
2. ネ ワール 語 にお け る能 格現 象 の事 例
前者 で述 べ た能 格 性 の 捉 え 方 を 念 頭 に 置 き, ネ ワ ール 語 が 能格 言 語 で あ るの か 否 か , 又 , ど の程 度 能 格 性 が 貫 か れ て い るの か , につ いて の 記述 を本 章 に示 す 。
ネ ワー ル語 が能 格 性 を有 す るか 否 か の 見通 しを得 るた あ , 次 の 3文 を比 較 しよ う。
(1) jigu kusä tan-a17).
I-of umbrella lose-PFT
私 の か さ が無 い。
15) 例 え ば [角 田 1986】。
16) [BAuMAN 1975]で は, TB 諸語 を 能 格 性 につ いて 3つ に分 類 し, 能 格 型 , 能 格 と対格 の mixed type, 対格 型 を 区 別 して い るが ,歴 史 的 にみ て ゆ くと, 彼 が対 格 マー クと して い るの は 別 の来 源 を 持 って いて , 本来 的な 対 格 標 識 と は見 徹 し難 い。
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長 野 ネワール語の能格現 象
(2) ji: kusa tan-k-a :18).
I-ERG umbrella lose-CAUS-PFT
私 は か さ を 失 く した 。
(3) ji wo-yä.
I come-PFT
私 は 来 た 。
自 動 詞 文 の 「が 名 詞 句 」 (S−N P) は ゼ ロ マ ー ク で あ る の に 対 し, 他 動 詞 文 (2)で は 動 作 者 「私 」 jiが ji:と な り , 末 母 音 の 長 音 化 及 び 鼻 音 化 が 起 こ り , 且 つ , 被 動 作 者
は無 標 で あ る。 従 って , 一 応 ネ ワ ー ル 語 は 能 格 性 を 持 ち , 能 格 は 長 母 音 化 + 鼻 音 化 と い う 形 態 手 続 に よ っ て 具 現 さ れ る と 仮 設 さ れ る 。
しか し , 次 の 2文 で は , ptt. は 絶 対 格 で 現 れ て い な い 。
(4) ji: shrestha-yata da-yä.
I-ERG Shrestha-DAT hit-PFT
私 は シ ュ レ ス タ を 殴 っ た 。
(5) in shrestha(-yata) khan-a'9).
I-ERG Shrestha (-DAT) see-PFT
私 は シ ュ レ ス タ を 見 た 。
文 (5)で は 一yata はオ プ シ ョ ンで あ るが , (4)で は義 務 的 で あ る。 「殴 る」 は高 い 他 動 詞 性 を持 つ の だ か ら, 能 格 一絶 対格 の組 み合 わせ に な って 当 然 で あ るが , ネ ワー ル 伝 統 文 法 で い う与 格 助 辞 を要 求 す る。
以 上 5例 か ら, ネ ワー ル語 は能 格 性 を示 す け れ ど も, 他 動 詞 文 す べ て が 一 貫 した 能 格 構 文 を と るの で は な く,何 らかの 要 因 に よ って 所謂 splitを趨 こす と結 論 で きる。
で は, その 要 因 は何 か ? ネ ワ ー ル現 代 口語 で は人 称 接辞 が生 産 的 に機 能 して お ら
17) ネ ワ ー ル 語 表 記 は [M ALLA l985:3−18] に よ る 。 例 文 は , 1行 目 が ネ ワ ー ル 語 , 2行 目 が 各 形 態 の 意 味 (英 語 と 略 号 ), 3行 目 が 邦 訳 , で あ る 。
Shresthacarya 氏 の 発 話 (以 下 IS と 略 す ) で は , ji(−gu) kusa twaa−phi−ta.
1 (−of) um brella break−control−PFT
の 方 が 自 然 だ と の こ と で あ る 。 twaa−phiは 複 合 動 詞 で 「置 き忘 れ る 」 の 意 。 全 体 と して 「ど こ か に 忘 れ て き て , 今 か さ が 無 い 」 と い う こ と で あ ろ う 。
18) CAU S−k一 が あ る の で , 失 くす 行 為 は 意 図 的 で あ る 。 19) IS で は agt・は 絶 対 格 , 与 格 助 辞 一yata は 義 務 的 で あ る 。
819
国立民族学博物 館研究報 告 11巻 4号 ず ,又 ,そ の 呼 応 も観 察 さ れ な い の で ,最 も 蓋 然 性 の 高 い 能 格 分 裂 の 要 因 と して ,動 詞 の 「意 味 」が 考 え られ る 。そ こで 筆 者 は 動 詞 を 意 味 に よ っ て 次 の よ う に 分 類 し ,各 グ ル ー プ 毎 に 例 を チ ェ ッ ク す る こ と と し た い 。 こ の 分 類 は チ ェ ィ フ [1974] 及 び Tsunoda
[1982:4AB] を 参 考 に , 筆 者 が 行 な っ た 。
a) action
al) action +process, a2) action ±process, a3) action
(例 え ば 「殺 す 」)
(例 え ば 「食 べ る」)
1(上 記 以 外 の 動作 で ,ptt.の 動作 が こち ら側 に も働 きか け て く る よ うな 関係 を含 む もの :例 え ば 「待 つ」 「探 す」)
b) knowledge, c) sense, d) emotion, e) possession, f) potentiality.
2.1 先 ず al) の 例 と して 次 の 8文 を 掲 げ る。
(6) jI: cha-mha dha: syä-nA20).
I-ERG 1-CLA tiger-0 kill-PFT
私 は虎 を 殺 した 。
(7) wo manukha: si: pal-a/dhyan-a.
that man-ERG wood-0 cut-PFT
そ の 男 は 木 を 切 っ 存 。
(7a) wo manukha: si : pal-i.
that man-ERG wood-0 cut-IPF
そ の 男 は 木 を 切 る (だ ろ う)。
(7b) wo manukha: Si: pal-a con-a.
that man-ERG wood-0 cut-INF stay-IPF
そ の 男 は 木 を 切 っ て い る。
20) ネ ワー ル語 で は NP と類 別辞 付 き NP の前 後関 係 は何 れ で もよい 。 820
長野 ネワール語 の能格現象
(8) wa : kathi beko-yd-k-a-la.
he-ERG stick-0 bend-CAUS-PFT
彼 は棒 を 曲 げた 。
(9) shresthä: kap tachya-ta21).
Shrestha- ERG cup-0 break-PFT
シ ュ レ ス タ は コ ッ プ を 割 っ た o
(9a) ji: derna tachya-na.
I-ERG plate-0 break-PFT
私 は 皿 を 割 った (意 図 的 )。
(9b) ji: dema tachya-ye lata.
I-ERG plate-0 break-INF (unintentionally)
私 は 皿 を 割 って し ま っ た 。
他 動 詞 文 の 動 作 者 は 能 格 , 被 動 作 者 は絶 対 格 (ゼ ロ ) で 現 れ , こ の 格 関 係 は 一 貫 し て い る 。
近 年 米 国 で 所 謂 volitionality (意 欲 性 ) が 能 格 の 出 現 を 支 配 す る と の 主 張 が 強 い
(例 え ば , [Giv6n l983])け れ ど も, 意 欲 性 = 他 動 詞 性 と 解 す る な ら と も か く, 狭 義 の 意 欲 性 が TB 諸 語 の 能 格 性 を 左 右 す る こ と は な い 。 例 文 (9a) (9b) は そ の こ と を 明 確 に し て い る。
又 , 能 格 の 分 裂 が 動 詞 の 時 制 , ア ス ペ ク ト, ム ー ドに よ っ て 支 配 さ れ る 事 実 は イ ラ ン諸 語 や コ ー カ サ ス 諸 語 に つ い て 早 く か ら 指 摘 さ れ て い た 。 こ の た め , そ の 原 理 が TB諸 語 に も該 当 す る か の よ う な 記 述 が 散 見 さ れ る (例 え ば [D ELANCEy l982])が ,
こ れ も誤 りで あ る 。 例 文 (7) (7a) (7b) を 比 較 す れ ば 自 明 の こ と で あ る。
2.2 動 作 ± 過 程 の グ ル ー プ の 例 と して 次 の も の が あ る。
(10) shresthä: jigu kusa tan-k-a-la.
Shrestha-ERG I-of umbrella-0 lose-CAUS-PFT
シ ュ レ ス タ は 私 の か さ を 失 く し た 。
21) ネ ワ ー ル 語 の 自 動 詞 ・他 動 詞 の 区 別 と して tajya−ye 「こ わ れ る 」 vs. tachyarye 「こ わ す 」 の よ う な 対 立 が あ り , チ ベ ッ ト語 と も平 行 す る 現 象 を 示 す 。
こ れ に 類 す る 例 と し て , 次 の 3例 を 挙 げ て お く 。 gu−ye 「裂 け る 」 : khu−ye 「裂 く」
gwa−ye 「輝 く」 :khwa−ye 「光 ら せ る 」 jwa−ye 「漏 れ る 」 : chwa−ye 「漏 らす 」
821
国立民族学博物 館研 究報告 11巻 4号
(1 1) shrestha : kalamà22) pau co-yä con-a.
Shrestha-ERG pen-INS letter-0 write-INF stay-IPF
シ ュ レ ス タ は ペ ンで 手 紙 を 書 い て い る。
(12) ji-mi-sa:23) ta: -pu mye hal-a.
I-PL-ERG many-CLA song-0 shout-PFT
我 々 は 歌 を 沢 山 唄 っ た 。
(13) ji: kusa to: t-a.
I-ERG umbrella leave-PFT
私 はか さを 捨 て た。
(14) shresthà: cosa cha-pu nyä.-nd con-a.
Shrestha-ERG pen-O one-CLA buy-INF stay-IPF
シ ュ レス タ は ペ ン を 買 って い る 。
(15) wo : the da-nA con-a.
he-ERG house-0 build-INF stay-IPF
彼 は家 を建 て て い る。
(16) ji: bista-yata cha-gu saphu: bi-ye.
I-ERG Bista-DAT one-CLA book-0 give-IPF
私 は ビ ス タ に 本 を 1 冊 与 え た 。
(17) ji: marl na-ya con-a.
I-ERG bread-0 eat-INF stay-IPF
私 は パ ン を 食 べ て い ま す 。
(18) wo mists : ja na-la.
that woman-ERG rice-0 eat-PFT
そ の女 は米 を食 べ た。
22) 「ペ ン」 は kalam a, 鼻 音 化 要 素 Nが 具 格 標 識 で あ る 。 ネ ワ ー ル 語 も チ ベ ッ ト語 と 同 様 , 能 格 マ ー ク は 本 来 具 格 標 識 で あ っ た 。 尚 , Jvの 文 語 形 式 は 一naで あ る 。
23) こ の ERG マ ー ク は 一sa:で あ る 。 例 文 (7)で も , 「男 」 m anu:に 対 し , 「男 」 + ERG は manukha:と な っ て い て ,不 規 則 な 形 を 示 す が ,こ れ は 本 来 サ ン ス ク リ ッ トで あ っ て , m anukha が 古 形 で あ り , 口語 で は m anu:と 変 化 して い る が , 於 格 , 奪 格 , 能 格 の 場 合 の み , 古 形 が 保 た れ て い る 。 こ こ の 一sa:も 同 様 の 事 情 が あ る と 推 測 さ れ る が , イ ン フ ォ ー マ ン トは よ く分 か ら な い と の こ と で あ っ た 。 、 ,
822
長野 ネ ワール語の能 格現 象
(19) wo manukha: jya yä,-ta.
that man-ERG work(N)-0 do-PFT
そ の男 は仕 事 を した。
(20) wo manukhâ: jyä, chu-ta.
that man-ERG work(N)-D start-PFT
そ の男 は仕 事 を始 めた 。
(20a) wo manukha: jya dhun-k-a-la.
that man-ERG work(N)-0 end-CAUS-PFT
そ の 男 は仕 事 を終 えた 。
(21) ji: tho chanta24) jon-a.
I-ERG that-0 you-DAT catch-PFT
私 は お前 のた め に それ を つ か まえ た。
(22) cha: ji-ta: da-la.
you-ERG I-DAT beat-PFT
お 前 は 私 を 殴 っ た 。
(23) WO : ji-ta : läkama cwa-ta.
she-ERG I-DAT shoes-INS beat-PFT
彼 女 は靴 で 私 を打 った。
(24) wo manukha: chanta na-k-a-la.
that - man-ERG you-DAT eat-CAUS-PFT
そ の 男 は お 前 を 養 っ た 。
こ の グ ル ー プ に お い て は , 他 動 詞 文 の 「が 名 詞 句 」 (A−N P)は 常 に ER G マ ー ク が 現 れ , 例 文 (10)〜 (21) で は 他 動 詞 文 の 「を 名 詞 句 」 (0 −N P) は 絶 対 格 を と っ て お り , al) と 同 様 の 格 関 係 が 観 察 さ れ る 。 例 文 (22) か ら (24) で は , 0 −N P に は 伝 統 文 法
で い う与 格 助 辞 が 対 応 して い る 。 比 較 的 他 動 詞 性 の 高 い 「殴 る 」 「打 つ 」 (「蹴 る 」 も 同 様 ) の よ う な 動 詞 に 絶 対 格 が 対 応 して い な い の で あ る 。 こ の デ ー タ か ら見 る 限 り , 24) IS で は chanta の 後 に dhaka=「 ・・… の た め に 」 が 入 る 。
823
国立民族学博物 館研究報告 11巻 4号 上 の 3文 の 0−N P は ptt・と い う よ り は む し ろ ゴ ー ル と , ネ ワ ー ル 語 で は 見 倣 さ れ る
と 解 釈 せ ざ る を 得 な い で あ ろ う。
2.3 a3) の 類 で は , 「探 す 」 と 「待 つ 」 の 例 を 挙 げ て お こ う。
(25) ji: cosa ma-la.
I-ERG pen-0 look for-PFT
私 は ペ ンを 探 し た 。
(26) ji chanta pi-ya con-e.
I-0 you-DAT wait-INF stay-FUT
私 は あ な た を 待 って い ま す 。
(27) ji bista-yata pi-ya con-e.
I-0 Bista-DAT wait-INF stay-FUT
私 は ビ ス タ を 待 と う 。
(28) jI: bistä: jya dhun-k-e-ta pi-ya con-e25).
I-ERG Bista-ERG work(N) end-CAUS-NMR wait-INF stay-FUT
私 は ビス タ が そ の仕 事 を終 え るの を 待 って い ま す。
文 (26) (27) お い て は , ER G−D AT の 組 み 合 わ せ と な り , 「待 つ 」 の 基 本 パ タ ン を な す 。 両 文 に お け る 「私 」 が ji: と な る 場 合 も idiolect と し て は あ り, 充 分 文 法 的 で あ る が , そ の 頻 度 は 低 い 。 文 (28) に お い て , 複 文 に お け る 2つ の agt.が 共 に 能 格 を 要 求 す る の は , 統 語 レ ベ ル で の 能 格 性 を 探 る上 で 興 味 深 い が , 今 の と こ ろ 筆 者 に は 比 較 材 料 が 少 な い の で , こ の こ と に つ い て は コ メ ン トで き な い 。
文 (25) で は agt.は 能 格 を と る 。 「探 す 」 は む しろ a2) グ ル ー プ に 入 れ る 方 が 適 当 か も知 れ な い 。
25) ISで は,
ji: bista−yata jya sidhe−ku−gu pi−ya con−e.
私一ERG ビス ターDAT 仕 事 終 わ る一CAUS−NM R 待 つ 一INF 留 ま る一FUT の方 が 自然 とされ る。 この場 合 だ と, 文 (26)(27)と完 全 な 平 行性 を示 す 。 IS によ れ ば , カ トマ ン ドゥ方 言 口語 で は bista−yataだ が, 本来 bisti :−yata で あ り, バ ドガ オ ン方 言 で は ロ語 で も この形 式 を 保 って い る 。
824
長野 ネワール語の能格現象
2.4 b) 知 識 を 示 す も の の 例 と して , 次 の 7文 を 挙 げ る 。
(29) WO : shrestha mha26)-syu:.
he-ERG Shrestha-0 CLA-know(PFT)
彼 は シ ュ レ ス タ を 知 っ て い た 。
(30) shrestha. : wo bhae thu :27).
Shrestha-ERG that language-0 understand (PFT)
シ ュ レ ス タ は そ の 言 葉 を 理 解 し た 。
(31) ji: woyAgu n'a loman-a.
I-ERG he-of name-0 forget-PFT
私 は彼 の 名 前 を 忘 れ た。
(31a) jita: woydgu na loman-a28).
I-DAT he-of name-0 forget-PFT
私 は彼 の名 を失 念 した 。
(32) ji: woydgu nit luma :29).
I-ERG he-of name-0 remember
私 は彼 の 名 を覚 え て い る。
(32a) jita: woyagu na luma.:.
I-DAT he-of name-0 remember
(同 上 )
(33) jr: woydgu nii. luman-k-d.
I-ERG he-of name-0 remember-CAUS-PFT
私 は彼 の 名前 を思 い 出 した。
26) この 類 別 辞 は animateな もの に対 して 用 い られ る。
27) 語 幹 は thuで あ る 。
28) ISの 発 話 で は (31a)の方 が (31)よ りは るか に 自然 だ と の こ とで あ る 。この 文 は 直 訳す る と,
「彼 の 名 は私 に と って忘 れ られ た状 態 にあ る」 とな る。
又 , この動 詞 は次 の よ うな 興 味 深 い ペ ァを な す : 10man−e 「忘 れ る」
1uman−e 「憶 え て い る」
luman−k−e 「思 い 出す 」
29) IS及 び マ ラ氏 双方 と も, (32)よ り (32a)が 自然 な発 話 と答 えて い る。
825
国立民族学博物 館研究報告 11巻 4号
(29)(30)(33) で は 能 格 一絶 対 格 の セ ッ テ ィ ン グ と な る が , (31)〜 (32a) で は 能 格 / 与 格 一絶 対 格 の 組 み 合 わ せ を 要 求 す る 。 特 に (30)(33)の 様 な 動 作 性 の 相 対 的 に 高 い 動 詞 で は 能 格 構 文 を と り , (31)〜 (32a) と い っ た , よ り状 態 性 の 強 い 動 詞 で は , 能 格 を と れ ば 動 作 , 与 格 を と れ ば 状 態 , と い う風 に 区 別 を つ け 得 る と い う こ と で あ ろ うか
と思 わ れ る。
2. 5 c)感 覚 を表 わす 動 詞 で は次 の 様 な 変異 が観 察 さ れ る。
(34) ji :3°) shrestha(—yata) khan-a.
I-ERG Shrestha(—DAT) see-PFT
私 は シ ュ レ ス タ を 見 た 。
(35) ji : wo-yata khan-i ma-khu.
I-ERG he-DAT see-FUT NEG-COP
私 は彼 に会 いませ ん。
(36) ji : jhanga : ha: -gu to :31).
I-ERG bird cry-NMR hear
私 は鳥 が鳴 くの が 聞 こえ た。
(37) ji: jhanga: ha: -gu nyan-a.
I-ERG bird cry-NMR listen to-PFT
私 は鳥 が鳴 くの を聴 い た。
(38) ji: attar bas to-ya.
I-ERG perfume good smell feel-PFT
私 は香 りを か い だ。
(38a) ji: attar-ya, na-tä-yd.
I-ERG perfume-GEN smell(N)-feel-PFT
(同 上 )
(38b) ji: attar-ya-na td-yd.
(同 上 ) 30) IS で は jiも可 。
31) IS バ ドガ オ ン方 言 で は taya。
826
長 野 ネ ワー ル 語 の 能 格 現 象
す べ て の agt。に ERG 標 識 が 現 れ る が , 0 −N P が 与 格 と 絶 対 格 と に 分 裂 し て い る 。
(36)(37) に は N M R が 対 応 し, (38) (38a)(38b) は 「香 り」 と い う fu11 noun で あ る か ら さ して 問 題 は な い 。 問 題 は (34)(35)で あ る 。 与 格 助 辞 一yata の 出 現 が (34)
で は 任 意 的 , (35) で は 義 務 的 に な っ て い る事 実 , 及 び 例 文 (22) を 考 え 合 わ せ る な ら ば , ネ ワ ー ル 語 に お い て は , ゴ ー ル 性 の 高 い O −N P 程 与 格 マ ー ク を と り 易 く , 絶 対 格 に な り に く い , と解 釈 す る の が 妥 当 で あ ろ う。
2,6 d)感 情 を 表 わ す もの で は , そ の 動 詞 語 幹 に よ り , 格 の 要 求 の 仕 方 に 相 当 の 幅 が あ る。
(39) bistä: ji-ta: nhäpa ma-hi:.
Bista-ERG I-DAT formerly NEG-tolerate
ビ ス タ は か つ て 私 を 嫌 っ て い た 。
(40) ji-ta : sharmä ya :32).
I-DAT Sharma-0 like
私 は シ ャ ル マ が 好 き だ 。
(41) ji-ta: cosa mal-a.
I-DAT pen-0 need-IPF
私 は ペ ンが 要 る。
(42) wo misa: sukhi jui-gu so-la33).
that woman-0 happy become-NMR pretend-PFT
そ の 女 は 幸 福 に な る こ と を 望 ん で い た 。 (im itate)
(43) wo manukhâ : ja na-ye-ta34) so-la.
that man-ERG rice-0 eat-INF-NMR want-PFT
そ の 男 は 米 を 食 べ た が っ た 。
32) 「好 き 」 に 対 して 「愛 す る 」 と い う 動 作 性 の 強 い 語 幹 を 使 え ば , ji:sharm a−yata yae−k−a.
の よ う に , ER G.DAT の 格 関 係 が 具 現 す る 。 ya:を 他 動 詞 と す る こ と 自 体 に 問 題 が あ る の か も知 れ な い 。
33) sukhiは 本 来 サ ン ス ク リ ッ トで , 「ハ ッ ピ ー に な り た か っ た 」 と で も訳 す べ き で あ ろ う か 。 ネ ワ ー ル 語 プ ロパ ー で は 「幸 福 に な る 」 と い う表 現 は 無 い 。 「幸 福 で あ る こ と を 望 ん だ 」 で あ れ ば , WO m isa: laeta−e−ta SW ()−ta・又 は ,
wO m isa:laeta−e−gU swO−ta・
の 何 れ か に な る 。 第 1文 の 一ta は 与 格 , 第 2文 の 一gu は N M R で あ る 。 34) IS で は 一taで は な く, −gu が 出 る 。
827
国立民族学博物館研究報告 11巻 4号
(44) wo manukhä: dugu-ca na-i dhaka35) wo mists gyä.-ta.
that man-ERG goat-DEM eat-FUT QUO that woman fear-PFT
そ の女 は ,男 が 山羊 を食 べ るの で はな い か と恐 れ た。
こ の グ ル ー プ の 基 本 は 文 (40) (41) に 見 ら れ る D AT−ABS の 組 み 合 わ せ で , 所 謂 dative suhlect構 文 と思 わ れ る 。 (39)は 「嫌 う」と い う や や 行 為 性 の 強 い 動 詞 の 意 味 の 故 に , c) 感 覚 の 類 に 入 れ て お く方 が 妥 当 か も知 れ な い 。 (42)〜 (44) は ABS−−N M R ! Q U O の 組 み 合 わ せ で あ り , 主 語 の 位 置 に 立 つ も の は agt.と い う よ り は む し ろ 経 験 者 で あ る か ら , 能 格 性 の 議 論 に な じま な い 可 能 性 が あ る 。 但 し, 従 文 中 の 動 作 者 (文
(44) の 「男 」) は ERG , ptt.の 「米 」 は ABS で 現 れ , 能 格 性 を 保 っ て い る36)。
2・7 e) 所 有 で は (45) の よ う な 所 謂 genitive subject構 文 が 専 ら用 い ら れ る。
(45) wo manu: -ya ni-mha maca du.
that man-of 2-CLA child AUX: E
そ の 男 に は子 供 が 2人 あ る。
(46) tho keba ji-gu kha:.
that garden I-of AUX: E
そ の 庭 は 私 の で す 。
(46) は (46a) ji−gu tho keba du・ 「私 に は 庭 が あ る 」 と も で き る が 不 自 然 な 発 話 で あ る 。 (46) そ の も の は 能 格 性 の 議 論 に は な じ ま な い 。
2.8 f) 潜 在 性 ・能 力 を 示 す 表 現 と して 次 の 4文 を 掲 げ る 。
(47) wo manu: na-ye phu-mha ju-1a37).
that man-0 eat-INF can-CLA become-PFT
そ の 男 は 食 べ ら れ る よ う に な った 。
(48) wo manukhd: na-ye phu.
that man-ERG eat-INF can
そ の 男 は 食 べ る こ とが で き る 。
35) dhaka は既 に熟 した QuO で あ る が, 本 来 dha−ye 「言 う」 に来 源を 持 つ 。 36) 従文 にお け る splitに つ いて は,未 だ 調査 が 不充 分 で , 明 らか で な い。
37) この文 に 目的 語一 例 え ば 米一 を 挿 入 して も格 表 示 は変 わ らな い 。 828
長野 ネワール語の能格現象
(49) wo manu: den-e phu.
that man-0 sleep-INF can
そ の 男 は 眠 る こ と が で き る 。
(50) wo manu: den-e phu-ta.
that man-0 sleep-INF can-PFT
そ の 男 は 眠 る こ と が で き た 。
(48) と (49)(50)を 比 較 す れ ば 最 も 明 確 で あ る が , 他 動 詞 で あ れ ば ER G−IN F+
A U X , 自 動 詞 な ら ABS−IN F+ AU X の 形 式 を と る 。 (47> の 場 合 は A U X の 後 に
「… … に な っ た 」 が あ る た め , agt. は そ ち ら に 呼 応 して お り , 「食 べ る」 に は 対 応 し て い な い 。
2. 9 これ ら の デ r タ を も と に , al) か ら f) ま で の 格 助 辞 の 生 起 の 仕 方 を ま と め て み る と次 表 が 導 か れ る 。
group al a2
a3
b
c
d e f
subject position ERG ERG ERG
ERG ABS ERG DAT ERG ERG DAT GEN ERG
object position ABS ABS DAT (goa.
(bnf.
ABS DAT ABS ABS ABS DAT ABS ABS
打 つ , 与 え る , 蹴 る ) 養 う)
(待 つ )
(忘 れ る , 憶 え て い る)
(見 る )
(INF +AUX)
こ こか ら帰 納 さ れ る の は , al)a2) に お い て は 能 格 性 が 貫 か れ る が , a3)b)c) に な る と 能 格 一絶 対 格 の 組 み 合 わ せ 以 外 の も・の が 現 れ , d)e) に お い て は b)c) に も生 829
国立民族学博物 館研 究報 告 11巻 4号 起 す る DA T−A BS (fで は G EN −ABS) の セ ッ トが ド ミナ ン トに な る , と い う こ と で あ ろ う 。 f) で は object position が IN F+ AU X で 占 め られ る か ら, 一 応 能 格 性
の 問 題 の 将 外 に 置 い て お く。
筆 者 の 動 詞 分 類 で は , a) が 最 も動 作 性 が 強 く, f) に 向 か っ て 漸 次 そ れ が 減 ず る の で あ る が , こ の こ と と上 記 の 格 の コ ン ビ ネ ー シ ョ ン と を 較 べ る な らば , al)動 詞 が 他 動 詞 構 文 を 作 り 易 く, 一 換 言 す れ ば , 能 格 構 文 を 貫 き 易 く, 動 作 性 (な い し行 為 性 )
が 薄 く な る に つ れ て 能 格 性 の 一 貫 性 が 少 な くな り , d)e) で は 全 く現 れ な く な る , と 結 論 さ れ る 。 1
こ の よ う に ネ ワ ー ル 語 の 能 格 現 象 は 動 詞 の 意 味 に sensitive で あ り , これ が split を 起 こす 主 要 な 因 子 な の で あ る。
2.10 上 記 が ネ ワ ー ル 語 に お け る 能 格 現 象 の ア ウ ト ラ イ ンだ が , こ れ で 解 釈 の つ か ぬ 事 例 は 幾 つ も あ る 。 中 で も こ れ か らの 検 討 課 題 と して 興 味 深 い 事 例 を 3 つ 挙 げ て お く。
2.10.1 先 ず , 所 謂 同 族 目 的 語 を と る も の の 例 と して 「夢 を み る 」 を 見 て お こ う。 次 の 4文 を 比 較 さ れ た い 。
(51) ji-ta : mhagasae : mhan-a.
I-DAT dream(N)-LOC dream(V)-PFT
私 は 夢 を み た。
(51a) ji mhan-a.
I-0 dream(V)-PFT
私 は 夢 を み た。
(52) jI: jimi abu mhagasae: mhan-a.
I-ERG my father dream(N)-LOC dream(V)-PFT
私 は父 の夢 を み た。
(53) ji: phukija si-gu mhagasae: mhan-a.
I-ERG cousin die-NMR dream(N)-LOC dream(V)PFT
私 は い と こ が 死 に そ う に な っ て い る 夢 を み た 。
(52)(53)は 基 本 的 に 同 じ構 造 で あ り , 夢 み る 対 象 が N P と して 現 れ , 「N P を 夢 に
830